説明

無線タグリーダライタ

【課題】無線タグとの通信に対して最適な自動利得制御を行う。
【解決手段】AGC手段6は、受信部3の可変利得増幅器32のAGC値をAに設定し、一定時間が経過すると、所定時間、受信信号の振幅を計測する。そして、所定時間が経過すると計測値に基づいてAGC値をAからBに変更する。この変更が無線タグからの応答のプリアンブルにおける12個の‘0’の連続期間内のタイミングで行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の吸収と反射を利用したバックスキャッタ方式により無線タグと通信を行うものにおいて、受信レベルを自動利得制御する無線タグリーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線タグと無線タグリーダライタとの通信には、バックスキャッタという方式が用いられる。この方式は、無線タグリーダライタが無線タグに対して無変調の電波を送信すると、無線タグはこの電波を受信して直流電力に変換し動作電源にする。そして、無線タグではアンテナのインピーダンスを変化させることにより、受信電波の反射と吸収を行う。無線タグリーダライタは無線タグからの反射波を受信することにより、この無線タグとの通信を行うという方式である。
【0003】
無線タグリーダライタが無線タグから受信を行う場合、無線タグリーダライタは電波を送出しているため、電波を送出しながら電波を受信するという動作となる。このような動作は無線タグとの通信特有のものである。無線タグリーダライタと無線タグとの通信の変調方式としては、線形変調であるASK変調やPSK変調が用いられることが多い。
【0004】
一方、線形変調を行うシステムとして無線LANシステムが広く普及している。線形変調を採用するシステムにおいては、線形性を保つために、受信した信号を歪ませることなく増幅する必要があり、AGCと呼ばれる自動利得制御が用いられる。AGCは、受信部において、受信電界強度が強い場合には増幅器の利得を下げ、受信電界強度が弱い場合には増幅器の利得を上げて、受信出力を一定に保つ働きをする回路である。
自動利得制御を行う受信装置を備えた無線通信端末装置としては無線LANシステムに使用され、送信時には電波を送信し、受信時には電波を受信するのみの動作をスイッチ切換えで行い、受信時にRSSI(受信電界強度)を測定し、受信電波がある一定のRSSI値以上になるとAGCを開始するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−92561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線LANなどのデジタル無線通信システムにおいては、無線通信端末装置は、送信時には電波を送出し、受信時には電波を受信するのみの動作となるが、無線タグリーダライタが無線タグと無線通信を行う場合には、バックスキャッタ方式が採用される。すなわち、無線タグリーダライタが無線タグから受信を行う場合には、無線タグリーダライタは無線タグに対して電波を送出しながら無線タグからの反射波を受信するという動作となるため、送信系から受信系への電波の回り込みが発生し、それと同時に無線タグからの微小な反射波を受信する。
【0006】
送信系から受信系への電波の回り込みは、無線タグからの反射波と比べると非常に大きいため、無線タグからどの時点で反射波を受信したか受信電界強度を基に判別することは不可能である。このため、無線LANシステムで採用されている、RSSI値をトリガにして受信開始を検知し、AGCを開始させる方式を無線タグと通信を行う無線タグリーダライタに適用することはできない。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、無線タグとの通信に対して最適な自動利得制御ができる無線タグリーダライタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電波の吸収と反射を利用したバックスキャッタ方式により無線タグと通信を行う無線タグリーダライタにおいて、無線タグから受信信号の受信を行う受信部と、この受信部が受信した受信信号の振幅を計測する計測手段と、無線タグに対してコマンドの送信を行う送信部が無線タグに対するコマンドの送出を完了すると、一定時間Taの経過後、所定時間計測手段による振幅の計測を行わせ、計測した振幅値に基づいて受信部の自動利得制御を行う制御手段とを備えた無線タグリーダライタにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無線タグとの通信に対して最適な自動利得制御ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は無線タグリーダライタの構成を示すブロック図で、この無線タグリーダライタは、アンテナ1、このアンテナ1に接続し送信波と受信波を分離するサーキュレータ2、このサーキュレータ2にそれぞれ接続した受信部3及び送信部4を設けている。前記受信部3は、直交復調器31、可変利得増幅器32及びA/D変換器33によって構成されている。
【0011】
また、前記無線タグリーダライタは、前記受信部3の直交復調器31と送信部4に復調、変調のための周波数信号を共通に供給するローカル発振器5、AGC(自動利得制御)手段6を含む制御部7、前記AGC手段6のデジタル出力をアナログに変換して前記可変利得増幅器32に出力するD/A変換器8、前記制御部7から出力される送信データをD/A変換して前記送信部4に送出するD/A変換器9を設けている。なお、前記AGC手段6は前記受信部3の可変利得増幅器32の自動利得制御を行う制御手段を構成している。
【0012】
この無線タグリーダライタは、受信時においては、無線タグ(図示せず)からバックスキャッタされた信号を前記アンテナ1で受信すると、前記サーキュレータ2を通り、前記受信部3に入力される。前記受信部3では、信号を直交復調器31に取り込む。直交復調器31にはローカル発振器5から送信周波数と同一の周波数の信号が入力される。これにより、前記直交復調器31は、受信信号を直交復調してベースバンド信号のI,Q信号を出力し、次段の可変利得増幅器32に供給する。
【0013】
前記可変利得増幅器32は、入力するベースバンド信号I,Qを所望のレベルに増幅してI′,Q′信号を出力し、次段のA/D変換器33に供給する。前記A/D変換器33は、入力するI′,Q′信号をデジタルのI″,Q″信号に変換して前記制御部7に供給する。
【0014】
前記制御部7は、ベースバンド処理を行い、入力されたデジタルベースバンド信号I″,Q″から受信データを生成する。また、同時にAGC手段6において、受信に最適な利得となるように、前記可変利得増幅器32の利得を制御するための信号を出力する。
【0015】
次に、前記制御部7のAGC手段6によるAGC制御について説明する。
図2は、無線タグリーダライタ(R)と無線タグ(T)の通信におけるコマンドのやりとりのタイミングを示したものである。R→Tは、無線タグリーダライタ(R)が無線タグ(T)にコマンドを送出するステート、T→Rは、無線タグ(T)が無線タグリーダライタ(R)に応答を返すステートを示している。
【0016】
無線タグリーダライタ(R)は、コマンドを送出する前に、無線タグ(T)に対して電力を供給するため無変調波(CW)を送出する。その後、コマンド(1)を送出する。コマンド(1)を送出した後、無線タグリーダライタ(R)は受信動作に入るが、引き続き無線タグ(T)に対しては電力を供給するため無変調波(CW)を送出する。
無線タグ(T)は、コマンド(1)を受信すると、規格時間であるT1時間経過後に応答(1)を返す。
引き続き無線タグリーダライタ(R)がコマンド(2)を送出する場合には、無線タグ(T)の応答(1)が終了してから規格時間であるT2時間経過後にコマンド(2)を送出する。無線タグ(T)は、コマンド(2)を受信すると、コマンド(1)の場合と同様に、T1時間経過後にコマンド(2)に対する応答(2)を返す。
【0017】
ここで、規格時間であるT1やT2は、国際的な標準規格となりつつある、EPC globalのClass-1 Generation-2(以降、GEN2と称する。)においては、40kbpsの通信速度の場合、
T1=238μsec(最小)、250μsec(標準)、262μsec(最大)
T2= 75μsec(最小)、500μsec(最大)
と規定されている。
【0018】
このように、無線タグリーダライタ(R)がコマンドを送出してから無線タグ(T)が応答を返すまでの時間T1が規定されているため、この規定を利用して無線タグリーダライタ特有のAGCを行う。
【0019】
図3は無線タグ(T)が応答を返すときに、データの先頭に付けるプリアンブルを示したものである。GEN2では、“1010V1”というパターンの前に12個の‘0’の連続を付加するように規定されている。なお、ここではFM0による符号化を採用している。FM0の‘0’は“10”及び“01”、FM0の‘1’は“00”及び“11”で表現される。
GEN2では、12個の‘0’の連続を付加しない“1010V1”というパターンのみのプリアンブルも可能とされているが、ここでは、AGCにより利得制御を行うので、12個の‘0’の連続を付加したプリアンブルを使用し、AGCは12個の‘0’の連続の部分で実施する構成になっている。
【0020】
図4は制御部7のAGC手段6が実行するAGCプログラムを示している。
S1にて、T→Rのステート(無線タグリーダライタ(R)が受信状態)になったことを判定すると、S2にて、前記可変利得増幅器32のAGC値をあらかじめ定められた値Aに設定する。そして、S3にて、一定時間Ta待つ。ここで一定時間Taは規格時間T1の最小値(238μsec)以下の時間、例えば、Ta=220μsecに設定している。
【0021】
Ta時間が経過すると、S4にて、受信信号の振幅を所定時間Tb計測する(計測手段)。例えば、40kbpsの場合、12個の連続‘0’に相当する時間は、(1/40k)*12=25μsec*12=300μsecになるので、Tb=300μsecに設定する。
なお、Tb=300μsecに設定することは必須ではなく、300μsecよりも大きくても小さくてもよく、要は、Tb間に受信信号の振幅計測を完了することができれば良い。
【0022】
この受信信号の振幅の計測値をもとに、S5にて、受信AGC値Bを決定し、前記可変利得増幅器32のAGC値を値Aから値Bに変更する。当然であるが、振幅が大きければAGC値Bは小さい値、逆に振幅が小さければAGC値Bは大きい値となる。AGC値Bの決定方法については、例えば、振幅値と設定用のAGC値Aを対応付けたテーブルを予め用意しておき、所定時間Tbにて計測した振幅の最大値からAGC値Bを決定する。
【0023】
そして、AGC値Bを無線タグリーダライタ(R)が受信状態にあるステート(T→R)の間保持し、S6にて、ステートがR→Tに切り替わると、それを判定してこのAGC処理を終了する。
【0024】
なお、無線タグ(T)の応答が完了した後もAGC値をそのまま保持してもよいが、例えば、無線タグリーダライタ(R)から無線タグ(T)への送信状態となればAGCは不要であるためAGC値を0または最小とし、キャリアセンス状態であればAGC値を最大とするようにしてもよい。
【0025】
図5はAGC動作に伴う、受信信号I′またはQ′の振幅の変化の一例を示したものである。I′、Q′は可変利得増幅器32から出力されるベースバンド信号である。AGC手段6は、図5に示すように、無線タグ(T)が応答を送信するステートT→Rの区間になると、予め設定されたAGC値Aを可変利得増幅器32に設定する。そして、一定時間Taが経過すると所定時間Tb、信号の振幅を計測し、所定時間Tbが経過すると、計測値に基づいてAGC値をBに設定する。すなわち、AGC値を値Aから値Bに変更する。
【0026】
このように、無線タグリーダライタ(R)は、無線タグ(T)からの応答を受信できる状態にあるステートT→Rの区間において、一定時間Taの経過後の所定時間Tb、無線タグ(T)からの信号の振幅を計測することで、無線タグからの応答の先頭に付けられるプリアンブルにおける12個の連続‘0’が継続する時間で振幅を計測し、計測値に基づいたAGC値Bが設定されることになる。続く、“1010V1”というパターンにおいては、すでに正しくAGC値が設定されているため、“1010V1”というパターンの受信を正しく行うことができる。
これにより、無線タグリーダライタ(R)は、無線タグ(T)に対して送信と受信を同時に行いつつ無線タグとの通信に対して最適な自動利得制御ができる。
【0027】
(第2の実施の形態)
なお、この実施の形態においてもハード構成は図1と同じである。異なる点は、制御部7のAGC手段6が実行するAGCプログラムである。すなわち、前記AGC手段6は、図6に示すAGCプログラムを実行する。
【0028】
先ず、S11にて、T→Rのステート(無線タグリーダライタ(R)が受信状態)になったことを判定すると、S12にて、前記可変利得増幅器32のAGC値をあらかじめ定められた値A1に設定する。そして、S13にて、一定時間Ta待つ。ここで一定時間Taは規格時間T1の最小値(238μsec)以下の時間、例えば、Ta=220μsecに設定している。
【0029】
Ta時間が経過すると、S14にて、受信信号の振幅を所定時間Tb′計測する(第1の計測手段)。例えば、40kbpsの場合、12個の連続‘0’に相当する時間は、(1/40k)*12=25μsec*12=300μsecになるので、Tb′としては300μsecの半分の150μsecに設定する。
【0030】
そして、S15にて、受信信号の振幅の計測値が所定値以下か否かを判定し、所定値以下であれば、S16にて、前述した実施の形態と同様に、計測値に基づいてAGC値Bを決定し、可変利得増幅器32のAGC値を予め設定した値A1から値Bに変更する。なお、このとき設定されるAGC値Bは、当然ながら振幅が大きければ小さい値、逆に振幅が小さければ大きい値となる。AGC値Bの決定方法については、例えば、振幅値と設定用のAGC値A1を対応付けたテーブルを予め用意しておき、所定時間Tb′にて計測した振幅の最大値からAGC値Bを決定する。
【0031】
そして、AGC値Bを無線タグリーダライタ(R)が受信状態にあるステート(T→R)の間保持し、S17にて、ステートがR→Tに切り替わると、それを判定してこのAGC処理を終了する。
【0032】
また、S15にて、受信信号の振幅の計測値が所定値を超えていることを判定すると、S18にて、可変利得増幅器32に予め設定するAGC値をA1からA2(<A1)に変更して可変利得増幅器32の利得を小さくする。そして、S19にて、受信信号の振幅を所定時間Tc計測する(第2の計測手段)。この時の所定時間Tcは、Tb=Tb′+Tcとなるように、Tc=150μsecに設定している。
【0033】
そして、S20にて、計測値に基づいてAGC値Cを決定し、可変利得増幅器32のAGC値を値A2から値Cに変更する。なお、このとき設定されるAGC値Cは、当然ながら振幅が大きければ小さい値、逆に振幅が小さければ大きい値となる。AGC値Cの決定方法については、例えば、振幅値と設定用のAGC値A2を対応付けたテーブルを予め用意しておき、所定時間Tcにて計測した振幅の最大値からAGC値Cを決定する。
【0034】
そして、AGC値Cを無線タグリーダライタ(R)が受信状態にあるステート(T→R)の間保持し、S21にて、ステートがR→Tに切り替わると、それを判定してこのAGC処理を終了する。
【0035】
なお、無線タグ(T)の応答が完了した後もAGC値をそのまま保持してもよいが、例えば、無線タグリーダライタ(R)から無線タグ(T)への送信状態となればAGCは不要であるためAGC値を0または最小とし、キャリアセンス状態であればAGC値を最大とするようにしてもよい。
【0036】
図7はAGC動作に伴う、受信信号I′またはQ′の振幅の変化の一例を示したものである。I′、Q′は可変利得増幅器32から出力されるベースバンド信号である。AGC手段6は、図7に示すように、無線タグ(T)が応答を送信するステートT→Rの区間になると、予め設定されたAGC値A1を可変利得増幅器32に設定する。そして、一定時間Taが経過すると所定時間Tb′、信号の振幅を計測し、計測値が所定値を超えていることを判定して可変利得増幅器32に設定するAGC値をA1からA2に変更する。そして、信号の振幅を計測し、所定時間Tcが経過すると、計測値に基づいてAGC値Cを設定する。すなわち、AGC値を値A2から値Cに変更する。
【0037】
このように、無線タグリーダライタ(R)は、無線タグ(T)からの応答を受信できる状態にあるステートT→Rの区間において、一定時間Taの経過後に無線タグ(T)からの信号の振幅を計測するが、ここで計測値が所定値を超えるように大きいときには、可変利得増幅器32に設定するAGC値をA1からA2に低下させ、この状態で再度無線タグ(T)からの信号の振幅を計測する。そして、計測値に基づいてAGC値Cが設定される。
【0038】
そして、これらの一連の計測は、無線タグからの応答の先頭に付けられるプリアンブルにおける12個の連続‘0’が継続する時間内で行われ、続く、“1010V1”というパターンの開始時点では計測値に基づいたAGC値Cが設定されることになる。
これにより、無線タグリーダライタ(R)は、無線タグ(T)に対して送信と受信を同時に行いつつ無線タグとの通信に対して最適な自動利得制御ができる。しかも、無線タグ(T)からの応答を受信するときのダイナミックレンジを広くすることができる。
【0039】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、リーダライタを例示して説明したが、これをライタ機能が無いリーダ専用機で本発明を実現しても良い。すなわち、電波の吸収と反射を利用したバックスキャッタ方式により無線タグと通信を行う無線タグリーダにおいて、前記無線タグから受信信号の受信を行う受信部と、前記受信部が受信した受信信号の振幅を計測する計測手段と、前記無線タグに対してコマンドの送信を行う送信部が前記無線タグに対するコマンドの送出を完了すると、一定時間Taの経過後、所定時間前記計測手段による振幅の計測を行わせ、計測した振幅値に基づいて前記受信部の自動利得制御を行う制御手段と、備えた無線タグリーダで本発明を実現しても良い。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、振幅の計測では最大値を利用したが、平均値を利用しても良い。
【0040】
(第3の実施の形態)
この実施の形態は、無線タグリーダライタ(R)が無線タグ(T)からデータを読取るときのリードシーケンスと、無線タグリーダライタ(R)が無線タグ(T)に対してデータを書き込むときのライトシーケンスの両方を実行する場合について述べる。なお、この実施の形態においてもハード構成は図1と基本的には同じで、異なる点は図中点線のブロックで示すメモリ10を設けた点にある。
【0041】
GEN2においては、図2に示すタイミング図の他に、ライトシーケンスとして、図8に示すタイミングが規定されている。これは、無線タグリーダライタ(R)が送出するコマンドWに対して、無線タグ(T)が応答する時間は、最大20msecかかるというものである。ここで、コマンドWは、Write、Kill、Block Write、Block Eraseの各ライト系コマンドとなっている。20msecという時間は、図2におけるT1時間と比べると非常に大きい。
【0042】
そこで、ライト系コマンドを実行する無線タグリーダライタ(R)の制御部7のAGC手段6は、コマンドがリード系コマンドかライト系コマンドを判別する判別手段を有し、無線タグリーダライタ(R)が無線タグ(T)に対して送出するコマンドが、リード系かライト系かを判別する。そして、リード系コマンドの送出時に計測によって設定したAGC値を前記メモリ10に記憶し、ライト系コマンドの送出時には、このコマンドに対する無線タグ(T)の応答に対してはAGC動作を行わず、直前のリード系コマンドに対する無線タグ(T)の応答時に設定したAGC値を前記メモリ10から読み出してライト系コマンドに対する応答時に使用するというものである。
【0043】
すなわち、ライト系コマンドを実行する制御部7のAGC手段6は、図9に示すAGCプログラムを実行する。先ず、S31にて、T→Rのステート(無線タグリーダライタ(R)が受信状態)になったことを判定すると、S32にて、無線タグリーダライタ(R)が無線タグ(T)に対して送出したコマンドがリード系コマンドかライト系コマンドかを判定する。
【0044】
無線タグ(T)に対して送出したコマンドがリード系コマンドのときには、S33にて、受信AGC値の算出処理を行う。この算出処理は、図4に示すS2からS4の処理、また、図6に示すS12からS15の処理と、S12からS15,S18,S19の処理のいずれか一方を行う。
【0045】
この算出処理の結果から、S34にて、受信AGC値Dを決定し、可変利得増幅器32のAGC値をDに変更する。そして、S35にて、このときのAGC値Dを前記メモリ10に記憶する。そして、S36にて、ステートがR→Tに切り替わると、それを判定してこのAGC処理を終了する。
【0046】
また、S32にて、無線タグリーダライタ(R)が無線タグ(T)に対して送出したコマンドがライト系コマンド、すなわち、Write、Kill、Block Write、Block Eraseのいずれかのコマンドであることを判定した場合には、S37にて、前記メモリ10に記憶されている直前のリード系コマンド時に使用したAGC値Dを読み出して可変利得増幅器32に設定する。そして、AGC値Dを無線タグリーダライタ(R)が受信状態にあるステート(T→R)の間保持し、S38にて、ステートがR→Tに切り替わると、それを判定してこのAGC処理を終了する。
【0047】
なお、無線タグ(T)の応答が完了した後もAGC値をそのまま保持してもよいが、例えば、無線タグリーダライタ(R)から無線タグ(T)への送信状態となればAGCは不要であるためAGC値を0または最小とし、キャリアセンス状態であればAGC値を最大とするようにしてもよい。
【0048】
このような構成とすることにより、ライト系コマンドを使用する無線タグリーダライタに対しても無線タグとの通信に対して最適な自動利得制御ができる。
【0049】
なお、前述した各実施の形態は通信速度が40kbpsの場合について述べたが、通信速度はこれに限定されるものではない。そして、通信速度が変わると、規格時間T1、一定時間Ta、所定時間Tb,Tb′,Tcの値も異なるのは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線タグリーダライタの構成を示すブロック図。
【図2】同実施の形態における無線タグリーダライタと無線タグの通信におけるコマンドのやりとりのタイミングを示す図。
【図3】同実施の形態における無線タグが応答を返すときに、データの先頭に付けるプリアンブルパターンを示す図。
【図4】同実施の形態における無線タグリーダライタの制御部のAGC手段が実行するAGCプログラムを示す流れ図。
【図5】同実施の形態において設定されるAGC値の変化と受信信号の振幅の変化を示す波形図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る無線タグリーダライタの制御部のAGC手段が実行するAGCプログラムを示す流れ図。
【図7】同実施の形態において設定されるAGC値の変化と受信信号の振幅の変化を示す波形図。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る無線タグリーダライタと無線タグの通信におけるライト系コマンドのやりとりのタイミングを示す図。
【図9】同実施の形態における無線タグリーダライタの制御部のAGC手段が実行するAGCプログラムを示す流れ図。
【符号の説明】
【0051】
3…受信部、4…送信部、32…可変利得増幅器、6…AGC手段、7…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の吸収と反射を利用したバックスキャッタ方式により無線タグと通信を行う無線タグリーダライタにおいて、
前記無線タグから受信信号の受信を行う受信部と、
前記受信部が受信した受信信号の振幅を計測する計測手段と、
前記無線タグに対してコマンドの送信を行う送信部が前記無線タグに対するコマンドの送出を完了すると、一定時間Taの経過後、所定時間前記計測手段による振幅の計測を行わせ、計測した振幅値に基づいて前記受信部の自動利得制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線タグリーダライタ。
【請求項2】
無線タグがコマンドを受信してから応答を返すまでの時間T1が規格により範囲が定められている場合に、一定時間Taを前記規格時間T1の最小時間以下に設定したことを特徴とする請求項1記載の無線タグリーダライタ。
【請求項3】
制御手段は、
計測した振幅値が所定値を超える場合には予め設定されている自動利得制御値を変更して所定時間計測手段による振幅の計測を再度行わせ、再度計測した振幅値に基づいて受信部の自動利得制御を行うことを特徴とする請求項1記載の無線タグリーダライタ。
【請求項4】
リード系コマンドを無線タグに対して送信したときに受信部に設定した自動利得制御値を記憶するメモリと、
制御手段は、ライト系コマンドを無線タグに対してコマンドを送信する場合には、直前のリード系コマンドを前記無線タグに対して送信したときに前記受信部に設定した自動利得制御値を前記メモリから読み出して前記受信部に再度設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載の無線タグリーダライタ。
【請求項5】
電波の吸収と反射を利用したバックスキャッタ方式により無線タグと通信を行う無線タグリーダライタにおいて、
前記無線タグに対して送信を行う送信部と、
前記無線タグに対して受信を行う受信部と、
前記受信部が受信した受信信号の振幅を計測する計測手段と、
リード系コマンドを前記無線タグに対して送信したときに前記受信部に設定した自動利得制御値を記憶するメモリと、
ライト系コマンドを無線タグに対して送信する場合には、直前のリード系コマンドを前記無線タグに対して送信したときに前記受信部に設定した自動利得制御値を前記メモリから読み出して前記受信部に再度設定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線タグリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−35231(P2008−35231A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206636(P2006−206636)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】