説明

無給油式スクリュー圧縮機及びその制御方法

【課題】無給油式スクリュー圧縮機における冷却ファンの回転数制御において、吐出温度を低く保ちながら、省エネ性の高い圧縮機を提供する。
【解決手段】
アンロード運転中で、かつ、潤滑油の温度を検出する温度センサ29で検出した温度が予め設定された基準温度よりも低くなった場合に冷却ファンの回転数を減少させる。冷却ファンは潤滑油温度を基準として回転数制御され、加減速を繰り返す。ロード運転復帰時の加速は、このときの加速度よりも高い加速度αによって行い、吐出空気の急激な温度上昇を抑制する。これにより吐出温度の適正化と省エネとが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無給油式スクリュー圧縮機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に無給油式スクリュー圧縮機は非接触かつ無給油で回転可能な一対の雄雌のスクリューロータを有し、このスクリューロータによって空気を圧縮する。空冷の無給油式スクリュー圧縮機は軸受およびギヤ等を潤滑する潤滑油、及び圧縮空気を冷却するための空冷式冷却器を備えており、冷却ファンによって冷却風を供給し、潤滑油及び圧縮空気と熱交換を行っている。
【0003】
本技術分野の背景技術として特許文献1がある。特許文献1では、潤滑油の温度がある設定温度よりも高くなった場合、冷却ファンの回転数を増加させる機能と、吸込空気の温度がある設定温度よりも高くなった場合、冷却ファンの回転数を増加させる機能とを有する例が記載され、これによって潤滑油の温度や圧縮空気の温度を「適正に保つことができる。」とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第2009−13843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無給油式スクリュー圧縮機に関しては、圧縮空気の吐出温度を適正に保つことが必要であるが、本来、圧縮機本体の吐出温度はどんな条件であっても低いことが望ましい。無給油式スクリュー圧縮機では、空気の圧縮過程で油が供給されないために吐出温度が高くなり、圧縮空気の冷却が不可欠である。そのため、冷却ファンの回転数を制御して省エネ化を図る際、どのような条件で冷却ファンの回転数を制御するかが問題となる。これに対応して、特許文献1では吸込空気の温度と潤滑油の温度に着目して冷却ファンを制御する例が開示されている。
【0006】
ところで、圧縮機本体の低回転数領域では、圧縮過程において圧縮空気の漏れが増大する傾向がある。したがって、たとえ負荷が低い場合であっても、圧縮過程中で温度が上昇した空気がさらに圧縮され、いわゆる再圧縮が発生し、吐出空気が非常に高温となる場合がある。
【0007】
特許文献1に記載の冷却ファンの回転数制御では、圧縮機本体の低回転数領域における現象を考慮した制御ではないため、この場合に冷却能力を十分に発揮できない可能性がある。
【0008】
また、アンロード運転(無負荷運転)からロード運転(負荷運転)に復帰する場合には次の現象が生じ得る。例えば、特許文献1のように冷却ファンの回転数制御を行う際、アンロード運転中に吸込空気温度や潤滑油温度が低く、冷却ファンを低回転数で駆動している場合において、ロード運転に復帰すると圧縮空気の吐出温度が急激に上昇することがある。
【0009】
このとき、吸込空気温度や潤滑油温度も上昇して行くために、これに基づいて冷却ファンの回転数が加速されるが、冷却ファンが全速になる時間より先に吐出温度が高くなってしまい、吐出温度異常を検出してしまうという問題が生じ得る。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、圧縮空気の吐出温度を低く保ち、省エネを図ることが可能な無給油式スクリュー圧縮機とその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無給油式スクリュー圧縮機は、駆動減と駆動ギヤで連結され、非接触かつ無給油で回転可能な雄雌一対のスクリューロータを有する圧縮機本体と、
前記ギヤ及び前記圧縮機本体の軸受部分を潤滑する潤滑油の流通経路と、
前記潤滑油の流通経路に配設される潤滑油用空冷式冷却器と、
前記圧縮機本体からの圧縮空気を冷却する圧縮空気用空冷式冷却器と、
前記潤滑油用空冷式冷却器及び圧縮空気用空冷式冷却器に冷却風を供給する冷却ファンと、
前記潤滑油の流通経路に設けられて潤滑油の温度を検出する温度センサと、
アンロード運転中であって前記温度センサによる検出温度が予め設定された基準温度よりも低い場合に前記冷却ファンの回転数を低下させる制御信号を出力する冷却ファン制御部とを具備している。
【0012】
上記目的を達成するために本発明では特許請求の範囲に記載の例を採用しており、その一例は下記の通りである。
【0013】
すなわち、本発明の冷却ファン制御部は、
前記冷却ファンの回転数が低下した状態で潤滑油の検出温度が前記基準温度より高い場合に前記冷却ファンの回転を加速させる第一の加速制御と、前記冷却ファンの回転数が低下した状態でロード運転に復帰した場合に前記冷却ファンの回転を加速させる第二の加速制御とを実行し、第二の加速制御では第一の加速制御よりも、高い加速度で冷却ファンを加速させるものとしている。
【0014】
本発明の別の態様としては、例えば、冷却ファン制御部は、前記第二の加速制御では前記第一の加速制御よりも、短い時間で冷却ファンを加速させて全速運転を行うものである。
【0015】
さらに別の態様としては、例えば、冷却ファン制御部は、前記冷却ファンの回転数を加速させる場合の加速度の絶対値が、前記冷却ファンの回転数を減速させる場合の減速度の絶対値より大とするものである。
【0016】
また、本発明の制御方法の一例は、
アンロード運転中であって、かつ、ギヤ及び圧縮機本体の軸受部分を潤滑する潤滑油の検出温度が予め設定された基準温度よりも低い場合に、圧縮空気及び潤滑油の冷却ファンの回転数を低下させ、
潤滑油の検出温度が前記基準温度より高くなると前記冷却ファンの回転を加速度βで加速させ、
ロード運転に復帰した場合には前記冷却ファンの回転を前記加速度βより高い加速度αで加速させることである。
【0017】
別の例としては、アンロード運転中であって、かつ、ギヤ及び圧縮機本体の軸受部分を潤滑する潤滑油の検出温度が予め設定された基準温度よりも低い場合に、圧縮空気及び潤滑油の冷却ファンの回転数を低下させ、
潤滑油の検出温度が前記基準温度より高くなると前記冷却ファンの回転を加速時間Vdで加速させ、
ロード運転に復帰した場合には前記冷却ファンの回転を前記加速時間Vdより短い加速時間Vuで加速させて全速運転を行うことが挙げられる。
【0018】
さらに別の例としては、
アンロード運転中であって、かつ、ギヤ及び圧縮機本体の軸受部分を潤滑する潤滑油の検出温度が予め設定された基準温度よりも低い場合に、圧縮空気及び潤滑油の冷却ファンの回転数を減速度βで低下させ、
潤滑油の検出温度が前記基準温度より高くなった場合、または、ロード運転に復帰した場合には、前記冷却ファンの回転を前記減速度βの絶対値より高い絶対値の加速度αで加速させることが挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば圧縮空気の吐出温度を低く保ち、省エネを図ることが可能な無給油式スクリュー圧縮機とその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の無給油式スクリュー圧縮機の全体構成を示す図。
【図2】冷却ファンの制御ブロック図。
【図3】冷却ファンの制御フロー図。
【図4】回転数の加減速状態を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態の特徴は次の通りである。すなわち、無給油式スクリュー圧縮機のロード運転中は、冷却ファンを全速で回転させて吐出空気の冷却を行い、アンロード運転中は一定条件を満たした場合に冷却ファンの回転数を減速するように制御を行う。具体的には、潤滑油温度が、予め設定されている基準温度より低くなると冷却ファンの回転数を減速させる。このような減速の条件が満たされなくなると、冷却ファンの回転数を加速させる。この場合の加速時間(加速度)と減速時間(減速度)との関係を特定しているのが本実施形態の特徴である。以下、具体的実施例を図面に基づき説明する。
【0022】
図1は本実施形態の無給油式スクリュー圧縮機の全体構成を示す図である。図に示すように、圧縮機ユニットケース1に収納される無給油式スクリュー圧縮機は二段圧縮機であり、低圧段圧縮機本体2aと高圧段圧縮機本体2bを備えている。この低圧段圧縮機本体2aの吸込みガス通路の上流側に吸込み絞り弁6が設けられている。また、2つの圧縮機本体2は、それぞれ圧縮室内に一対のスクリューロータである雄ロータ3及び雌ロータ4を収納している。雌雄ロータ3、4は、無給油及び非接触状態で回転自在に配設されており、その外周部には容積が変化するガス通路の溝が形成されている。
【0023】
両圧縮機本体2a、2bは、駆動源となる圧縮機本体駆動用モータ8により、駆動ギヤ7を介して回転駆動される。圧縮に使用される空気は、吸込みフィルタ5を介して外部から常温で取り込まれ、低圧段圧縮機本体2aに供給される。この低圧段圧縮機本体2aで圧縮された空気は、配管35を通じて流通し、低圧段空冷式熱交換器(インタークーラ)9を通過して冷却された後、配管36を通じて高圧段圧縮機本体2bに供給される。高圧段圧縮機本体2bにより、さらに圧縮された空気は配管37を通じて高圧段空冷式熱交換器(アフタークーラ)11へ供給されて冷却される。アフタークーラ11で冷却された圧縮空気は圧縮機ユニット外部へ吐出される。
【0024】
また、駆動ギヤ7はギヤケース12内に収容されており、このギヤ部分や圧縮機本体2の軸受部分を潤滑するための潤滑油が、ギヤケース12内の油溜まり部に貯留されている。本実施形態のスクリュー圧縮機は無給油式であるため、この潤滑油が上述の空気流通経路に混入しないようにシールされており、潤滑油の流通循環のための経路も独立して設けられている。
【0025】
潤滑油の循環経路を説明する。ギヤケース12に充填されている潤滑油は、潤滑油配管21を通り、油温調整弁33で油温が調整基準温度より低い時にはオイルクーラ13をバイパスする経路が設けられている。調整基準温度より高い潤滑油は圧縮機潤滑油用空冷式熱交換器(オイルクーラ)13によって適正温度まで冷却され、潤滑油配管23に接続されたオイルフィルタ22を通過後、圧縮機本体内に配置される圧縮機用軸受及び駆動ギヤ7へ供給される。そして、これらの冷却と回転部分の潤滑が行われ、その後、再びギヤケース12内の油溜まり部へ回収される。
【0026】
このように本実施形態の無給油式スクリュー圧縮機は、駆動ギヤ7により非接触かつ無給油で回転可能な雄雌一対のスクリューロータを有する圧縮機本体2と、圧縮機本体2から吐出される圧縮空気を冷却する空冷式冷却装置(インタークーラ9、アフタークーラ11)と、圧縮機内外の駆動部で使用される軸受及びギヤ7用の潤滑と圧縮機本体の冷却のための潤滑油を冷却する空冷式冷却装置(オイルクーラ13)とを有している。そして、これらの冷却装置(インタークーラ9、アフタークーラ11、オイルクーラ13)はいずれも空冷式の熱交換器であり、これらの熱交換器に対して冷却風を供給するために冷却ファン25が設けられている。
【0027】
次にこの冷却風の供給に関係する構造を説明する。圧縮機ユニットケース1の内部(図1の左下側参照)には、制御盤24が備えられている。また、同じく圧縮機ユニットケース1の内部(図1の右上側参照)には冷却ファン25が設けられている。この冷却ファン25はモータ26によって回転駆動され、モータ26が回転することにより冷却ファン25が回転し、冷却風が圧縮機ユニットケース1内部を流通することになる。
【0028】
圧縮機ユニットケース1には吸気孔27と排気孔28とが形成されており、冷却ファン25の回転により、圧縮機ユニットケース1に形成した吸気孔27から外気が取り込まれる。取り込まれた外気は、ユニット内部の発熱部分(例えば、圧縮機本体2や圧縮機本体駆動用モータ8等)を冷却するとともに、インタークーラ9、アフタークーラ11及びオイルクーラ13と熱交換が行われる。この後、圧縮機ユニットケース1に形成した排気孔28から排出される。
【0029】
なお、図に示すように、冷却ファン26は排気孔28の近傍に設けられており、冷却ファン26の作用は主として圧縮機ユニットケース1から排気を行うことに相当する。これにともなって、吸気孔27から外気が取り込まれることになる。
【0030】
本実施形態では、冷却ファン26の回転数制御を行うことを特徴としており、次にこの回転数制御を行う構成を説明する。
【0031】
既に説明したように、潤滑油の流通循環経路は空気流通経路とは隔離されて設けられており、本実施形態では、ギヤケース12、潤滑油配管21、オイルクーラ13、潤滑油配管23によって構成されている。この経路中に循環用ポンプやオイルフィルタ22を有している。そして、オイルクーラ13の出口側の潤滑油配管23には、潤滑油の温度を検出するセンサ29が設けられている。このセンサ29の検出信号は、冷却ファン制御部31に取り込まれる。
【0032】
冷却ファン制御部31は制御盤24内に設けられており、後述するようにモータ26の回転数を制御する。具体的には、冷却ファン制御部31は、冷却ファン25の回転数を可変させるためのインバータ及びこのインバータへの制御指令を与えるための制御部を有している。そして、センサ29によって検出される潤滑油温度に基づいて冷却ファン25の回転数制御を行うものとなっている。
【0033】
なお、図1にて図示は省略するが、吸込縮空気の温度、圧縮機ユニットケース1の内外の温度、制御盤24内の温度のいずれかも温度センサによって検出しており、冷却ファン制御部31は、これらの温度情報に基づいて冷却ファンの回転数制御も行う。また、圧縮機の容量制御に同期した制御も可能としている。すなわち、圧縮機駆動用モータ8の回転数を可変するインバータを有しており(図示省略)、このモータ8の回転数に同期させて、あるいは、同調させて、冷却ファンの回転数制御を行うことも可能となっている。
【0034】
図2に制御ブロック図を示す。この図は冷却ファン制御部31の構成を示すもので、図1と同符号のものは同一部分である。
【0035】
冷却ファン制御部31は、潤滑油の基準温度、及び、吸込空気の基準温度を記憶する記憶部31Aと、第1のセンサ29による潤滑油温度の検出値が記憶部31Aに記憶した潤滑油の基準温度よりも低くなった場合かつアンロード運転中の場合に、冷却ファン25の回転数を減速させる制御信号を演算する演算部31Bとを備えている。これにより、予め設定された潤滑油の基準温度及び吸込空気の基準温度に基づいた制御が可能となっている。
【0036】
演算部31Bからの制御信号は、冷却ファン専用インバータ32に伝えられる。冷却ファン専用インバータ32は、これに基づき、モータ26へ制御波形を出力し、モータ26は冷却ファン25を回転数制御する。
【0037】
また、図示は省略したが、これ以外の温度情報(例えば、吸込縮空気の温度、圧縮機ユニットケース1の内外の温度、制御盤24内の温度)も冷却ファン制御部31に送信され、これに基づいて演算部31Bは演算して回転数指令を出力する。
【0038】
次に本実施形態の制御フローを図3を用いて説明する。図3は冷却ファンの制御フロー図である。
【0039】
まず、無給式スクリュー圧縮機がロード運転中の場合について述べる。圧縮機がロード運転をしている場合(STEP:A)、圧縮空気を供給している状態であるため、高温の圧縮空気を冷却するために、冷却ファン制御部31による演算結果によらず、冷却ファン25を全速で回転させる(STEP:B)。このとき、圧縮機がアンロード運転に移行するか否かを継続的に監視しており(STEP:C)、ロード運転が継続している場合には全速運転を維持する(STEP:Cの「NO」の矢印参照)。一方、無給油式スクリュー圧縮機がアンロード運転となった場合には(STEP:Cの「YES」の矢印)、冷却ファン25の回転数制御に移行する。具体的には下記の通りである。
【0040】
アンロード運転に移行直後は制御を安定させるため、予め定められた時間(例えば1秒)だけ冷却ファン25の全速運転を維持し、当該時間経過後に回転数制御に移行する(STEP:D参照)。
【0041】
アンロード運転中は、周囲の環境温度により潤滑油の温度が下降する。このとき、潤滑油の温度が一定となるように冷却ファン25の回転数制御を行う(STEP:E参照)。すなわち、アンロード運転中は圧縮空気を外部へ供給しておらず、潤滑油の温度が所望の範囲に収まっていれば問題が無いため、この場合に冷却ファン25の回転数制御を行って動力低減を図る運転モードへ移行するのである(ただし、他の温度情報(例えば、吸込縮空気の温度、圧縮機ユニットケース1の内外の温度、制御盤24内の温度)も用いて回転数制御を行う場合には、これらの温度条件も同時に満たした上で減速運転を行う。)。
【0042】
本実施形態では、潤滑油の温度が55℃となるようなPI制御を行い、冷却ファン用のインバータ32が演算回転数の出力波形をモータ26へと出力し、冷却ファン25の回転数が制御される。
【0043】
具体的には、センサ29で検出された潤滑油温度が、記憶部31Aに記憶された潤滑油の基準温度よりも低くなった場合、冷却ファン制御部31の演算部31Bは冷却ファンの回転数を減速時間Vdで減少させるように、制御信号を冷却ファン専用インバータ32を介して冷却ファン25のモータ26に出力する。これにより、モータ26の軸動力が下がり、省エネを図ることができる。潤滑油温度が上昇した場合には演算部31Bは冷却ファンの回転数を加速時間Vdで増加させるように制御信号を出力する。
【0044】
このときの加速度/減速度をβとし、PI制御による回転数制御を行う場合には、加減速度βによって加速や減速を行う。
【0045】
上記のようなアンロード運転中の回転数制御運転中においては、圧縮機がロード運転に移行するか否かを監視しており(STEP:F参照)、アンロード運転が継続している場合には(STEP:Fの「NO」の矢印)、回転数制御運転を継続する。
【0046】
一方、ロード運転に移行した場合には(STEP:Fの「YES」の矢印)、次の制御を行う。ロード運転復帰直後は制御を安定させるため、予め定められた時間(例えば1秒)だけ冷却ファン25の回転数制御を維持し、当該時間経過後に全速運転に移行する(STEP:G参照)。上述したように、ロード運転では冷却ファン25の全速での運転を前提とするため、他の条件に関わらず、モータ26を全速で運転させる。このとき、アンロード運転からロード運転へ復帰する場合、冷却ファン制御部31の演算部31Bは、冷却ファン25の回転数を加速時間Vuで増加させるように、制御信号を冷却ファン専用インバータ32を介して冷却ファン25のモータ26に出力する。このときの加速時間Vuは、前述の加減速時間Vdより短い時間に設定している(Vu<Vd)。また、このときの加速度αは前述の加減速度βより高加速度であり(α>β)、早い立ち上がりで全速運転に移行するように制御される。
【0047】
図4は回転数の加減速状態を示した図である。上段は第一の加減速制御であり、STEP:Eにおける回転数の加減速状態、すなわち、アンロード運転中の加減速制御における加減速状態を示している。下段は第二の加減速制御であり、STEP:Bにおける回転数の加速状態、すなわち、ロード運転復帰後の加速制御における加速状態を示している。
【0048】
上段から理解されるように、低速、すなわち、低い回転数で冷却ファン25が回転している場合に加速が指示されると、加速時間Vdをかけて高速まで加速する。また、高速、すなわち高い回転数で冷却ファン25が回転している場合に減速指示があると減速時間Vdをかけて減速していく。
【0049】
一方、下段から理解されるように、冷却ファン25が低速、すなわち、低い回転で回転している場合に圧縮機がロード運転に復帰すると、加速時間Vuをかけて高速まで加速する。
【0050】
両者の加速時間の関係はVd>Vuであり、加速度に置き換えると加速度α>βとなり、ロード復帰時に高い加速度で回転数が制御されることがわかる。つまり、第二の加速制御では第一の加速制御よりも素早く加速し、短時間で全速運転へと移行する。このように制御することにより、ロード復帰後の圧縮空気の吐出温度の上昇が適正に抑えられ、異常値となってしまう事態を回避することができる。
【0051】
この場合において、この実施形態において加速時間VuはVdの半分以下、すなわち、ロード運転復帰時の加速度αを、アンロード運転時の加速度βの2倍、あるいはそれ以上とすることでロード運転復帰の急激な吐出温度上昇に対して冷却能力を素早く最大限に発揮することができる。
【0052】
なお、この例ではアンロード運転中の加速度と減速度の絶対値をβとしているが、加速度に関してはαとしても差し支えない。この場合は、加速の場合の加速度を、ロード運転復帰時やアンロード運転時のいずれも「加速度α」として設定しておき、減速の場合の減速度を「減速度β」として記憶部に設定しておけばよく、制御上もシンプルな構成とすることができる。
【0053】
また、図4の説明では、回転数の基準を「低速」と「高速」の二段階で設定し、この二段階の速度への向けて加減速を行う例としているが、必ずしもこれに限られない。すなわち、現在の制御速度(一例として図4の「低速」)と目標の制御速度(例えば「高速」)との間の加減速の度合いを制御する例を示したのであり、三段階以上、あるいは、無段階としてもよいことはいうまでもない。
【0054】
以上、本実施形態では、ロード運転復帰後の吐出温度の急激な上昇を抑制することができる。また、冷却ファンが高回転に素早く復帰できるため、圧縮機本体の低回転数領域で再圧縮が生じ得る場合でも十分な冷却能力を発揮可能となる。これにより、吐出温度の適正化と省エネの両立を図った無給油式スクリュー圧縮機を提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…圧縮機ユニットケース、2…圧縮機本体、3…雄ロータ、4…雌ロータ、5…吸込みフィルタ、6…吸込み絞り弁、7…駆動ギヤ、8…圧縮機駆動用モータ、9…低圧段空冷式熱交換器、11…高圧段空冷式熱交換器、12…ギヤケース、13…圧縮機潤滑油用空冷式熱交換器、21…潤滑油用配管、22…オイルフィルタ、23…潤滑油用配管、24…制御盤、25…冷却ファン、26…冷却ファン用モータ、27…吸気孔、28…排気孔、29…温度センサ、31…冷却ファン制御部、32…インバータ、33…油温調整弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動減と駆動ギヤで連結され、非接触かつ無給油で回転可能な雄雌一対のスクリューロータを有する圧縮機本体と、
前記ギヤ及び前記圧縮機本体の軸受部分を潤滑する潤滑油の流通経路と、
前記潤滑油の流通経路に配設される潤滑油用空冷式冷却器と、
前記圧縮機本体からの圧縮空気を冷却する圧縮空気用空冷式冷却器と、
前記潤滑油用空冷式冷却器及び圧縮空気用空冷式冷却器に冷却風を供給する冷却ファンと、
前記潤滑油の流通経路に設けられて潤滑油の温度を検出する温度センサと、
アンロード運転中であって前記温度センサによる検出温度が予め設定された基準温度よりも低い場合に前記冷却ファンの回転数を低下させる制御信号を出力する冷却ファン制御部と、を備え、
前記冷却ファン制御部は、
前記冷却ファンの回転数が低下した状態で潤滑油の検出温度が前記基準温度より高い場合に前記冷却ファンの回転を加速させる第一の加速制御と、
前記冷却ファンの回転数が低下した状態でロード運転に復帰した場合に前記冷却ファンの回転を加速させる第二の加速制御とを実行し、
前記第二の加速制御では前記第一の加速制御よりも、高い加速度で冷却ファンを加速させることを特徴とする無給油式スクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の無給油式スクリュー圧縮機において、前記第二の加速制御での加速度が前記第一の加速制御での加速度の2倍以上であることを特徴とする無給油式スクリュー圧縮機。
【請求項3】
駆動減と駆動ギヤで連結され、非接触かつ無給油で回転可能な雄雌一対のスクリューロータを有する圧縮機本体と、
前記ギヤ及び前記圧縮機本体の軸受部分を潤滑する潤滑油の流通経路と、
前記潤滑油の流通経路に配設される潤滑油用空冷式冷却器と、
前記圧縮機本体からの圧縮空気を冷却する圧縮空気用空冷式冷却器と、
前記潤滑油用空冷式冷却器及び圧縮空気用空冷式冷却器に冷却風を供給する冷却ファンと、
前記潤滑油の流通経路に設けられて潤滑油の温度を検出する温度センサと、
アンロード運転中であって前記温度センサによる検出温度が予め設定された基準温度よりも低い場合に前記冷却ファンの回転数を低下させる制御信号を出力する冷却ファン制御部と、を備え、
前記冷却ファン制御部は、
前記冷却ファンの回転数が低下した状態で潤滑油の検出温度が前記基準温度より高い場合に前記冷却ファンの回転を加速させる第一の加速制御と、
前記冷却ファンの回転数が低下した状態でロード運転に復帰した場合に前記冷却ファンの回転を加速させる第二の加速制御とを実行し、
前記第二の加速制御では前記第一の加速制御よりも、短い時間で冷却ファンを加速させて全速運転を行うことを特徴とする無給油式スクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項3に記載の無給油式スクリュー圧縮機において、前記第二の加速制御での加速時間が前記第一の加速制御での加速時間の半分以下であることを特徴とする無給油式スクリュー圧縮機。
【請求項5】
駆動減と駆動ギヤで連結され、非接触かつ無給油で回転可能な雄雌一対のスクリューロータを有する圧縮機本体と、
前記ギヤ及び前記圧縮機本体の軸受部分を潤滑する潤滑油の流通経路と、
前記潤滑油の流通経路に配設される潤滑油用空冷式冷却器と、
前記圧縮機本体からの圧縮空気を冷却する圧縮空気用空冷式冷却器と、
前記潤滑油用空冷式冷却器及び圧縮空気用空冷式冷却器に冷却風を供給する冷却ファンと、
前記潤滑油の流通経路に設けられて潤滑油の温度を検出する温度センサと、
アンロード運転中であって前記温度センサによる検出温度が予め設定された基準温度よりも低い場合に前記冷却ファンの回転数を低下させる制御信号を出力する冷却ファン制御部と、を備え、
前記冷却ファン制御部は、
前記冷却ファンの回転数を加速させる場合の加速度の絶対値が、前記冷却ファンの回転数を減速させる場合の減速度の絶対値より大であることを特徴とする無給油式スクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項5に記載の無給油式スクリュー圧縮機において、前記加速度の絶対値が前記減速度の絶対値の2倍以上であることを特徴とする無給油式スクリュー圧縮機。
【請求項7】
無給油式スクリュー圧縮機の制御方法において、
アンロード運転中であって、かつ、ギヤ及び圧縮機本体の軸受部分を潤滑する潤滑油の検出温度が予め設定された基準温度よりも低い場合に、圧縮空気及び潤滑油の冷却ファンの回転数を低下させ、
潤滑油の検出温度が前記基準温度より高くなると前記冷却ファンの回転を加速度βで加速させ、
ロード運転に復帰した場合には前記冷却ファンの回転を前記加速度βより高い加速度αで加速させることを特徴とする無給油式スクリュー圧縮機の制御方法。
【請求項8】
無給油式スクリュー圧縮機の制御方法において、
アンロード運転中であって、かつ、ギヤ及び圧縮機本体の軸受部分を潤滑する潤滑油の検出温度が予め設定された基準温度よりも低い場合に、圧縮空気及び潤滑油の冷却ファンの回転数を低下させ、
潤滑油の検出温度が前記基準温度より高くなると前記冷却ファンの回転を加速時間Vdで加速させ、
ロード運転に復帰した場合には前記冷却ファンの回転を前記加速時間Vdより短い加速時間Vuで加速させて全速運転を行うことを特徴とする無給油式スクリュー圧縮機の制御方法。
【請求項9】
無給油式スクリュー圧縮機の制御方法において、
アンロード運転中であって、かつ、ギヤ及び圧縮機本体の軸受部分を潤滑する潤滑油の検出温度が予め設定された基準温度よりも低い場合に、圧縮空気及び潤滑油の冷却ファンの回転数を減速度βで低下させ、
潤滑油の検出温度が前記基準温度より高くなった場合、または、ロード運転に復帰した場合には、前記冷却ファンの回転を前記減速度βの絶対値より高い絶対値の加速度αで加速させることを特徴とする無給油式スクリュー圧縮機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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