説明

無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物及びその製造方法並びに機能性薄膜付基体

【課題】耐摩耗性、膜硬度等の機械的特性に優れ、各種の機能が膜の全域で均一に発揮される機能性薄膜を得ることが可能な無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物及びその製造方法並びに機能性薄膜付基体を提供する。
【解決手段】本発明の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物は、平均分散一次粒子径が100nm以下の機能性微粉体と、電子線照射により架橋反応する官能基を有し分子量が500以下の活性エネルギー線硬化性化合物を含む第1の樹脂成分と、上記の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大、官能基数が多い、分子量が大かつ官能基数が多い、のいずれかである活性エネルギー線硬化性化合物を含む第2の樹脂成分とを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物及びその製造方法並びに機能性薄膜付基体に関し、特に、耐摩耗性、膜硬度(ハードコート性)に代表される機械的特性に優れ、各種の機能性微粉体が均一に分散した機能性薄膜を成膜することが可能な無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物及びその製造方法、この無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物を硬化してなる機能性薄膜を備えた機能性薄膜付基体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、物品の表面に機能性微粉体を分散させた機能性薄膜を成膜することにより、物品に各種の機能性を付与することが行われている。このような機能性薄膜を成膜するための塗料組成物としては、例えば、機能性微粒子と、樹脂と、溶剤とを含有する溶剤型の塗料組成物が知られている。
この塗料組成物を物品の表面に塗布し加熱して、塗料組成物中の溶剤を揮散させることにより、機能性微粉体を分散させた機能性薄膜を成膜することができ、したがって、機能性微粉体が奏する機能を物品の表面に付与することができる。
【0003】
しかしながら、このような塗料組成物では、機能性薄膜を成膜する際に溶剤を揮散させることで環境負荷やエネルギーロスが発生するばかりか、溶剤を揮散させることで機能性薄膜中に多数の空孔が形成されることから、機能性薄膜の機械的特性、例えば、耐摩耗性、硬度(ハードコート性)が充分でないという問題点や、溶剤が物品を溶解させたり、クラックを発生させる等の問題点があった。
そこで、上記の問題点を解決するための塗料組成物として、例えば、アンチモンドープ酸化錫微粒子を溶剤を使用せずにバインダー樹脂中に分散させた透明導電性塗料(特許文献1)、活性エネルギー線硬化型樹脂とアクリロイルモルホリンと艶消し剤とを含む活性エネルギー線硬化型塗料組成物(特許文献2)、ウレタンアクリレート樹脂を含む無溶剤光硬化型樹脂組成物(ビヒクル)と、艶消し剤とを含有した艶消し塗膜形成用無溶剤光硬化型塗料組成物(特許文献3)等の溶剤が全く用いられていない無溶剤型の塗料組成物が提案されている。
【特許文献1】特開平8−27405号公報
【特許文献2】特開平10−265711号公報
【特許文献3】特開2003−261815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した無溶剤型の塗料組成物においては、溶剤を全く用いていないために、機能性微粉体と樹脂成分との相溶性が必ずしも充分ではなく、したがって、機能性微粉体の樹脂成分に対する分散性が必ずしも充分ではないものとなり、機能性微粉体が奏する機能を機能性薄膜の全域で均一に発揮させることが難しいという問題点があった。
特に、機能性微粉体を、紫外線に代表される活性エネルギー線硬化性の樹脂組成物中に分散させようとした場合、機能性微粉体を均一に分散させることが極めて困難であるから、目的とする無溶剤型の塗料組成物を得ることが極めて難しいこととなる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、耐摩耗性、膜硬度(ハードコート性)に代表される機械的特性に優れ、各種の機能性微粉体が奏する機能が膜の全域で均一に発揮される機能性薄膜を成膜することが可能な無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物及びその製造方法並びに機能性薄膜付基体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、活性エネルギー線の照射により架橋反応する官能基を有する特定の活性エネルギー線硬化性化合物中に機能性微粉体を分散させて中間樹脂組成物とし、この中間樹脂組成物に、上記の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きいか官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物を混合することで得られた無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物は、上記の課題を効率よく解決し得ることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物は、
平均分散一次粒子径が100nm以下の機能性微粉体と、
活性エネルギー線の照射を受けて架橋反応する官能基を有し、かつ分子量が500以下である活性エネルギー線硬化性化合物を含む第1の樹脂成分と、
前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きい活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きくかつ前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、の群から選択される1種または2種以上を含む第2の樹脂成分と、
を含有してなることを特徴とする。
【0008】
前記機能性微粉体は、クロル基またはアルコラート基を有するカップリング剤にて表面修飾されてなることが好ましい。
さらに、分子鎖の一端にイソシアネート基を他端に不飽和基を有するイソシアネート系分散剤、不揮発性のリン酸系分散剤、分子鎖の一端にイソシアネート基を他端に不飽和基を有するイソシアネート系分散剤及び不揮発性のリン酸系分散剤、の群から選択される1種または2種以上を含有してなることが好ましい。
【0009】
本発明の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物の製造方法は、
活性エネルギー線の照射を受けて架橋反応する官能基を有し、かつ分子量が500以下である活性エネルギー線硬化性化合物を含む第1の樹脂成分に、機能性微粉体を分散させて中間樹脂組成物とし、
次いで、この中間樹脂組成物に、
前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きい活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きくかつ前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、の群から選択される1種または2種以上を含む第2の樹脂成分を混合する、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の機能性薄膜付基体は、基体上に、本発明の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物を硬化してなる機能性薄膜を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物によれば、耐摩耗性、膜硬度(ハードコート性)に代表される機械的特性に優れ、各種の機能性微粉体が樹脂成分中に均一に分散した機能性薄膜を成膜することができる。したがって、各種の機能性微粉体が奏する機能が膜の全域で均一に発揮される機能性薄膜を成膜することができる。
【0012】
本発明の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物の製造方法によれば、耐摩耗性、膜硬度(ハードコート性)に代表される機械的特性に優れ、各種の機能性微粉体が奏する機能が膜の全域で均一に発揮される機能性薄膜を成膜するための無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物を、既存の製造設備に何ら変更を加えることなく、効率よく廉価に製造することができる。
【0013】
本発明の機能性薄膜付基体によれば、各種の機能性微粉体が奏する機能が膜の全域で均一に発揮される機能性薄膜を備えた基体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物及びその製造方法並びに機能性薄膜付基体を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
「無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物」
本実施形態の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物は、
平均分散一次粒子径が100nm以下の機能性微粉体と、
活性エネルギー線の照射を受けて架橋反応する官能基を有し、かつ分子量が500以下である活性エネルギー線硬化性化合物を含む第1の樹脂成分と、
前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きい活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きくかつ前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、の群から選択される1種または2種以上を含む第2の樹脂成分と、
を含有してなる塗料組成物である。
【0016】
ここで、活性エネルギー線とは、紫外線、電子線等の樹脂成分相互を架橋反応により架橋して硬化させる作用を有するエネルギー線のことである。
機能性微粉体としては、特に制限されるものではないが、例えば、紫外線を遮蔽する機能を有する微粉体としては、酸化亜鉛(ZnO)微粉体、酸化チタン(TiO)微粉体、酸化セリウム(CeO)微粉体等が挙げられる。また、熱線を遮蔽する機能を有する微粉体としては、錫添加酸化インジウム(ITO) 微粉体、アンチモン添加酸化錫(ATO)微粉体等が挙げられる。また、膜硬度(ハードコート性)を向上させる微粉体としては、酸化アルミニウム(Al)微粉体、酸化ジルコニウム(ZrO)微粉体、酸化ケイ素(SiO)微粉体等が挙げられる。これらの微粉体は、目的とする用途に合わせて選択すればよく、これらの中の1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
特に、酸化ジルコニウム(ZrO)微粉体や酸化チタン(TiO)微粉体等の屈折率(n)が1.7以上の高屈折率微粉体は、機能性薄膜に高屈折率を付与することができる。
【0017】
この機能性微粉体の平均一次粒子径は、100nm以下であることが好ましい。その理由は、平均一次粒子径が100nm以下であれば、この機能性微粉体を無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物中に平均分散一次粒子径が100nm以下となるように容易に分散させることができるからである。これにより、この塗料組成物を基体上に塗布し硬化してなる機能性薄膜のヘーズを低くすることができる。
【0018】
この機能性微粉体は、その表面が表面修飾剤により表面修飾されていると、その表面張力が低下し、第1の樹脂成分中への分散性が向上するので好ましい。
この表面修飾剤としては、カップリング剤が好ましく、特に、クロル基またはアルコラート基を有するカップリング剤が好適である。
【0019】
クロル基またはアルコラート基を有するカップリング剤としては、例えば、2−アセトキシエチルトリクロロシラン、2−アセトキシエチルジメチルジクリロシラン、3−アセトキシプロピルジメチルクロロシラン、アセトキシプロピルトリメトキシシラン、アセトキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン等を挙げることができる。
【0020】
第1の樹脂成分としては、活性エネルギー線の照射を受けて架橋反応する官能基を1つまたは2つ有し、かつ分子量が500以下の活性エネルギー線硬化性化合物である活性エネルギー線硬化性のモノマーまたはオリゴマーが好ましい。
ここで、活性エネルギー線の照射を受けて架橋反応する官能基を1つ有し、かつ分子量が500以下である活性エネルギー線硬化性のモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アクリロイルモルホリン等の単官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらのモノマーまたはオリゴマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
これらの単官能(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線硬化性樹脂のなかでも、分子量が小さく(500以下)、総じて低粘度(25℃で100mPa・s以下)であるから、上記の機能性微粉体を通常のメディアを用いて容易に分散することができる。また、上記の機能性微粉体を分散させる際の立体的障害も小さいので、第1の樹脂成分として好適である。
【0022】
また、活性エネルギー線の照射を受けて架橋反応する官能基を2つ有し、かつ分子量が500以下である活性エネルギー線硬化性のモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールピバリン酸エステルジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールのエチレンオキサイド(EO)ジアクリレート等の2官能アクリリート、あるいは、これらの2官能アクリリートの水素基をメチル基に置換した2官能メタクリレートを挙げることができる。これらのモノマーまたはオリゴマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
これらの2官能アクリリートや2官能メタクリレートも、上記の単官能(メタ)アクリレートと同様に、活性エネルギー線硬化性樹脂のなかでも、分子量が小さく(500以下)、総じて低粘度(25℃で100mPa・s以下)であるから、上記の機能性微粉体を通常のメディアを用いて容易に分散することができる。また、上記の機能性微粉体を分散させる際の立体的障害も小さいので、第1の樹脂成分として好適である。
【0024】
第2の樹脂成分としては、上記の第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性のモノマーまたはオリゴマーより、分子量が大、官能基の数が多い、分子量が大きくかつ官能基の数が多い、のいずれかの条件を満たす活性エネルギー線硬化性のモノマーまたはオリゴマーを1種または2種以上を含むものであればよい。
【0025】
この第2の樹脂成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)付加トリメリロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)付加ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)付加ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)付加ペンタエリストールのテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)付加ペンタエリストールのテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)付加ジペンタエリストールのペンタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)付加ジペンタエリストールのペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)付加ジペンタエリストールのヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)付加ジペンタエリストールのヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサ−s−トリアジン、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらのモノマーまたはオリゴマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
この第1の樹脂成分(P1)と第2の樹脂成分(P2)との配合比率(P1:P2)(質量比)は、特に制限されるものではないが、例えば、P1:P2=2〜6:8〜4(質量比)であれば、活性エネルギー線の照射により硬化させて得られる機能性薄膜の機械的特性等が向上するので好ましい。
【0027】
これら第1の樹脂成分及び第2の樹脂成分が紫外線硬化性化合物である紫外線硬化性のモノマーまたはオリゴマーの場合には、光重合開始剤を含有してもよい。
光重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルアセタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類等のアリールケトン系光重合開始剤;スルフィド類、チオキサントン類等の含硫黄系光重合開始剤;アシルジアリールホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド類;アントラキノン類;その他光重合開始剤の中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して使用することができる。
【0028】
この光重合開始剤の全含有量は、第1の樹脂成分と第2樹脂成分との合計量100質量部に対し、通常、0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜8質量部、さらに好ましくは1〜6質量部である。
なお、第1の樹脂成分及び第2樹脂成分が電子線硬化性化合物である電子線硬化性のモノマーまたはオリゴマーの場合には、これらの光重合開始剤を添加する必要はない。
【0029】
本実施形態の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物においては、分子鎖の一端にイソシアネート基を他端に不飽和基を有するイソシアネート系分散剤、不揮発性のリン酸系分散剤、分子鎖の一端にイソシアネート基を他端に不飽和基を有するイソシアネート系分散剤及び不揮発性のリン酸系分散剤、の群から選択される1種または2種以上を、さらに含有することが好ましい。
【0030】
その理由は、分子鎖の一端にイソシアネート基を、他端に不飽和基を、それぞれ有する分散剤を含有すると、この分散剤のイソシアネート基が上記の機能性微粉体の表面と化学反応してウレタン結合が生じ、また、この分散剤の不飽和基が上記の第1の樹脂成分及び第2の樹脂成分とラジカル重合することにより、この機能性微粉体が分散剤を介して第1の樹脂成分及び第2の樹脂成分と一体化され、機能性薄膜の耐摩耗性、膜硬度等の機械的特性が促進されるからである。
【0031】
一方、不揮発性のリン酸系分散剤を含有することが好ましい理由は、この不揮発性のリン酸系分散剤により機能性微粉体の表面の濡れ性が改善され、この機能性微粉体の第1の樹脂成分中への分散が促進されるからである。
【0032】
この分子鎖の一端にイソシアネート基を他端に不飽和基を有するイソシアネート系分散剤としては、例えば、2−メタクリロイルオキシジエチルイソシアネート、2−イソシアトエチルメタクリレート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−イソシアトエチルアクリレート、1、1−ビスアクリロイルオキシエチルイソシアネート等を挙げることができる。
【0033】
また、不揮発性のリン酸系分散剤としては、例えば、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、リン酸エステル等を挙げることができる。
【0034】
「無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物の製造方法」
本実施形態の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物の製造方法は、
活性エネルギー線の照射を受けて架橋反応する官能基を有し、かつ分子量が500以下である活性エネルギー線硬化性化合物を含む第1の樹脂成分に、機能性微粉体を分散させて中間樹脂組成物とする第1の工程と、
この中間樹脂組成物に、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きい活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きくかつ前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、の群から選択される1種または2種以上を含む第2の樹脂成分を混合する第2の工程と、
を有する製造方法である。
次に、これらの第1の工程及び第2の工程を詳細に説明する。
【0035】
第1の工程は、上記の第1の樹脂成分に上記の機能性微粉体を投入し、必要に応じて分散剤を添加し、次いで、機能性微粉体を第1の樹脂成分中に分散させることにより、中間樹脂組成物を得る工程である。
機能性微粉体を分散させる手段としては、高剪断力を付与することが可能な分散手段であれば特に制限はないが、例えば、3本ロールミル(スリーロールミル)、2本ロールミル(ツーロールミル)、カウレスディゾルバー、ホモミキサー、サンドグラインダー、ニーダー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機等を使用することができ、これらを単独、あるいは複数台を組み合わせて使用することができる。
【0036】
分散剤としては、既に上述したように、分子鎖の一端にイソシアネート基を他端に不飽和基を有するイソシアネート系分散剤、不揮発性のリン酸系分散剤、分子鎖の一端にイソシアネート基を他端に不飽和基を有するイソシアネート系分散剤及び不揮発性のリン酸系分散剤、のいずれかが好適である。
【0037】
なお、この機能性微粉体については、第1の樹脂成分に対する分散性を向上させるために、第1の樹脂成分中に分散させるのに先立って、この機能性微粉体の表面を、クロル基またはアルコラート基を有するカップリング剤を用いて表面修飾することが好ましい。
表面修飾の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、機能性微粉体を、クロル基またはアルコラート基を有するカップリング剤を含む溶液中に添加・混合し、次いで、この機能性微粉体を固液分離し、乾燥する方法を挙げることができる。
【0038】
第2の工程は、第1の工程にて得られた中間樹脂組成物に、上記の第2の樹脂成分を混合し、本実施形態の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物を得る工程である。
中間樹脂組成物と第2の樹脂成分とを混合する手段としては、特に制限はなく、唯単に中間樹脂組成物に第2の樹脂成分、例えば、上述した活性エネルギー線硬化性のモノマーまたはオリゴマーを添加するだけでもよい。
【0039】
必要あれば、3本ロールミル(スリーロールミル)、2本ロールミル(ツーロールミル)、カウレスディゾルバー、ホモミキサー、サンドグラインダー、ニーダー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機等を適宜使用することができ、これらを単独、あるいは複数台を組み合わせて使用することができる。
なお、必要に応じて添加される光重合開始剤は、この第2の工程で添加するか、または、本実施形態の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物を基体の表面に塗布する直前に添加する。
【0040】
このような無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物の製造方法によれば、機能性微粉体を無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物中に80質量%程度まで高分散させることができる。
【0041】
「機能性薄膜付基体」
本実施形態の機能性薄膜付基体は、基体上に、上記の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物を硬化してなる機能性薄膜を備えている。
この基材としては、フィルム、シート、バルク等、特に制限はないが、フィルムあるいはシートの基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールを含む非晶性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロンなどのポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、セルロースアセート等のプラスチックフィルムまたはプラスチックシートを挙げることができる。
フィルムあるいはシートの場合、その厚みは得られる機能性薄膜付基体の用途によって異なるが、通常、20μm〜2000μm程度、好ましくは30μm〜1000μmの範囲で選定される。
【0042】
この機能性薄膜付基体を作製するには、まず、基体上に、上記の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物を塗布し、その後乾燥させ、塗膜を形成する。塗布方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が好適に用いられる。
次いで、この塗膜に活性エネルギー線を照射し、塗膜中の第1の樹脂成分及び第2の樹脂成分を架橋反応により架橋して硬化させる。
【0043】
活性エネルギー線としては、紫外線または電子線が好適である。紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。一方、電子線源としては、例えば、コックロフトワルトン型、ハンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器を用いることができる。
【0044】
このようにして、本実施形態の機能性薄膜付基体が得られる。
機能性薄膜の厚みは、機能性薄膜付基体の用途により異なるが、通常、1μm以上かつ300μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以上かつ100μm以下、さらに好ましくは3μm以上かつ50μm以下である。
この機能性薄膜付基体は、例えば、紫外線遮蔽フィルム、赤外線遮蔽フィルム、ハードコートフィルム等、様々な機能を有する機能性フィルムとして好適である。
【0045】
なお、本実施形態の機能性薄膜付基体においては、機能性薄膜上に、必要に応じてポリオレフィン系フィルムやポリエステル系フィルム等の透明保護フィルムを設けることができる。
さらに、この機能性薄膜付基体を各種被着体に接着または固定させる目的で、この機能性薄膜付基体の最外側面に接着剤層を形成することもできる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0047】
「実施例1」
平均一次粒径が20nmの酸化亜鉛(ZnO)微粉体30質量部と、電子線硬化性化合物である1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(官能基数:2、分子量:226)64質量部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を含む不揮発性リン酸系分散剤 NIKKOL TDP−10(日光ケミカルズ(株)社製)6質量部とを混合し、次いで、ジルコニアビーズを用いてサンドミル処理を7時間行い、酸化亜鉛(ZnO)微粉体が分散した中間樹脂組成物を作製した。
【0048】
次いで、この中間樹脂組成物20質量部と、電子線硬化性化合物であるペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:3、分子量:298)(新中村化学工業(株)社製)32質量部と、電子線硬化性化合物であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:6、分子量:556)(新中村化学工業(株)社製)48質量部とを、ペイントシェーカーを用いて混合し、実施例1の無溶剤型電子線硬化性塗料組成物を調製した。
この無溶剤型電子線硬化性塗料組成物中における酸化亜鉛(ZnO)微粉体の平均一次分散粒子径をレーザーゼータ電位計 ELS−8000(大塚電子(株)社製)を用いて測定したところ、50nmであった。
【0049】
「実施例2」
酸化亜鉛(ZnO)微粉体の替わりに平均一次粒径が20nmの酸化セリウム(CeO)微粉体を用いた他は、実施例1に準じて実施例2の無溶剤型電子線硬化性塗料組成物を調製した。
この無溶剤型電子線硬化性塗料組成物中における酸化セリウム(CeO)微粉体の平均一次分散粒子径を、レーザーゼータ電位計 ELS−8000(大塚電子(株)社製)を用いて測定したところ、80nmであった。
【0050】
「実施例3」
平均一次粒径が20nmの酸化亜鉛(ZnO)微粉体100質量部と、アクリロキシシランカップリング剤 KBM−503(信越シリコーン(株)社製)10質量部と、エタノール90質量部とを混合し、固液分離した後、150℃にて10分間加熱処理し、酸化亜鉛(ZnO)微粉体の表面を表面修飾した。
次いで、この表面修飾した酸化亜鉛(ZnO)微粉体33質量部と、電子線硬化性化合物である1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(官能基数:2、分子量:226)67質量部とを混合し、次いで、ジルコニアビーズを用いてサンドミル処理を7時間行い、酸化亜鉛(ZnO)微粉体が分散した中間樹脂組成物を作製した。
【0051】
次いで、この中間樹脂組成物20質量部と、電子線硬化性化合物であるペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:3、分子量:298)(新中村化学工業(株)社製)32質量部と、電子線硬化性化合物であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:6、分子量:556)(新中村化学工業(株)社製)48質量部とを、ペイントシェーカーを用いて混合し、実施例3の無溶剤型電子線硬化性塗料組成物を調製した。
この無溶剤型電子線硬化性塗料組成物中における酸化亜鉛(ZnO)微粉体の平均一次分散粒子径をレーザーゼータ電位計 ELS−8000(大塚電子(株)社製)を用いて測定したところ、80nmであった。
【0052】
「実施例4」
平均一次粒径が20nmの酸化亜鉛(ZnO)微粉体30質量部と、電子線硬化性化合物である1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(官能基数:2、分子量:226)64質量部と、分子鎖の一端にイソシアネート基を、他端に不飽和基を有する分散剤である2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート カレンズMOI(昭和電工(株)社製)6質量部とを混合し、次いで、ジルコニアビーズを用いてサンドミル処理を7時間行い、酸化亜鉛(ZnO)微粉体が分散した中間樹脂組成物を作製した。
【0053】
次いで、この中間樹脂組成物20質量部と、電子線硬化性化合物であるペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:3、分子量:298)(新中村化学工業(株)社製)32質量部と、電子線硬化性化合物であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:6、分子量:556)(新中村化学工業(株)社製)48質量部とを、ペイントシェーカーを用いて混合し、実施例4の無溶剤型電子線硬化性塗料組成物を調製した。
この無溶剤型電子線硬化性塗料組成物中における酸化亜鉛(ZnO)微粉体の平均一次分散粒子径をレーザーゼータ電位計 ELS−8000(大塚電子(株)社製)を用いて測定したところ、60nmであった。
【0054】
「実施例5」
実施例1にて得られた中間樹脂組成物20質量部と、電子線硬化性化合物であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:6、分子量:556)(新中村化学工業(株)社製)80質量部とを、ペイントシェーカーを用いて混合し、実施例5の無溶剤型電子線硬化性塗料組成物を調製した。
この無溶剤型電子線硬化性塗料組成物中における酸化亜鉛(ZnO)微粉体の平均一次分散粒子径をレーザーゼータ電位計 ELS−8000(大塚電子(株)社製)を用いて測定したところ、50nmであった。
【0055】
「実施例6」
実施例1にて得られた中間樹脂組成物20質量部と、電子線硬化性化合物であるペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:3、分子量:298)(新中村化学工業(株)社製)80質量部とを、ペイントシェーカーを用いて混合し、実施例6の無溶剤型電子線硬化性塗料組成物を調製した。
この無溶剤型電子線硬化性塗料組成物中における酸化亜鉛(ZnO)微粉体の平均一次分散粒子径をレーザーゼータ電位計 ELS−8000(大塚電子(株)社製)を用いて測定したところ、60nmであった。
【0056】
「実施例7」
平均一次粒径が20nmの酸化亜鉛(ZnO)微粉体30質量部と、電子線硬化性化合物であるエチル(メタ)アクリレート(官能基数:1、分子量:114)60質量部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を含む不揮発性リン酸系分散剤 NIKKOL TDP−10(日光ケミカルズ(株)社製)6質量部とを混合し、次いで、ジルコニアビーズを用いてサンドミル処理を7時間行い、酸化亜鉛(ZnO)微粉体が分散した中間樹脂組成物を作製した。
【0057】
次いで、この中間樹脂組成物20質量部と、電子線硬化性化合物であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:6、分子量:556)(新中村化学工業(株)社製)80質量部とを、ペイントシェーカーを用いて混合し、実施例7の無溶剤型電子線硬化性塗料組成物を調製した。
この無溶剤型電子線硬化性塗料組成物中における酸化亜鉛(ZnO)微粉体の平均一次分散粒子径をレーザーゼータ電位計 ELS−8000(大塚電子(株)社製)を用いて測定したところ、45nmであった。
【0058】
「比較例1」
平均一次粒径が20nmの酸化亜鉛(ZnO)微粉体30質量部と、シクロヘキサノン64質量部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を含む不揮発性リン酸系分散剤 NIKKOL TDP−10(日光ケミカルズ(株)社製)6質量部とを混合し、次いで、ジルコニアビーズを用いてサンドミル処理を7時間行い、酸化亜鉛(ZnO)微粉体が分散した中間組成物を作製した。
【0059】
次いで、この中間組成物20質量部と、電子線硬化性化合物であるペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:3、分子量:298)(新中村化学工業(株)社製)32質量部と、電子線硬化性化合物であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:6、分子量:556)(新中村化学工業(株)社製)48質量部とを、ペイントシェーカーを用いて混合し、比較例1の溶剤型電子線硬化性塗料組成物を調製した。
この溶剤型電子線硬化性塗料組成物中における酸化亜鉛(ZnO)微粉体の平均一次分散粒子径をレーザーゼータ電位計 ELS−8000(大塚電子(株)社製)を用いて測定したところ、60nmであった。
【0060】
「比較例2」
平均一次粒径が20nmの酸化亜鉛(ZnO)微粉体6質量部と、電子線硬化性化合物であるポリプロピレングリコールジアクリレート NKエステルAPG−700(ポリプロピレングリコールの重合度:700、官能基数:2、分子量:544)(新中村化学工業(株)社製)92質量部とを混合し、ジルコニアビーズを用いてサンドミル処理を7時間行ったが、酸化亜鉛(ZnO)微粉体は分散しなかった。
【0061】
「比較例3」
平均一次粒径が20nmの酸化亜鉛(ZnO)微粉体6質量部と、電子線硬化性化合物であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:6、分子量:556)(新中村化学工業(株)社製)86質量部とを混合し、ジルコニアビーズを用いてサンドミル処理を7時間行ったが、酸化亜鉛(ZnO)微粉体は分散しなかった。
【0062】
「比較例4」
実施例1にて得られた中間樹脂組成物を、比較例4の無溶剤型電子線硬化性塗料組成物とした。
【0063】
「評価」
実施例1〜7及び比較例1〜4各々の塗料組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム T600E−50N(三菱ポリエステル(株)社製)にバーコーターを用いて塗工し、得られた塗膜に50kVの電子線を照射(20W/cm)して、膜厚が15μmの機能性薄膜がPETフィルム上に成膜された実施例1〜7及び比較例1〜4各々の機能性薄膜付PETフィルムを作製した。
この機能性薄膜の分散性及び耐磨耗性を、下記の評価方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0064】
(1)分散性
機能性薄膜における機能性微粉体の分散性を目視により評価した。ここでは、薄膜中に機能性微粉体が均一に分散しており、凝集等が全く認められなかったものを良好「○」とし、薄膜中に機能性微粉体が均一分散しておらず、凝集等が認められたものを不良「×」とした。
(2)耐磨耗性
日本工業規格JIS R 3221「熱線反射ガラス」に準拠し、テーバー式磨耗試験機を用いて機能性薄膜の試験前後のヘイズ値をそれぞれ測定し、これらのヘイズ値の差(ΔH)にて評価した。
【0065】
【表1】

【0066】
表1によれば、次のことが分かった。
(1)実施例1〜7の無溶剤型電子線硬化性塗料組成物は、酸化亜鉛(ZnO)微粉体及び酸化セリウム(CeO)微粉体各々の分散性に優れていることが分かった。また、機能性薄膜の試験前後のヘイズ値の差が8またはそれ以下で、耐摩耗性に優れていることが分かった。
(2)比較例1の溶剤型電子線硬化性塗料組成物は、酸化亜鉛(ZnO)微粉体の分散性には優れているものの、機能性薄膜の試験前後のヘイズ値の差が15となっており、耐摩耗性に劣っていることが分かった。
(3)比較例4の無溶剤型電子線硬化性塗料組成物は、酸化亜鉛(ZnO)微粉体の分散性には優れているものの、機能性薄膜に耐磨耗性の試験を行ったところ、この機能性薄膜が摩耗により消失してしまった。
(4)比較例2、3の樹脂組成物では、サンドミル処理によっても酸化亜鉛(ZnO)が分散せず、酸化亜鉛(ZnO)微粉体の分散性が極めて悪いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物は、機能性微粉体と、活性エネルギー線の照射により架橋反応する官能基を有する特定の活性エネルギー線硬化性化合物と、この活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きいか官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物とを混合することで、耐摩耗性、膜硬度(ハードコート性)等の機械的特性に優れ、各種の機能性微粉体が奏する機能が膜の全域で均一に発揮される機能性薄膜を成膜することを可能にしたものであるから、各種物品に様々な機能性を付与することが可能な機能性薄膜を成膜する際に極めて有効なものであり、その工業的意義は極めて大きいものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分散一次粒子径が100nm以下の機能性微粉体と、
活性エネルギー線の照射を受けて架橋反応する官能基を有し、かつ分子量が500以下である活性エネルギー線硬化性化合物を含む第1の樹脂成分と、
前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きい活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きくかつ前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、の群から選択される1種または2種以上を含む第2の樹脂成分と、
を含有してなることを特徴とする無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物。
【請求項2】
前記機能性微粉体は、クロル基またはアルコラート基を有するカップリング剤にて表面修飾されてなることを特徴とする請求項1記載の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物。
【請求項3】
さらに、分子鎖の一端にイソシアネート基を他端に不飽和基を有するイソシアネート系分散剤、不揮発性のリン酸系分散剤、分子鎖の一端にイソシアネート基を他端に不飽和基を有するイソシアネート系分散剤及び不揮発性のリン酸系分散剤、の群から選択される1種または2種以上を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物。
【請求項4】
無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物を製造する方法であって、
活性エネルギー線の照射を受けて架橋反応する官能基を有し、かつ分子量が500以下である活性エネルギー線硬化性化合物を含む第1の樹脂成分に、機能性微粉体を分散させて中間樹脂組成物とし、
次いで、この中間樹脂組成物に、
前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きい活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、前記第1の樹脂成分の活性エネルギー線硬化性化合物より分子量が大きくかつ前記官能基の数が多い活性エネルギー線硬化性化合物、の群から選択される1種または2種以上を含む第2の樹脂成分を混合する、
ことを特徴とする無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物の製造方法。
【請求項5】
基体上に、請求項1〜3のいずれか1項記載の無溶剤型活性エネルギー線硬化性塗料組成物を硬化してなる機能性薄膜を備えてなることを特徴とする機能性薄膜付基体。

【公開番号】特開2010−53242(P2010−53242A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219643(P2008−219643)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】