説明

無結節コード

【課題】繊維状体の引張強力を充分に発揮することができる無結節コードを提供する。
【解決手段】無結節コード1は、スリーブ2とスリーブ2の内部に挿入された繊維状体3とを備え、スリーブ2の長手方向に張力を付与し当該スリーブ2を締め付けることにより、スリーブ2と繊維状体3とが連結されている。また、無結節コード1は、繊維状体3がスリーブ2から抜け出ないようにする抜止部4を少なくとも2箇所(第1抜止部4a,第2抜止部4b)に分けられている。これにより、繊維状体3がスリーブ2から抜け出ることを抑止しつつ、張力を付与した際に生じる応力を繊維状体3の全体に分散させて、各抜止部4a,4bの応力集中を緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリーブと繊維状体とを結び目を作ること無く連結する無結節コードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維状体同士を連結する場合には、結ぶという手段が多く用いられている。しかし、この手段では、連結する各繊維状体の種類によって接合等する必要があることから、繊維状体同士の連結作業が煩雑になるおそれがあった。さらに、結ぶという手段では、結節強力が低いという問題があり、このような問題は、繊維状体が太い場合に特に顕著であった。
【0003】
そこで、スリーブの内部に繊維状体を挿入し、スリーブの長さ方向に張力をかけ当該スリーブを締め付けることでスリーブと繊維状体とを連結してなる無結節コードが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−45461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような無結節コードにおいては、以下の問題がある。すなわち、例えば比較的大きい張力を付与した場合、スリーブと繊維状体との連結力が不充分で繊維状体がスリーブから抜け出してしまうことがある。一方、例えば抜け出ないように両者を強固に接着した場合、張力を付与することで生じる応力が接着した部分に集中(応力集中)し、当該部分で繊維状体が破断してしまうことがある。従って、繊維状体の本来の引張強力を充分に発揮することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、繊維状体の引張強力を充分に発揮することができる無結節コードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る無結節コードは、スリーブと、スリーブの内部に挿入された繊維状体と、を備え、スリーブの長手方向に張力を付与し当該スリーブを締め付けることにより、スリーブと繊維状体とを連結してなる無結節コードであって、繊維状体がスリーブから抜け出ないようにする抜止部を有し、抜止部が設けられる箇所は、少なくとも2箇所に分けられていることを特徴とする。
【0007】
この本発明に係る無結節コードでは、繊維状体がスリーブから抜け出ないようにするための抜止部が設けられる箇所が少なくとも2箇所に分けられている。これにより、比較的大きい張力を付与した場合でも、抜止部全体では繊維状体がスリーブから抜け出ないような充分な抜止力でもって繊維状体とスリーブとを連結しつつ、各抜止部ではその抜止力のそれぞれが抑制される。このように、各抜止部での抜止力が抑制されると、張力を付与した際に繊維状体がスリーブとの間で僅かに滑るために伸び易くなり、よって、生じる応力が繊維状体の伸びとして吸収され易くなる。すなわち、張力を付与した際に生じる応力を繊維状体の全体に分散させて、各抜止部の応力集中を緩和することが可能となる。従って、本発明に係る無結節コードによれば、繊維状体がスリーブから抜け出ることを抑止しつつ抜止部での応力集中を緩和することができ、その結果、繊維状体の引張強力を充分に発揮することが可能となる。
【0008】
また、抜止部のうち何れか1箇所は、スリーブにおいて繊維状体が挿入される側の端部に設けられていることが好ましい。ここで、無結節コードにあっては、スリーブにおいて繊維状体が挿入される側の端部が繊維状体と連結していない状態(いわゆる口開き)では、その長手方向に沿ってスリーブの締め付け(スリーブの長手方向に張力を付与することによる締め付け)が連鎖的に緩み易くなる。従って、スリーブにおいて繊維状体が挿入される側の端部に抜止部を設けることで、当該端部を確実に締め付けて口開きを防止することができ、よって、スリーブと繊維状体とを確実に連結することができる。
【0009】
このとき、抜止部は、スリーブに糸条体を巻回してなることが好ましい。この場合、糸条体に不具合が生じ仮に口開きが生じてしまう場合であっても、口開きが一気に生じてしまうのを抑制することができる。
【0010】
また、繊維状体としては、具体的にはモノフィラメントが挙げられる。また、本発明に係る無結節コードは、仕掛け糸に好適に用いられる。
【0011】
また、無結節コードの引張強力は、繊維状体の結節強力以上であることが好ましく、さらに、無結節コードの引張強力は、繊維状体の引張強力の60%以上であることが好ましい。なお、引張強力及び結節強力は、JIS L 1013「化学繊維フィラメント糸試験方法」の規定に準拠して測定された値を意味する。
【0012】
また、本発明に係る無結節コードは、スリーブと、スリーブの内部に挿入された繊維状体と、を備え、スリーブの長手方向に張力を付与し当該スリーブを締め付けることにより、スリーブと繊維状体とを連結してなる無結節コードであって、繊維状体がスリーブから抜け出ないようにする抜止部を有し、抜止部が複数に分けられていることにより、当該抜止部のそれぞれにおける抜止力を抑制し、張力が付与されたときにスリーブと繊維状体との間に少なくとも滑りを生じさせて繊維状体の伸びを促進し、当該繊維状体に生じる応力を分散させることを特徴とする。
【0013】
このように、本発明に係る無結節コードでは、抜止部を複数に分けることで、当該抜止部のそれぞれにおける抜止力が抑制され、張力が付与されたときにスリーブと繊維状体との間に少なくとも滑りを生じさせて繊維状体の伸びを促進し、当該繊維状体に生じる応力が分散する。よって、繊維状体がスリーブから抜け出ることを抑止しつつ抜止部での応力集中を緩和することができ、その結果、繊維状体の引張強力を充分に発揮することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、繊維状体の引張強力を充分に発揮することができる無結節コードを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は本発明の第1実施形態に係る無結節コードを示す正面図であり、図2は図1の無結節コードの断面図である。ここでいう無結節コードは、スリーブと繊維状体とを結ぶことなく連結してなるものである。本実施形態の無結節コード1は、釣り糸の仕掛け糸として用いられ、スリーブ2と繊維状体3とを備えている。
【0017】
スリーブ2は、中空状に製紐された組紐であり、例えば、綿や羊毛等の天然繊維、ポリエステル、ポリエチレン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、若しくは液晶ポリマー(例えば、芳香族ポリエステル)等の合成繊維、又はこれらの組み合わせにより形成されている。なお、スリーブ2は、繊維状体3よりも高い引張強力を有している。
【0018】
繊維状体3は、ここでは、モノフィラメント3である。このモノフィラメント3は、1つのフィラメントからなる糸条であり、例えば、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、フロロカーボン、ポリエステル、又はポリエチレン等により形成されている。モノフィラメント3は、その先端3a(図2参照)がスリーブ2の一端2a(図2参照)側から当該スリーブ2の内部に挿入されている。そして、この挿入された状態で、スリーブ2の長手方向に張力を付与し当該スリーブ2を締め付けることにより、スリーブ2とモノフィラメント3とが連結されている。
【0019】
ここで、無結節コード1には、抜止部4が設けられている。この抜止部4は、モノフィラメント3がスリーブ2から抜け出ないようにするものであり、スリーブ2において一端2a側の端部に設けられた第1抜止部4aと、スリーブ2において一端2aから他端側に向けて所定の距離だけ離れた位置に設けられた第2抜止部4bと、で構成されている。
【0020】
第1抜止部4aは、スリーブ2とモノフィラメント3との境界であるスリーブ2の一端2a及びその近傍を覆うように、例えば糸巻器により糸条体5が巻回されて形成されている。具体的には、第1抜止部4aは、スリーブ2の一端2aを中心として0.75cmずつ長手方向に拡がってなる領域に、糸条体5が巻きつけられて形成されている。そして、第1抜止部4aにあっては、例えばシアノアクリレート系の瞬間接着剤6(図2参照)が塗布されており、これにより、当該位置でのスリーブ2とモノフィラメント3との連結が補強されている。
【0021】
第2抜止部4bは、第1抜止部4aよりもスリーブ2側の位置に設けられ、例えば糸巻器により糸条体5を巻回して形成されている。具体的には、第2抜止部4aは、スリーブ2において一端2aから他端側に向けて所定の距離(ここでは、約5cm)だけ離れた位置を中心として、例えば0.5cmずつ長手方向に拡がってなる領域に、糸条体5が巻きつけられて形成されている。そして、第2抜止部4bにあっては、第1抜止部4aと同様に、例えばシアノアクリレート系の瞬間接着剤6が塗布されており、これにより、当該位置でのスリーブ2とモノフィラメント3との連結が補強されている。
【0022】
なお、本実施形態では、無結節コード1の引張強力は、モノフィラメント3の引張強力の60%以上になっており、70%以上がより好ましく、75%以上がより一層好ましい。また、無結節コード1の引張強力は、モノフィラメント3の結節強力以上(すなわち、モノフィラメント3の結節強力の100%以上)となっており、105%以上がより好ましく、110%以上がより一層好ましい。
【0023】
ちなみに、上述及び後述の引張強力及び結節強力は、JIS L 1013「化学繊維フィラメント糸試験方法」の規定に準拠して測定された値を意味する。具体的には、引張強力とは、引張りに対する強さを示し、どのくらいの荷重で引っ張ると破断するかを示すものである。結節強力とは、一重結びにより結ばれた繊維状体の引張強力のことを示し、結ばれた状態での繊維状体がどのくらいの荷重で引っ張ると破断するかを示すものである。
【0024】
このように構成された無結節コード1では、引張りの張力を付与した場合、スリーブ2の締まる力及び抜止部4の抜止力により、スリーブ2とモノフィラメント3との連結が維持される。なお、抜止力とは、モノフィラメント3がスリーブ2から抜け出ないようにする力を意味し、抜止部4においては、糸条体5が巻きつけられることによる締め付け力、及び瞬間接着剤6が塗布されることによる接着力を指す。
【0025】
このように引張りの張力を付与した場合には、上述したように、抜止部4の設けられる箇所が、第1抜止部4a及び第2抜止部4bの2箇所である(抜止部4の設けられる箇所が第1抜止部4a及び第2抜止部4bの2箇所に分けられている)。そのため、抜止部4全体としては、モノフィラメント3がスリーブ2から抜け出ないような充分な抜止力でもってモノフィラメント3とスリーブ2とを連結させつつ、各抜止部4a,4bでは、その抜止力のそれぞれが抑制される。このように、各抜止部4a,4bでの抜止力が抑制されると、張力を付与した際にモノフィラメント3がスリーブ2との間で僅かに滑り伸び易くなり、よって、生じる応力がモノフィラメント3の伸びとして吸収され易くなる。すなわち、張力を付与した際に生じる応力がモノフィラメント3全体に分散され、各抜止部4a,4bでの応力集中が緩和される(応力の分散効果を得る)。従って、本実施形態によれば、モノフィラメント3の引張強力を充分に発揮することができる。
【0026】
また、上述したように、抜止部4aがスリーブ2において一端2a側の端部に設けられていることより、当該端部を確実に締め付けて、スリーブ2においてモノフィラメント3が挿入される側(一端2a側)の端部がモノフィラメント3と連結していない状態(いわゆる口開き)を防止することができる。これにより、一般的に無結節コードにて生じ易い問題、すなわち、口開き状態では長手方向に沿ってスリーブ2の締め付けが連鎖的に緩み易くなるという問題が低減され、スリーブ2とモノフィラメント3とを確実に連結することができる。
【0027】
さらに、抜止部4aは、スリーブ2に糸条体5を巻回してなるため、糸条体5に緩みや損傷等の不具合が生じ、仮に口開きが生じてしまう場合であっても、当該口開きが一気に生じてしまうのを抑制することができる。
【0028】
また、上述したように、スリーブ2は、モノフィラメント3よりも高い引張強力を有していることより、無結節コード1に張力が付与された場合に、スリーブ2がモノフィラメント3に先んじて破断することを抑制できるため、モノフィラメント3の引張強力をより充分に発揮することができる。
【0029】
ここで、結節を有して繊維状体同士を連結すると、直線で引っ張った強さよりも結節での強さは低くなるのが一般的である。しかし、本実施形態によれば、上述したように、無結節コード1の引張強力がモノフィラメント3の結節強力以上になっているため、結節を有して連結するに比して、スリーブ2とモノフィラメント3とを好適に連結することができる。さらに、本実施形態では、上述したように、無結節コード1の引張強力がモノフィラメント3の引張強力の60%以上になっているため、モノフィラメント3の引張強力を充分に発揮することができる。これらの効果は、モノフィラメント3の径が大きくなるにつれて顕著となり、マグロ等の大型魚に用いられる釣り糸用の仕掛け糸では特に顕著となる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態に係る無結節コード10について説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る無結節コードを示す断面図である。この第2実施形態の無結節コード10が上記第1実施形態の無結節コード1と異なる点は、図1及び図2に示した第1抜止部4a及び第2抜止部4bを有する抜止部4に代えて、図3に示す第1抜止部4a及び第2抜止部14bを有する抜止部14を備えた点である。
【0031】
第2抜止部14bは、スリーブ2において挿入されたモノフィラメント3の先端3aに対応する箇所に、換言すると、スリーブ2において一端2aから他端側に向けてモノフィラメント3が差し込まれた距離だけ離れた位置及びその近傍に、例えば瞬間接着剤16を塗布することにより設けられている。なお、第2抜止部14bでは、抜止力は、瞬間接着剤16が塗布されることによるスリーブ2とモノフィラメント3との接着力を指す。
【0032】
このような本実施形態においても、上記と同様な効果、すなわち、モノフィラメント3がスリーブ2から抜け出ることを抑止しつつ抜止部14での応力集中を緩和させて、モノフィラメント3の引張強力を充分に発揮するという効果を奏する。さらに、上述したように、スリーブ2において挿入されたモノフィラメント3の先端3aに対応する箇所に第2抜止部14bを形成することで、抜止力が好適に発揮され、モノフィラメント3とスリーブ2とを確実に連結することができる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、抜止部が設けられる箇所を2箇所に分けたが、3箇所以上に分けてもよい。
【0034】
また、抜止部は、糸条体の巻回、若しくは接着剤の塗布、又はこれらの組み合わせでもよく、それ以外のものであってもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を説明する。
【0036】
(実施例1)
まず、超高分子量ポリエチレン製のスリーブにPVDF(ポリフッ化ビニリデン)製のモノフィラメントを挿入し、スリーブの長手方向に張力を付与して当該スリーブを締め付けることにより、スリーブとモノフィラメントとを連結した。スリーブの号数は6号とし、モノフィラメントの号数は14号とした。
【0037】
そして、スリーブの差込口(スリーブにおいてモノフィラメントが挿入される側の一端)に第1抜止部を形成し、スリーブにおいて差込口に対し長手方向内側に約5cm程度離れた位置に第2抜止部を形成した。第1及び第2抜止部は、糸条体をセキノッター(YGKよつあみ製、商品名)により巻回した後、シアノアクリレート系の瞬間接着剤を塗布することにより形成した。以上のようにして、目的の無結節コードを得た。
【0038】
(実施例2)
モノフィラメントの号数を16号とした以外は実施例1と同様とした。
【0039】
(実施例3)
モノフィラメントの号数を20号とし、スリーブの号数を8号とした以外は実施例1と同様とした。
【0040】
(実施例4)
モノフィラメントの号数を30号とし、スリーブの号数を10号とした以外は実施例1と同様とした。
【0041】
(実施例5)
モノフィラメントの号数を40号とし、スリーブの号数を15号とした以外は実施例1と同様とした。
【0042】
(実施例6)
モノフィラメントの号数を50号とし、スリーブの号数を15号とした以外は実施例1と同様とした。
【0043】
(実施例7)
第2抜止部に糸条体を巻回せず、モノフィラメントの号数を30号とし、スリーブの号数を10号とした以外は実施例1と同様とした。
【0044】
(比較例1)
第1抜止部を、スリーブとモノフィラメントとの相対移動が生じないように糸条体を強固に巻回した後に融着処理を施すことにより形成し、第2抜止部を形成せず、モノフィラメントの号数を14号とし、スリーブの号数を6号とした以外は実施例1と同様とした。
【0045】
(比較例2)
モノフィラメントの号数を16号とした以外は比較例1と同様とした。
【0046】
(比較例3)
モノフィラメントの号数を20号とし、スリーブの号数を8号とした以外は比較例1と同様とした。
【0047】
(比較例4)
モノフィラメントの号数を40号とし、スリーブの号数を15号とした以外は比較例1と同様とした。
【0048】
(比較例5)
モノフィラメントの号数を80号とし、スリーブの号数を25号とした以外は比較例1と同様とした。
【0049】
(引張破断強力測定試験)
実施例1〜7と比較例1〜5とを用い、引張破断強力測定試験により無結節コードの引張強力を測定した。具体的には、無結節コードにおいてスリーブ側の端部を固定し、モノフィラメント側の端部をロードセルに接続して張力を付与した。なお、この引張破断強力測定試験では、ストログラフRII型引張試験機(東洋精機製作所製、商品名)を使用し、無結節コードの引張強力をJIS L 1013「化学繊維フィラメント糸試験方法」の規定に準拠して測定した。
【0050】
この結果、図4(a)に示すように、比較例1〜5では、[無結節コードの引張強力/モノフィラメントの結節強力]が100%よりも小さい(無結節コードの引張強力がモノフィラメントの結節強力よりも低い)のに対し、実施例1〜7では、[無結節コードの引張強力/モノフィラメントの結節強力]が100%以上(無結節コードの引張強力がモノフィラメントの結節強力以上)であった。これにより、実施例の無結節コードでは、その引張強力が繊維状体の結節強力以上であることが確認でき、結節を有して連結するのに比して、好適にスリーブとモノフィラメントとを連結するという効果、及び抜止部を1箇所にして連結するのに比して、好適にスリーブとモノフィラメントとを連結するという効果が確認することができた。
【0051】
また、図4(b)に示すように、比較例1〜5では、[無結節コードの引張強力/モノフィラメントの引張強力]が54.1%よりも小さいのに対し、実施例1〜7では、[無結節コードの引張強力/モノフィラメントの引張強力]が75.5%以上である。具体的には、実施例1〜7では、[無結節コードの引張強力/モノフィラメントの引張強力]が最低でも75.5%であり、最大では92.4%(モノフィラメントの引張強力の略9割の引張強力)である。これにより、本実施例での無結節コードでは、製品のばらつき等を考慮した場合であっても、その引張強力はモノフィラメントの引張強力の少なくとも60%以上であり、モノフィラメントの引張強力を充分に発揮するという上記効果が確認できた。加えて、モノフィラメントの径が大きいほど、[無結節コードの引張強力/モノフィラメントの引張強力]が大きい傾向にあり、上記効果、すなわちモノフィラメントの径が大きいものでは大きくなるにつれてモノフィラメントの引張強力を充分に発揮するという効果が顕著になることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係る無結節コードを示す正面図である。
【図2】図1の無結節コードの断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る無結節コードを示す断面図である。
【図4】実施例及び比較例の引張破断強力測定試験の結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0053】
1…無結節コード、2…スリーブ、3…モノフィラメント(繊維状体)、4,14…抜止部、4a…第1抜止部(抜止部)、4b,14b…第2抜止部(抜止部)、5…糸条体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーブと、前記スリーブの内部に挿入された繊維状体と、を備え、前記スリーブの長手方向に張力を付与し当該スリーブを締め付けることにより、前記スリーブと前記繊維状体とを連結してなる無結節コードであって、
前記繊維状体が前記スリーブから抜け出ないようにする抜止部を有し、
前記抜止部が設けられる箇所は、少なくとも2箇所に分けられていることを特徴とする無結節コード。
【請求項2】
前記抜止部のうち何れか1箇所は、前記スリーブにおいて前記繊維状体が挿入される側の端部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の無結節コード。
【請求項3】
前記抜止部は、前記スリーブに糸条体を巻回してなることを特徴とする請求項2記載の無結節コード。
【請求項4】
前記繊維状体はモノフィラメントであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の無結節コード。
【請求項5】
仕掛け糸に用いられることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の無結節コード。
【請求項6】
前記無結節コードの引張強力は、前記繊維状体の結節強力以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の無結節コード。
【請求項7】
前記無結節コードの引張強力は、前記繊維状体の引張強力の60%以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の無結節コード。
【請求項8】
スリーブと、前記スリーブの内部に挿入された繊維状体と、を備え、前記スリーブの長手方向に張力を付与し当該スリーブを締め付けることにより、前記スリーブと前記繊維状体とを連結してなる無結節コードであって、
前記繊維状体が前記スリーブから抜け出ないようにする抜止部を有し、
前記抜止部が複数設けられることにより、当該抜止部のそれぞれにおける抜止力を抑制し、張力が付与されたときに前記スリーブと前記繊維状体との間に少なくとも滑りを生じさせて前記繊維状体の伸びを促進し、当該繊維状体に生じる応力を分散させることを特徴とする無結節コード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−133571(P2008−133571A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322305(P2006−322305)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】