説明

無機繊維用ポリウレタン系接着剤及び鉱物質繊維板状体

【課題】無機繊維への定着性に優れる自己乳化型イソシアネート化合物を含有するポリウレタン系接着剤及び防火性に優れる、鉱物質繊維板状体を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩を、ポリイソシアネート化合物と反応させてなる自己乳化型イソシアネート化合物を含有する、無機繊維用ポリウレタン系接着剤。ここで、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは炭素数1〜12の炭化水素基等、Rは水酸基で置換された炭素数1〜18の炭化水素基等、R及びRは、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基等、Xは、Cl、Br等を意味する。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維用ポリウレタン系接着剤及び鉱物質繊維板状体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築材料として軽量で高強度かつ防火性に優れた無機質板状体を製造する方法として、鉱物質繊維、無機粉状体及び結合剤を必須成分とするスラリーを抄造して得られる湿潤無機板を上下層とし、その間に無機発泡体、繊維状物及び結合剤を必須成分とする混合物を積層し、圧締し、乾燥する方法が知られている。この方法において、十分な強度を得るためには、上下層を高密度にすることによるスプリングバックを防止する接着剤と、この接着剤を硬化させる熱圧プレスが必要となる。しかし、この方法は、抄造して得られる上下層が高含水率であるため、上下層を乾燥させ接着剤を硬化させるには極めて長時間の熱圧が必要となり、生産効率が悪いという問題点がある。
【0003】
上記問題点を解決するために、少なくともイソシアネート基を含有する接着剤を配合し、短時間の熱圧プレスとその後の乾燥工程で接着剤を硬化させることにより、効率よく無機質板状体を生産する方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、上記方法には、イソシアネート基含有接着剤が液状であることから、抄造時に流出しやすく、所望量のイソシアネート基含有接着剤を無機繊維に定着させるにはその添加量を多くしなければならないという問題がある。この問題の発生により同時に、流出したイソシアネート基含有接着剤による白水の汚れ、さらにはイソシアネート基含有接着剤と水の反応物により配管や網の詰まりを引き起こす等のほか、無機質板状体の製造効率が悪いという問題もある。
【0005】
また、無機繊維への定着性の向上を目的として、カチオン基、アニオン基などのイオン性親水基と、非イオン性親水基と、イソシアネート基とを少なくとも有するプレポリマーを含有する無機繊維用接着剤が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−217216号公報
【特許文献2】特開2003−119449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無機繊維用接着剤としては、抄造時の流出を防止し少量の使用量で高い接着強度を得る観点からは、無機繊維への定着性が十分に高いこと、保管時の安定性及び塗布時の均一性の観点からは、イソシアネート基を有するプレポリマーが乳化性能に優れること、がそれぞれ要求される。しかしながら、従来の無機繊維用接着剤では、無機繊維への良好な定着性と、プレポリマーが乳化性能に優れることとを、両立することが困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、自己乳化型イソシアネート化合物を含有する接着剤であって、無機繊維への定着性に優れることと、自己乳化型イソシアネート化合物の乳化性能に優れることとを特徴とする、無機繊維用ポリウレタン系接着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、上記無機繊維用ポリウレタン系接着剤を使用して容易に製造可能であり、軽量、高強度、且つ防火性に優れる、鉱物質繊維板状体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩を、ポリイソシアネート化合物と反応させてなる自己乳化型イソシアネート化合物を含有する、無機繊維用ポリウレタン系接着剤を提供する。
【化1】


[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]
【0010】
本発明の無機繊維用ポリウレタン系接着剤は、上記構成を有することで、無機繊維への定着性に優れることと、自己乳化型イソシアネート化合物(プレポリマー)の乳化性能に優れることとを両立することができる。また、本発明の無機繊維用ポリウレタン系接着剤によれば、白水の汚れ、イソシアネート基含有接着剤と水の反応物による配管や網の詰まり等を引き起こすことなく、効率良く鉱物質繊維板状体等を製造することができる。
【0011】
例えば、上記構成を有する無機繊維用ポリウレタン系接着剤は、従来の非イオン性親水基を含有する無機繊維用接着剤と比較して、無機繊維への定着性に優れる。また、従来のアニオン基を含有する無機繊維用接着剤と比較して、自己乳化型イソシアネート化合物(プレポリマー)の乳化性能に優れる。
【0012】
さらに、従来のカチオン基を含有する無機繊維用接着剤では、カチオン基含有化合物と、有機ポリイソシアネートとの反応を速やかに進行させるために、溶媒としてアルコール類が必須であり、当該アルコール類と有機ポリイソシアネートとの反応によってプレポリマーの粘度が上昇して、十分な乳化性能が得られない場合があったところ、本発明の無機繊維用ポリウレタン系接着剤は、上記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩がポリイソシアネート化合物と良好に反応するため、自己乳化型イソシアネート化合物の優れた乳化性能を維持しつつ、容易に製造することができる。
【0013】
また、本発明は、下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩を、該塩以外の活性水素基含有化合物の存在下でポリイソシアネート化合物と反応させてなる自己乳化型イソシアネート化合物を含有する、無機繊維用ポリウレタン系接着剤を提供する。
【化2】


[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]
【0014】
本発明の無機繊維用ポリウレタン系接着剤は、上記構成を有することで、無機繊維への定着性に優れることと、自己乳化型イソシアネート化合物(プレポリマー)の乳化性能に優れることとを両立するのみならず、接着剤の外観に優れたものとなる。
【0015】
上記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩に対する上記活性水素基含有化合物の当量比は、1〜100であると好ましい。このような構成を有する無機繊維用ポリウレタン系接着剤は、無機繊維への定着性、自己乳化型イソシアネート化合物の乳化性能及び外観が一層優れる。また、このような構成を有さない無機繊維用ポリウレタン系接着剤と比較して、短時間かつ容易に製造することができる。
【0016】
上記自己乳化型イソシアネート化合物の乳化性能及び乳化安定性が一層優れる観点から、R及びRはいずれも水素原子であり、XはCl又はBrであることが好ましい。
【0017】
また、上記自己乳化型イソシアネート化合物の乳化性能及び乳化安定性が一層優れる観点から、Rは炭素数4〜12のアルキル基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましい。
【0018】
一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩は、下記一般式(2)で表されるイミダゾリウム塩であることが好ましい。このようなイミダゾリウム塩を用いることにより、上記自己乳化型イソシアネート化合物の乳化性能及び乳化安定性を一層高めることができる。
【化3】


[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、nは1〜18の数、XはCl又はBr、をそれぞれ示す。]
【0019】
一般式(2)で表されるイミダゾリウム塩においても、Rは炭素数4〜12のアルキル基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、鉱物質繊維と上記無機繊維用ポリウレタン系接着剤とを含有するスラリーを抄造した抄造物中の上記無機繊維用ポリウレタン系接着剤を硬化させてなる、鉱物質繊維板状体を提供する。
【0021】
本発明の鉱物質繊維板状体は、上記構成を有することで、容易に製造可能であり、軽量、高強度、且つ防火性に優れるものとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、無機繊維への定着性が十分に高く、且つ、自己乳化型イソシアネート化合物の乳化性能が十分に高い、無機繊維用ポリウレタン系接着剤を得ることができる。このような無機繊維用ポリウレタン系接着剤によれば、抄造時の接着剤の流出を防止し少量の使用量で高い接着強度を得ることができる。また、保管時の安定性に優れるとともに、基板等に均一に塗布することが可能となる。また、本発明によれば、上記無機繊維用ポリウレタン系接着剤を使用して容易に製造可能であり、軽量、高強度、且つ防火性に優れる、鉱物質繊維板状体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0024】
本実施形態に係る無機繊維用ポリウレタン系接着剤は、下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩を、ポリイソシアネート化合物と反応させてなる自己乳化型イソシアネート化合物を含有するもの、或いは、下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩を、該塩以外の活性水素基含有化合物の存在下でポリイソシアネート化合物と反応させてなる自己乳化型イソシアネート化合物を含有するもの、である。
【0025】
【化4】

【0026】
式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。
【0027】
ここで、Rは炭素数4〜12の炭化水素基であるが、この炭化水素基としては、直鎖状、環状若しくは分岐状のアルキル基、アルケニル基又はベンジル基、フェニル基などの芳香族炭化水素基が適用できる。炭素数4〜12の炭化水素基としては、例えば、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、4−ペンテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基等が挙げられる。また、それぞれの炭化水素基に水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基、もしくはアルデヒド基を有していてもよい
【0028】
炭化水素基の炭素数が4未満である場合は、ポリイソシアネート化合物に対する溶解性が低下し反応が生じ難い。一方、炭素数が12を超す場合は、粘度が高くなり、ポリイソシアネート化合物との反応速度が遅くなる。ポリイソシアネート化合物に対する溶解性に優れ、反応速度も速いことから、上記炭化水素基の炭素数は6〜10が好ましい。なお、Rが水素原子の場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しウレア結合した化合物が固体として析出してしまうため、このようなイミダゾリウム塩は用いることができない。
【0029】
一般式(1)におけるRは、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子である。この炭化水素基としては、直鎖状、環状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はベンジル基、フェニル基などの芳香族炭化水素基が適用できる。炭素数1〜12の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、4−ペンテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基等が挙げられる。
【0030】
の炭化水素基の炭素数が12を超す場合は、粘度が高くなり、ポリイソシアネート化合物との反応速度が遅くなる。Rの炭化水素基としては、炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8の炭化水素基がより好ましい。
【0031】
一般式(1)におけるRは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基である。このような炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、4−ペンテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基が挙げられる。芳香族炭化水素としてはベンジル基、フェニル基が挙げられる。
【0032】
の炭化水素基としては、炭素数1〜15の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10の炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜8の炭化水素基が更に好ましい。なお、Rは水酸基を有していることが好ましく、有機ポリイソシアネート化合物との反応性の観点から、水酸基の位置は末端(イミダゾール環の窒素原子に結合している炭素から最も離れた位置)であることが好ましい。
【0033】
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基である。炭素数1〜18の炭化水素基としては上記例示と同様のものが挙げられ、炭素数としては、1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい。
【0034】
一般式(1)におけるXは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。ポリイソシアネート化合物の反応性の観点から、Xは、Cl、Br又はIが好ましく、Cl又はBrがより好ましい。
【0035】
なお、上記R及びRの少なくとも一方は水酸基を有している必要があるが、Rが水酸基を有していることが好ましい
【0036】
一般式(1)のイミダゾリウム塩においてXがClである場合において、反応させる有機ポリイソシアネート化合物がポリメリックMDIであるときは、Rの炭素数は6〜10が好ましい。Rの炭素数が6より少ない場合、有機ポリイソシアネート化合物の反応性が悪く、炭素数が10を超える場合は粘度が高くなり有機ポリイソシアネート化合物との反応速度が遅くなる傾向にある。
【0037】
一般式(1)のイミダゾリウム塩においてXがBrである場合において、反応させる有機ポリイソシアネート化合物がポリメリックMDIであるときは、Rの炭素数は4〜10が好ましい。Rの炭素数が4より少ない場合、有機ポリイソシアネート化合物の反応性が悪く、炭素数が10を超える場合は粘度が高くなり有機ポリイソシアネート化合物との反応速度が遅くなる傾向にある。
【0038】
一般式(1)のイミダゾリウム塩は、以下に示すイミダゾール化合物(1a)とアルキル化剤(1b)、又はイミダゾール化合物(2a)とアルキル化剤(2b)を反応させることにより、合成することができる。アルキル化剤(1b)又は(2b)の使用量は、イミダゾール化合物(1a)又は(2a)1モル当り、1〜1.3モルが好ましく、1〜1.2モルがより好ましい。
【0039】
【化5】

【0040】
式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]
【0041】
イミダゾール化合物(1a)としては1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール,1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール,1−(2−ヒドロキシエチル)−2−エチルイミダゾール,1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ブチルイミダゾール,1−メチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−エチル−2−ヒドロキシメチル
イミダゾール,1−プロピル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−n−ブチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−n−ヘキシル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−ベンジル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,などが挙げられる。
【0042】
イミダゾール化合物(2a)としては1−n−ブチルイミダゾール,1−イソブチルイミダゾール,1−n−ペンチルイミダゾール,1−n−ヘキシルイミダゾール,1−n−オクチルイミダゾール,1−n−デシルイミダゾール,1−n−ドデシルイミダゾール,1−ベンジルイミダゾール,1−n−ブチル−2−メチルイミダゾール,1−イソブチル−2−メチルイミダゾール,1−n−ペンチル−2−メチルイミダゾール,1−n−ヘキシル−2−メチルイミダゾール,1−n−オクチル−2−メチルイミダゾール,1−n−デシル−2−メチルイミダゾール,1−n−ドデシル−2−メチルイミダゾール,1−ベンジル−2−メチルイミダゾール,1−n−ブチル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−n−ヘキシル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,1−ベンジル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール,などが挙げられる。
【0043】
アルキル化剤(1b)としては1−クロロブタン,2−クロロブタン,1−クロロペンタン,2−クロロペンタン,1−クロロヘキサン,1−クロロヘプタン,1−クロロオクタン,1−クロロノナン,1−クロロデカン,1−クロロドデカン,1−クロロオクタデカン,1−ブロモブタン,2−ブロモブタン,1−ブロモペンタン,2−ブロモペンタン,1−ブロモヘキサン,1−ブロモヘプタン,1−ブロモオクタン,1−ブロモノナン,1−ブロモデカン,1−ブロモドデカン,1−ブロモオクタデカンなどのハロゲン化アルキル、ジブチル硫酸などのジアルキル硫酸、パラトルエンスルホン酸−n−ブチル、パラトルエンスルホン酸イソブチル、メタンスルホン酸ブチル等のアルキルスルホン酸エステル、ベンジルクロリド、ベンジルブロミドなどが挙げられる。
【0044】
アルキル化剤(2b)としては1−クロロメタン,1−クロロエタン,1−クロロプロパン,2−クロロプロパン,1−クロロブタン,2−クロロブタン,1−クロロペンタン,2−クロロペンタン,1−クロロヘキサン,1−クロロヘプタン,1−クロロオクタン,1−クロロノナン,1−クロロデカン,1−クロロドデカン,1−クロロオクタデカン,1−ブロモメタン,1−ブロモエタン,1−ブロモプロパン,2−ブロモプロパン,1−ブロモブタン,2−ブロモブタン,1−ブロモペンタン,2−ブロモペンタン,1−ブロモヘキサン,1−ブロモヘプタン,1−ブロモオクタン,1−ブロモノナン,1−ブロモデカン,1−ブロモドデカン,1−ブロモオクタデカンなどのハロゲン化アルキル,クロロエタノール、クロロブタノール、クロロオクタノール、クロロデカノール、ブロモエタノール、ブロモブタノール、ブロモオクタノール、ブロモデカノール等のハロゲン化アルコール,ジメチル硫酸,ジエチル硫酸,ジブチル硫酸などのジアルキル硫酸、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸−n−ブチル、パラトルエンスルホン酸イソブチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸ブチル等のアルキルスルホン酸エステル、ベンジルクロリド、ベンジルブロミドなどが挙げられる。
【0045】
合成は、イミダゾール化合物(1a)にアルキル化剤(1b)又はイミダゾール化合物(2a)にアルキル化剤(2b)を一度に加えて行なってもよく、また、徐々に滴下することによっても実施することができる。この場合の反応は、無溶剤または反応溶媒の存在下で実施される。反応溶媒としては、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリルの他、メタノールやプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、そして石油系溶媒のn−ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロルメタン、トルエン、キシレン、クロルベンゼンが挙げられる。また、これらの反応溶媒については、単独又は混合体で使用することもできる。
【0046】
溶媒使用量はイミダゾール化合物(1a)又は(2a)のイミダゾール1モル当り、50ccから500ccの割合であり、好ましくは100ccから300ccである。反応温度は20℃から150℃であり、好ましくは30℃から110℃である。反応時間は1時間から100時間であり、好ましくは3時間から48時間である。ここで使用する反応器としてはアルキル化剤(1b)が低沸点の場合、密閉型のオートクレイブを使用するとよく、この時の圧力は1〜10気圧が好ましい。
【0047】
このような反応で得られたイミダゾリウム塩には未反応のアルキル化剤(1b)又は(2b)が含まれている場合もあり、反応溶媒が残存している場合もある。そのような場合は精製を行う。
【0048】
精製方法としては、蒸留、反応溶媒を用いた再結晶,再沈、抽出等の方法が挙げられ、蒸留特に薄膜蒸留が溶剤等を用いることなくできるので好ましい。また、好ましい薄膜蒸留の条件としては、圧力:2.0kPa以下、温度:100〜200℃であり、特に好ましい条件は圧力:1.5kPa以下、温度:120〜180℃である。
【0049】
上記に加え、必要に応じてアルキル化剤(1b)又は(2b)の脱離アニオンを目的とするアニオンのイオン交換を行うこともできる。アルキル化剤(1b)又は(2b)の脱離アニオンと目的とするアニオンのイオン交換の方法としては、以下の式で表される方法で行うことができる。ここで、Yはハロゲン原子、Mはアルカリ金属、AはBF、NO等を示す。
【0050】
【化6】

【0051】
このとき、溶媒(アセトニトリル、酢酸エチルエステル、アセトン等)中に、イミダゾリウムハロゲン塩と当量の対アニオンのアルカリ金属塩を添加して、0〜100℃(さらに好ましくは40〜60℃)で、3〜20時間(さらに好ましくは5〜10時間)反応を行った後、ろ過を行い、その後濃縮することが好ましい。これにより目的とするイミダゾリウム塩が得られる。なお、上記において、反応温度が0℃未満では反応が十分に進まない場合があり、逆に100℃を超えると着色の原因となって好ましくない。
【0052】
一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩としては、下記一般式(2)で表されるイミダゾリウム塩が特に好ましい。
【0053】
【化7】

【0054】
ここで、R1は炭素数4〜12のアルキル基であることが好ましく、R2は水酸基又はメチル基であることが好ましく、nは1〜18(好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6、更には1〜3)の数であることが好ましく、X−は、Cl−又はBr−がよい。
【0055】
以上説明したイミダゾリウム塩を、ポリイソシアネート化合物と反応させることで、自己乳化型イソシアネート化合物が得られる。また、上記イミダゾリウム塩を、該塩以外の活性水素基含有化合物の存在下でポリイソシアネート化合物と反応させることによっても、自己乳化型イソシアネート化合物を得ることができる。
【0056】
イミダゾリウム塩とポリイソシアネート化合物との反応は、イミダゾリウム塩とポリイソシアネート化合物とが均一に反応するように行うことが好ましい。イミダゾリウム塩とポリイソシアネート化合物が局部的に反応すると、不溶性の固体が析出し、無機繊維用ポリウレタン系接着剤の外観が損なわれてしまう場合がある。また、不溶性の固体が析出することで、基板等に均一に塗布することが困難となるとともに、接着性能が低下してしまう場合がある。
【0057】
また、イミダゾリウム塩とポリイソシアネート化合物との反応を、上記活性水素基含有化合物の存在下で行うことで、イミダゾリウム塩とポリイソシアネート化合物が局部的に反応することを防ぎ、均一且つ外観に優れる自己乳化型イソシアネート化合物を一層容易に得ることができる。
【0058】
この効果を一層顕著に得る観点からは、イミダゾリウム塩及び活性水素基含有化合物を含む均一な混合物を、ポリイソシアネート化合物と混合して反応を行うことが好ましい。
【0059】
上記反応におけるイミダゾリウム塩に対する活性水素基含有化合物の当量比(活性水素基含有化合物由来の活性水素基mol数/イミダゾリウム塩mol数)は、1〜150であることが好ましく、3〜100であることがより好ましく、5.4〜100であることがさらに好ましく、5.7〜10であることが特に好ましい。この当量比が上記範囲未満であると、上記不溶性の固体が生じてしまい良好な外観が得られない場合がある。また、当量比が上記範囲より大きいと、自己乳化型イソシアネートの粘度が過度に上昇し、作業性等に不具合が生じる場合がある。
【0060】
ここで活性水素基含有化合物とは、活性水素基を1つ以上有する化合物であり、例えば、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。水酸基含有化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノールなどのモノアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。また、アミノ基含有化合物としては、例えば、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン、アミノアルコール、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0061】
活性水素基含有化合物としては、自己乳化型イソシアネート化合物の粘度が過度に上昇することを防止する観点から、水酸基含有化合物が好ましく、モノオール化合物(1分子につき水酸基を1つ有する化合物)がより好ましい。また、少量の添加量で所定の効果を得る観点から、短鎖活性水素基含有化合物が好ましい。ここで短鎖活性水素基化合物とは、炭素数が分子量32〜300である活性水素基含有化合物を示し、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0062】
本実施形態において用いることのできるポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4′−ジフェルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、また、その重合体やそのポリメリック体、更にこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0063】
ポリイソシアネート化合物は種々の反応性化合物で変性してもよい。反応性化合物としては、例えば、活性水素基含有化合物が挙げられる。反応性化合物として好適な活性水素基含有化合物としては、例えば、長鎖ポリオール、具体的にはポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール及びこれらのコポリオールなどが挙げられる。これらの長鎖ポリオールは単独で又は2種以上混合して使用してもよい。これらの長鎖ポリオールの数平均分子量は300〜10000が好ましい。
【0064】
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸、酸エステル、又は酸無水物等の1種以上と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等のグリコール、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等のジアミン又はアミノアルコール等の1種以上との脱水縮合反応で得られる、ポリエステルポリオール又はポリエステルアミドポリオールが挙げられる。また、ε−カプロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0065】
ポリカーボネートポリオールとしては、多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応などで得られるものが挙げられる。この多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0066】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどを、後述する開始剤を用いて開環重合させた官能基数が1〜5の数平均分子量300〜10,000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及びこれらを共重合したポリエーテルポリオール、更に、上述のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。上記ポリエーテルポリオールを得るための開始剤としては、官能基数が1〜5、数平均分子量18〜500の各種モノアルコール、グリコール、グリコールエーテル、モノアミン、ジアミン、アミノアルコール、水、尿素などを用いることができる。上記の化合物は単独で又はその2種以上を混合して使用することができる。
【0067】
また、反応性化合物としては、上記の長鎖ポリオールの他に、短鎖活性水素基化合物も好適に使用することができる。短鎖活性水素基化合物とは、分子量32〜300の活性水素基化合物を示す。反応性化合物として好適な短鎖活性水素基化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等のグリコール、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等のジアミン又はアミノアルコール等を挙げることができる。上記の化合物は、単独で又はその2種以上を混合して使用することができる。
【0068】
自己乳化型イソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物に、イミダゾリウム塩を一度に加えて得てもよく、また、徐々に滴下することによって製造することもできる。反応温度は、0℃〜120℃が好ましく、10℃〜100℃がより好ましい。反応温度が0℃未満では反応が十分に進まない場合があり、逆に120℃を超えるとイソシアヌレート化やアロファネート化など望ましくない反応が起こる場合がある。
【0069】
自己乳化型イソシアネート化合物を得るに際しては、イミダゾリウム塩に対するポリイソシアネート化合物の当量比(ポリイソシアネート化合物由来のイソシアネート基数/イミダゾリウム塩由来の水酸基数)が5〜1000の範囲であることが好ましく、中でも10〜500の範囲であることが特に好ましい。この当量比が5未満の場合は、自己乳化型イソシアネート化合物の粘度が過度に上昇し、作業性等に不具合が生じる場合がある。また、この当量比が1000超の場合は、自己乳化性が低下する場合がある。
【0070】
本実施形態に係る無機繊維用ポリウレタン系接着剤は、自己乳化型イソシアネート化合物を含有する。
【0071】
無機繊維用ポリウレタン系接着剤としては、自己乳化型イソシアネート化合物をそのまま、又は、溶媒等で希釈して使用することができる。このような溶媒としては、自己乳化型イソシアネート化合物のイソシアネート基との反応性が低い(又は反応しない)溶媒が好ましく、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチレンクロリド等が挙げられる。
【0072】
また、無機繊維用ポリウレタン系接着剤は、自己乳化型イソシアネート化合物の他に、フェノール樹脂、メラミン樹脂等を含有しても良い。
【0073】
無機繊維用ポリウレタン系接着剤は、例えば、鉱物質繊維板状体の製造等に使用することができる。
【0074】
無機繊維用ポリウレタン系接着剤の使用に際しては、イオン性或いは両性の凝集剤(イオン性凝集剤)を併用することが好ましい。
【0075】
イオン性凝集剤は、無機繊維用ポリウレタン系接着剤に対して、質量比(イオン性凝集剤の質量/無機繊維用ポリウレタン系接着剤の質量)で0.01〜10の範囲で使用することが好ましい。
【0076】
次に、本実施形態に係る鉱物質繊維板状体について説明する。まず、鉱物質繊維板状体の上下層部の形成に使用される鉱物質繊維としては、例えば、ロックウール、スラグウール、ミネラルウール、ニッケルウール及びガラス繊維を挙げることができ、これらは単独で或いは2種以上組み合わせて使用できる。鉱物質繊維の使用量は、鉱物質繊維板状体の上下層部全体の20〜80質量%とするのが好ましい。20質量%未満であると、所望の曲げ強度が得られにくく、80質量%を越えると、相対的に無機質粉状体などのその他の配合成分の割合が減少するために所望の表面硬度を確保しにくい。
【0077】
鉱物質繊維板状体の上下層部の形成には、鉱物質繊維のほかに、必要に応じて、無機質粉状体を使用することができる。無機質粉状体は、防火性を維持しつつ、硬度を高めて、ネジ止め性能を高めるためのものであり、例えば、炭酸カルシウム、硅砂、マイクロシリカ、スラグ及び水酸化アルミニウムを挙げることができる。これらは単独であるいは2種以上組み合わせて使用できる。無機質粉状体の配合量は、鉱物質繊維板状体の上下層部全体の20〜80質量%とするのが好ましい。20質量%未満であると、所望の表面硬度が得られず、80質量%を越えると、強度を付与する鉱物質繊維の割合が少なくなり、所望の曲げ強度が得にくくなる。
【0078】
鉱物質繊維板状体の上下層部における接着剤の役割は、上記鉱物質繊維同士或いはこれと無機質粉状体などとを結合一体化して最終的な実用強度を発現すること、および、短時間の熱圧プレスで鉱物質繊維板状体の上下層を必要十分に高密度化して接着固定し、取り扱いができる程度の強度が発現できるようにすることである。このため、鉱物質繊維板状体の上下層部に使用する接着剤に、短時間で一次強度を発現できる無機繊維用ポリウレタン系接着剤を併用すると効率が上がり好ましい。
【0079】
本実施形態に係る無機繊維用ポリウレタン系接着剤を使用する際には、イオン性或いは両性の凝集剤(イオン性凝集剤)を併用するのが好ましい。
【0080】
無機繊維用ポリウレタン系接着剤は、鉱物質繊維100質量部に対して、5〜50質量部、更には10〜30質量部用いることが好ましい。また、無機繊維用ポリウレタン系接着剤に対して、イオン性凝集剤は質量比で100:0.01〜100:10の範囲で使用するのが好ましい。
【0081】
また、二次強度を発現し強度を付加しうるように、本実施形態に係る無機繊維用ポリウレタン系接着剤に、粉末フェノール樹脂、エポキシ、スターチ等の1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの熱水中でゲル化する物質は、一次強度を付加する作用も合わせ持っている。これらは十分に熱硬化させなければ強度が発現されないが、上記イソシアネート基含有接着剤によって一次強度を発現し形状を保持した板状体を、プレスから開放した状態で加熱乾燥することにより効率的かつ十分に熱硬化させ、野地板や外壁下地材等の建築材料として必要な二次強度を発現させることができる。なお、本実施形態に係るイソシアネート基含有接着剤も一次強度を発現した後、加熱乾燥によりさらに二次強度を発現するものである。
【0082】
また、無機繊維用ポリウレタン系接着剤の反応を促進するため、各種アミン系化合物、オクチル酸鉛などの有機金属化合物などの触媒を適宜添加してもよい。なお、触媒は熱圧プレス工程に入る前の反応を極力抑えるために、常温では活性を発現せず、プレス温度近辺で活性を発現する感温性触媒や、プレス工程で効力を発揮するように、圧縮により破壊して内容物を放出するマイクロカプセルに包埋した触媒が好ましい。
【0083】
また更に、必要に応じて、スラリーから湿式抄造するため、サイズ剤、消泡剤等の抄造用添加剤を添加してもよい。
【0084】
本実施形態に係る無機質板状体の中層部を形成するための無機質発泡体として、パーライト、シラス発泡体、シリカフラワー、ガラス発泡体、バーミキュライト、黒曜石発泡体等を単独で或いは2種以上組み合わせて使用することができる。この場合、中層用材料となる無機質発泡体は、接着剤と水を噴霧しながら混合して調製するのが好ましい。これを上記無機質板状体の下層部鉱物質繊維板状部(ウェットマット)の上面に均一に散布、堆積させて積層する等の手法により中層部を積層し、この上に更に上層部鉱物質繊維板状部(ウェットマット)を積層する。
【0085】
このようにして得られる3層構成の無機質板状体を例えば熱風ドライヤーで100〜250℃で乾燥し、無機質板状体に含まれる接着剤、例えば、本実施形態に係るイソシアネート基含有接着剤や、フェノール系接着剤などのその他の接着剤の反応を十分に行うことにより、強固な乾燥無機質板状体を得ることができる。なお、イソシアネート基含有接着剤やその他の接着剤などの添加方法については、これら全部を投入したのちイオン性凝集剤で凝集させる方法が歩留まりも良く好ましいが、それ以外に、他の材料を投入してイオン性凝集剤を加えたのちに上記の各接着剤を添加しても良い。
【0086】
なお、これまで無機質板状体は3層構造のものについて説明したが、必ずしもこれに限らず、中層部は複数層あってもよく、中層部間の界面に接着剤を介在させても良いことは勿論のこと、鉱物質繊維のみからなる単層でもよい
【実施例】
【0087】
以下に実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0088】
(合成例1:イミダゾリウム塩「A−1」の合成)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール100.0gと、1−クロロオクタン198.9gを仕込み、100℃にて攪拌しながら、46時間反応させた。その後1H―NMRで未反応の1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾールが無いことを確認した。この反応混合物から未反応の1−クロロオクタンを140℃・10mmHgにて留去することによりイミダゾリム塩(オニウム塩)「A−1」232gを得た。
【0089】
(合成例2:イミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−1」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に「A−1」232gと、メタノール186gを加えて50℃まで加熱後、攪拌することにより、均一なイミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−1」を得た。イミダゾリウム塩に対する活性水素基含有化合物の当量比は、6.52だった。
【0090】
(合成例3:イミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−2」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に「A−1」を100gと、メタノール20gを加えて50℃まで加熱後、攪拌することにより、均一なイミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−2」を得た。イミダゾリウム塩に対する活性水素基含有化合物の当量比は、1.63だった。
【0091】
(合成例4:イミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−3」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に「A−1」を100gと、メタノール50gを加えて50℃まで加熱後、攪拌することにより、均一なイミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−3」を得た。イミダゾリウム塩に対する活性水素基含有化合物の当量比は、4.07だった。
【0092】
(合成例5:イミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−4」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に「A−1」を100gと、メタノール100gを加えて50℃まで加熱後、攪拌することにより、均一なイミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−4」を得た。イミダゾリウム塩に対する活性水素基含有化合物の当量比は、8.13だった。
【0093】
(合成例6:イミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−5」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器に「A−1」を10gと、メタノール125gを加えて50℃まで加熱後、攪拌することにより、均一なイミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−5」を得た。イミダゾリウム塩に対する活性水素基含有化合物の当量比は、101.9だった。
【0094】
(比較合成例1:N−ドデシル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−アンモニウムブロミド「A−2」の合成)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にN,N−ジメチル−N−(−2−ヒドロキシエチル)アミン(日本乳化剤社製、商品名「アミノアルコール2Mabs」)100.0gと、1−ブロモドデカン(東ソー社製、商品名「n−ラウリルブロマイド」)559.6g、エタノール660g(キシダ化学社製、商品名「エタノール」)を仕込み、78℃にて還流・攪拌しながら、24時間反応させた。その後再結晶によりN−ドデシル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−アンモニウムブロミド「A−2」を得た。
【0095】
(比較合成例2:四級アンモニウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−6」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にN,N−ジブチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン(日本乳化剤社製、商品名「アミノアルコールB」100.0gと、ベンシルクロリド(キシダ化学社製、商品名「ベンシルクロリド」)146.3g、イソプロピルアルコール246.3g(キシダ化学社製、商品名「2−プロパノール」)を仕込み、82℃にて還流・攪拌しながら、24時間反応させた。その後再結晶によりN−ベンジル−N,N−ジブチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−アンモニウムクロリド「A−3」を得た。
【0096】
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にN−ベンジル−N,N−ジブチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−アンモニウムクロリド「A−3」100.0gと、イソプロピルアルコール(キシダ化学社製、商品名「2−プロパノール」)100.0gを仕込み、80℃にて攪拌しながら、6時間溶解させることにより、均一な四級アンモニウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−6」を得た。四級アンモニウム塩に対する活性水素基含有化合物の当量比は、13.04だった。
【0097】
(実施例1:無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−1」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を982g仕込んだ。次いでイミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−1」18gを室温で攪拌しながら仕込み、50℃にて攪拌しながら、1.5時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量28.9質量%、25℃での粘度370mPa・sの無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−1」を得た。評価結果を表1に示す。
【0098】
(実施例2〜4:無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−2」、「P−3」、「P−4」の製造)
表1に示す配合に従い、実施例1と同様の製造方法により、無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−2」、「P−3」、「P−4」をそれぞれ得た。評価結果を表1に示す。
【0099】
(実施例5:無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−5」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を990g仕込んだ。次いでイミダゾリウム塩「A−1」10gを室温で攪拌しながら仕込み、室温(25℃)にて攪拌しながら、1時間反応させて、変性量1%、イソシアネート(NCO)含量30.4質量%、25℃での粘度225mPa・sの無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−5」を得た。評価結果を表1に示す。
【0100】
(実施例6:無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−6」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を988g仕込んだ。次いでイミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−2」12gを室温で攪拌しながら仕込み、50℃にて攪拌しながら、1.5時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量30.1質量%、25℃での粘度266mPa・sの無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−6」を得た。評価結果を表2に示す。
【0101】
(実施例7:無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−7」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を985g仕込んだ。次いでイミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−3」15gを室温で攪拌しながら仕込み、50℃にて攪拌しながら、1.5時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量29.5質量%、25℃での粘度335mPa・sの無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−7」を得た。評価結果を表2に示す。
【0102】
(実施例8:無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−8」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を980g仕込んだ。次いでイミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−4」20gを室温で攪拌しながら仕込み、50℃にて攪拌しながら、1.5時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量28.7質量%、25℃での粘度416mPa・sの無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−8」を得た。評価結果を表2に示す。
【0103】
(実施例9:無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−9」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を865g仕込んだ。次いでイミダゾリウム塩/活性水素基含有化合物の混合溶液「B−5」135gを室温で攪拌しながら仕込み、50℃にて攪拌しながら、1.5時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量10.2質量%、25℃での粘度17000mPa・sの無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−9」を得た。評価結果を表2に示す。
【0104】
(比較例1:接着剤「P−10」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を970g仕込んだ。ポリオールA30gを室温で攪拌しながら仕込み、室温(25℃)にて攪拌しながら、1時間反応させて、変性量3%、イソシアネート(NCO)含量29.5質量%、25℃での粘度200mPa・sの接着剤「P−10」を得た。評価結果を表3に示す。
【0105】
(比較例2:接着剤「P−11」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を990g仕込んだ。N−ドデシル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−アンモニウムブロミド「A−2」10gを室温で攪拌しながら仕込み、室温(80℃)にて攪拌しながら、20時間反応させて、変性量1質量%、イソシアネート(NCO)含量30.4質量%、25℃での粘度220mPa・sの接着剤「P−11」を得た。評価結果を表3に示す。
【0106】
(比較例3:接着剤「P−12」の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、この反応器にポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「MR−200」)を970g仕込んだ。次いで「B−6」60gを室温で攪拌しながら仕込み、80℃にて攪拌しながら、20時間反応させて、イソシアネート(NCO)含量25.5%、25℃での粘度2577mPa・sの接着剤「P−12」を得た。評価結果を表3に示す。
【0107】
(比較例4、5:接着剤「P−13」、「P−14」)
表1に示す配合に従い、比較例4と同様の製造方法により、接着剤「P−13」、「P−14」をそれぞれ得た。評価結果を表3に示す。
【0108】
上記実施例及び比較例で使用した、ポリメリックMDI、ポリオールAの詳細を以下に示す。
(ポリメリックMDI)
日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「MR−200」
イソシアネート(NCO)含量:30.5質量%
25℃における粘度:180mPa・s
(ポリオールA)
メトキシポリエチレングリコール
数平均分子量:700
平均官能基数:1
【0109】
実施例1〜9で得られた無機繊維用ポリウレタン系接着剤「P−1」〜「P−9」、比較例1〜5で得られた接着剤「P−10」〜「P−14」について、接着剤の外観の評価を行った。外観の評価結果を表1〜3に示す。
【0110】
<外観の評価方法>
目視にて接着剤の外観を観察し、下記の基準に従い評価を行った。
A:微細な浮遊物が全く見られない。
B:微細な浮遊物が僅かに見られる。
C:微細な浮遊物が少ない。
D:微細な浮遊物が多く見られる。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
(実施例10:鉱物質繊維板の製造)
ロックウール50質量%、炭酸カルシウム40質量%、実施例1で得られた「P−1」10質量%の組成比になるように各原料を水に添加して撹拌混合し、更にポリ塩化アルミニウム0.05質量%、両性ポリアクリルアミド0.10質量%を添加して、フロック状の7質量%スラリーを調製した。次に、このスラリーを、25×25cmの40メッシュの金網を敷いたフォーミングボックスに流し込み、吸引脱水してウェットマットを作製した。このウェットマットを95℃で90秒間プレスした後、熱風循環乾燥器にて180℃で40分間乾燥、硬化させて鉱物質繊維板を得た。作製した鉱物質繊維板は、厚さ2.04mm、密度1.28g/cm3 であった。評価結果を表4に示す。
【0115】
(実施例11〜20)
表4〜5に記載の各原料の組成比に従い、実施例10と同様の方法で、鉱物質繊維板を得た。評価結果を表4〜5に示す。
【0116】
(比較例6〜13)
表6〜7に記載の各原料の組成比に従い、実施例10と同様の方法で、鉱物質繊維板を得た。評価結果を表6〜7に示す。
【0117】
なお、表4〜7の評価結果は、以下の評価方法により得た。
【0118】
<定着率>
接着剤の定着率は、抄造により得られる鉱物質繊維板を細かく粉砕、又は、鉱物質繊維板の表層を削り取って、るつぼに入れ、有機物を燃焼させ、燃焼前後の質量を測定し、次の式にて算出した。
定着率(%)=[(燃焼前の鉱物質繊維板の質量(g)−燃焼後の残査の質量(g))×100/燃焼前の鉱物質繊維板の質量(g)]/[(接着剤重量比+PAC重量比+PAM重量比)/(鉱物繊維全成分重量比)]
【0119】
<曲げ強さ>
鉱物質繊維板の曲げ強さは、JIS A 1408に準じて測定した。
【0120】
<厚さ>
鉱物質繊維板の厚さは、ノギスを用いて測定した。
なお、実施例10〜20、比較例6〜13の鉱物質繊維板は、いずれも熱プレス時の設定厚みが2mmである。得られた鉱物質繊維板の厚さが2mmに近いほど、スプリングバックが少なく良好であることを示している。ここで、スプリングバッグとは、熱プレス後に開圧した際に、設定厚みより実際の厚さが厚くなることを示す。
【0121】
<白水汚染>
ウェットマット作成時に吸引脱水した際の水を、ガラス瓶にサンプリングし、目視にて評価した。
A:濁りが無く透明
B:白濁
【0122】
【表4】

【0123】
【表5】

【0124】
【表6】

【0125】
【表7】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩を、ポリイソシアネート化合物と反応させてなる自己乳化型イソシアネート化合物を含有する、無機繊維用ポリウレタン系接着剤。
【化1】


[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]
【請求項2】
下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩を、該塩以外の活性水素基含有化合物の存在下でポリイソシアネート化合物と反応させてなる自己乳化型イソシアネート化合物を含有する、無機繊維用ポリウレタン系接着剤。
【化2】


[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18の炭化水素基、をそれぞれ示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はカルボキシル基を示し、Xは、Cl、Br、I、BF、NO、CHSO、CSO、CSO、CSO、CHSO、又はCHSOを示す。但し、R及びRの少なくとも一方は水酸基を有していなければならない。]
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩に対する前記活性水素基含有化合物の当量比が、1〜100である、請求項2に記載の無機繊維用ポリウレタン系接着剤。
【請求項4】
及びRはいずれも水素原子であり、Xは、Cl又はBrである請求項1〜3のいずれか一項に記載の無機繊維用ポリウレタン系接着剤。
【請求項5】
は炭素数4〜12のアルキル基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機繊維用ポリウレタン系接着剤。
【請求項6】
一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩が下記一般式(2)で表されるイミダゾリウム塩である請求項1〜3のいずれか一項に記載の無機繊維用ポリウレタン系接着剤。
【化3】


[式中、Rは炭素数4〜12の炭化水素基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基又は水素原子、nは1〜18の数、XはCl又はBr、をそれぞれ示す。]
【請求項7】
は炭素数4〜12のアルキル基、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は水素原子である請求項6に記載の無機繊維用ポリウレタン系接着剤。
【請求項8】
鉱物質繊維と請求項1〜7のいずれか1項に記載の無機繊維用ポリウレタン系接着剤とを含有するスラリーを抄造した抄造物中の前記無機繊維用ポリウレタン系接着剤を硬化させてなる、鉱物質繊維板状体。

【公開番号】特開2011−26447(P2011−26447A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173544(P2009−173544)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】