説明

無気泡ガス溶解方法

【課題】本発明は、気泡を実質的に発生させずに、効率良くガスを液相に溶解させるガス溶解方法を提供することを課題とする。
【解決手段】気相を構成するガスを液相に多孔質膜を介して溶解させる方法であって、当該多孔質膜の細孔中で、(1)液相と、加圧した気相とを接触させ、かつ(2)当該ガスを当該液相に溶解させることを特徴とする、ガス溶解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相への新規なガス溶解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを液体に溶解する代表的な方法として、散気管、イジェクターなどを用いて気泡を生成し、この気泡を介して気体を液体に溶解する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの方法ではガスの溶解効率が極めて低いという問題が生じている。この問題は、気泡を微細化することにより改善されつつあるが(特許文献1)、それでもまだ溶解効率には改良の余地が十分にある。また、その問題に加えて、オゾン等の取り扱いに注意を要するガスを溶解させる場合には、液体中に溶解できなかった未溶解ガス等を処理する工程や設備が必要となり、工業的に不利になるという問題がある。
【0004】
さらに、細胞培養、微生物培養などの分野においても、気泡を介したガス溶解方法により培養液に酸素ガス、炭酸ガスなどのガスを溶解することが行われているが、この分野においては、上記溶解効率が低い等の問題に加えて、ガス気泡の存在により細胞にストレスを与えたり、培養液に泡沫が発生し不具合が生じるという問題もある。
【0005】
したがって、これらの諸問題を解決しようとして、気泡を介することなく、必要とするガスを液体に溶解する、無気泡ガス溶解方法が提案されている(非特許文献1及び2)。
【0006】
しかしながら、これらの提案されている方法においても、ガス溶解速度は以前遅く、実用化に至っていないのが現状である。したがって、より効率良くガスを液体に溶解する方法の提供が望まれている。
【特許文献1】特開平2-279158号公報
【非特許文献1】Bubble-free oxygenation by means of hydrophobic porous membrane, Eng. Microbial Technol., 17 (1995) 839-847
【非特許文献2】Bubble-free ozone contacting with ceramic membranes for wet oxidative treatment, Chem. Eng. Technol., 23 (2000) 674-677
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、気泡を実質的に発生させずに、効率良くガスを液相に溶解させるガス溶解方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の工程を得ることにより、上記問題を解決するに至った。すなわち、本発明は、下記のガス溶解方法に係る。
【0009】
項1.気相を構成するガスを液相に多孔質膜を介して溶解させる方法であって、
当該多孔質膜の細孔中で、(1)液相と、加圧した気相とを接触させ、かつ(2)当該ガスを当該液相に溶解させることを特徴とする、ガス溶解方法。
【0010】
項2.前記溶解を、液相中に気泡が実質的に混入しないように行う、項1に記載の方法。
【0011】
項3.気相と液相との圧力差が、下記式(1)で規定される圧力PBP以下である、項1又は2に記載の方法。
【0012】
【数1】

【0013】
(ただし、式中、 γ は、液相の表面張力を示す。θ は多孔質膜の細孔表面と液相との接触角を示す。Dm は、多孔質膜の細孔径(直径)を示す。)
【0014】
項4.気相と液相との接触界面が実質的に全て多孔質膜の細孔内に存在する、項1〜3のいずれかに記載の方法。
【0015】
項5.多孔質膜が、相対累積細孔分布曲線において、細孔容積が全体の10%を占めるときの細孔径を細孔容積が全体の90%を占めるときの細孔径で除した値が1〜1.5の範囲内である、項1〜4のいずれかに記載の方法。
【0016】
項6.液相に対する多孔質膜の接触角が90°以下である、項1〜5のいずれかに記載の方法。
【0017】
項7.多孔質膜の平均細孔径(直径)が50nmを超える、項1〜6のいずれかに記載の方法。
【0018】
項8.多孔質膜の平均膜厚が10μm〜1000μmである、項1〜7のいずれかに記載の方法。
【0019】
項9.多孔質膜が多孔質ガラス膜である、項1〜8のいずれかに記載の方法。
【0020】
項10.多孔質膜が有機高分子膜である、項1〜8のいずれかに記載の方法。
【0021】
本発明のガス溶解方法は、気相を構成するガスを液相に多孔質膜を介して溶解させる方法であって、当該多孔質膜の細孔中で、(1)液相と、加圧した気相とを接触させ、かつ(2)当該ガスを当該液相に溶解させることを特徴とする。本発明は、このような特徴を有することにより、気泡を実質的に発生させずに、効率良く液相にガスを溶解できる。また、気泡が発生しないため、未溶解ガスの処理が不要となり、さらに、細胞培養等の分野においては細胞にストレスを与えることなくガスを溶解させることが可能となる。以下、本発明を詳述する。
【0022】
本発明のガス溶解方法は、多孔質膜の細孔中で、液相と、加圧した気相とを接触させることにより、気相を構成するガスを当該液相に溶解させることを必須とする。
【0023】
本発明における「液相」とは、単一の液体もしくは2種以上の異なる液体を混合した液体を表す。本発明における「気相」とは、単一の気体もしくは2種以上の異なる気体を混合した気体を表す。
【0024】
液相としては、水相及び油相のいずれであってもよく、例えば、水、界面活性物質を添加した水溶液、塩類を添加した水溶液、油、界面活性物質を添加した油等が挙げられる。気相の具体例としては、窒素、酸素、オゾン、炭酸ガス等の単一の気体及び空気等の混合気体、或いはこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0025】
水相に添加する界面活性物質は限定的でなく、公知又は市販のものが使用できる。非イオン系界面活性剤、イオン系界面活性剤等のいずれであってもよい。非イオン系界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、レシチン、高分子界面活性剤等が挙げられる。イオン系界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルフォン酸塩、硫酸エステル塩等が挙げられる。また、界面活性を有する水溶性タンパク質、例えば、カゼインナトリウム、アルブミン等の天然由来の界面活性物質も使用できる。これら界面活性剤は単独で又は2種以上を混合して添加してもよい。これらの他に、例えば、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の天然又は合成由来の安定剤を添加してもよい。
【0026】
水相に添加する塩類としては限定的でなく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどの無機塩類が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して添加してもよい。
【0027】
油相に用いる油は限定的でなく、天然又は合成の油を用いることができる。例えば、大豆油、牛脂、ロウ等の動植物油脂類、液体油脂を水素添加して硬化した動植物油、これらを分別した動植物油等が挙げられる。また、炭化水素系、シリコン系、ポリアルキレングリコール系、カルボン酸エステル系、有機珪酸エステル系等の天然又は合成の油も用いることができる。これらの油性成分は、分別又は2種以上の成分を配合して用いることもできる。また、例えば、エタノール、メタノール等のアルコール類、トルエン、アセトン等の有機溶媒類も用いることができる。
【0028】
油相に添加する界面活性物質は限定的でなく、公知又は市販のものを使用できる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポロオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポロオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、レシチン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して添加してもよい。
【0029】
多孔質膜の細孔中で、液相と、加圧した気相とを接触させる方法は、例えば、多孔質膜の一方面に液相を接触させ、他方面に、加圧した気相を接触させればよいし、または、多孔質膜の一方面に液相を接触させ、他方面に、気相を接触させた後に、気相側を加圧してもよい。具体的には、例えば、多孔質膜が管状である場合は、多孔質膜の管内部を液相で満たし、多孔質膜の管外部を加圧した気相で満たせばよい。逆に、加圧した気相を管内部に満たし、液相を管外部に満たしてもよい。必要に応じて、液相を攪拌、循環等させて、液相に流れを生じさせてもよい。これにより、気相(ガス)溶解速度を向上させることができる。
【0030】
本発明のガス溶解方法は、液相中に気泡が実質的に混入しないように行うことが好ましい。これにより、気泡の発生によって生じる未溶解ガスの処理を不要にしたり、細胞培養時においては細胞にストレスを与えないようにすることができる。
【0031】
本発明のガス溶解方法は、気相と液相との接触界面が実質的に全て多孔質膜の細孔(貫通孔)内に存在する。これにより、液相中に気泡が混入しないようにすることができる。気相と液相との接触界面が実質的に全て多孔質膜の細孔内に存在させるためには、気相の圧力、多孔質膜の細孔径等を適宜調節すればよい。
【0032】
本発明のガス溶解方法は、気相側を加圧することを必須とする。これにより、気相に対する液相の溶解速度が増すため、気相溶解速度を向上させることができる。
【0033】
加圧する方法は限定的でなく常法に従って行えばよい。例えば、所望のガスを多孔質膜の一方面(気相が接触している面)にコンプレッサー等の加圧機、高圧ガスボンベなどを用いて高圧ガスを供給する方法等が挙げられる。
【0034】
本発明の具体的な実施態様の一例を図1に示す。管状多孔質膜、当該多孔質膜を包み込む膜モジュールa、及び液相が入ったタンクcを設置し、液相が当該管状多孔質膜の内側とタンクとを循環できるようにパイプを接続させる。次いで、当該パイプの途中に循環ポンプdを設けて、液相を循環させることにより、管状多孔質膜の管内に液相を送り込む。液相が管状多孔質膜の内側を通過している際に、ガスボンベbから、膜モジュールaの内部(管状多孔質膜の管外周辺部)に、所望の気相を導入し、管状多孔質膜周辺の気相を加圧させる。この導入及び加圧により、管状多孔質膜の細孔中で気相と液相とが接触し、ガスを当該液相に溶解させることができる。なお、圧力は高圧ボンベや膜モジュールの気相の入り口付近等に接続された圧力計f等によって適宜調節することができる。
【0035】
気相の圧力は、液相の圧力よりも高くすることが好ましい。この場合、液相と気相との圧力差(ΔP)は、通常10kPa〜5MPa程度、好ましくは100kPa〜3MPa程度とすればよい。ただし、圧力差の上限については、下記(1)のPBP(バブリングポイント圧)以下にすることが重要である。このPBPを超えると、液相中に気泡がただちに発生するおそれがある。なお、式(1)に示すPBPは、JIS K 3832の規定に準拠して測定される。
【0036】
【数2】

【0037】
(ただし、式中、 γ は、液相の表面張力を示す。θ は多孔質膜の細孔表面と液相との接触角を示す。Dm は、多孔質膜の細孔径(直径)を示す。)
【0038】
液相γの表面張力は特に制限されないが、例えば、液相として水を使用した場合は、通常75mN/m〜30mN/m程度、72mN/m〜35mN/m程度とすればよい。液相として油を使用した場合は、通常55mN/m〜2mN/m程度、50mN/m〜5mN/m程度とすればよい。
【0039】
上記式(1)から、多孔質膜の細孔径、接触角等によりPBPが異なる。以下、本発明で使用する多孔質膜について説明する。
【0040】
本発明で使用する多孔質膜では、上記Dすなわち、多孔質膜の細孔径(直径)が均一であることが好ましい。細孔径が不均一であると、平均細孔径の大小にかかわらず大きな細孔径が存在することとなるため、その細孔径が大きい細孔ではバブルポイント圧が小さくなってしまい、その結果、当該細孔から気泡が発生するおそれがある。すなわち、不均一であると、多孔質膜全体のバブリングポイント圧が低くなるため、加圧による効率的なガス溶解が困難となるおそれがある。これに対し、細孔径を均一にし、さらに細孔径を小さくすることにより、上記バブリングポイント圧を高く設定できる。その結果、より高圧で気相を液相に接触させ、より効率的にガスを溶解することができる。
【0041】
本発明において、細孔径が「均一」であるとは、多孔質膜の相対累積細孔分布曲線において,細孔容積が全体の10%を占める時の細孔径を全体の90%を占める時の細孔径で除した値が実質的に1から1.5まで(好ましくは1.2から1.4まで)の範囲内にあることをいう。
【0042】
多孔質膜は、対称膜及び非対称膜のいずれであってもよい。非対称膜の場合、通常、孔径の小さいスキン層(分離層)及びこれを支える孔径の大きい支持層から構成されるが、本発明において、非対称膜の細孔径が均一であるためには、少なくともスキン層の細孔径が均一であればよく、支持層の細孔径の均一性までは要求されない。
【0043】
本発明で用いる多孔質膜の形状は特に限定されず、本発明のガス溶解の条件等に応じて適宜決定すればよい。例えば、板状(平膜状)、円筒状(パイプ状)等の形状が挙げられる。
【0044】
多孔質膜の細孔は、実質的に貫通孔であることが好ましい。貫通孔であることにより、気相と液相とが接触し、液相にガスを溶解させることができる。貫通孔(細孔)は,その断面形状が円形、楕円状、長方形(スリット状)、正方形等のいずれの形状であってもよい。また、貫通孔は、膜面に対して垂直に貫通していてもよいし、斜めに貫通していてもよい。或いは、貫通孔どうしが絡み合った状態になってもよい。
【0045】
多孔質膜の材質も限定的でない。例えば、ガラス、セラミックス(例えば、多孔質アルミナ、多孔質ジルコニア)、シリコン、耐熱性高分子(例えば、中空糸膜)等が挙げられる。
【0046】
本発明では、多孔質膜として、特に多孔質ガラス膜を用いることが望ましい。多孔質ガラス膜としては、例えば、ガラスのミクロ相分離を利用して製造される多孔質ガラス膜が好適である。具体的には、特許第1504002号に開示されたCaO−B−SiO−Al系多孔質ガラス、特許第1518989号に開示されたCaO−B−SiO−Al−NaO系多孔質ガラス、CaO−B−SiO−Al−NaO−MgO系多孔質ガラス等が挙げられる。このようなガラスは均一性を極めて高くすることができるため、より高いバブリング圧で加圧することができ、より高効率でガスを溶解させることができる。また、気相として、反応性の高いオゾンガス等を用いる場合においても、オゾンガス等による多孔質膜の腐食を防止することができ、耐久性に優れる。
【0047】
本発明では、多孔質膜として、高分子、特に高分子製中空糸膜を使用することも好ましい。このような中空糸膜は公知又は市販のものを用いればよい。
【0048】
多孔質膜は、液相に対して濡れるものを使用することが好ましい。すなわち、液相に対する多孔質膜の接触角が90°以下のものを使用することが好ましく、より好ましくは0〜45°程度、最も好ましくは0〜30°程度である。液相との接触角が90°を超える多孔質膜を用いると、ただちに気泡が液相中に出るおそれがある。このような多孔質膜としては、例えば、液相として水を使用する場合は親水性の多孔質膜を使用すればよい。なお、多孔質膜自体が液相に濡れない材質であっても、多孔質膜の表面(細孔)に所望の表面処理又は改質処理を行うことにより、濡れるようにすれば好適に使用できる。
【0049】
多孔質膜の平均細孔径(直径)は、ガス溶解の条件等に応じて適宜選択すればよいが、50nmを超えることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1μm程度、最も好ましくは0.2μm〜0.5μm程度とすればよい。細孔径を大きくし過ぎると、バブリングポイント圧が低くなりすぎるため、溶解速度が遅くなるおそれがある。一方、細孔径を小さくしすぎると、液体中で溶解したガスの細孔内拡散の制限を受けて,ガス溶解速度が低下するおそれがある。
【0050】
多孔質膜の厚みは限定的でないが、通常平均10μm〜1000μm程度、好ましくは平均100μm〜500μm程度とすればよい。膜の厚みを薄くすぎると、膜の強度が低下して使い難くなるおそれがある。一方、膜を厚くしすぎると、液体中に溶解したガス分子の液相全体への拡散速度が低下するおそれがある。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、気泡を実質的に発生させずに、非常に効率良く液相にガスを無気泡で溶解することができる。また、未溶解ガスの処理が不要となるため、ガス溶解工程及び装備を簡易にすることができる。したがって、液相にガスを溶解する化学工学プロセスに工業的に利用することができる。例えば、オゾンガスを水に溶解してオゾン水を生成するプロセス、炭酸ガスを用いた晶析反応等の気液反応プロセスなどに利用できる。
【0052】
また、気泡を発生させないため、細胞培養等の分野においては細胞にストレスを与えることなく、また、培養液に泡沫を発生させずに、ガスを溶解させることも可能となる。したがって、水耕栽培、水産養殖、細胞培養、微生物培養、醸造及びバイオリアクター等の生物工学プロセスなどの分野にも利用することができる。このように、液相へのガス溶解に関する幅広い分野に工業的に利用できるため、本発明は非常に利用価値が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例1
管状多孔質ガラス膜を用いて、図1に示す試験装置を作製した。すなわち、管状多孔質ガラス膜、当該多孔質膜を包み込む膜モジュールa、及び液相(純水)が入ったタンクcを設置し、次いで、液相(純水)が管状多孔質ガラス膜とタンクとを循環できるようにパイプを接続させた。パイプの途中に循環ポンプdを設けた。また、膜モジュールaの気相入り口に、気相(空気)を送り込めるガスボンベb及び圧力計fを接続し、気相出口には、バルブeを接続した。
【0055】
なお、管状多孔質ガラス膜は、平均細孔径0.22μm、外径5mm、膜厚0.4mm、 膜長200mmの管状構造のものを用いた。多孔質ガラス膜は、その相対累積細孔分布曲線において、細孔容積が全体の10%を占める時の細孔径を全体の90%を占める時の細孔径で除した値が、1.2であった。
【0056】
循環ポンプを作動させて、この多孔質ガラス膜の管内に純水を流し、膜モジュール内部(多孔質ガラス膜の管外周辺部)に加圧した空気を送り込むことにより、当該多孔質ガラス膜の細孔内で、加圧した空気と純水を気液接触させ、空気を純水に溶解させた。空気と純水の差圧は0.2MPaとし、多孔質ガラス膜の管内の純水の平均線速度は0.1m/sに設定した。液温は20℃とした。
【0057】
この場合、1.1Lの体積の純水に溶解したときの溶存酸素濃度の経時変化を測定した。その測定結果を図2に示す。
【0058】
実施例2
平均細孔径の異なる7種類の管状多孔質ガラス膜を用いる以外は、実施例1と同様の装置を各種作製した。多孔質ガラス膜の平均細孔径は、それぞれ、0.08μm、0.22μm、0.50μm、1.0μm、5.5μm、10μm、20μmとした。
【0059】
循環ポンプを作動させて、これら多孔質ガラス膜の管内に純水を流し、膜モジュール内部(多孔質ガラス膜の管外周辺部)に加圧した空気を送り込むことにより、当該多孔質ガラス膜の細孔内で、加圧した空気と純水を気液接触させ、空気を純水に溶解させた。多孔質ガラス膜の管内の純水の平均線速度は0.1m/sに設定し、液温は25℃とした。
【0060】
この場合において、加圧される空気の圧力を上昇させて、各装置における液相中に気泡が生じる圧力差(バブリングポイント圧)を測定した。この測定結果を図3に示す。
【0061】
図3から明らかなように膜の平均細孔径が小さいほどバブルポイント圧は増大した。この測定したバブルポイント圧よりも低い膜間差圧(空気と純水との圧力差)に設定することにより、気泡を生成することなくガスを純水に溶解することが可能となることが分かる。
【0062】
実施例3
多孔質ガラス膜の平均細孔径が65nmである以外は実施例1と同様の装置を作製した。循環ポンプを作動させて、 多孔質ガラス膜の管内に純水を流し、膜モジュール内部(多孔質ガラス膜の管外周辺部)に加圧した空気を送り込むことにより、当該多孔質ガラス膜の細孔内で、加圧した空気と純水を気液接触させ、空気を1.1Lの体積の純水に溶解させた。この場合において、送り込む空気の圧力を変化させて、それぞれの圧力(0.1MPa、0.5MPa、3.0MPa)における空気中の酸素ガスの液相への溶解特性を測定した。この測定結果を図4に示す。
【0063】
図4から明らかなように、気相の圧力が高いほど、酸素ガスの溶解速度が高くなることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明を実施するための装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、実施例1で得られた、純水中に溶解した酸素濃度の経時変化の測定図を示す。
【図3】図3は、実施例2で得られた、多孔質ガラス膜の平均細孔径及びバブルポイント圧の関係図を示す。
【図4】図4は、実施例3で得られた、酸素ガス溶解特性の測定図を示す。
【符号の説明】
【0065】
a 膜モジュール
b ガスボンベ
c 純水タンク
d 水循環ポンプ
e バルブ
f 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相を構成するガスを液相に多孔質膜を介して溶解させる方法であって、
当該多孔質膜の細孔中で、(1)液相と、加圧した気相とを接触させ、かつ(2)当該ガスを当該液相に溶解させることを特徴とする、ガス溶解方法。
【請求項2】
前記溶解を、液相中に気泡が実質的に混入しないように行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
気相と液相との圧力差が、下記式(1)で規定される圧力PBP以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【数1】

(ただし、式中、 γは、液相の表面張力を示す。θは多孔質膜の細孔表面と液相との接触角を示す。Dm は、多孔質膜の細孔径(直径)を示す。)
【請求項4】
気相と液相との接触界面が実質的に全て多孔質膜の細孔内に存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
多孔質膜が、相対累積細孔分布曲線において、細孔容積が全体の10%を占めるときの細孔径を細孔容積が全体の90%を占めるときの細孔径で除した値が1〜1.5の範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
液相に対する多孔質膜の接触角が90°以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
多孔質膜の平均細孔径(直径)が50nmを超える、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
多孔質膜の平均膜厚が10μm〜1000μmである、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
多孔質膜が多孔質ガラス膜である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
多孔質膜が有機高分子膜である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−178810(P2008−178810A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14549(P2007−14549)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(391011700)宮崎県 (63)
【Fターム(参考)】