説明

無線通信システム

【課題】アンテナとして平衡線路を使用することで敷設を容易にし、しかも、平衡線路の終端の延長方向においても無線通信端末と基地局との通信を良好にする。
【解決手段】基地局1と、この基地局1に接続された平衡線路2と、この平衡線路2の終端に接続された送受信アンテナ3と、平衡線路のみを介して基地局1と無線通信を行う無線通信端末5や送受信アンテナ3及び平衡線路2を介して基地局1と無線通信を行う無線通信端末6を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡線路をアンテナの一部として使用する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平衡線路をアンテナとして使用した無線通信システムは、固定局に平衡線路からなる誘導線路を接続し、この誘導線路の終端に、平衡線路の伝送インピーダンスと同じ値の整合インピーダンス素子を接続し、誘導線路からの漏れ磁界を移動台車に搭載されている結合器(アンテナ)によって受信し、また、移動台車からの送信情報を結合器から誘導線路を介して固定局に送信することで双方向通信を実現したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−94463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献のように平衡線路を敷設してアンテナとして使用するものでは、漏洩伝送ケーブルを敷設してアンテナとして使用するものに比べて、軽量で柔軟性があり、従って、敷設が容易にできるというメリットがある。しかしながら、平衡線路から放射される電波は弱く、しかも、終端部を整合インピーダンス素子で終端しているので、平衡線路の終端の延長方向に少しでも外れると、通信が全くできなくなるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、アンテナとして平衡線路を使用することで敷設が容易にでき、しかも、平衡線路の終端の延長方向においても無線通信端末が基地局との通信を良好に行うことができる無線通信システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基地局と、この基地局に接続された平衡線路と、この平衡線路の終端に接続された送受信アンテナとを備え、基地局は、平衡線路のみを介して、あるいは、平衡線路及び送受信アンテナを介して無線通信端末と通信を行う無線通信システムにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アンテナとして平衡線路を使用することで敷設が容易にでき、しかも、平衡線路の終端の延長方向においても無線通信端末が基地局との通信を良好に行うことができる無線通信システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、基地局1に平衡二線からなる平衡線路2の一端側を接続している。前記平衡線路2の他端側の終端には無指向性の送受信アンテナ3を接続している。
【0008】
前記平衡線路2は、例えば、室内に棚4が2列になって複数並べられた列の中央の、例えば、天井に敷設されている。前記複数の棚4の間には、前記平衡線路2の側方に位置して無線通信端末5が配置されている。また、前記平衡線路2の終端の延長方向である前記送受信アンテナ3の前方にも無線通信端末6が配置されている。
【0009】
このような構成においては、基地局1から平衡線路2に送られた信号はこの平衡線路2内を伝搬しながらその一部が電波として漏れ、平衡線路2の沿線にある無線通信端末5によりその電波が受信される。また、無線通信端末5からの送信電波が平衡線路2によって受信され、受信信号が平衡線路2を介して基地局1に送信される。こうして、基地局1と無線通信端末5が平衡線路2を介して無線結合され、両者は無線通信が可能になる。
【0010】
また、平衡線路2が配置されていない、すなわち、平衡線路2の終端の延長方向のエリアに配置されている無線通信端末6は平衡線路2から漏れる電波を受信することはできない。しかし、平衡線路2の終端に送受信アンテナ3が接続されているので、この送受信アンテナ3からの電波を受信することはできる。また、無線通信端末6からの送信電波は送受信アンテナ3によって受信される。こうして、基地局1は、送受信アンテナ3を介して無線通信端末6と無線結合され、両者は平衡線路2及び送受信アンテナ3を介して通信が可能になる。
【0011】
また、平衡線路2の側方に配置されていても平衡線路2からの距離が遠い無線通信端末7は、平衡線路2から漏れる電波が弱いため受信することはできない。しかし、送受信アンテナ3が無指向性となっているので、無線通信端末7は送受信アンテナ3との送受信ができ、無線通信端末6と同様に基地局1は、送受信アンテナ3を介して無線通信端末7と無線結合され、両者は平衡線路2及び送受信アンテナ3を介して通信が可能になる。
【0012】
こうして、平衡線路2の沿線にある無線通信端末5は勿論、平衡線路2の終端の延長方向に配置されている無線通信端末6や平衡線路2から距離が遠い無線通信端末7も基地局1との通信を良好に行うことができる。また、アンテナとして軽量で柔軟性のある平衡線路2を使用しているので、天井等に敷設することが容易にでき、また、部屋のレイアウト変更によって敷設し直す場合の工事も容易になる。
【0013】
(第2の実施の形態)
なお、前述した第1の実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
これは、図2に示すように、平衡線路2の他端側の終端に指向性を有する送受信アンテナ13を接続したものである。その他の構成は、前述した第1の実施の形態と同様である。前記送受信アンテナ13は、その指向性を平衡線路2の終端の延長方向に向けている。
【0014】
このような構成においては、送受信アンテナ13は平衡線路2の終端の延長方向に対して指向性を有するので、この方向に対しては比較的距離が隔てていても、無線通信端末6は送受信アンテナ13からの電波を十分に受信することができる。従って、実質的に平衡線路2を長く延長した場合と同様の効果が得られるものである。
【0015】
(第3の実施の形態)
次に平衡線路の配置方法について述べる。この配置方法は前述した各実施の形態において適用できるものである。
【0016】
図3に示すように、オフィスのフロア21に机22が横に5列、縦に6列配列されている環境下においては、上側半分の横5列、縦3列を第1の無線通信セグメント23、下側半分の横5列、縦3列を第2の無線通信セグメント24としている。
【0017】
そして、この2つの無線通信セグメント23、24が異なる無線通信エリアになるように、第1の平衡線路25を第1の無線通信セグメント23の中央部分に配置し、第2の平衡線路26を第2の無線通信セグメント24の中央部分に配置する。そして、第1の平衡線路25の一端に第1の基地局27を接続し、他端に無指向性の送受信アンテナ29を接続する。また、第2の平衡線路26の一端に第2の基地局28を接続し、他端に無指向性の送受信アンテナ30を接続する。
【0018】
そして、第1の基地局27は、第1の無線通信セグメント23にある机22の上にある無線通信端末31と第1の平衡線路25を介して無線通信を行い、第2の基地局28は、第2の無線通信セグメント24にある机22の上にある無線通信端末32と第2の平衡線路26を介して無線通信を行う。
【0019】
また、各無線通信セグメント23、24から外れた、平衡線路25,26の終端の延長方向に無線通信端末(図示せず)があれば、第1の基地局27は、送受信アンテナ29を介して無線通信端末と無線結合され、両者は第1の平衡線路25及び送受信アンテナ29を介して通信を行い、また、第2の基地局28は、送受信アンテナ30を介して無線通信端末と無線結合され、両者は第2の平衡線路26及び送受信アンテナ30を介して通信を行う。なお、用途によっては、送受信アンテナ29,30を、指向性を有するアンテナとしてもよい。
【0020】
また、図4に示すように、オフィスのフロア21に机22が2列に向かい合わせて配列されている環境下においては、一端に基地局35を接続し、他端である終端に無指向性の送受信アンテナ37を接続している平衡線路36を、机列の中央部分あるいはその垂直方向で、かつ、机上に配置される無線通信端末38と無線リンクが確立できる位置に、机列の長手方向に沿って配置する。
【0021】
このような構成においては、基地局35は、無線通信端末38と平衡線路36を介して無線通信を行う。また、平衡線路36の終端の延長方向に無線通信端末(図示せず)があれば、基地局35は、送受信アンテナ37を介して無線通信端末と無線結合され、両者は平衡線路36及び送受信アンテナ37を介して通信を行う。なお、用途によっては、送受信アンテナ37を、指向性を有するアンテナとしてもよい。
【0022】
この構成における具体的な配置例について述べると、図5に示すように、机22がパーティション39によって仕切られて2列に向かい合わせて配列されている場合には、前記パーティション39の上に平衡線路36を配置する。また、図6に示すように、2列に向かい合わせて配列された机22の中央部に電気配線用ダクトなどの溝40が形成されているときには、この溝40内に平衡線路36を配置する。
【0023】
また、図7に示すように、オフィスのフロア21に、机22を2列にして向かい合わせて配列した机列41と、机22を2列にして向かい合わせて配列した机列42との間に通路43を設けた環境下においては、一端に基地局35を接続し、他端である終端に無指向性の送受信アンテナ37を接続している平衡線路36を、通路43に沿って、その通路43の垂直方向で、かつ、机上に配置される無線通信端末38と無線リンクが確立できる位置に配置する。なお、用途によっては、送受信アンテナ37を、指向性を有するアンテナとしてもよい。
【0024】
また、図8に示すように、オフィスのフロア21に、机22を1列にして縦に並べた机列45と、机22を1列にして縦に並べた机列46との間に通路47を設けた環境下においては、一端に基地局35を接続し、他端である終端に無指向性の送受信アンテナ37を接続している平衡線路36を、通路47に沿って、その通路47の垂直方向で、かつ、机上に配置される無線通信端末38と無線リンクが確立できる位置に配置する。
【0025】
なお、用途によっては、送受信アンテナ37を、指向性を有するアンテナとしてもよい。
また、本実施の形態ではオフィスのフロアにおける無線通信システムとして本発明を説明したがこれに限られるものではなく、学校や店舗等にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る無線通信システムにおける平衡線路の配置例を示す図。
【図4】同実施の形態に係る無線通信システムにおける平衡線路の他の配置例を示す図。
【図5】図4の配置例における具体例を示す斜視図。
【図6】図4の配置例における他の具体例を示す斜視図。
【図7】同実施の形態に係る無線通信システムにおける平衡線路の他の配置例を示す図。
【図8】同実施の形態に係る無線通信システムにおける平衡線路の他の配置例を示す図。
【符号の説明】
【0027】
1…基地局、2…平衡線路、3…送受信アンテナ、5,6,7…無線通信端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、
この基地局に接続された平衡線路と、
この平衡線路の終端に接続された送受信アンテナとを備え、
前記基地局は、
前記平衡線路のみを介して、あるいは、前記平衡線路及び送受信アンテナを介して無線通信端末と通信を行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
送受信アンテナとして指向性を有するアンテナを使用し、この送受信アンテナの指向性を平衡線路の終端の延長方向に向けたことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−54029(P2008−54029A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227918(P2006−227918)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】