説明

無線タグリーダライタ

【課題】上位装置からコマンドや送信データを受けて無線タグと非接触通信を行いうる無線タグリーダライタにおいて、通信処理に要する時間を効果的に短縮しうる構成を提供する。
【解決手段】無線リーダライタ100は、上位装置100からの指示データを分割するデータ分割部と、分割された一方(コマンドデータ)に基づきコマンドに対応する通信設定条件をメモリ22から読み出すコマンド解析部31と、その通信設定条件を保持する設定条件保持部とを備えている。また、分割された他方(送信データ)が蓄積されるデータバッファ21から送信データを小サイズごとに順次要求するデータ要求部32と、保持される通信設定条件と、データバッファ21から出力された送信データとを取得してタグ送信フレームを生成するタグ送信フレーム生成部34と、そのタグ送信フレームを無線タグに送信する無線通信部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグリーダライタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、無線タグを用いた通信システムが生産現場、物流拠点などで広く提供されている。この種の通信システムでは、上位装置から無線タグリーダライタに対して各種指示を与えながら無線タグに対する読み取りや書き込みを行う場合も多く、このような技術に関する例としては例えば特許文献1のようなものが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−156570公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上位装置から指示を受けて無線タグと無線通信を行う構成の場合、処理時間の短縮化が課題となる。例えば、上位装置からサイズの大きいデータを取得して通信を行う場合、無線タグリーダライタが当該データを取得するまでに相当の時間がかかり、更に、取得データサイズが大きい場合には当該データを無線タグに対して一度に送信することはできず、複数回に分割して行う必要があるため、データ取得後の通信処理についても相応の時間を要することになる。また、通信処理に際しては、上位装置からの指示データに応じた各種設定が必要となり、当該設定処理も処理時間遅延の一因となりうる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、上位装置からコマンドや送信データを受けて無線タグと非接触通信を行いうる無線タグリーダライタにおいて、通信処理に要する時間を効果的に短縮しうる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上位装置から指示を受けて無線タグと無線通信を行う無線タグリーダライタであって、前記上位装置から、前記無線タグに対する命令を含んだコマンドデータと、前記無線タグに与えるべき送信データとを有する指示データを取得すると共に、当該指示データにおける前記コマンドデータと前記送信データとを分割するデータ分割部と、複数種類のコマンドに対応する通信設定条件データが記憶されるメモリと、前記データ分割部によって分割された前記コマンドデータを解析し、前記メモリから、当該コマンドデータのコマンドに対応する通信設定条件を読み出すコマンド解析部と、前記コマンド解析部によって読み出された前記通信設定条件を保持する設定条件保持部と、前記データ分割部にて分割された前記送信データを蓄積するデータバッファと、前記データバッファに蓄積される前記送信データを、小サイズごとに順次要求し、当該データバッファから出力させるデータ要求部と、前記設定条件保持部にて保持される前記通信設定条件と、前記データ要求部によって前記データバッファから出力された前記送信データとを取得し、前記無線タグに送信するタグ送信フレームを生成するタグ送信フレーム生成部と、前記タグ送信フレーム生成部にて生成された前記タグ送信フレームを前記無線タグに送信する無線通信部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の無線タグリーダライタにおいて、前記コマンド解析部は、前記コマンドデータに複数のコマンドが含まれる場合に、それら複数のコマンドに関する前記通信設定条件を読み出す構成をなしており、前記タグ送信フレーム生成部は、それら複数のコマンドについての前記タグ送信フレームを生成することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の無線タグリーダライタにおいて、前記タグ送信フレーム生成部が前記データバッファから小サイズ毎の前記送信データを取得して前記タグ送信フレームを生成し、前記無線通信部に出力する取得・生成処理と、前記データ分割部が前記指示データを分割して前記送信データを前記データバッファに蓄積する分割・蓄積処理とが並列処理で行われることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無線タグリーダライタにおいて、前記指示データは、データ先頭側に前記コマンドデータが配され、前記コマンドデータの後に前記送信データが配されたデータ構造をなしていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線タグリーダライタにおいて、前記データ分割部によって分割された前記送信データを、前記データバッファへの蓄積と共に、記憶手段にも記憶することを特徴とする。
【0011】
なお、本発明を、上位装置と、前記上位装置から指示を受けて無線タグと無線通信を行う無線タグリーダライタと、を有するリーダライタシステムとして把握することもできる。
このリーダライタシステムは、
前記上位装置が、前記無線タグリーダライタに対し、前記無線タグに対する命令を含んだコマンドデータをデータ先頭側に配置し、当該コマンドデータよりも後側に前記無線タグに与えるべき送信データを配置してなる指示データを送信する構成をなし、
前記無線タグリーダライタが、
前記上位装置からの前記指示データを取得し、前記コマンドデータと前記送信データとを分割するデータ分割部と、
複数種類のコマンドに対応する通信設定条件データが記憶されるメモリと、
前記データ分割部によって分割された前記コマンドデータを解析し、前記メモリから、当該コマンドデータのコマンドに対応する通信設定条件を読み出すコマンド解析部と、
前記コマンド解析部によって読み出された前記通信設定条件を保持する設定条件保持部と、
前記データ分割部にて分割された前記送信データを蓄積するデータバッファと、
前記データバッファに蓄積される前記送信データを、小サイズごとに順次要求し、当該データバッファから出力させるデータ要求部と、
前記設定条件保持部にて保持される前記通信設定条件と、前記データ要求部によって前記データバッファから出力された前記送信データとを取得し、前記無線タグに送信するタグ送信フレームを生成するタグ送信フレーム生成部と、
前記タグ送信フレーム生成部にて生成された前記タグ送信フレームを前記無線タグに送信する無線通信部と、
を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、上位装置から指示データを取得したときに、その指示データに含まれるコマンドデータと送信データとを分割している。このようにすると、コマンドデータと送信データとを別々に処理できるようになる。そして、分割された一方のコマンドデータについてはコマンド解析部によって解析しており、通信設定条件データが記憶されるメモリから、コマンドに対応する通信設定条件を読み出して保持している。一方、送信データについては、データバッファに蓄積し、小サイズごとに順次データ要求部に送信している。このようにすると、送信データをデータバッファへ蓄積する処理及び送信データをデータバッファから出力する処理が行われる前段階或いはこれら処理の最中に、これら処理とは別個独立してコマンド解析及び通信設定条件の設定を行うことができ、設定処理の迅速化を図ることができる。また、早期に通信設定条件を設定して保持する一方で、データバッファに蓄積される送信データを小サイズごとに順次出力しているため、タグ送信フレーム生成部側では、通信設定条件を読み取りつつ、順次送られる小サイズの送信データを含んだタグ送信フレームを生成し、無線タグと通信を行うことができる。従って、無線タグに送信フレームを送信して通信を行っている最中でも、上位装置からのデータ受信やデータバッファへの蓄積を独立して行うことができ、上位装置との通信において通信速度が遅かったり、上位装置からのデータ量が多い場合などにおいて極めて有利となる。
【0013】
請求項2の発明は、コマンドデータに複数のコマンドが含まれる場合に、コマンド解析部が、それら複数のコマンドに関する通信設定条件を読み出す構成をなしており、タグ送信フレーム生成部は、それら複数のコマンドについてタグ送信フレームを生成するように構成されている。このようにすると、指示データに複数のコマンドが含まれる場合に、それら複数のコマンドに対応する通信設定条件を迅速かつ適切に設定でき、複数のコマンドを用いた無線タグとの通信を、上位装置の介在や処理時間の遅延を抑えて良好に行うことができる。
【0014】
請求項3の発明では、タグ送信フレーム生成部がデータバッファから小サイズ毎の前記送信データを取得してタグ送信フレームを生成し、無線通信部に出力する取得・生成処理と、データ分割部が指示データを分割して送信データをデータバッファに蓄積する分割・蓄積処理とが並列処理で行われている。このようにすると、データバッファから小サイズのデータを順次取得して送信フレームを生成・出力する処理と、上位装置からの指示データを取得して分割し、データバッファに蓄積する処理とを同時期に行うことができるため、指示データの分割や送信データの蓄積が完了するのを待たずに順次送信フレームを生成・出力できるようになり、処理の一層の迅速化を図ることができる。
【0015】
請求項4の発明では、指示データのデータ先頭側にコマンドデータが配され、コマンドデータの後に送信データが配されている。このようにすると、データ先頭側にあるコマンドデータを早期に切り分けて解析を行うことができるため、タグ送信フレームの生成に不可欠な通信設定条件をより迅速に設定し保持しておくことができる。そして、上位装置から取得した送信データを複数回分けて送信する場合に、いずれの送信においても、通信設定条件をスムーズに用いることができる。
【0016】
請求項5の発明は、データ分割部によって分割された送信データを、データバッファへの蓄積と共に記憶手段にも記憶している。このようにすると、無線タグとの通信においてエラー等が生じた場合に、記憶手段に記憶された送信データを利用できるため、上位装置から送信データを再度取得する必要が無く、通信時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、第1実施形態に係る無線リーダライタの電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【図2】図2は、無線タグ処理部の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【図3】図3は、上位装置から送信される指示データのデータ構成を例示する説明図である。
【図4】図4は、図1の無線タグリーダライタで行われる各処理のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】図5は、図1の無線タグリーダライタ内で行われる各処理の流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の無線タグリーダライタを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(全体構成)
まず、図1、図2を参照して全体構成について概説する。なお、図1は、第1実施形態に係る無線リーダライタの電気的構成を概略的に例示するブロック図である。図2は、無線タグ処理部の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【0019】
図1に示す無線リーダライタ1は、例えばICカードやその他のRFIDタグと非接触通信を行うRFIDリーダライタとして構成されるものである。この無線リーダライタ1は、上位装置100と通信可能に接続され、当該上位装置100と共にリーダライタシステムを構成しており、上位装置100からの指示データを受けて当該指示データに応じた非接触通信を行う構成をなしている。なお、上位装置100は、無線タグリーダライタ1と通信可能な情報処理装置であればよく、例えばパーソナルコンピュータなどによって構成されている。
【0020】
図1に示すように、無線リーダライタ1には、制御部20、データバッファ21、メモリ22、データ処理部30、無線タグ処理部2などが設けられている。
制御部20は、情報処理機能を有する部分であり、例えばCPUなどからなり、各種情報処理を行うように構成されている。この制御部20は、図示しない通信インターフェースを介して上位装置100と接続されており、上位装置100から指示データが出力されたときに、この指示データを取得するように構成されている。
【0021】
データバッファ21は、RAM等の半導体メモリによって構成されており、制御部20が上位装置100から受信した受信データ(指示データ)の一部を蓄積するように機能している。
【0022】
メモリ22は、例えば、ROM,EEPROM等の半導体メモリによって構成されており、読み出し可能なデータ(後述するコマンド毎の通信設定条件等)を保持している。
【0023】
データ処理部30は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)などの情報処理回路によって構成されており、機能部として、コマンド解析部31、データ要求部32、送信フレーム生成用設定レジスタ33、タグ送信フレーム生成部34などを備えている。このデータ処理部30は、制御部20が上位装置100から受信したデータに対して各種データ処理を行なうように構成されており、タグ送信フレームを生成して無線タグ処理部2に出力するように機能している。なお、データ処理部30の具体的構成は後述する。
【0024】
無線タグ処理部2は、公知の無線タグとの間で非接触通信を行う部分であり、例えば図2のように構成されている。図2の構成では、送信側を構成する回路として、キャリア発振器3、増幅器4、送信部フィルタ5、符号化部6、変調部7、整合回路13などが設けられている。また、受信側には、受信部フィルタ8、増幅器9、復調部10、二値化処理部11、複号化部12が設けられている。
【0025】
符号化部6は、データ処理部30のタグ送信フレーム生成部34から出力されるタグ送信フレームを符号化して変調部7に出力する構成をなしている。変調部7は、キャリア発振器3より出力される例えば周波数950MHzのキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部6より出力される符号化された送信符号(変調信号)によってASK(Amplitude Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、増幅器4に出力する。なお、キャリア発振器3の発振動作の動作/停止は、図示しないCPUによって制御されるようになっている。
【0026】
増幅器4は、入力信号(変調部7によって変調された被変調信号)を所定のゲインで増幅する構成をなしており、その増幅信号を送信部フィルタ5に出力する。送信部フィルタ5は、フィルタリングした送信信号を、整合回路13を介してアンテナ15に出力する。このようにしてアンテナ15に送信信号が出力されると、その送信信号が電磁波として当該アンテナ15より外部に放射される。
【0027】
一方、アンテナ15を介して受信された信号は受信部フィルタ8によってフィルタリングされた後、増幅器9によって増幅され、復調部10に与えられて復調される。その復調された信号波形は二値化処理部11において二値化され、その後、復号化部12において復号化される。そして、復号化された受信データはCPU(図示略)に出力される。なお、無線タグ処理部2は、「無線通信部」の一例に相当する。
【0028】
(タグ送信フレームの生成処理)
次に、本実施形態の特徴の一つであるタグ送信フレームの生成処理について説明する。なお、図3は、上位装置から送信される指示データのデータ構成を例示する説明図であり、図4は、図1の無線タグリーダライタで行われる各処理のタイミングを示すタイミングチャートである。また、図5は、図1の無線タグリーダライタ内で行われる各処理の流れを説明する説明図である。
【0029】
まず、図3を参照して上位装置100から送信される指示データについて説明する。
上述したように、無線タグリーダライタ1は、上位装置100から指示を受けて無線タグ(図示略)と無線通信(非接触通信)を行う構成をなしており、上位装置100から例えば図3のような指示データを取得している。
【0030】
この指示データは、無線タグに対する命令を含んだコマンドデータ(コマンド部)と、無線タグに与えるべき送信データ(データ部)とが含まれており、データ先頭側にコマンドデータが配され、コマンドデータの後に送信データが配されたデータ構造をなしている。図4のタイミングチャートに示すように、上位装置100から無線タグリーダ1への指示データの送信に際しては、まずコマンドデータ(コマンド部)が送信され、その後、送信データ(データ部)が順次送信されるようになっている。
【0031】
図3に示すように、コマンドデータ(コマンド部)は、「コマンド」、「外部メモリアドレス」、「可変設定」、「データ長」などを含んでいる。「コマンド」部分は、無線タグに与えるべきコマンドであり、例えば、「リクエストコマンド」「照合コマンド」「読み取りコマンド」「書き込みコマンド」等の様々なコマンドが該当する。
【0032】
また、「外部メモリアドレス」は、メモリ22の特定領域のアドレスを示すものである。本実施形態では、上記メモリ22において、各コマンドに対応する通信設定条件がそれぞれ記憶されており、図3に示す指示データ内の「外部メモリアドレス」では、メモリ22における、当該指示データの「コマンド」に対応する通信設定条件が記憶される記憶位置のアドレスを示している。従って、この「外部メモリアドレス」を読み取れば、指示データの「コマンド」に対応する通信設定条件をメモリ22から読み出すことができる。
【0033】
また、「可変設定」は、コマンドに応じてメモリ22から読み出される「通信設定条件」以外の各種設定を示すデータである。本実施形態では、指示データについての通信処理で用いるべき一部のパラメータを、メモリ22内のデータを用いて設定しており、他のパラメータを、予め「可変設定」として指示データ内に含ませている。「可変設定」は、各コマンド毎に固定できないような設定(例えば、通信レートや応答信号に応じて定めるべき設定等)が含まれている。また「データ長」は、送信データ(データ部)の長さを示すデータであり、この「データ長」についてもコマンド部に含ませている。
【0034】
コマンド部の後に配される送信データ(データ部)は、無線タグに与えるべきデータによって構成されている。例えば、「コマンド」が無線タグへの所定データの書き込みを指示するものであれば、送信データ(データ部)には、当該書込コマンドで書き込むべきデータが配置されることになる。また、「コマンド」が外部認証コマンドなどであれば、認証用のデータなどが配置される。
【0035】
次に、図1等を参照し、上記指示データ(図3)を用いて行われるタグ送信フレームの生成処理について詳述する。本実施形態では、上記指示データが上位装置100から無線タグリーダライタ1に送られたとき、まず制御部20がこの指示データを受信する。制御部20は指示データを受信したとき、当該指示データをコマンドデータ(コマンド部)と、送信データ(データ部)とに分割する。なお、分割の方法は様々に考えられるが、例えば、指示データ内に、コマンドデータと送信データとの境界を示す境界情報(例えば特定データからなるセパレータ)を付しておき、制御部20が境界情報を検出して指示データをコマンドデータと送信データに分割するといった方法が考えられる。なお、本実施形態では、制御部20が「データ分割部」の一例に相当する。
【0036】
図5の説明図にも示すように、制御部20で分割されたコマンドデータ及び送信データは、無線タグリーダライタ1の内部において、それぞれ別個に処理されるようになっている。例えば、一方のコマンドデータ(コマンド部)は、図1に示すコマンド解析部31に出力され、当該コマンド解析部31にてデータ内容の解析が行われる。また、他方の送信データ(データ部)については、データバッファ21に出力され、当該データバッファ21に順次蓄積されるようになっている。
【0037】
まず、制御部20によって分割されたコマンドデータ(コマンド部)に対する処理について説明すると、コマンド解析部31は、制御部20からコマンドデータを取得すると、その取得したコマンドデータに含まれる「外部メモリアドレス」を検出し、メモリ22から、当該コマンドデータの「コマンド」に対応する通信設定条件を読み出す処理を行う。コマンド解析部31にて読み込みを行うメモリ22には、無線リーダライタ1で用いられる複数種類のコマンドについて、各コマンドに対応する通信設定条件がそれぞれ記憶されており、コマンド解析部31では、制御部20から取得したコマンドデータに含まれるコマンドに対応する通信設定条件をメモリ22から読み込み、これを送信フレーム生成用設定レジスタ33に記憶して保持する。具体的には、上述したように、コマンドデータ(コマンド部)において「コマンド」に対応する通信設定条件の記憶領域を示す「外部メモリアドレス」が記憶されており、コマンド解析部31は、メモリ22内の当該記憶領域(「外部メモリアドレス」によって特定される記憶領域)から「コマンド」に対応する通信設定条件を読み出す。
【0038】
なお、メモリ22に記憶される各コマンド毎の通信設定条件については、無線タグとの非接触通信で用いられる公知の通信設定条件であればいずれの種類も採用でき、またその数も特に限定されない。例えば、本実施形態では、誤り訂正の方法がコマンド毎に異なっており、メモリ22には、通信設定条件として、各コマンド毎に誤り訂正条件が定められて記憶されている。例えば、あるコマンドについては、誤り訂正条件が、特定のCRC(Cyclic Redundancy Check)方式で定められ、他のコマンドについては、それとは異なるCRC方式で定められるといった具合に、各コマンド毎に誤り訂正条件が定められている。従って、コマンド部を取得してコマンドが特定されれば、メモリ22から当該コマンドに対応する誤り訂正条件を読み出すことができるようになっている。
【0039】
また、本実施形態では、コマンド毎に、FPGA内のデータ処理で用いるべき設定値(例えば、FPGA内で扱う端数ビットの値をいくつにするか等)が定められており、メモリ22には、コマンドと対応付けられた形で各設定値が記憶されている。従って、コマンド部を取得してコマンドが特定されれば、メモリ22から当該コマンドに対応する設定値を読み出すことができる。
【0040】
コマンドに応じてメモリ22から読み出される通信設定条件(例えば、コマンドに対応する誤り訂正条件や設定値等)は、図1に示す送信フレーム生成用設定レジスタ33に記憶される。この送信フレーム生成用設定レジスタ33は、メモリ22から読み出される各種通信設定条件を保持しており、当該保持内容は、タグ送信フレーム生成部34によって読み出され、タグ送信フレームの生成に用いられるようになっている。なお、送信フレーム生成用設定レジスタ33は、「設定条件保持部」の一例に相当している。
【0041】
更に、コマンド解析部31は、コマンドデータに含まれる上述の「可変設定」についても送信フレーム生成用設定レジスタ33に記憶する。従って、送信フレーム生成用設定レジスタ33には、メモリ22から読み出された「通信設定条件」と、予めコマンドデータに含まれている「可変設定」とが記憶され保持されることになる。
【0042】
本実施形態では、図4に示すように、上位から指示データが送られたとき、送信データ(データ部)の受信完了を待たずに分割すべきコマンドデータ(コマンド部)を早期にコマンド解析部31に送信しており、コマンドデータ(コマンド部)の受信が完了し、送信データ(データ部)の受信が開始されたときに、コマンドデータと送信データとの境界を検出して分割し、送信データについてはデータバッファ21に出力するようにしている。従って、コマンドデータは送信データよりも早期にコマンド解析部31に送られることになり、「コマンド」に対応する通信設定条件や、可変設定をより早期に送信フレーム生成用設定レジスタ33に設定し、保持できるようになっている。
【0043】
次に、データ要求部32によるデータ取得について説明する。
図1に示す無線タグリーダライタ1では、制御部20からコマンド解析部31にコマンドデータ(コマンド部)が出力された後、コマンド解析部31が当該コマンドデータから「コマンド」「データ長」の部分を検出し、これをデータ要求部32に出力している。データ要求部32内にはレジスタが設けられており、コマンド解析部31から出力される「コマンド」及び「データ長」はこのレジスタに記憶されるようになっている。
【0044】
データ要求部32は、データバッファ21に蓄積される送信データ(データ部)を、小サイズごとに順次要求し、小サイズの各データを当該データバッファ21から順次出力させるように機能しており、具体的には、データ解析部31から取得した「コマンド」及び「データ長」に基づいて、データバッファ21から一回の取得処理で読み込むべきデータ量と、読み出しタイミングとを決定している。一回の取得処理で読み込むデータ量(図4に示す設定データ長)の決定方法は様々に考えられ、例えば、コマンド毎に一回の取得処理で読み込むデータ量を予め定めておき、コマンド解析部31から取得する「コマンド」に対応するサイズに設定するようにしてもよい。或いは、コマンドデータのデータサイズに応じて一回の取得処理で読み込むデータ量を定める構成とし、コマンド解析部31から取得した「データ長」に基づいて一回の取得処理で読み込むデータ量を決定してもよい。
【0045】
また、読み出しタイミングの決定方法も様々に考えられ、前回のデータ取得(データバッファ21からの小サイズのデータ(送信データの一部)の取得)から所定期間経過した後に、データバッファ21から次回のデータを取得するようにしてもよく、データバッファ21から取得した前回のデータについてのタグ通信完了直後、或いはタグ通信が完了した後、一定期間経過後にデータバッファ21から次回のデータを取得するようにしてもよい。
【0046】
データ要求部32の要求に応じてデータバッファ21から出力されるデータ(小サイズのデータ)は、タグ送信フレーム生成部34によって取得される。図4に示すように、タグ送信フレーム生成部34は、データバッファ21から出力される小サイズのデータを順次取得し、それら取得する小サイズのデータ毎に、無線タグへ送信するデータフレーム(タグ送信フレーム)を生成している(図4の「データバッファからタグ送信フレーム生成部への通信」を参照)。また、小サイズの各データについてタグ送信フレームを生成する際には、その都度、送信フレーム設定レジスタ33に記憶される通信設定条件や可変設定を読み出しており、これらデータ(小サイズのデータ)、通信設定条件、可変設定に基づいて公知の方法でタグ送信フレームを生成している。また、生成されるタグ送信フレームは、無線タグ処理部2に出力され、この無線タグ処理部2によって無線タグに送信される(図4のタグ通信を参照)。このようにして、小サイズのデータ(設定データ長のデータ)毎のタグ通信が可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、上位装置100から送信される指示データに複数のコマンドが含まれる場合、コマンド解析部31が、それら複数のコマンドにそれぞれ対応する通信設定条件をメモリ22から読み出し、それら通信設定条件を、送信フレーム生成用設定レジスタ33に設定している。例えば、指示データにコマンドAとコマンドBとが含まれる場合、コマンド解析部31は、メモリ22からコマンドAに対応する通信設定条件Aと、コマンドBに対応する通信設定条件Bとを読み出し、送信フレーム設定レジスタ33に通信設定条件A及びBを記憶する。例えば、コマンドAについてタグ送信フレームを生成し、その後(例えば無線タグと通信を行ってから)コマンドBを実行する場合、タグ送信フレーム生成部34は、まず、コマンドAを実行するタグ送信フレームを生成する際には、そのコマンドAに対応する通信設定条件Aを送信フレーム生成用設定レジスタ33から読み出してタグ送信フレームを生成し、無線タグ処理部2に出力する。同様に、コマンドBを実行するタグ送信フレームを生成する際には、コマンドBに対応する通信設定条件Bを信フレーム生成用設定レジスタ33から読み出してタグ送信フレームを生成し、無線タグ処理部2に出力する。
【0048】
(本実施形態の主な効果)
本実施形態の無線タグリーダ1では、上位装置100から指示データを取得したときに、その指示データに含まれるコマンドデータと送信データとを分割している。このようにすると、コマンドデータと送信データとを別々に処理できるようになる。そして、分割された一方のコマンドデータについてはコマンド解析部31によって解析しており、通信設定条件データが記憶されるメモリ22から、コマンドに対応する通信設定条件を読み出して保持している。一方、送信データについては、データバッファ31に蓄積し、小サイズごとに順次データ要求部に送信している。このようにすると、送信データをデータバッファ31へ蓄積する処理及び送信データをデータバッファ31から出力する処理が行われる前段階或いはこれら処理の最中に、これら処理とは別個独立してコマンド解析及び通信設定条件の設定を行うことができ、設定処理の迅速化を図ることができる。また、早期に通信設定条件を設定して保持する一方で、データバッファ31に蓄積される送信データを小サイズごとに順次出力しているため、タグ送信フレーム生成部34側では、通信設定条件を読み取りつつ、順次送られる小サイズの送信データを含んだタグ送信フレームを生成し、無線タグと通信を行うことができる。従って、無線タグに送信フレームを送信して通信を行っている最中でも、上位装置100からのデータ受信やデータバッファ31への蓄積を並行して行うことができ、上位装置100との通信において通信速度が遅かったり、上位装置100からのデータ量が多い場合などにおいて極めて有利となる。
【0049】
また、コマンドデータに複数のコマンドが含まれる場合には、コマンド解析部31が、それら複数のコマンドに関する通信設定条件を読み出しており、タグ送信フレーム生成部34は、それら複数のコマンドについてタグ送信フレームを生成するように構成されている。このようにすると、指示データに複数のコマンドが含まれる場合に、それら複数のコマンドに対応する通信設定条件を迅速かつ適切に設定でき、複数のコマンドを用いた無線タグとの通信を、上位装置100の介在や処理時間の遅延を抑えて良好に行うことができる。
【0050】
また、タグ送信フレーム生成部34がデータバッファ21から小サイズ毎の送信データを取得してタグ送信フレームを生成し、無線タグ処理部2に出力する取得・生成処理と、制御部20(データ分割部)が指示データを分割して送信データをデータバッファ21に蓄積する分割・蓄積処理とが並列処理で行われている。このようにすると、データバッファ21から小サイズのデータを順次取得して送信フレームを生成・出力する処理と、上位装置100からの指示データを取得して分割し、データバッファ21に蓄積する処理とを同時期に行うことができるため、指示データの分割や送信データの蓄積が完了するのを待たずに順次送信フレームを生成・出力できるようになり、処理の一層の迅速化を図ることができる。
【0051】
また、指示データのデータ先頭側にコマンドデータが配され、コマンドデータの後に送信データが配されている。このようにすると、データ先頭側にあるコマンドデータを早期に切り分けて解析を行うことができるため、タグ送信フレームの生成に不可欠な通信設定条件をより迅速に設定し保持しておくことができる。そして、上位装置100から取得した送信データを複数回分けて送信する場合に、いずれの送信においても、通信設定条件をスムーズに用いることができる。
【0052】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
上記実施形態では、制御部20で分割された送信データをデータバッファ21に蓄積していたが、分割された送信データを、データバッファ21への蓄積と共に、他の記憶部(例えば、メモリ22、或いは無線タグリーダライタ1内に設けられるその他の記憶部)に記憶しておくようにしてもよい。このようにすると、無線タグとの通信においてエラー等が生じた場合に、データバッファ21から出力済みのデータを再度上位装置100から取得し直す必要が無く、メモリ22或いはその他の記憶部に記憶された送信データを利用できるため、通信時間の短縮化を図ることができる。
【0054】
上記実施形態では、指示データ内のコマンド部においてコマンドに対応する「外部メモリアドレス」が含まれており、コマンド解析部31では、この「外部メモリアドレス」を参照していたが、コマンドデータ内の「コマンド」に対応する通信設定条件を読み出しうる構成であればよく、例えば、コマンド解析部31が指示データ内の「コマンド」に基づいてメモリ22を検索し、「コマンド」に対応する通信設定条件を読み出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…無線タグリーダ
20…制御部(データ分割部)
21…データバッファ
22…メモリ
31…コマンド解析部
33…送信フレーム生成用設定レジスタ(設定条件保持部)
34…タグ送信フレーム生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から指示を受けて無線タグと無線通信を行う無線タグリーダライタであって、
前記上位装置から、前記無線タグに対する命令を含んだコマンドデータと、前記無線タグに与えるべき送信データとを有する指示データを取得すると共に、当該指示データにおける前記コマンドデータと前記送信データとを分割するデータ分割部と、
複数種類のコマンドに対応する通信設定条件データが記憶されるメモリと、
前記データ分割部によって分割された前記コマンドデータを解析し、前記メモリから、当該コマンドデータのコマンドに対応する通信設定条件を読み出すコマンド解析部と、
前記コマンド解析部によって読み出された前記通信設定条件を保持する設定条件保持部と、
前記データ分割部にて分割された前記送信データを蓄積するデータバッファと、
前記データバッファに蓄積される前記送信データを、小サイズごとに順次要求し、当該データバッファから出力させるデータ要求部と、
前記設定条件保持部にて保持される前記通信設定条件と、前記データ要求部によって前記データバッファから出力された前記送信データとを取得し、前記無線タグに送信するタグ送信フレームを生成するタグ送信フレーム生成部と、
前記タグ送信フレーム生成部にて生成された前記タグ送信フレームを前記無線タグに送信する無線通信部と、
を備えたことを特徴とする無線タグリーダライタ。
【請求項2】
前記コマンド解析部は、前記コマンドデータに複数のコマンドが含まれる場合に、それら複数のコマンドに関する前記通信設定条件を読み出す構成をなしており、
前記タグ送信フレーム生成部は、それら複数のコマンドについての前記タグ送信フレームを生成することを特徴とする請求項1に記載の無線タグリーダライタ。
【請求項3】
前記タグ送信フレーム生成部が前記データバッファから小サイズ毎の前記送信データを取得して前記タグ送信フレームを生成し、前記無線通信部に出力する取得・生成処理と、前記データ分割部が前記指示データを分割して前記送信データを前記データバッファに蓄積する分割・蓄積処理とが並列処理で行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線タグリーダライタ。
【請求項4】
前記指示データは、データ先頭側に前記コマンドデータが配され、前記コマンドデータの後に前記送信データが配されたデータ構造をなしていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無線タグリーダライタ。
【請求項5】
前記データ分割部によって分割された前記送信データを、前記データバッファへの蓄積と共に、記憶手段にも記憶することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線タグリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−186390(P2010−186390A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31186(P2009−31186)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】