説明

無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置およびその印刷方法ならびに帯状印刷プレートの取付方法

【課題】長尺な樹脂凸版印刷版を用いて印刷ムラがなく、写真印刷も可能な鮮明で綺麗な印刷技術を提供する。
【解決手段】印刷装置は、版胴16のプレートシリンダ18とガイドローラとの間に無端帯状印刷プレート13を巻き掛け、この印刷プレート13を用いて版胴16と圧胴との間に送られる連続フォームに印刷を施すものである。プレートシリンダ18には、軸方向両端部に送りピン43がシリンダ周方向に沿って等ピッチに列状に配設される一方、送りピン43は固定カムリング52に案内されて、プレートシリンダ18の所要の領域でシリンダ面から突出するように進退自在に設けられる。無端帯状印刷プレート13にはピン送り孔が列状に設けられ、長尺の樹脂凸版印刷版の両端が交互に噛み合う突合状態で版面側から接着テープで接着される。ピン送り孔がプレートシリンダ18の送りピン43に係合してプレート送りが案内されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端帯状印刷プレートを用いた印刷技術に係り、特に、無端帯状の樹脂凸版印刷プレートを用いて連続フォームに印刷を行なう無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置およびその印刷方法ならびに帯状印刷プレートの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続フォームに無端帯状印刷プレートを用いて連続的に印刷を行なう基本的な印刷技術を本発明者は開発し、この印刷技術を米国特許第4,535,694号明細書、米国特許第4,758,021号明細書、特公平4−59157号公報、特開2000−255179号公報等で開示した。
【0003】
これらの印刷技術は、いずれも可撓性の無端帯状樹脂凸版印刷プレートを用いて、給紙ロールから繰り出される連続フォーム(連続紙)に印刷を連続的に施すことができるようにしたものである。
【0004】
無端帯状印刷プレートを用いて連続フォームに印刷を施す技術は、年金・保険や税金の納付用紙、カレンダ、契約書、取扱説明書、使用書、書籍の冊子、および育苗シート等に応用される。
【0005】
また、近年では、無端帯状印刷プレートを用いた印刷技術の進歩により、給紙ロールの連続フォームから、サービス券、旅行券、商品券、利用券、買物券、金券、株券、債券等のように、枚葉物の紙葉で高品質かつセキュリティ性の高い印刷にも広く利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−255179号公報
【特許文献2】特公平4−59157号公報
【特許文献3】米国特許第4,535,694号明細書
【特許文献4】米国特許第4,758,021号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置は、版胴のプレートシリンダ等では軽量化のために中空シリンダが用いられる。しかし、版胴の中空シリンダを用いたものでは、シリンダの真円成形が困難で回転バランスが取りにくく、また、印刷時に版胴が踊ることがあり、印圧の反発でのガタ付きが生じて印刷ムラが発生することがある。版胴にガタ付きが生じると、印刷圧ムラが発生し、インキ付けローラ間のガタが発生することも起因し、鮮明で精度が高い綺麗な印刷を得ることが困難である。
【0008】
近年は、無端帯状印刷プレートを用いて連続フォームに印刷を施す印刷技術の進歩に伴い印刷精度の向上や、一層の高精緻化、セキュリティ性の重要視、印刷の高級化が重要視され、印刷だけで偽造防止が可能なセキュリティ性の高い印刷技術の開発、複写機では文字等の再現が難しい印刷技術の開発が求められるようになってきた。
【0009】
また、無端帯状印刷プレートを用いた凸版印刷技術でも、微細なマイクロ文字や175線(L)以上、例えば300線の写真印刷の印刷を如何にしたら行なうことができるか課題となっていた。
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、無端帯状印刷プレートを用いた軽量な樹脂凸版印刷版でも、印刷ムラが生じることがなく、鮮明で綺麗な印刷を精度よく施すことができる無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置およびその印刷方法ならびに帯状印刷プレートの取付方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、無帯状印刷プレートを用いて、連続フォームに微細なマイクロ文字や、175線以上の写真印刷が可能で、セキュリティ性を向上させた無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置およびその印刷方法ならびに無端帯状印刷プレートの取付方法を提供するにある。
【0012】
本発明の別の目的は、軽量で長尺な無端帯状印刷プレートを用いて、300線迄の網点印刷と0.4P(ポイント)迄の微細なマイクロ文字印刷可能でセキュリティ性の向上が図れ、耐久性、耐圧性、耐刷力を向上させた無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置およびその印刷方法ならびに帯状印刷プレートの取付方法を提供するにある。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、高精度で強靭な耐圧力の版胴と圧胴を用いて、無端帯状印刷プレートの滑りや変位を生じさせることなく、安定的に精度よく正確に送ることができる無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置およびその印刷方法ならびに帯状印刷プレートの取付方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、版胴のプレートシリンダとガイドローラとの間に無端帯状印刷プレートが巻き掛けられ、この無端帯状印刷プレートを用いて前記版胴と圧胴との間に送られる連続フォームに印刷が施される印刷装置において、前記版胴のプレートシリンダおよび圧胴シリンダは中実シリンダでそれぞれ構成され、前記版胴のプレートシリンダには、軸方向両端部に送りピンがシリンダ周方向に沿って等ピッチに列状に配設される一方、前記送りピンは固定カムリングに案内されて、前記プレートシリンダの少なくともガイドシリンダ反対側領域でシリンダ面から突出するように進退自在に設けられ、前記無端帯状印刷プレートの幅方向両側のマージナルゾーンに長手方向に沿って、前記送りピンのピッチ間隔と等しいピン送り孔が列状に設けられ、前記無端帯状印刷プレートは、長尺の樹脂凸版印刷版の長手方向両端に幅方向に形成された凹凸形状あるいはジグザグ形状が交互に噛み合うように突き合された状態で版面側から接着テープで接着されて構成され、前記無端帯状印刷プレートは、前記マージナルゾーンのピン送り孔が前記プレートシリンダの送りピンに係合してプレート送りが案内されることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係る無端帯状印刷プレートによる印刷方法は、上述した課題を解決するために、請求項10に記載したように、版胴のプレートシリンダとガイドローラとの間に無端帯状印刷プレートを巻き掛け、この無端帯状印刷プレートを用いて前記版胴と圧胴との間に送られる連続フォームに印刷を施す無端帯状印刷プレートを用いた印刷方法において、前記版胴のプレートシリンダおよび圧胴シリンダを中実シリンダでそれぞれ構成し、前記版胴のプレートシリンダは、その軸方向両端部にシリンダ周方向に沿って送りピンを等ピッチに配設し、かつ前記送りピンは、固定カムリングに案内されて前記プレートシリンダの少なくともガイドシリンダ反対側領域でシリンダ面から突出させ、前記無端帯状印刷プレートは、幅方向両側のマージナルゾーンに形成されるピン送り孔を前記プレートシリンダの送りピンに順次係合させてプレート送りを案内し、前記無端帯状印刷プレートの版面にインクロールで付けられたインクを、前記版胴と圧胴の間に送られる連続フォームに転写し、印刷を施すことを特徴とする方法である。
【0016】
さらに、本発明に係る無端帯状印刷プレートの取付方法は、上述した課題を解決するために、請求項14に記載したように、版胴のプレートシリンダとガイドローラとの間に無端帯状印刷プレートを巻き掛ける帯状印刷プレートの取付方法において、前記版胴のプレートシリンダは、軸方向両端部にシリンダ周方向に沿って送りピンを等ピッチに列状に配設し、かつ前記送りピンは、固定カムリングに案内されて前記プレートシリンダの少なくともガイドローラ反対側でシリンダ面から突出するように進退自在に設け、長尺の樹脂凸版印刷版の幅方向両端部のマージナルゾーンに、長手方向に沿ってピン送り孔を等ピッチ間隔に形成するとともに、前記樹脂凸版印刷版の長手方向両端に幅方向に沿って凹凸形状あるいはジグザグ形状を形成し、前記マージナルゾーンにピン送り孔と長手方向両端に凹凸形状あるいはジグザグ形状をそれぞれ形成した前記樹脂凸版印刷版を前記プレートシリンダの上側にガイドローラ側から挿入して、前記樹脂凸版印刷版のピン送り孔を前記プレートシリンダの送りピンに順次係合させながら送り込んで廻り込ませ、続いて、前記プレートシリンダと前記圧胴の間から取り出される前記樹脂凸版印刷版の先端を、前記ガイドローラに巻き掛け、反転させて前記プレートシリンダ側に戻し、前記樹脂凸版印刷版の先端をその後端側に係合させて突き合せ、前記樹脂凸版印刷版の両端部が係合した状態で版面側から接着テープで幅方向に接着させて結合し、エンドレス構造の無端帯状印刷プレートを構成し、続いて、前記ガイドローラを版胴のプレートシリンダから後退させて前記無端帯状印刷プレートの張力を調整し、無端帯状印刷プレートを印刷装置に取り付けることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、無端帯状印刷プレートを用いて、印刷ムラを生じさせることがなく、鮮明で綺麗な印刷を正確に精度よく施すことができ、また、連続フォームに微細なマイクロ文字や写真印刷が可能で、セキュリティ性を向上させることができ、さらに、無端帯状印刷プレートは軽量で耐刷力、耐圧性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明では、版胴と圧胴に中実シリンダを用いることにより、シリンダ成形加工が容易で良好な回転バランスを保つことができ、印刷時に印圧によるガタ付きが少なく、しかも、無端帯状印刷プレートのプレート送りを、滑りや変位を生じさせることなく安定して精度よく案内することができ、無端帯状の樹脂凸版印刷であっても、0.3ポイント迄のマイクロ文字印刷とスクリーン線で300線(L)迄の網点印刷、写真印刷ができ、セキュリティ性を高めた印刷技術を提供することができる。
【0019】
さらに、本発明に係る帯状印刷プレートの取付方法は、長尺で軽量な樹脂凸版印刷版を印刷装置のプレートシリンダに長手方向および幅方向の滑りや変位を生じさせることなく取り付けることができ、この樹脂凸版印刷版のピン送り孔とプレートシリンダの送りピンを利用して案内し、前記樹脂凸版印刷版をプレートシリンダとガイドローラに巻き掛けた後、樹脂凸版印刷版の先端をその後端に突き合せて係合させた状態で版面側から接着テープで幅方向に接着するだけで、エンドレス構造の無端帯状印刷プレートを構成でき、巻き掛けられた後無端帯状印刷プレートの張力を調整するだけで、無端帯状印刷プレートのプレート送りは長手方向や幅方向の滑りや変位を生じさせることなく印刷可能であり、しかも、無端帯状印刷プレートは、接着テープのテープ厚みが生じることなく、面一なフィルムベース面をプレートシリンダのシリンダ面に接触させて印刷できるので、接着テープのテープ段差が印刷に悪影響を及ぼすことがない。したがって、無端帯状樹脂印刷プレートを用いても、印刷ムラのない綺麗で正確な印刷、ひいては、微細なマイクロ文字や300線迄の網点印刷、写真印刷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る印刷装置の第1実施形態を原理的に説明したロータリプレス式印刷機械を示す構成図。
【図2】前記印刷装置の無端帯状印刷プレートを構成する感光性樹脂凸版印刷版の製造手順を示すもので、(A)〜(F)は感光性樹脂凸版印刷版の製造工程をそれぞれ示す図。
【図3】図2で製造された樹脂凸版印刷版の両端部の接続関係あるいは複数の樹脂凸版印刷版の帯状(シリーズ性)接続関係を示す図。
【図4】版胴のプレートシリンダを軸方向端部側から固定のカム蓋および送りピンを取り外して示す斜視図。
【図5】版胴のプレートシリンダの端部に、送りピンを取り付ける態様を示す斜視図。
【図6】版胴のプレートシリンダの端部に設けられる固定のカム蓋を示す斜視図。
【図7】印刷装置の版胴のプレートシリンダに設けられた送りピンと無端帯状印刷プレートの係合関係を示す図。
【図8】(A)は送りピンが版胴のプレートシリンダから突出した状態を示す図、(B)は送りピンがプレートシリンダから後退した状態を示す図。
【図9】感光性樹脂凸版印刷版の版材に、バック露光量を種々変化させて得られる実験データをそれぞれ示す図。
【図10】図9に示される実験データを整理して得られる樹脂凸版印刷版(印刷製版)の版面曲線、バック析出層の厚さ曲線、レリーフ濃度曲線をそれぞれ示す図。
【図11】感光性樹脂凸版印刷版のCTP版材から製造される樹脂凸版印刷版の製造手順を示すとともに、(A)〜(F)は感光性樹脂凸版印刷版の製造工程をそれぞれ示す図。
【図12】本発明に係る印刷装置の第2実施形態を原理的に説明したロータリプレス式印刷機械を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、可撓性で長尺な無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置の第1実施形態を原理的に示す構成図である。
【0023】
印刷装置10は、給紙ロール11から繰り出される帯状の連続紙(ロール)である連続フォーム12に無端帯状印刷プレート13を用いて印刷を施すロータリプレス式印刷機械である。印刷が施された連続フォーム12は、巻取りロール14に巻き取られるか、あるいは、図示しない折畳み機でジグザグ状に折り畳まれて堆積されたり、さらに、切断装置15で枚葉紙に切断されて収納ボックス(図示省略)に収納される。
【0024】
印刷装置10は、無端帯状印刷プレート13を備えた版胴16と受胴としての圧胴17とを有する。無端帯状印刷プレート13は、版胴16のプレートシリンダ18と従動ローラである回転フリーのガイドシリンダ(ガイドローラ)19との間に掛け渡される。ガイドシリンダ19は、版胴16側に進退自在に調整され、無端帯状印刷プレート13の張力が調整される。無端帯状印刷プレート13は、版胴16に対向して対をなすインクロール20,20が外接しており、無端帯状印刷プレート13の印刷面(版面)にインクを転着するようになっている。
【0025】
版胴16のプレートシリンダ18および圧胴シリンダ17aは、削り出し等で形成された無垢の中実シリンダが用いられ、プレートシリンダ18と圧胴シリンダ17aは中空シリンダではなく、例えば無垢の鋼鉄シリンダが使用される。中実(鋼鉄)シリンダは、回転バランスが良く、真円の成形加工が容易であり、自重が大きく重量(例えば300kg)があるため、印刷時に印圧の反発での版胴16のガタ付が少ない。版胴16のプレートシリンダ18や圧胴シリンダ17aを中実シリンダとすることにより、印圧による撓みを少なくすることができ、ベタと網点が混入した印刷でも網点が潰れたり、汚れることがなく、ベタを綺麗に印刷することができる。
【0026】
また、無端帯状印刷プレート13は、一廻りの長手方向長さが数10cmから数10mの間で適宜選択される。無端帯状印刷プレート13は、細長い可撓性の長尺樹脂凸版印刷プレートの両端部を接続することにより無端帯状に構成される。また、複数枚の例えば400インチの長尺印刷プレートを順次接続していき、最後に両端部を互いに接続することにより数m〜数十mの無端帯状に構成してもよい。
【0027】
ところで、可撓性の長尺無端帯状印刷プレート13は、特願2009−201949の明細書および図面に示された感光性樹脂凸版の版材またはCTP版材を用いて、長尺の感光性樹脂凸版印刷版が製造される。
【0028】
[樹脂凸版印刷版]
可撓性の樹脂凸版印刷版に用いられる感光性樹脂凸版の版材21に、富士フイルムグラフィックシステムズ株式会社製の製品名(以下、富士トレリーフという。)WF95BII,WF95BSII,WF95EBSII,WF70BII,WF70BSII等のアナログ版あるいはデジタル版が適する。
【0029】
可撓性の感光性樹脂凸版印刷版の版材21は、ショアA硬度が30〜40度の柔かい可撓性の版材であり、さらに例えば、天地方向(長手方向)が数m〜9m、幅方向が約45cm〜51cm(17in〜21in)で、全体の版厚が1mm未満で、例えば0.60mm〜0.95mmのアナログ版が用いられる。好ましい版材21の一例として、天地方向に8m50cm、幅方向に48.26cmで、版厚が0.95mmのアナログ版が、凸版印刷分野の環境適性、求められる緻密な品質精度上適している。
【0030】
感光性樹脂凸版の版材21では、基板としてのポリエステル(PET)フィルムのベースフィルム22に接着剤層23を介して感光性樹脂層24が一体に積層され、感光性樹脂層24上にカバーフィルム25を被着したものが成型される。
【0031】
好ましい版材21の一例として版厚が950μmの場合、ベースフィルム22のフィルム厚は188μm、ハレーション防止用の接着剤層23は32μm、感光性樹脂層24の層厚は730μmに形成され、フィルム支持体としてのフィルムベース26(ベースフィルム22+接着剤層23)は、220μmのベース厚を有する。
【0032】
ベースフィルム22には、ポリエステルフィルムの他に、ポリエチレン−テレフタレートフィルム(PETフィルム)等を用いてもよく、接着剤層23には、ゴム系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、シラン系の市販の接着のコーティング処理、カップリング剤によるアンカー処理、アクリル系ハードコート等の各種コーティング材が用いられる。また、感光性樹脂層24には、例えば重合性化合物と光重合性開始剤とを含有した紫外線に反応して光硬化する光硬化性樹脂が用いられる。重合性化合物としては、例えば、エポキシアクリレートおよびウレタンアクリレート等のオリゴマー、多官能アクリレート等の重合性モノマー、またはそれらの混合物を使用することができる。光重合性開始剤としては、例えば、ベンゾイン系またはアセトフェノン系の光重合性開始剤を使用することができる。この光硬化性樹脂には、溶剤および添加剤の少なくとも一方を添加して使用してもよい。
【0033】
また、感光性樹脂層24には、不飽和ポリエステル樹脂やポリブタジエンあるいはアクリルやウレタン等に不飽和基を導入した不飽和樹脂等に光増感剤や熱安定剤を添加した光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0034】
次に、感光性樹脂凸版の版材21を用いて可撓性の樹脂凸版印刷版27の製造について説明する。
【0035】
可撓性の樹脂凸版印刷版27の製作の際には、初めに、版材21と製版フィルムとしてのネガフィルム28およびポジフィルム29を用意する(図2(A)参照)。カバーフィルム25を取り外した版材21に表側からネガフィルム(製版フィルム)28を真空密着させてバキューム固定し、版材21とネガフィルム28との間の密着ムラの発生を防止する。ネガフィルム28上には、必要に応じて塩ビシート等のカバーフィルム(図示せず)が真空密着等で被着される。
【0036】
[露光工程]
版材21にネガフィルム28を位置合せしてバキューム固定させた後、図2(B)に示す露光装置30のランプハウスに導かれ、このランプハウス内を所要の速度で走行が案内される。ランプハウス内では、エネルギ光源、例えば走行方向に直交する並行配置の複数本(2本)の紫外線光源31から315nm〜400nmの紫外線(UV)を照射する露光工程で、レリーフ露光が行なわれる。レリーフ露光では、紫外線に代えて水銀灯、キャノンランプ等の活性光源を用いてもよい。
【0037】
レリーフ露光では、図2(C)に示すように、所要速度で走行中に版材21にネガフィルム28を通して、例えば500mj/cm程度の紫外線を紫外線管光源31から照射させる。この紫外線をネガフィルム28を介して柔かい感光性樹脂層24に入射させると、感光性樹脂層23は照射部が全層厚分光硬化され、版材21の感光性樹脂層24に、文字や画像のレリーフ像(レリーフ部:印刷面)32が、ベースフィルム21に向って末広がりのテーパ状に形成される。
【0038】
紫外線のレリーフ露光量は、後述するように、490mj/cm〜530mj/cm、好ましくは500mj/cm〜520mj/cmの光量が使用されて、焼付き、露光される。レリーフ露光では、500mj/cm程度の光量があれば、感光性樹脂層24の照射部(レリーフ部)にレリーフ深度730μmのレリーフ像を形成することができる。
【0039】
続いて、ネガフィルム28を真空密着させて焼付き露光させた後、版材21を反転させ、版材21の裏側からポジフィルム29をネガフィルム28と位置合せさせた整合状態で真空密着させてバキューム固定させる。裏側からポジフィルムを用いることが好ましいが、必ずしもポジフィルムを用いなくてもよい。このバキューム固定により、版材21とポジフィルム29との間でも密着ムラの発生を防止する。ポジフィルム29にも、塩ビシート等のカバーフィルム(図示せず)を必要に応じて真空密着等で被着させる。
【0040】
このように、感光性樹脂凸版の版材21をレリーフ露光で焼付き露光を行なった後、ランプハウスから取り出し、取り出された版材21を反転させ、版材21の裏面側にポジフィルム29を位置合せしてバキューム固定させる。その後、再びランプハウスに送り込んでバック露光を行なう。バック露光では紫外線を、ポジフィルム29側からフィルムベース25を通して版材21に30mj/cm〜60mj/cmの光量を入れて凝固させ、版材21のフィルムベース26側に、感光性樹脂層24の全面にバック析出層(バック固化層)33を形成する(図2(D)参照)。
【0041】
バック析出層33の厚さは、後述するように、フィルムベース26側全面に130μm以上〜600μm迄の範囲、好ましくは、200μm〜550μmの範囲で感光性樹脂層24を凝固させて光硬化させる。バック析出層33は、フィルム支持体であるフィルムベース26と一体に成形され、感光性樹脂凸版印刷版27の版面の機械的、物理的強度を向上させている。バック析出層33は層厚が厚ければ厚いほど、版材21の機械的、物理的強度を向上させることができる。
【0042】
図2(C)および(D)では、感光性樹脂凸版の版材21にレリーフ露光を行なった後にバック露光させる例を示したが、版材21の表裏側からレリーフ露光とバック露光と同時に行なうようにしても、あるいは、バック露光をレリーフ露光に先立って行なうようにしてもよい。
【0043】
露光工程でレリーフ露光およびバック露光により光硬化作用を受けた版材21は、ネガフィルム28およびポジフィルム29を剥がして除去した後、水洗浄工程に送られる。水洗浄工程では、図示しない洗浄装置に平型洗浄ブラシ35がスライド自在に備えられており、この洗浄ブラシ35により、図2(E)に示すように、常温、例えば20℃〜25℃の洗浄水を用いてブラッシングされ、水洗いが行なわれる。水洗いでは、版材21を数十mm/分〜数百mm/分の搬送速度で送り込みつつ、少量の洗浄水を連続供給して、平型洗浄ブラシ31にてブラッシングし、水洗いされる。
【0044】
水洗浄時には、常温の洗浄水中で平型洗浄ブラシ35あるいは回転洗浄ブラシを数分間、例えば3分間往復動あるいは回転運動させて、ブラッシング作用により感光性樹脂層24の未硬化部の材料樹脂が、光硬化されたレリーフ像32やバック析出層33の硬化樹脂表面から分離して取り除かれ、洗い流される。この未硬化部の材料樹脂量は、レリーフ深度に対応する未硬化樹脂分であるため、従来に比べて遥かに少ない。このため、洗浄水の汚れ除去回数が抑えられ、製版スピードが速くなり、洗浄水の取替回数を減少させることができ、洗浄廃液の処理コストを著しく低減させることができる。この水洗浄時には、常温の洗浄水を少量、例えば3〜6L/分、連続供給することにより、版材21の水洗いを行なうことができ、水現像タイプならではの優れた環境性を得ることができる。
【0045】
感光性樹脂層24の未硬化樹脂は硬化材料樹脂(レリーフ部)表面から分離除去され、取り除いた後、必要に応じて水性現像液を所要の水圧で版表面全体に均一スプレー噴霧され、水現像工程が終了する。水性現像液は、未反応の未硬化樹脂の分離除去を促進するために、未硬化樹脂を溶解あるいは膨潤させる性能を持つ液体を現像液として使用する。光照射された感光性樹脂が凝固されて硬化することで、光硬化した材料樹脂は、現像液に対する溶解性あるいは膨潤性がなくなり、現像液に対する化学的耐性が与えられることを
利用してフィルムベース26上に機械的、物理的特性(強度)に優れたレリーフ像32およびバック析出層33が一体成形され、版厚1mm未満、好ましくは、820μm〜460μmである可撓性の感光性樹脂凸版印刷版27が成型される。
【0046】
樹脂凸版印刷版27の水洗いが終了したら、続いて図2(F)に示すように、乾燥ヒータ36にて加熱・乾燥され、樹脂凸版印刷版27に付着した水滴が除去される。乾燥工程にて水滴が除去された樹脂凸版印刷版27は、紫外線蛍光灯や高圧水銀灯、等の活性光源からの照射により、後露光が行なわれる。後露光工程では、300nm以上の波長領域の活性光源からの照射により、樹脂凸版印刷版27の機械的、物理的強度の促進や表面粘着性除去を主目的とした現像後光硬化樹脂物への活性光照射である。後露光は、空中露光方式で行なわれる。
【0047】
樹脂凸版印刷版27の製造では、水現像工程の水洗い出しや水洗い、さらには乾燥・後露光工程は、環境配慮型プロセッサー(図示せず)、例えば富士フイルムグラフィックシステムズ株式会社製の製品名FTP640IIやFTW350LIIを用いて実施される。このようにして、可撓性の長尺な樹脂凸版印刷版27が製造され、製作される。
【0048】
製作された長尺の樹脂凸版印刷版27には、幅方向両端部(マージナルゾーン34)にピン送り孔用マークが長手方向に等ピッチ、例えば1/2インチ間隔で形成されている。樹脂凸版印刷版27のピン送り孔用マークはネガフィルム28を用いたレリーフ露光やポジフィルム29を用いたバック露光により、レリーフ像32の成形時やバック露光の製版時にレリーフ像とともに同時に形成される。
【0049】
しかして、製造された長尺の樹脂凸版印刷版27を、穿設手段で等ピッチのピン送り孔を穿設することで、樹脂凸版印刷版27の両端部(マージナルゾーン34)にピン送り孔37が長手方向に等ピッチ、例えば1/2inのピッチ間隔で列状に設けられる。
【0050】
したがって、可撓性で長尺の樹脂凸版印刷版27には、レリーフ像32を形成した印刷面(版面)と、マージナルゾーン34に形成されたピン送り孔用マークが、ネガフィルム28で同時に焼き付けられ、一体に形成されているので、マージナルゾーン34に形成される等ピッチのピン送り孔37と印刷面のレリーフ像32の面付けが正確に行なわれる。
【0051】
[無端帯状の樹脂凸版印刷版の製造]
可撓性の長尺な樹脂凸版印刷版27は、感光性樹脂凹版印刷版の版材21から、図2の(A)〜(F)に示された製造工程を得て製作される。製作された可撓性の樹脂凸版印刷版27は、天地方向が5〜9m、幅方向が45〜51cmの細長い帯状の感光性樹脂凸版の版材21の中から適宜選択されて長尺の細長い無端帯状に製作される。長尺の樹脂凸版印刷版27から無端帯状印刷プレート13の製作は、実際には印刷装置10への取付の際に行なわれる。
【0052】
一方、製作された樹脂凸版印刷版27は、切断装置により天地方向両端部に、図3に示すように幅方向に沿って凹凸形状に切断される。可撓性の樹脂凸版印刷版27の両端の凹凸形状は、印刷版幅方向に交互に噛み合うように凹凸結合する形状であれば、ノコギリ歯形状、歯車歯形状、ジグザグ形状等種々の形状が考えられる。樹脂凸版印刷版27の両端の凹凸形状は、相互に噛み合された状態で凹凸結合部あるいは凹凸係合部、凹凸接合部39が形成され、この凹凸結合部39の外面(版面)側だけに、片面の接着テープ30で接着され、一体化されて無端帯状印刷プレート13としてエンドレスな樹脂凸版印刷版27が製造される。樹脂凸版印刷版27の両端を突き合せ係合(接合)させて凹凸結合させることにより、凹凸結合部(凹凸接合部)39の相対的な幅方向、軸方向の滑りや変位を確実に規制し、防止することができる。
【0053】
無端帯状樹脂凸版印刷版13の凹凸接合部39の内面(フィルムベース面)側は、フィルムベース26が露出しており、接着テープ40が貼着されずにテープ段差面のない接合状態で面一に形成される。無端帯状樹脂凸版印刷版13の外面(外周面)側には、レリーフ像32からなる印刷面としての凹凸画線(レリーフ)部の版面41が形成される。
【0054】
可撓性の樹脂凸版印刷版27の天地方向両端の凹凸形状を突き合せて係合させ、レリーフ像32の凹凸画線部の版面41側の凹凸接合部31を接着テープ40を用いて幅方向に貼着させると、エンドレスな長尺印刷プレートとしての無端帯状樹脂凸版印刷版13が成形される。この無端帯状樹脂凸版印刷版13は、図1に示すように、凸式印刷機としてのロータリプレスタイプの印刷装置の版胴(あるいは本体胴)を形成するドライブ側のプレートシリンダ17とドリブン側のガイドシリンダ19の間に掛け渡される。
【0055】
無端帯状樹脂凸版印刷版(無端帯状印刷プレート)13の1廻りの長手方向長さは、数m〜数十mの間で適宜選択される。無端帯状樹脂凸版印刷版13の長手方向長さが、数十mと長い場合には複数枚の可撓性の樹脂凸版印刷版27を直(縦)列状に順次並べて接続して帯状列を構成する。構成された帯状列の樹脂凸版印刷版27の両端部を凹凸接合させて結合することで、エンドレスな無端帯状樹脂凸版印刷版(無端帯状印刷プレート)13が製作される。
【0056】
[無端帯状樹脂凸版印刷版の取扱い]
無端帯状樹脂凸版印刷版(無端帯状印刷プレート)13は、印刷装置10のプレートシリンダ18とガイドシリンダ19の間に巻き掛けられる(樹脂凸版印刷版27の印刷装置10への取付に関しては後述する)。巻き掛けられた無端帯状樹脂凸版印刷版13の送りは、印刷プレート13のピン送り孔37にドライブ側のプレートシリンダ18の送りピン43が順次係合することにより案内される。プレートシリンダ18の回転に伴い、無端帯状印刷プレート13の幅方向両端部に長手方向列状に穿設されたピン送り孔37がプレートシリンダ18の送りピン43に順次係合することにより、無端帯状印刷プレート13は、天地方向および周方向の滑りや変位が規制され、防止される。
【0057】
ところで、印刷装置10のプレートシリンダ18と圧胴シリンダ17aは、重量のある無垢の中実(鋼鉄)シリンダで形成される。プレートシリンダ18と圧胴シリンダ17aを中実シリンダとすることで、中実シリンダは削り出し成形等の機械加工で形成されるが、真円の成形が容易で、回転バランスが良好となる。
【0058】
無垢のプレートシリンダ18と圧胴シリンダ17aは、自重が大きく、大きな重量を有して回転するが、印刷時に印(刷)圧の反発でのガタ付が小さく、機械的成形加工による真円度が良好で中実シリンダの回転バランスが良く、また、樹脂凸版印刷版の装着に両面テープが不要な為、両面接着テープの厚味ムラが生じない。したがって、ベタ印刷や網点印刷において、印圧の変動や変化がなく、ベタが良く潰れ、網点は汚れがない。また、中実シリンダは、撓みが少なく、ベタと網点が混入した印刷でも、網点が潰れることなく、ベタを綺麗に印刷可能である。
【0059】
さらに、連続フォーム12の印刷寸法は、版胴16の円周ではなく、無端帯状印刷プレート13の印刷版面の長さで決るため、版胴16の交換が不要となる。
【0060】
また、版胴16を構成するプレートシリンダ18は軸方向両端部(延長部)に、図4に示すように、スリーブ(筒)状フランジ18aが一体に成形されており、このフランジ18aにピン穴45が周方向に等ピッチに形成される。ピン穴45は、機械的な穴明け加工により形成される。プレートシリンダ18のピン穴45のピッチ間隔は、樹脂凸版印刷版27の幅方向両端部(マージナルゾーン34)に設けられたピン送り孔37のピッチ間隔と等しく形成される。
【0061】
さらに、プレートシリンダ18のフランジ18aに設けられたピン穴45に送りピン43が進退自在に収納される。各送りピン43は、図5に示すように、筒状フランジ18a内でプレートシリンダ18の端面に設けられた放射状ガイド溝46に案内されて進退される。各送りピン43は、プレートシリンダ18の端面の放射状ガイド溝46に収容され、このガイド溝46はピン穴45の延長上に放射状に形成される。したがって、各送りピン43は、プレートシリンダの端面に沿って周方向に配列され、しかも、放射状に進退自在に支持される。
【0062】
プレートシリンダ18の(スリーブ状フランジ18aの)列状ピン穴45内に周方向に配列された放射状の各送りピン43は、図6に示された固定カム蓋50の(リング状あるいはワッシャ状)ピン押え51により外側から押さえられ、送りピン43の脱落が防止される。カム蓋50は、版胴16のプレートシリンダ18の軸方向両端部側を覆うように回転不能に固定されている。カム蓋50はプレートシリンダ18の回転に追従せず、固定されている。
【0063】
また、送りピン43は、図7に示すように、ロッド状あるいはシリンダ状のピン本体47と、先端部に形成されたピンヘッド48と、ピン本体47の途中に設けられたカム溝(スライド溝)49とを一体に有する。送りピン43のカム溝49は固定されたカム蓋50のカムリング52にスライド自在に係合している。カムリング52はプレートシリンダ18aの外径より若干小さな径に構成され、しかも、固定されたカム蓋50のカムリング52の中心Oは、プレートシリンダ18の回転中心(回転軸心)Oの一側(ガイドシリンダ19の反対側)に偏位(シフト)して設けられる。
【0064】
送りピン43はプレートシリンダ18の両端部(フランジ状スリーブ18a)に設けられ、プレートシリンダ18の回転に伴って一体に旋回(回転)する。一方、固定されたカム蓋(固定カム)50のカムリング52は固定されており、カムリング52の中心Oは、プレートシリンダ18の回転中心Oより、ガイドシリンダ(カムローラ)19の反対側に偏位している。
【0065】
このため、送りピン43は、プレートシリンダ18の回転に伴ってカム蓋(固定カム)50のカムリング52に案内されてスライドし、旋回(回転)してプレートシリンダ18のシリンダ面Sから進退される。送りピン43のカムリング52に沿う摺動がスムーズに行なわれるように、グリス等が充填される。図7に示すように、送りピン43は、プレートシリンダ18の1回転の間にピンヘッド48がプレートシリンダ18のシリンダ面Sから後退した領域Raと、プレートシリンダ18のシリンダ面Sから突出していく領域Rbと、プレートシリンダ18のシリンダ面Sから完全に出ている突出領域Rcと、プレートシリンダ18のシリンダ面Sから後退していく領域Rdとを順次送り、以後、プレートシリンダ18の回転毎に、送りピン43はピンヘッド48の後退領域Raと、突出していく領域Rbと、突出領域Rcと、後退していく領域Rdとが順次繰り返される。プレートシリンダ18に設けられる送りピン43のピッチ間隔は、無端帯状樹脂凸版印刷版(無端帯状印刷プレート)13のピン送り孔37のピッチ間隔と等しく形成されている。
【0066】
送りピン43の突出領域Rcは、図7に示すようにプレートシリンダ18の中心角で略150°あるいはそれ以上の角度を有し、版胴16のプレートシリンダ18が圧胴シリンダ17aに接触している領域では、少なくとも送りピン43は無端帯状印刷プレート13のピン送り孔37に係合し、印刷プレート13の軸方向(天地方向)および幅方向の滑りや変位が確実に防止される。
【0067】
なお、ガイドローラ19はドリブンローラ(シリンダ)であり、回転フリーに支持されている。ガイドローラ19は移動調節装置(図示せず)により、版胴16のプレートシリンダ18に向って進退自在に支持されており、無端帯状印刷プレート13の張力を簡単かつ容易に調節できるようになっている。無端帯状印刷プレート13は版胴16のプレートシリンダ18とガイドローラ19との間にテンションローラ等を設けることを必ずしも必要としない。
【0068】
このようにして、プレートシリンダ18に送りピン43を備えた版胴16が構成され、この版胴16のプレートシリンダ18とガイドシリンダ19間に無端帯状印刷プレート13が巻き掛けられる。また、版胴16と圧胴17が対向して設置されてロータリプレス式印刷装置10が組み立てられる。
【0069】
[無端帯状樹脂凸版印刷版(無端帯状印刷プレート)の試験]
感光性樹脂凸版印刷版の版材21に、富士トレリーフのWF95BIIを用いて長尺の可撓性の樹脂凸版印刷版27を製作して試験を行なった。
【0070】
この版材21は、版厚が950μmで、版材21を構成するベースフィルム22、接着剤層23および感光性樹脂層24の各厚さは、それぞれ188μm、32μmおよび730μmである。感光性樹脂凸版印刷版の版材21は、図2に示される製造工程により、315nm〜400nmの紫外線(UV)を照射して可撓性の樹脂凸版印刷版27が製作される。
【0071】
図2(C)に示される露光工程では、露光装置30のランプハウス内で版材21の表側から、520mj/cmの紫外線を製版フィルムであるネガフィルム28を介して露光させ、数回、例えば5回の焼付けを行なう。版材21の感光性樹脂層24は、ある一定以上の光量に達しないと、例えば25mj/cm以下の光量では凝固しない性質を有し、面積の小さな網点では、感光性樹脂層24の厚さ730μm分だけ紫外線を透過させて凝固させるには、多光量必要となる。
【0072】
通常は、露光装置30のランプハウス内で、露光量1500mj/cm〜2000mj/cm(ステップガイド15〜16段)の紫外線を照射して製版させている。このとき、版材21のハイライト部の小さな網点、例えばスクリーン線で175線(L)以上の網点は露光量不足のため形成されなかったり、形成されても、製版(樹脂凸版印刷版)の洗い出し途中で壊れて破損し、無くなる。また、ハイライト部の網点の露光量不足を補うために、光量を多くすると、シャドウ部の露光量が過多になり、ベタ版になってしまう。
【0073】
一方、版材21のシャドウ部は、例えば500mj/cm程度と少ない光量の紫外線を照射することによって、ネガフィルム28と同等の大きさの非画線部が深く感光性樹脂層24に形成されるが、光量が多くなるに従って、非画線部は小さく浅くなる。ネガフィルム28に忠実な印刷を行ない、最適な樹脂凸版印刷版(製版)27を作ろうとすると、ハイライト部とシャドウ部は露光量に対してそれぞれ相反する性格を備える。製版のハイライト部は、多い光量を必要とし、シャドウ部は、多い光量が入ると、カブリ気味になってベタ版に近づき、両立は不可能であると従来は考えられていた。
【0074】
樹脂凸版印刷版27は、版厚が1mm以下と薄く、製版フィルムであるネガフィルム28に忠実な軽量な製版を製作することができる。
【0075】
可撓性の樹脂凸版印刷版27は、製版のシャドウ部が光量過多にならないように、図2(C)に示すように、ネガフィルム28への露光量を版材21の表側から500mj/cm程度と少ない光量で焼き込み、焼付け露光(レリーフ露光)を行なった後、版材21を反転させ、その裏側(フィルムベース26側)からポジフィルム29を通して版材21の全面に35mj/cm〜70mj/cm、好ましくは35mj/cm〜50mj/cmの少量の紫外線を入射させ、バック露光させることにより、版材21は、図9の実施例1〜13に示すようにベースフィルム22から180μm〜600μm、好ましくは180μm〜400μm程度の厚みで感光して凝固され、バック析出層(バック固化層)が形成される。
【0076】
図9は、ポジフィルム29側から版厚950μmの版材21に紫外線の光量を種々変えてバック露光させたときの、バック露光の光量(3回の平均光量)Oと、製版の版厚T、樹脂残量(バック析出層の厚さ)V、レリーフ深度(レリーフ高さ)との関係を示す試験データであり、図10は、図9の試験データをグラフ化したものである。図10において、実線Aは、製作された製版(樹脂凸版印刷版27)全体の版厚を示す製版の版厚曲線、破線(点線)Bは、製版のバック析出層の厚さを示す樹脂残量曲線、また、(一点)鎖線Cは、レリーフ深度(レリーフ高さ)を示す曲線である。
【0077】
図9に示す試験例では、比較例1〜6に示すように、バック露光の光量が約30mj/cm以下では、凝固される感光性樹脂残量は少なく、バック析出層33は100μm以下の厚さと薄膜となり、破れて破損を受け易い。また、バック析出層33が100μm以下であると、レリーフ像間のブリッジ架橋が充分でなく、版面側のレリーフ像の機械的、物理量補強強度が弱く、さらに、バック析出層33が130μm未満であるとレリーフ深度が600μm以上となって、レリーフ像はレリーフ深度が比較的深くなり、独立点は形成されなかったり、印刷時に曲ったり、折れたりし、画像が歪んだり、鮮明な画像が得られない虞がある。また、レリーフ深度が深ければ深いほど、微細な漢字等のマイクロ文字を印刷する場合には、文字の印刷再現性が良好でなく、画像(文字)形成性が好ましくなく、バランスが良くない。さらに、バック析出層33が100μm以下では、凝固されたバック析出層が壊れて破れ易く、充分なレリーフ像強度が得られず、反復再現性が劣る。
【0078】
一方、バック露光の光量が72mj/cm以上になると、図9の比較例7〜9に示すように、レリーフ深度は約130μm未満となるが、バック析出層33の厚さが600μm以上となり、印刷時の耐圧力は充分に取れる。しかし、通常の凸式印刷機では、レリーフ深度が100μm以下となって鮮明で綺麗な印刷が困難となる。この場合には、製版の凹凸画線の無い凹の部分が、レリーフ深度100μm程度以下と浅いために、インクロール(付けロール)20(図1参照)からのインキが印刷物に付着して印刷物に汚れが発生する。
【0079】
ところが、図9の実施例1〜13に示すように、バック露光の光量を約35mj/cm〜約72mj/cmの範囲で露光量を加えると、版材21のバック析出層33はフィルムベース面から240μm〜600μmの範囲で感光して凝固される。
【0080】
特に、図2(C)に示すように、版材21の表のネガフィルム28を露光量を500mj/cmの程度の少量で焼き込んだ後、版材21を裏のポジフィルム29側から図2(D)に示すように、全面に35mj/cm〜72mj/cm程度の露光量を加えると、版材21はフィルムベース面から180μm〜600μmの厚みで露光し、凝固してフィルムベース26側に180μm以上のバック析出層33が形成される。析出して固化されたバック析出層33は、レリーフ像32間をブリッジ架橋して強度的に補強し、レリーフ深度Dが500μm〜130μmのレリーフ像32が補強される。しかも、レリーフ像32は、フィルムベース26と一体で、かつバック析出層33で補強されて、フィルムベース26に向って拡開するようにテーパ状に形成される(図2(C)〜(F)参照)。
【0081】
このように、版材21の表側からネガフィルム28を介して500mj/cm程度のレリーフ露光を行ない、その後、版材21の裏側から所要の光量でポジフィルム29を介してバック露光を行なうと、レリーフ像32は180μm〜600μmのバック析出層33で補強され、レリーフ像32はレリーフ深度500μm〜130μmの範囲で残る。残るレリーフ像32は500μm〜130μmとレリーフ深度が浅いので、小さな独立点も殆ど残り、シャドウ部もネガフィルム28にほぼ忠実な印刷版(樹脂凸版印刷版27)の製作ができる。
【0082】
その際、版材21の表側の焼付け光量は、通常(1500mj/cm〜2000mj/cm)の1/3〜1/4に減らすことができ、洗浄工程の水洗い出し時間や洗浄量も、従来の1/3以下となり、環境に優しい樹脂凸版印刷版27を製作することができ、エコーの負荷が軽減される。
【0083】
版材21の表側からネガフィルム28を介してレリーフ露光し、その裏側からポジフィルム29を介してバック露光を行なうことにより、樹脂凸版印刷版27は、従来の樹脂印刷版では不可能であったハイライト部とシャドウ部を両立させることが可能となる。
【0084】
また、可撓性の樹脂凸版印刷版27では、ネガフィルム28で版材21の裏側から光量500mj/cm程度で焼付け、裏からポジフィルム29で35mj/cm〜72mj/cmの少量の光量で焼付けることによって、独立点など表側の光量の弱いハイライト部分には裏側から多くの光量が入り、バック析出層33を形成して補強され、逆にシャドウ部には光量が少ない。図5の実施例5〜13に示すように、バック露光の光量は35mj/cm〜72mj/cm程度が好ましい。
【0085】
したがって、版材21のシャドウ部は、ポジフィルム29を通してバック露光させることにより、感光性樹脂が凝固して必要な小さな網点が潰れることなく形成される。この網点は、バック露光によるブリッジ架橋により機械的、物理的に補強され、シャドウ部は網点が潰れることなく、ネガフィルム28通りの明るいものとなる。
【0086】
しかも、バック露光の光量を50mj/cm〜68mj/cmとすると、網点の独立点は、約400μm〜500μm程度の厚さでフィルムベース26側から凝固してくるバック析出層33でブリッジ架橋され、レリーフ像32のレリーフ深度が200μm〜330μm程度となり、高さが浅く(低く)、印刷時の耐圧力が増し、微細なマイクロ文字や写真印刷でも印刷再現性よく、鮮明な画像が得られる。
【0087】
長尺の樹脂凸版印刷版27は、ショアA硬度30〜40程度の柔かい版材21を用いて製作され、バック露光を35mj/cm〜68mj/cm、好ましくは50mj/cm〜68mj/cmの光量を加えることにより、図2(C)で示すように、バック析出層33はフィルムベース26側から底上げされて形成されるので、レリーフ像32のレリーフ深度が浅くなり、テーパ状の末拡がりのレリーフ像32はブリッジ架橋されて機械的、物理的強度が向上する。網点の独立点は、独立点でなくなり、ブリッジ架橋で強度が補強されて一体化される。このため、印刷時の耐刷力、耐圧力が増大し、可撓性の樹脂凸版印刷版27は、大きな耐圧力を有し、網点や微細なマイクロ文字、写真印刷の汚れが皆無となり、しかも、印圧に非常に強く、網点の汚れがなくなり、網点が壊れることなく長時間使用でき、耐久性を向上させることができる。
【0088】
この樹脂凸版印刷版27では、写真印刷する場合にも、樹脂凸版印刷版27の凹凸画線部の版面(印刷面)に、1%〜99%の網点と、100%のベタを組み合せた印刷を、ロータリプレス式の印刷装置10を用いて印刷することができた。この樹脂凸版印刷版27では、スクリーン線で300L迄の網点と微細な0.4ポイント(pt)迄のマイクロ文字、例えば0.6ptの漢字の印刷が可能となり、網点の汚れを生じさせることなく、1%の網点から100%のベタ印刷まで可能になった。
【0089】
長尺の可撓性樹脂凸版印刷版27から製作された無端帯状樹脂凸版印刷版(無端帯状印刷プレート)13をロータリプレス式の印刷装置10に装着して印刷すると、300L網点の印刷と0.5ptの文字は、0.18mm大の微細なマイクロ文字であり、この樹脂凸版印刷版27とロータリプレス式印刷装置10とを組み合せることで、スクリーン線で175L〜300Lの写真印刷が可能となった。
【0090】
また、樹脂凸版印刷版27はショアA硬度30〜40度程度の柔かい製版(刷版)であり、製作された柔かい樹脂凸版印刷版27を通常の輪転機に装着したり、また、製作された無端帯状樹脂凸版印刷版13をロータリプレス式印刷装置10に巻き掛けて印刷するとき、従来の印刷版では、刷力により最初の印刷部(版面)が斜めに押し込まれて、網点部が汚れる傾向があったが、この汚れ傾向も解消することができる。
【0091】
この可撓性の無端帯状樹脂凸版印刷版13では、露光時に、版材21の裏面側に印刷方向直前部分に印刷直線部に50mj/cm〜72mj/cmのバック露光を入れると、感光性樹脂は400μm〜600μmの厚さ分凝固してバック析出層33が形成される。このため、レリーフ像32のレリーフ深度は、高さ330μm〜130μm、と低く(浅く)なると同時に非印刷部のレリーフ像は、バック析出層33のレリーフ架橋が形成されて補強されるので、印刷画線部に汚れが生じるのを未然に防止できることを知見した。
【0092】
しかし、レリーフ像32のレリーフ深度が100μm以下と浅くなると、非画線部に地汚れが発生することを知見した。版材21の印刷部は、バック露光の光量を調節し、レリーフ深度を130μm以上の高さ、より好ましくは180μm〜330μm程度の高さとすることで、すなわち、バック析出層33を400μm程度以上としていくことで、無端帯状樹脂凸版印刷版13が1mm未満の版厚、具体的には、620μm〜820μm程度の版厚となり、地汚れの発生を防止できる軽量な製版を提供することを知見した。
【0093】
この無端帯状可撓性樹脂凸版印刷版13では、網点グラデーションでバック露光量を調節してバック析出層33の厚さを550μm以下にコントロールすることで、刷力に強い製版と、地汚れのない凸版印刷が可能となった。
【0094】
ところで、長尺の可撓性樹脂凸版印刷版27は、図2(C)の示すレリーフ露光工程で、フィルムベース26上にレリーフ像(印刷面、直線部)32が形成される一方、この露光時に、ネガフィルム28を介しての露光により、可撓性樹脂凸版印刷版の版材21の両端部にピン送り孔用マークがレリーフ像と一緒に形成される。
【0095】
製作される可撓性樹脂凸版印刷版27は、フィルムベース26上に形成されるレリーフ像32が、ピン送り孔37(開マーク)を基準にして面付けされる。このため、樹脂凸版印刷版27は、レリーフ像32を形成した画線部(印刷面)が、ピン送り孔37を基準にして面付けされるので、面付けが正確となる。その上、可撓性樹脂凸版印刷版27から製作される無端帯状印刷プレート13は、両端部に形成される長手方向のピン送り孔37のピッチが互いに等間隔に形成され、しかも、無端帯状印刷プレート13のピン送り孔37のピッチは、版胴16のプレートシリンダ18に設けられた送りピン43のピッチと等しい。
【0096】
したがって、プレートシリンダ18とガイドシリンダ19とに巻き掛けられる無端帯状凸版印刷版(無端帯状印刷プレート)13は、両端部に形成されるピン送り孔37が、一例では26穴以上送りピン43と係合(噛み合い)し、プレートシリンダ18の送りピン43に滑りや変位を生じさせることなく次々に係合して送りが案内される。このため、無端帯状印刷プレート13は、周方向や幅方向に滑りや位置ずれが生じることなく、正確に案内されて送られる。このため、長尺の無端帯状樹脂凸版印刷プレート13をロータリプレス式印刷装置10に適用しても、微細なマイクロ文字、例えば、0.4ポイントの漢字印刷やスクリーン線で300L(線)迄の網点印刷が可能となる。
【0097】
さらに、ロータリプレス式印刷装置10は、プレートシリンダ18とガイドシリンダ19との間に無端帯状印刷プレート13が巻き掛けられる。版胴16はプレートシリンダ18に無端帯状印刷プレート13を巻き掛けて構成されるので、版胴16全体の取替が不要で、刷版である無端帯状印刷プレート13の取替だけで足りる。しかも、取替が簡単かつ容易で、取替時間も例えば5分程度と少ない。しかも、タッチローラの調整が不要となる。
【0098】
また、連続フォームへの印刷長さの寸法は、版胴16のプレートシリンダ18の円周ではなく、樹脂凸版印刷版27の長さで決るため、プレートシリンダ18の交換が必要なくなり、交換胴が不要である。
【0099】
その上、無端帯状印刷プレート13は、可撓性の樹脂凸版印刷版27の両端側凹凸接合部39を案内させて、レリーフ像32側から片面接着テープ40を貼り付けることにより構成されるので、プレートシリンダ18に接触する無端帯状樹脂凸版印刷版13は、面一のプレート面に形成され、厚みムラやテープ段差が生じない。しかも、プレートシリンダ18は無垢の中実(鋼鉄)シリンダを削り出し等の機械加工により構成されているので、研摩されたプレートシリンダ18は厚みの精度が良好な無端帯状印刷プレート13により、微細なマイクロ印刷でも、優れた印刷品質を実現することができる。
【0100】
通常の凸版印刷装置では、凸版の印刷版は両面テープをシリンダに貼り付けて構成されるので、凸版の印刷版の貼付けに伴い、両面テープの厚みムラが網点印刷等に顕著に現われ、印刷ムラが発生し、良質な印刷品質を確保できない。
【0101】
しかし、この実施形態の印刷装置10では、0.4ポイント〜0.5ポイントの微細なマイクロ文字で連続フォーム12に印刷を施すと、印刷されたマイクロ文字は複写機で複写しても、文字が潰れ、再現が難しい。したがって、ロータリプレス式印刷装置10に無端帯状印刷プレート13を用いても、複写機での文字再現が難しいセキュリティ性の高い印刷技術で提供でき、偽造防止が可能な印刷技術を提供することができる。
【0102】
このため、無端帯状樹脂凸版印刷版である無端帯状印刷プレート13をロータリプレス式印刷装置10に適用することにより、印刷精度と印刷性能の一層の向上を図ることができ、印刷だけで偽造防止が可能でセキュリティ性が高い印刷技術を提供することができる。
【0103】
[樹脂凸版印刷版の変形例]
図10は、可撓性の樹脂凸版印刷版の変形例を示すものである。
【0104】
この変形例に示された可撓性の樹脂凸版印刷版27Aは、図2に示された樹脂凸版印刷版27とは、版材21Aを異にし、他の構成および作用は、実質的に異ならないので、同じ構成には同一符号を付し、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0105】
樹脂凸版印刷版27Aは、製版フィルムを不要としたCTP方式の版材21Aが用いられる。このCTP版材21Aとして、例えば富士トレリーフのDWF95DT,DWF95DII等が用意される。
【0106】
この感光性樹脂凸版印刷版のCTP版材21Aでは、図11に示すように、基板としてのポリエステル(PET)フィルムのベースフィルム22に接着剤層23を介して感光性樹脂層24が一体に積層され、この感光性樹脂層24の上に赤外線レーザに反応するアブレーションマスク58が積層される。アブレーションマスク58は、感光性樹脂層24上に赤外線レーザと反応するブラックマスク層を構成しており、このアブレーションマスク58上にカバーフィルム25を被着して成型される。なお、感光性樹脂層24は赤外線レーザには反応しない。
【0107】
好ましいCTP版材21Aの一例として、版厚が950μmの場合、図2に示す版材21と同様に、ベースフィルム22のフィルム厚は188μm、ハレーション防止層を形成する接着剤層23は32μm、赤外線には反応しない感光性樹脂層24の層厚は730μmである。ベースフィルム22と接着剤層23はフィルム支持体としてのフィルムベース26を構成しており、このベース厚は220μmである。
【0108】
この感光性樹脂凸版のCTP版材21Aを用いて、可撓性の印刷製版である樹脂凸版印刷版27Aが製作される。
【0109】
この可撓性の樹脂凸版印刷版27Aの製作の際には、版材21Aとポジフィルム29が用意される(図11(A)参照)。初めにカバーフィルム25を取り外したCTP版材21Aに表側から赤外線レーザLをパターン照射し、図11(B)に示すように、アブレーションマスク58に製版パターンが形成される。CTP版材21Aでは、製版フィルムであるネガフィルムが不要となる。
【0110】
CTP版材21Aのアブレーションマスク58上に製版パターンが形成と同時にUV露光された後、図示しない露光装置のランプハウスに搬送される(図11(C)参照)。描画と同時にCTP機上で同時UV露光することで、取扱い上のキズが付くのを防ぐことができる。
【0111】
ランプハウスに搬送されたCTP版材21Aは、ランプハウス内を所要の速度で走行させつつ、ランプハウス内の紫外線光源から315nm〜400nmの紫外線(UV)が照射され、レリーフ露光が行なわれる。
【0112】
レリーフ露光では、CTP版材21Aのアブレーションマスク58の製版パターンを通して、感光性樹脂層24に例えば500mj/cm程度の光量の紫外線が入射される。感光性樹脂層24は、紫外線の照射により、照射部が凝固されて光硬化する。この光硬化によりCTP版材21Aは、感光性樹脂層24に文字・画像のレリーフ像32が形成され、このレリーフ像32はベースフィルム22に向って末広がりのテーパ状に形成される。
【0113】
赤外線のレリーフ露光量は、500mj/cm程度の光量、好ましくは、490mj/cm〜530mj/cm、より好ましくは、500mj/cm〜520mj/cmの紫外線が使用されて、焼付き、露光される。500mj/cm程度の光量で紫外線が照射されると、感光性樹脂層24は照射部にレリーフ深度730μm分のレリーフ像32が形成される。レリーフ像が小さな点であるときは、レリーフ深度は浅くなる。
【0114】
感光性樹脂層24にレリーフ像32が形成された後、版材21Aはランプハウスから取り出されて反転され、CTP版材21Aの裏側からポジフィルム29がアブレーションマスク58と位置合せされて真空密着され、バキューム固定される。このバキューム固定により、CTP版材21Aとポジフィルム29との間に、位置ずれや密着ムラが発生するのが防止される。ポジフィルム29には、必要に応じて塩ビシート等のカバーフィルムが被着される。
【0115】
このように、感光性樹脂凸版のCTP版材21Aをレリーフ露光で焼付き露光を行なった後、ランプハウスからCTP機で描画UV露光を行なった後、取り出し、取り出されたCTP版材21Aを反転させ、CTP版材21Aの裏面側にポジフィルム29をバキューム固定させ、その後、再びランプハウスに送り込んでバック露光を行なう。バック露光では紫外線を、ポジフィルム29側からフィルムベース26を通してCTP版材21Aに35mj/cm〜72mj/cmの光量を入れて凝固させ、CTP版材21Aのフィルムベース26側に、感光性樹脂層24の全面にバック析出層(バック固化層)33を形成する(図11(D)参照)。
【0116】
バック析出層33の厚さは、フィルムベース26側全面に130μm以上〜600μm迄の範囲、好ましくは、200μm〜550μmの範囲で感光性樹脂層24を凝固させて光硬化させる。バック析出層33は、フィルム支持体であるフィルムベース26と一体に成形され、感光性樹脂凸版印刷版27の機械的、物理的強度を向上させている。バック析出層33は層厚が厚ければ厚いほど、版材21の機械的、物理的強度を向上させることができる。
【0117】
図11(C)および(D)では、感光性樹脂凸版のCTP版材21Aにレリーフ露光を行なった後にバック露光させる例を示したが、CTP版材21Aの表裏側からレリーフ露光とバック露光と同時に行なうようにしても、あるいは、バック露光をレリーフ露光に先立って行なうようにしてもよい。
【0118】
露光工程でレリーフ露光およびバック露光により光硬化作用を受けたCTP版材21Aは、アブレーションマスク58およびポジフィルム29を剥がして除去した後、水洗浄工程に送られる。水洗浄工程では、図示しない洗浄装置に平型洗浄ブラシ35がスライド自在に備えられており、この洗浄ブラシ35により、図8(E)に示すように、常温の洗浄水を用いて水洗いが行なわれる。水洗いでは、CTP版材21Aを数十mm/分〜数百mm/分の搬送速度で送り込みつつ、少量の洗浄水を連続供給して、平型洗浄ブラシ35にてブラッシングし、水洗いされる。
【0119】
水洗浄時には、常温の洗浄水中で平型洗浄ブラシ35を数分間、例えば3分間往復動させ、あるいは回転洗浄ブラシの回転運動によるブラッシング作用により、感光性樹脂層24の未硬化部の材料樹脂が、光硬化されたレリーフ像32やバック析出層33の硬化樹脂表面から分離して剥がされ、洗い流される。この未硬化部の材料樹脂量は、レリーフ深度に対応する未硬化樹脂分であるため、従来に比べて遥かに少ない。このため、洗浄水の汚れ除去回数が抑えられ、洗浄水の取替回数を減少させることができ、通常よりも速く、短時間で洗浄処理ができるため、電力の節減が図れ、洗浄廃液の処理コストを著しく低減させることができる。この水洗浄時には、常温の洗浄水を少量、例えば3〜6l/分、連続供給することにより、CTP版材21Aの水洗いを行なうことができ、水現像タイプならではの優れた環境性を得ることができる。
【0120】
感光性樹脂層24の未硬化樹脂は硬化材料樹脂(レリーフ部)表面から分離除去され、取り除いた後、必要に応じて水性現像液を所要の水圧で版表面全体に均一スプレー噴霧され、水現像工程が終了する。水性現像液は、未反応の未硬化樹脂の分離除去を促進するために、未硬化樹脂を溶解あるいは膨潤させる性能を持つ液体(水道水でもよい。)を現像液として使用する。光照射された感光性樹脂が凝固されて硬化することで、光硬化した材料樹脂は、現像液に対する溶解性あるいは膨潤性がなくなり、現像液に対する化学的耐性が与えられることを利用してフィルムベース26上に機械的、物理的特性(強度)に優れたレリーフ像32およびバック析出層33が一体成形され、可撓性の感光性樹脂凸版印刷版27Aが成型される。
【0121】
感光性樹脂凸版印刷版27Aの水洗いが終了したら、続いて図11(F)に示すように、乾燥ヒータ36にて加熱・乾燥され、樹脂凸版印刷版27Aに付着した水滴が除去される。乾燥工程にて水滴が除去された感光性樹脂凸版印刷版27Aは、紫外線蛍光灯や高圧水銀灯、等の活性光源からの照射により、後露光が行なわれる。後露光工程では、300nm以上の波長領域の活性光源からの照射により、感光性樹脂凸版印刷版27Aの機械的、物理的強度の促進や表面粘着性除去を主目的とした現像後光硬化樹脂物への活性光照射である。後露光は、空中露光方式で行なわれる。
【0122】
樹脂凸版印刷版27Aの製作では、水現像工程の水洗い出しや水洗い、さらには乾燥・後露光工程は、環境配慮型プロセッサー(図示せず)、例えば富士フイルムグラフィックシステムズ株式会社製の製品名FTP640IIやFTW350LIIを用いて実施される。このようにして、可撓性の樹脂凸版印刷版27Aが製造され、製作される。
【0123】
製作された可撓性の樹脂凸版印刷版27Aから、エンドレスな無端帯状の樹脂凸版印刷版が製造されるが、この無端帯状の樹脂凸版印刷版の製造は、図3に示した樹脂凸版印刷版(無端帯状印刷プレート)と異ならないので、説明を省略する。
【0124】
変形例の樹脂凸版印刷版27Aにおいても、凸版印刷の分野で、耐環境適性、緻密な品質精度の高機能感光性樹脂が得られる。特に、この樹脂凸版印刷版27Aは製版フィルムであるネガフィルムが不要であるために、露光工程での焼付き露光精度確保が容易で、生産性の向上を図ることができる。また、製版フィルムを使用しないために、環境負荷が低く、優れた樹脂凸版印刷版27Aを提供できる。
【0125】
[樹脂凸版印刷版の印刷装置への取付]
感光性樹脂凸版の版材21から図2(A)〜(F)または図11(A)〜(F)の製造工程を経て長尺の可撓性樹脂凸版印刷版27,27Aが製作される。製作された樹脂凸版印刷版27(27A)には、マージナルゾーン34(図3参照)にピン送り孔用マークが所定のピッチ間隔でレリーフ像(印刷面)32とともに一体成形されている。樹脂凸版印刷版27(27A)のピン送り孔用マークを穿設手段で穿設して、マージナルゾーン34にピン送り孔37を形成する一方、樹脂凸版印刷版27の長手方向(天地方向)の両端を幅方向に沿って凹凸状あるいはジグザグ状に、互いに補形状をなすように切断する。
【0126】
長尺の樹脂凸版印刷版27のマージナルゾーン34にピン送り孔37を所定のピッチ間隔(例えば、1/2ピッチ間隔)で穿設する一方、樹脂凸版印刷版27の長手方向(天地方向)両端を幅方向に、互いに補形の凹凸形状(ジグザグ状を含む)に切断する。
【0127】
次に、マージナルゾーン34にピン送り孔37と両端に凹凸形状を形成した樹脂凸版印刷版27を図1に示す印刷装置10に取り付ける。印刷装置10への取付に先立って、ガイドローラ19を版胴16側に図示しない移動調節機構を用いて必要に応じて近付ける。
【0128】
そして、版胴16のプレートシリンダ18上方に、ガイドローラ19側から長尺の樹脂凸版印刷版27のレリーフ像(印刷面)32を上にして挿入する。挿入された樹脂凸版印刷版27は、マージナルゾーン34のピン送り孔37が、プレートシリンダ18の送りピン43に順次係合し、噛み合いながら樹脂凸版印刷版27が送り込まれる。このとき、プレートシリンダ18は回転フリーの状態に保たれている。
【0129】
続いて、長尺の樹脂凸版印刷版27は、プレートシリンダ18の旋回操作(回転操作)させつつ順次送り込み、インクロール20,20を通した後、プレートシリンダ18と圧胴シリンダ17aの間から引き出される。引き出された樹脂凸版印刷版27の先端は、続いて、ガイドローラ19に下側から巻き掛けられ、反転させてプレートシリンダ18側に戻される。
【0130】
次に、長尺の樹脂凸版印刷版27の先端は、プレートシリンダ16側に戻され、樹脂凸版印刷版27の先端がその後端に案内され、樹脂凸版印刷版27の長手方向(天地方向)両端が突き合されて係合し、樹脂凸版印刷版27の両端部が突き合され、凹凸接合される。長尺の樹脂凸版印刷版27は、その両端部が凹凸接合した状態で、レリーフ像(印刷面;版面)側から片面の接着テープ40を用いて幅方向に接着する。接着テープ40の接着は、プレートシリンダ18のシリンダ面Sを利用したり、下敷(図示せず)の助けを借りて行なってもよい。
【0131】
長尺の樹脂凸版印刷版27の両端部をレリーフ像(印刷面)32側から接着テープ40を用いて幅方向に沿って接着することにより、樹脂凸版印刷版27の両端部に、図3に示すように、凹凸結合部(接合部)39が強固にかつ簡単に形成され、無端帯状樹脂凸版印刷版、すなわち、無端帯状印刷プレート13が形成される。その際、樹脂凸版印刷版27のマージナルゾーン34に形成されたピン送り孔37が、接着テープ40で閉塞された場合には、接着テープ40に必要な穴あけ処理を施す。
【0132】
次に、図示しない移動調節装置を操作して、ガイドローラ19をプレートシリンダ18から離間調整し、無端帯状印刷プレート13の張力調整が行なわれて無端帯状印刷プレート13の印刷装置10への取付が終了する。この印刷装置10では、無端帯状印刷プレート13とプレートシリンダ18とにより、版胴16が構成される。
【0133】
しかして、印刷装置10では、長尺の無端帯状印刷プレート13に印刷製版の厚さ1mm未満の無端帯状樹脂凸版印刷版が用いられるので、印刷製版は軽量である。しかも、無端帯状印刷プレート13は、マージナルゾーン34のピン送り孔37とプレートシリンダ18に設けられた送りピン43とにより、プレート送りが案内されるので、長手方向(天地方向)や幅方向の滑りや変位が生じることなく、正確で安定した送りが保障され、印刷ムラが生じることもない。
【0134】
また、無端帯状印刷プレート13は両端部が印刷面側からの片面接着テープ40で凹凸結合され、ベースフィルム22側に接着テープ40のテープ段差が生じないので、テープ段差による印刷ムラや印刷精度に悪影響を及ぼすことがない。
【0135】
その際、無端帯状印刷プレート13はレリーフ像(印刷面、画線部)32とピン送り孔用マークが一体に成形され、無端帯状印刷プレート13は、ピン送り孔37を基準に印刷面が面付けされるので、常に正確な印刷を(例えば、印刷速度が200m/分程度で)施すことが可能となる。
【0136】
さらに、版胴16のプレートシリンダ18と圧胴シリンダ17aは、無垢の鋼鉄シリンダ(中実シリンダ)で、削り出し等の機械加工で形成されるので、プレートシリンダ18や圧胴シリンダ17aの真円成形性が良好で、回転バランスが良く、自重で重いため、印(刷)圧によるがたつきが少なく、正確で精度の良い印刷が可能である。この印刷装置10によれば、凸版の印刷製版で0.3pt(ポイント)迄の微細文字(マイクロ文字)や、300線まで、例えば175線の写真印刷が可能となる。
【0137】
[第2の実施形態]
図12は、印刷装置の第2実施形態を原理的に示す構成図である。
【0138】
この実施形態に示された印刷機械60は、4台の印刷装置10A,10B,10C,10Dを順次シリーズに設けて、給紙ロール11から繰り出される連続フォーム12にカラー印刷あるいはカラー写真印刷を印刷するようにしたロータリプレス式印刷装置である。第1ないし第4の印刷装置10A,10B,10C,10Dは、第1実施形態に示された印刷装置10と構成および作用を同じくするので、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。第1実施形態に示された印刷装置10と異なる点は、各印刷装置10A,10B,10C,10Dに、黄(イエロー)、赤(マゼンダ)、青(シアン)および黒(ブラック)の4色のインクとインクロール20A,20B,20C,20Dに施すようにしたものである。
【0139】
4色機の各印刷装置10A,10B,10C,10Dには、同じタイプのロータリプレス式印刷装置が用いられ、同じ長さの可撓性の無端帯状印刷プレート13A,13B,13C,13Dが使用される。各無端帯状印刷プレート13A,13B,13C,13Dは所要のタイミングをとって同期駆動され、無端帯状印刷プレート13A,13B,13C,13Dの画線部(モチーフ部)が位置合せされて印刷される。
【0140】
印刷された連続フォーム12は、例えば切断装置15で切断され、切断された板葉紙が収納ボックス61に収納される。
【0141】
なお、各印刷装置10A,10B,10C,10Dの版胴16および圧胴17には、第1実施形態に示された印刷装置10と同様に、プレートシリンダ18や圧胴シリンダ17aが無垢の中実シリンダ(鋼鉄シリンダ)で構成される。各印刷装置10A〜10Dは、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0142】
本発明の印刷装置においては、版胴16のプレートシリンダ18を1台で共通化させることができ、1つのプレートシリンダ18に種々の無端帯状印刷プレートを着脱交換自在に取り付けることが容易にでき、帯状印刷プレート(印刷版)を交換して使用するだけで、種々の天地方向あるいは幅方向サイズの異なる印刷を施すことができる。オフセット等の印刷装置は、印刷のサイズが限定され、印刷サイズが異なる毎にサイズに応じた版胴が必要なものとは相違する。
【0143】
また、プレートシリンダ18と圧胴シリンダ17aの径サイズには、種々のタイプの中実シリンダが用いられる。例えば、10インチ、15インチ、20インチ、28インチ、30インチの径サイズの中実シリンダがある。
【0144】
第2実施形態では、4色機の印刷機械60について説明したが、印刷機械は、複数台、例えば8色機や5色機の印刷装置からなる印刷機械でもよい。
【符号の説明】
【0145】
10,10A,10B,10C,10D 印刷装置
11 給紙ロール
12 連続フォーム
13,13A,13B,13C,13D 無端帯状印刷プレート
14 巻取りロール
15 切断機
16 版胴
17 圧胴
17a 圧胴シリンダ
18 プレートシリンダ
19 ガイドローラ
20,20A,20B,20C,20D インクロール
21 樹脂凸版印刷版の版材
22 ベースフィルム
23 接着剤層
24 感光性樹脂層
25 カバーフィルム
26 フィルムベース
27 樹脂凸版印刷版
28 ネガフィルム
29 ポジフィルム
30 露光装置
31 ランプハウス光源(紫外線光源)
32 レリーフ像
33 バック析出層
34 マージナルゾーン
35 平型洗浄ブラシ
36 乾燥ヒータ
37 ピン送り孔
39 凹凸結合部(接合部)
40 (片面)接着テープ
41 凹凸画像(レリーフ)部の版面
43 送りピン
45 ピン穴
46 放射状ガイド溝
47 ピン本体
48 ピンヘッド
49 カム溝
50 カム蓋(蓋カバー)
51 ピン押え
52 カムリング
58 アブレーションマスク
60 印刷機械
61 収納ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴のプレートシリンダとガイドローラとの間に無端帯状印刷プレートが巻き掛けられ、この無端帯状印刷プレートを用いて前記版胴と圧胴との間に送られる連続フォームに印刷が施される印刷装置において、
前記版胴のプレートシリンダおよび圧胴シリンダは中実シリンダでそれぞれ構成され、
前記版胴のプレートシリンダには、軸方向両端部に送りピンがシリンダ周方向に沿って等ピッチに列状に配設される一方、前記送りピンは固定カムリングに案内されて、前記プレートシリンダの少なくともガイドシリンダ反対側領域でシリンダ面から突出するように進退自在に設けられ、
前記無端帯状印刷プレートの幅方向両側のマージナルゾーンに長手方向に沿って、前記送りピンのピッチ間隔と等しいピン送り孔が列状に設けられ、
前記無端帯状印刷プレートは、長尺の樹脂凸版印刷版の長手方向両端に幅方向に形成された凹凸形状あるいはジグザグ形状が交互に噛み合うように突き合された状態で版面側から接着テープで接着されて構成され、
前記無端帯状印刷プレートは、前記マーシンナルゾーンのピン送り孔が前記プレートシリンダの送りピンに係合してプレート送りが案内されることを特徴とする無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置。
【請求項2】
前記樹脂凸版印刷版は、フィルムベース上に所要層厚の感光性樹脂層を形成した版厚1mm未満の長尺の感光性樹脂凸版の版材を用いて、この版材に前記感光性樹脂層を凝固させたレリーフ像とこのレリーフ像を補強するバック析出層とが設けられるとともに、前記版材の長手方向両端部にピン送り孔を長手方向等ピッチに成形したマージナルゾーンが設けられてフィルムベース上に版面が一体に構成された請求項1に記載の無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置。
【請求項3】
前記感光性樹脂凸版印刷版は、フィルムベース上に層厚450μm〜780μmの感光性樹脂層を形成して版厚1mm未満の長尺の感光性樹脂凸版の版材またはCTP版材を用いてレリーフ像の版面が構成され、
所要の層厚のフィルムベースに対し、版面側に凝固されたバック析出層の層厚が230μm〜600μmで、レリーフ像のレリーフ深度が500μm〜130μmで、全体の版厚が460μm〜820μmである請求項1または2に記載の無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置。
【請求項4】
前記感光性樹脂凸版印刷版は、感光性樹脂層のレリーフ像が、フィルムベースに向って末拡がりとなるテーパ形状に凝固されて形成された請求項2または3に記載の無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置。
【請求項5】
前記無端帯状印刷プレートは、長尺の樹脂凸版印刷版が複数枚帯状に順次接続される一方、帯状の樹脂凸版印刷版の両端部が接続されて帯状のエンドレス構造に構成され、
前記帯状の樹脂凸版印刷版の接続部は、長手方向両端に幅方向に沿って形成された凹凸形状またはジグザグ状が交互に噛み合うように突き合された状態で版面側から接着テープで接着されて構成される請求項1に記載の無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置。
【請求項6】
前記版胴のプレートシリンダは、軸方向両端部に筒状フランジが一体成形され、前記プレートシリンダの筒状フランジにピン穴が周方向に等ピッチに設けられており、
前記プレートシリンダのピン穴に送りピンが放射状に突出自在に設けられ、前記送りピンは、固定カムリングに案内されて前記プレートシリンダのシリンダ面から少なくともガイドシリンダ反射側領域で突出するように進退自在に設けられた請求項1に記載の無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置。
【請求項7】
前記送りピンは、無端帯状印刷プレートのマージナルゾーンに形成されたピン送り孔に係合可能なピンヘッドと、固定カムリングに係合するカム溝とを有し、
前記固定カムリングは、版胴のプレートシリンダの径より小さく、かつ固定カムリングの中心が前記プレートシリンダの軸心より前記ガイドシリンダの反対側にシフトして設けられた請求項6記載の無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置。
【請求項8】
前記送りピンは、ピンヘッドから前記プレートシリンダのシリンダ面から後退した後退領域と、前記プレートシリンダのシリンダ面から突出していく領域と、前記プレートシリンダのシリンダ面から突出した突出領域と、前記プレートシリンダのシリンダ面から後退していく領域とを、前記版胴の回転の都度順次繰り返し、
前記プレートシリンダの突出領域は、前記ガイドシリンダ反対側のプレートシリンダに成形された請求項7記載の無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置。
【請求項9】
前記プレートシリンダの突出した領域は、前記ガイドシリンダの反対側のプレートシリンダにシリンダ中心角が略150°以上に亘って形成され、
前記プレートシリンダとガイドシリンダに巻き掛けられる無端帯状印刷プレートは、前記プレートシリンダのシリンダ面から突出していく領域を走行する間に前記樹脂凸版印刷版のピン送り孔が送りピンのピンヘッドに係合し、前記プレートシリンダのシリンダ面から後退していく領域を走行する間に、前記樹脂凸版印刷版のピン送り孔が前記送りピンのピンヘッドから後退して係合が解除される請求項8記載の無端帯状印刷プレートを用いた印刷装置。
【請求項10】
版胴のプレートシリンダとガイドローラとの間に無端帯状印刷プレートを巻き掛け、この無端帯状印刷プレートを用いて前記版胴と圧胴との間に送られる連続フォームに印刷を施す無端帯状印刷プレートを用いた印刷方法において、
前記版胴のプレートシリンダおよび圧胴シリンダを中実シリンダでそれぞれ構成し、
前記版胴のプレートシリンダは、その軸方向両端部にシリンダ周方向に沿って送りピンを等ピッチに配設し、かつ前記送りピンは、固定カムリングに案内されて前記プレートシリンダの少なくともガイドシリンダ反対側領域でシリンダ面から突出させ、
前記無端帯状印刷プレートは、幅方向両側のマージナルゾーンに形成されるピン送り孔を前記プレートシリンダの送りピンに順次係合させてプレート送りを案内し、
前記無端帯状印刷プレートの版面にインクロールで付けられたインクを、前記版胴と圧胴の間に送られる連続フォームに転写し、印刷を施すことを特徴とする無端帯状印刷プレートを用いた印刷方法。
【請求項11】
前記無端帯状印刷プレートは、印刷面である版面とマージナルゾーンに等ピッチのピン送り孔とをそれぞれ形成した長尺の樹脂凸版印刷版の長手方向両端を突き合せ、版面側から幅方向に接着テープで接着して構成する請求項10に記載の無端帯状印刷プレートによる印刷方法。
【請求項12】
前記樹脂凸版印刷版は長手方向両端を幅方向に沿って凹凸形状あるいはジグザグ状に切断して形成し、
前記樹脂凸版印刷版の長手方向両端を突き合せて形成し、
前記樹脂凸版印刷版の長手方向両端を突き合せ係合させた状態で接着テープで版面側から幅方向に接着して無端帯状印刷プレートを構成する請求項11に記載の無端帯状印刷プレートによる印刷方法。
【請求項13】
前記樹脂凸版印刷版は、フィルムベース上に形成されるレリーフ像をバック析出層で補強して印刷面を形成し、
この印刷面を樹脂凸版印刷版の版面とする請求項11に記載の無端帯状印刷プレートによる印刷方法。
【請求項14】
版胴のプレートシリンダとガイドローラとの間に無端帯状印刷プレートを巻き掛ける帯状印刷プレートの取付方法において、
前記版胴のプレートシリンダは、軸方向両端部にシリンダ周方向に沿って送りピンを等ピッチに列状に配設し、かつ前記送りピンは、固定カムリングに案内されて前記プレートシリンダの少なくともガイドローラ反対側でシリンダ面から突出するように進退自在に設け、
長尺の樹脂凸版印刷版の幅方向両端部のマージナルゾーンに、長手方向に沿ってピン送り孔を等ピッチ間隔に形成するとともに、前記樹脂凸版印刷版の長手方向両端に幅方向に沿って凹凸形状あるいはジグザグ形状を形成し、
前記マージナルゾーンにピン送り孔と長手方向両端に凹凸形状あるいはジグザグ形状をそれぞれ形成した前記樹脂凸版印刷版を前記プレートシリンダの上側にガイドローラ側から挿入して、前記樹脂凸版印刷版のピン送り孔を前記プレートシリンダの送りピンに順次係合させながら送り込んで廻り込ませ、
続いて、前記プレートシリンダと前記圧胴の間から取り出される前記樹脂凸版印刷版の先端を、前記ガイドローラに巻き掛け、反転させて前記プレートシリンダ側に戻し、
前記樹脂凸版印刷版の先端をその後端側に係合させて突き合せ、前記樹脂凸版印刷版の両端部が係合した状態で版面側から接着テープで幅方向に接着させて結合し、エンドレス構造の無端帯状印刷プレートを構成し、
続いて、前記ガイドローラを版胴のプレートシリンダから後退させて前記無端帯状印刷プレートの張力を調整し、無端帯状印刷プレートを印刷装置に取り付けることを特徴とする帯状印刷プレートの取付方法。
【請求項15】
前記長尺の樹脂凸版印刷版は、長手方向両端が幅方向に沿って切断されて凹凸形状あるいはジグザグ形状に形成される一方、前記樹脂凸版印刷版の長手方向両端が突き合されて係合された状態で版面側から接着テープで接着されて凹凸結合され、エンドレス構造の無端帯状印刷プレートを形成する請求項14に記載の無端帯状印刷プレートの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−96490(P2012−96490A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247732(P2010−247732)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(309011675)有限会社 みさとみらい二十一 (2)
【Fターム(参考)】