説明

無機充填材の絶縁性改善方法

【課題】 無機充填材の製造工程において金属性異物が混入された無機充填材の絶縁性の改善を確実に行うことができる無機充填材の絶縁性改善方法を提供する。
【解決手段】 無機充填材を容器中の分散媒に分散させる。次に、分散媒中に無機物充填材を分散させた分散液と磁石との相対的な移動により分散液全体に磁力を作用させ、無機充填材に混入している金属性異物を磁石に捕捉させる。さらに、分散液を加熱して分散媒を揮発させ、残存する前記無機充填材を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体などの封止材料に配合される無機充填材の絶縁性改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体封止樹脂には、線膨張率を下げる、熱伝導率を上げる、強度を上げる、耐熱性を向上させる、耐湿性を向上させるなどの目的で、シリカやアルミナなどの無機充填材が配合されているが、無機充填材には、その製造工程において金属性異物が混入することがある。金属性異物が混入する原因は、無機充填材が金属に比べて硬いため、その製造工程内の配管等の金属と接触する際にその金属部分を削り、その金属の微細粉が無機充填材中に混入することによることが多い。このように、封止樹脂に配合される無機充填材中に金属性異物が混入していると、この金属性異物によって半導体上のワイヤ等の配線間の短絡事故等が発生することがある。
【0003】
そのため、無機充填材メーカーでは、シリカ等の無機充填材の製造工程の最終段階で、永久磁石等を用いた除鉄の作業が行われている。例えば、特許文献1には、棒状の永久磁石を千鳥状に配置することにより落下する半導体封止材料などの粉体中の不要な鉄粉を除去することができる金属除去装置が開示されている。
【特許文献1】特開平11−47633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような磁石を用いた除鉄による金属性異物の除去方法においては、除鉄器の磁力が有効な範囲内を通過する金属性異物しか除去できないこと、さらに、一旦磁石に捕捉された金属性異物が後からこの磁石部分を通過しようとする無機充填材または金属性異物と接触した場合に脱落することがあることから、無機充填材中に混入している金属性異物を十分に除去することが困難であり、未だなお半導体上のワイヤ等の配線間の短絡事故等が発生している。
【0005】
特に、近年の携帯電話、パソコン等の電子機器の軽薄短小化の流れに伴い、これらに組み込まれる電子デバイスについても軽薄短小化が進展し、これに使用される半導体上のワイヤ等の配線が高密度化されている。そのため、封止樹脂に配合される無機充填材中に混入している金属性異物が微細なものであっても、この金属性異物によって高密度化された配線間の短絡事故等の発生が多くなっている。また、この流れにおいては、半導体封止材料も粒度の細かいものが広範に使用されるようになっているため金属性異物を含んだ形で凝集しやすくなっている。その結果、上述の磁石を用いた除鉄による金属性異物の除去方法においては、磁石の磁力を金属性異物に有効に作用させることができなくなっているため、無機充填材中の金属性異物を除去することがより困難になり、上述の短絡事故等の発生がより顕著になっている。
【0006】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、無機充填材の絶縁性の改善を確実に行うことができる無機充填材の絶縁性改善方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、封止材料に配合する無機充填材の絶縁性改善方法であって、無機充填材を容器中の分散媒に分散させる無機充填材分散ステップと、前記分散媒中に前記無機物充填材を分散させた分散液と磁石との相対的な移動により前記分散液全体に磁力を作用させ、前記無機充填材に混入している金属性異物を前記磁石に捕捉させる金属性異物捕捉ステップと、前記分散液を加熱して前記分散媒を揮発させ、残存する前記無機充填材を回収する無機充填材回収ステップとを備えることを特徴とする無機充填材の絶縁性改善方法により達成される。
【0008】
この無機充填材の絶縁性改善方法は、前記無機充填材分散ステップと前記金属性異物捕捉ステップとの間に、前記分散液をフィルターに通過させる濾過ステップを備えることが好ましい。
【0009】
更に、前記無機充填材回収ステップの後に、前記無機充填材を加熱して酸化させる焼成ステップを更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無機充填材の絶縁性の改善を確実に行うことができる無機充填材の絶縁性改善方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、無機充填材の絶縁性改善方法の各実施形態を説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る無機充填材の絶縁性改善方法について説明する。
【0013】
まず、プラスチックなどでできた容器に分散媒を入れ、製造工程において金属性異物が混入された無機充填材を分散媒に分散させる。そして、無機物充填材を分散媒に分散させた分散液と磁石との相対的な移動により分散液全体に磁力を作用させ、磁石表面に金属性異物を捕捉させて磁石を取り出すことで金属性異物を除去する。本実施形態においては、この方法として、分散液全体を棒状の永久磁石でかき混ぜる方法が挙げられる。
【0014】
分散媒としては、例えば、蒸留水、純水、アルコール類(メタノール、IPA(イソプロピルアルコール)等)の他、各種有機溶剤が挙げられる。無機充填材としては、シリカ、アルミナ等の無機物が挙げられる。無機充填材の粒径は、半導体上の電極間隔またはリード間隔より小さくなるように選択されることから、例えば、封止する半導体上の電極間隔が30μmの場合は、無機充填材の最大粒径が20μm以下のものを選択するのが好ましい。特に、最大粒径が50μm程度以下のものは、電極間隔またはリード間隔の狭い半導体の封止に使用されることが多いため、絶縁性改善の必要性がある。また、無機充填材に混入している金属は、前述したように無機充填材の製造工程における金属製配管等と無機充填材が接触し、磨耗することにより発生するステンレスや鉄などの微細粉であり、その粒径は、一般に数μm〜200μm程度の大きさである。
【0015】
無機充填材を分散媒に分散させた分散液粘度は、高すぎると、磁石の磁力が作用する範囲内にある分散液中の金属性異物が磁石表面へ移動しにくくなり、また、磁石が分散液から受ける抵抗が大きいことによって一旦磁石に捕捉された金属性異物が脱落するという問題が生じることから、1〜100Pa・sとすることが好ましく、1〜20Pa・sとすることがより好ましい。分散液粘度の調整方法は、例えば、分散液の粘度を測定し、高ければ分散媒を追加して所定の粘度になるように無機充填材と分散媒の混合率を調整する方法が挙げられる。
【0016】
分散液と磁石との相対的な移動により分散液全体に磁力を作用させ、磁石表面に金属性異物を捕捉させて磁石を取り出すことで金属性異物を除去する方法としては、分散液全体を棒状の永久磁石でかき混ぜる方法に限定されるものではなく、例えば、別の容器内に磁石を固定し、分散液が磁石表面に沿って流れるように分散液を流し入れる方法、または、分散液で満たされた容器内に磁石を固定し、その分散液を非磁性の棒などでかき混ぜる方法等が挙げられる。
【0017】
また、磁石は永久磁石に限られず、例えば、分散液と接触しない部分には電磁石を用いてもよい。
【0018】
次に、金属性異物除去後の分散液が入った容器を熱風循環式炉または遠赤外線炉の中に入れ、例えば、150〜300℃の温度領域で8〜24時間加熱し、分散媒を揮発させ、残留した無機充填剤の粒子を回収する。
【0019】
以上のように、本実施形態の無機充填材の絶縁性改善方法によれば、金属性異物を含んだ形で凝集している無機充填材を分散媒に分散させることで、無機充填材と金属性異物の各粒子を分離し、無機充填材が分散した分散液全体に磁石の磁力を作用させるようにしているので、無機充填材全体に金属性異物の除去効果を奏することができる。さらに、無機充填材を分散媒に分散させた分散液粘度を、1〜100Pa・s、好ましくは、1〜20Pa・sとすることにより、分散液中の金属性異物が磁石表面に移動しやすくなるので、金属性異物の捕捉を容易にすることができると共に、磁石が分散液から受ける抵抗を小さくすることができるので、一旦捕捉された金属性異物が脱落しにくくなる。この結果、金属性異物を確実に捕捉できるため、無機充填材の絶縁性を改善することができる。
【0020】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る無機充填材の絶縁性改善方法について説明する。
【0021】
まず、容器に分散媒を入れ、無機充填材を分散媒に分散させる。無機充填材を分散媒に分散させた分散液をフィルターに通すことによって濾過し、金属性異物を除去する。フィルターは、無機充填材の最大粒径より大きな開口径を有するフィルターを用いるのが好ましい。但し、フィルター開口径が無機充填材の最大粒径より大きすぎると、その分多くの金属性異物がフィルターを通過してしまうことになり、金属性異物の除去効率が低下する。例えば、無機充填材の最大粒径より20%〜200%大きい開口径を有するフィルターを用いることが好ましい。また、フィルターは、分散液を濾過する際に用いるフィルターによる更なる金属性異物の混入を防ぐため、ナイロン、テトロン等の非金属繊維でできたものを用いるのが好ましい。
【0022】
このように無機充填材を分散媒に分散させ、フィルターに通すことによって金属性異物を除去した後、さらに、分散液と磁石との相対的な移動により分散液の全体に磁力を作用させ、磁石表面に金属性異物を捕捉させて磁石を取り出した後、容器に入っている分散液を加熱し、分散媒を揮発させて、残留した無機充填材を回収する。
【0023】
以上のように、本実施形態の無機充填材の絶縁性改善方法によれば、分散液と磁石との相対的な移動により分散液全体に磁力を作用させ磁石表面に金属性異物を捕捉する前に、無機充填材分散後の分散液をフィルターに通すことにより無機充填材に混入している金属性異物を予め除去するようにしている。この結果、金属性異物の除去が効率的に行われ、無機充填材の絶縁性をさらに改善することができる。
【0024】
また、無機充填材を分散媒に分散させることにより、無機充填材粒子の凝集を防止することができるので、フィルター径を小さくできる。この結果、無機充填材の粒子は通過させつつ、金属性異物の粒子は除去することができるので、除去効率が上がり、無機充填材の絶縁性を改善できる。
【0025】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る無機充填材の絶縁性改善方法について説明する。
【0026】
この方法は、第1の実施形態に係る無機充填材の絶縁性改善方法を行った後に、さらに、以下に記載するように焼成工程を追加して行うものである。
【0027】
回収した無機充填材を耐熱性の容器に入れ、電気炉を用いて、例えば、600〜1200℃の温度領域で8〜72時間加熱して、混入している金属性異物の少なくとも表面を酸化させる。この結果、金属性異物が非導電性となり、半導体封止材料などの無機充填材に金属性異物が混入していても、封止された半導体の電極間の短絡事故を防止することができる。
【0028】
以上のように本実施形態の無機充填材の絶縁性改善方法によれば、第1の実施形態に記載の絶縁性改善方法を行った後に、回収した無機充填材中に万が一金属性異物が残っていたとしても、さらに、上記のような焼成工程を追加して行うことにより、無機充填材中の金属性異物を非導電性にするようにしているので、無機充填材の絶縁性を格段に改善することができる。
【0029】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る無機充填材の絶縁性改善方法について説明する。
【0030】
この方法は、第2の実施形態に係る無機充填材の絶縁性改善方法を行った後に、さらに、以下に記載するように焼成工程を追加して行うものである。
【0031】
回収した無機充填材を耐熱性の容器に入れ、電気炉を用いて、例えば、600〜1200℃の温度領域で8〜72時間加熱して、混入している金属性異物の少なくとも表面を酸化させる。この結果、金属性異物が非導電性となり、半導体封止材料などの無機充填材に金属性異物が混入していても、封止された半導体の電極間の短絡事故を防止することができる。
【0032】
以上のように本実施形態の無機充填材の絶縁性改善方法によれば、第2の実施形態に記載の絶縁性改善方法を行った後に、回収した無機充填材中に万が一金属性異物が残っていたとしても、さらに、上記のような焼成工程を追加して行うことにより、無機充填材中の金属性異物を非導電性にするようにしているので、無機充填材の絶縁性を格段に改善することができる。
【実施例】
【0033】
本発明に係る無機充填材の絶縁性改善方法に関して評価を行った。これを以下の実施例に基づき具体的に説明する。
【0034】
(実施例1)
第1の実施形態の評価方法において、分散媒として純水を使用し、無機充填材を純水に分散させ、この分散液の粘度を100Pa・sとなるように調整した。無機充填材としては、球状シリカである電気化学工業(株)製「FB−5SDX」(平均粒径4.2μm、最大粒径24μm、メーカーにおいて磁石棒を使った除鉄機を通して乾式除鉄による金属性異物の除去がされているもの)を用いた(以下の実施例および比較例においても同じものを用いた。)。次に、分散液全体を5000Gの磁石棒で30分間ゆっくりとかき混ぜた後、磁石棒を取り出し、容器に入った分散液を160℃で24時間加熱し揮発させて、残留した無機充填材を回収した。
【0035】
そして、回収した無機充填材中に残存する金属性異物の量を、以下の方法で評価した。
【0036】
まず、プラスチック製の容器にIPAを200ml入れ、この中に回収した無機充填材を50g加え、分散させた。この分散液全体を4200Gの磁石棒で1分間ゆっくりとかき混ぜた後、磁石棒を取り出し、磁石に捕捉された金属性異物を粘着テープに移し取り、その金属性異物を300倍の光学顕微鏡で観察し、その粒径毎の個数を測定した。この結果を表1の実施例1として示す。
【0037】
(比較例1)
上述した市販の無機充填材中の金属性異物の量を評価するため、実施例1に記載の方法により評価した結果を表1の比較例1として示す。
【0038】
(実施例1と比較例1の結果の比較)
実施例1と比較例1の結果を比較すると、比較例1より実施例1の方が、各粒径で金属性異物の個数が減少していることがわかった。この結果より、第1の実施形態に係る無機充填材の絶縁性改善方法の効果があることがわかった。
【0039】
(比較例2)
第1の実施形態の評価方法において、無機充填材を純水に分散させた分散液の粘度が150Pa・sとなるように調整する他は実施例1と同様とした。この結果を表1の比較例2として示す。
【0040】
(実施例1と比較例2の結果の比較)
実施例1と比較例2の結果を比較すると、比較例2より実施例1の方が各粒径で金属性異物の個数が減少していることがわかった。この結果より、第1の実施形態において無機充填材を純水に分散させた分散液の粘度が150Pa・sの場合は金属性異物の除去効果が良好でなく、100Pa・sとすることにより無機充填材の絶縁性改善方法の効果が大きくなることがわかった。
【0041】
(実施例2)
第1の実施形態の評価方法において、無機充填材を純水に分散させた分散液の粘度が20Pa・sとなるように調整する他は実施例1と同様とした。この結果を表1の実施例2として示す。
【0042】
(実施例1と実施例2の結果の比較)
実施例1と実施例2の結果を比較すると、実施例1より実施例2の方が各粒径で金属性異物の個数が減少していることがわかった。この結果より、第1の実施形態において無機充填材を純水に分散させた分散液の粘度が20Pa・sとすることにより、無機充填材の絶縁性改善方法のより大きな効果が得られることがわかった。
【0043】
(実施例3)
第2の実施形態の評価方法において、分散媒として純水を使用し、無機充填材を純水に分散させ、この分散液の粘度を20Pa・sとなるように調整した。次に、分散液を開口径24μmのテトロン製のフィルターによって濾過し、金属性異物を除去した。さらに追加して、容器に入っている分散液全体を5000Gの磁石棒で30分間ゆっくりとかき混ぜた後、磁石棒を取り出し、容器に入った分散液を160℃で24時間加熱し、分散媒を揮発させて、残存した無機充填材を回収した。そして、実施例1に記載の方法により無機充填材中の金属性異物の量を評価した。この結果を表1の実施例3として示す。
【0044】
(実施例2と実施例3の結果の比較)
実施例2と実施例3の結果を比較すると、実施例2より実施例3の方が金属性異物の個数が減少していることがわかった。この結果より、分散液と磁石との相対的な移動により分散液全体に磁力を作用させ、磁石表面に金属性異物を捕捉する前に、無機充填材分散後の分散液をフィルターに通した方が、金属性異物の除去が効率的に行われ、絶縁性改善方法の効果がより大きくなることがわかった。
【0045】
(比較例3)
分散媒として純水を使用し、無機充填材を10倍の重量の分散媒に分散させ、この分散後の分散液をフィルターに通すことによって濾過し、金属性異物を除去した。次に、金属性異物除去後の分散液を160℃で24時間加熱し、分散媒を揮発させて、残存した無機充填材を回収した。そして、実施例1に記載の方法により無機充填材中の金属性異物の量を評価した。この結果を表1の比較例として示す。
【0046】
(実施例3と比較例3の結果の比較)
実施例3と比較例3の結果を比較すると、比較例3より実施例3の方が金属性異物の個数が減少していることがわかった。この結果より、比較例3に記載したようなフィルターによる金属性異物の除去を単独で行うより、分散液と磁石との相対的な移動により分散液全体に磁力を作用させ、磁石表面に金属性異物を捕捉する前に、分散液をフィルターに通した方が金属性異物の除去が効率的に行われ、絶縁性改善方法の効果がより大きくなることがわかった。
【0047】
(実施例4)
第3の実施形態と同様の手順において、分散媒として純水を使用し、無機充填材を純水に分散させ、この分散液の粘度を20Pa・sとなるように調整した。次に、分散液全体を5000Gの磁石棒で30分間ゆっくりとかき混ぜた後、磁石棒を取り出し、容器に入った分散液を160℃で24時間加熱し、分散媒を揮発させて、残留した無機充填材を回収した。
【0048】
さらに、回収した無機充填材を耐熱性の容器に入れ、電気炉を用いて900℃で24時間加熱した後、無機充填材を回収した。そして、実施例1に記載の方法により無機充填材中の金属性異物の量を評価した。この結果を表1の実施例4として示す。尚、無機充填材を加熱した後の無機充填材中の金属性異物とは、非導電性であるもの以外のものとした。非導電性であるかどうかの判定は、金属性異物粒子の光沢のないものが酸化鉄である三価の鉄Fe3+であることから、光沢のないものを非導電性とし、光沢のあるものを導電性とすることによって行った(以下の各実施例においても同じとする。)。
【0049】
(実施例2と実施例4の結果の比較)
実施例2と実施例4の結果を比較すると、実施例2より実施例4の方が金属性異物の個数が減少していることがわかった。この結果より、無機充填材が分散している分散液全体に磁力を作用させ磁石表面に金属性異物を捕捉し、分散液を加熱し、分散媒を揮発させて、残留した無機充填材を回収した後に、さらに、回収した無機充填材を焼成する工程を追加して行った方が、金属性異物の除去が効率的に行われ、絶縁性改善方法の効果がより大きくなることがわかった。
【0050】
(比較例4)
上述した市販の無機充填材を耐熱性の容器に入れ、電気炉を用いて900℃で24時間加熱した後、無機充填材を回収した。そして実施例1に記載の方法により無機充填材中の金属性異物の量を評価した。この結果を表1の比較例4として示す。尚、無機充填材を加熱した後の無機充填材中の金属性異物とは、実施例4と同様に非導電性であるもの以外のものとした。
【0051】
(実施例4と比較例4の結果の比較)
実施例4と比較例4の結果を比較すると、比較例4より実施例4の方が金属性異物の個数が減少していることがわかった。この結果より、無機充填材が分散している分散液全体に磁力を作用させ磁石表面に金属性異物を捕捉し、分散液を加熱し、分散媒を揮発させて、残存した無機充填材を回収した後に、さらに、回収した無機充填材を焼成する工程を追加して行った方が、金属性異物の除去が効率的に行われ、比較例4に記載したような金属性異物を焼成することによる金属性異物の除去を単独で行うより、絶縁性改善方法の効果がより大きくなることがわかった。
【0052】
(実施例5)
第4の実施形態と同様の手順において、分散媒として純水を使用し、無機充填材を純水に分散させ、この分散液の粘度を20Pa・sとなるように調整した。次に、無機充填材分散後の純水を開口径24μmのテトロン製のフィルターによって濾過し、金属性異物を除去した後、容器に入っている分散液全体を5000Gの磁石棒で30分間ゆっくりとかき混ぜ、磁石棒を取り出し、容器に入った分散液を160℃で24時間加熱し、分散媒を揮発させて、残存した無機充填材を回収した。さらに、回収した無機充填材を耐熱性の容器に入れ、電気炉を用いて900℃で24時間加熱し、無機充填材を回収した。そして、実施例1に記載の方法により無機充填材中の金属性異物の量を評価した。この結果を表1の実施例5として示す。
【0053】
(実施例5と上記各実施例の結果の比較)
実施例5と上記各実施例の結果を比較すると、上記各実施例のどの実施例よりも実施例5の方が無機充填材中の絶縁性改善方法の効果が大きいことがわかった。この結果より、容器に入った無機充填材を分散させた分散液をフィルターに通し、分散媒に分散している無機充填材全体に磁石の磁力を作用させ磁石表面に金属性異物を捕捉し、分散液を加熱し、分散媒を揮発させて、残存した無機充填材を回収した後、さらに、回収した無機充填材を焼成する工程を追加して行った方が、金属性異物の除去が効率的に行われ、無機充填材の絶縁性を格段に改善することができる。
【0054】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止材料に配合する無機充填材の絶縁性改善方法であって、
無機充填材を容器中の分散媒に分散させる無機充填材分散ステップと、
前記分散媒に前記無機充填材を分散させた分散液と磁石との相対的な移動により前記分散液全体に磁力を作用させ、前記無機充填材に混入している金属性異物を前記磁石に捕捉させる金属性異物捕捉ステップと、
前記分散液を加熱して前記分散媒を揮発させ、残存する前記無機充填材を回収する無機充填材回収ステップとを備えることを特徴とする無機充填材の絶縁性改善方法。
【請求項2】
前記無機充填材を前記分散媒に分散させた分散液粘度を1〜100Paとすることを特徴とする請求項1に記載の無機充填材の絶縁性改善方法。
【請求項3】
前記金属性異物捕捉ステップは、前記分散媒を棒状の永久磁石でかき混ぜるステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の無機充填材の絶縁性改善方法。
【請求項4】
前記無機充填材分散ステップと前記金属性異物捕捉ステップとの間に、
前記分散液をフィルターに通過させる濾過ステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の無機充填材の絶縁性改善方法。
【請求項5】
前記フィルターは、前記無機充填材の最大粒径より大きな開口径を有することを特徴とする請求項4に記載の無機充填材の絶縁性改善方法。
【請求項6】
前記無機充填材回収ステップの後に、
前記無機充填材を加熱して酸化させる焼成ステップを更に備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の無機充填材の絶縁性改善方法。

【公開番号】特開2006−273927(P2006−273927A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91870(P2005−91870)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】