説明

無線センサーによってバリヤシステムの完全性を監視する装置及び方法

本発明は、無線センサーによって例えば温室効果ガスの隔離中に用いるか又は使用するバリヤシステムの完全性を監視する装置及び方法に関する。本発明は、温室効果ガスの隔離のために好適な掘削孔の完全性監視のための装置を包含する。本装置は、ケーシングの外側に配置して掘削孔を監視する1以上のセンサー、及びケーシング内で移動させて1以上のセンサーを作動させ且つそれに応答指令する用具を含む。本発明はまた、温室効果ガスの隔離のために好適な掘削孔又は他のタイプの坑井の完全性を監視する方法も包含する。本方法は、1以上のセンサーをケーシングの外側に配置する工程、及びケーシングの内部の用具を用いて1以上のセンサーを作動させる工程を含む。本方法はまた、該用具を用いて1以上のセンサーに応答指令して、工学掘削孔及び/又は天然のキャップロックシールを監視する工程も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線センサーによって例えば温室効果ガスの隔離中に用いるか又は使用するバリヤシステムの完全性を監視する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境及び地球温暖化に関する最近の関心によって、放出を減少させながら維持することができるエネルギープログラムに関する要望及び必要性が生じている。地球温暖化は温室効果ガスに関係する可能性がある。温室効果ガスは、広義には二酸化炭素、メタン、硫化水素、亜酸化窒素、オゾン、クロロフルオロカーボン(CFC)などのような、熱赤外範囲内の放射線を吸収及び放出する大気中の気体を含む。発電所及び他のエネルギー変換施設は、大気に放出される温室効果ガスの大きな源になる傾向がある。
【0003】
地球温暖化を軽減又は後退させるために、幾つかの可能な解決法及び代替法が提案又は開発されている。炭素の回収及び貯留又は隔離は、二酸化炭素又は他の温室効果ガスを地層中に配置することなどによって放出を減少させようとするものである。好適な地層は、一般に温室効果ガスを捕捉して、それが飲料水の地下源、地表、及び/又は大気に移動するのを抑止することができる低い透過性の上層キャップロックを有している。良好に設計された隔離システムは、圧入を停止した後においても、工学掘削孔及び隣接する天然のキャップロックシールのシール完全性を保持する。
【0004】
深井戸圧入施設において処理される有害廃棄物のように、液体廃棄物を好適な地層中に圧入することが長年の間実施されている。深井戸は、液体廃棄物を不浸透性の岩又は粘土の下の層中に圧入する。
【0005】
Ciglenecらの米国特許6,766,854においては、配置させるために少なくとも1つのセンサープラグを掘削孔の側壁中に運ぶ坑井用具を含む掘削孔センサー装置及び方法が開示されている。この装置はまた、地表制御ユニット、及びセンサープラグを地表制御ユニットに動作可能なように接続する通信回線と組み合わせて用いられる。センサープラグによって、炭化水素生成地層の圧力又は温度のような掘削孔のデータを集め、坑井用具又はアンテナのような通信回線を介してデータを坑井の上に通信する。Ciglenecらは、温室効果ガス隔離システムを監視するためのセンサーを教示又は示唆していない。Ciglenecらの米国特許6,766,854の全ての教示事項はその全部を参照として本明細書中に包含される。
【0006】
Schultzらの米国特許6,408,943においては、掘削孔センサーを配置してそれに応答指令して、炭化水素生成空隙内において掘削孔内のセメントの完全性を受動監視するための方法及び装置が開示されている。坑井ケーシングをセメンチングする時点においてセメントスラリー中の懸濁液中にセンサーを配置することによってセンサーを所定の位置に「ポンプ移送」する。センサーは、電池で運転するか、或いは外部励磁を加えてセンサーを作動及び運転するタイプのいずれかのものであり、これにより所望の情報を伝える信号が送られる。次に、セメントの状態を監視することを所望する度に、掘削孔に配置されている装置の別の要素を用いてセンサーに電圧を加えてそれに応答指令する。Schultzらは、温室効果ガス隔離システムを監視するためのセンサーを教示又は示唆していない。Schultzらの米国特許6,408,943の全ての教示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する。
【0007】
Negaleyらの米国特許6,434,372においては、変調反射器技術を用いる長距離通信装置が開示されている。この装置は、エネルギー発信基地局、及び基地局と通信するために放射線を放射しない遠隔装置を含む。これは、変調反射器技術を用いているために情報を基地局から発せられるRF搬送波に結合させており、これを遠隔装置によって基地局に戻すことによって反射させているためである。遠隔装置は放射線を放射しないので、その運転のために低出力の動力源しか必要としない。基地局からの情報は、それぞれ発信機及び受信機を用いて遠隔装置に伝送される。かかる通信システムの範囲は、変調反射器の半二重回線の特性によって定められる。Negaleyらの米国特許6,434,372の全ての教示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する。
【0008】
Vinegarらの国際特許出願公開WO−01/65066においては、地層中に伸長する掘削孔を有する石油坑が開示されている。掘削孔内に管構造が配置され、管構造の坑井の周囲に誘導チョークが配置されている。坑井の表面と誘導チョークとの間の管構造に沿って通信システムが与えられている。坑井モジュールが管構造の外表面上に配置され、これは地層の特性を測定するように構成されている。圧力及び抵抗のような地層の特性が、管構造に沿って坑井の表面に通信される。Vinegarらの国際特許出願公開WO−01/65066の全ての教示事項はその全部を参照として本明細書中に包含される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許6,766,854
【特許文献2】米国特許6,408,943
【特許文献3】米国特許6,434,372
【特許文献4】国際特許出願公開WO−01/65066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
温室効果ガス隔離システム及び/又は他のシステム若しくは坑井のバリヤシステムの完全性を監視する必要性及び要望が存在する。また、周囲の変化を検出し、ケーシング内の装置と通信する掘削孔のケーシングの外側に配置されるセンサーに対する必要性及び要望も存在する。また、温室効果ガス隔離と関連するバリヤシステムの完全性を長時間又は長期間にわたって監視するセンサーに対する必要性及び要望も存在する。また、pH、多孔度、導電率、抵抗、二酸化炭素、炭化水素液、炭化水素ガスの存在又は移動、他の地質工学的状態などのような、ケーシングの外側に配置される他の無線センサーを用いて得ることができない特性を検出又は測定することができるセンサーに対する必要性及び要望も存在する。また、掘削中又は既存の坑井内に簡単に且つコスト効率よく設置することができるセンサーに対する必要性及び要望も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、無線センサーによって例えば温室効果ガスの隔離中に用いるか又は使用するバリヤシステムの完全性を監視する装置及び方法に関する。本装置及び方法は、工学掘削孔及び/又は天然のキャップロック地層のような温室効果ガス又は炭素の隔離システムのバリヤシステム完全性を監視する。本装置及び方法はまた、他のシステム又は坑井と共に用いることもできる。本発明はまた、周囲の変化を検出してケーシング内の装置と通信する掘削孔のケーシングの外側に配置されるセンサーにも関する。本センサーは、温室効果ガス隔離と関連するバリヤシステムの完全性を長期間又は長時間(数年、数十年、更には数百年)にわたって監視するように働く。本センサーは、pH、多孔度、導電率、抵抗、二酸化炭素、炭化水素液、炭化水素ガスの存在又は移動、他の地質工学的状態などのような、ケーシングの外側に配置される他の無線センサーを用いて得ることができない特性を検出又は測定することができる。本センサーは、掘削中又は既存の坑井内に簡単に且つコスト効率よく設置することができる。
【0012】
一態様によれば、本発明は、温室効果ガスの隔離のために好適な工学掘削孔の完全性及びキャップロックのシール完全性を監視するための装置に関する。本装置は、ケーシングの外側に配置してかかる掘削孔を監視する1以上のセンサー、及びケーシング内で移動させて1以上のセンサーを作動させてこれに応答指令することができる用具を含む。本センサーはまた、地表から作動させてこれに応答指令することができる。
【0013】
第2の態様によれば、本発明は、温室効果ガスの隔離のために好適な天然のキャップロックシール層を通して配置される工学掘削孔の完全性を監視する方法に関する。本方法は、ケーシングの外側に1以上のセンサーを配置する工程、及びケーシングの内部の用具を用いて1以上のセンサーを作動させる工程を含む。本方法はまた、用具を用いて1以上のセンサーに応答指令して掘削孔を監視する工程を含む。他の態様においては、センサーは地表から作動させてこれに応答指令することもできる。
【0014】
第3の態様によれば、本発明は温室効果ガスの隔離方法に関する。本方法は、工学掘削孔を掘削する工程、及び1以上のセンサーを掘削孔に対して配置する工程を含む。本方法はまた、掘削孔をケーシングの外側の1以上のセンサーで囲む工程、及び温室効果ガスを掘削孔中又はこれを通して、例えば貯留地層中に圧入する工程を含む。本方法はまた、ケーシングの内部で移動させることができる用具を用いて1以上のセンサーを作動させてこれに応答指令することによって掘削孔の完全性を監視することを含む。
【0015】
本明細書中に包含されその一部を構成する添付の図面は本発明の幾つかの態様を示し、明細書と一緒に本発明の特徴、有利性、及び原理を説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、一態様による、マッドフィルターケーキ中のセンサーを含む地表部掘削孔の掘削を示す。
【図2】図2は、一態様による地表部掘削孔内に設置されるケーシングを示し、セメントを循環させて更なるセンサーを配置している。
【図3】図3は、一態様による中間掘削孔内に設置されるケーシングを示し、センサーはマッドフィルターケーキ中及びセメント中に配置される。
【図4】図4は、一態様による圧入地層を通る工学掘削孔内に設置される圧入ケーシングを示し、センサーはマッドフィルターケーキ中及びセメント中に配置される。
【図5】図5は、一態様によるセンサー及び有線ロギングツールを有する工学掘削孔を示す。
【図6】図6は、一態様によるケーシングセントラライザーを有するケーシングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、無線センサーによって例えば温室効果ガスの隔離中に使用するか又は用いるバリヤシステムの完全性を監視する装置及び方法を包含する。
一態様によれば、本発明は、掘削孔の形成、圧入、又は寿命監視のために、セメントバリヤ中又はそれに沿ってpH、他の地質化学的状態、分子の存在若しくは移動を検出するセンサーを包含する。工学掘削孔は、掘削中に生成する掘削孔、掘削孔に沿って又はその周囲に残留するマッドフィルターケーキ、掘削孔を支持するケーシング又はパイプ、ケーシングを支持するセントラライザー、ケーシングと掘削孔の間の空間に充填されているセメント又は他の好適な材料、任意の他の関連する装置又は材料などを含む。望ましくは、工学掘削孔又はその構成要素は、天然キャップロックシール及び/又は隔離システムの他の部分内にバリヤシステムを形成又は構築する。本発明のセンサーは、泥水循環中、フィルターケーキ形成中、ケーシングの配置中、セメントの配置中などに新しい坑井又は掘削孔と共に使用又は設置することができる。本発明のセンサーは、例えばセンサーを既存のケーシングの外側か又はそれを通して挿入することによって既存の坑井又は掘削孔と共に使用又は設置することができる。
【0018】
望ましくは、しかしながら必須ではないが、センサーは、例えば掘削中、プロパント添加中、セメンチング中などに循環システム中に圧入することを可能にする、保護ハウジング内に封入されている比較的小さい装置を含む。循環又は流動によって、センサーを、掘削孔壁に沿って(泥水置換)、セメントバリヤ中、プロパント中などに配置することが可能になる。
【0019】
他の態様においては、センサーは、完成しているか又は既存の坑井又は掘削孔のケーシング及び/又はセメントライナーを通る孔又は開口を、生成させるか又は形成することによって配置又は挿入することができる。望ましくは、挿入孔はセンサーを配置した後に閉止又は閉塞することができる。
【0020】
センサーは、内部動力源を有していてよく(アクティブ)、及び/又は動力を外部源から与えることができる(パッシブ及び/又は寄生)。乾電池、湿電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、燃料電池、他の電源、他の化学ポテンシャル源などのような任意の好適な内部動力供給装置又は動力源を用いることができる。望ましくは、内部動力源はセンサーの読み値を取得する時間に対応する耐用年数を有する。複数及び/又は余剰の動力供給装置は本発明の範囲内である。外部信号によってセンサーを初期化して内部動力源を用いてスキャンを行うか又は読み値を取るようなアクティブシステムとパッシブシステムの組み合わせも本発明の範囲内である。読み値をセンサーから送信した後にセンサーの動力源を切るか又は停止して、動力又は資源を節約することができる。
【0021】
音響エネルギー、超音波エネルギー、熱エネルギー、電磁エネルギー、X線、マイクロ波、液圧(流動流体)エネルギーなどのような任意の好適な外部動力供給装置又は源を用いることができる。外部動力源は、ケーシング内からのロギングツール、スマートピグなどからであってよい。寄生動力源システムとしては圧電システムを挙げることができる。他の態様においては、動力供給装置としては、例えば電線又は他の好適な導体(ケーシング又はライナーを含ませることができる)を通して供給する電気を挙げることができる。外部動力駆動システム又はセンサーによって、温室効果ガス隔離システムを監視するために必要な長い年数のようなセンサーの長い耐用年数を可能にすることができる。
【0022】
望ましくは、しかしながら必須ではないが、センサーにはデータを記憶するメモリーは必要ではない。センサーは、有線ロギング装置又は他の坑井用具のような外部源によって応答指令及び/又は質問することができる。有線用具は、電場、磁場、音場などを生成して、センサーを励磁するエネルギーを与えることができる。
【0023】
有線用具は、約5cm〜約1,000cmの間、約10cm〜約100cmの間、約20cm〜約50cmの間、約25cmなどのようなセンサーから掘削孔の中心への任意の好適な距離に配置することができる。
【0024】
他の態様においては、センサーは、例えば好適な量の時間、又は有線ログによる応答指令の間、データ又は読み値を記録するのに好適な量のメモリーを含む。少なくとも約1キロバイト、少なくとも約1メガバイト、少なくとも約1ギガバイトなどのような任意の好適な量のメモリーが可能である。応答指令の前及び/又は間にセンサーの動力源を切っている間に読み値を記録するためにフラッシュメモリーを用いることができる。
【0025】
センサーに電圧を加えると、センサーは、pH、多孔度、導電率、抵抗、それを囲むか及び/又はそれを通して移動する環境を特徴付けることができる特定の分子などのようなバリヤシステムの特性を検出することができる。センサーの応答からの環境の測定は、例えばセンサーを始動させるエネルギー及び/又は信号を与えながらセンサー付近の用具で検出する。応答指令工程には、例えばロギングツールから信号を送ってセンサーに動力供給して作動させたり、センサーからロギングツールへ信号を送るなどのような、センサーとロギングツールとの間及びその逆の任意の好適な通信を含ませることができる。
【0026】
望ましくは、掘削孔有線ロギングツールによって、動力、並びにその環境に対するセンサー測定応答値を検出、記録、及び/又は送信する能力を与えることができる。更に、及び場合によっては、ロギングツールは、深さ、方位角(角位置)、距離などのようなセンサーの配置を検出及び/又は記録することができる。望ましくは、ロギングツールは、情報の独特のタグ又はフィールドなどによって個々のセンサーを識別することができる。無線周波数識別(RFID)を用いることは本発明の範囲内である。
【0027】
時間経過に伴う個々のセンサーの応答の傾向を調べるか又は追跡することによって、例えば時間経過に伴う1つの位置におけるpHの変化又は流体の移動の徴候を示して、工学掘削孔及び/又は天然のキャップロックシールの完全性の予想及び/又は予測測定を与えることができる。更に及び/又は場合によっては、時間経過に伴う複数のセンサーの応答の傾向を調べるか又は追跡することによって、例えば時間経過に伴う距離に沿ったpHの変化又は流体移動の徴候を示して、工学掘削孔及び/又は天然のキャップロックシールの完全性の予想及び/又は予測測定を与えることができる。
【0028】
ケーシング壁の外側の地質化学的環境又は地質工学的環境に関する情報によって、腐食攻撃及び/又は気体のチャネリング若しくは漏れなどのバリヤシステムの状態の重要な指標の評価を与えることができる。理論には縛られないが、貯留又は隔離システムに関して最も可能性の高い故障メカニズムの1つは、圧入点の付近であり、地表へ戻す点であるので、圧入のために用いる掘削孔の位置、それに沿った位置、又はそれ付近で起こると考えられている。セメントは、キャップロックを通して掘削孔を掘削する際に妨害した天然のシール層又は地層を置き換えるようなものである。ケーシング及び地層とのセメントの界面は、殆どの場合、工学掘削孔に沿った潜在的な移動経路となりうる。
【0029】
本発明のセンサーは、工学掘削孔の周囲の領域、天然のキャップロックシール中、貯留層中などの変化を監視又は検出する。望ましくは、センサーはまた、ケーシングとのセメントの界面、マッドフィルターケーキ界面、掘削孔壁界面などにおける環境の変化を検出することもできる。本発明のセンサーは、特にこの領域及びシステム全体の他の部分の状態及び/又は変化を監視しようとするものである。
【0030】
一態様によれば、本発明は、pH、炭化水素ガスの存在、二酸化炭素の存在などを調べる無線センサーに関する。ケーシングの外側のセンサーは、酸性環境のような坑井内状態への曝露による坑井の完全性の変化を測定する手段を与える。このシステムは、センサー、並びに電気、磁気、及び/又は音響エネルギーの形態のエネルギーを与えるロギングツールを含む2つの構成要素から構成することができる。センサーには、セメント、プロパント、及び/又は残留マッドフィルターケーキなどの、外側のケーシング壁から掘削孔壁内の領域へのバリヤシステムに沿って及び/又はこれを取り囲んで存在する物質の地質化学又は分子測定を含ませることができる。他の態様においては、センサーは、貯留層内の特性及び/又は変化、掘削孔壁の向こう側の特性及び/又は変化、周囲の岩盤中の特性及び/又は変化などを検出することができる。ここで用いるマッドフィルターケーキとは、しばしばマッドケーキ及び又はフィルターケーキと呼ぶこともできる。有線ロギングツール及び/又は地表制御装置により、掘削孔環境内のセンサーを作動させる適当なエネルギーを生成させることができる。望ましくは、システムによって、定期的ロギングにより数年間にわたって状態を比較する経時技術を与えることができる。
【0031】
掘削孔のロギング及びセンサーへの応答指令は、少なくともほぼ1時間毎、少なくともほぼ一日毎、少なくともほぼ1週間毎、少なくともほぼ1月毎、少なくともほぼ2月毎、少なくともほぼ6月毎、少なくともほぼ1年毎、少なくともほぼ2年毎、少なくともほぼ5年毎、少なくともほぼ10年毎などのような任意の好適な頻度で行うことができる。他の態様においては、センサーによって監視又は読みを、連続的、半連続的、不連続的などで与えることができる。
【0032】
図1は、一態様による、新しい掘削孔の設置中の温室効果ガス隔離システムのためのマッドフィルターケーキセンサー18を有する工学掘削孔12の地表部分を示す。掘削孔12には、ドリルストリング26、ドリルビット28、及びマッドフィルターケーキ22が含まれる。掘削孔12はまた、装置10及びマッドフィルターケーキセンサー18を含み、これを保持する。マッドフィルターケーキセンサー18を泥水の流路又は泥水の入口30内の掘削泥水21と共に循環又は流動させ、ドリルストリング26を下方に移動させ、ドリルビット28を通過させることができる。次に、掘削泥水21によってマッドフィルターケーキ22を形成させ、その後に一部の掘削泥水21を泥水出口32から排出することができる。センサーの一部は、マッドフィルターケーキ22中及び/又は掘削孔壁の泥質部又は岩質部中に埋封されるようになる。掘削泥水21と共に排出されるセンサーは、捕捉して再使用することができる。
【0033】
図2は、一態様による、地表部掘削孔内に配置されているケーシングであるセメント24、セントラライザー48、及びセメントセンサー20を示す。装置10は、マッドフィルターケーキ22、マッドフィルターケーキセンサー18、及びセメントセンサー20を含む。セメントセンサー20は、セメント入口23内のセメント24と共にケーシング14の下方に循環させて、掘削孔12とケーシング14との間の環状空間におけるセメント出口25から排出することができる。
【0034】
図3は、例えば中間ケーシング内の工学掘削孔12における一態様によるキャップロック38内のケーシング14を示す。装置10は、マッドフィルターケーキ22、マッドフィルターケーキセンサー18、セメント24、セメントセンサー20、中間ケーシング用のセメントセンサー29、セメント入口23、セメント出口25、及びセントラライザー48を含む。
【0035】
図4は、例えば圧入ケーシングを有する一態様による、キャップロック38を通る工学掘削孔12の地層42内のケーシング14を示す。装置10は、マッドフィルターケーキ22、マッドフィルターケーキセンサー18、セメント24、セメントセンサー20、セメントセンサー29、圧入ケーシング用のセメントセンサー33、及びセントラライザー48を含む。
【0036】
図5は、一態様による、図4のセンサー18、20、29、及び33が設置され、有線用具44を用いる工学掘削孔12を示す。工学掘削孔12は、従前の図面に関して記載したような、ケーシング14、マッドフィルターケーキ22、セメント24、及び装置10を含む。工学掘削孔12はまた、シール部36を有するウェルヘッド34、パッカー37、及び圧入管41も含む。工学掘削孔12はまた、貯留層又は地層42の一部内に配置されているプロパント40も含む。地層42はキャップロック38の下方に位置する。有線46によって、有線用具44に移動、通信、及び/又は動力が与えられる。有線用具44は、例えば完成し設備が整った掘削孔12を上下に移動しながらセンサー18、20、29、及び33を作動させ及び/又は応答指令する。
【0037】
図6は、一態様による、温室効果ガス隔離システムのための工学掘削孔(図示せず)において用いることができるケーシング14を示す。ケーシング14は、ほぼパイプの長さに配置されているセントラライザー48(図2、3、及び4にも示す)、並びに一端上の一体部品として配置されているカラー52を有する。セントラライザーによって、例えばセメントをケーシングの周りに循環させることができるようにケーシングを掘削孔壁から離して支持することができる。センサー16は、セントラライザー48、カラー52、及び/又は50などにおいてケーシングの外部に取り付ける。センサー16は、ケーシングの設置及びセメンチング(行う場合)に耐えるように堅固に取り付けることができる。
【0038】
一態様によれば、本発明は、工学掘削孔又は坑井の完全性、及び天然のキャップロックのシール完全性又は封じ込め性能(これらは一緒になって下層の地層内に温室効果ガスを隔離するために好適である)を監視する装置を包含する。本装置には、ケーシングの外側に配置して掘削孔を監視する1以上のセンサー、及びケーシング内を移動して1以上のセンサーを作動させてこれに応答指令する用具を含ませることができる。
【0039】
完全性とは、広義には、損なわれていない状態又は健全な状態、例えば品質又は状態が完全であるか又は分解されていない状態、例えばその工学設計目標に完全に合致する状態であることを指す。望ましくは、隔離システムに関する完全性とは、意図しない漏洩(大きな漏洩)がないか、又は所期の境界若しくは地層を超えて例えば地下水源中への移動がない(保護)封じ込めを起こすか又はこれを可能にするものである。他の態様においては、キャップロック中への若干の漏洩、移動、拡散などが望ましい場合がある。
【0040】
監視とは、広義には、観察、測定、追跡、チェックなどを指す。
工学掘削孔とは、広義には、地球中に穿孔又は掘削した任意の好適な孔、例えば地中に垂直、斜め、水平などの方向に掘削した狭いシャフトを指す。掘削孔又は工学掘削孔には、マッドフィルターケーキ、ケーシング、セメント、ドリルストリング、ドリルビットなどを含ませることもできる。掘削孔は、少なくとも約100m、少なくとも約500m、少なくとも約1,000m、少なくとも約5,000mなどのような任意の好適な長さのものであってよい。掘削孔は、少なくとも約10cm、少なくとも約25cm、少なくとも約50cm、少なくとも約100cm、少なくとも約500cmなどのような任意の好適な直径又は有効直径を有していてよい。
【0041】
掘削孔の直径は長さに伴って変化させることができ、例えば地表部における1つの直径で出発して地表部の更に下側のより小さい直径に例えば段階的に減少させることができる。直径はまた、例えばセメントバリヤの厚さを増加させるように拡大する直径の領域を有していてもよい。掘削孔の直径はまた、地層のタイプ、ケーシングのデザインなどによって変化させることもできる。他の態様においては、直径はアンダーリーミングなどによって深部において増加させることができる。直径を増加させることによって、極厚のセメントを与えたり、或いは例えば地層中のフープ応力を減少させることができる。
【0042】
隔離とは、広義には、例えば大気中若しくは地表への接触若しくは混入を避ける分離、沈殿、貯留、隔離などを指す。大気とは、広義には地球のような惑星を取り囲む気体状物質を指す。
【0043】
上記で議論したように、温室効果ガスは、広義には、二酸化炭素、メタン、硫化水素、亜酸化窒素、オゾン、クロロフルオロカーボン(CFC)などのような熱赤外範囲内の放射線を吸収及び放出する大気中の気体又は蒸気を包含する。理論には縛られないが、温室効果ガスは太陽放射線又はエネルギーを受容及び/又は保持し、これが大気中に捕捉されて地球の平均大気温度の上昇を引き起こすようになると考えられている。
【0044】
センサーとは、広義には、物理的刺激又は周囲の変化を測定し及び/又はそれに応答することができる任意の好適な装置を指す。望ましくは、センサーは、測定される特徴を表し、それに対して特有の信号を発信することができる。センサーは、地質工学的特性、地質化学的特性、多孔度、透過率、導電率、二酸化炭素又は1種類若しくは複数の炭化水素の存在又は移動、熱、温度、電磁放射線、放射性粒子、音、音響力、圧力、歪み、磁性、動き、方向、pH(酸性度、中性度、及び/又はアルカリ性度を含む)、電気抵抗、電気伝導度、電気インピーダンス、動き、移動、流れ、流速、分子検出(二酸化炭素及び/又は他の炭化水素類などの存在)など(しかしながらこれらに限定されない)の任意の好適な特徴を測定又は検出することができる。炭化水素は液体及び/又は気体(蒸気)として存在する可能性がある。センサーは単一の特徴を測定又は検出することができる。他の態様においては、センサーは複数の特徴を並行してか及び/又は順次に測定又は検出することができる。
【0045】
工学掘削孔の下方へのセンサーの配置には、単一特徴センサー、単一特徴センサーの異なるタイプ又は組合せ、多重特徴センサーなどを含ませることができる。例えば温室効果ガスの貯留又は隔離に関連する関係するか又は関連する特徴又は特性を測定するために、異なる特徴に関する複数のセンサーを、異なる深さ、異なる地層中などに配置することができる。
【0046】
センサーは、望ましくは、しかしながら必須ではないが、例えば掘削泥水、プロパント、及び/又はケーシングセメントと共に循環させることができるように、比較的小型で内蔵型の一体型のデザインを有する。センサーは、分配及び設置のために循環装置又はポンプを通すのに十分に小さく又は十分に強靱なものであってよい。他の態様においては、センサーは、例えば主流と同じか又はこれと異なる組成を有するより高い圧力の液体又は気体を用いて、ポンプ吐出の下流中に投入又は添加することができる。
【0047】
センサーは任意の好適な寸法及び/又は形状のものであってよい。センサーは、約10cm未満、約5cm未満、約2cm未満、約1cm未満、約0.5cm未満などの最長寸法を有していてよい。センサーには、ナノテクノロジー及び/又はモート(スマートダスト)の使用を含ませることができる。センサーは、概して球状形状、概して立方体形状などの任意の形状のものであってよい。センサーは任意の好適な密度(排水体積あたりの質量)のものであってよく、例えば周囲の流体に対して沈降、浮遊してもよく、及び/又は中性浮遊してもよい。一態様によれば、センサーは、循環する掘削泥水、循環するセメント、ポンプ移送するプロパントなどに対して中性浮遊する。
【0048】
一態様においては、センサーには、例えばセンサーの周囲を周期的に測定又は検出するために時計又は他の好適なタイマー能力を含ませることができる。時計機構を有する態様には、若干量の記憶貯蔵及び/又は内部動力供給を含ませることができる。時計によって、ほぼ1秒毎、ほぼ1分毎、ほぼ10分毎、ほぼ30分毎、ほぼ1時間毎、ほぼ6時間毎、ほぼ1日毎、ほぼ1日おき、ほぼ1週間毎、ほぼ2週間毎、ほぼ1月毎、ほぼ2月毎、ほぼ6月毎、ほぼ1年毎、ほぼ2年毎、ほぼ5年毎、ほぼ10年毎などのような任意の好適な間隔で、センサーに周囲をサンプリングさせることができる。
【0049】
他の態様においては、センサーは、時計能力、記憶貯蔵、及び/又は内部動力供給を排除することができる。かかる基本的なセンサーはダムセンサーと呼ぶことができ、ダムセンサーの簡素さによって、隔離システムの監視において数年又は数十年の間、特に健全で信頼性のあるものにすることができる。
【0050】
本発明のセンサーは、掘削しながら、及び/又は石油を抜き出す際などの坑井の比較的短い生産年数の間に測定のために用いるセンサーと比べて隔離システムを監視するのに必要な長い期間機能するように設計することができる。
【0051】
1以上のセンサーとは、広義には、1つのセンサー、複数のセンサー、多数のセンサーなどを包含する。数十個、数百個、数千個、又はそれ以上のセンサーを隔離システム内に配置することができる。
【0052】
ケーシングとは、広義には、坑井又は穴を周囲から被包又は隔離するのに用いる金属パイプ、ガラス繊維パイプ、複合体パイプなどのような被包又は取り囲むものを指す。ケーシングは任意の好適な寸法及び/又は形状を有していてよい。ケーシングは、工学掘削孔の任意の好適な長さの中に、例えば帯水層などを通して挿入又は設置することができる。ケーシングは掘削孔の全部又は一部において用いることができる。ケーシング内にケーシングを設置することは本発明の範囲内である。例えばバリヤシステムの破壊は内部の圧力流体によるものであるので、ケーシングの間の環状空間によって漏洩検出点を与えることができ、或いはこれを貯留層のものよりも高いレベルに加圧することができる。
【0053】
用具又は有線用具とは、広義には、ケーシング内を移動してセンサーを作動させ及び/又はこれに応答指令する任意の好適な器具及び/又は装置を指す。望ましくは、用具は、ラインに繋ぎ且つ地表から制御して、坑井又は掘削孔の長さの少なくとも一部を移動させることができる。他の態様においては、用具は内蔵型で遠隔制御することができる。用具は、信号又は動力源をセンサーに送ることができる。用具はまた、例えば動力源を切った状態からセンサーを始動及び/又は起動させる信号を送ることもできる。用具はまた、現在又は過去(従前)の読み値又は測定値に関してセンサーに応答指令又は質問することができる。望ましくは、用具は、センサーの位置、深さ、及び/又は角度方向(方位角)を測定する能力を有する。用具には、例えばそれを坑井に沿って進ませるための原動装置を含ませることができる。他の態様においては、流体を用いて用具を動かすことができる。
【0054】
一態様によれば、用具は坑井に沿って通過又は移動しながらセンサーに応答指令する。他の態様においては、用具はセンサーに対して停止してそれに応答指令する。用具は、変化を識別するためにセンサーの移動スキャンを用い、次に変化した読み値を更に調査するために停止させることができる。用具及びセンサーは、望ましくは互いに物理的に接触(隣接)しておらず、及び/又は用具及びセンサーは互いに直接電気接触していない。用具には、ケーシングの超音波厚さ測定、電気抵抗の測定などのような更なる機能を含ませることができる。他の態様においては、配線によってセンサーとケーシングの内径との間の直接的な接触を与えて、ケーシングの内部を通る用具と接触させることによって作動及び/又は応答指令を可能にすることができる。
【0055】
ケーシングの外側に配置するセンサー及びケーシング内を移動可能な用具の構成により、用具をケーシング内で単純に移動させながらケーシングの外側の変化を測定又は検出して、掘削孔の完全性を監視するコスト効率のよい装置を与えることができる。
【0056】
一態様によれば、センサーはケーシングセントラライザー又は外部ケーシングアタッチメントの上に配置することができる。セントラライザーとは、広義には、ヒンジで連結されたカラー及びバウスプリングが取り付けられた装置のような、ケーシングを掘削孔の中心に及び/又は掘削孔壁から離して保持するように設計されている任意の好適な装置を指す。他の外部ケーシングアタッチメントは、ケーシングのために用いるパイプの一部の外側の上、パイプの一部の間のネジ切り結合部の上などに含ませることができる。
【0057】
一態様によれば、用具は、音響エネルギー、無線周波数エネルギー、電気誘導などによって1以上のセンサーを作動させるか又は動力を送る。用具は、同時に1より多いセンサー、例えば近接した領域及び/又は方向における全てのセンサーを作動させることができる。
【0058】
一態様によれば、用具は無線周波数信号によって1以上のセンサーに応答指令し、1以上のセンサーは無線周波数信号、音響信号フィードバックなどを用具に返信する。応答指令は、望ましくはデータ又は情報の二方向交信を含む。他の態様においては、応答指令は一方向のデータの流れを含む。
【0059】
一態様によれば、用具は、掘削孔に対する1以上のセンサーの深さ及び方位角を測定する能力を有することができる。用具は、掘削孔の中心からセンサーまでの距離を測定することができ、並びに泥、岩、マッドフィルターケーキ、プロパント、セメントなどのようなセンサーの周囲の媒体のタイプを測定することができる。
【0060】
センサーは、地表付近、中深度、全深度などのような任意の好適な位置及び/又は媒体中に配置又は設置することができる。センサーは、マッドフィルターケーキ、プロパント、泥層、岩層、キャップロック、表土、ケーシング部材、セントラライザー、セメントシース、セメント層などの中又はその付近に配置又は設置することができる。
【0061】
マッドフィルターケーキとは、広義には、掘削泥水のようなスラリー又は溶液を加圧下で媒体に対して強制流動させた際に、透過性の媒体又は半透過性の媒体上に堆積又は沈積する残留物又は残余物を指す。濾液は、媒体を通過して媒体上のケーキから除去される液体である。好適な掘削泥水は水性又は油性の流体であってよく、適当な濾過速度及びフィルターケーキ特性を有していてよい。掘削泥水は生物分解性であってよい。マッドフィルターケーキ特性は、ケーキ厚さ、強靱さ、滑らかさ、透過性などのような任意の好適な特質を含む。マッドフィルターケーキは、例えば高角度孔、水平孔、垂直孔などの中で地層を掘削泥水から隔離することができる。
【0062】
プロパントは、広義には、水圧フラクチャリング処理などの後に開くフラクチャーを保持するような寸法のフラクチャリング流体と混合している粒子を指す。プロパントには、砂粒、樹脂被覆砂、高強度セラミクス、焼結ボーキサイトなどのような任意の好適な物質を含ませることができる。プロパント材料は、例えば貯留層へ、又は貯留層から掘削孔へ流体を生成させるのに効率的な導路を与えるように、寸法及び/又は球形度に関して仕分けすることができる。
【0063】
セメントシース又はセメントバリヤとは、広義には、例えばケーシングを固定し及び/又は更なる封じ込めを与えるために、セメント、或いはモルタル、コンクリートなどのようなケーシングの外側の周囲に配置される他の好適な材料を指す。
【0064】
キャップロックとは、広義には、貯留層及び/又は貯留岩の上方及び周囲にバリヤ又はシールを形成して、それによって流体又は気体が貯留層を超えて移動できないようにする比較的不浸透性の岩又は層を指す。キャップロックは岩塩ドームの上であってよく、頁岩、無水石膏、塩などのような任意の好適な物質を含んでいてよい。与えられた工学掘削孔が横断及び/又は交差する幾つかのキャップロック層が存在する可能性がある。キャップロックの透過率は、約10−6ダルシー〜約10−8ダルシーの間のような任意の好適な量又は値を有していてよい。
【0065】
表土とは、広義には、地表下における対象の領域又は点の上に重なる岩又は物質を指す。
一態様によれば、1以上のセンサーは、例えば上記で議論したようなダムセンサーを形成するためにデータ記録及び動力貯蔵を排除している。
【0066】
センサーは任意の好適な耐用年数を有することができる。耐用年数とは、広義には、期待寿命、或いは稼働中の許容できる使用期間を指す。本発明のセンサーは、少なくとも約1年、少なくとも約5年、少なくとも約10年、少なくとも約30年、少なくとも約60年、少なくとも約100年、少なくとも約250年などの耐用年数を有することができる。
【0067】
一態様によれば、本発明は、温室効果ガスの隔離のために好適な掘削孔の完全性を監視する方法を包含する。本方法には、ケーシングの外側に1以上のセンサーを配置する工程、及びケーシングの内部の用具を用いて1以上のセンサーを作動させる工程を含ませることができる。本方法にはまた、用具を用いて1以上のセンサーに応答指令して掘削孔を監視する工程を含ませることもできる。
【0068】
配置とは、広義には、配置、据付、載置、設置、付加などを指す。ケーシングの外側とは、広義には、ケーシングの内部でない任意の部分又は空間を指す。一般に、ケーシングの外側とはパイプ壁の外側を指す。ケーシングの外側は、泥層中、岩盤中、キャップロック中、マッドフィルターケーキ中、プロパント中、セメントシース中などに含ませることができる。センサーを配置する工程には、ロギングツールによる配置、掘削泥水の循環中の配置、プロパントの設置中の配置、セメンチング中の配置、空の掘削孔中へ入れる分配装置による配置などのような任意の好適な動作を含ませることができる。
【0069】
広義には、本方法において用いるセンサーには上記に記載の任意及び/又は全ての特性及び特徴を含ませることができる。
作動とは、広義には、例えばパッシブセンサーに動力及び/又はエネルギーを供給又は提供する工程又は動作を指す。広義には、本方法において用いる用具には上記に記載の任意及び/又は全ての特性及び特徴を含ませることができる。
【0070】
応答指令とは広義には指令又は質問を指し、一方向通信及び/又は二方向通信を含ませることができる。
本方法にはまた、1以上のセンサーを用いて、pH、多孔度、導電率、抵抗、二酸化炭素又は炭化水素液又は炭化水素ガスの存在又は移動などを測定又は検出する工程を含ませることもできる。測定とは、広義には、センサーの周囲の特性又は特性の変化を測定するセンサーによる任意の好適な動作又は工程を指す。測定は、一般に、6のpH又は5原子ppmの二酸化炭素濃度のようなある量又は定量化度を含む。
【0071】
検出とは、広義には、特徴の実在、存在、又は事実を発見又は測定することを指す。検出は、一般に炭化水素の存在又は移動のようなより質的なプロセスを含む。
一態様によれば、1以上のセンサーを配置する工程には、1以上のセンサーを、セントラライザー上、他の外部アタッチメント上、マッドフィルターケーキ中、プロパント中、又はキャップロック若しくは他の非生産性間隙中若しくはこれに沿ったセメント中に配置することを含ませることができる。
【0072】
一態様によれば、1以上のセンサーを配置する工程には、1以上のセンサーを掘削泥水中に循環させ、1以上のセンサーをマッドフィルターケーキ中に埋封させることを含ませることができる。循環とは、広義には、地表においてセンサーを掘削泥水又は他の流体に添加し、配置させるために坑井にポンプで送り込むことを指す。
【0073】
一態様によれば、1以上のセンサーを配置する工程には、キャップロック又は他の非生産性若しくは低透過性間隙に沿ったマッドフィルターケーキ、プロパント、セメント、セメントシースなどの中に配置することを含ませることができる。非生産性又は低透過性間隙とは、広義には、石油又は天然ガスを有しないか又は生産せず、及び/又はそれを通る移動を阻止することができる地層を指す。
【0074】
一態様によれば、1以上のセンサーを作動させる工程には、誘導電場、核エネルギー、音響エネルギー、無線周波数エネルギーなどを用いることを含ませることができる。
一態様によれば、1以上のセンサーに応答指令する工程には、無線周波数信号を送る用具、及び無線周波数信号を発信する1以上のセンサーを含ませることができる。
【0075】
一態様によれば、本方法にはまた、掘削孔に対する1以上のセンサーの深さ及び方位角を測定する工程を含ませることもできる。
一態様によれば、本方法には、工学掘削孔又は掘削孔の構成要素を監視する工程を含ませることができる。掘削孔の構成要素としては、マッドフィルターケーキ、セメント、ケーシング、セントラライザーなどを挙げることができる。場合によっては及び/又は更には、本方法にはまた、天然のキャップロック又は隔離地層を監視する工程を含ませることもできる。
【0076】
一態様によれば、本発明は温室効果ガスの隔離方法を包含する。本方法には、掘削孔を掘削する工程、及び掘削孔に対して1以上のセンサーを配置する工程を含ませることができる。本方法にはまた、掘削孔をケーシングの外側の1以上のセンサーで囲む工程、及び場合によってはアニュラスにセメントを充填する工程を含ませることもできる。本方法にはまた、温室効果ガスを、掘削孔中及び/又はこれを通して圧入し、次に周囲の地層又は貯留層中に圧入する工程を含ませることもできる。本方法にはまた、ケーシングの内部を移動可能な用具によって1以上のセンサーを作動させてこれに応答指令することによって掘削孔の完全性を監視する工程を含ませることもできる。望ましくは、センサーから得られる測定値は、キャップロックの状態の変化、及び/又はバリヤシステム及び/又はキャップロック地層に沿った流体及び/又は気体の存在又は移動を示す。
【0077】
温室効果ガスを圧入する工程には、二酸化炭素及び/又は他の気体を掘削孔の下方、例えば貯留層又は地層中に圧縮及び流入させることを含ませることができる。二酸化炭素又は他の温室効果ガスは、石炭火力発電所のような任意の好適な発生源において回収することができる。望ましくは、圧入には、例えばその工学掘削孔に関する圧入寿命の終了時において地表付近又は地表上でケーシング及び/又は掘削孔をキャップ又はシールして、貯留層内に温室効果ガスを保持する動作を含ませることもできる。圧入には、上記で議論した任意の他の温室効果ガスを含ませることができる。
【0078】
一態様によれば、1以上のセンサーを配置する工程には、掘削泥水を掘削孔の下方に循環させ、マッドフィルターケーキを形成し、1以上のセンサーをマッドフィルターケーキ中に埋封することを含ませることができる。マッドフィルターケーキ中にセンサーを埋封する工程は、キャップロックのような透過性の地層の部分中か又は地層の既存の天然のフラクチャー内に通過させることによって泥水によってマッドフィルターケーキを形成させながら行うことができる。センサーを泥水と一緒に循環させて、マッドフィルターケーキの一部にすることができ、及び/又は地層に対してか又は地層中に埋封することができる。
【0079】
同様に、移動するセメント中で循環するセンサーは、形成された際にセメントシース内に埋封又は包含されるようになる。
一態様によれば、1以上のセンサーを配置する工程には、上記で議論したようなセントラライザー又は他の外部ケーシングアタッチメント上に配置することを含ませることができる。
【0080】
一態様によれば、工学掘削孔及び天然キャップロックシールの完全性を監視する工程には、上記で議論したようなpH、多孔度、導電率、抵抗、二酸化炭素又は炭化水素又は炭化水素ガスの存在又は移動などを測定又は検出することを含ませることができる。場合によっては及び/又は或いは、監視にはシステムの天然部分を含ませることができる。
【0081】
一態様によれば、本発明は、温室効果ガスの隔離のために好適な既存の掘削孔の外側又はキャップロック中にセンサーを設置する方法を包含する。本方法には、設置用具を掘削孔中に降下させる工程、及び例えば設置用具を用いてケーシングを通して孔を形成する工程を含ませることができる。本方法にはまた、1以上のセンサーを孔の内部に配置する工程、及び場合によっては例えばセメント、エポキシ、及び/又は他の好適な材料を用いて孔をシールする工程を含ませることもできる。場合によっては及び/又は或いは、孔は、セメントライナー、マッドフィルターケーキ、又はキャップロック中又はこれを通して伸長させる。
【0082】
孔を形成するために、設置用具は、掘削、ボーリング、爆破などを用いることができる。
センサーを含むビット又はロッドを、自己シール型の端部又は栓を用いてケーシング及び/又はセメントを通して配置することができる。ロッドは、ケーシングに対して垂直及び/又はケーシングに沿って一定の角度のような任意の好適な角度で配置することができる。望ましくは、ロッドは、それをその中に配置するケーシング、セメント、及び/又は地層よりも硬い材料から構成することができる。他の技術は、成形爆薬のような穿孔を用いる。穿孔の後に、例えばセンサーを含むセメントを圧搾又は循環させることができる。孔は、ケーシングから頂点まで伸長する概して円錐形状のような任意の好適な形状を有していてよい。望ましくは、孔には1以上のセンサーを含ませることができる。
【実施例】
【0083】
ドリルパイプ(ドリルストリング)及びビットを有する通常の掘削装置を用いて、地表の穴を地表面より下方に掘削する。ドリルストリングと掘削孔の壁との間の環状の空間によって、掘削流体又は掘削泥水をドリルストリングの下方へ且つ孔の上方及び外へ循環又はポンプ移送して、マッドフィルターケーキが掘削孔の壁中及び/又は壁上に残留するようにする。センサーを掘削流体に添加して、孔の底部へ移動させ、環状空間を上方に移動させ、次にマッドフィルターケーキ中に埋封するようにする。マッドフィルターケーキを掘削孔内に残留させる。
【0084】
表面ケーシングをセットして所定位置にセメンチングし、マッドフィルターケーキ内のセンサーが保持されるようにする。更なるセンサーをセメントと共に循環させて、セメント中に埋封するようにする。このようにして、センサーをマッドフィルターケーキ及びセメント中に埋封する。
【0085】
地表の孔を通して、例えば約31cmの直径を有する中間掘削孔を掘削する。掘削中にセンサーを泥水内で循環させて、それまでよりも深い位置のマッドフィルターケーキ中に埋封する。マッドフィルターケーキを掘削孔内に残留させる。
【0086】
例えば約24.5cmの直径の炭素鋼又は耐腐食性材料のパイプの中間ケーシングをセットしてセメンチングする。ケーシングを設置した後にセメントの循環を行う。セメントをケーシング中にポンプで流入させ、ケーシングの外側に沿って孔を上方に(環状空間によって)ポンプで移送する。センサーをマッドフィルターケーキに残留させ、更なるセンサーをセメントと共に循環させて、セメント中に埋封するようにする。
【0087】
中間掘削孔を通して、約21.5cmの孔のようなドリル圧入間隙を掘削する。掘削泥水を上記のように循環させて、センサーをより深い位置のマッドフィルターケーキ中に埋封する。マッドフィルターケーキを掘削孔内に残留させる。
【0088】
約17.75cmの直径のパイプのような圧入ケーシングをセットしてセメンチングする。センサーをマッドフィルターケーキ中に残留させ、更なるセンサーをセメントと共に循環させてセメント中に埋封するようにする。
【0089】
任意のケーシング(地表、中間、圧入)においてケーシングセントラライザーを用いる場合には、挿入前にセンサーをセントラライザーの外側に取り付ける。例えば、センサーを膨張機構の端部の上及び/又はボウ内に取り付ける。
【0090】
ロギング装置又はツールによってセンサーを遠隔作動させて、センサーの読み取り及び応答指令を行う。ロギング装置は有線であり、坑口シールを通って配置されている。センサーは、地表付近、深部、キャップロック中、及び地層中に配置する。ロギング装置は、下降及び/又は上昇しながら、或いはこの目的のためにロギング装置を壁内に停止させることができる場合には周期的な間隔でセンサーに応答指令する。
【0091】
必要に応じて、ドリル、爆薬、水力ジェットなどを用いてケーシングを通して穿孔又は貫通させ、センサーをその中に配置するための開口又は孔を形成することによって更なるセンサーを配置する。センサーを開口内に配置し、必要ならば開口を閉止又は塞ぐ。
【0092】
ここで用いる「有する」、「含む」、及び「包含する」という用語は、開かれた包含的な表現である。また、「から構成される」という用語は、閉じられた排他的な表現である。特許請求の範囲又は明細書における任意の用語の解釈においては不明確さが存在するが、明細書作成者の意図は開かれた包含的な表現である。
【0093】
方法又はプロセス中の工程に関する順番、数、順序、及び/又は繰り返しの限界に関しては、他に明確に与えられていない限りにおいて、明細書作成者は、本発明の範囲に対して、工程に関する順番、数、順序、及び/又は繰り返しの限界が含まれることは意図しない。
【0094】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく開示されている構造及び方法において種々の修正及び変更を行うことができることは当業者に明らかであろう。特に、任意の1つの態様の記載は、2以上の構成要素及び/又は限定の組合せ及び/又は変化を与える他の態様の記載と自由に組み合わせることができる。本発明の他の態様は、ここで開示する発明の詳細及び実施を考察することによって当業者に明らかとなるであろう。本明細書及び実施例は例示のみのものと考えられ、発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの外側に配置して掘削孔を監視する1以上のセンサー;及び
ケーシング内で移動させて1以上のセンサーを作動させ且つそれに応答指令する用具;
を含む、温室効果ガスの隔離のために好適な工学掘削孔又は他のタイプの坑井の完全性及びキャップロックのシール完全性を監視する装置。
【請求項2】
1以上のセンサーによって、地質工学的特性、地質化学的特性、多孔度、透過率、導電率、二酸化炭素又は1種類若しくは複数の炭化水素の存在又は移動を測定又は検出する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
1以上のセンサーをケーシングセントラライザー又は外部ケーシングアタッチメント上に配置する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
該用具によって、1以上のセンサーを、音響エネルギー、無線周波数エネルギー、又は電気誘導を用いて作動させる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
該用具によって1以上のセンサーに無線周波数信号を用いて応答指令して、1以上のセンサーに無線周波数信号又は音響信号のフィードバックを発信させる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
該用具によって、1以上のセンサーの掘削孔に対する深さ及び方位角を測定する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
1以上のセンサーがデータ記録及び動力貯蔵を行わない、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
1以上のセンサーをマッドフィルターケーキ又はプロパント中に配置する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
1以上のセンサーを工学掘削孔の一部であるキャップロック又はセメント中に配置する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
1以上のセンサーが少なくとも30年の耐用年数を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
1以上のセンサーをケーシングの外側に配置し;
ケーシングの内部の用具を用いて1以上のセンサーを作動させ;そして
該用具を用いて1以上のセンサーに応答指令して掘削孔を監視する;
ことを含む、温室効果ガスの隔離のために好適な工学掘削孔の完全性及びキャップロックのシール完全性を監視する方法。
【請求項12】
1以上のセンサーを用いて、pH、導電率、二酸化炭素又は炭化水素の存在又は移動を測定又は検出することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1以上のセンサーの配置が、セントラライザー又は他の外部アタッチメント上に配置することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
1以上のセンサーの配置が、1以上のセンサーを掘削泥水中で循環させ、1以上のセンサーをマッドフィルターケーキ中に埋封させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
1以上のセンサーの配置が、キャップロック又は他の非生産性空隙内か又はこれに沿って、マッドフィルターケーキ、プロパント、又はセメント中に配置することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
1以上のセンサーの作動が音響エネルギー又は無線周波数エネルギーを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
1以上のセンサーの応答指令が、無線周波数信号を送る用具及び無線周波数信号を発信する1以上のセンサーを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
掘削孔に対する1以上のセンサーの深さ及び方位角を測定することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
工学掘削孔又はその構成要素を監視することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
構成要素が、マッドフィルターケーキ、セメント、ケーシング、又はセントラライザーの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
天然のキャップロック又は隔離地層を監視することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
掘削孔を掘削し;
1以上のセンサーを掘削孔に対して配置し;
掘削孔をケーシングの外側の1以上のセンサーで囲み;
場合によってはアニュラスにセメントを充填し;
貯留地層中に温室効果ガスを圧入し;そして
ケーシングの内部を移動可能な用具を用いて1以上のセンサーを作動させ且つそれに応答指令することによって掘削孔の完全性を監視する;
ことを含む温室効果ガスの隔離方法。
【請求項23】
1以上のセンサーの配置が、
掘削泥水を掘削孔の下方に循環させ;
マッドフィルターケーキを形成させ;そして
1以上のセンサーをマッドフィルターケーキ中に埋封させる;
ことを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1以上のセンサーの配置がセントラライザー上に配置することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
掘削孔の完全性の監視が、pH、二酸化炭素、炭化水素、又は導電率を測定又は検出することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
設置用具を掘削孔中に降下させ;
ケーシングを通る孔を形成し;
孔の内部に1以上のセンサーを配置し;そして
場合によっては孔をシールする;
ことを含む、温室効果ガスの隔離のために好適な既存の掘削孔の外側又はキャップロック中にセンサーを設置する方法。
【請求項27】
孔を、セメントライナー、マッドフィルターケーキ、又はキャップロック中又はそれを通して伸長させる、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−519786(P2012−519786A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552966(P2011−552966)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/024369
【国際公開番号】WO2010/101713
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)