説明

無線基地局装置及び無線通信方法

【課題】生成する干渉レプリカ信号の信頼度を改善し、自セル内端末装置から受信する信号の受信品質を保つことのできる無線基地局装置を提供する。
【解決手段】無線基地局装置は、自セル内の第1端末装置が送信した信号と、他セル内の第2端末装置が送信した信号とを受信する受信部と、干渉レプリカ信号を用いて受信部が受信した信号から第1端末装置及び第2端末装置それぞれの受信信号を分離する干渉除去部と、第2端末装置と通信を行う他の無線基地局装置に対して、当該第2端末装置から受信した信号に基づく対数尤度比を要求する情報を送信する制御部と、第1端末装置の通信路値を用いて復号結果である対数尤度比及び干渉レプリカ信号を生成する第1復号処理部と、他の無線基地局装置から受信した対数尤度比と、第2端末装置の通信路値とを用いて復号結果である対数尤度比及び干渉レプリカ信号を生成する第2復号処理部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に無線基地局装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信、特に、携帯型の無線端末装置による無線通信の需要の増加に伴い、周波数利用効率を向上する技術の研究が盛んに行われている。
非特許文献1では、複数のチャネルインタリーブパタンによりチャネルを識別するIDMA(Interleave-Division Multiple-Access;インターリーブ分割多元接続方式)が提案されている。このIDMA方式による通信では、端末装置が送信時に拡散処理を行う代わりに、無線基地局装置は、通信端末ごとに予め割り当てられた異なるインターリーブ・パターンを用いてユーザ分離を行う。このため、システムの全処理利得を符号化のために用いることができ、CDMAに比べて高い周波数利用効率を達成することができる。
【0003】
また、IDMA方式による通信では、端末装置において送信時に拡散処理を行わないため、無線基地局装置において、チップレベルでのマルチユーザ干渉除去を行う必要がある。このとき、各端末装置が異なるインターリーブ・パターンを用いていることから、他の端末装置から送信される信号による干渉をガウシアン分布に近似することができる。その結果、IDMA方式において用いるマルチユーザ検出器は、CDMA方式などで用いられているマルチユーザ検出器に比べて低い計算量により干渉除去を行うことができる。
【0004】
また、IDMA方式による通信は、マルチユーザ受信を全体としているため、携帯電話システム(セルラシステム)の端末装置から無線基地局装置に送信する上りリンクへの適用が広く検討されている。非特許文献2では、セルラシステムにIDMA方式を適用するにあたって、セルごとに異なるインターリーブ・パターンを割り当てることにより、無線基地局装置において隣接するセル内に位置する端末装置からの干渉を除去することができる。
【0005】
図5は、IDMA方式を用いた複数の端末装置と通信を行う無線基地局装置9の構成を示す概略ブロック図である。
図示するように、無線基地局装置9は、アンテナ91と、受信部92と、干渉除去部93と、復号処理部941−1、…、941−K、942−1、…、942−N(K、Nは、自然数)とを具備する。
【0006】
受信部92は、複数の端末装置から送信された送信信号が合成された信号をアンテナ91を介して受信し、受信した信号(以下、受信信号)を干渉除去部93に出力する。
干渉除去部93は、CDMA(Code-Division Multiple-Access;符号分割多重接続)方式と同様に、複数の端末装置それぞれとの間のチャネル推定値と、復号処理部941−1、…、941−K、942−1、…、942−Nが出力する干渉レプリカ信号とを用いて干渉除去処理を行う。この干渉除去処理は、受信信号からそれぞれの干渉を除去して、それぞれの送信信号に対して推定した通信路値を算出する処理である。また、干渉除去部93は、推定した通信路値を復号処理部941−1、…、941−K、942−1、…、942−Nに出力する。
【0007】
復号処理部941−1、…、941−K、942−1、…、942−Nは、それぞれ同じ構成を有しており、メトリック算出部95及び対数尤度比算出部96を備えている。また、復号処理部941−1、…、941−Kは、自セル内に位置する端末装置の通信路値に対して復号処理を行う。一方、復号処理部942−1、…、942−Nは、他セル内に位置する端末装置の通信路値に対して復号処理を行う。
【0008】
メトリック算出部95は、干渉除去部93から入力された通信路値に対するメトリックを算出する。対数尤度比算出部96は、メトリック算出部95が算出するメトリックから対数尤度比を算出して対数尤度比及び干渉レプリカ信号を算出する。また、対数尤度比算出部96は、算出した干渉レプリカ信号を干渉除去部93に出力する。この干渉レプリカ信号は、復号処理で得られた対数尤度比(Log-Likelihood Radio;LLR)から算出される信号であり、干渉除去部93にフィードバックされる。
【0009】
上述のように構成された無線基地局装置9において、干渉除去部93は、各復号処理部よりフィードバックされる干渉レプリカ信号を受信信号から減算して干渉する信号を除去し、これを繰り返すことにより通信路値の品質を向上させる。
また、IDMA方式による通信では、非常に低い符号化率の誤り訂正符号を導入することにより、同一フレーム内に尤度の低いシンボルが存在した場合においても、誤り訂正符号の符号化利得により尤度を回復することができる。具体的には、上述した干渉除去部93と復号処理部941−1、…、941−K、942−1、…、942−Nとの間で行われる干渉レプリカ信号をフィードバックする処理を繰り返すことにより、効果的に干渉を除去することができる。さらに、復号処理部941−1、…、941−K、942−1、…、942−Nから干渉レプリカ信号をフィードバックする回数を増やすことにより、無線基地局装置9において端末装置から受信する信号の受信品質を向上させることができる。
繰り返し処理を行うことにより、復号結果及び干渉レプリカ信号の精度は向上し、精度の向上した干渉レプリカ信号を用いることにより、さらに復号結果及び干渉レプリカ信号の精度はさらに向上する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Li Ping et.al, “Interleave-Division Multiple-Access,” IEEE Transactions on Wireless Communications, vol.5, no.4, April 2009.
【非特許文献2】“Inter-cell Interference Mitigation based on IDMA,” IEEE C802.16m-07/115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図5に示した無線基地局装置9において、通信経路における減衰などにより、隣接する他セルに属する端末装置からの受信信号の受信電力が小さくなると、復号処理を繰り返して行っても、誤り訂正によって尤度を回復することができない場合が生じる。この場合、復号処理部941−1、…、941−K、942−1、…、942−Nが生成する干渉レプリカ信号は、精度が低く信頼性の低い信号となり、逐次的な繰り返し処理における収束速度の低下、ビット誤り率の収束点の劣化を引き起こしてしまう。さらに、無線基地局装置9が、自セル内の端末装置から受信する信号の受信品質の低下を招いてしまう問題がある。
【0012】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、IDMA方式による通信において、隣接する他セルに属する端末装置からの受信信号の電力が小さくなる場合、生成する干渉レプリカ信号の信頼度を改善し、自セル内端末装置から受信する信号の受信品質を向上させることができる無線基地局装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記問題を解決するために、本発明は、自セル内に位置する複数の第1端末装置とインターリーブ分割多元接続方式により通信を行う無線基地局装置において、前記複数の第1端末装置それぞれが送信した信号と、他セル内の第2端末装置が送信した信号とを受信する受信部と、干渉レプリカ信号を用いて前記受信部が受信した信号から前記複数の第1端末装置及び前記第2端末装置それぞれの受信信号を分離して通信路値を算出する干渉除去部と、前記第2端末装置と通信を行う他の無線基地局装置に対して、当該第2端末装置から受信した信号に基づく対数尤度比を要求する情報を送信する制御部と、前記第1端末装置の前記通信路値を用いて復号結果である対数尤度比及び前記干渉レプリカ信号を生成する第1復号処理部と、前記他の無線基地局装置から受信した前記対数尤度比と、前記第2端末装置の前記通信路値とを用いて復号結果である対数尤度比及び前記干渉レプリカ信号を生成する第2復号処理部とを具備することを特徴とする無線基地局装置である。
(2)また、本発明は、上記に記載の発明において、受信電力値が予め定めた閾値以上である他セル内の第2端末装置を前記通信路値及び前記干渉レプリカ信号の生成対象とすることを特徴とする。
(3)また、本発明は、上記に記載の発明において、前記他の無線基地局装置から前記対数尤度比を要求する情報を受信すると、前記複数の第1端末装置の前記通信路値に基づく前記対数尤度比を、要求した前記他の無線基地局装置に送信する対数尤度比送信部を備えることを特徴とする。
(4)また、本発明は、上記に記載の発明において、前記対数尤度比送信部は、前記対数尤度比に誤りが含まれない場合、前記対数尤度比を要求した前記他の無線基地局装置に前記対数尤度比を送信し、前記対数尤度比に誤りが含まれる場合、前記対数尤度比を要求した前記他の無線基地局装置に前記対数尤度比を送信しないことを特徴とする。
(5)また、本発明は、上記に記載の発明において、前記対数尤度比送信部は、前記対数尤度比を送信する際、前記対数尤度比の硬判定値及び信頼度係数を前記対数尤度比として送信することを特徴とする。
(6)また、本発明は、上記に記載の発明において、前記制御部は、前記第1端末装置の復号結果に誤りがある場合、有線回線により接続された前記他の無線基地局装置に前記対数尤度比を要求する情報を送信することを特徴とする。
(7)また、本発明は、自セル内に位置する複数の第1端末装置とインターリーブ分割多元接続方式により通信を行う無線基地局装置が行う無線通信方法であって、前記複数の第1端末装置それぞれが送信した信号と、他セル内の第2端末装置が送信した信号とを受信する過程と、干渉レプリカ信号を用いて前記受信部が受信した信号から前記複数の第1端末装置及び前記第2端末装置それぞれの受信信号を分離して通信路値を算出する過程と、前記第2端末装置と通信を行う他の無線基地局装置に対して、当該第2端末装置から受信した信号に基づく対数尤度比を要求する情報を送信する過程と、前記第1端末装置の前記通信路値を用いて復号結果である対数尤度比及び前記干渉レプリカ信号を生成する過程と、前記他の無線基地局装置から受信した前記対数尤度比と、前記第2端末装置の前記通信路値とを用いて復号結果である前記対数尤度比及び前記干渉レプリカ信号を生成する過程とを具備することを特徴とする無線通信方法である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、隣接する他セルに属する端末装置から送信される信号の受信電力が小さくなる場合においても、生成する干渉レプリカ信号の信頼度を維持することができ、受信品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における無線通信システム100の構成例を示す概略図である。
【図2】本実施形態における無線基地局装置1の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】本実施形態における無線基地局装置1の受信処理を示すフローチャートである。
【図4】変形例における無線通信システム500の構成例を示す概略図である。
【図5】IDMA方式を用いた複数の端末装置と通信を行う無線基地局装置9の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態における無線基地局装置及び無線通信方法を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における無線通信システム100の構成例を示す概略図である。図1は、無線通信システム100の一構成例を示しており、無線基地局装置1a、1b、1cと、端末装置311、…、31K、321、…、32L、331、…、33M(K,L,Mは、いずれも自然数)とを具備している。
以下、無線基地局装置1a、1b、1cは、同じ構成を有しており、いずれか1つの無線基地局装置、あるいは、全ての無線基地局装置を示す場合、「無線基地局装置1」という。また、端末装置311、…、31K、321、…、32L、331、…32Mは、同じ構成を有しており、いずれか1つの端末装置、あるいは、全ての端末装置を示す場合、端末装置300という。
【0017】
無線基地局装置1a〜1cは、複数の端末装置300と通信を行う通信装置であり、一意に識別できる基地局識別子(以下、基地局ID(IDentifier)という)が予め割り当てられると共に、他の無線基地局装置1とバックホール回線5を通じて接続されている。
また、無線基地局装置1a〜1cは、それぞれ端末装置300とデータの送受信が可能な領域であるセル10a〜10cを構成している。セル10aには、端末装置311、…、31Kが位置し、端末装置311、…、31Kと無線基地局装置1aとは、データの送受信を行う。セル10bには、端末装置321、…、32Lが位置し、端末装置321、…、32Lと無線基地局装置1bとは、データの送受信を行う。セル10cには、端末装置331、…、33Mが位置し、端末装置331、…、33Mと無線基地局装置1cとは、データの送受信を行う。
【0018】
端末装置300は、IDMA方式により無線基地局装置1と通信を行う通信装置であり、一意に識別できる端末識別子(以下、端末IDという)と、異なるインターリーブ・パターンとが重複なく予め割り当てられている。
なお、無線通信システム100として、3つの無線基地局装置が配置されている例を示しているが、これに限定されることなく本発明の無線通信システムは、少なくとも2つ以上の無線基地局装置を具備していてもよい。
【0019】
図2は、本実施形態における無線基地局装置1の構成を示す概略ブロック図である。ここでは、各構成の説明を無線基地局装置1aの場合について説明する。
図示するように、無線基地局装置1は、アンテナ11、受信部12、干渉除去部13、復号処理部141〜14S(Sは自然数)と、復号処理部151〜15T(Tは自然数)と、誤り検出部161〜16Sと、上位層処理部17と、対数尤度比受信部18と、対数尤度比送信部19と、対数尤度比制御部20と、硬判定部441〜44Sと、硬判定部451〜45Tとを備えている。
【0020】
受信部12は、アンテナ11を介して、端末装置300から送信された信号を受信し、受信した信号(受信信号)を干渉除去部13に出力する。この受信部12が受信する信号は、通信対象となる自セル内に位置する端末装置300から送信された信号だけではなく、他セル内に位置する端末装置300から送信された信号が合成された信号である。
干渉除去部13は、CDMA方式における干渉除去処理と同様に、複数の端末装置300それぞれとの間のチャネル推定値と、復号処理部141〜14S、151〜15Tが出力する干渉レプリカ信号とを用いて、入力された受信信号に対して干渉除去処理を行い、端末装置300からの送信信号それぞれに対して推定した通信路値を算出する。この通信路値は、受信信号に含まれる複数の端末装置300それぞれが送信した信号を受信信号から推定した値であり、復号処理部141〜14S、151〜15Tそれぞれに出力される。また、干渉除去部13は、端末装置300それぞれから受信した信号の受信電力値をプリアンブルなどから算出し、算出した端末装置300ごとの受信電力値を上位層処理部17に出力する。
【0021】
復号処理部141〜14Sは、同じ構成を有しており、自無線基地局装置1のデータの送受信対象となる端末装置300から送信された信号の復号処理が割り当てられる。また、復号処理部141〜14Sは、割り当てられた端末装置300に対応する通信路値が干渉除去部13から入力され、入力された通信路値に対して復号処理を行い、対数尤度比と干渉レプリカ信号とを生成する。また、復号処理部141〜14Sは、メトリック算出部21と、対数尤度比算出部22とを有している。
メトリック算出部21は、干渉除去部13から入力された通信路値から当該通信路値に対するメトリックを算出する。対数尤度比算出部22は、メトリック算出部21が算出したメトリックに基づいて対数尤度比を算出して復号結果である対数尤度比と、干渉レプリカ信号とを出力する。
【0022】
復号処理部151〜15Tは、同じ構成を有しており、自無線基地局装置1のデータの送受信対象以外の端末装置300、すなわち、他セル内に位置する端末装置300から送信された信号の復号処理が割り当てられる。また、復号処理部151〜15Tは、割り当てられた端末装置300に対応する通信路値が干渉除去部13から入力され、入力された通信路値に対して復号処理を行い、復号結果である対数尤度比と、干渉レプリカ信号とを生成する。また、復号処理部151〜15Tは、メトリック算出部25、26と、合成部27、対数尤度比算出部28とを有している。
【0023】
メトリック算出部25は、メトリック算出部21と同じ構成であり、干渉除去部13から入力された通信路値に対するメトリックを算出する。メトリック算出部26は、メトリック算出部21と同じ構成であり、対数尤度比受信部18から入力された対数尤度比からメトリックを算出する。合成部27は、メトリック算出部25が算出したメトリックと、メトリック算出部26が算出したメトリックとを加算により合成する。対数尤度比算出部28は、対数尤度比算出部22と同じ構成を有しており、合成部27が合成したメトリックに基づいて対数尤度比を算出して復号結果である対数尤度比と、干渉レプリカ信号とを出力する。
対数尤度比算出部22、28が出力する干渉レプリカ信号は、端末装置300が送信した信号のレプリカであり、復号処理において得られた対数尤度比から算出される信号である。また、対数尤度比算出部22、28が出力する復号結果は、対数尤度比、すなわち軟判定値である。
【0024】
硬判定部441〜44Sは、復号処理部141〜14Sそれぞれに対して1つずつ対応して設けられ、復号処理部141〜14Sが出力する復号結果の対数尤度比に対して硬判定を行い、復号信号である硬判定値を出力する。
硬判定部451〜45Tは、復号処理部151〜15Tそれぞれに対して1つずつ対応して設けられ、復号処理部151〜15Tが出力する符号結果の対数尤度比に対して硬判定を行い、復号信号である硬判定値を出力する。
【0025】
誤り検出部161〜16Sは、硬判定部441〜44Sが出力する復号結果の硬判定値に対して誤り検出を行い、その結果を対数尤度比制御部20に出力する。誤り検出部161〜16Sは、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check;巡回冗長検査)などにより誤り検出を行う。
上位層処理部17は、干渉除去部13から入力される端末装置300それぞれから受信した信号の受信電力と、硬判定部441〜44S及び硬判定部451〜45Tから入力される復号結果の硬判定値とに基づいて、自無線基地局装置1のデータの送受信対象となる端末装置300、すなわち、自セル内に位置する端末装置300(以下、自セルの端末装置300)を選択する。また、上位層処理部17は、前述の受信信号及び復号信号に基づいて、他セルに位置する端末装置300うち復号処理対象とする端末装置300(以下、他セルの端末装置300)を選択する。
【0026】
また、上位層処理部17は、自セルの端末装置300それぞれの復号処理を復号処理部141〜14Sに割り当て、他セルの端末装置300それぞれの復号処理を復号処理部151〜15Tに割り当てる。なお、この他セルの端末装置300は、他セル内に位置する端末装置300のうち、当該端末装置300からの受信する信号の受信電力値が予め定めた閾値以上の端末装置300である。この閾値は、送受信対象となる端末装置300との間で行われる通信に求められる通信品質に応じて定められ、シミュレーションや実測値などに基づいて決定される値である。
また、上位層処理部17は、自セルの端末装置300の通信路値が復号処理部141〜14Sそれぞれに出力され、他セルの端末装置300の通信路値が復号処理部151〜15Tそれぞれに出力されるように干渉除去部13を制御する。また、上位層処理部17は、復号信号に含まれる端末IDを取得して、送受信対象となる端末装置300の端末IDと、送受信対象外の端末装置300の端末IDとを記憶する。
【0027】
対数尤度比受信部18は、無線基地局装置1を互いに接続するバックホール回線5を通じて他の無線基地局装置1の対数尤度比送信部19から送受信対象以外の端末装置300の復号結果の対数尤度比を受信し、復号処理部151〜15Tに受信した信号である対数尤度比を出力する。このとき、対数尤度比受信部18が復号処理部151〜15Tに出力する対数尤度比は、復号処理部151〜15Tに割り当てられた端末装置300に対応する信号である。
対数尤度比送信部19は、対数尤度比制御部20の制御に応じて、復号処理部141〜14Sから入力される復号結果の対数尤度比をバックホール回線5を通じて他の無線基地局装置1の対数尤度比受信部18に送信する。
【0028】
対数尤度比制御部20は、誤り検出部161〜16Sから誤りを検出したこと示す信号が入力されると、復号処理部151〜15Tに割り当てられた端末装置300の復号結果の対数尤度比を、当該端末装置300をデータの送受信対象とする他の無線基地局装置1に要求する対数尤度比要求情報をバックホール回線5に送信する。この対数尤度比要求情報は、復号処理部151〜15Tに割り当てられた他セルの端末装置300それぞれの端末IDを含む情報である。また、対数尤度比制御部20は、対数尤度比要求情報をバックホール回線5においてブロードキャストしてもよいし、他セルの端末装置300の位置する情報を管理する基地局制御装置(Base Station Controller;BSC)などに問い合わせて、当該端末装置300が位置するセルの無線基地局装置1のみに送信するようにしてもよい。
【0029】
また、対数尤度比制御部20は、バックホール回線5を通じて対数尤度比要求情報を受信し、受信した対数尤度比要求情報に自セルの端末装置300に対応する端末IDが含まれていると、当該端末IDに対応する復号結果の対数尤度比を事前値としてバックホール回線5に送信させる制御を対数尤度比送信部19に対して行う。
上述の構成において、無線基地局装置1では、復号処理部141〜14S、151〜15Tと、干渉除去部13とが、干渉レプリカ信号をフィードバックして復号処理を一定回数繰り返して行い、復号処理部141〜14S、151〜15Tが復号結果の対数尤度比を出力する。その後に、誤り検出部161〜16Sは、硬判定部441〜44Sが出力する復号信号に対して、誤り判定を行う。
【0030】
図3は、本実施形態における無線基地局装置1の受信処理を示すフローチャートである。ここでは、図1に示したように、無線基地局装置1aは、端末装置311〜31Kとデータの送受信を行うと共に、他セルであるセル10bに位置する端末装置321から送信された信号を受信する場合について説明する。
まず、無線基地局装置1aにおいて、受信部12が端末装置311〜31K、321から送信された信号を受信し、受信した受信信号を干渉除去部13に出力する。干渉除去部13は、入力された受信信号より通信路値を生成して、生成した通信路値を復号処理部141〜14S、151に出力する。復号処理部141〜14S、151は、入力された通信路値に対して復号処理を行い、対数尤度比を出力する(ステップS101)。
【0031】
誤り検出部161〜16Sは、硬判定部441〜44Sが出力した復号結果の硬判定値に対して誤り検出を行い、その検出結果を対数尤度比制御部20に出力する。対数尤度比制御部20は、誤り検出部161〜16Sが誤りを検出したか否かを判定し(ステップS102)、全ての復号信号において誤りがない場合(ステップS102:No)、端末装置311〜31Kに対してアクノレッジ信号を送信するなどして、受信処理を終了する。
【0032】
一方、復号信号のいずれかに誤りが含まれていた場合(ステップS102:Yes)、当該フレームにおける復号処理の繰り返し回数が、予め定めた回数に達したか否かを判定し(ステップS103)、当該回数に達していた場合(ステップS103:Yes)、無線基地局装置1は、正しく信号を受信できた端末装置300に対してアクノレッジ信号を送信し、正しく信号を受信できなかった端末装置300に対して再送要求を送信するなどして、受信処理を終了する。ステップS103において判定に用いる予め定めた回数は、トラヒックに要求される許容遅延などにより定められる回数である。
【0033】
復号処理の繰り返し回数が、予め定めた回数に達していない場合、対数尤度比制御部20は、データの送受信対象外に選択した端末装置321の端末IDを含む対数尤度比要求情報をバックホール回線5を通じて他の無線基地局装置1b、1cに送信する(ステップS104)。対数尤度比受信部18は、他の無線基地局装置1bから対数尤度比要求情報に応じて送信された端末装置321の事前情報を受信し、端末装置321の復号処理が割り当てられた復号処理部151に受信した事前情報を出力する(ステップS105)。この後、無線基地局装置1aは、ステップS101からステップS105の動作を繰り返して行う。
【0034】
上述のように、無線基地局装置1aは、自セル内に位置する端末装置311〜31Kの復号信号に誤りが存在する場合、端末装置311〜31Kの送信信号に干渉する他セルの端末装置321に対応する対数尤度比を、他の無線基地局装置1b、1cに要求する。そして、無線基地局装置1aは、他の無線基地局装置1bより受信した対数尤度比を、端末装置321の復号処理が割り当てられた復号処理部151に入力し、復号処理部151が出力する端末装置321の復号結果の対数尤度比及び干渉レプリカ信号の精度を向上させる。具体的には、復号処理部151が出力する復号結果の対数尤度比及び干渉レプリカ信号の尤度値の振幅(絶対値)が大きくなり、干渉除去部13における通信路値の分離の精度が向上することにより、端末装置311〜31Kの受信品質を向上させることができる。
【0035】
すなわち、無線基地局装置1aは、他セルの端末装置311から送信される信号を最も良い受信品質で受信している無線基地局装置1bにおける復号結果の対数尤度比を事前値として用いる。これにより、他セルの端末装置300に割り当てられた復号処理部151が出力する干渉レプリカ信号の精度が向上させることができ、干渉除去部13が出力する通信路値それぞれの精度を改善することができる。その結果、無線基地局装置1aは、セル間干渉の除去の精度を改善させ、端末装置311〜31Kからの受信品質を向上させることができる。
【0036】
なお、対数尤度比送信部19は、復号処理部141〜14Sの出力する復号結果の対数尤度比を事前値としてバックホール回線5を通じて送信する場合、誤り検出部161〜16Sの誤り検出結果に応じて、誤りが含まれない復号結果の対数尤度比のみをバックホール回線5に送信するようにしてもよい。これにより、誤りの含まれる対数尤度比が他の無線基地局装置1に送信され、当該無線基地局装置1の干渉除去部13が出力する通信路値の精度が低下することを防ぐことができる。すなわち、誤りの伝搬を防ぐことができると共に、バックホール回線5における対数尤度比の伝送量を減らすことができる。
【0037】
また、対数尤度比送信部19は、復号処理部141〜14Sの出力する復号結果の対数尤度比を事前値としてバックホール回線5を通じて送信する場合、復号結果の対数尤度比の硬判定値を送信するようにしてもよい。この場合、対数尤度比受信部18は、バックホール回線5を通じて受信した硬判定値を、予め定めた尤度、例えば「1」、を適用して対数尤度比に変換して復号処理部151〜15Tに出力する。これにより、対数尤度比送信部19がバックホール回線5を通じて送信する伝送量を減らすことができる。
【0038】
また、対数尤度比送信部19は、復号処理部141〜14Sの出力する復号結果の対数尤度比を事前値としてバックホール回線5を通じて送信する場合、復号結果の硬判定値と、復号結果の信頼度係数とを送信するようにしてもよい。この信頼度係数は、対数尤度比の平均的な電力値、すなわち、送信する復号結果の対数尤度比の予め定めた一定期間における振幅(絶対値)の平均値である。これにより、復号結果の対数尤度比をそのまま送信する場合に比べ、伝送量を減らすことができ、硬判定値を送信する場合に比べ、当該復号結果の受信状況に基づいた対数尤度比を復号処理部151〜15T入力し、干渉除去に反映することができる。
さらに、対数尤度比送信部19は、尤度が予め定めた値より高い場合、すなわち、復号結果が確からしい場合には、信頼度係数を送信せずに、硬判定値のみを送信するようにしてもよい。これにより、バックホール回線5における伝送量を減らしつつ、復号結果の尤度を反映した対数尤度比の送受信を行うことができる。
【0039】
また、対数尤度比制御部20は、トラヒックの種別に応じて、直接バックホール回線5により接続された他の無線基地局装置1のみに対数尤度比を要求するようにしてもよい。このトラヒックの種別とは、許容遅延の大小により区別し、許容遅延が小さい場合、直接接続された他の無線基地局装置1のみに対数尤度比を要求することにより、対数尤度比を取得に要する時間の増加を抑制する。この結果、復号処理に要する時間を一定時間以下にすることができ、許容遅延が小さいトラヒックの通信品質を損なうことを避けることができる。
一方、許容遅延が大きいトラヒックに対しては、対数尤度比を取得して、受信品質を向上させることができる。
【0040】
図4は、変形例における無線通信システム500の構成例を示す概略図である。例えば、図4に示すように、無線通信システム500は、無線基地局装置1a、1b、1c、1dを具備し、無線基地局装置1a〜1dそれぞれがセル10a〜10dを形成し、トラヒックの許容遅延が小さい場合、無線基地局装置1aの動作は、以下のようになる。無線基地局装置1aにおいて、対数尤度比制御部20は、他セルの端末装置321の事前情報をバックホール回線5により直接接続されている無線基地局装置1bに要求し、直接バックホール回線5により接続されていない無線基地局装置1dのセル内に位置する端末装置341の対数尤度比を要求しない。これにより、端末装置341の対数尤度比を受信するまでに要する時間が、トラヒックに要求される許容遅延より長い場合、対数尤度比を用いずに復号処理を行い、許容遅延を満たすことができる。
上述のように、対数尤度比制御部20は、対数尤度比の取得に要する時間と、トラヒックの許容遅延とを比較し、許容遅延を満たす範囲内で対数尤度比を要求するようにしてもよい。
【0041】
また、対数尤度比受信部18は、予め定めた時間内に対数尤度比を受信できない場合、ダミーの信号、例えば、尤度値が0の信号を出力するようにしてもよい。これにより、無線基地局装置1は、対数尤度比の取得に時間を要する場合、許容遅延の小さいトラヒックを満たすことを優先して復号処理を行うことができる。
【0042】
なお、上述の実施形態において、固定された無線基地局装置1と、移動可能な端末装置300とを例にして説明したが、固定された無線通信装置の間の通信、あるいは移動可能な無線通信装置の間の通信に適用してもよい。
なお、上述の実施形態において、誤り検出部161〜16Sは、硬判定部441〜44Sの出力した硬判定結果に対して誤り判定をする構成を説明したが、これに限らず、復号処理部141〜14Sの出力する復号結果の対数尤度比に対して誤り判定するようにしてもよい。
【0043】
上述の無線基地局装置1は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。その場合、上述した受信処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われることになる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0044】
1、1a、1b、1c、1d、9 無線基地局装置
5 バックホール回線
11、91 アンテナ
12、92 受信部
13、93 干渉除去部
141、14S、151、15T、941−1、941−K、942−1、942−N 復号処理部
161、16S 誤り検出部
17 上位層処理部
18 対数尤度比受信部
19 対数尤度比送信部
20 対数尤度比制御部
21、25、26、95 メトリック算出部
22、28、96 対数尤度比算出部
27 合成部
100、500 無線通信システム
300、311、31K、321、32L、331、33M、341 端末装置
441、44S、451、45T 硬判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自セル内に位置する複数の第1端末装置とインターリーブ分割多元接続方式により通信を行う無線基地局装置において、
前記複数の第1端末装置それぞれが送信した信号と、他セル内の第2端末装置が送信した信号とを受信する受信部と、
干渉レプリカ信号を用いて前記受信部が受信した信号から前記複数の第1端末装置及び前記第2端末装置それぞれの受信信号を分離して通信路値を算出する干渉除去部と、
前記第2端末装置と通信を行う他の無線基地局装置に対して、当該第2端末装置から受信した信号に基づく対数尤度比を要求する情報を送信する制御部と、
前記第1端末装置の前記通信路値を用いて復号結果である対数尤度比及び前記干渉レプリカ信号を生成する第1復号処理部と、
前記他の無線基地局装置から受信した前記対数尤度比と、前記第2端末装置の前記通信路値とを用いて復号結果である対数尤度比及び前記干渉レプリカ信号を生成する第2復号処理部と
を具備することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
受信電力値が予め定めた閾値以上である他セル内の第2端末装置を前記通信路値及び前記干渉レプリカ信号の生成対象とする
ことを特徴とする請求項1に記載の無線基地局装置。
【請求項3】
前記他の無線基地局装置から前記対数尤度比を要求する情報を受信すると、前記複数の第1端末装置の前記通信路値に基づく前記対数尤度比を、要求した前記他の無線基地局装置に送信する対数尤度比送信部
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線基地局装置。
【請求項4】
前記対数尤度比送信部は、前記対数尤度比に誤りが含まれない場合、前記対数尤度比を要求した前記他の無線基地局装置に前記対数尤度比を送信し、前記対数尤度比に誤りが含まれる場合、前記対数尤度比を要求した前記他の無線基地局装置に前記対数尤度比を送信しない
ことを特徴とする請求項3に記載の無線基地局装置。
【請求項5】
前記対数尤度比送信部は、前記対数尤度比を送信する際、前記対数尤度比の硬判定値及び信頼度係数を前記対数尤度比として送信する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の無線基地局装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1端末装置の復号結果に誤りがある場合、有線回線により接続された前記他の無線基地局装置に前記対数尤度比を要求する情報を送信する
ことを特徴とする請求項1から請求項5いずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項7】
自セル内に位置する複数の第1端末装置とインターリーブ分割多元接続方式により通信を行う無線基地局装置が行う無線通信方法であって、
前記複数の第1端末装置それぞれが送信した信号と、他セル内の第2端末装置が送信した信号とを受信する過程と、
干渉レプリカ信号を用いて前記受信部が受信した信号から前記複数の第1端末装置及び前記第2端末装置それぞれの受信信号を分離して通信路値を算出する過程と、
前記第2端末装置と通信を行う他の無線基地局装置に対して、当該第2端末装置から受信した信号に基づく対数尤度比を要求する情報を送信する過程と、
前記第1端末装置の前記通信路値を用いて復号結果である対数尤度比及び前記干渉レプリカ信号を生成する過程と、
前記他の無線基地局装置から受信した前記対数尤度比と、前記第2端末装置の前記通信路値とを用いて復号結果である前記対数尤度比及び前記干渉レプリカ信号を生成する過程と
を具備することを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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