説明

無機微粒子粉体の製造方法、有機無機複合材料及び光学素子

【課題】有機無機複合材料の作製時の発泡及び凝集の少ない無機微粒子粉体の製造方法及び本発明の無機微粒子粉体を用いて作製された有機無機複合材料と光学物性透明性に優れ、かつ熱安定性に優れた光学素子を提供する。
【解決手段】大気中10℃/minの昇温速度で300℃までの加熱した際、80質量%以上が熱分解されない高分子材料と、少なくとも表面にSiO2層を含有する無機微粒子とを混合した後、乾燥し、焼成して無機微粒子粉体を製造することを特徴とする無機微粒子粉体の製造方法、該無機微粒子粉体を用いて作製された有機無機複合材料と光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物、水酸化物または酸化水酸化物により形成された無機微粒子を含む有機無機複合材料及びそれを用いた光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、単に「媒体」ともいう。)に対して、情報の読み取りや記録を行うプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光学素子ユニットは、これらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
【0003】
光ピックアップ装置に適用する光学素子は、射出成形等の手段で、より安価に作製できる等の観点から、プラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体等が知られている。
【0004】
プラスチックを材料として適用した光学素子ユニットにおいては、ガラスレンズのような光学安定性を有する特性を備えていることが求められている。例えば、環状オレフィンのような光学用プラスチック材料は、従来、レンズ用のプラスチック材料として用いられてきたポリメチルメタクリレート(PMMA)に比べて吸水率が極めて低く、吸水による屈折率の変化が大幅に改善されている。しかしながら、光学特性の温度依存性については未だ解決されておらず、屈折率の温度依存性は、ガラスレンズに用いられている無機ガラスより一桁以上大きいのが現状である。
【0005】
上記のような光学用プラスチック材料の欠点を改良する方法の1つとして、プラスチック素材に対して無機微粒子等のフィラーを混合することで、屈折率の温度依存性の改良と共に、剛性、耐熱性等の物性改良が図られてきた。通常、光学用プラスチックとして使用される樹脂組成物と無機微粒子とを適用した場合、無機微粒子に対して適切な表面処理を行うとともに高い光線透過率を維持する。そのため、光学用プラスチックと無機微粒子の屈折率をなるべく近づけ、かつ一次粒子径がナノオーダーの無機微粒子を使用する必要がある。通常光学用プラスチック材料は屈折率が1.5〜1.6程度であり、無機微粒子の中でも、高屈折無機材料(Al23、TiO2等)に対して低屈折無機材料SiO2を被覆したものが屈折率や表面処理、粒度分布の面で有用な材料と考えられて(例えば、特許文献1参照)いる。
【0006】
しかしながら、通常レンズ材料として用いられるシクロオレフィンポリマー(COP)と液相法で作製されたSiO2層を表面に含む無機微粒子を混合した場合、乾燥及び樹脂との加熱混合時に粒子内に含まれる水分による気泡の発生や、シラノール残基による粒子成長が発生しレンズ材料中の散乱成分が多くなるといった課題が発生する。
【0007】
一方、気相法で作製されたSiO2は作製時に高温にさらされる為、シラノール残基が少なく、樹脂との加熱混合時に気泡の発生や粒子成長を起こしにくい。そのため、樹脂材料と加熱混合して作製したレンズ材料は散乱成分が少なくなる(例えば、特許文献2参照)といった利点がある。しかしながら、気相法粒子は作製できる複合粒子の種類が限られ、屈折率が1.5〜1.6といった高屈折樹脂材料に適した均一粒子を作製することは難しい。
【特許文献1】特開2006−219356号公報
【特許文献2】特開2004−2605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液相中において作製された少なくとも表面にSiO2層を有する無機微粒子と光学用樹脂材料を加熱混合する場合において、気泡の発生及び一次粒子径の増大を抑制し透明性に優れた有機無機複合材料の作製が求められている。
【0009】
本発明の目的は、上記有機無機複合材料を製造する場合、光学用樹脂材料との加熱/溶融混合時に無機粉体の一次粒子径が増大せず、光学用樹脂材料との混合時に透明性が確保される無機微粒子粉体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決するべく検討を行い、その乾燥/加熱混合過程の前処理で粒子分散性に優れ、耐熱温度が高い高分子材料と表面にSiO2層を有する無機微粒子とを混合し、乾燥後、250〜550℃で焼成することで無機微粒子粉体を作製した。ついで、光学用樹脂材料と混合することで、一次粒子径の増大が少なく、気泡の発生が抑制され透明性に優れた有機無機複合材料が製造できることを確認した。
【0011】
本発明において具体的には、下記の手段により解決される。
【0012】
1.大気中10℃/minの昇温速度で300℃までの加熱した際、80質量%以上が熱分解されない高分子材料と、少なくとも表面にSiO2層を含有する無機微粒子とを混合した後、乾燥し、焼成して無機微粒子粉体を製造することを特徴とする無機微粒子粉体の製造方法。
【0013】
2.前記高分子材料の含有量が前記無機微粒子100質量部に対して10乃至200質量%の範囲であることを特徴とする前記1に記載の無機微粒子粉体の製造方法。
【0014】
3.前記焼成温度が250〜550℃であることを特徴とする前記1又は2に記載の無機微粒子粉体の製造方法。
【0015】
4.前記1〜3のいずれか一項に記載の無機微粒子粉体の製造方法によって作製されたことを特徴とする有機無機複合材料。
【0016】
5.前記4に記載の有機無機複合材料を用いて作製されたことを特徴とする光学素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記手段により、光学物性の優れた有機無機複合材料の製造方法及び当該有機無機複合材料を用いて作製された光学物性及び透明性に優れ、かつ熱安定性に優れた光学素子を提供することができる。
【0018】
具体的には、少なくとも表面にSiO2層を含む無機微粒子と粒子分散性に優れ、耐熱温度が高い高分子材料とを混合した後、乾燥し、250〜550℃で焼成を行い、その後、光学用樹脂材料中に混合することにより有機無機複合材料を作製した。その結果、樹脂材料中のヘイズを大幅に抑制できる。この有機無機複合材料を光学素子に適用することにより、光学物性及び透明性に優れ、かつ熱安定性に優れた光学素子を実現できる。すなわち、本発明の有機無機複合材料は、レンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路などとして好適に用いられ、光学物性及び透明性に優れ、かつ熱安定性に優れた光学素子として好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を更に詳しく説明する。
【0020】
本発明の無機微粒子粉体の製造方法は、シクロオレフィンポリマーを代表とする光学用樹脂材料中に、水酸基を有するSiO2層で被覆された無機微粒子を混合する。その際、ヘイズの要因となる微細な気泡や粒子の凝集を抑制するため高耐熱バインダーと混合した後、乾燥し250〜550℃で焼成することで製造されることを特徴とする。
【0021】
ここで、「80質量%以上が熱分解されない」とは、バインダー樹脂5mgを熱減量分析(TG)装置で昇温速度10℃/min、大気圧雰囲気下で室温より500℃まで昇温されたときの熱減量率より求める。
【0022】
上記特徴は、請求項1〜5に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0023】
水酸基を有するSiO2層で被覆された無機微粒子を焼成せずに200〜250℃で熱可塑性光学用樹脂材料と溶融混合する場合、粒子内部水分由来の微細気泡や表面シラノール基の基づく粒子の凝集に伴い発生する粗大粒子によりヘイズが発生する。その結果、有機無機複合材料の光線透過率の低下が発生することが明らかとなった。また熱可塑性樹脂ではなく硬化性樹脂と無機微粒子を混合した場合も、混合後に200℃以上の昇温工程を経る場合には同様の課題が発生する。
【0024】
そこで300℃で80質量%以上が熱分解されない高耐熱バインダーを用いて該無機微粒子を乾燥し、250〜550℃で焼成した場合、上記混合時に発生する水分の流出量を抑制するとともに、バインダー及び無機微粒子が高温時に保持されている。その結果、粒子凝集を抑制しつつ、混合時に解砕できる程度の易凝集を有する無機微粒子となり、それを用いることで光線透過率に優れた有機無機複合材料及び光学素子を得ることができたものである。
【0025】
以下、本発明とその構成要素等について詳細な説明をする。
【0026】
《無機微粒子》
本発明に係る無機微粒子粉体は、後述する光学用樹脂材料と混合することで有機無機複合材料を製造するために使用されることを特徴とする。
【0027】
本発明の無機微粒子粉体は少なくとも表面にSiO2層を含む無機微粒子であり、コア部分は他の無機成分であっても、またSiO2であってもよい。また最外表面にSiO2以外の無機成分も存在してもよい。
【0028】
以下は表面のSiO2層以外の無機微粒子の製造方法であるが、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。一般的な調製方法としては、熱分解法(原料を加熱分解して微粒子を得る方法:噴霧乾燥法、火炎噴霧法、プラズマ法、気相反応法、凍結乾燥法、加熱ケロシン法、加熱石油法等)、沈殿法(共沈法)、加水分解法(塩水溶液法、アルコキシド法、ゾルゲル法等)、水熱法(沈殿法、結晶化法、水熱分解法、水熱酸化法等)などが挙げられる。このうち、熱分解法や、沈殿法、加水分解法は体積分散粒径30nm以下の無機微粒子を作製する点で好ましい。また、これらの手法を複数組み合わせることも好ましい。
【0029】
具体的な製造方法例として酸化ケイ素の作製方法を挙げると、フッ化珪素、塩化珪素、臭化珪素といったハロゲン化珪素やアルコキシシランを原料に用い、水を含有する反応系で加水分解することにより、酸化物微粒子を得ることができる。この際、微粒子の安定化のため、有機酸や有機アミンなどを併用する方法も用いられる。
【0030】
また、通常酸化物微粒子作製によく用いられる酸素を含む雰囲気内においてバーナにより化学炎を形成し、この化学炎中に金属粉末を粉塵雲を形成しうる量投入して燃焼させて、酸化物微粒子5〜30nmを合成する方法や、特開2005−218937号公報のように原料気体流と酸素ガスの反応により気相中で所望の酸化物微粒子を得ることもできる。
【0031】
本発明に適用可能な無機微粒子は、その体積平均分散粒径が30nm以下であることが好ましく、1nm以上、30nm以下であることがより好ましく、更に好ましくは1nm以上、10nm以下である。体積平均分散粒径が1nm以上であれば、無機微粒子の分散性を確保することができ、所望の性能を得ることができる。また、体積平均分散粒径が30nm以下であれば、得られる無機微粒子分散樹脂組成物の良好な透明性を得ることができ、光学素子として光線透過率で70%以上を達成することができる。ここでいう体積平均分散粒径とは、分散状態にある無機微粒子を、同体積の球に換算した時の直径を言う。本発明でいう体積平均粒径は、TEM/EDXを用いて測定して求めることができる。
【0032】
本発明において用いることのできる無機微粒子の形状は、特に制限されるものではないが、流動性の観点より、好適には球状の無機微粒子が用いられる。また、粒径分布に関しても特に制限されるものではないが、安定性の観点より広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。微粒子は、その一部またはすべてが非晶質として存在していても良い。
【0033】
〈使用される無機微粒子の種類〉
本発明で用いることのできる無機微粒子としては特に限定はなく、無機微粒子を含有することでの透明性維持/物性向上という目的が達成可能である無機微粒子の中より適宜選択可能である。具体的には酸化物微粒子・半導体微粒子・金属塩微粒子等が挙げられ、この中でも光学素子として使用する波長領域において吸収、発光及び蛍光等が生じないものが好ましく用いられる。
【0034】
酸化物微粒子としては、金属酸化物を構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属である金属酸化物を用いることができ、具体的には、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl24)等が挙げられる。
【0035】
その他の酸化物微粒子として希土類酸化物を用いることもでき、具体的には酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等も挙げられる。金属塩微粒子としては、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられ、具体的には炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0036】
半導体微粒子とは、半導体結晶組成の微粒子を意味し、該半導体結晶組成の具体的な組成例としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体、炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、酸化錫(IV)(SnO2)、硫化錫(II,IV)(Sn(II)Sn(IV)S3)、硫化錫(IV)(SnS2)、硫化錫(II)(SnS)、セレン化錫(II)(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アルミニウム(Al23)、セレン化アルミニウム(Al2Se3)、硫化ガリウム(Ga23)、セレン化ガリウム(Ga2Se3)、テルル化ガリウム(Ga2Te3)、酸化インジウム(In23)、硫化インジウム(In23)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化インジウム(In2Te3)等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化砒素(III)(As23)、セレン化砒素(III)(As2Se3)、テルル化砒素(III)(As2Te3)、硫化アンチモン(III)(Sb23)、セレン化アンチモン(III)(Sb2Se3)、テルル化アンチモン(III)(Sb2Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi23)、セレン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマス(III)(Bi2Te3)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(Cu2O)、セレン化銅(I)(Cu2Se)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe34)、硫化鉄(II)(FeS)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta25)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化チタン(TiO2、Ti25、Ti23、Ti59等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr24)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2Se4)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr24)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCr2Se4)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO3)等が挙げられる。なお、G.Schmidら;Adv.Mater.,4巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75(BF21515や、D.Fenskeら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1452頁(1990)に報告されているCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されている半導体クラスターも同様に例示される。
【0037】
〈複数種の無機微粒子〉
これらの無機粒子は、屈折率低下効果の減少または防止を目的として、1種類の無機粒子を用いてもよく、また複数種類の無機粒子を併用してもよい。また、複合組成の無機粒子を用いることも可能である。具体的な形態としては、コアシェル型、複合型、混合型などが挙げられる。
【0038】
《SiO2で被覆した無機微粒子》
本発明の無機微粒子は表面着色を防止するともに、シラノール基と反応性の優れた表面処理剤を用いることで容易に表面改質できることから、本発明の無機微粒子は少なくとも表面の一部にSiO2層を有することを特徴とする。SiO2層とはシラノール基を有する無機シリカであれば特に制限はなく、クロロシランを気相中で高温分解してシリカ層を作製する方法や、テトラエトキシシラン(以下TEOS)を液相中で加水分解することで無機微粒子の表面にSiO2層を作製することができる。
【0039】
《高分子材料》
本発明の高分子材料は、粒子凝集を抑制しつつ、有機無機複合材料作製時と同等かそれ以上の温度に加熱することで作製時の発泡及び凝集を抑制することを目的とする。
【0040】
本発明の高分子材料は、好ましくは大気中雰囲気において10℃/minの昇温速度で300℃までの加熱条件において80質量%以上が熱分解されないことが好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。
【0041】
SII社製熱分析装置(EXSTAR6000 TG/DTA)を用いて、バインダー樹脂5mgを熱減量分析(TG)装置で昇温速度10℃/min、大気圧雰囲気下で室温より500℃まで昇温されたときの熱減量率より上記80質量%以上か否かを求めた。
【0042】
高分子バインダーの種類については特に制限はないが、粒子分散性、高耐熱性、増粘性などが必要であり、特に液相中で作製したSiO2層とはポリ(2−メチル2−オキサゾリン)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ−N−ビニルアセトアミドなどが好適に用いられる。
【0043】
(焼成条件)
焼成雰囲気は特に制限はない。昇温速度は焼成炉の種類により異なり一義的ではないが、約50℃/分〜約300℃/時間である。焼成温度は粒子内除去の為250乃至550℃が好ましく、水分表面シラノール基の減少のためには400乃至550℃、更に好ましくは450℃乃至550℃である。
【0044】
600℃以上になるとシラノール基の脱水縮合反応が急速に進むと同時に高分子バインダーが分解されるため粒子の凝集が強固になる可能性があり、溶融混練工程でも解凝集できない可能性がある。
【0045】
本発明に使用する焼成炉は公知の装置を利用でき特に制限はないが、通常静置式、流動式、媒体流動式焼成炉、トンネル炉、遠赤外線焼成炉、マイクロ波焼成炉、通気焼成炉、シャフト炉等を用いることができる。
【0046】
特に短時間高温焼成を行う為、市販の噴霧熱分解装置が好ましく用いられる。無機微粒子を焼成する焼成時間は好ましくは60min以内、更に好ましくは30min以内である。60min以上である場合、無機微粒子表面のシラノール基が縮合することで粒子同士凝集が進行し一次粒子径の維持が困難になる。
【0047】
焼成後の高分子バインダーは熱可塑性樹脂との相溶性の観点より完全に除去することがこのましく、流動大気雰囲気中での脱脂や溶媒での洗浄などが挙げられる。
【0048】
〈無機微粒子の表面処理方法〉
本発明の無機微粒子は表面修飾を行うことで各種樹脂材料との親和性を向上させることができる。上記方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、水が存在する条件下で加水分解により微粒子の表面に修飾する方法が挙げられる。この方法では、酸またはアルカリなどの触媒が好適に用いられ、微粒子表面の水酸基と、表面修飾剤が加水分解して生じる水酸基とが、脱水して結合を形成することが一般に考えられている。
【0049】
無機微粒子の表面改質の方法としては、カップリング剤等の表面修飾剤による表面処理、ポリマーグラフト、メカノケミカルによる表面処理などが挙げられる。
【0050】
無機微粒子の表面改質に用いられる表面修飾剤としては、シラン系カップリング剤を始め、シリコーンオイル、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。これらは特に限定されず、無機微粒子および無機微粒子を分散する光学用樹脂の種類により適宜選択することが可能である。また、各種表面処理を二つ以上同時又は異なる時に行っても良い。
【0051】
具体的には、例えば、シラン系の表面処理剤として、ビニルシラザン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられ、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好ましく用いられる。
【0052】
シリコーンオイル系処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルを用いることができる。
【0053】
またこれらの処理剤はヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン水等で適宜希釈して用いても良い。
【0054】
表面修飾剤による表面処理の方法としては、湿式加熱法、湿式濾過法、乾式攪拌法、インテグルブレンド法、造粒法等が挙げられる。50nm以下の微粒子を表面改質する場合、乾式攪拌法が粒子凝集抑制の観点から好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
これらの表面修飾剤は1種類のみを用いても、複数種類を併用してもよく、さらに、用いる表面修飾剤によって得られる表面修飾微粒子の性状は異なることがある。よって、樹脂組成物を得るにあたって用いる光学用樹脂との親和性を、表面修飾剤を選ぶことによって図ることも可能である。表面修飾の割合は特に限定されるものではないが、表面修飾後の微粒子に対して、表面修飾剤の割合が10〜99質量%であることが好ましく、30〜98質量%であることがより好ましい。
【0056】
〈無機粒子の屈折率〉
光学素子として使用される樹脂材料の屈折率は、ナトリウムD線(25℃)を光源として測定した屈折率nd25が1.5乃至1.7付近であるものが多く、用いられる無機微粒子の屈折率としては、nd25を1.5乃至1.7の範囲に調整することが好ましい。
【0057】
本発明で用いられる無機微粒子の屈折率(n1)は、光学素子として用いられる有機無機複合材料の屈折率(n2)とした場合光学素子に要求される光線透過率の観点からn1〜n2が0.1以下が好ましい。より好ましくは0.03以下、最も好ましくは0.01以下である。
【0058】
上記屈折率を測定する方法としてEDXによる元素分析から算出する方法、ASTMD542に準拠した方法、ベッケ線法及び分散法などがあるが、本発明ではEDXにより直接算出した値を用いた。
【0059】
〈無機粒子の吸水率〉
基本的に表面処理を行っていない無機粒子の吸水率は5〜20質量%であり、適切な表面処理された粒子でも0.1〜3質量%の吸水を持つ。液相法により作製された粒子のように、焼成工程を伴わない無機微粒子は、作製溶液中でイオンに水和していた水分子の一部が、配位結合や水素結合、分子間力により溶質粒子と強く結びつき、結晶格子内に取り込まれたままとなる。
【0060】
結晶水の乖離温度は高く、150℃以上でも粒子内に残存することが多く、加熱や混合により容易に脱水しうる。加熱水蒸気は樹脂熱劣化による光線透過率低下や、添加剤の抽出による耐候性低下、更には及び混練装置内の汚れ抽出による光学素子汚染などが懸念される。
【0061】
光学素子として適用される有機無機複合材料へ混合する無機微粒子では以上の観点より吸水率は好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、もっとも好ましくは0.2質量%以下が望ましい。
【0062】
《有機無機複合材料の作製》
(マスターバッチ)
本発明で用いられる無機微粒子は一次粒径が小さく、飛散し易いため光学用樹脂をバインダーとして用いたマスターバッチの形で、光学用樹脂と混合し有機無機複合材料を作製する方法が用いられる。バインダーとして用いられるものは、最終的な光学用樹脂との親和性や粒子分散性などを考慮して適宜用いられる。本発明においては、マスターバッチ用バインダーとして光学素子用樹脂(ホスト材料)、HALS等添加剤及びその混合物が好ましく用いられる。
【0063】
(マスターバッチ混合方法)
本発明のマスターバッチの製造においては、二軸混練機、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、スクリューブレンダー、リボンブレンダーなど公知の方法が適応できるが、特に混合トルクが大きく、雰囲気制御が容易で連続して有機無機複合材料を作製できる二軸混練機が好適に用いられる。最終的な有機無機複合材料中の無機微粒子濃度よりも高濃度であればよく、例えば、樹脂組成物であるバインダー樹脂100体積部に対する無機微粒子の配合量は、25体積部以上、300体積部以下であることが好ましい。25体積部より小さいと生産性が悪くなるとともに、最終的に光学素子として作製した場合、無機微粒子の体積比率が低下し、その効果が十分に発揮されない。また、300体積部より大きいと、バインダーとしての樹脂が不足し、均一な組成ができず、無機微粒子とバインダーとの間の界面の密着力が不十分となり、空隙を発生する。このような空隙が含まれるマスターバッチを使用して光学素子を製造した場合、空隙に含まれる酸素による樹脂の劣化が発生したり、空隙内の空気による水分が気泡として光学素子中に存在したりすることで、光線透過率が低下するため、光学素子として欠陥となる。
【0064】
マスターバッチ作製においては、樹脂組成物へのダメージが少なく、均一に混合することができる観点から、湿式混合方式が望ましい。湿式混合方式の他の利点としては、粉末飛散の防止や操作利便性、分散性向上などが挙げられる。ただし、具体的に用いられる液体あるいは溶液量は用いる無機微粒子及びバインダー組成によって適宜選択される。
【0065】
適用可能な溶媒としては、バインダーが溶解するものであれば良く、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ヘプタノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−t−ブチル、酢酸−n−ブチル、酢酸−n−ヘキシル等のエステル類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。また、これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0066】
使用する溶媒の大気圧時の沸点に関して、好ましくは30〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。沸点が30℃未満であると、取り扱い上危険である。また、沸点が150℃より高いと、溶媒除去が困難であるばかりか、分解物の残留や加熱の影響で最終生成物に悪影響を与える。
【0067】
本発明のマスターバッチを調製する際に使用される溶媒量は、バインダーが溶解する範囲内であれば特に制限されないが、バインダー100質量部に対して溶媒500〜2000質量部が好ましい。溶媒が500質量部未満である場合、バインダーがすべて溶解せずマスターバッチ組成が不均一になる恐れがある。また、2000質量部超の場合、生産性が低下するとともに湿式混合時に十分なトルクが得られず、調製したマスターバッチ組成が不均一になる恐れがある。マスターバッチ作製時に残留溶媒量が50ppm以上である場合、有機無機複合材料のTg低下の要因となる為除去するのが望ましい。
【0068】
溶媒除去を行いながらマスターバッチを作製する装置として二軸混合装置が望ましい。特に、無機微粒子の吸湿を防ぐと同時に溶媒除去を行う為、ベント装置が好ましい。
【0069】
また、混合時に使用する溶媒は、最終的なマスターバッチへの影響や経済性の観点から、その揮発残留分は総体積の2%以下であるのが好ましい。また、マスターバッチ調製時に不要な溶媒を乾燥除去することで、残留溶媒の最終製品への影響を抑制することができる。
【0070】
《有機無機複合材料中の無機微粒子》
最終的な有機無機複合材料中に含まれる無機微粒子体積比率は1〜70vol%、好ましくは10〜50vol%である。有機無機複合材料の無機微粒子含有量が1vol%以下の場合、望まれる物性向上が得られない可能性がある。また、有機無機複合材料の無機微粒子含有量が70vol%以上の場合、経済性や成形性において問題となる。
【0071】
(光学用樹脂)
本発明における樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂など、光学材料として一般的に用いられる透明樹脂であれば、特に限定されることなく用いることができる。
【0072】
(熱可塑性樹脂)
本発明のマスターバッチ及び有機無機複合材料中に添加する熱可塑性樹脂(ホスト材料)は、オレフィン系樹脂が好ましく、特に環状オレフィン樹脂が望ましい。例えば三井化学 特開2003−73559号公報段落番号0031〜0036に記載の範囲にあるものであれば、その他既往の樹脂をもちいてもよい。
【0073】
本発明において用いる熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が80℃以上350℃以下であることが好ましく、100℃以上300℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が80℃未満であると、十分な耐熱性が得られない恐れがあり、またガラス転移温度が350℃を超えると、成形加工する際に高温が必要となり、プロセス的に不利となるばかりでなく、材料が変色する等の問題が生じる恐れがある。
【0074】
光線透過率は70%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。密度は0.9g/cm3以上2.0g以下が好ましく、0.9g/cm3以上1.5g以下がより好ましい。
【0075】
本発明における熱可塑性樹脂とは、ある温度範囲で加熱により軟化し、その軟化した状態で成形や押し出し等により製品加工ができることを示す。具体的には、例えば、加熱状態でプレスすることにより、0.1〜5000μm程度の厚さを有するフィルムを成形できる性能を有する。また、本発明における溶融成形が可能な熱可塑性樹脂とは、熱的に安定な温度域で溶融成形が可能な溶融粘度を有しており、押し出しや射出等により成形加工ができることを示す。具体的には、例えば、空気中において加熱により樹脂の5質量%が減少する温度、すなわち5%質量減少温度に比べ、1〜100パスカル・秒程度の溶融粘度を有する温度が30℃以上、好ましくは50℃以上低いことをいう。溶融成形性を有することにより、押し出し成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、積層成形等が可能となり、ディスク、ファイバー等の様々な成形体を得ることができる。
【0076】
具体的には、本発明において用いる熱可塑性樹脂は、上述の光学特性を満たすものであり、より好ましくはさらに、上述のガラス転移温度、光線透過率、密度、及び樹脂加工性(熱可塑性及び/または溶融成形性)をも満たす樹脂である。例えば、アクリル樹脂、環状脂肪族鎖を有するポリカーボネート樹脂、環状脂肪族鎖を有するポリエステル樹脂、環状脂肪族鎖を有するポリエーテル樹脂、環状脂肪族鎖を有するポリアミド樹脂、または環状脂肪族鎖を有するポリイミド樹脂等が挙げられる。より具体的には、例えば、表1記載の化学式(3)〜(14)で示される構造骨格を有する樹脂を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
【表1】

【0078】
また、環状脂肪族鎖の一部を芳香環に置き換えた共重合体を用いることもでき、硫黄を結合鎖などに一部含んだチオカーボネートやチオエステル、チオエーテル等も好適に用いることができる。なお、芳香環や硫黄はアッベ数の低減を伴うことがあるので、本発明で提示している熱可塑性樹脂の光学特性を外れない範囲で選択することが重要である。
【0079】
本発明において用いる熱可塑性樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法を用いることもできる。また樹脂に含まれる不純物の種類及び量についても、特に制限されるものではないが、用途によっては不純物が本発明の効果を損なう恐れがあるので、総不純物量は1質量%以下、特にナトリウムや塩素などのイオン性不純物は0.5質量%以下であることが望ましい。
【0080】
本発明において用いる熱可塑性樹脂の分子量は、特に限定されるものではなく、用途や加工方法に応じ、任意の分子量とすることができるが、成形加工性を勘案すると、樹脂を0.5g/100ミリリットルの濃度で溶解可能な溶剤に溶解した後の35℃で測定した対数粘度の値が、0.1〜3.0デシリットル/gであることが好ましい。
【0081】
本発明の熱可塑性樹脂は、構成単位の繰り返しに特に制限はなく、交互構造、ランダム構造、ブロック構造等のいずれの場合でも良い。また、通常用いられる分子形状は線状であるが、分岐している形状を用いても良い。また、グラフト状でも良い。
【0082】
その他、本発明において用いる熱可塑性樹脂として、特公平7−121981号公報に開示されている開環重合体水素添加物などを挙げることができる。
【0083】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂材料においては、吸水率が0.2質量%以下であることが好ましい。吸水率が0.2質量%以下の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)AF(デュポン社製)、サイトップ(旭硝子社製)等)、環状オレフィン樹脂(例えば、ZEONEX(日本ゼオン社製)、アートン(JSR社製)、アペル(三井化学社製)、TOPAS(チコナ社製)等)、インデン/スチレン系樹脂、ポリカーボネートなどが好適であるが、これらに限るものではない。また、これらの樹脂と相溶性のある他の樹脂を併用することも好ましい。本発明内で用いられる相溶性とは任意の割合で分子状態に溶け合う完全相溶と任意の組成や温度等条件下で相溶する部分相溶の状態をいう。また、2成分以上樹脂を相溶化する場合、相溶化後の樹脂は各成分の物理的及び化学的性質の平均であるか、両者の最善の特性が示される物理的及び化学的性質を有する。例えば2種以上の樹脂を用いる場合、その吸水率は、個々の樹脂の吸水率の平均値にほぼ等しいと考えられ、その平均の吸水率が0.2%以下になればよい。
【0084】
(硬化性樹脂)
本発明で用いられる硬化性樹脂としては、紫外線及び電子線照射、あるいは加熱処理の何れかの操作によって硬化し得るもので、無機微粒子と未硬化の状態で混合させた後、硬化させることによって透明な樹脂組成物を形成する物であれば特に制限なく使用でき、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン樹脂等が好ましく用いられる。一例として、以下にエポキシ樹脂とその構成組成物について説明するが、これらに限定される物ではない。
【0085】
(水素化エポキシ樹脂)
本発明に用いられる硬化性樹脂として水素化エポキシ樹脂が挙げられるが、好ましく使用されるのは芳香族エポキシ樹脂を水素化したエポキシ樹脂である。このエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3、3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ビフェノール型エポキシ樹脂又は4,4′−ビフェノール型エポキシ樹脂のようなビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、及びフェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビフェノール型エポキシ樹脂の芳香環を直接水添した水素化エポキシ樹脂が、高水添率のエポキシ樹脂が得られるという点で特に好ましい。
【0086】
また、脂環式オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂を水素化エポキシ樹脂中に5〜50質量%添加し併用することができる。特に好ましい脂環式エポキシ樹脂は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであり、この脂環式エポキシ樹脂を配合すると、エポキシ樹脂組成物の配合粘度を低下でき作業性を向上させることができる。
【0087】
(酸無水物硬化剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物中における酸無水物硬化剤は、分子中に炭素−炭素の二重結合を持たない酸無水物硬化剤が好ましい。具体的には、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、水添無水ナジック酸、水添無水メチルナジック酸、水添無水トリアルキルヘキサヒドロフタル酸、無水2,4−ジエチルグルタル酸等が挙げられる。これらの中で、無水ヘキサヒドロフタル酸又は/及び無水メチルヘキサヒドロフタル酸が耐熱性に優れ、無色の硬化物が得られる点で特に好ましい。
【0088】
酸無水物硬化剤の添加割合はエポキシ樹脂のエポキシ当量により異なるが、好ましくはエポキシ樹脂100質量部に対し、40〜200質量部の範囲内で配合される。
【0089】
(硬化促進剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物中へ、エポキシ樹脂と酸無水物の硬化反応を促進する目的で硬化促進剤を使用することができる。硬化促進剤の例としては、3級アミン類及びその塩類、イミダゾール類及びその塩類、有機ホスフィン化合物類、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ等の有機酸金属塩類が挙げられ、特に好ましい硬化促進剤は、有機ホスフィン化合物類である。添加する硬化促進剤の配合割合は、水素化酸無水物硬化剤100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲内である。この範囲を外れると、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスが悪くなるため好ましくない。
【0090】
〈樹脂添加剤〉
本発明に使用される光学用樹脂の製造工程及び加工工程においては必要に応じて様々な種類の添加剤を単独で又は組合せて使用してもよい。
【0091】
本発明に使用される添加剤について格別指定はないが、通常使用されているものとして熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、増量剤、帯電防止剤、離型剤、加工助剤各種フィラーなどが挙げられる。上記のような各種添加剤は一般に用いられており、当業者に公知である。かかる添加剤の具体例は、R.Gachter及びH.Muller,Plastics Additives Handbook,4th edition,1993に記載されている。またその範囲は発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜使用可能である。上記添加剤は上記樹脂製造工程より最終製品の加工工程までどのタイミングで添加されても良い。
【0092】
以下に各樹脂添加剤の中で主なものの具体例を挙げるが、これらに限定はされない。
【0093】
《可塑剤》
可塑剤としては、特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を挙げることができる。
【0094】
リン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、例えば、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、例えば、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、例えば、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を挙げることができる。
【0095】
《酸化防止剤》
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成形時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0096】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0097】
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス−(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0098】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0099】
《耐光安定剤》
耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤などが挙げられるが、本発明においては、レンズの透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALSと記す。)の中でも、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いたGPCにより測定したポリスチレン換算のMnが1,000〜10,000であるものが好ましく、2,000〜5,000であるものがより好ましく、2,800〜3,800であるものが特に好ましい。Mnが小さすぎると、該HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に、揮発のため所定量を配合できず、射出成形等の加熱溶融成形時に発泡やシルバーストリークが生じるなど加工安定性が低下する。また、ランプを点灯させた状態でレンズを長時間使用する場合に、レンズから揮発性成分がガスとなって発生する。逆にMnが大き過ぎると、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下し、耐光性改良の効果が低減する。したがって、本発明においては、HALSのMnを上記範囲とすることにより加工安定性、低ガス発生性、透明性に優れたレンズが得られる。
【0100】
このようなHALSの具体例としては、N,N′,N″,N′″−テトラキス−〔4,6−ビス−{ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALS等が挙げられる。
【0101】
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物などのMnが2,000〜5,000のものが好ましい。
【0102】
(光学素子)
本発明に係る光学素子は、上記の製造方法によって作製された有機無機複合材料を用いた光学素子であることを特徴とする。以下において、当該光学素子の製造方法等について詳細な説明をする。
【0103】
《光学素子の製造方法》
本発明に係る有機無機複合材料の製造方法は、無機微粒子が高度に分散した樹脂組成物を得るため、マスターバッチとホスト材料である希釈用樹脂組成物とを混合しながら溶融混練装置で剪断力を与え製造する方法が好ましく用いられる。ホスト材料である光学用樹脂は、透明性の観点からマスターバッチに用いられる樹脂組成物と同一もしくは相溶性のある樹脂を用いるのが望ましく、ガラス転移点といった熱的安定性や屈折率といった光学的安定性から同一の樹脂組成物を用いるのがより好ましい。最終的に調製される樹脂組成物に含まれる無機微粒子の割合としては、通常5〜50体積%程度である。樹脂組成物に含まれる無機微粒子の割合が大幅に少ない場合、フィラー含有により求められる物性改善効果が期待できない。また、上記で規定する割合を越える場合、混練装置中で均一な混合に時間を費やし、その結果、樹脂の劣化を招くほか、混練装置内壁面への無機微粒子分散樹脂組成物の付着が問題となる。
【0104】
また、上記樹脂との混合は、酸化による機能低下を防ぐため、大気中ではなくAr、N2等不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0105】
具体的な混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製)、ポリラボシステム(HAAKE社製)、ナノプラストミル(東洋精機製作所社製)、ナウターミキサーブス・コ・ニーダー(Buss社製)、TEM型押し出し機(東芝機械社製)、TEX二軸混練機(日本製鋼所社製)、PCM混練機(池貝鉄工所社製)、三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(以上、井上製作所社製)、ニーデックス(三井鉱山社製)、MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(以上、森山製作所社製)、バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)等が挙げられる。
【0106】
(混合条件)
本発明において、マスターバッチと樹脂組成物との混合の程度が不十分の場合には、特に、屈折率やアッベ数、光線透過率などの光学特性に影響を及ぼすことが懸念され、また、溶融成形性などの樹脂加工性にも悪影響する恐れがあるため、十分な混合を行う方が望ましい。その混合の程度は、用いる樹脂組成物の特性を十分に勘案して、方法を選択することが重要である。装置の雰囲気制御や連続生産性などを考慮に入れた場合、二軸混練機を用いるのが好ましい。その他高トルクで雰囲気制御が可能であるものであるならばローター,ニーダー等も用いることができる。
【0107】
《熱可塑性樹脂を用いた光学素子用成形体の作製方法》
本発明の有機無機複合材料を用いた光学素子の樹脂組成物の成形方法としては、格別制限されるものはないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成形物を得る為には、溶融成形法が好ましい。
【0108】
溶融成形法としては、例えば、市販のプレス成形、市販の押し出し成形、市販の射出成形等が挙げられるが、射出成形が成形性、生産性の観点から好ましい。
【0109】
成形条件は、使用目的、または成形方法により適宜選択されるが、例えば、射出成形における樹脂組成物(樹脂単独の場合または樹脂と添加物との混合物の両方がある)の温度は、成形時に適度な流動性を樹脂に付与して成形品のヒケやひずみを防止し、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、更に、成形物の黄変を効果的に防止する観点から150℃〜400℃の範囲が好ましく、更に好ましくは200℃〜350℃の範囲であり、特に好ましくは200℃〜330℃の範囲である。
【0110】
《熱硬化性樹脂を用いた光学素子用成形体の作製方法》
本発明で用いられる熱硬化性樹脂は紫外線及び電子線照射、あるいは加熱処理のいずれかの操作によって硬化し得るもので、硬化性モノマーと無機微粒子、更に必要に応じて可塑剤や酸化防止剤等の添加剤を加えた樹脂組成物を調製後、硬化させることによって得られる。
【0111】
前記樹脂組成物を硬化させる方法として、樹脂組成物が紫外線及び電子線硬化性の場合は、透光性の所定形状の金型等に必要に応じて光重合開始剤を添加した樹脂組成物を充填、あるいは基板上に塗布した後、紫外線及び電子線を照射して硬化させればよい。
【0112】
ここで用いられる光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等の光ラジカル開始剤等が挙げられる。
【0113】
一方、樹脂組成物が熱硬化性の場合は、必要に応じて熱ラジカル発生剤等の熱重合開始剤を添加した樹脂組成物を調製後、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等により熱硬化成形することができる。ここで用いられる熱重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0114】
本発明に係る成形物は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、本発明の光学素子の一つである光学用樹脂レンズとして用いられるが、その他の光学部品としても好適である。
【0115】
《光学素子への適用例》
本発明の光学素子用の有機無機複合材料は、上記の作製方法により得られるが、光学素子への具体的な適用例としては、以下のようである。
【0116】
例えば、光学レンズや光学プリズムとして、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(Digital Versatile Disc)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。
【0117】
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
【0118】
これらの中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズやレーザ走査系レンズとして好適であり、ピックアップレンズに最も好適に用いられる。
【0119】
本発明を用いて作製された光学素子用の有機無機複合材料は優れた温度特性を有し、青紫色レーザ光源を用いた高密度な光ディスク用レンズとして好適に用いられる。
【0120】
上述した成形物の中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズや、レーザ走査系レンズ等の光学素子として好適に用いられ、以下、図を参照しながら、本実施形態における光学素子用有機無機複合材料よって成形された光学素子が用いられた光ピックアップ装置1について説明する。
【0121】
図1に示すように、本実施形態における光ピックアップ装置1には、光源としての3種類の半導体レーザ発振器LD1、LD2、LDが具備されている。このうち、半導体レーザ発振器LD1は、BD(またはAOD)10用として波長350〜450nm中の特定波長、例えば、405nm、407nmの波長の光束を出射するようになっている。また、半導体レーザ発振器LD2は、DVD20用として波長620〜680nm中の特定波長の光束を出射するようになっている。さらに、半導体レーザLD3は、CD30用として750〜810nm中の特定波長の光束を出射するようになっている。
【0122】
半導体レーザ発振器LD1から出射される青色光の光軸方向には、図1中下方から上方に向かって、シェイバSH1、スプリッタBS1、コリメータCL、スプリッタBS4、BS5及び対物レンズ15が順次配設されており、対物レンズ15と対向する位置には、光情報記録媒体であるBD10、DVD20またはCD30が配置されるようになっている。また、スプリッタBS1の図1中右方には、シリンドリカルレンズL11、凹レンズL12及び光検出器PD1が順次配設されている。
【0123】
半導体レーザ発振器LD2から出射される赤色光の光軸方向には、図1中左方から右方に向けてスプリッタBS2、BS4が順次配設されている。また、スプリッタBS2の図1中下方にはシリンドリカルレンズL21、凹レンズL22及び光検出器PD2が順次配設されている。
【0124】
半導体レーザ発振器LD3から出射される光の光軸方向には、図1中右方から左方に向けてスプリッタBS3、BS5が順次配設されている。また、スプリッタBS3の図1中下方にはシリンドリカルレンズL31、凹レンズL32及び光検出器PD3が順次配設されている。
【0125】
光学素子である対物レンズ15は、光情報記録媒体としてのBD10、DVD20またはCD30に対向配置されるものであり、各半導体レーザ発振器LD1、LD2、LD3から出射された光を、BD10、DVD20またはCD30に集光するようになっている。このような対物レンズ15には、2次元アクチュエータ2が具備されており、この2次元アクチュエータ2の動作により、対物レンズ15は、上下方向に移動自在となっている。
【0126】
次に、光ピックアップ装置の作用について説明する。
【0127】
本実施形態における光ピックアップ装置1は、記録媒体の種類よってそれぞれ異なる動作をするため、以下において、BD10、DVD20及びCD30に対する動作態様の詳細について、それぞれ説明する。
【0128】
はじめに、BD10に対する光ピックアップ装置1の動作について説明する。
【0129】
BD10への情報の記録動作時や、BD10に記録された情報の再生動作時には、半導体レーザ発振器LD1が光を出射する。その光は、図1に示すように、光線L1となって、シェイバSH1を透過して整形され、スプリッタBS1を透過して、コリメータCLで平行光とされる。そして、各スプリッタBS4、BS5及び対物レンズ15を透過し、BD10の記録面10aに集光スポットを形成する。
【0130】
集光スポットを形成した光は、BD10の記録面10aで情報ピットにより変調され、記録面10aによって反射される。そして、この反射光は、対物レンズ15、スプリッタBS5及びコリメータCLを透過し、スプリッタBS1で反射した後、シリンドリカルレンズL11を透過して、非点収差が与えられる。その後、凹レンズL12を透過して、光検出器PD1で受光される。以後、このような動作が繰り返し行われ、BD10に対する情報の記録動作や、BD10に記録された情報の再生動作が完了する。
【0131】
次に、DVD20に対する光ピックアップ装置1の動作について説明する。
【0132】
DVD20への情報の記録動作時や、DVD20に記録された情報の再生動作時には、半導体レーザ発振器LD2が光を出射する。その光は、図1に示すように、光線L2となって、スプリッタBS2を透過し、スプリッタBS4によって反射される。反射された光線L2は、スプリッタBS5及び対物レンズ15を透過し、DVD20の記録面20aに集光スポットを形成する。
【0133】
集光スポットを形成した光は、DVD20の記録面20aで情報ピットにより変調されて、記録面20aによって反射される。そして、この反射光は、対物レンズ15及びスプリッタBS5を透過し、各スプリッタBS4、BS2で反射した後、シリンドリカルレンズL21を透過して、非点収差が与えられる。その後、凹レンズL22を透過して、光検出器PD2で受光される。以後、このような動作が繰り返し行われ、DVD20に対する情報の記録動作や、DVD20に記録された情報の再生動作が完了する。
【0134】
最後に、CD30に対する光ピックアップ装置1の動作について説明する。
【0135】
CD30への情報の記録時や、CD30に記録された情報の再生時には、半導体レーザ発振器LD3から光が出射される。出射された光は、図1に示すように、光線L3となって、スプリッタBS3を通過し、スプリッタBS5によって反射される。反射された光線L3は、対物レンズ15を透過し、CD30の記録面30aに集光スポットを形成する。
【0136】
集光スポットを形成した光は、CD30の記録面30aで情報ピットにより変調されて、記録面30aによって反射される。そして、この反射光は、対物レンズ15を透過し、各スプリッタBS5、BS3で反射した後、シリンドリカルレンズL31を透過して、非点収差が与えられる。その後、凹レンズL32を透過して、光検出器PD3で受光される。以後、このような動作が繰り返し行われ、CD30に対する情報の記録動作や、CD30に記録された情報の再生動作が完了する。
【0137】
なお、光ピックアップ装置1には、BD10、DVD20またはCD30に対する情報の記録動作時や、BD10、DVD20またはCD30に記録された情報の再生動作時には、各光検出器PD1、PD2、PD3でのスポットの形状変化または位置変化による光量変化を検出して、合焦検出またはトラック検出を行うようになっている。そして、このような光ピックアップ装置1は、各光検出器PD1、PD2、PD3の検出結果に基づいて、2次元アクチュエータ2が半導体レーザ発振器LD1、LD2、LD3からの光をBD10、DVD20またはCD30の記録面10a、20a、30aに結像するように対物レンズ15を移動させるとともに、半導体レーザ発振器LD1、LD2、LD3からの光を各記録面10a、20a、30aの所定のトラックに結像させるように対物レンズ15を移動させるようになっている。
【実施例】
【0138】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0139】
(無機微粒子1)
大明化学製γ−アルミナ TM−300(一次粒子径7nm)8質量部を28%アンモニア水100質量部、水100質量部及びエタノール300質量部と混合した後、コトブキ技研ビーズミル分散機(ウルトラアペックスミル)を用いて分散混合を行った。その後関東化学製テトラエトキシシラン3質量部を8hかけて滴下し、水及びエタノールで脱塩洗浄を行った後100℃で乾燥させ、シリカ被覆アルミナ粒子を作製した。その後、高分子バインダー1(昭和電工製ポリ−N−ビニルアセトアミド(PNVA)重合度15)を表2に示す質量部、及びEt−OH100質量部と混合し90℃24h真空乾燥を行った。
【0140】
焼成炉で所定の温度及び時間で焼成を行った後、Et−OHで洗浄しPNVAを除去した。その後、乾燥N2雰囲気下で信越化学工業製ヘキサメチルジシラザン1.5質量部を混合した後250℃で8h混合した。その後N2雰囲気下250℃で減圧乾燥することで表面処理SiO2被覆アルミナ粒子−無機微粒子粉体1を作製した。
【0141】
(無機微粒子2)
日本アエロジル製酸化ケイ素 RX200(一次粒子径13nm)10質量部をN2雰囲気下120℃で減圧乾燥した後、乾燥N2雰囲気下で信越化学工業製ヘキサメチルジシラザン4質量部を混合した後250℃で8h混合した。その後N2雰囲気下250℃で減圧乾燥することで表面処理SiO2粒子を作製した。その後無機微粒子1と同様に処理し、無機微粒子粉体2を作製した。
【0142】
(熱可塑性樹脂1)
三井化学製シクロオレフィンポリマー APEL5014を熱可塑性樹脂1とした。
【0143】
(熱可塑性樹脂2)
住友化学製ポリメチルメタクリレート スミペックスMGSSを熱可塑性樹脂2とした。
【0144】
(熱可塑性樹脂を用いたマスターバッチ、有機無機複合材料及び光学素子の調製)
乾燥N2雰囲気下で十分乾燥させた無機微粒子を70体積部と、ガラス転移温度(Tg)より10℃低い温度において24hで十分に予備乾燥を行ったバインダー用熱可塑性樹脂60体積部及び脱水処理を行ったシクロヘキサン1200体積部を混合したスラリーをテクノベル社製二軸押出機で混合・脱気を行い、マスターバッチを作製した。このときの溶媒残量は30ppm以下になるまで脱気を行い、マスターバッチを作製した。
【0145】
その後連続的にホスト樹脂としてマスターバッチ作製時に用いたバインダー用熱可塑性樹脂と前記マスターバッチを、テクノベル社製二軸混練機を用いて無機微粒子充填量は25vol%となるように混練することで有機無機複合材料を作製した。このときの混練温度はTg+40℃とした。その後、光学素子用有機無機複合材料を、射出成形機を用いて成形を行い、厚さ1mm、巾20mm、長さ50mmの試験用プレートである光学素子を作製した。
【0146】
尚、比較例として高分子バインダー2:関東化学製ポリエチレングリコール(PEG)#400
高分子バインダー3:日本触媒製ポリビニルピロリドン#20000を用いて実施例と同様に作製した。
【0147】
(硬化性樹脂1)
熱硬化性である1−アダマンチルメタクリレートを硬化性樹脂1とした。
【0148】
(硬化性樹脂を用いたマスターバッチ、有機無機複合材料及び光学素子の調製)
2雰囲気下で十分に乾燥させた無機微粒子と、N2雰囲気下20℃で十分に脱気乾燥した硬化性モノマー、1−アダマンチルメタクリレートを無機充填率25体積部になるように混合調整した後、ラジカル重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.05体積部を混合し卓上型3本ロール式ミル(RM−1、(株)入江商会)を用いて分散した。得られた分散物を、自転公転方式のミキサー(あわとり練太郎AR−100、(株)シンキー製)を用いて脱泡した後、厚さ1mm、巾20mm、長さ50mmの試験用プレート型の中に流し込み、110℃で1時間その後150℃で3時間オーブン中にて硬化を行い、無色透明な光学素子を得た。
【0149】
〈光学素子の評価〉
(光線透過率の測定)
厚さ1mm、巾20mm、長さ50mmの試験用プレート(光学素子)の厚さ方向(1mm厚)に対する波長405nmにおける透過率T1(%)を、ASTM D−1003に従って、島津製作所製の分光光度計UV−3150を用いて測定した。
【0150】
(dn/dT(屈折率温度変化)の測定)
厚さ1mm、巾20mm、長さ50mmの試験用プレート(光学素子)を、試料温度として10℃から60℃まで変化ながら、カルニュー光学工業(株)製の自動屈折計KPR−200を用いて、波長405nmの屈折率を測定した。次いで、10℃から60℃での屈折率の温度変化率をdn/dTとして求めた。
【0151】
(発泡の有無)
厚さ1mm、巾20mm、長さ50mmの試験用プレート(光学素子)を光学顕微鏡及びSEMにより観察し、粒径100nm以上の球形異物量(気泡)を下記の基準により評価した。
○:発泡がほとんど見られないもの
△:微量の発泡が確認されるもの
×:体積換算で1%以上の発泡が確認されるもの
以上により得られた結果を表2に示す。
【0152】
【表2】

【0153】
従来、光学素子材料として、ポリメチルメタクリレート(光学素子10:参考例2)や環状オレフィン樹脂である三井化学製の熱可塑性樹脂であるAPEL5014(光学素子9:参考例1)等が適用されているが、参考例2であるポリメチルメタクリレートは、温度変化に対する屈折率変動は小さいものの、光学素子として、例えば、405nmの波長の光を長期間にわたり照射した際の耐久性に乏しく、また吸水性が高いため、光学素子用の樹脂材料として問題点を抱えている。これに対し、参考例1に記載のAPEL5014は、高い透明性と耐久性、耐水性を備え、広く用いられている樹脂材料ではあるが、温度変化に対する屈折率変動が大きいことが、問題の1つであった。このAPEL5014における屈折率変動を改良する手段として、従来無機微粒子を添加して改良する試みがなされていたが、従来公知の方法で調製した酸化アルミニウムは吸水率が大きく、シリカコートや表面処理を行ったとしても、比較例1に示すように混練時に微細発泡や粒子の凝集が発生し光線透過率の低下を招く結果となっている。
【0154】
さらに比較例2〜5に示すように、高分子バインダーを用いて焼成をおこなっても、粒子の難凝集が発生し複合化時に再分散することができなかった。
【0155】
これに対し、表2に記載の実施例結果より明らかなように、本発明の製造方法は高耐熱高分子バインダーを用いることで、凝集のほぐれやすい焼成粒子を作製することができ、作製した有機無機複合材料は成形体内の発泡及びヘイズが抑制され、光線透過率の低下を大幅に抑制することができる。本発明の有機無機複合材料を用いて作製した光学素子は、光線透過率に優れ、かつ環境変化(温度変化)に対するdn/dTが小さく、屈折率安定性に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明に係る光学素子が用いられた光ピックアップ装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0157】
15 対物レンズ(光学素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中10℃/minの昇温速度で300℃までの加熱した際、80質量%以上が熱分解されない高分子材料と、少なくとも表面にSiO2層を含有する無機微粒子とを混合した後、乾燥し、焼成して無機微粒子粉体を製造することを特徴とする無機微粒子粉体の製造方法。
【請求項2】
前記高分子材料の含有量が前記無機微粒子100質量部に対して10乃至200質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の無機微粒子粉体の製造方法。
【請求項3】
前記焼成温度が250〜550℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無機微粒子粉体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の無機微粒子粉体の製造方法によって作製されたことを特徴とする有機無機複合材料。
【請求項5】
請求項4に記載の有機無機複合材料を用いて作製されたことを特徴とする光学素子。

【図1】
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【公開番号】特開2009−13009(P2009−13009A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176086(P2007−176086)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】