説明

無線タグ読み取り制御装置、無線タグ読み取り制御プログラム

【課題】複数の無線読取装置をメンバーとする論理的なグループを、無線タグから情報を読み取る環境に合わせて簡単に設定することができるようにする。
【解決手段】ミドルウェア20は、複数のリーダから無線タグの識別子を含む情報を読取結果として受信するタグ読取部37と、複数のリーダをメンバーとする論理的なグループからなる論理リーダのそれぞれについて、論理リーダに属するリーダを示す情報を論理リーダテーブルとして記憶するための論理リーダ記憶部36と、論理リーダを生成する命令と共に論理リーダ設定用無線タグの識別子を受信するインタフェース部32と、命令に応じてタグ読取部37に対して複数のリーダのうち1つまたは複数から読取結果を取得するように指示し、論理リーダ設定用無線タグの識別子を含む読取結果を返したリーダをメンバーとする論理リーダを生成して論理リーダテーブルに記憶させる論理リーダ生成部35とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグから情報を読み取る複数の無線読取装置をメンバーとするグループを構成して情報の読み取りを制御する無線タグ読み取り制御装置、無線タグ読み取り制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品たとえば商品に付けられた無線タグの情報を無接触で読取り、その読取り情報を上位のアプリケーションに渡すRFID(Radio Frequency Identification)システムがある。RFIDシステムには、複数の無線読取装置(リーダ)からその読み取り結果である無線タグの識別子のリストを取得し、マージ(重複した識別子の除去)やフィルタリングなどの処理を施した後にアプリケーションに渡す、いわゆるRFIDミドルウェアが含まれる。RFIDミドルウェアを含むRFIDシステム全体については、非特許文献1に開示されているように、国際団体EPCglobalによる標準仕様が存在し、物流・流通分野で広く活用されている。
【0003】
EPCglobalにおいて定められた仕様においては、RFIDミドルウェアは以下の機能を持つ。
1. 複数の無線読取装置(具体的にはアンテナ)のうちの一部または全部をメンバーとする論理的なグループを少なくともひとつ構成し、グループに属するそれぞれの無線読取装置から取得された読取結果(無線タグの識別子のリスト)をマージしてひとつの仮想的なリーダの読取結果として集計する。
2. 集計された結果から、アプリケーションにとって不要な識別子をフィルタリングを行って取り除く。
3. フィルタリングを通過した識別子を、アプリケーションから与えられた条件に基づいてグループごとに分類する。
4. 以上の処理の結果をXML(Extensible Markup Language)文書に記載し、レポートとしてアプリケーションに送る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、EPCglobalで定められた仕様に基づくRFIDミドルウェアを使用するためには、まず複数の無線読取装置(具体的にはリーダに接続されたアンテナ)のうちから一つ以上を選択してグループを構成する必要がある。
【0005】
しかしながら、例えば、広い倉庫の入り口から奥までを読み取り範囲として満遍なくカバーできるように多くのアンテナが分散して配置されているときに、倉庫の一部のエリア(例えば、入り口付近)に置かれた品物に貼付された無線タグだけを読みたいといった場合、どのアンテナを選択してグループを構成すればよいかは常に明確であるとは限らない。
【0006】
アンテナの読取可能な範囲は周囲の電波環境によっても異なるので、入り口のアンテナだけを選択してグループとするのでは、所望のエリアにある品物に付けた無線タグを全て読み取れるとは限らない。だからといって、安全のために余裕を持って入り口から奥にあるアンテナまでをグループに加えると、今度は読み取る必要のない無線タグも含めて多くの無線タグが読み取られ、システムに負荷をかけることになる。従って、グループに加えるべきアンテナを決定するのが難しく面倒であるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、無線タグから情報を読み取る複数の無線読取装置をメンバーとする論理的なグループを、無線タグから情報を読み取る環境に合わせて簡単に設定することが可能な無線タグ読み取り制御装置、及びコンピュータを無線タグ読み取り制御装置として機能させることができる無線タグ読み取り制御プログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の無線読取装置から無線タグの識別子を含む情報を読取結果として受信するタグ読取手段と、複数の無線読取装置をメンバーとする論理的なグループからなる論理リーダのそれぞれについて、前記論理リーダに属する前記無線読取装置を示す情報を論理リーダ構成情報として記憶するための論理リーダ記憶手段と、前記論理リーダを生成する命令と共に論理リーダ設定用無線タグの識別子を受信する受信手段と、前記受信手段により受信された命令に応じて、前記タグ読取手段に対して前記複数の無線読取装置のうち1つまたは複数から読取結果を取得するように指示し、前記論理リーダ設定用無線タグの識別子を含む読取結果を返した前記無線読取装置をメンバーとする論理リーダ構成情報を生成して前記論理リーダ記憶手段に記憶させる論理リーダ生成手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
かかる手段を講じた本発明によれば、無線タグから情報を読み取る複数の無線読取装置をメンバーとする論理的なグループを、無線タグから情報を読み取る環境に合わせて簡単に設定することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態におけるRFIDシステムの構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態における論理リーダの設定内容が記録された論理リーダテーブルの一例を示す図。
【図3】第1実施形態における追加された論理リーダを含む論理リーダテーブルの一例を示す図。
【図4】第1実施形態における論理リーダ生成処理の概略を説明するための図。
【図5】第1実施形態におけるミドルウェアの論理リーダ生成部による論理リーダ作成処理を示すフローチャート。
【図6】第2の実施形態における論理リーダテーブルの一例を示す図。
【図7】第2実施形態における論理リーダの再構成の手順全体を説明するフローチャート。
【図8】図7における論理リーダの再構成処理の手順の詳細を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるRFIDシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、RFIDシステムは、複数のリーダ(無線読取装置)1,2、リーダ制御用PC(パーソナルコンピュータ)10、管理用PC(パーソナルコンピュータ)12、及びクライアントPC(パーソナルコンピュータ)14が含まれる。第1実施形態におけるRFIDシステムは、例えばEPCglobalの仕様に従って構成されるものとする。リーダ1,2は、リーダ制御用PC10(ミドルウェア20(無線タグ読み取り制御プログラム))の制御のもとで、物品(商品等)に付された無線タグ6に記録されているタグID(タグ情報)を非接触により読み取る。タグIDには、例えばコード体系を識別するためのヘッダの他、例えば企業コード、商品アイテムコード、商品の製造番号等を表すデータなどが含まれている。
【0012】
図1に示す構成においては、リーダ制御用PC10においてミドルウェア20(無線タグ読み取り制御プログラム)を実行することにより、本発明による無線タグ読み取り制御装置が実現される。なお、図1では、リーダ制御用PC10と管理用PC12とが別のコンピュータにより実現されているが、1つのコンピュータにより実現されるものとしても良い。また、管理用PC12とクライアントPC14の機能が1つのコンピュータによって実現される構成も可能である。
【0013】
図1では説明を簡単にするために、1つのリーダ制御用PC10に対して2つのリーダ1,2が接続された構成を示しているが、3つ以上のリーダを設けることが可能である。また、図1では、1つのリーダ制御用PC10のみを示しているが、複数のリーダ制御用PC10を設けて、管理用PC12によって管理する構成とすることができる。また、複数のクライアントPC14を設けた構成とすることもできる。また、図1においては、リーダ1には、2つアンテナA,Bが設けられ、リーダ2には、2つアンテナC,Dが設けられているとしているが、それぞれのリーダ1,2に設けられるアンテナの数も2つに限られるものではない。
【0014】
リーダ制御用PC10は、ミドルウェア20(プログラム)をプロセッサにより実行することにより各機能部を実現する。ミドルウェア20は、例えば、国際標準規格EPCglobalによる仕様に従う代表的な機能構成を有している。図1に示すように、第1実施形態におけるミドルウェア20は、制御部30、読み取り設定情報記憶部31、インタフェース部32、論理リーダ生成部35、論理リーダ記憶部36、タグ読取部37、集計処理部38、フィルタリング処理部40、グルーピング処理部41、レポート生成部42の機能を有する。
【0015】
ミドルウェア20の下部には無線読取装置であるリーダ1,2(アンテナA,B,C,D)が接続され、上部に管理用PC12において動作する管理ソフト部24及びクライアントPC14において動作するRFIDアプリケーション部22がそれぞれ接続される。
【0016】
管理用PC12の管理ソフト部24は、管理プログラムをプロセッサにより実行することにより機能であり、例えばシステムの管理者からの指示に応じて、リーダ制御用PC10(ミドルウェア20)に対して新たな論理リーダの作成を命令する処理を実行する。管理ソフト部24は、論理リーダの作成を命令する際、新たに作成する論理リーダの名前と、論理リーダ設定用の無線タグの識別子のリストをミドルウェア20に提供する。
【0017】
ここで、論理リーダとは、ミドルウェア20が利用可能な複数のリーダ、あるいは複数のアンテナ(図1においてはアンテナA〜D)のなかから一部もしくは全部を選択して論理的なグループとすることで構成される仮想的なリーダのことである。なお、第1実施形態の説明では、アンテナ単位でグループ化して論理リーダを生成するものとして説明する。
【0018】
クライアントPC14のRFIDアプリケーション部22は、RFIDアプリケーションをプロセッサにより実行することにより機能であり、リーダ制御用PC10(ミドルウェア20)に対して読み取り設定情報を送信することにより、論理リーダあるいはリーダ1,2により無線タグ6から情報の読み取りを実行させる。
【0019】
RFIDアプリケーション部22は、読み取り設定情報として、無線タグ6の読み取りに使用する論理リーダ(あるいはリーダ)、無線タグ6から読み取った情報のフィルタリングやグルーピングの条件、無線タグ読み取りの時間間隔などを指定する情報をミドルウェア20に渡す。
【0020】
論理リーダに属するアンテナは、同一のリーダ(物理的に実在するリーダ)に接続されたものである必要はなく、例えば、リーダ1のアンテナBとリーダ2のアンテナCを組み合わせたものを一つの論理リーダとすることも可能である。論理リーダについての設定内容が記録された論理リーダテーブル(論理リーダ構成情報)の一例を図2に示す。
【0021】
図2に示す論理リーダテーブルには、「リーダ左」「リーダ右」「リーダ中央」「リーダ全部」という合計4つの論理リーダが記録されている。RFIDアプリケーション部22は、例えば、アンテナAからDまでの並びの中で中央に位置するアンテナBとCだけを用いて読み取りを行いたいときには、論理リーダ名として「リーダ中央」を読み取り設定情報によって指定する。
【0022】
第1実施形態におけるRFIDミドルウェア20においては、図2に示すような、システム管理者などにより予め固定的に作成された論理リーダだけでなく、後述する論理リーダ生成処理により、管理用PC12の管理ソフト部24からの命令に応じて論理リーダを作成して論理リーダテーブルに追加することができる。
【0023】
図3には、固定的に作成された論理リーダに加えて、追加された論理リーダを含む論理リーダテーブルの一例を示している。図3では、例えば論理リーダ名「カスタム」として、リーダ1のアンテナA,Bとリーダ2のCからなる論理リーダが追加された例を示している。論理リーダ生成処理の詳細については後述する(図5)。
【0024】
次に、第1実施形態におけるRFIDシステムの動作について説明する。
まず、無線タグ6から情報を読み取るための読み取り処理について説明する。
リーダ制御用PC10のミドルウェア20は、インタフェース部32を介して、クライアントPC14のRFIDアプリケーション部22から読み取り設定情報を受け取ると、それを読み取り設定情報記憶部31に記憶する。制御部30は、読み取り設定情報により指定された読み取り時間間隔で、指定された論理リーダから無線タグ6の読み取りを行うようにタグ読取部37に指示する。
【0025】
タグ読取部37は、指定された論理リーダが実際にはどのアンテナに対応するかを論理リーダ記憶部36に記録された論理リーダテーブルを読み出して判別する。タグ読取部37は、論理リーダテーブルから判別された論理リーダに該当するアンテナから無線タグ6を読み取るようにリーダ1,2に指示を出す。
【0026】
例えば、RFIDアプリケーション部22は、読み取り設定情報によって「リーダ中央」を論理リーダ名として指定したものとする。仮想的な論理リーダ名「リーダ中央」に対応する実際のデバイスは、図2に示す論理リーダテーブルにあるように、リーダ1のアンテナBとリーダ2のアンテナCであるので、タグ読取部37は定期的(読み取り時間間隔)にリーダ1にアンテナBを、リーダ2にアンテナCを、それぞれ用いて無線タグ6を読み取るように命令を発行する。それぞれのリーダ1,2から読み取り結果として無線タグ6の識別子のリストが返されるとそれを集計処理部38に渡す。
【0027】
集計処理部38は、読取結果の中から重複する識別子(アンテナBとCに同時に読み取られ、リーダ1と2の読み取り結果に共通に含まれる無線タグ6の識別子など)を除きフィルタリング処理部40に渡す。
【0028】
フィルタリング処理部40は、RFIDアプリケーション部22から渡された読み取り設定情報に記載された条件に従って不要な無線タグ6の識別子を除去し、その結果をグルーピング処理部41に渡す。
【0029】
グルーピング処理部41は、アプリケーションから渡された読み取り設定情報に記載の条件に従って、例えば、無線タグ6が貼付された物品の製造者や製造日時などに基づいたグループごとに無線タグ6の識別子を分類してレポート生成部42に渡す。
【0030】
レポート生成部42は、受け取った情報をXML文書に変換し、インタフェース部32を介してレポートとしてRFIDアプリケーション部22に送る。これにより、RFIDミドルウェア20の制御による情報の読み取り動作が完了する。
なお、前述した説明において読み取り設定情報、XML形式のレポートとして説明したものは、EPCglobalの規格においてはそれぞれECSpec、ECReportsと呼ばれるものである。
【0031】
次に、第1実施形態における論理リーダ生成処理について説明する。
図4は、第1実施形態における論理リーダ生成処理の概略を説明するための図である。
第1実施形態における無線タグ読み取り制御装置(RFIDシステム)では、論理リーダ設定用の特定のID(識別子)を持つ複数の無線タグを、情報の読み取り対象としたい範囲に適当に分散して配置しておくことにより、それらの無線タグの全てから情報を読み取ることができるリーダの組合せをグループとし、このグループを1つの論理的なリーダ(論理リーダ)として生成できるようにする。
【0032】
つまり、論理リーダを生成する場合に、例えば「リーダ1とリーダ2のセット」というように指定するのではなく、上位レイヤ(図1におけるクライアントPC14(RFIDアプリケーション部22))から、図2(a)に示すように「無線タグX,Y,Z」から情報を読めるような論理的なリーダ」というように指定する。これにより、ミドルウェア20は、図2(b)に示すように、リーダ1,2からなる論理リーダを自動生成する。この論理リーダ(例えば「名前」)を上位レイヤに提供することで、上位レイヤは、この論理リーダを用いた読み取り設定情報を指定することができる。これにより、RFIDシステムの利用者は、例えば物理的なリーダ1,2(ハードウェア)を交換したとしても、論理リーダの設定の変更を意識することなくそのまま使い続けることができる。
【0033】
以下、第1実施形態における論理リーダ生成処理の具体例について説明する。
【0034】
図5は、ミドルウェア20の論理リーダ生成部35による論理リーダ作成処理を示すフローチャートである。
システムの管理者は、新たな論理リーダを作成するために、識別子がαである無線タグをアンテナAの前に、識別子がβである無線タグ6をアンテナBの前に、識別子がγである無線タグ6をアンテナCの前に、それぞれ配置する。次に、管理者は管理用PC12の管理ソフト部24を通じて新しい論理リーダの作成をミドルウェア20に命令する。
【0035】
ミドルウェア20は、インタフェース部32を介して受信した命令を論理リーダ生成部35に通知する。このとき、ミドルウェア20には、命令の引数として論理リーダの名前(ここでは「カスタム」とする)と、論理リーダの設定に用いる無線タグの識別子のリスト{α,β,γ}が渡される。なお、ここで用いる無線タグは、論理リーダ設定のために用いるものではあるが、それ自体が特殊なものである必要はなく、一般的に物品に貼付して在庫管理などに用いる普通の種類の無線タグで差し支えない。論理リーダ設定に使用する無線タグから読み取られる情報(識別子)が既知であれば良い。
【0036】
論理リーダ生成部35は、論理リーダの作成命令を受け取ると、図3のフローチャートに示した論理リーダ作成処理を実行する。
まず、論理リーダ生成部35は、論理リーダ記憶部36に記憶された論理リーダテーブルに、新しい論理リーダのためのエントリを作成する(ステップA1)。
【0037】
次に、論理リーダ生成部35は、タグ読取部37に対して、接続されている全てのリーダの全てのアンテナを用いて無線タグの読み取り処理を実行するように命令する(ステップA2)。この例では、タグ読取部37は、リーダ1に対してアンテナA,Bを、リーダ2に対してアンテナC,Dを、それぞれ用いて読み取り処理を行うように命令する。
【0038】
なお、前述した説明では、全てのリーダの全てのアンテナを用いて無線タグの読み取り処理を実行させているが、論理リーダに組み込まれることがないと予め分かっているリーダ(またはアンテナ)に対しては読み取り処理を実行させないようにしても良い。すなわち、論理リーダ生成部35は、タグ読取部37に対して、論理リーダの構成要素候補とする1つまたは複数のリーダ(またはアンテナ)を指定する。タグ読取部37は、指定された少なくとも1つのリーダ(またはアンテナ)に対して、無線タグの読み取り処理を実行させる。これにより、論理リーダに組み込まれることがないリーダ(またはアンテナ)による無駄な読み取りを避けることができる。
【0039】
次に、論理リーダ生成部35は、タグ読取部37を通じて読み取り結果を取得し(ステップA3)、アンテナのそれぞれごとに、そのアンテナからの読み取り結果に引数で渡された論理リーダ設定用無線タグの識別子が少なくとも一つ含まれているか検査する。論理リーダ設定用無線タグの識別子が含まれている場合は(ステップA4、Yes)、論理リーダ生成部35は、そのアンテナを論理リーダのメンバーとして、論理リーダテーブルに新規作成したエントリに追加する(ステップA7)。
【0040】
この例では、それぞれのアンテナからの読み取り結果に識別子{α,β,γ}のうち少なくとも一つが含まれているかを検査する。アンテナAからは識別子αの無線タグが、アンテナBからは識別子βの無線タグが、アンテナCからは識別子γの無線タグがそれぞれ読み取られるが、アンテナDからは何れの無線タグも読み取られないため、アンテナA,B,Cが論理リーダのメンバーとして論理リーダテーブルのエントリに追加される。
【0041】
論理リーダ生成部35は、読み取り結果について検査を終了すると(ステップA5、A6、Yes)、論理リーダの設定に用いる識別子{α,β,γ}の無線タグのうち、何れのアンテナからも読み取られていない無線タグがないか検査する。どのアンテナからも読まれていない無線タグが一つでもあれば、論理リーダの設定のために配置された全ての無線タグを読み取れるような論理リーダを構成できないことを意味するので、論理リーダの設定処理が失敗したとする(ステップA8、No)。ここで説明している例においては、識別子{α,β,γ}の無線タグの全てが読まれているので論理リーダ設定処理は成功である(ステップA8、Yes)。
【0042】
論理リーダ生成部35は、論理リーダの設定に成功したと判断したので、論理リーダ記憶部36が保持する論理リーダテーブルに、図3に示すように、論理リーダ名が「カスタム」でメンバーがリーダ1のアンテナA,Bとリーダ2のアンテナCであるエントリを新規に追加する。
【0043】
これにより論理リーダ生成処理が完了する。処理完了後は、論理リーダ設定用の識別子{α,β,γ}の無線タグは、それぞれのリーダ(アンテナ)の前から取り除いてもよいし、そのまま残しておいてもよい。残しておく場合は、RFIDアプリケーション部22はそれらの無線タグがレポートに含まれないようにフィルタリング条件を設定する必要がある。
クライアントPC14のRFIDアプリケーション部22は、例えば管理者によって管理ソフト部24からの命令によって新規に作成された論理リーダの論理リーダ名「カスタム」が提供されることにより、予め固定的に作成された論理リーダと同様にして、読み取り設定情報において論理リーダ名「カスタム」を指定して、新たな論理リーダによる読み取りを実行させることができる。
【0044】
なお、前述した説明においては、システムの管理者がアンテナA,B,Cの位置を意識して論理リーダ設定用の無線タグ(識別子{α,β,γ})をそれぞれのアンテナの前に配置するものとしているが、実際には管理者は論理リーダを作成するときにアンテナの位置を意識する必要はない。論理リーダとして有効にしたい読み取り範囲内に適当に論理リーダ設定用の無線タグを分散して配置し、それらの識別子を管理ソフト部24を通じて論理リーダ生成部35に渡して論理リーダの作成を命令すれば、自動的に適切なアンテナがその論理リーダのメンバーとして選択される。
【0045】
また、前述した説明においては、新規に論理リーダを作成する場合について説明したが、既に作成済の論理リーダについて、リーダやアンテナの配置に変更はないが、論理リーダの読み取り対象とする範囲を変更したい場合や、読み取り対象とする範囲に変更はないがアンテナの置き換えなどにより論理リーダのメンバーを変更する必要が生じた場合などにおいても同様の処理を実行すれば良い。
【0046】
このようにして、第1の実施形態によれば、RFIDシステムの管理者は、論理リーダ設定用の無線タグを論理リーダの読み取り範囲としたい場所に分散して配置しておくだけで、複数のアンテナあるいはリーダ(無線読取装置)からなるグループの論理リーダを自動的に設定させることができる。これは、アンテナあるいはリーダの識別子などを指定してグループのメンバーに加えるのに比べて手順が簡単であり、また、意図した読み取り範囲をカバーするグループからなる論理リーダを確実に設定することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、論理リーダのメンバーとすべきアンテナを論理リーダ設定用タグの識別子をもとに判別することで論理リーダを容易に構成することが可能であるが、論理リーダの再構成(メンバーであるアンテナの変更)をする場合には、管理者が管理ソフト部24を通じて明示的に指示を出す必要がある。
【0048】
一方、論理リーダの再構成を行いたい状況としては様々な場合がある。例えば、アンテナの配置の変更によりアンテナそれぞれの読み取り範囲が変化した場合、アンテナが故障したことにより別のアンテナに置き換えられた場合、管理するべき物品の数が当初の予定より増えたことにより既に作成済みの論理リーダの読み取り対象とするエリアを拡大したい場合、棚や倉庫の配置の見直しにより既に作成済みの論理リーダの読み取り対象とするエリアを移動したい場合(例えば、故障した品物はこれまで倉庫の奥に置いていたが、修理に出しやすいよう倉庫の入り口前へ置くように変更したので、故障した品物を読み取る論理リーダの読み取りエリアを奥から手前に変更する)などがある。
【0049】
第2の実施形態では、こうした状況となった場合であっても、管理者が明示的に指示を出すことなく、論理リーダの再構成を実行できるようにする。
【0050】
第2の実施形態は、論理リーダ生成部35がタグ読取部37による読み取り結果をモニターし、論理リーダによって論理リーダ設定用の無線タグが全て読み取られているかを定期的に検査し、読み取られていない無線タグがあった場合には自動的に論理リーダの再構成を行うものである。
【0051】
なお、第2実施形態は、基本的な構成/動作が図1を用いて説明した第1実施形態と同じであるものとして詳細な説明を省略する。最初の論理リーダの生成は、前述した第1の実施形態と同様にして実行される。
【0052】
第2の実施形態では、論理リーダ設定用の無線タグの識別子が論理リーダテーブルに記憶されている点と、論理リーダの再構成の手順が新たに追加されている点が異なる。
【0053】
図6には、第2の実施形態における論理リーダテーブルの一例を示している。図6に示すように、論理リーダテーブルには、論理リーダ生成処理によって作成された論理リーダの論理リーダ名(この例では「カスタム」)と対応付けて、論理リーダ設定用の無線タグの識別子(この例では{α,β,γ})が記憶される。
【0054】
以下、第1の実施形態と異なる論理リーダの再構成の手順について説明する。
図7は、論理リーダの再構成の手順全体を説明するフローチャート、図8は、図7における論理リーダの再構成処理の手順の詳細を説明するフローチャートである。
【0055】
ここでは、論理リーダ設定用の識別子{α,β,γ}の無線タグがアンテナA,B,Cの前(読み取り可能な範囲)に配置され、第1の実施形態と同様に、これらの無線タグが全て読めるようにリーダ1のアンテナA,B、及びリーダ2のアンテナCからなる論理リーダ「カスタム」が作成されているものとする。RFIDアプリケーション部22からは、この論理リーダを用いて読み取りを行うように命令が出されており、使用するべき論理リーダの名前(この例では「カスタム」)、フィルタリング条件、グルーピング条件、読み取り時間間隔などの設定が読み取り設定情報記憶部31に記憶されているものとする。
【0056】
制御部30は、読み取り設定情報記憶部31に記憶された読み取り時間間隔で、タグ読取部37に対して無線タグ6の読み取り命令を発行する。読み取り結果からのレポートの生成の手順は、第1の実施形態のRFIDミドルウェア20の動作において説明したものと同様であるので説明を省略する。第2の実施形態においては、タグ読取部37は、その読み取り結果を集計処理部38に渡すほかに、論理リーダ生成部35にも渡す。このとき、無線タグの識別子のリストに加えて、論理リーダの名前(この例では「カスタム」)も渡される。
【0057】
論理リーダ生成部35は、タグ読取部37から論理リーダ名と、その論理リーダで読み取られた無線タグの識別子のリストを受け取ると(ステップB1)、論理リーダ記憶部36に記録された論理リーダテーブルに、この論理リーダ名と対応付けて論理リーダ設定用の無線タグの識別子が記録されているかを判別する。
【0058】
論理リーダ名と対応付けて論理リーダ設定用の無線タグの識別子が記録されていない場合には何もしないで処理を終了する。例えば、論理リーダ名が「リーダ中央」であった場合は、図6に示すように、論理リーダテーブルの「リーダ中央」に対する設定用タグ識別子が「なし」になっているので、この論理リーダは管理者によって固定的に設定されたものであると判断し、何もしないで処理を終了する。
【0059】
次に、論理リーダ生成部35は、タグ読取部37から受け取った読み取り結果の中に、その論理リーダ(この例では「カスタム」)の設定用無線タグの識別子(この例ではα、β、γ)が全て含まれているかを検査する(ステップB2)。全て含まれている場合は論理リーダの構成はこのままでよいので、何もせずに処理を終了する(ステップB3、Yes)。
【0060】
一方、設定用無線タグの識別子(この例ではα、β、γ)が全て含まれていなかった場合は(ステップB3、No)、論理リーダ生成部35は、論理リーダの再構成が必要であると判断し、論理リーダの再構成処理を実行する(ステップB4)。
【0061】
まず、論理リーダ生成部35は、タグ読取部37から受け取った論理リーダ名に対応するメンバー(論理リーダを構成するアンテナのリスト)を論理リーダテーブルから削除して空にする(図8、ステップC1)。
【0062】
そして、タグ読取部37に対して、全てのリーダ1,2の全てのアンテナA〜Dを使用して無線タグの読み取りを実行するように命令する(ステップC2)。なお、第1実施形態において説明したように、論理リーダに組み込まれることがないと予め分かっているリーダ(またはアンテナ)がある場合には、これらのリーダ(またはアンテナ)による読み取り指示を避けるように指示することもできる。
【0063】
論理リーダ生成部35は、タグ読取部37を通じて読み取り結果を取得し(ステップC3)、アンテナのそれぞれごとに、そのアンテナからの読み取り結果に、論理リーダテーブルに記録されている論理リーダ設定用無線タグの識別子が少なくとも一つ含まれているか検査する。論理リーダ設定用無線タグの識別子が含まれている場合は(ステップC4、Yes)、論理リーダ生成部35は、その識別子を読み取ったアンテナを論理リーダのメンバーとして、論理リーダテーブルの論理リーダ名に対応するエントリに追加する(ステップC7)。
【0064】
例えば、識別子α、βの無線タグがリーダ2のアンテナCから、識別子γの無線タグがリーダ2のアンテナDから、それぞれ読み取られたときは、論理リーダ名「カスタム」の論理リーダのメンバーとして、リーダ2のアンテナC,Dが論理リーダテーブルに記録される。
【0065】
論理リーダ生成部35は、読み取り結果について検査を終了すると(ステップC6、C7、Yes)、論理リーダの設定に用いる識別子{α,β,γ}の無線タグのうち、何れのアンテナからも読み取られていない無線タグがないか検査する。どのアンテナからも読まれていない無線タグが一つでもあれば、論理リーダの設定のために配置された全ての無線タグを読み取れるような論理リーダを構成できないことを意味するので、論理リーダの設定処理が失敗したとする(ステップC8、No)。この場合、論理リーダ生成部35は、論理リーダの再構成処理がエラーとなったことを、インタフェース部32を介して管理ソフト部24に通知する。管理ソフト部24は、エラーが発生したことを通知するメッセージを出力するなどしてシステムの管理者に通知する。
【0066】
一方、識別子{α,β,γ}の無線タグの全てが読まれている場合には(ステップC8、Yes)、論理リーダの再構成処理が成功であるとして正常に終了する。
【0067】
なお、前述した説明では、論理リーダ生成部35による論理リーダの検査と再構成は、読み取り設定情報記憶部31に記憶された設定情報で指定された読み取り時間間隔で実行されることになるが、論理リーダ生成部35の内部にタイマー(計時機能)を設けて、読み取り時間間隔とは独立した時間間隔で行うようにしてもよい。これにより、論理リーダの再構成を行いたい状況となっていた場合に、読み取り時間間隔に応じた読み取りを実行する前に論理リーダの再構成を事前に完了しておくことが可能となる。
【0068】
このようにして、第2実施形態によれば、リーダやアンテナ(無線読取装置)が故障して交換するといった論理リーダの再構成が必要な状況が発生した場合には、論理リーダを構成するグループの再構成が行われ、その新しいリーダが改めてグループに自動的に追加されるので、システムの管理者が明示的に論理リーダのグループの設定を変更する必要がなくなり、利便性が向上する。
【0069】
なお、前述した説明では、アンテナA〜Dをグループ化して論理リーダを生成しているが、リーダ単位で論理リーダを生成するようにしても良い。すなわち、論理リーダ設定用の無線タグを読み出すことができたリーダをグループ化して、このグループに属するリーダを論理リーダとする。
【0070】
また、前述した実施形態においては、RFIDシステムがEPCglobalの仕様に従うものとし、RFIDアプリケーション部22とは別に設けられた管理ソフト部24を通じて論理リーダの作成を制御することで、RFIDアプリケーション部22が論理リーダの作成に関与しないようにしているが、EPCglobalの仕様に従わない構成であれば、管理用PC12の管理ソフト部24が持つ機能をクライアントPC14のRFIDアプリケーション部22に設けて、RFIDアプリケーション部22が論理リーダの作成と読み取り設定とを行うようにしても良い。
【0071】
さらに、各実施形態では、リーダ制御用PC10、管理用PC12の内部に発明を実施する機能を実現するためのミドルウェア20、管理ソフト部24がそれぞれ予め記録されているものとして説明をしたが、これに限らず同様の機能を実現するためのプログラムをネットワークからダウンロードしても良いし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものをリーダ制御用PC10、管理用PC12にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等プログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0072】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,2…リーダ、A,B,C,D…アンテナ、6…無線タグ、10…リーダ制御用PC、12…管理用PC、14…クライアントPC、20…ミドルウェア、22…RFIDアプリケーション部、24…管理ソフト部、30…制御部、31…読み取り設定情報記憶部、32…インタフェース部、35…論理リーダ生成部、36…論理リーダ記憶部、37…タグ読取部、38…集計処理部、40…フィルタリング処理部、41…グルーピング処理部、42…レポート生成部。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0074】
【非特許文献1】EPCglobal標準仕様、[online]、[平成21年9月4日検索]、インターネット<http://www.epcglobalinc.org/standards>

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線読取装置から無線タグの識別子を含む情報を読取結果として受信するタグ読取手段と、
複数の無線読取装置をメンバーとする論理的なグループからなる論理リーダのそれぞれについて、前記論理リーダに属する前記無線読取装置を示す情報を論理リーダ構成情報として記憶するための論理リーダ記憶手段と、
前記論理リーダを生成する命令と共に論理リーダ設定用無線タグの識別子を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された命令に応じて、前記タグ読取手段に対して前記複数の無線読取装置のうち1つまたは複数から読取結果を取得するように指示し、前記論理リーダ設定用無線タグの識別子を含む読取結果を返した前記無線読取装置をメンバーとする論理リーダ構成情報を生成して前記論理リーダ記憶手段に記憶させる論理リーダ生成手段と
を具備したことを特徴とする無線タグ読み取り制御装置。
【請求項2】
前記論理リーダ生成手段は、
前記論理リーダ構成情報が示すメンバーの前記無線読取装置によって前記論理リーダ設定用無線タグの識別子が全て読み取られているかを定期的に検査し、読み取られていない前記識別子があった場合に、改めて前記論理リーダ構成情報を生成することを特徴とする請求項1記載の無線タグ読み取り制御装置。
【請求項3】
コンピュータを、
複数の無線読取装置から無線タグの識別子を含む情報を読取結果として受信するタグ読取手段と、
複数の無線読取装置をメンバーとする論理的なグループからなる論理リーダのそれぞれについて、前記論理リーダに属する前記無線読取装置を示す情報を論理リーダ構成情報として記憶させる論理リーダ記憶手段と、
前記論理リーダを生成する命令と共に論理リーダ設定用無線タグの識別子を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された命令に応じて、前記タグ読取手段に対して前記複数の無線読取装置のうち1つまたは複数から読取結果を取得するように指示し、前記論理リーダ設定用無線タグの識別子を含む読取結果を返した前記無線読取装置をメンバーとする論理リーダ構成情報を生成して前記論理リーダ記憶手段に記憶させる論理リーダ生成手段として機能させるための無線タグ読み取り制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−65461(P2011−65461A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215965(P2009−215965)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】