説明

無接触給電設備

【課題】本発明は、非常停止時に誘導線路のエネルギーが移動体へ伝達されることを阻止し、移動体の非常停止を実現できる無接触給電設備を提供することを目的とする。
【解決手段】誘導線路29に、この誘導線路29と所定周波数で共振する共振回路を形成する第1コンデンサ32を接続し、搬送台車13に、誘導線路29より起電力が誘導される受電コイル30と、この受電コイル30と共に誘導線路29の所定周波数で共振する共振回路を形成するコンデンサ53を設け、搬送台車13を非常停止する際に操作される非常停止スイッチ18を備え、非常停止スイッチ18が操作されると、第1コンデンサ32に第2コンデンサ33を並列に接続して誘導線路29と第1コンデンサ32からなる回路のインピーダンスを変更し、誘導線路29を流れる電流の周波数を変更する非常停止回路40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動経路に沿って所定周波数の電流が供給される誘導線路を配置し、前記移動体に前記誘導線路に対向して受電コイルを設け、誘導線路より前記受電コイルに無接触で誘導される起電力により移動体を移動させるモータヘ給電する無接触給電設備、特に前記移動体の非常停止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の上記無接触給電設備の一例が、特許文献1に開示されている。すなわち、車両(移動体)の移動経路に沿って誘導線路を配置し、この誘導線路に、所定周波数で共振する共振回路を形成するコンデンサを接続し、前記所定周波数の電流を前記誘導線路へ供給する電源装置を備えている。また前記車両に、誘導線路に対向する受電コイルと、この受電コイルと共に前記誘導線路の所定周波数で共振する共振回路を形成するコンデンサを設け、前記車両では、前記誘導線路より前記受電コイルに無接触で誘導される起電力により車両の走行用のモータへ給電している。
【0003】
一般的に、移動体が移動経路を移動する設備では、作業者の安全を確保するために、作業者が、移動体を緊急に非常停止できる設備が求められる。そこで、移動体の移動経路に沿って非常停止スイッチを配置し、作業者が、前記非常停止スイッチを操作すると、電源装置へ給電する商用電源の給電ラインを遮断して電源装置から誘導線路へ給電される電流を遮断し、移動体へ供給される電力を遮断することにより、移動体を非常停止する設備が設けられる。
【0004】
なお、移動体に非常停止スイッチを設けて、この非常停止スイッチの操作により移動体を停止するようにもできるが、下記の理由により、移動体の非常停止は、移動体の移動経路に沿って配置した非常停止スイッチの操作により、電源装置への給電を遮断することにより行われている。
【0005】
・移動体は移動しているために、作業者が非常停止スイッチを操作するには危険が伴い、安全性が損なわれる恐れがある。
・移動体が天井部を走行する設備では、作業者は非常停止スイッチを操作することが困難である。
【0006】
・移動体の移動経路が安全柵により囲まれている設備では、作業者は非常停止スイッチを操作に行くことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2667054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非常停止時には、移動体の動力を遮断すると直に停止することが求められる。すなわち、移動体の通常停止時の制動距離より短い距離での停止が求められる。しかし、非常停止スイッチを押して電源装置へ給電する給電ライン(商用電源)を遮断しても、誘導線路とコンデンサからなる回路では、循環電流によるエネルギーが残っているために、すなわち共振電力が残留エネルギーとして残っているために、移動体側へ伝達される電力が無くなるまでに時間遅延(例えば、2〜3秒)があり、走行用モータの駆動電源の電圧が低下して停止を開始するまでの時間(制動を始めるまでの時間)に遅れがでて、非常停止スイッチが押されても移動体は、かなり走行してしまい、非常停止スイッチを押したにもかかわらず、障害物等に追突してしまう恐れがあった。なお、このような走行用モータが停止を開始するまでの時間の遅れは、普通の接触式(移動体の移動経路に沿って通電レールを敷設し、移動体にこの通電レールに接触する集電子を設けて、通電レールから集電子を介して給電される電力により移動体の負荷へ給電する方式)では起こることはない。
【0009】
そこで本発明は、非常停止時に誘導線路のエネルギーが移動体へ伝達されることを阻止し、移動体の非常停止を実現できる無接触給電設備を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、移動体の移動経路に沿って誘導線路を敷設し、前記誘導線路に、この誘導線路と所定周波数で共振する共振回路を形成するコンデンサを接続し、前記誘導線路とコンデンサからなる回路へ電流を供給する電源装置を備え、前記移動体に、前記誘導線路に対向する受電コイルと、この受電コイルと前記誘導線路の所定周波数で共振する共振回路を形成するコンデンサとを設け、前記誘導線路より前記受電コイルに無接触で誘導される起電力により移動体を移動させるモータヘ給電する無接触給電設備であって、前記移動体を非常停止する際に操作される非常停止スイッチと、前記非常停止スイッチが操作されると、前記誘導線路とコンデンサからなる回路のインピーダンスを変更し、前記誘導線路を流れる電流の周波数を変更する非常停止回路を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
上記構成によれば、非常停止スイッチが操作されると、非常停止回路により誘導線路とコンデンサからなる回路のインピーダンスが変更され、誘導線路を流れる電流(共振電流)の周波数が変更される。よって、移動体の共振回路の共振周波数と一致しなくなり、誘導線路に電流が残っていても、移動体へ電力は伝達されにくくなり、移動体の受電コイルに誘導される起電力は急速に減少し、移動体を移動させるモータの駆動に必要な電圧が急激に低下し(電圧を維持できなくなり)、モータは急停止され、移動体は急停止する。
【0012】
また請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明であって、非常停止回路の制御電源が喪失した場合、前記誘導線路とコンデンサからなる回路のインピーダンスが変更されることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、非常停止回路の制御電源が喪失すると、自動的に、誘導線路とコンデンサからなる回路のインピーダンスが変更されて、誘導線路に流れる電流(共振電流)の周波数が変更される。よって、非常停止回路の制御電源が喪失して非常停止スイッチの操作が働かないときに、安全に移動体は非常停止される。
【0014】
また請求項3記載の発明は、上記請求項1または請求項2に記載の発明であって、前記誘導線路とコンデンサからなる回路のインピーダンスの変更は、前記誘導線路に接続されているコンデンサに新たに第2のコンデンサを並列接続することにより行うことを特徴とするものである。
【0015】
上記構成によれば、非常停止スイッチが操作されると、コンデンサに新たに第2のコンデンサを並列接続させて、前記誘導線路とコンデンサからなる回路のインピーダンスが変更され、誘導線路に流れる電流(共振電流)の周波数が変更される。
【0016】
前記第2のコンデンサには、通常は電流が流れておらず、すなわち通常は第2のコンデンサを並列接続とするスイッチには電流が流れておらず、スイッチは第2のコンデンサが並列接続されたときに流れる電流の通電容量があればよいため(電流を遮断する容量は要求されておらず)、一般に安価なスイッチを採用できる。またこの第2のコンデンサを並列接続する方式では、誘導線路とコンデンサからなる回路のインピーダンスが大きく変化することを抑制することが可能であり、よって前記回路のインピーダンスの変化に伴う電源装置への影響を抑えることができ、また既設の設備に対して付設するとき、既設の回路を変更する必要はないので、工事を容易にできる。
【0017】
また請求項4記載の発明は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明であって、操作コイルを励磁することにより前記電源装置に給電ラインを接続し、前記操作コイルを無励磁とすることにより前記給電ラインを遮断する電磁開閉器を備え、前記非常停止スイッチが操作されると、前記電磁開閉器の操作コイルを無励磁として前記給電ラインを遮断することを特徴とするものである。
【0018】
上記構成によれば、非常停止スイッチが操作されると、電源装置の給電ラインが遮断され電源装置から誘導線路への給電が停止され、誘導線路への新たなエネルギーの供給が阻止される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の無接触給電設備は、非常停止スイッチが操作されると、誘導線路のインピーダンスが変更され、誘導線路を流れる電流(共振電流)の周波数が変更されることにより、移動体の受電コイルに誘導される起電力を急速に減少でき、よって、モータを急停止できることにより、移動体を急停止することができ、安全性を高めることができる、という効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における無接触給電設備を備えた物品搬送設備の走行経路図である。
【図2】同物品搬送設備の要部構成図である。
【図3】同物品搬送設備の無接触給電設備の回路構成図である。
【図4】同物品搬送設備の無接触給電設備において、電力の伝達が阻止されることを説明するための図である。
【図5】同物品搬送設備の無接触給電設備における、電磁接触器のb接点と走行用モータの特性図である。
【図6】本発明の他の実施の形態における無接触給電設備の各種、誘導線路側の回路構成図である。
【図7】本発明の他の実施の形態における無接触給電設備の各種、誘導線路側の回路構成図である。
【図8】本発明の他の実施の形態における無接触給電設備の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態における無接触給電設備を備えた物品搬送設備の走行経路図、図2は物品搬送設備の同要部構成図である。
【0022】
図1および図2において、11はフロア12に設置された一対の走行レールであり、13はこの走行レール11に案内されて自走し、物品Rを搬送する4輪の搬送台車(移動体の一例)である。なお、搬送台車13の総台数を5台としている。
【0023】
前記走行レール1により、ループ状(環状)に形成される搬送経路(移動経路の一例)14が構成され、この搬送経路14に沿って複数(図では9台)のステーション(物品受け手段)15が配置されており、搬送台車13は、搬送経路14に沿って走行し、搬送経路14に沿って配置されたステーション15間に渡って物品を搬送する搬送車を構成している。
【0024】
また各ステーション15にはそれぞれ、各搬送台車13との間で物品Rの移載、すなわち搬入、搬出を行う移載用コンベヤ装置(たとえば、ローラコンベヤやチェンコンベヤ)16が設けられている。
【0025】
また一対の走行レール11の両外方には、搬送台車13への作業者の接触を避けるための安全柵17が、走行レール11に沿って、ステーション15の設置箇所を除いて設置されており、この安全柵17に沿って複数(図では5つ)の箇所に、全搬送台車13を非常停止させる際に操作される非常停止スイッチ18(18−1,18−2,18−3,18−4,18−5)が設けられている。各非常停止スイッチ18は、1つのb接点を有するモーメンタリータイプのスイッチから構成されている。
【0026】
前記搬送台車13は、図2に示すように、車体21と、この車体21上に設置され、物品Rを移載し載置する移載・載置用コンベヤ装置(たとえば、ローラコンベヤやチェンコンベヤ)22と、車体21の下部に取付けられ、車体21を一方の走行レール11に対して支持する2台の旋回式従動車輪装置23と、車体21の下部に取付けられ、車体21を他方の走行レール11に対して支持するとともに走行レール11の曲がり形状に追従可能でかつ旋回式従動車輪装置23に対して遠近移動自在(スライド自在)とした2台の旋回・スライド式駆動車輪装置24を備えている。またこれら旋回・スライド式駆動車輪装置24のうちの一方に走行用モータ(移動体を移動するためのモータの一例)25が連結され、この走行用モータ25の駆動により搬送台車13は走行される。
【0027】
また、一方の走行レール11の外方側面に走行方向に沿って全長に、上下一対の誘導線路29が敷設され(配置され)、搬送台車13には、一方の旋回式従動車輪装置23の外方位置に、この誘導線路29に対向して受電コイル30が設置されている。この受電コイル30に誘導される起電力により走行用モータ25へ給電される。また前記誘導線路29の端部に電源盤31が設置されている。
【0028】
「電源盤31」
図3に示すように、電源盤31内に、第1コンデンサ32と、第2コンデンサ33と、電源装置34と、3つの主接点(電源開閉用のa接点)を有し、補助接点して1つのa接点を有する電磁開閉器(ブレーカ;BK)35と、2つのa接点と1つのb接点を有する電磁接触器(MC)36が設けられている。また電源盤31の前面には、1つのa接点と1つのb接点を有するモーメンタリータイプの電源スイッチ38と、1つのa接点を有するモーメンタリータイプの復帰スイッチ39が設けられている。
【0029】
第1コンデンサ32は、誘導線路29と所定周波数(例えば、10kHz)で共振する共振回路を形成するコンデンサであり、誘導線路29に並列に接続され、これら誘導線路29と第1コンデンサ32からなる回路(誘導回路)に電源装置34が接続されている。電源装置34は、前記所定周波数の共振電流を供給する。
【0030】
また前記第2コンデンサ33と電磁接触器36のb接点が直列に接続され、この直列回路が、第1コンデンサ32に並列に接続されている。前記電磁接触器36のb接点は、第2コンデンサ33を第1コンデンサ32に並列接続し、また切り離すスイッチを構成している。また直流の制御電源に、復帰スイッチ39が押し操作されると(a接点が閉動作されると)、電磁接触器36の操作コイル36Aを励磁して自己保持し、複数の非常停止スイッチ18のうち一つでも押し操作されると(b接点が開動作されると)、電磁接触器36の操作コイル36Aを無励磁とする非常停止回路40が形成されている。
【0031】
通常時は、復帰スイッチ39が押し操作されたことにより、電磁接触器36の操作コイル36Aは励磁されており、電磁接触器36のb接点は開動作しており、第2コンデンサ33は第1コンデンサ32に接続されてない。また非常停止スイッチ18のうち一つでも押し操作されると、電磁接触器36の操作コイル36Aは無励磁とされ、電磁接触器36のb接点は閉動作され、第2コンデンサ33は第1コンデンサ32に並列接続される。このように、非常停止回路40により、非常停止スイッチ18のうち一つでも押し操作されると、第1コンデンサ32に第2コンデンサ33が並列に接続される。
【0032】
また、電磁開閉器35は、電源装置34と外部の商用電源41を接続する給電ライン42を開閉する。前記電源スイッチ38は、この電磁開閉器35により給電ライン42を開閉することにより電源装置34の電源を入り切りするスイッチであり、直流の制御電源に、電源スイッチ38が「入」操作されると(a接点が閉動作されると)、電磁開閉器35の操作コイル35Aを励磁して自己保持し、電源スイッチ38が「切」操作されると(b接点が開動作されると)、または電磁接触器36が無励磁となりa接点が開動作すると、電磁開閉器35の操作コイル35Aを無励磁とする電源入切回路43が形成されている。この電源入切回路43の回路構成により、電磁開閉器35は、電源スイッチ38が「入」操作されて電磁開閉器35の操作コイル35Aが励磁されると、電磁開閉器35の主接点により電源装置34へ給電ライン42は接続され、電源スイッチ38が「切」操作され、または非常停止スイッチ18が押し操作されると(電磁接触器36の操作コイル36Aが無励磁となりa接点が開動作されると)、電磁開閉器35の操作コイル35Aが無励磁とされ、電磁開閉器35の主接点により給電ライン42は遮断される。このように、非常停止スイッチ18が押し操作されると、第1コンデンサ32に第2コンデンサ33が並列に接続され、続いて電磁開閉器35の主接点により給電ライン42は遮断される。
【0033】
また上記直流の制御電源は信頼性の高い電源であるが、万一、喪失すると、上記非常停止回路40の回路構成により電磁接触器36の操作コイル36Aは無励磁となり、且つ電源入切回路43の回路構成により電磁開閉器35の操作コイル35Aは無励磁となる。よって、直流の制御電源が喪失されると、非常停止スイッチ18が押し操作されたときと同様に、第1コンデンサ32に第2コンデンサ33が並列に接続され、電磁開閉器35の主接点により給電ライン42は遮断される。
【0034】
「受電ユニット」
上記搬送台車13には、受電ユニット51とインバータ52が設けられ、受電コイル30に受電ユニット51が接続され、この受電ユニット51にインバータ52を介して走行用モータ25が接続されている。
【0035】
上記受電ユニット51は、受電コイル30に並列接続され、この受電コイル30と共に誘導線路29の上記所定周波数(例えば、10kHz)で共振する共振回路を形成するコンデンサ53と、この共振回路のコンデンサ53に並列に接続される、中間タップ付きの可飽和リアクトル54と、この可飽和リアクトル54の中間タップ(出力端)に接続される整流器55と、この整流器55の出力側に並列に接続された出力コンデンサ56から構成され、出力コンデンサ56に上記インバータ52が並列に接続されている。なお、前記可飽和リアクトル54の飽和電圧は、インバータ52および走行用モータ25が必要な定格電力により設定され、この飽和電圧と受電ユニット51の出力定格電圧{可飽和リアクトル54の中間タップ(出力端)電圧に相当する}により可飽和リアクトル54の入力端と出力端のコイル巻線の巻数比が設定されている。
【0036】
上記電源装置31と誘導線路29と搬送台車13の回路構成による作用を説明する。
「通常時」
通常時は、復帰スイッチ39の押し操作により、上記非常停止回路40によって、電磁接触器36の操作コイル36Aが励磁され、電磁接触器36のb接点は開動作しており、第2コンデンサ33は第1コンデンサ32に接続されていない状態とされている。また電源スイッチ38の「入」操作により、電源入切回路43によって電磁開閉器35の操作コイル35Aが励磁されて給電ライン42が接続され、商用電源41から電源装置34へ給電され、電源装置34より、誘導線路29と第1コンデンサ32からなる誘導回路の共振周波数の電流(共振電流)が誘導線路29へ供給されている。
【0037】
この誘導線路29に発生する磁束により受電コイル30に起電力が発生する。このとき、図4に示すように、受電コイル30は、コンデンサ53と共に、誘導線路29の所定周波数(例えば、10kHz)に共振する共振回路を形成しているために、最も効率よく電力Pが伝達される。そして、この受電コイル30と共振回路を形成するコンデンサ53より(1次)共振電圧が中間タップ付き可飽和リアクトル54へ印加される。可飽和リアクトル54は、共振電圧の上昇を抑制するので、整流器55を介してほぼ一定の直流電圧がインバータ52へ供給され、インバータ52により走行用モータ25が駆動されて搬送台車13は走行する。
【0038】
「非常時」
作業者は、搬送台車13を非常停止させる際に、非常停止スイッチ18を押し操作する。すると、上述したように、第1コンデンサ32に第2コンデンサ33が並列に接続され、続いて電磁開閉器35の主接点により給電ライン42は遮断され、電源装置34から誘導線路29への給電が遮断される。
【0039】
第1コンデンサ32に第2コンデンサ33が並列に接続されることによって、誘導線路29を含む誘導回路のインピーダンスが変更され、誘導線路29を流れる電流(共振電流)の周波数が変更される。すると、搬送台車13の上記共振回路の共振周波数と一致しなくなり、図4から判るように、搬送台車13へ電力が伝達されにくくなり、加えて、電源装置34から誘導線路29への給電が遮断されて誘導線路29への新たなエネルギーの供給が阻止されることにより、非常停止時に誘導線路29のエネルギーが搬送台車13へ伝達されることが阻止され、搬送台車13の受電コイル30に誘導される起電力は急速に減少し、走行用モータ25の駆動に必要な電圧が急激に低下し(電圧を維持できなくなり)、図5に示すように、安全を確保できる所定時間(例えば、2秒)以内に、走行用モータ25は急停止され、搬送台車13は急停止し、安全が確保される。
【0040】
また非常停止から復旧するときは、まず復帰スイッチ39が押し操作され、非常停止回路40により電磁接触器36の操作コイル36Aが励磁され、電磁接触器36のb接点が開動作され、第2コンデンサ33は第1コンデンサ32に接続されていない状態とされる。次に、電源スイッチ38が「入」操作され、電源入切回路43により電磁開閉器35の操作コイル35Aが励磁されて電源装置34へ給電ライン42が接続され、商用電源41から電源装置34へ給電され、電源装置34より、誘導線路29と第1コンデンサ32からなる誘導回路へ、共振周波数の電流(共振電流)が供給される。このように、非常停止からの復旧の際には、電磁接触器36のb接点が開動作されてから、誘導線路29に共振電流が供給される。
【0041】
以上のように本実施の形態によれば、非常停止スイッチ18が操作されると、第1コンデンサ32に第2コンデンサ33が並列に接続され、誘導線路29を流れる電流(共振電流)の周波数が変更されることにより、走行用モータ25の駆動に必要な電圧を急激に低下でき(電圧を維持できなくでき)、安全を確保できる所定時間(例えば、2秒)以内に、走行用モータ25を急停止でき、よって搬送台車13を急停止でき、安全を確保することができる。
【0042】
なお、給電設備の基本思想として、搬送台車13の非常停止は、一次側の電源装置34への給電を遮断し、搬送台車13の走行用モータ25への動力を遮断することにより行うが、本発明では、まず誘導線路29の共振電流の周波数を変更して、電力が搬送台車13へ伝達されにくくしている。
【0043】
また本実施の形態によれば、非常停止回路40の制御電源が喪失すると、自動的に、誘導線路29と第1コンデンサ32からなる誘導回路のインピーダンスが変更され、誘導線路29を流れる電流(共振電流)の周波数が変更されることによって、非常停止回路40の制御電源が喪失して非常停止スイッチ18の操作が働かないときに、安全に搬送台車13を非常停止することができる。
【0044】
また本実施の形態によれば、非常停止時に第1コンデンサ32に並列接続される第2コンデンサ33には、通常時には電流が流れておらず、すなわち通常は第2コンデンサ33を並列接続とする電磁接触器36のb接点(スイッチ)には電流が流れておらず、このb接点は第2コンデンサ33が並列接続されたときに流れる電流の通電容量があればよい。また電磁接触器36のb接点は、非常停止からの復旧の際に、開動作されてから、誘導線路29に電流が供給されるために、前記電流の通電容量があればよい。このように、電磁接触器36のb接点は前記電流の通電容量があればよく、電流を遮断する容量は要求されないために、一般に安価な電磁接触器36を採用できる。
【0045】
また第2コンデンサ33を並列接続する方式は、誘導線路29と第1コンデンサ32からなる回路のインピーダンスの急激な変化を抑えることが可能となることから、電源装置34への影響を抑えることができる。すなわち、単に誘導線路29と第1コンデンサ32からなる回路のインピーダンスを変えるには、図6(e)に示すように、第1コンデンサ32を短絡すればよいが、このとき電源装置34の出力回路に大きな電流が流れて出力回路の素子を損傷させる恐れが生じる。この第2コンデンサ33を並列接続する方式では、インピーダンスの大きな変化を抑制することができるので、電源装置34への影響を抑えることができる。
【0046】
さらに既設の給電設備に非常停止を行うための改良を行うには、第2コンデンサ33と電磁接触器36のb接点の直列回路を、第1コンデンサ32に並列接続すればよく、設計変更が容易となり、また既設の回路の電線を外す必要がないので、付設工事を容易にすることができる。
【0047】
また本実施の形態によれば、非常停止スイッチ18が操作されると、電源装置34の給電ライン42が遮断され電源装置34から誘導線路29への給電が停止されることにより、誘導線路29への新たなエネルギーの供給を阻止でき、誘導線路29を流れる電流を急激に減少させることができる。
*他の実施の形態
上記本実施の形態では、図6(a)に示すように、第1コンデンサ32に新たに第2コンデンサ33を並列接続することにより、誘導線路29と第1コンデンサ32からなる誘導回路のインピーダンスを変更しているが、誘導線路29と第1コンデンサ32からなる回路のインピーダンスの変更は、後述する手法にてキャパシタンスやインダクタンスを変えることにより行うことができる。このとき、非常停止スイッチ18が操作された場合、または直流の制御電源が喪失した場合、電磁開閉器35の操作コイル35Aは無励磁となること、すなわちa接点は開動作、b接点は閉動作とすることを前提としている。
【0048】
「図6(b)」
通常、第1コンデンサ32に、電磁接触器36のa接点(閉動作)により第2コンデンサ33を並列接続しておき、非常停止時は、a接点を開動作し、第2コンデンサ33の接続を外すことで、誘導回路のインピーダンスを変更している。このとき、第1コンデンサ32と第2コンデンサ33と誘導線路29により、所定周波数での共振回路が形成される。
【0049】
「図6(c)」
通常、電磁接触器36のa接点(閉動作)により第2コンデンサ33を短絡しておき、非常停止時は、a接点を開動作し、第2コンデンサ33を第1コンデンサ32に直列に接続することで、誘導回路のインピーダンスを変更している。
【0050】
「図6(d)」
通常、第1コンデンサ32に電磁接触器36のb接点(開動作)により第2コンデンサ33を直列接続しておき、非常停止時は、b接点を閉動作し、第2コンデンサ33を短絡することで、誘導回路のインピーダンスを変更している。このとき、第1コンデンサ32と第2コンデンサ33と誘導線路29により、所定周波数での共振回路が形成される。
【0051】
「図6(e)」
通常、電磁接触器36のb接点(開動作)により第1コンデンサ32を誘導線路29に接続しておき、非常停止時は、b接点を閉動作し、第1コンデンサ32を短絡することで、誘導回路のインピーダンスを変更している。
【0052】
「図6(f)」
通常、電磁接触器36のa接点(閉動作)により第1コンデンサ32を誘導線路29に接続しておき、非常停止時は、a接点を開動作し、第1コンデンサ32を外すことで、誘導回路のインピーダンスを変更している。
【0053】
「図7(a)」
通常、電磁接触器36のa接点(閉動作)により補助インダクタ57の両端を短絡しておき、非常停止時は、a接点を開動作し、誘導線路29に補助インダクタ57を直列接続することで、誘導回路のインピーダンスを変更している。
【0054】
「図7(b)」
通常、電磁接触器36のb接点(開動作)により誘導線路29に補助インダクタ57を直列接続しておき、非常停止時は、b接点を閉動作し、誘導線路29から補助インダクタ57を外すことで、誘導回路のインピーダンスを変更している。このとき、第1コンデンサ32と補助インダクタ57と誘導線路29により、所定周波数での共振回路が形成される。
【0055】
「図7(c)」
通常、電磁接触器36のb接点(開動作)により補助インダクタ57を外しておき、非常停止時は、b接点を閉動作し、誘導線路29に補助インダクタ57を並列接続することで、誘導回路のインピーダンスを変更している。
【0056】
「図7(d)」
通常、電磁接触器36のa接点(閉動作)により補助インダクタ57を誘導線路29に並列接続しておき、非常停止時は、a接点を開動作し、誘導線路29から補助インダクタ57を外すことで、誘導回路のインピーダンスを変更している。このとき、第1コンデンサ32と補助インダクタ57と誘導線路29により、所定周波数での共振回路が形成される。
【0057】
なお、上記図6(b)、図6(c)、図6(f)、図7(a)、図7(d)を形成する電磁接触器36のa接点には、電流の遮断容量が要求されるために、一般的に電磁接触器36の価格は高くなり、設備としてのコストが高くなる。
【0058】
また上記図7(a)〜図7(d)を形成する回路では、補助インダクタ57を使用するが、一般的にインダクタはコンデンサより価格は高くなり、設備としてのコストが高くなる。
【0059】
また上記図6(c)、図6(d)、図6(f)、図7(a)、図7(b)を形成する回路では、既設の回路に、第2コンデンサ33または補助インダクタ57を付加するときに、既設の回路の電線を一旦、取り外す必要があり、付加工事に困難を伴うことがあり、設計変更がしにくくなる。
【0060】
また本実施の形態では、電磁開閉器35と電磁接触器36の2台を使用して電源入切回路43と非常停止回路40を形成しているが、図8に示すように、1台の電磁開閉器59により形成することもできる。
【0061】
この電磁開閉器59は、3つの主接点(電源開閉用の接点)を有し、補助接点して1つのa接点と1つのb接点を有す構造としている。そして、第2コンデンサ33と電磁開閉器59のb接点が直列に接続され、この直列回路が、第1コンデンサ32に並列に接続されている。復帰スイッチ39は不要としている。
【0062】
直流の制御電源に、電源スイッチ38が「入」操作されると(a接点が閉動作されると)、電磁開閉器59の操作コイル59Aを励磁して自己保持し、電源スイッチ38が「切」操作されると(b接点が開動作されると)、またはいずれか1つの非常停止スイッチ18が操作されると(b接点が開動作されると)、電磁開閉器59の操作コイル59Aを無励磁とする回路が形成されている。この回路構成により、電磁開閉器59は、電源スイッチ38が「入」操作されて電磁開閉器59の操作コイル59Aが励磁されると、電磁開閉器59の主接点により電源装置34へ給電ライン42が接続され、且つ電磁開閉器59のb接点は開動作され、第2コンデンサ33は第1コンデンサ32から外される。また電源スイッチ38が「切」操作され、またはいずれかの非常停止スイッチ18が押し操作されると、電磁開閉器59の操作コイル59Aが無励磁とされ、電磁開閉器59の主接点により給電ライン42は遮断され、同時に電磁開閉器59のb接点は閉動作され、第2コンデンサ33は第1コンデンサ32に並列接続される。
【0063】
この構成によっても、非常停止スイッチ18を操作することにより、第2コンデンサ33を第1コンデンサ32に並列接続でき、誘導回路のインピーダンスを変更することができる。なお、電磁開閉器59は、第2コンデンサ33を第1コンデンサ32へ接続する機能と、給電ライン42を遮断する機能を兼ねているために、電源装置34の給電ライン42を遮断するタイミングと、誘導線路29と第1コンデンサ32からなる回路のインピーダンスを変更するタイミングを、ずらすことは困難である。
【0064】
また、本実施の形態では、移動体を走行レール11に案内される搬送台車13としているが、このような搬送台車13に限ることはなく、移動体は、一定の移動経路に沿って移動する、例えばスタッカークレーンや天井走行のモノレールであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
11 走行レール
13 搬送台車
14 搬送経路
17 安全柵
18 非常停止スイッチ
21 車体
25 走行用モータ
29 誘導線路
30 受電コイル
31 電源盤
32 第1コンデンサ
33 第2コンデンサ
34 電源装置
35,59 電磁開閉器
36 電磁接触器
38 電源スイッチ
39 復帰スイッチ
40 非常停止回路
41 商用電源
42 給電ライン
43 電源入切回路
51 受電ユニット
52 インバータ
57 補助インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動経路に沿って誘導線路を敷設し、前記誘導線路に、この誘導線路と所定周波数で共振する共振回路を形成するコンデンサを接続し、前記誘導線路とコンデンサからなる回路へ電流を供給する電源装置を備え、
前記移動体に、前記誘導線路に対向する受電コイルと、この受電コイルと前記誘導線路の所定周波数で共振する共振回路を形成するコンデンサとを設け、
前記誘導線路より前記受電コイルに無接触で誘導される起電力により移動体を移動させるモータヘ給電する無接触給電設備であって、
前記移動体を非常停止する際に操作される非常停止スイッチと、
前記非常停止スイッチが操作されると、前記誘導線路とコンデンサからなる回路のインピーダンスを変更し、前記誘導線路を流れる電流の周波数を変更する非常停止回路
を備えたことを特徴とする無接触給電設備。
【請求項2】
非常停止回路の制御電源が喪失した場合、前記誘導線路とコンデンサからなる回路のインピーダンスが変更されること
を特徴とする請求項1に記載の無接触給電設備。
【請求項3】
前記誘導線路とコンデンサからなる回路のインピーダンスの変更は、前記誘導線路に接続されているコンデンサに新たに第2のコンデンサを並列接続することにより行うこと
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の無接触給電設備。
【請求項4】
操作コイルを励磁することにより前記電源装置に給電ラインを接続し、前記操作コイルを無励磁とすることにより前記給電ラインを遮断する電磁開閉器を備え、
前記非常停止スイッチが操作されると、前記電磁開閉器の操作コイルを無励磁として前記給電ラインを遮断すること
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の無接触給電設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−97714(P2011−97714A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248345(P2009−248345)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】