説明

無機酸化物担持触媒の製造方法

無機酸化物担持触媒の製造方法は、水性の酸浴を用いて無機酸化物成分に触媒金属を含浸させることを含む。より詳しくは、本方法は、シリカゲル又はシリカコゲル、例えばシリカ−ジルコニアコゲルのような無機酸化物成分を形成して洗浄することを含む。洗浄した無機酸化物成分は、次に酸浴と接触させてセシウムのような触媒金属の含浸を行わせて活性化無機酸化物成分を形成する。続いて、活性化成分を乾燥して触媒を形成する。得られる触媒は増加した表面積を有しており、これは触媒活性部位の接近容易性及び量の点で有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機酸化物担持触媒、特に触媒金属種を担持させるために多孔質材料を用いる触媒の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
無機酸化物、例えば多孔質シリカゲル及び他のシリカベースの成分は、産業界において触媒担体として広く用いられている。固定床又は流動床タイプのプロセスのためには、通常は、押出物のような成形された形状の触媒が必要である。成形された触媒粒子を製造するために2つのアプローチが通常用いられている。1つは、予め形成した担体粒子上に触媒成分を含浸させることを含み、他方は、無機酸化物担持触媒粉末を製造し、次に粉末を成形された触媒粒子に加工することを含む。
【0003】
多くの触媒用途においては、反応工程は触媒粒子上の触媒活性部位の接近容易性及び量によって制御される。したがって、多孔質材料においては、典型的にはより大きな表面積(SA)が接触プロセスのために好ましい。より大きな表面積は、増加した触媒活性部位に対する接近容易性を与えるだけでなく、より重要なことには、反応定数に対しても直接的に影響を与える。より大きな表面積は、通常はより速い反応を可能にし、これは一定時間あたりに製造される材料に関する向上した経済性に関係する。
【0004】
例えば押出物のような加工された粉末粒子触媒は、孔構造が機械的押出プロセスの間に崩壊する傾向を有しているので、しばしば減少した表面積を有する。またこれらは、典型的にはより高い製造コストを有する。その結果、顆粒状粒子に含浸させることがしばしば好ましい方法である。しかしながら、顆粒状物は機械的安定性の限界がある。ビーズは粒子状担体の他の態様を与える。かかる担体は、しばしば、ノズルを通してビーズ前駆体を押出してビーズを形成し、これを次に最終ビーズに硬化させることによって製造される。これらのビーズは顆粒化粒子と同様であるが、機械的により安定である。したがって、球状形態(ビーズ)の有利性を含浸粒子に関して典型的に見られる増加した表面積と組み合わせる解決法を見出すことが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明方法は、無機酸化物成分を形成し、次にそれを洗浄することを含む。本方法は更に、該成分を、触媒金属を含む水性の酸浴と接触させて、該成分に金属を含浸させることを含む。担体を酸浴中に浸漬することによって孔径分布が向上し、これにより担体上の触媒活性部位に対する反応物質の接近に関する拡散限界が減少することが分かった。活性化成分は乾燥して、それによって最終乾燥生成物を、化合物の製造のための数多くの接触プロセスにおいて用いるのに好適なものにする。
【0006】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明のいずれも本発明の例示であり、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、触媒、特に無機酸化物担持触媒の製造方法に関する。かかる触媒は、プロピオン酸又はプロピオン酸エステルのメタクリル酸へのアルドール縮合を触媒するのに有用である。本発明によって製造される触媒の他の用途としては、オレフィンの重合、脱水、ヒドロキシル化、及び異性化が挙げられる。本発明の触媒は、固定床反応器、又は他の反応環境、例えば流動床反応器内で触媒として用いることができる。
【0008】
一般に、本発明の触媒の製造においては4つの工程が含まれ、これは次の順番で行う。
1.無機酸化物成分を形成し;
2.成分を洗浄し;
3.成分を、触媒金属を含む水性の酸浴と接触させて成分に触媒金属を含浸させて活性化成分を形成し;そして
4.活性化無機酸化物成分を乾燥する。
【0009】
無機酸化物成分を形成する上記の第1の工程は、無機酸化物を形成するための数多くの従来のプロセスの1つであってよい。好適な無機酸化物は、触媒担体として典型的に用いられるもの、特に触媒種がそれに含浸されて担体の表面上に保持される多孔質担体である。したがって、比較的多孔質の無機酸化物が好ましい。かかる多孔質担体は、その上に触媒活性種を、粒子の周囲面だけでなく、粒子自体の内部の内部多孔質構造の表面にも適用することができる非常に優れた表面領域を与える。この内表面領域には、粒子の多孔質構造に入り込んでいる孔を通して接近することができる。
【0010】
シリカが、本発明において用いるのに好ましい無機酸化物である。好適なシリカ成分は、特にシリカゲル、コゲル、及び沈殿シリカのような、シリカ(SiO)を有し、触媒用の担体として用いられる任意の化合物であってよい。かかるシリカ成分は、従来の製造及び精製プロセスによって製造することができる。例えば、シリカ成分は、Lawsonらの米国特許4,422,959、Michalkoらの3,972,833、又はMuellerらの5,625,013、或いはvan Beemらのカナダ特許1,064,008(これらはそれぞれ参照として本明細書中に包含する)に記載されている方法によって形成することができる。
【0011】
より詳しくは、シリカゲルは、硫酸のような鉱酸、及びケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウムのようなアルカリ金属シリケートの水溶液を同時に且つ瞬時に混合することによって形成することができる。濃度及び流速又は割合は、ヒドロゾルが約5〜25%のSiOを含み、シリケート溶液中に存在するアルカリ金属の大部分が中和されるように調節することができる。次に、シリケート/酸の混合物を、標準的な方法を用いて従来のノズルを通して押出す。ノズルから、混合物がヒドロゾルビーズを形成し、これを速やかに固化させてヒドロゲルを形成する。ビーズは、好ましくは7.0未満、より好ましくは4.0未満のpHを有する水中で捕集することができる。
【0012】
触媒金属としてセシウムを用い、触媒をビーズの形態のエチレン性不飽和酸又はエステルの製造において用いる一態様においては、ヒドロゾルは、約15〜約20%のシリカ(SiO)を含み、約7〜8のpHを有し、ほんの20〜1,000ミリ秒でゲル化する。これにより、鉱酸によって部分的にしか中和されていないシリケート溶液が得られ、この場合においては、反応物質は空気中での噴霧によって球状体に形成される。周知のように、部分的に中和されているヒドロゲル(即ちアルカリ性側)は、比較的短いゲル化時間を有し、空気中で球状体を形成する。
【0013】
シリカの態様に関して上記で言及したように、無機酸化物成分はコゲルであってよい。この態様においては、コゲルを形成する工程は、アルカリ金属酸化物、例えば無機酸化物がシリカである場合にはシリケート、鉱酸、及び第2の金属の源を配合してヒドロゾルを形成し、ヒドロゾルを固化させることを含む。コゲルの1態様においては、まず鉱酸を第2の金属の源と混合して混合物を形成し、これを次にアルカリ金属酸化物と配合することができる。あるいは、第2の金属の源を、別の流れによって鉱酸及びアルカリ金属酸化物溶液と混合することができる。
【0014】
第2の金属は、幾つかの条件下において、運転中に触媒を安定化させるように働くことができ、また触媒活性を向上させるように働くこともできる。かかる金属としては、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、鉄等が挙げられる。これら及び他の金属の選択は、当業者に周知であり、他のファクターの中でもとりわけ触媒の所望の最終用途によって定まる。例えば、チタンは酸化触媒における好適な成分であり、アルミニウムはアルキル化触媒における好適な成分であることが知られている。第2の金属の特定の量は、当業者によって特定することができ、少なすぎる量の第2の金属は安定化効果を有さず、一方、多すぎる量の第2の金属は触媒の選択性に悪影響を与える可能性があることが認識される。第2の金属の典型的な範囲は、最終触媒の約0.05〜1.5重量%(乾燥基準)を構成するようなものであってよいが、この範囲は数多くのファクターに基づいて変動する。
【0015】
WO−99/52628(参照として本明細書中に包含する)に開示されているような一態様においては、安定化金属はジルコニウムであり、ジルコニウムの源はオルト硫酸ジルコニウムである。ジルコニウムの他の源としては、とりわけ、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニル、及び臭化ジルコニルが挙げられる。シリカ−ジルコニアコゲルの製造方法は当該技術において周知であり、かかる方法の幾つかは米国特許5,069,816(参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0016】
上記で言及したように、本発明の無機酸化物成分は好ましくはシリカであり、これはシリカゲルビーズ(又は他の金属をドープしたシリカゲルビーズ)の形態であってよく、硫酸(又は、通常は金属硫酸塩若しくはオルト硫酸塩の形態の他の金属をドープした酸)によってケイ酸ナトリウムを部分的に中和することによって形成することができる。より詳しくは、シリカヒドロゾルは、ケイ酸ナトリウム及び酸を同時に且つ瞬時に混合し、次にノズルを通して押出すことによって形成する。ノズルから、混合物がヒドロゾルの液滴を形成し、これを速やかに固化させてヒドロゲルビーズを形成する。ビーズの寸法は重要ではなく、広範囲にわたって変化させてよい。幾つかの用途においては、ビーズの寸法は、殆どの固定床運転のために寸法範囲である0.5mm未満乃至8mm、より典型的には1mm〜4mmの間で変動させることができる。
【0017】
次に、無機酸化物成分を洗浄する。成分がシリカベースのものである場合には、1つの洗浄方法は、シリカベースの成分を酸性化し、次にそれを酸性化水又は脱イオン水で洗浄して、ナトリウム、カリウム、鉄、アルミニウム、チタン、マグネシウム、及びカルシウムのような金属不純物の濃度を減少させることを含む。例えば、シリカビーズは硫酸に曝露することによって4.0未満、好ましくは2.0〜3.0の間、より好ましくは約2.5のようなpHに酸性化することができる。用いる酸性化水は、典型的には硫酸を用いることによって約2.0〜4の間、より好ましくは約2.0〜3.0の間に調節したpHを有していてよい。洗浄浴の温度は20〜90℃の範囲であってよい。無機酸化物成分を洗浄する際には、成分は当業者が「熟成」又はその幾つかの文法的変形で呼ぶプロセスを受ける可能性もあることに注意すべきである。特定の理論には縛られないが、上記で言及した洗浄機能を果たすプロセスは、製造される中間体及び最終生成物に一定の特性を与える熟成機能も有すると考えられる。例えば、成分中の無機酸化物は、洗浄プロセス中に好ましくは有益なように再分散される。可能性のある有益な特性としては、最終生成物の特性を向上させること及び/又は多孔度及び孔径分布を変化させることが挙げられる。したがって、本明細書においては、「洗浄」プロセス及び工程への言及は、無機酸化物成分から上記で言及した汚染物質を除去すること、即ち洗浄と、成分を熟成させることの両方のプロセスを包含する。
【0018】
いずれの洗浄方法も特に好ましいものではなく、他の公知の方法を用いることができる。用いる特定の洗浄方法に関係なく、流出液中のナトリウム濃度が許容できるレベル又はそれ以下、好ましくは0又はそれ付近になるまで、当該技術において周知の複数の洗浄段階を用いることができる。これは、原子吸光、又はより容易にはイオン伝導度によって測定することができる。洗浄は、バッチプロセスとしてか、並行流によるか、又は対向流によって行うことができる。
【0019】
洗浄した無機酸化物成分は、次に触媒金属を含む水性の酸浴と接触させる。接触時間及び温度のようなこの工程の条件は、成分に触媒金属を含浸させて活性成分を形成することができるように選択する。好ましくは、金属と表面ヒドロキシル基との間の反応が平衡に到達するか又はほぼ到達するように条件を選択する。殆どの場合において、一定の金属装填量、例えば350m/gの表面積を有するゲルについて6重量%(乾燥基準)のセシウムを目標とする。特定の条件は、無機酸化物成分のタイプ、成分のヒドロキシル濃度、及び用いる特定の触媒金属及びその形態のような数多くのファクターによって変化する。したがって、接触時間及び温度は、約1〜8時間で室温乃至60℃又はそれ以上のような広範囲にわたって変化させることができる。しばしば2.0時間の接触時間が十分なものである。また、水性の酸浴の濃度も、触媒金属の溶解度限界を考慮して広範囲にわたって変化させることができる。例えば、金属の濃度は、浴のpHによって浴の約2〜約8重量%の範囲であってよい。より低いpHは、有効な触媒装填を与えるためにより高い金属濃度を必要とする。例えば、含浸浴が約2のpHである場合には、浴中の金属濃度はおそらく約8重量%である必要があるであろう。僅かな撹拌を用いて含浸を促進させることができるが、球状体の一部の破壊を引き起こすほど過度に強くてはならない。
【0020】
酸性条件下で成分に触媒金属を含浸させると、反応物質のための有利な接近可能な表面が達成されることが見出された。特定の理論には拘束されないが、含浸浴の酸性により表面領域が改質されると考えられる。また、酸含浸浴によって、存在しているか又は無機酸化物成分の製造及び洗浄中に生成する孔の寸法が維持されることも留意される。浴のpHは、含浸の終了時に測定して酸性であり、即ち0及び/又は負のpHを含む7.0未満のpHを有する。好ましくは、酸浴のpHは約1.0〜6.5の間、更により好ましくは約3.0〜5.0の間である。酸浴を製造するのに用いる好ましい酸のpKaは約1〜5の範囲である。約3〜約5の範囲のpKaを有する酸が特に好ましいが、強酸もまた適当に希釈するならば好適である。ギ酸又は酢酸が、本発明の触媒含浸浴を製造するために特に好適である。酸の量は広範囲にわたって変化させることができる。無機酸化物成分がシリカヒドロゲルである場合には、酸の量は、2〜3のpHにおいてシリカヒドロゲル1gあたり0.07〜0.12gの酸であってよい。他方において、浴のpHが約6.5である場合には、酸の量は少量、例えば0.0004/gであってよい。
【0021】
酸浴は触媒金属の塩を含んでいてよく、触媒金属は、1種類以上のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属、並びに他の金属であってよい。触媒金属としてセシウムを用いる場合には、ギ酸セシウム、炭酸セシウム、硝酸セシウム、酢酸セシウム、塩化セシウム等の形態で水と混合する。酸浴は、好ましくは緩衝して、無機酸化物及び/又は触媒金属の担体上への堆積に悪影響を与えるpH変動における劇的な低下を抑止する。含浸工程の後、無機酸化物成分は、活性触媒成分がその上に含浸されているという点で「活性化」されているとみなされる。
【0022】
一般に、触媒金属としてセシウムを用いる幾つかの態様の方法により、約2〜約16重量%のセシウムを含む最終触媒を与えることができ、乾燥基準で約4〜約12重量%の範囲のセシウム量がより典型的である。
【0023】
活性化された無機酸化物成分は、乾燥ユニット又はオーブン内などで乾燥する。成分がシリカである場合には、成分を約0.01重量%〜25重量%の間の任意の程度の湿分含量に乾燥することができる。典型的には、触媒は5重量%未満の湿分に乾燥する。同一のユニット内か又は別のユニット内のいずれかにおいて、乾燥した成分を次にカ焼することができる。カ焼するか否かは、無機酸化物、及び触媒の最終用途に大きく依存する。カ焼の詳細は当業者に周知である。カ焼条件は、経験的に、無機酸化物の組成、触媒の所期の用途などの数多くのファクターによって決定することができる。
【0024】
本発明の触媒は、固定床及び流動床用途において用いることができ、この場合には、触媒はその製造されたままの球状形態で用いることができる。また、触媒を粉砕して、粉末として用いるか、又は顆粒状物、ペレット、凝集体、又は押出物に再成形することもできる。触媒の形態は、主として触媒の所望の最終用途及びその最終用途中の条件によって規定される。固定床触媒粒子に関する粒径は1mm〜約8mm又はそれ以上の範囲である。流動床用途のための粒径は一般に1.0mm未満である。
【0025】
本発明の触媒のポロシメトリー特性は特に有利である。これらの特性としては、アルカリ性の含浸浴を用いて製造される同様の触媒と比較した成分の増加した孔容積、孔径、及び表面積が挙げられる。例えば、U.S.2003/0069130を参照。しかしながら、特定の値は触媒の最終用途によってある程度規定される。多くの場合においては、触媒の表面積がより大きいと、触媒はより活性であると考えられる。更に、上記したように、本発明によって比較的大きな平均孔径が保持され、したがって本発明から製造される触媒はより広い範囲の反応物質に対して活性である可能性がある。すなわち、少なくとも0.80mL/gの孔容積、少なくとも300m/gの表面積、及び少なくとも8.0nmの平均孔径(APD)が多くの場合において望ましく、ここで、孔容積、表面積、及び孔容積はBET(1)法によって測定し、APDはBET測定値(2)から算出する。本発明は、一般に、0.50mL/g〜約1.1mL/gの範囲の孔容積、250m/g〜約550m/g、より典型的には350m/g〜約450m/gの表面積を有する触媒を与える。上記で示したように、無機酸化物成分の平均孔径は、一定の閾値よりも大きくて、そのために所望の最終用途において反応物質が触媒の内表面に到達することができるようになっていることが望ましい。APDは、一般に最終触媒における触媒金属の装填量によって影響を受ける。触媒中の触媒金属の装填量が増加すると、APDはおそらくは所定範囲の下限に向かって変化し、例えばAPDは5〜8mmの範囲に下降し、一方、触媒金属の装填量が減少すると、APDはAPDの範囲の上限、例えば11〜15nmの範囲になる傾向がある。
【0026】
(1)ここで報告する表面積及び孔径はBET法を用いて測定する。上記の範囲及び以下の実施例における結果は、以下の条件を用いてASAPポロシメーター上で測定する。
測定タイプ:13ポイント(ポイント1〜5は表面積に関し、6〜13は孔容積に関する);
急速排気:なし;
漏れ試験間隔:120秒;
平衡化間隔:20秒;
P/P0許容差:2.0%、1.0mmHg;
P0間隔:60分;
固定投与量:0.0cc/g STP,0.0000p/p0まで適用;
(2)次式(BET PV×40,000)/BET SAによって算出される平均孔径(APD)。
【0027】
本発明の範囲は、いかなるようにも下記に示す実施例によって限定されることを意図しない。実施例は特許請求された発明の特定の例示として与える。しかしながら、本発明は実施例において示される特定の詳細に限定されないことを理解すべきである。
【0028】
実施例、並びに固体の組成及び濃度に関する明細書の残りの部分における全ての部及びパーセントは、他に特定しない限りにおいて重量によるものである。気体混合物の濃度は、他に特定しない限りにおいて体積によるものである。
【0029】
更に、明細書又は特許請求の範囲において示す全ての数値範囲、例えば特定の特性の組、測定単位、条件、物理的状態、又は割合を示すものは、明らかに、言及するか又は他の方法で示すかかる範囲内に含まれる全ての数値、並びにそのように示されている全ての範囲内の数値の全ての部分集合を文字通り含むものであると意図される。
【実施例】
【0030】
実施例1:
工程1:ビーズの流出:
オルト硫酸ジルコニウム(850g)(濃度18重量%)及びケイ酸ナトリウム(12567.58g)(SiO濃度17.5重量%)と混合した硫酸(24500g)(濃度15重量%)の混合物を、1.16の(硫酸+オルト硫酸ジルコニウム)/ケイ酸ナトリウムの比で混合ノズル内から流出させた。ゲル化時間は1秒未満であり、混合物がノズルから回収プールに飛去する間に空気中でビーズが形成された。回収プール内の水は3.0のpHに調節した。シリカ/ジルコニア(Si−Zr)ヒドロゲルビーズが回収された。
【0031】
工程2:ビーズの洗浄:
金属不純物の濃度を減少させるために、回収されたビーズを幾つかの工程で洗浄した。次にビーズを、材料の孔構造及び機械的強度を変化させる洗浄プロセスに通した。洗浄プロセス工程は、
(a)pH2.0〜2.5、20℃の硫酸溶液で18時間洗浄し;
(b)成分をpH9.0〜10.0、75℃のアンモニア溶液中に4時間静置し;
(c)pH3.0〜5.0、35〜40℃の硫酸溶液中で20分間洗浄し、この工程を5回繰り返し;そして
(d)35℃の脱イオン水で15分間洗浄し、この工程を2回繰り返す;
ことを含んでいた。
【0032】
工程3:ヒドロゲルビーズへのセシウムの含浸:
Si−Zrヒドロゲルビーズに、室温においてpH2.5(ギ酸によって緩衝)の6重量%ギ酸セシウム溶液を2.5時間含浸させた。
【0033】
工程4:ヒドロゲルビーズの乾燥:
湿潤状態のヒドロゲルビーズを、オーブン内において、90℃で18時間乾燥した。得られた乾燥した活性化触媒は以下の特性を有していた。
【0034】
結果:
表面積(BET)=361m/g;
孔容積(BET)=0.90mL/g;
平均孔径(算出)=10.0nm;
全揮発分含量@950℃=8.4%;
セシウム(Cs)含量=13.1重量% db;
ジルコニウム(Zr)含量=1.04重量% db。
【0035】
実施例2:
以下のようにして6種類の更なる触媒を調製した。結果は、含浸浴のpHを低下させると平均孔容積及び平均孔径が増加することを示した。
【0036】
工程1:ビーズの流出:
1kgのオルト硫酸ジルコニウム(濃度18重量%)及び13kgのケイ酸ナトリウム(SiO濃度17.5重量%)と混合した25kgの硫酸(濃度15重量%)の混合物を、1.27の(硫酸+オルト硫酸ジルコニウム)/ケイ酸ナトリウムの比で混合ノズル内から流出させた。ゲル化時間は1秒未満であり、混合物がノズルから回収プールに飛去する間に空気中でビーズが形成された。回収プール内の水は4.0のpHに調節した。ゲル化の前に、ケイ酸ナトリウムを7℃に、硫酸+オルト硫酸ジルコニウム混合物を4.5℃に冷却した。
【0037】
工程2:ビーズの洗浄:
金属不純物の濃度を減少させるために、ビーズを12の工程で洗浄した。工程は以下の通りであった。
【0038】
(a)pH3.0、40℃の硫酸溶液で18時間洗浄し;
(b)pH9.0、80℃のアンモニア溶液で3時間更に洗浄し;
(c)pH2.5、40℃の硫酸溶液で20分間再び洗浄し、これを5回繰り返し;そして
(d)40℃の脱イオン水で15分間洗浄し、これを5回繰り返した。
【0039】
工程3:ヒドロゲルビーズへのセシウムの含浸:
Si−Zrヒドロゲルビーズに、室温において、3種類のpHレベル及び3種類の異なるセシウム濃度のギ酸セシウム溶液を2.5時間含浸させた。それぞれに関するpH及び濃度を下表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
工程4:ヒドロゲルビーズの乾燥:
湿潤状態のヒドロゲルビーズを、オーブン内において、80℃で18時間乾燥して、950℃において測定して平均で5.5%の全揮発分を得た。
【0042】
孔構造の結果を下表2に示す。
与えられたCs装填量においてpHを低下させると、孔容積及び平均孔径が増加した。pH4.0において特に有利な結果が見出された。
【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物成分を形成し;該成分を洗浄し;該成分を、触媒金属を含む水性の酸浴と接触させて該成分に該触媒金属を含浸させて活性化成分を形成し;そして該無機酸化物成分を乾燥して触媒を形成する;ことを含む触媒の製造方法。
【請求項2】
該酸浴が金属含浸の終了時において約1.0〜約6.5の間のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該酸浴が金属含浸の終了時において約3.0〜約5.0の間のpHを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水性の酸浴を、約1〜5の範囲のpKaを有する酸を用いて製造する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
水性の酸浴を、約3〜5の範囲のpKaを有する酸を用いて製造する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該酸浴が該触媒金属の塩を更に含み、該触媒金属がアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該塩が該触媒金属とギ酸との塩である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該触媒金属がセシウムであり、該塩が、炭酸セシウム、ギ酸セシウム、酢酸セシウム、硝酸セシウム、塩化セシウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
該無機酸化物成分がシリカを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
該シリカがシリカゲルを含み、該シリカゲルを形成する工程が、アルカリ金属シリケートを鉱酸と混合してヒドロゾルを形成し、該ヒドロゾルを固化させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該シリカがコゲルを含み、該コゲルを形成する工程が、アルカリ金属シリケート、鉱酸、及び第2の金属の源を配合してヒドロゾルを形成し、該ヒドロゾルを固化させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
配合工程が、まず該鉱酸を該第2の金属の源と混合して混合物を形成し、次に該アルカリ金属シリケートを該混合物と配合することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該第2の金属が、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、及び鉄からなる群から選択される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
該第2の金属がジルコニウムであり、該ジルコニウムの源がオルト硫酸ジルコニウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の方法によって製造される生成物。
【請求項16】
生成物が少なくとも8nmの平均孔径を有する、請求項15に記載の生成物。
【請求項17】
生成物が250〜550m/gの表面積を有する、請求項15又は16に記載の生成物。
【請求項18】
生成物が少なくとも300m/gの表面積を有する、請求項15又は16に記載の生成物。
【請求項19】
生成物が350〜450m/gの表面積を有する、請求項17に記載の生成物。
【請求項20】
アルカリ金属シリケート、鉱酸、及びジルコニウムの源を配合してヒドロゾルを形成し、該ヒドロゾルを固化させてコゲルを形成し;該コゲルを洗浄し;該コゲルを、セシウムを含む水性の酸浴と接触させて、該コゲルに該セシウムを含浸させて活性化成分を形成し(ここで、該浴は金属含浸の終了時において7.0より低いpHを有する);そして該活性化成分を乾燥して触媒を形成する;工程を含む触媒の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法によって製造される生成物。
【請求項22】
生成物が少なくとも300m/gの表面積を有する、請求項21に記載の生成物。
【請求項23】
生成物が350〜450m/gの表面積を有する、請求項22に記載の生成物。

【公表番号】特表2010−532251(P2010−532251A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513796(P2010−513796)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005509
【国際公開番号】WO2009/003722
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(500445446)グレース・ゲーエムベーハー・ウント・コムパニー・カーゲー (12)
【Fターム(参考)】