説明

無線タグ読取装置、無線タグ読取プログラム

【課題】本来期待する無線タグの読み取りが行えない状況であっても、必要とされる情報を送信することができるようにする。
【解決手段】物品に付けられた無線タグ18の情報を読み取るRFIDリーダー制御PC14において、情報の読み取りの内容を示す複数の読み取り設定を管理する読み取り設定管理部24と、無線タグ18から読み取った情報を格納するためのタグ情報格納バッファ28と、タグ情報格納バッファ28の空き容量を監視するバッファ監視部30と、タグ情報格納バッファ28の空き容量に基づいて無線タグ18から情報を読み取るための読み取り設定を変更し、この読み取り設定に応じて無線タグ18から情報を読み取り、タグ情報格納バッファ管理部26を介してタグ情報格納バッファ28に格納させるRFIDリーダー制御部20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に付けられた無線タグの情報を読取るための無線タグ読取装置、同装置において実行される無線タグ読取プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品たとえば商品に付けられた無線タグの情報を無接触で読取り、その読取り情報を上位機器たとえばサーバーに送るRFID(Radio Frequency Identification)システムがある。RFIDシステムにおける無線タグ読取装置は、複数の無線タグの情報を一括して読取ることができるなどの特徴があることから、商品の流通管理や生産管理などへの応用が急速に普及しつつある。
【0003】
無線タグに関しては、物流の国際化の進展を考慮すると、世界共通の規格が必要となるが、そのような規格として定められたものにEPCglobalがある。このEPCglobalでは、周波数帯、電波出力などといった無線タグの物理的な規格に留まらず、無線タグに記載されたID(EPC;Electronic Product Code)や、そのIDに紐付けられた情報(ID情報)をネットワークにおいてどのように流通させるかといった規格も定めている。
【0004】
例えばRFIDシステムでは、複数のRFIDリーダーによって無線タグから読み取った情報を無線タグ読取装置(RFIDリーダー制御PC)のバッファに一時的に格納し、クライアントPCから受信された読み取り設定において指定される読み取り間隔に従って、一時格納していた情報を上位のサーバーに送信する。
【0005】
従来、システム内で情報をスムーズに伝達する方法として、様々な方法が考えられている。
例えば、特許文献1には、クライアント/サーバーモデルでネットワークの輻輳を回避するルータが記載されている。特許文献1では、クライアントとサーバーの間にまたがるルータ上で輻輳が発生した場合に、クライアントからサーバーへのアクセスの中で負荷が大きいものを制限する。特定のポートやサービスに負荷が集中している際、そのポートやサービスへのアクセスを制限するといった設定を可能とする。
【0006】
また、特許文献2には、RFIDシステムにおけるトラフィック低減方法について記載されている。特許文献2では、下流サーバは、リーダ/ライタから出力される無線タグの商品情報をデータベースに記憶して各種処理を実行する。各種処理に必要とする商品情報が、データベースに記憶されていない場合には、上流サーバへ商品情報の送信要求を出力する。上流サーバは、送信要求に応じて商品情報を下流サーバへ送信すると共に、送信要求の履歴を履歴データベースに記憶して商品情報についての優先度を決定する。上流サーバは、優先度の高い所定数の商品情報を、無線タグに書き込む情報としてリーダ/ライタへ出力する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のRFIDシステムでは、クライアントPCからの読み取り設定に応じて読み取りを実行した場合、必ずしも読み取り設定に応じた読み取り結果をサーバーに送信することができなかった。例えば、一連の流れの中で、無線タグ読取装置に無線タグから読み取った情報を格納する頻度や情報量が多い場合にはバッファ溢れが起きてしまい、サーバーが求める読み取り結果を送信できない可能性がある。
【0008】
特許文献1に記載されている発明のようにアクセスを制限することで、データの集中を回避することができるが、例えばRFIDシステムにおいて、複数のRFIDリーダーの一部について読み取り制限を与えてしまうと、一部の無線タグからの情報を全く取得できなくなってしまう。
【0009】
また、特許文献2に記載される発明では、無線タグから読み取った情報はサーバーのデータベースに格納されるものとしており、無線タグから読み取った情報のバッファ溢れについては何ら考慮されていない。
【0010】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、本来期待する無線タグの読み取りが行えない状況であっても、必要とされる情報を送信することができる無線タグ読取装置、及びコンピュータを無線タグ読取装置として機能させることができる無線タグ読取プログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、物品に付けられた無線タグの情報を読み取る無線タグ読取装置において、前記情報の読み取りの内容を示す複数の読み取り設定を管理する読み取り設定管理手段と、前記無線タグから読み取った情報を格納するための格納手段と、前記格納手段の空き容量を監視する監視手段と、前記監視手段により監視された前記格納手段の空き容量に基づいて前記無線タグから情報を読み取るための読み取り設定を変更し、この読み取り設定に応じて前記無線タグから情報を読み取り前記格納手段に格納させる制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
かかる手段を講じた本発明によれば、本来期待する無線タグの読み取りが行えない状況であっても、必要とされる情報を送信することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態におけるRFIDシステムの構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態におけるRFIDリーダー制御PC14の動作を示すフローチャート。
【図3】本実施形態における優先度1,2,3が付された3つの読み取り設定を含む読み取り設定データの一例を示す図。
【図4】本実施形態におけるRFIDリーダー制御PC14において実行される読み取り設定変更処理について示すフローチャート。
【図5】本実施形態におけるRFIDリーダー制御PC14において実行される読み取り設定変更処理の変形例について示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態におけるRFIDシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、RFIDシステムは、クライアントPC(パーソナルコンピュータ)10(10−1,10−2,…)、サーバー12、RFIDリーダー制御PC(パーソナルコンピュータ)14、RFIDリーダー16(16−1,16−2,16−3,…)が含まれている。本実施形態におけるRFIDシステムは、例えばEPCglobalに従って構成されるもので、物品等に付けられた無線タグ18(RFIDタグ)の情報を読み取りサーバー12のデータベース12aに蓄積することができる。
【0015】
クライアントPC10は、システムの利用者によって操作されるもので、RFIDリーダー制御PC14に対して、RFIDリーダー16−1,16−2,16−3,…に無線タグ18をどのように読み取るかの読み取り方法を指示するための読み取り設定を送信する。クライアントPC10は、アプリケーション(プログラム)10aをプロセッサにより実行することにより、読み取り設定を作成してRFIDリーダー制御PC14に送信するための処理を実行する。アプリケーション10aによれば、1つのRFIDリーダー制御PC14に対して、優先度が付された複数の読み取り設定を送信して、無線タグ18からの情報の読み取りを実行させることができる。読み取り設定には、例えば読み取りに使用するRFIDリーダー16を示す情報、RFIDリーダー制御PC14からサーバー12に読み取り結果を送信する間隔を示す読み取り時間間隔、どのような情報が必要/不要かを示すフィルタリング情報等が含まれている。また、フィルタリング情報には、サーバー12に送信するデータ形式を示す情報が含まれている。優先度は、例えばサーバー12に送信する情報量を少なくする順に優先度が付されている。
【0016】
RFIDリーダー制御PC14は、クライアントPC10から受信した読み取り設定に従って、無線タグ18からタグID18aの読み取りを実行して、サーバー12に読み取り結果を送信する。RFIDリーダー制御PC14は、複数のクライアントPC10−1,10−2,…からの読み取り設定を受信し、それぞれの読み取り設定に応じた無線タグ18からの情報の読み取りを実行することができる。
【0017】
RFIDリーダー制御PC14は、図1に示すように、RFIDリーダー制御部20、通信部22、読み取り設定管理部24、タグ情報格納バッファ管理部26、タグ情報格納バッファ28、及びバッファ監視部30を有している。RFIDリーダー制御PC14は、RFIDミドルウェア(プログラム)をプロセッサにより実行することで各部を実現する。RFIDリーダー制御PC14は、読み取り設定に応じて、複数のRFIDリーダー16(16−1,16−2,16−3,…)を制御して、無線タグ18からタグID18aを読み取る。RFIDリーダー制御PC14は、無線タグ18から読み取ったタグID18a(あるいはフィルタリング情報をもとにデータ形式が変換された情報)をタグ情報格納バッファ28に一時格納し、読み取り時間間隔に応じてサーバー12に送信する。
【0018】
RFIDリーダー16は、物品(商品等)に付された無線タグ18に記録されているタグID18a(タグ情報)を非接触により読み取る。タグID18aには、例えばコード体系を識別するためのヘッダの他、例えば企業コード、商品アイテムコード、商品の製造番号等を表すデータなどが含まれている。
【0019】
次に、本実施形態におけるRFIDシステムの動作について説明する。
図2は、RFIDリーダー制御PC14の動作を示すフローチャートである。
まず、クライアントPC10のアプリケーション10aは、システムの利用者からの指示に応じて読み取り設定を生成して、RFIDリーダー制御PC14に送信する。読み取り設定には、読み取り時間間隔、フィルタリング情報等が含まれている。本実施形態におけるRFIDシステムでは、優先度を付けた複数の読み取り設定をRFIDリーダー制御PC14に送信することで、RFIDリーダー制御PC14における情報の読み取り状況に応じて動的に読み取り設定の優先度を変更して情報量を調整することができる。具体的な読み取り状況としては、タグ情報格納バッファ28の空き容量があり、読み取り設定の優先度を変更することにより、タグ情報格納バッファ28に一時格納される情報の情報量を調整することでバッファ溢れを回避する。
【0020】
クライアントPC10は、読み取り命令と共に、優先度が付された複数の読み取り設定を含む読み取り設定データをRFIDリーダー制御PC14に送信する。
【0021】
RFIDリーダー制御PC14は、通信部22によりクライアントPC10からの読み取り設定データを受信し(ステップA1)、RFIDリーダー制御部20に渡す。RFIDリーダー制御部20は、受け取った読み取り命令と優先度が付された複数の読み取り設定を読み取り設定管理部24に送る。読み取り設定管理部24は、複数の読み取り設定24a,24b…を優先度順に保持する(ステップA2)。
【0022】
次に、クライアントPC10は、読み取り開始命令をRFIDリーダー制御PC14に送信する。RFIDリーダー制御部20は、通信部22を通じて読み取り開始命令を受信すると(ステップA3、Yes)、読み取り設定管理部24において管理されている優先度が最も高い読み取り設定に応じて、RFIDリーダー16に読み取り開始を命令する(ステップA4)。
【0023】
RFIDリーダー16は、無線タグ18からタグID18a(タグ情報)を読み取り、この読み取ったタグID18aをRFIDリーダー制御PC14のRFIDリーダー制御部20に送る。RFIDリーダー制御部20は、RFIDリーダー16からタグID18aを受信すると(ステップA5)、タグID18aと読み取り時刻等を含むタグ情報をタグ情報格納バッファ管理部26に送る。
【0024】
タグ情報格納バッファ管理部26は、RFIDリーダー制御部20から送られてきたタグ情報(タグIDと読み取り時刻等)を、現在の読み取り設定で指定されたフィルタリング情報に応じて、必要、不要な情報を取捨選択して、タグ情報格納バッファ28に一時格納する(ステップA7)。
【0025】
ここで、複数の読み取り設定の具体例を示す。図3は、優先度1,2,3が付された3つの読み取り設定を含む読み取り設定データの一例を示している。優先度が最も高い優先度1の読み取り設定では、読み取り時間間隔「500msec」とし、フィルタリング情報には、必要とする情報が「A社、B社、C社」の商品に付された無線タグ18のタグID18aであり、全てのタグ情報が必要であることを示している。
【0026】
従って、タグ情報格納バッファ管理部26は、優先度1の読み取り設定に応じて読み取りを実行している場合、「企業コード」をもとに「A社、B社、C社」のタグID18aを識別し、このタグID18aに含まれる全てのデータと読み取り時刻等をタグ情報格納バッファ28に格納する。
【0027】
なお、図3に示すように、例えば、優先度の高い読み取り設定には、読み取り時間間隔を短く、フィルタリングの条件を緩くして読み取り結果の情報量を多くし、優先度の低い読み取り設定には、読み取り間隔を長く、フィルタリングの条件を厳しく(例えばデータ形式を変換)することによって情報量を少なくなるように設定されている。
【0028】
RFIDリーダー制御部20は、読み取り設定により指定されている読み取り時間間隔に応じた時刻でなければ(ステップA8、No)、前述のようにして、RFIDリーダー16によって読み取られたタグID18aを含むタグ情報を、順次、タグ情報格納バッファ管理部26によってタグ情報格納バッファ28に格納させる(ステップA5〜A7)。
【0029】
RFIDリーダー制御部20は、読み取り設定の読み取り時間間隔に応じた時刻になると、タグ情報格納バッファ管理部26に格納されたタグ情報を取り出し、成型して通信部22を介してサーバー12へ読み取り結果として送信する(ステップA9)。また、タグ情報格納バッファ管理部26は、サーバー12に送信済みのタグ情報格納バッファ28に一時格納していたタグ情報を削除する(ステップA10)。
【0030】
サーバー12は、RFIDリーダー制御PC14からのタグ情報を受け取り、データベース12aに登録する。
【0031】
なお、RFIDリーダー制御PC14は、無線タグ18からの情報の読み取りを実行している間に、バッファ監視部30によりタグ情報格納バッファ28のバッファ量を監視し、空き容量に基づいて読み取り設定の優先度を変更する読み取り設定変更処理を実行している(詳細については後述する)。この読み取り設定変更処理により読み取り設定の変更があった場合には(ステップA11、Yes)、RFIDリーダー制御部20は、変更された読み取り設定に応じて、RFIDリーダー16に読み取り開始を命令する(ステップA12)。
【0032】
例えば、タグ情報格納バッファ28に新たなタグ情報を格納する頻度や量が多い場合には、バッファ溢れが起きる可能性があるが、本実施形態におけるRFIDリーダー制御PC14では、読み取り設定変更処理により読み取り設定の優先度を下げることにより、タグ情報格納バッファ28に格納される情報量を下げてバッファ溢れを回避する。
【0033】
以下、RFIDリーダー制御部20は、前述した説明のようにして、変更された読み取り設定に応じた読み取りを実行して、タグ情報格納バッファ28にタグ情報を格納し、読み取り時間間隔に応じて、タグ情報をサーバー12に送信する(ステップA5〜A10)。
【0034】
次に、RFIDリーダー制御PC14において実行される読み取り設定変更処理について、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0035】
RFIDリーダー制御PC14は、RFIDリーダー16による無線タグ18からのタグID18aの読み取りを実行している間、バッファ監視部30によりタグ情報格納バッファ28のバッファ量を監視している(ステップB1)。バッファ監視部30は、現在のタグ情報格納バッファ28の空き容量と、予め設定された判定基準値(第1の基準値、第2の基準値)とを比較して、読み取り設定の変更が必要な状態にあるかを判別する。
【0036】
第1の基準値は、タグ情報格納バッファ28が溢れそうであるか判別するための基準値であり、例えばバッファの全容量の8割に情報が格納されている(空き容量が2割である)ことを判別するための基準値である。第2の基準値は、タグ情報格納バッファ28に余裕があるか判別するための基準値であり、例えばバッファの全容量の1割に情報が格納されている(空き容量が8割である)ことを判別するための基準値である。
【0037】
ここで、タグ情報格納バッファ28の空き容量が第1の基準値より少なく、バッファが溢れそうであると判別された場合(ステップB2、Yes)、バッファ監視部30は、RFIDリーダー制御部20に優先度が低い読み取り設定への変更を依頼する(ステップB3)。
【0038】
RFIDリーダー制御部20は、現在の読み取り設定の優先度よりも低い優先度の読み取り設定を読み取り設定管理部24に要求する。読み取り設定管理部24は、現在の読み取り設定より優先度が低い読み取り設定を管理していなければ(ステップB4、No)、その旨をRFIDリーダー制御部20に通知する。この場合、RFIDリーダー制御部20は、読み取り設定の変更を行わず、現在の読み取り設定のままで読み取りを継続する(ステップB10、No)。
【0039】
また、読み取り設定管理部24は、現在の読み取り設定より優先度が低い読み取り設定を管理している場合(ステップB4、Yes)、1段階低い優先度の読み取り設定をRFIDリーダー制御部20に受け渡す。
【0040】
RFIDリーダー制御部20は、読み取り設定管理部24から受け取った優先度の低い読み取り設定に変更して(ステップB5)、無線タグ18からの情報の読み取りを再開する(図2、ステップA11,A12)。
【0041】
例えば、読み取り設定の優先度を下げることにより、読み取り設定におけるフィルタリング情報に従って無線タグ18から読み取られたタグID18aのデータ形式を変換して情報量を下げることができる。図3に示す例では、優先度2の読み取り設定に変更することで、フィルタリング情報として、必要とする情報が「A社、B社、C社」の商品に付された無線タグ18のタグID18aであり、「A社、B社」については全てのタグ情報が必要であることを示し、「C社」についてはタグ情報数(タグ枚数)の情報のみが必要であることを示している。
【0042】
この場合、タグ情報格納バッファ管理部26は、「C社」の企業コードを含むタグID18aが読み取られた場合、タグID18aをタグ情報格納バッファ28に格納するのではなく、「C社」の企業コードを含むタグID18aが読み取られた数をカウントし、このカウント値をタグ情報数(タグ枚数)としてタグ情報格納バッファ28に格納する。
【0043】
すなわち、複数の無線タグ18からタグID18aを読み取った場合、全てのタグID18aを格納する情報量が多くなるが、タグ情報数(タグ枚数)にデータ形式を変換することによって情報量を大幅に削減し、タグ情報格納バッファ28の空き容量の消費を低減することができる。
【0044】
なお、読み取り設定のフィルタリング情報として設定されるデータ形式は、前述したようなタグ情報数(タグ枚数)に限るものではなく任意に設定可能である。例えば、無線タグ18から読み取ったタグID18aの共通項をグループ化して、グループとグループに含まれるタグの枚数の情報にデータ形式を変更するといったことも可能である。
【0045】
一方、タグ情報格納バッファ28の空き容量が第2の基準値より多く、バッファに余裕があると判別された場合(ステップB6、Yes)、バッファ監視部30は、RFIDリーダー制御部20に優先度が高い読み取り設定への変更を依頼する(ステップB7)。
【0046】
RFIDリーダー制御部20は、現在の読み取り設定の優先度よりも高い優先度の読み取り設定を読み取り設定管理部24に要求する。読み取り設定管理部24は、現在の読み取り設定より優先度が高い読み取り設定を管理していなければ(ステップB8、No)、その旨をRFIDリーダー制御部20に要求に通知する。この場合、RFIDリーダー制御部20は、読み取り設定の変更を行わず、現在の読み取り設定のままで読み取りを継続する(ステップB10、No)。
【0047】
また、読み取り設定管理部24は、現在の読み取り設定より優先度が高い読み取り設定を管理している場合(ステップB8、Yes)、1段階高い優先度の読み取り設定をRFIDリーダー制御部20に受け渡す。
【0048】
RFIDリーダー制御部20は、読み取り設定管理部24から受け取った優先度の高い読み取り設定に変更して(ステップB9)、無線タグ18からの情報の読み取りを再開する(図2、ステップA11,A12)。
【0049】
なお、タグ情報格納バッファ28の空き容量が第1の基準値と第2の基準値の間にある場合には(ステップB6、No)、現在の読み取り設定のままで読み取りを継続する。
【0050】
このようにして、クライアントPC10から優先度を付した複数の読み取り設定をRFIDリーダー制御PC14に送信することで、RFIDリーダー制御PC14では、タグ情報格納バッファ28に空き容量が多い場合には、優先度の高い読み取り設定に応じた読み取りを実行することで、サーバー12(クライアントPC10)が要求する読み取り頻度(読み取り時間間隔)と情報量で読み取り結果を通知することができる。また、タグ情報格納バッファ28の空き容量が少なくなり、バッファ溢れのおそれがある状況では、読み取り設定の優先度を下げて情報量を削減することで、タグ情報格納バッファ28の容量の消費を低減することができる。
【0051】
また、優先度を下げて情報量を削減する場合であっても、情報を完全に削減することで全体の情報量を低下させるのではなく、サーバー12が優先的に必要としている情報を通知することが可能である。例えば、「C社」の商品については、別途、RFIDシステムによる情報の読み取り(例えば検品)をする状況であれば、図3に示す優先度2の読み取り設定として、「C社」の企業コードを含むタグID18aについてはタグ情報数(枚数)のみとしてデータ形式を変換してタグ情報数(枚数)にしても何ら問題がない。
【0052】
次に、読み取り設定変更処理の変形例について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
図4に示す読み取り設定変更処理では、タグ情報格納バッファ28の空き容量に応じて、読み取り設定の優先度を段階的に変更しているが、図5に示す読み取り設定変更処理では、空き容量の変化率に基づいて、読み取り設定の優先度を複数段階で変更できるようにする。
【0053】
RFIDリーダー制御PC14は、RFIDリーダー16による無線タグ18からのタグID18aの読み取りを実行している間、バッファ監視部30によりタグ情報格納バッファ28のバッファ量と空き容量の変化率(増加率、減少率)を監視している(ステップC1)。バッファ監視部30は、現在のタグ情報格納バッファ28の空き容量と、予め設定された判定基準値(第1の基準値、第2の基準値)とを比較して、読み取り設定の変更が必要な状態にあるかを判別する。なお、判断基準値との比較による空き容量の判別については、前述した図4と同じであるので詳細な説明を省略する。
【0054】
ここで、タグ情報格納バッファ28の空き容量が第1の基準値より少なく、バッファが溢れそうであると判別された場合(ステップC2、Yes)、バッファ監視部30は、空き容量の変化率と、予め予め設定された変化率に対する判定基準値(第3の基準値)とを比較して、読み取り設定の変更が必要な状態にあるかを判別する。第3の基準値は、タグ情報格納バッファ28の空き容量が急速に減少していることを判別するための基準値である。
【0055】
ここで、タグ情報格納バッファ28の空き容量の減少率が第3の基準値より低く、急速に減少していないと判別された場合(ステップC3、No)、バッファ監視部30は、RFIDリーダー制御部20に優先度が1段階低い読み取り設定への変更を依頼する(ステップC4)。この場合、図4に示す読み取り設定変更処理と同様の処理を実行する(ステップC4,C5,C6)。
【0056】
これに対して、バッファ監視部30は、タグ情報格納バッファ28の空き容量が急速に減少していると判別された場合(ステップC3、Yes)、RFIDリーダー制御部20に優先度が複数段階(例えば2段階)低い読み取り設定への変更を依頼する(ステップC7)。
【0057】
RFIDリーダー制御部20は、読み取り設定管理部24が複数段階低い読み取り設定を管理していない場合には(ステップC8、No)、1段階低い読み取り設定への変更を試みる(ステップC5)。
【0058】
また、RFIDリーダー制御部20は、読み取り設定管理部24が複数段階低い読み取り設定を管理している場合には(ステップC8、Yes)、読み取り設定管理部24から現在の読み取り設定の優先度より複数段階優先度の低い読み取り設定を受け取り、この読み取り設定に変更して(ステップC9)、無線タグ18からの情報の読み取りを再開する(図2、ステップA11,A12)。
【0059】
すなわち、タグ情報格納バッファ28の空き容量が少なくなり、しかも急速に空き容量が少なくなっている場合には、複数段階で優先度を下げることで、より情報量を削減してタグ情報格納バッファ28の空き容量の減少を低下させることができる。
【0060】
一方、タグ情報格納バッファ28の空き容量が第2の基準値より多く、バッファに余裕があると判別された場合(ステップC10、Yes)、バッファ監視部30は、空き容量の変化率と、予め設定された変化率に対する判定基準値(第4の基準値)とを比較して、読み取り設定の変更が必要な状態にあるかを判別する。第4の基準値は、タグ情報格納バッファ28の空き容量が急速に増加していることを判別するための基準値である。
【0061】
ここで、タグ情報格納バッファ28の空き容量の増加率が第4の基準値より高く、急速に増加していないと判別された場合(ステップC11、No)、バッファ監視部30は、RFIDリーダー制御部20に優先度が1段階高い読み取り設定への変更を依頼する(ステップC12)。この場合、図4に示す読み取り設定変更処理と同様の処理を実行する(ステップC12,C13,C14)。
【0062】
これに対して、バッファ監視部30は、タグ情報格納バッファ28の空き容量が急速に増加していると判別された場合(ステップC11、Yes)、RFIDリーダー制御部20に優先度が複数段階(例えば2段階)高い読み取り設定への変更を依頼する(ステップC15)。
【0063】
RFIDリーダー制御部20は、読み取り設定管理部24が複数段階低い読み取り設定を管理していない場合には(ステップC8、No)、1段階高い読み取り設定への変更を試みる(ステップC5)。あるいは、最も優先度の高い読み取り設定への変更を実行する。
【0064】
また、RFIDリーダー制御部20は、読み取り設定管理部24が複数段階低い読み取り設定を管理している場合には(ステップC16、Yes)、読み取り設定管理部24から現在の読み取り設定の優先度より複数段階優先度の低い読み取り設定を受け取り、この読み取り設定に変更して(ステップC17)、無線タグ18からの情報の読み取りを再開する(図2、ステップA11,A12)。
【0065】
すなわち、タグ情報格納バッファ28の空き容量に余裕があり、しかも急速に空き容量が増加している場合には、複数段階で優先度を上げることで、より早くサーバー12(クライアントPC10)が要求している優先度の高い読み取り頻度と情報量によって読み取り結果をサーバー12に送信することができる。
【0066】
なお、前述した読み取り設定変更処理の説明(図4、図5)では、タグ情報格納バッファ28の状況が読み取り設定の変更が必要な場合にもかかわらず、現在の読み取り設定の優先度を上げる/下げることができない場合には、現在の読み取り設定のままで読み取りを継続するものとしている。こうした場合、RFIDリーダー制御PC14(RFIDリーダー制御部20)からクライアントPC10またはサーバー12にその旨を通知するようにしても良い。これにより、クライアントPC10から新たな読み取り設定を送信するようにしたり、サーバー12において例えばバッファ溢れが発生した可能性があることを示すデータを履歴としてデータベース12aに登録しておくといったことが可能となる。
【0067】
また、前述した説明では、RFIDリーダー制御PC14においてRFIDミドルウェア(プログラム)を実行することで無線タグ読取装置を実現しているが、RFIDリーダー16において無線タグ読取装置を実現することも可能である。すなわち、RFIDリーダー16において、前述したRFIDミドルウェア(プログラム)と同様の機能を実現するプログラムを実行することにより、前述したRFIDリーダー制御PC14と同様の機能を実現する。
【0068】
また、前述した説明では、RFIDリーダー制御PC14のタグ情報格納バッファ28の容量を監視し、空き容量に基づいて読み取り設定の優先度を変更するものとして説明しているが、RFIDシステムの他のパフォーマンスの状況に基づいて読み取り設定の優先度を変更するようにしても良い。
【0069】
例えば、RFIDリーダー制御PC14からサーバー12に情報を送信するネットワークのトラフィックを通信部22により監視し、トラフィックが基準値より低く、余裕がある状況では、読み取り設定の優先度を上げて読み取りを実行し、基準値より高く混雑している状況では、読み取り設定の優先度を上げて読み取りを実行するようにしても良い。これにより、サーバー12は、トラフィックの増大の影響によるRFIDリーダー制御PC14からの情報取得の遅延を低下させることができる。
【0070】
さらに、前述した実施形態では、RFIDリーダー制御PC14の内部に発明を実施する各機能を実現するRFIDミドルウェア(無線タグ読取プログラム)が予め記録されているものとして説明をしたが、これに限らず同様のプログラムをネットワークからRFIDリーダー制御PC14にダウンロードしても良いし、同様のプログラムを記録媒体に記憶させたものをRFIDリーダー制御PC14にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等プログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0071】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…クライアントPC、12…サーバー、14…RFIDリーダー制御PC、16…RFIDリーダー、20…RFIDリーダー制御部、22…通信部、24…読み取り設定管理部、24a,24b…読み取り設定データ、26…タグ情報格納バッファ管理部、28…タグ情報格納バッファ、30…バッファ監視部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2005−005836号公報
【特許文献2】特開2008−191947号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に付けられた無線タグの情報を読み取る無線タグ読取装置において、
前記情報の読み取りの内容を示す複数の読み取り設定を管理する読み取り設定管理手段と、
前記無線タグから読み取った情報を格納するための格納手段と、
前記格納手段の空き容量を監視する監視手段と、
前記監視手段により監視された前記格納手段の空き容量に基づいて前記無線タグから情報を読み取るための読み取り設定を変更し、この読み取り設定に応じて前記無線タグから情報を読み取り前記格納手段に格納させる制御手段と
を具備したことを特徴とする無線タグ読取装置。
【請求項2】
前記読み取り設定管理手段は、前記格納手段に格納される情報量を少なくする読み取り設定の順に優先度が付された前記複数の読み取り設定を管理し、
前記制御手段は、
前記監視手段により前記空き容量が第1の基準値より少なくなった場合に、優先度の低い前記読み取り設定に変更し、
前記監視手段により前記空き容量が第2の基準値より多くなった場合に、優先度の高い前記読み取り設定に変更して前記無線タグから情報を読み取ることを特徴とする請求項1記載の無線タグ読取装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記読み取り設定の優先度を1段階毎に変更することを特徴とする請求項2記載の無線タグ読取装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記監視手段により前記空き容量が減少する単位時間当たりの変化率が第3の基準値より大きい場合に、優先度が複数段階低い前記読み取り設定に変更し、
前記監視手段により前記空き容量が増加する単位時間当たりの変化率が第4の基準値より大きい場合に、優先度が複数段階高い前記読み取り設定に変更することを特徴とする請求項2記載の無線タグ読取装置。
【請求項5】
前記読み取り設定に含まれるデータ形式の指定に基づいて、前記無線タグから読み取られた情報を前記データ形式に変換する変換手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記変換手段によりデータ形式が変換された情報を前記格納手段に格納させることを特徴とする請求項1記載の無線タグ読取装置。
【請求項6】
物品に付けられた無線タグの情報を読み取るコンピュータを、
前記情報の読み取りの内容を示す複数の読み取り設定を管理する読み取り設定管理手段と、
前記無線タグから読み取った情報を格納するための格納手段の空き容量を監視する監視手段と、
前記監視手段により監視された前記格納手段の空き容量に基づいて前記無線タグから情報を読み取るための読み取り設定を変更し、この読み取り設定に応じて前記無線タグから情報を読み取り前記格納手段に格納させる制御手段として機能させるための無線タグ読取プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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