説明

無機酸化物粒子、無機酸化物粒子分散体、及びこれらの製造方法

【課題】新規な無機酸化物粒子分散体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の無機酸化物粒子分散体の製造方法は、無機酸化物からなる粒子と、表面修飾剤を含む溶液を湿式媒体ミルで撹拌する方法である。ここで、無機酸化物は、Si,Ti,W, V, Y, Ag, Mg, Al, Fe, Ni, Ce, Co, Mo, Au, Pt, Ta, Lu, Zr, Cu, Zn, Pd, Cd, Cr, Pb, Mnから選ばれるいずれか1種の酸化物、またはいずれか2種以上の組み合わせの酸化物であることが好ましい。また、表面修飾剤は、カップリング剤または界面活性剤であることが好ましい。また、水の添加において、カップリング剤に含まれるアルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比は、0.1〜5の範囲内にあることが好ましい。また、湿式媒体ミルは、ビーズミルであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な無機酸化物粒子に関する。また、本発明は、新規な無機酸化物粒子分散体に関する。また、本発明は、新規な無機酸化物粒子の製造方法に関する。また、本発明は、新規な無機酸化物粒子分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は液相にて合成する方法や固体を粉砕して得る方法、また、気相から合成する方法など様々な手法により製造されている。これらナノ粒子は分散して使用されることにより製品の性能が向上する。そこで、様々な分散手法が検討されている。
【0003】

例えば、ビーズミルにて微粒子を表面修飾し、微粒子の分散溶液を製造する方法が報告されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、微粒子にビーズミルにて表面修飾を行ったあと、溶液を加熱し粒子を乾燥させ、得られた粒子を再びビーズミルに投入し粉砕して均一分散したスラリーを得ることが報告されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、水中にて微小粒子(一次粒子径15nm)をビーズミルにて粒子一個の大きさまで分散させる方法が報告されている(非特許文献1参照)。
【0006】
一方、カップリング剤を凝集粒子に反応させることが報告されている(非特許文献2参照)。
【0007】
なお、発明者は、本発明に関連する技術内容を開示している(非特許文献3参照。)。これは、特許法第30条第1項を適用できるものと考えられる。
【0008】
【特許文献1】特開2007-308631
【特許文献2】特開2005-113110
【非特許文献1】M. Inkyo et al., J. Colloid. Interface Sci. 304 (2006) 535
【非特許文献2】M. Iijima et al., J. Colloid. Interface Sci. 305 (2007) 315
【非特許文献3】古川 紀行ら「カップリング処理と物理的手法の組合せによるシリカナノ粒子の分散」粉体工学会秋期研究発表会(2007年10月17,18日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、ビーズミルにて微粒子を表面修飾し、微粒子の分散溶液を製造している(特許文献1参照)。しかし、分散溶液の安定性についての検討は全くなされていない。
【0010】
また、微粒子にビーズミルにて表面修飾を行ったあと、溶液を加熱し粒子を乾燥させ、得られた粒子を再びビーズミルに投入し粉砕して均一分散したスラリーを得ることが報告されている(特許文献2参照)。しかし、この手法では、均一分散したスラリーを得るために2段階の処理が必要である。さらに、得られた分散溶液の安定性についての検討は全くなされていない。
【0011】
また、水中にて微小粒子(一次粒子径15nm)をビーズミルにて粒子一個の大きさまで分散させる方法が報告されている(非特許文献1参照)。しかし、粒子には表面修飾を施さないため、粒子一個の大きさまで分散した後は、再び凝集する傾向が見られ、分散安定性に問題がある。
【0012】
一方、カップリング剤を凝集粒子に反応させることが報告されている(非特許文献2参照)。しかし、一次粒子まで微細化した分散溶液の製造に関する内容の記述はない。
【0013】
そのため、このような課題を解決する、新規な無機酸化物粒子、及び新規な無機酸化物粒子分散体の開発が望まれている。
また、新規な無機酸化物粒子の製造方法、及び新規な無機酸化物粒子分散体の製造方法の開発が望まれている。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、新規な無機酸化物粒子を提供することを目的とする。また、本発明は、新規な無機酸化物粒子分散体を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、新規な無機酸化物粒子の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、新規な無機酸化物粒子分散体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の無機酸化物粒子は、無機酸化物からなる粒子の表面に表面修飾剤が存在し、50%粒径が8.9〜545nmの範囲内にある。
【0017】
ここで、限定されるわけではないが、無機酸化物は、Si,Ti,W, V, Y, Ag, Mg, Al, Fe, Ni, Ce, Co, Mo, Au, Pt, Ta, Lu, Zr, Cu, Zn, Pd, Cd, Cr, Pb, Mnから選ばれるいずれか1種の酸化物、またはいずれか2種以上の組み合わせの酸化物であることが好ましい。また、限定されるわけではないが、表面修飾剤は、カップリング剤または界面活性剤であることが好ましい。また、限定されるわけではないが、カップリング剤は、次の一般式で表される化合物であることが好ましい。SiR(OR’)4-xこの一般式において、R は、ビニル基;アリル基;3-グリシドキシプロピル基;2-(3 ,4エポキシシクロヘキシル)エチル基;3-アクリロキシプロピル基;3-メタクリロプロピル基;スチリル基;3-アミノプロピル基;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基;N-フェニル-3-アミノプロピル基;炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基から選択された1種または2種以上である。また、この一般式において、R’は、炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基、メチルカルボキシ基から選択された1種または2種以上である。また、限定されるわけではないが、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などから選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせであることが好ましい。また、限定されるわけではないが、80%粒径が16〜982nmの範囲内にあることが好ましい。また、限定されるわけではないが、粒子単位表面積あたりに反応した表面修飾剤の量は3.0〜8.0μmol/m2の範囲内にあることが好ましい。
【0018】
本発明の無機酸化物粒子分散体は、無機酸化物からなる粒子の表面に表面修飾剤が存在し、50%粒径が8.9〜545nmの範囲内にある無機酸化物粒子を含有するものである。
【0019】
ここで、限定されるわけではないが、無機酸化物は、Si,Ti,W, V, Y, Ag, Mg, Al, Fe, Ni, Ce, Co, Mo, Au, Pt, Ta, Lu, Zr, Cu, Zn, Pd, Cd, Cr, Pb, Mnから選ばれるいずれか1種の酸化物、またはいずれか2種以上の組み合わせの酸化物であることが好ましい。また、限定されるわけではないが、表面修飾剤は、カップリング剤または界面活性剤であることが好ましい。また、限定されるわけではないが、カップリング剤は、次の一般式で表される化合物であることが好ましい。SiR(OR’)4-xこの一般式において、R は、ビニル基;アリル基;3-グリシドキシプロピル基;2-(3 ,4エポキシシクロヘキシル)エチル基;3-アクリロキシプロピル基;3-メタクリロプロピル基;スチリル基;3-アミノプロピル基;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基;N-フェニル-3-アミノプロピル基;炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基から選択された1種または2種以上である。また、この一般式において、R’は、炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基、メチルカルボキシ基から選択された1種または2種以上である。また、限定されるわけではないが、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などから選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせであることが好ましい。また、限定されるわけではないが、80%粒径が16〜982nmの範囲内にあることが好ましい。また、限定されるわけではないが、粒子単位表面積あたりに反応した表面修飾剤の量は3.0〜8.0μmol/m2の範囲内にあることが好ましい。
【0020】
本発明の無機酸化物粒子の製造方法は、無機酸化物からなる粒子と、表面修飾剤を含む溶液を湿式媒体ミルで撹拌する方法である。
【0021】
ここで、限定されるわけではないが、無機酸化物は、Si,Ti,W, V, Y, Ag, Mg, Al, Fe, Ni, Ce, Co, Mo, Au, Pt, Ta, Lu, Zr, Cu, Zn, Pd, Cd, Cr, Pb, Mnから選ばれるいずれか1種の酸化物、またはいずれか2種以上の組み合わせの酸化物であることが好ましい。また、限定されるわけではないが、表面修飾剤は、カップリング剤または界面活性剤であることが好ましい。また、限定されるわけではないが、カップリング剤は、次の一般式で表される化合物であることが好ましい。SiR(OR’)4-xこの一般式において、R は、ビニル基;アリル基;3-グリシドキシプロピル基;2-(3 ,4エポキシシクロヘキシル)エチル基;3-アクリロキシプロピル基;3-メタクリロプロピル基;スチリル基;3-アミノプロピル基;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基;N-フェニル-3-アミノプロピル基;炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基から選択された1種または2種以上である。また、この一般式において、R’は、炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基、メチルカルボキシ基から選択された1種または2種以上である。また、限定されるわけではないが、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などから選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせであることが好ましい。また、限定されるわけではないが、水の添加において、カップリング剤に含まれるアルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比は、0.1〜5の範囲内にあることが好ましい。また、限定されるわけではないが、湿式媒体ミルは、ビーズミルであることが好ましい。
【0022】
本発明の無機酸化物粒子分散体の製造方法は、無機酸化物からなる粒子と、表面修飾剤を含む溶液を湿式媒体ミルで撹拌する方法である。
【0023】
ここで、限定されるわけではないが、無機酸化物は、Si,Ti,W, V, Y, Ag, Mg, Al, Fe, Ni, Ce, Co, Mo, Au, Pt, Ta, Lu, Zr, Cu, Zn, Pd, Cd, Cr, Pb, Mnから選ばれるいずれか1種の酸化物、またはいずれか2種以上の組み合わせの酸化物であることが好ましい。また、限定されるわけではないが、表面修飾剤は、カップリング剤または界面活性剤であることが好ましい。また、限定されるわけではないが、カップリング剤は、次の一般式で表される化合物であることが好ましい。SiR(OR’)4-xこの一般式において、R は、ビニル基;アリル基;3-グリシドキシプロピル基;2-(3 ,4エポキシシクロヘキシル)エチル基;3-アクリロキシプロピル基;3-メタクリロプロピル基;スチリル基;3-アミノプロピル基;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基;N-フェニル-3-アミノプロピル基;炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基から選択された1種または2種以上である。また、この一般式において、R’は、炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基、メチルカルボキシ基から選択された1種または2種以上である。また、限定されるわけではないが、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などから選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせであることが好ましい。また、限定されるわけではないが、水の添加において、カップリング剤に含まれるアルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比は、0.1〜5の範囲内にあることが好ましい。また、限定されるわけではないが、湿式媒体ミルは、ビーズミルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
【0025】
本発明の無機酸化物粒子は、無機酸化物からなる粒子の表面に表面修飾剤が存在し、50%粒径が8.9〜545nmの範囲内にあるので、新規な無機酸化物粒子を提供することができる。
【0026】
本発明の無機酸化物粒子分散体は、無機酸化物からなる粒子の表面に表面修飾剤が存在し、50%粒径が8.9〜545nmの範囲内にある無機酸化物粒子を含有するので、新規な無機酸化物粒子分散体を提供することができる。
【0027】
本発明の無機酸化物粒子の製造方法は、無機酸化物からなる粒子と、表面修飾剤を含む溶液を湿式媒体ミルで撹拌するので、新規な無機酸化物粒子の製造方法を提供することができる。
【0028】
本発明の無機酸化物粒子分散体の製造方法は、無機酸化物からなる粒子と、表面修飾剤を含む溶液を湿式媒体ミルで撹拌するので、新規な無機酸化物粒子分散体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、無機酸化物粒子の製造方法、及び無機酸化物粒子分散体の製造方法にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0030】
無機酸化物粒子の製造方法は、無機酸化物からなる粒子と、表面修飾剤を含む溶液を湿式媒体ミルで撹拌する方法である。
無機酸化物粒子分散体の製造方法は、無機酸化物からなる粒子と、表面修飾剤を含む溶液を湿式媒体ミルで撹拌する方法である。
【0031】
無機酸化物としては、Si,Ti,W, V, Y, Ag, Mg, Al, Fe, Ni, Ce, Co, Mo, Au, Pt, Ta, Lu, Zr, Cu, Zn, Pd, Cd, Cr, Pb, Mnなどから選ばれるいずれか1種の酸化物、またはいずれか2種以上の組み合わせの酸化物を採用することができる。
【0032】
表面修飾剤としては、カップリング剤または界面活性剤等を採用することができる。
カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤などを採用することができる。
【0033】
シランカップリング剤としては、下記の一般式で表される化合物である。
SiR(OR’)4-x
この一般式において、R は、ビニル基;アリル基;3-グリシドキシプロピル基;2-(3 ,4エポキシシクロヘキシル)エチル基;3-アクリロキシプロピル基;3-メタクリロプロピル基;スチリル基;3-アミノプロピル基;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基;N-フェニル-3-アミノプロピル基;炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基から選択された1種または2種以上である。
また、この一般式において、R’は、炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基、メチルカルボキシ基から選択された1種または2種以上である。
【0034】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などから選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせを採用することができる。
【0035】
カップリング剤を使用する場合は水の添加が好ましい。水の添加において、カップリング剤に含まれるアルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比は、0.1〜5の範囲内にあることが好ましい。また、アルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比は0.5〜3の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0036】
アルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比が0.1以上であると、カップリング剤の反応量が増加するという利点がある。アルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比が0.5以上であると、この効果がより顕著になる。
【0037】
アルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比が5以下であると、カップリング剤の反応量が増加するという利点がある。アルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比が3以下であると、この効果がより顕著になる。
【0038】
溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、オクタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N ,N -ジメチルアセトアセトアミド、N -メチルピロリドン、水)などから選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせを採用することができる。
【0039】
湿式媒体ミルでの撹拌における溶液温度は10〜120℃の範囲内にあることが好ましい。また、溶液温度は27〜70℃の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0040】
溶液温度が10℃以上から120℃以下であると、溶媒が揮発しにくいという利点がある。溶液温度が27℃以上から70℃以下であると、この効果がより顕著になる。
【0041】
湿式媒体ミルでの撹拌における添加する水のpHは1〜14の範囲内にあることが好ましい。また、添加する水のpHは3〜12の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0042】
添加する水のpHが1以上であると、カップリング剤の反応量が向上するという利点がある。添加する水のpHが3以上であると、この効果がより顕著になる。添加する水のpHが14以下であると、カップリング剤の反応量が向上するという利点がある。溶液のpHが12以下であると、この効果がより顕著になる。
【0043】
湿式媒体ミルとしては、ビーズミルまたはボールミルなどを採用することができる。
湿式媒体ミルに用いる媒体粒子の粒径は15〜2500μmの範囲内にあることが好ましい。媒体粒径が15μm以上であると、分散溶液とビーズの分離が容易なるという利点がある。粒径が2500μm以下であると、微小な粒子の分散溶液を調整できるという利点がある。
【0044】
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0045】
つぎに、無機酸化物粒子及び無機酸化物粒子分散体にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0046】
無機酸化物粒子は、無機酸化物からなる粒子の表面に、表面修飾剤が存在し、50%粒径が8.9〜545nmの範囲内にあるものである。
無機酸化物粒子分散体は、無機酸化物からなる粒子の表面に、表面修飾剤が存在し、50%粒径が8.9〜545nmの範囲内にある無機酸化物粒子を含有するものである。
【0047】
無機酸化物としては、上述したものを採用することができる。
【0048】
無機酸化物粒子の50%粒径は、8.9〜545nmの範囲内にあることが好ましい。また、50%粒径は、8.9〜15.5nmの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0049】
50%粒径が8.9nm以上であると、分散溶液の長期安定性が向上するという利点がある。50%粒径が545nm以下であると、分散溶液の長期安定性が向上するという利点がある。50%粒径が15.5nm以下であると、この効果がより顕著になる。
【0050】
無機酸化物粒子の80%粒径は、16〜982nmの範囲内にあることが好ましい。また、80%粒径は16〜100nmの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0051】
80%粒径が16nm以上であると、分散溶液の長期安定性が向上するという利点がある。80%粒径が982nm以下であると、分散溶液の長期安定性が向上するという利点がある。80%粒径が100nm以下であると、この効果がより顕著になる。
【0052】
表面修飾剤としては、上述したものを採用することができる。表面修飾剤は、無機酸化物の表面に物理吸着または化学結合している。
【0053】
粒子単位表面積あたりに反応したカップリング剤の量は3.0〜8.0μmol/m2の範囲内にあることが好ましい。また、粒子単位表面積あたりに反応したカップリング剤の量は5.2〜6.2μmol/m2の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0054】
粒子単位表面積あたりに反応したカップリング剤の量が3.0μmol/m2以上であると、分散溶液の安定性が向上するという利点がある。粒子単位表面積あたりに反応したカップリング剤の量が5.2μmol/m2以上であると、この効果がより顕著になる。
【0055】
粒子単位表面積あたりに反応したカップリング剤の量が8.0μmol/m2以下であると、分散溶液の安定性が向上するという利点がある。粒子単位表面積あたりに反応したカップリング剤の量が6.2μmol/m2以下であると、この効果がより顕著になる。
【0056】
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【実施例】
【0057】
つぎに、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
【0058】
試料の調整について説明する。
【0059】
実施例1
最初に、ビーカーに有機溶媒としてN-methyl-2-pyrrolidone(99%, 関東化学株式会社)、表面修飾剤であるカップリング剤としてN-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilane(Momentive performance materials Inc.)、カップリング剤の反応促進剤として水を入れた。ここで、水のpHは水酸化ナトリウムを用いて12に調整されている。この水を溶媒質量に対して1質量%入れた(この水の添加量はカップリング剤のアルコキシ基の等モル量である)。N-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilaneは溶媒質量に対して4.7質量%入れた。有機溶媒、カップリング剤、水の混合溶液をマグネティックスターラーで30秒間撹拌した。撹拌した溶液に、有機溶媒を基準として5質量%のSiO2粒子(BET換算径10.5 nm, ホソカワ粉体技術研究所)を投入し、この粒子を含む溶液をマグネティックスターラーで5分間撹拌した。
【0060】
ビーズミル(PCM-LR, 浅田鉄工株式会社)の容器に平均粒子径30μmのZrO2製ビーズ(グレードφ30, 光文工業株式会社)を207.4g充填した。ビーズミルの容器と上記溶液を装置本体に設置した。ビーズミルの容器は二重構造になっており、ここに水道水を流して内部分散溶液を冷却した。ビーズミルのローター周速を10m/sに設定し撹拌を開始した。撹拌時間1h後にミルの運転を停止した。停止後、溶液の温度を測定すると30℃になっていた。このようにして得られた溶液を試料とした。
【0061】
実施例2
ビーズミルでの撹拌時間を3hとしたこと以外は実施例1と同様である。
【0062】
実施例3
ビーズミルでの撹拌時間を5hとしたこと以外は実施例1と同様である。
【0063】
実施例4
ビーズミルでの撹拌時間を8hとしたこと以外は実施例1と同様である。
【0064】
比較例1
実施例1において有機溶媒、カップリング剤、水、粒子の混合溶液をマグネティックスターラーで5分間撹拌したものを試料とした。
【0065】
比較例2
ビーカーに有機溶媒としてN-methyl-2-pyrrolidone(99%, 関東化学株式会社)、表面修飾剤であるカップリング剤としてN-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilane(Momentive performance materials Inc.)、カップリング剤の反応促進剤として水を入れた。ここで、水のpHは水酸化ナトリウムを用いて12に調整されている。この水を溶媒質量に対して1質量%入れた。N-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilaneは溶媒質量に対して4.7質量%入れた。この混合溶液をマグネティックスターラーで1h間撹拌したものを試料とした。
【0066】
比較例3
マグネティックスターラーで3h撹拌したこと以外は比較例2と同様である。
【0067】
比較例4
マグネティックスターラーで8h撹拌したこと以外は比較例2と同様である。
【0068】
実施例5
水のpHを塩化水素水溶液にて3に調整しこの水を使用したことと、ビーズミルでの撹拌を8h行った後に30日置いたこと以外は実施例1と同様である。この溶液を試料とした。
【0069】
実施例6
水のpHを塩化水素水溶液または水酸化ナトリウムにて7に調整しこの水を使用したことと、ビーズミルでの撹拌を8h行った後に30日置いたこと以外は実施例1と同様である。この溶液を試料とした。
【0070】
実施例7
ビーズミルでの撹拌を8h行った後に30日置いた以外は実施例1と同様である。この溶液を試料とした。
【0071】
実施例8
水のpHを塩化水素水溶液にて3に調整しこの水を使用したことと、ビーズミルでの撹拌を8h行った後に180日置いたこと以外は実施例1と同様である。この溶液を試料とした。
【0072】
実施例9
水のpHを塩化水素水溶液または水酸化ナトリウムにて7に調整しこの水を使用したことと、ビーズミルでの撹拌を8h行った後に180日置いたこと以外は実施例1と同様である。この溶液を試料とした。
【0073】
実施例10
ビーズミルでの撹拌を8h行った後に180日置いた以外は実施例1と同様である。この溶液を試料とした。
【0074】
比較例5
カップリング剤を使用しないことと、ビーズミル撹拌時間を1h、3h、4hとしていること以外は実施例1と同様である。この溶液を試料とした。
【0075】
比較例6
ビーカーに有機溶媒としてN-methyl-2-pyrrolidone(99%, 関東化学株式会社)、表面修飾剤であるカップリング剤としてN-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilane(Momentive performance materials Inc.)、カップリング剤の反応促進剤として水を入れた。ここで、水のpHは水酸化ナトリウムを用いて12に調整されている。この水を溶媒質量に対して1質量%入れた。N-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilaneは溶媒質量に対して4.7質量%入れた。有機溶媒、カップリング剤、水の混合溶液をマグネティックスターラーで30秒間撹拌した。撹拌した溶液に、有機溶媒を基準として5質量%のSiO2粒子(BET換算径10.5 nm, ホソカワ粉体技術研究所)を投入し、この粒子を含む溶液をマグネティックスターラーで5分間撹拌した。この溶液を試料とした。
【0076】
比較例7
マグネティックスターラーで1h撹拌したこと以外は比較例6と同様である。この溶液を試料とした。
【0077】
比較例8
マグネティックスターラーで3h撹拌したこと以外は比較例6と同様である。この溶液を試料とした。
【0078】
比較例9
マグネティックスターラーで8h撹拌したこと以外は比較例6と同様である。この溶液を試料とした。
【0079】
比較例10
ビーカーに有機溶媒としてN-methyl-2-pyrrolidone(99%, 関東化学株式会社)、表面修飾剤であるカップリング剤としてN-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilane(Momentive performance materials Inc.)、カップリング剤の反応促進剤として水を入れた。ここで、水のpHは水酸化ナトリウムを用いて12に調整されている。この水を溶媒質量に対して1質量%入れた。N-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilaneは溶媒質量に対して4.7質量%入れた。有機溶媒、カップリング剤、水の混合溶液をマグネティックスターラーで30秒間撹拌した。撹拌した溶液に、有機溶媒を基準として5質量%のSiO2粒子(BET換算径10.5 nm, ホソカワ粉体技術研究所)を投入し、この粒子を含む溶液をマグネティックスターラーで8h撹拌した。撹拌時の温度は27℃である。この溶液を試料とした。
【0080】
比較例11
水のpHを塩化水素水溶液にて3に調整しこの水を使用したこと以外は比較例10と同様である。
【0081】
比較例12
水のpHを塩化水素水溶液または水酸化ナトリウムにて7に調整しこの水を使用したこと以外は比較例10と同様である。
【0082】
比較例13
撹拌時の温度を47℃にしたこと以外は比較例10と同様である。
【0083】
比較例14
水のpHを塩化水素水溶液にて3に調整しこの水を使用したことと、撹拌時の温度を47℃にしたこと以外は比較例10と同様である。
【0084】
比較例15
水のpHを塩化水素水溶液または水酸化ナトリウムにて7に調整しこの水を使用したことと、撹拌時の温度を47℃にしたこと以外は比較例10と同様である。
【0085】
比較例16
撹拌時の温度を70℃にしたこと以外は比較例10と同様である。
【0086】
比較例17
水のpHを塩化水素水溶液にて3に調整しこの水を使用したことと、撹拌時の温度を70℃にしたこと以外は比較例10と同様である。
【0087】
比較例18
水のpHを塩化水素水溶液または水酸化ナトリウムにて7に調整しこの水を使用したことと、撹拌時の温度を70℃にしたこと以外は比較例10と同様である。
【0088】
実施例11
ビーカーに有機溶媒としてN-methyl-2-pyrrolidone(99%, 関東化学株式会社)、表面修飾剤であるカップリング剤としてN-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilane(Momentive performance materials Inc.)、カップリング剤の反応促進剤として水を入れた。ここで、水のpHは水酸化ナトリウムを用いて12に調整されている。この水を溶媒質量に対して0.37質量%入れた。N-Phenyl-3-aminopropyltrimethoxysilaneは溶媒質量に対して1.7質量%入れた。有機溶媒、カップリング剤、水の混合溶液をマグネティックスターラーで30秒間撹拌した。撹拌した溶液に、有機溶媒を基準として5質量%の、80質量%SiO2/20質量%TiO2粒子(BET換算径22 nm, ホソカワ粉体技術研究所)を投入し、この粒子を含む溶液をマグネティックスターラーで5分間撹拌した。
【0089】
ビーズミル(PCM-LR, 浅田鉄工株式会社)の容器に平均粒子径30μmのZrO2製ビーズ(グレードφ30, 光文工業株式会社)を207.4g充填した。ビーズミルの容器と上記溶液を装置本体に設置した。ビーズミルの容器は二重構造になっており、ここに水道水を流して内部分散溶液を冷却した。圧力は大気圧である。ビーズミルのローター周速を10m/sに設定し撹拌を開始した。撹拌時間1h後にミルの運転を停止した。このようにして得られた溶液を試料とした。
【0090】
実施例12
ビーズミルでの撹拌時間を4hとしたこと以外は実施例11と同様である。
【0091】
実施例13
ビーズミルでの撹拌時間を6hとしたこと以外は実施例11と同様である。
【0092】
実施例14
ビーズミルでの撹拌時間を8hとしたこと以外は実施例11と同様である。
【0093】
比較例19
実施例11において有機溶媒、カップリング剤、水、粒子の混合溶液をマグネティックスターラーで5分間撹拌したものを試料とした。
【0094】
実施例15
水のpHを塩化水素水溶液にて3に調整しこの水を使用したことと、撹拌時間が8hであること以外は実施例11と同様である。
【0095】
評価方法および評価結果について説明する。
【0096】
調整した試料(使用粒子:SiO2)が微小粒子として分散した溶液かを確認するため、動的光散乱法粒度分布測定装置(HP5001, Malvern Instruments Ltd)により粒度分布を測定した。図1の縦軸は体積基準の積算割合、横軸は粒子径である。また、図1中に縦の点線があり一次粒子径10.5nmとの記述があるが、これは使用した粒子の粉の状態にてBET測定(比表面積測定)により得られた値から算出した粒子径である。微小粒子において、この粒子径は電子顕微鏡で観察した粒子径とほぼ一致する。実施例1〜4と比較例1に示したように、ビーズミルでの撹拌時間を0h、1h、3h、5h、8hとした。撹拌時間が増えるにつれ粒子径が小さくなることが確認できた。特に8hの撹拌の後では、大きさがナノメートルオーダーであるため初期の粉の状態から激しく凝集している微粒子を、その粒子1個の大きさまで、ほぼ全量を分散した溶液を製造することができた。
【0097】
図1から50%, 80%粒子径を読み、図にしたものを図2、表にしたものを表1に示す。なお、表1の注意書における100nmの値は300minと480minの値から内挿により求めた。50%, 80%粒子径はともに、時間が経過するにつれ大幅に小さくなることがわかった。特に、8hの撹拌後では50%、80%粒子径はそれぞれ8.9nm、15.4nmであり、非常にシャープな粒度分布をもつ分散液が製造できることがわかった。
【0098】
【表1】

【0099】
図1において、製造した分散液には10%程度大きな粒子が含まれる結果が得られた。これが粒子によるものなのか、またはカップリング剤同士が結合して大きく成長し、粒子状のものとして測定されるのかを確認するため、粒子を入れずにスターラーにて撹拌した場合の粒度分布を動的光散乱法粒度分布測定装置にて測定した。この図の縦軸は体積基準の積算割合、横軸は粒子径である。比較例2〜4に示したように、撹拌時間1h、3h、8hにおいて、いずれの時間においても粒度分布は300nm〜700nmの範囲に大きさをもつものがあることわかった。この結果から、カップリング剤が撹拌の初期段階にお互いに結合し粒子状のものとなり、これが動的光散乱法粒度分布測定で検知されていることがわかった。
【0100】
図3の結果をもとに図1の結果を再度検討した。10%程度含まれるものは粒子径が250〜800nmの範囲にあり、図2で測定された粒子径と一致することがわかった。つまり、この10%程度含まれるものはカップリング剤によるものである。この結果から、図1の粒度分布はカップリング剤も加味した結果を表しており、粒子そのものの粒度分布としてみた場合、粒子は80%以上のほぼ全量が粒子1個として分散しているものと推測できる。図1〜3の結果をふまえて、本発明により粒度分布が非常にシャープで粒子をその1個の大きさで分散した溶液を製造することができた。
【0101】
試料の調整において添加する水のpHが分散性に影響を及ぼすのか、また、得られた溶液の分散状態は安定なのかを確認するため、実施例5〜7に示したように添加する水のpHを3, 7, 12とし、ビーズミルで8h撹拌を行いその後30日おいた試料を用いた。この試料の粒度分布を動的光散乱法粒度分布測定装置にて測定した。この図の縦軸は体積基準の積算割合、横軸は粒子径である。添加する水のpHがかわっても同様の粒度分布が得られることがわかった。また、図1の8h撹拌した結果を比較すると、本試料の粒度分布とかわらないことがわかった。この結果より、分散溶液は30日間の安定性があることがわかった。
【0102】
図5において30日間の安定性があることが確認されたが、より長期間の安定性があるのかを確認するため、実施例8〜10に示したように180日おいた試料の粒度分布を動的光散乱法粒度分布測定装置により測定した。30日間おいた試料と比べると若干の粒子の粗大化が確認されるものの、70%程度の粒子が粒子1個の大きさとして分散していることがわかった。また、この結果からも添加する水のpHに影響を受けないことが確認できた。以上の結果から、本発明により、非常に安定性の高い分散溶液を製造できることがわかった。
【0103】
本発明は、カップリング剤を使用することとビーズミルを用いることにより初めて安定性の高い分散溶液の製造が可能になるものなのかを確認するため、まず、比較例5に示したようにカップリング剤を用いない場合での撹拌を行った。このようにして得られた試料の粒度分布を動的光散乱法粒度分布測定装置により測定し、測定結果から50%, 90%粒子径の経時変化を示す。ビーズミルでの撹拌においてカップリング剤を使用しない場合、ある時間まではカップリング剤を入れた場合と同様に粒子径が小さくなるものの、その後は再び粒子径が大きくなることがわかった。
【0104】
また、ビーズミルでなくとも、本発明で得られた分散溶液が得られるのかを確認するため、比較例6〜9に示したようにスターラーにて撹拌を行った。このようにして得られた試料の粒度分布を動的光散乱法粒度分布測定装置により測定し、測定結果から50%, 90%粒子径の経時変化を示す。スターラーでの撹拌では全く粒子が小さくならないことがわかった。図7、8をふまえて、本発明により初めて粒子径を小さくできることが確認された。
【0105】
本発明により得られた分散溶液中の粒子へのカップリング剤の反応量を元素分析装置(JM10 MICRO CODER, J-SCIENCE LAB Co., Ltd)を用いて確認した。ここで元素分析の試料には、分散溶液の溶媒を乾燥させた粒子を用いた。図の縦軸は投入粒子の単位表面積あたりのカップリング剤の反応量を示している。ビーズミルで撹拌したものとの比較として、スターラーで撹拌したものを比較例10〜11に示したように行った。カップリング剤の反応量は、ビーズミルで撹拌を行った場合、pH3, 7, 12においてそれぞれ5.6, 5.2, 6,2 [μmol/m2]であった。ビーズミルとスターラーともに添加した水のpHによる差はみられなかった。この結果は図5、6との結果と一致している。また、ビーズミルで撹拌したものはスターラーで撹拌したものに対して3倍程度多くカップリング剤が反応していることが確認された。この反応量の違いにより安定した分散溶液が得られたものと考えられる。カップリング剤反応量の増加は、水の添加によるカップリング剤のアルコキシ基のOH基への変化の促進のため、このOH基と粒子表面のOH基が反応し易くなる効果によるものである。
【0106】
図9において、撹拌方法によりカップリング剤の反応量に違いがあることがわかった。ビーズミルではビーズによる摩擦が起こり、この摩擦熱のために反応が促進され反応量が増加したと考えられるため、温度によるカップリング剤反応量への影響を比較例13〜18に示したように確認した。縦軸は図9と同様に、投入粒子の単位表面積あたりのカップリング剤の反応量を示している。温度を27℃、47℃、70℃と変化させても反応量に違いが見られないことから、この範囲の温度による影響はないことがわかった。
【0107】
反応しているカップリング剤が粒子表面にどのようについているのかを確認するためFT-IR(Nicolet NEXUS 470, Thermo Electon Co., Ltd.)にて、粒子表面での吸収スペクトルを測定した。ここで、試料にはビーズミルにて撹拌して得られた分散溶液の溶媒を乾燥させて得られた粒子を用いた。カップリング剤にて表面修飾を行う前の粒子表面にはSiからOH基が伸びており、このピークがIsolated SiOHのピークとしてシャープに測定された。ビーズミルにて撹拌を行い、カップリング剤での表面修飾を行ったあとの粒子表面ではIsolated SiOHのピークが小さくなっており、はじめに存在したOH基が反応したことがわかった。また、カップリング剤はその構造からCH2、芳香環、芳香族第2級アミンを持つが、それぞれのピークを確認するとはじめの粒子に対して大きなピークが確認された。以上の結果から、カップリング剤は粒子表面にあったOH基を介して、化学結合によりついていることがわかった。つまり、安定した状態で表面修飾が行われる方法であることがわかった。
スターラーで撹拌を行った場合の試料において、カップリング剤が粒子表面にどのようについているのかを確認するためFT-IR(Nicolet NEXUS 470, Thermo Electon Co., Ltd.)にて、粒子表面での吸収スペクトルを測定した。ここで、試料には撹拌して得られた分散溶液の溶媒を乾燥させて得られた粒子を用いた。図11と同様に、はじめの粒子表面に存在していたOH基のシャープなピークが小さくなっていることが確認された。また、CH2、芳香環、芳香族第2級アミンのピークが大きくなっていることから、カップリング剤の存在が確認された。ただし、ビーズミルで撹拌した試料のピークと比較すると、スターラーで撹拌した場合はCH2、芳香環、芳香族第2級アミンのピークが小さいことが確認された。よって、ビーズミルで撹拌した場合には、カップリング剤の反応量が図9での説明のようにスターラーのものに比べて多くなることが確認された。
【0108】
調整した試料(使用粒子:80質量%SiO2/20質量%TiO2)が微小粒子として分散した溶液かを確認するため、動的光散乱法粒度分布測定装置(HP5001, Malvern Instruments Ltd)により粒度分布を測定した。この図の縦軸は体積基準の積算割合、横軸は粒子径である。また、図13中に縦の点線があり一次粒子径22nmとの記述があるが、これは使用した粒子の粉の状態にてBET測定(比表面積測定)により得られた値から算出した粒子径である。微小粒子において、この粒子径は電子顕微鏡で観察した粒子径とほぼ一致する。実施例11〜14と比較例19に示したように、ビーズミルでの撹拌時間を0h、1h、4h、6h、8hとした。撹拌時間が増えるにつれ粒子径が小さくなることが確認できた。特に8hの撹拌の後では、大きさがナノメートルオーダーであるため初期の粉の状態から激しく凝集している微粒子を、その粒子1個の大きさまで、ほぼ全量を分散した溶液を製造することができた。図1に示したSiO2粒子と異なる粒子においても粒子を分散させることができ、本発明が応用性の高いものであることが確認できた。
【0109】
図13から50%, 80%粒子径を読み、図にしたものを図14、表にしたものを表2に示す。なお、表2の注意書における100nmの値は300minと480minの値から内挿により求めた。50%, 80%粒子径はともに、時間が経過するにつれ大幅に小さくなることがわかった。特に、8hの撹拌後では50%、80%粒子径はそれぞれ6.8nm、16nmであり、80質量%SiO2/20質量%TiO2粒子についても非常にシャープな粒度分布をもつ分散液が製造できることがわかった。
【0110】
【表2】

【0111】
試料の調整において添加する水のpHが分散性に影響を及ぼすのか、また、得られた溶液の分散状態は安定なのかを確認するため、実施例15に示したように添加する水のpHを3としビーズミルで8h撹拌した試料を調整した。この試料の粒度分布を動的光散乱法粒度分布測定装置にて測定した。その結果を図15に示す。この図の縦軸は体積基準の積算割合、横軸は粒子径である。添加する水のpHがかわっても同様の粒度分布が得られることが80質量%SiO2/20質量%TiO2粒子の場合についても確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】動的光散乱粒度分布の測定結果を示す図である。
【図2】動的光散乱粒度分布の測定結果を示す図である。
【図3】カップリング剤の大きさを示す図である。
【図4】動的光散乱粒度分布の測定結果を示す図である。
【図5】動的光散乱粒度分布の測定結果を示す図である。
【図6】動的光散乱粒度分布の測定結果を示す図である。
【図7】化学的表面修飾の影響を示す図である。
【図8】物理的解砕の影響を示す図である。
【図9】カップリング剤の反応量を示す図である。
【図10】カップリング反応における温度の影響を示す図である。
【図11】SiO2粒子表面の分析結果を示す図である。
【図12】SiO2粒子表面の分析結果を示す図である。
【図13】動的光散乱粒度分布の測定結果を示す図である。
【図14】動的光散乱粒度分布の測定結果を示す図である。
【図15】動的光散乱粒度分布の測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物からなる粒子の表面に、表面修飾剤が存在し、
50%粒径が8.9〜545nmの範囲内にある
無機酸化物粒子。
【請求項2】
無機酸化物は、Si,Ti,W, V, Y, Ag, Mg, Al, Fe, Ni, Ce, Co, Mo, Au, Pt, Ta, Lu, Zr, Cu, Zn, Pd, Cd, Cr, Pb, Mnから選ばれるいずれか1種の酸化物、またはいずれか2種以上の組み合わせの酸化物である
請求項1記載の無機酸化物粒子。
【請求項3】
表面修飾剤は、カップリング剤または界面活性剤である
請求項1記載の無機酸化物粒子。
【請求項4】
カップリング剤は、下記の一般式で表される化合物である
SiR(OR’)4-x
この一般式において、R は、ビニル基;アリル基;3-グリシドキシプロピル基;2-(3 ,4エポキシシクロヘキシル)エチル基;3-アクリロキシプロピル基;3-メタクリロプロピル基;スチリル基;3-アミノプロピル基;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基;N-フェニル-3-アミノプロピル基;炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基から選択された1種または2種以上である。
また、この一般式において、R’は、炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基、メチルカルボキシ基から選択された1種または2種以上である。
請求項3記載の無機酸化物粒子。
【請求項5】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤から選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせである
請求項3記載の無機酸化物粒子。
【請求項6】
80%粒径が16〜982nmの範囲内にある
請求項1記載の無機酸化物粒子。
【請求項7】
粒子単位表面積あたりに反応した表面修飾剤の量は3.0〜8.0μmol/m2の範囲内にある
請求項1記載の無機酸化物粒子。
【請求項8】
無機酸化物からなる粒子の表面に、表面修飾剤が存在し、
50%粒径が8.9〜545nmの範囲内にある無機酸化物粒子を含有する
無機酸化物粒子分散体。
【請求項9】
無機酸化物は、Si,Ti,W, V, Y, Ag, Mg, Al, Fe, Ni, Ce, Co, Mo, Au, Pt, Ta, Lu, Zr, Cu, Zn, Pd, Cd, Cr, Pb, Mnから選ばれるいずれか1種の酸化物、またはいずれか2種以上の組み合わせの酸化物である
請求項8記載の無機酸化物粒子分散体。
【請求項10】
表面修飾剤は、カップリング剤または界面活性剤である
請求項8記載の無機酸化物粒子分散体。
【請求項11】
カップリング剤は、下記の一般式で表される化合物である
SiR(OR’)4-x
この一般式において、R は、ビニル基;アリル基;3-グリシドキシプロピル基;2-(3 ,4エポキシシクロヘキシル)エチル基;3-アクリロキシプロピル基;3-メタクリロプロピル基;スチリル基;3-アミノプロピル基;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基;N-フェニル-3-アミノプロピル基;炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基から選択された1種または2種以上である。
また、この一般式において、R’は、炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基、メチルカルボキシ基から選択された1種または2種以上である。
請求項10記載の無機酸化物粒子分散体。
【請求項12】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤から選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせである
請求項10記載の無機酸化物粒子分散体。
【請求項13】
80%粒径が16〜982nmの範囲内にある
請求項8記載の無機酸化物粒子分散体。
【請求項14】
粒子単位表面積あたりに反応した表面修飾剤の量は3.0〜8.0μmol/m2の範囲内にある
請求項8記載の無機酸化物粒子分散体。
【請求項15】
無機酸化物からなる粒子と、表面修飾剤を含む溶液を
湿式媒体ミルで撹拌する
無機酸化物粒子の製造方法。
【請求項16】
無機酸化物は、Si,Ti,W, V, Y, Ag, Mg, Al, Fe, Ni, Ce, Co, Mo, Au, Pt, Ta, Lu, Zr, Cu, Zn, Pd, Cd, Cr, Pb, Mnから選ばれるいずれか1種の酸化物、またはいずれか2種以上の組み合わせの酸化物である
請求項15記載の無機酸化物粒子の製造方法。
【請求項17】
表面修飾剤は、カップリング剤または界面活性剤である
請求項15記載の無機酸化物粒子の製造方法。
【請求項18】
カップリング剤は、下記の一般式で表される化合物である
SiR(OR’)4-x
この一般式において、R は、ビニル基;アリル基;3-グリシドキシプロピル基;2-(3 ,4エポキシシクロヘキシル)エチル基;3-アクリロキシプロピル基;3-メタクリロプロピル基;スチリル基;3-アミノプロピル基;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基;N-フェニル-3-アミノプロピル基;炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基から選択された1種または2種以上である。
また、この一般式において、R’は、炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基、メチルカルボキシ基から選択された1種または2種以上である。
請求項17記載の無機酸化物粒子の製造方法。
【請求項19】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤から選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせである
請求項17記載の無機酸化物粒子の製造方法。
【請求項20】
水の添加において、カップリング剤に含まれるアルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比は、0.1〜5の範囲内にある
請求項17記載の無機酸化物粒子の製造方法。
【請求項21】
湿式媒体ミルは、ビーズミルである
請求項15記載の無機酸化物粒子の製造方法。
【請求項22】
無機酸化物からなる粒子と、表面修飾剤を含む溶液を
湿式媒体ミルで撹拌する
無機酸化物粒子分散体の製造方法。
【請求項23】
無機酸化物は、Si,Ti,W, V, Y, Ag, Mg, Al, Fe, Ni, Ce, Co, Mo, Au, Pt, Ta, Lu, Zr, Cu, Zn, Pd, Cd, Cr, Pb, Mnから選ばれるいずれか1種の酸化物、またはいずれか2種以上の組み合わせの酸化物である
請求項22記載の無機酸化物粒子分散体の製造方法。
【請求項24】
表面修飾剤は、カップリング剤または界面活性剤である
請求項22記載の無機酸化物粒子分散体の製造方法。
【請求項25】
カップリング剤は、下記の一般式で表される化合物である
SiR(OR’)4-x
この一般式において、R は、ビニル基;アリル基;3-グリシドキシプロピル基;2-(3 ,4エポキシシクロヘキシル)エチル基;3-アクリロキシプロピル基;3-メタクリロプロピル基;スチリル基;3-アミノプロピル基;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基;N-フェニル-3-アミノプロピル基;炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基から選択された1種または2種以上である。
また、この一般式において、R’は、炭素数が1以上、20以下のアルキル基;フェニル基、メチルカルボキシ基から選択された1種または2種以上である。
請求項24記載の無機酸化物粒子分散体の製造方法。
【請求項26】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤から選ばれるいずれか1種、またはいずれか2種以上の組み合わせである
請求項24記載の無機酸化物粒子分散体の製造方法。
【請求項27】
水の添加において、カップリング剤に含まれるアルコキシ基のモル数に対する水のモル数の比は、0.1〜5の範囲内にある
請求項24記載の無機酸化物粒子分散体の製造方法。
【請求項28】
湿式媒体ミルは、ビーズミルである
請求項22記載の無機酸化物粒子分散体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−256131(P2009−256131A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106258(P2008−106258)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔研究集会名〕 粉体工学会秋期研究発表会 〔主催者名〕 粉体工学会 〔開催日〕 平成19年10月16日
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】