無線通信装置
【課題】スループットを向上させることが可能な無線通信装置を提供すること。
【解決手段】精度算出部361によりデータシンボルの実測値と理論値との差分である差分値に基づいて、第1アンテナ31又は第2アンテナ32により受信されたデータの精度評価値を算出し、判定部362により算出されたデータの精度評価値が所定の閾値を超えるか否かを判定する。そして、データの精度評価値が所定の閾値を超えと判定された場合には、選択されている一つのアンテナから他のアンテナを選択するようにアンテナ切替回路33を選択制御部363により制御する。
【解決手段】精度算出部361によりデータシンボルの実測値と理論値との差分である差分値に基づいて、第1アンテナ31又は第2アンテナ32により受信されたデータの精度評価値を算出し、判定部362により算出されたデータの精度評価値が所定の閾値を超えるか否かを判定する。そして、データの精度評価値が所定の閾値を超えと判定された場合には、選択されている一つのアンテナから他のアンテナを選択するようにアンテナ切替回路33を選択制御部363により制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、PHS(Personal Handy phone System)端末等の無線通信装置は、TDMA(Time Division Multiple Access、時分割多元接続)方式で基地局と通信を行っているものがある。また、このような無線通信装置は、複数のアンテナを備えている。近年、市場に流通している多くの無線通信装置は、複数のアンテナのうち、最も受信感度が良好なアンテナを選択して基地局との通信を行うダイバーシティー制御機能を有している。
【0003】
ダイバーシティー制御機能としては、例えば、FER(Frame Error Rate、フレームエラー率)に基づいて受信感度の良好なアンテナを選択する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。FERは、無線通信装置と基地局との間で過去に通信が行われたデータの複数のスロットのうち、エラーが発生したスロットの数に基づいて算出される。特許文献1に記載された技術では、FERが所定の閾値を超えた場合に、アンテナを切り替える制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−88866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、FERが所定の閾値を超えた場合、すなわち、スロットでエラーが発生した場合を契機としてアンテナを切り替える制御を行う。この場合、エラーが発生したスロットに格納されたデータは、使用することができない。したがって、エラーが発生したスロットに格納されたデータは、無駄になってしまため、データ通信のスループットを低下させてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、スループットを向上させることが可能な無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線通信装置は、上記課題を解決するために、所定の変調方式で変調されたデータを受信する複数のアンテナと、前記複数のアンテナのうちいずれか一つのアンテナを選択する選択部と、前記選択部により選択された一つのアンテナにより受信されたデータを構成するデータのデータシンボルの理論値を記憶する記憶部と、前記データシンボルの実測値と前記記憶部に記憶された前記所定の変調方式における前記理論値との差分である差分値に基づいて前記一つのアンテナにより受信された前記データの精度評価値を算出する精度算出部と、前記データの精度評価値に基づいて前記選択部により選択されている前記一つのアンテナから他のアンテナを選択するように前記選択部を制御する選択制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記精度算出部は、前記差分値の平均値に基づいて前記データの精度評価値を算出することが好ましい。
【0009】
また、前記精度算出部は、前記データを構成する一つのスロットに含まれる前記データシンボルを用いて前記データの精度評価値を算出することが好ましい。
【0010】
また、前記記憶部は、所定の閾値として、前記変調方式ごとに異なる複数の値を記憶することが好ましい。
【0011】
また、前記選択制御部は、前記データを構成する1フレーム中のチャネル単位で前記複数のアンテナを選択する制御を行うことが好ましい。
【0012】
また、前記選択制御部は、前記選択部により選択されている前記一つのアンテナから前記他のアンテナを選択した場合には、当該他のアンテナの選択を一定期間維持するように前記選択部の制御を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スループットを向上させることが可能な無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る無線通信システムの構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係るPHS端末の外観斜視図である。
【図3】本実施形態に係るPHS端末の機能を示すブロック図である。
【図4】本実施形態の無線通信システムにおけるPHS端末と基地局との間におけるTDMA−TDD方式の通信を示す模式図である。
【図5】図4に示すTDMA−TDD方式の通信において、チャネルのデータ構造について示す図である。
【図6】QPSKで変調されたデータを構成するデータシンボルの理論値及びデータシンボルの実測値がプロットされたコンスタレーションパターンを示す図である。
【図7】メモリに記憶される閾値テーブルを示す図である。
【図8】1フレーム中の各チャネルにおいて選択されるアンテナについて示す模式図である。
【図9】本実施形態の制御部によるメイン処理について示すフローチャートである。
【図10】モニタ判定モードの処理について示すフローチャートである。
【図11】タイマ判定モードの処理について示すフローチャートである。
【図12】NMSE判定モードの処理について示すフローチャートである。
【図13】FER判定モードの処理について示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、本実施形態では、無線通信装置の一例として、PHS端末1について説明する。なお、本発明の無線通信装置は、これに限られず、例えば、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)の他、通信機能を備えたナビゲーション装置やパーソナルコンピュータ、さらに、これらに接続される通信モジュール等、様々な無線通信装置に適用可能である。
【0016】
図1は、本実施形態に係る無線通信システム100の構成を示す概略図である。PHS端末1は、近隣の基地局A又は基地局Bと通信し、公衆通信網Nを介して他の端末と互いに接続される。
【0017】
PHS端末1は、時分割多重接続(TDMA:Time Division Multiple Access)方式及び時分割複信(TDD:Time Division Duplex)方式を多元接続技術として用いて通信を行うものである。また、このPHS端末1は、複数のアンテナを有し、受信信号強度の優れたアンテナを選択的に使用するダイバーシティー制御機能を備える。ダイバーシティー制御については、後述する。
【0018】
基地局A及び基地局Bは、PHS端末1と通信することが可能なPHS端末1の近隣に位置するPHS用の基地局であり、PHS端末1と同様にTDMA及びTDD方式に基づいて通信を行う。なお、本実施形態のPHS端末1は、基地局Aと基地局Bとのうち、基地局Aに位置登録を行い、基地局Aと接続する。
【0019】
図2は、本実施形態に係るPHS端末1の外観斜視図である。なお、図2は、いわゆる折り畳み型の端末の形態を示しているが、本発明に係る無線通信端末の形態はこれに限られない。例えば、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)や、操作部と表示部とが1つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ)でもよい。
【0020】
PHS端末1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備える。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、PHS端末1の使用者が通話時に発した音声が入力されるマイク12と、を備える。操作部11は、各種設定機能や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字やメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。
【0021】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するための表示部21と、通話の相手側の音声を出力するスピーカ22と、を備える。
【0022】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、PHS端末1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開放状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(折畳み状態)にしたりできる。
【0023】
図3は、本実施形態に係るPHS端末1の機能を示すブロック図である。PHS端末1は、操作部11と、表示部21と、複数のアンテナとしての第1アンテナ31及び第2アンテナ32と、選択部としてのアンテナ切替回路33と、通信部34と、信号処理部35と、制御部36と、記憶部としてのメモリ37と、マイク12と、スピーカ22と、を備える。
【0024】
第1アンテナ31及び第2アンテナ32は、基地局Aとの間で各種信号を送受信する。具体的には、第1アンテナ31及び第2アンテナ32は、所定の変調方式で変調されたデータを受信する。第1アンテナ31及び第2アンテナ32は、制御部36の制御に従い、アンテナ切替回路33によって選択的にいずれか一方に切り替えられ、基地局Aとの通信に使用される。
【0025】
アンテナ切替回路33は、第1アンテナ31及び第2アンテナ32のうち、いずれか一つのアンテナを選択する。具体的には、アンテナ切替回路33は、制御部36の制御に従い、第1アンテナ31及び第2アンテナ32のいずれか一方へ切り替える。
【0026】
通信部34は、例えば、増幅器、送信回路、受信回路等から構成される。通信部34は、制御部36の制御に従い、受信した信号のFERやRSSI(Received Signal Strength Indicator、受信電界強度)を測定する。そして、通信部34は、測定したFERやRSSIを制御部36に送信する。
【0027】
信号処理部35は、制御部36の制御に従い、通信部34が基地局Aと送受信する信号のデジタル変調及び復調を行う。また、信号処理部35は、マイク12及びスピーカ22と送受信する音声信号の符号化及び復号を行う。
【0028】
制御部36は、CPU、内部メモリ等から構成され、携帯電話機1の全体を制御する。制御部36は、例えば、表示部21、アンテナ切替回路33、通信部34、信号処理部35等に対して所定の制御を行う。また、制御部36は、操作部11等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。そして、制御部36は、処理実行の際には、メモリ37を制御し、各種プログラム及びデータを読み出しや、データの書き込み等を行う。
【0029】
また、制御部36は、精度算出部361と、判定部362と、選択制御部363と、を備える。
【0030】
メモリ37は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部36による演算処理に利用される。また、本実施形態に係る各種プログラム、後述の変調方式テーブル、シンボルデータの理論値等を記憶する。なお、メモリ37は、着脱可能な外部メモリを兼ねていてもよい。
【0031】
具体的には、メモリ37は、アンテナ切替回路33により切り替えられた一つのアンテナ(第1アンテナ31又は第2アンテナ32)により受信されたデータを構成するデータシンボルの理論値を変調方式ごとに記憶する。また、本実施形態の無線通信システム100では、所定の変調方式として、例えば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、8PSK(8 Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)、32QAM(32 Quadrature Amplitude Modulation)、64QAM(64 Quadrature Amplitude Modulation)等を用いることができる。
【0032】
図4は、本実施形態の無線通信システム100におけるPHS端末1と基地局Aとの間におけるTDMA−TDD方式の通信を示す模式図である。PHS端末1及び基地局Aは、多元接続技術としてTDMA−TDD方式を用い、通信を行う。
【0033】
図4に示すように、PHS端末1と基地局Aとの通信において、1周波数帯域に対する多重化数(チャネル)は4つである。また、1スロットのスロット長は、0.625msecである。ここで、1スロットとは、1周波数帯域の時分割による最小単位である。各スロットにおける「C1」、「C2」、「C3」及び「C4」は、各スロットに割り当てられたチャネルを示す。
【0034】
また、1フレームは、8つのスロットから構成され、1フレームのフレーム長は、5msecである。1フレームの前半部分(2.5msec)は、基地局AからPHS端末1への通信に使用され、1フレームの後半部分(2.5msec)は、PHS端末1から基地局Aへの通信に使用される。また、複数フレームによって構成されるマルチフレームのマルチフレーム長は、100msecである。なお、基地局Aは、通信においてフレーム単位で同期を行う。
【0035】
図5は、図4に示すTDMA−TDD方式の通信において、チャネルC1のデータ構造について示す図である。図5に示すように、チャネルC1のデータは、プリアンブルやユニークデータを有するヘッダ情報と、MI(Modulation Information)と、実データと、を備える。例えば、ヘッダ情報及びMIは、QPSKで変調され、実データは、その通信を行っているときにおいて最適な各変調方式で変調されている。なお、図5では、チャネルC1のデータ構造について示したが、チャネルC2〜C4のデータも同様のデータ構造を有する。MIとは、実データの変調方式が具体的に何であるか(BPSK、QPSK、8PSK等のいずれかであるか)についての情報を示すものである。
【0036】
次に、本実施形態の制御部36によるダイバーシティー制御について説明する。
第1アンテナ31又は第2アンテナ32により基地局Aから送信されたデータが受信されると、精度算出部361は、受信されたデータを構成するデータシンボルの実測値と、メモリ37に記憶された所定の変調方式におけるデータシンボルの理論値との差分である差分値に基づいて、第1アンテナ31又は第2アンテナ32により受信されたデータの精度評価値を算出する。
【0037】
判定部362は、精度算出部361により算出されたデータの精度評価値が所定の閾値を超えるか判定する。
【0038】
選択制御部363は、判定部362の判定の結果、データの精度評価値が所定の閾値を超える場合には、アンテナ切替回路33により選択されている一つのアンテナ(例えば、第1アンテナ31)から他のアンテナ(例えば、第2アンテナ32)を選択するようにアンテナ切替回路33を制御する。
【0039】
ここで、データシンボルとは、所定の変調方式におけるデータを送信(又は受信)する際の最小単位をいう。例えば、BPSKでは、1データシンボルで1ビット、QPSKでは、1データシンボルで2ビットの情報を送信(又は受信)する。
【0040】
次に、上述した制御部36の具体的な制御について図6から図8を参照しながら説明する。図6は、QPSKで変調されたデータを構成するデータシンボルの理論値及びデータシンボルの実測値がプロットされたコンスタレーションパターンを示す図である。図6のQPSKのコンスタレーションパターンでは、同位相(In−phase)の信号を複素平面上の実数軸(横軸)に示し、90度位相ずれ(Quadrature)の信号を複素平面上の虚数軸(縦軸)に示している。
【0041】
図6に示すように、QPSKで変調されたデータを構成する各データシンボル(00、01、10、11)の理論値は、●(丸)で表される。また、QPSKで変調され、第1アンテナ31又は第2アンテナ32で受信されたデータを構成するデータシンボルの実測値は、×(バツ)で表される。データシンボルの実測値は、データシンボルを含むデータを送信した送信側の変調の精度、PHS端末1のアンテナの本数やアンテナ方式、受信系全体の雑音指数等によりデータシンボルの理論値からずれが生じる。
【0042】
そこで、精度算出部361は、データシンボルの実測値と、データシンボルの理論値とのずれ(差分)である差分値を算出し、算出した差分値に基づいて、データの精度評価値を算出する。ここで、精度算出部361は、データシンボルの実測値がコンスタレーションパターンにプロットされる位置に関わらず、最も近傍に位置するいずれかのデータシンボルの理論値との差分を算出する。例えば、図6では、データシンボル(11)の理論値の近傍にデータシンボルの実測値がプロットされているため、データシンボル(11)の理論値とデータシンボルの実測値との差分値を算出する。
【0043】
詳細には、精度算出部361は、データシンボルの実測値とデータシンボルの理論値との差分値(理論値と実測値との2点間の距離の長さ)の平均値に基づいて、データの精度評価値を算出する。ここで、精度算出部361は、データを構成する一つのスロットに含まれる実データのデータシンボルを用いてデータの精度評価値を算出する。
【0044】
本実施形態では、精度算出部361は、データの精度評価値として、正規化平均2乗誤差平滑値((Normalized Mean Squared Error:NMSE)平滑値)を用いる。
【0045】
以下に、精度算出部361による正規化平均2乗誤差平滑値(NMSE平滑値)を用いたデータの精度評価値の算出方法について説明する。
【0046】
精度算出部361は、NMSE平滑値(以下、単にNMSEという)を算出するために、正規化平均2乗誤差(Mean Squared Error:MSE)を算出する。MSEは、データシンボルの理論値とデータシンボルの実測値との差分値の2乗の和をスロット内位相識別点(又は位相振幅識別点)の数で除算することにより算出される。
【0047】
詳細には、精度算出部361は、コンスタレーションパターン上に実データからサンプリングした所定の数(例えば、32個)のデータシンボルの実測値がプロットされ、それぞれに対して理論値との差分を算出する。なお、データシンボルの実測値をサンプリングした所定の数(例えば、32個)は、上述したスロット内位相識別点(又は位相振幅識別点)に相当する。次に、精度算出部361は、算出した差分値の平均値を、データシンボルの実測値をサンプリングした所定の数(例えば、32個)で除算することによりMSEを算出する。そして、算出されたMSEのフレーム平均を求めて、NMSEを算出する。フレーム平均を算出する方法としては、下記の式(1)に示す移動平均(指数平滑法)を用いる。
【0048】
NMSE(t)=s*MSE(t)+(1−s)*MSE(t−1)・・・(1)
【0049】
ここで、MSE(t)は、今回の(現在の)正規化平均2乗誤差であり、MSE(t−1)は、前回の正規化平均2乗誤差であり、sは、平滑化定数(0≦s≦1)であり、tは、時刻(5msecのフレームを単位とした整数)である。
【0050】
そして、判定部362は、精度算出部361により算出されたNMSEがメモリ37に記憶される所定の閾値を超えるか判定する。ここで、所定の閾値は、変調方式ごとに異なる複数の値がメモリ37内の閾値テーブルに記憶されている。
【0051】
図7は、メモリ37に記憶される閾値テーブルを示す図である。図7に示すように、閾値テーブルには、変調方式と閾値とが対応付けて記憶されている。変調方式ごとの閾値は、例えば、各変調方式において、NMSEを算出するスロットの直前の30フレーム内にFERが4%となる場合のNMSEに相当する値である。
【0052】
選択制御部363は、判定部362の判定の結果、算出されたNMSEが所定の閾値を超える場合には、アンテナ切替回路33により選択されている一つのアンテナ(例えば、第1アンテナ31)から他のアンテナ(例えば、第2アンテナ32)を選択するようにアンテナ切替回路33を制御する。一方、選択制御部363は、判定部362の判定の結果、NMSEが所定の閾値を超えない場合には、アンテナ切替回路33により選択されている一つのアンテナの選択を維持するようにアンテナ切替回路33を制御する。
【0053】
図8は、1フレーム中の各チャネルにおいて選択されるアンテナについて示す模式図である。なお、図8(A)〜図8(C)中の各フレームにおける「31」は、第1アンテナ31を示し、「32」は、第2アンテナ32を示す。図8(A)〜図8(C)に示すように、選択制御部363は、1フレーム中のチャネル単位で第1アンテナ31又は第2アンテナ32を選択する制御を行う。具体的には、図8(A)に示すように、選択制御部363は、チャネルC1〜C4の全てにおいて第1アンテナ31を選択してもよい。また、図8(B)に示すように、選択制御部363は、チャネルC1及びC2において第1アンテナ31を選択し、チャネルC3及びC4において第2アンテナ32を選択してもよい。また、図8(C)に示すように、選択制御部363は、チャネルC1及びC3において第1アンテナ31を選択し、チャネルC2及びC4において第2アンテナ32を選択してもよい。
【0054】
次に、図9〜図13を参照しながら本実施形態の制御部36の具体的な処理の流れについて説明する。図9は、本実施形態の制御部36によるメイン処理について示すフローチャートである。なお、図9の処理の開始時には、アンテナ切替回路33により第1アンテナ31に切り替えられているものとする。
【0055】
ステップS1において、制御部36は、各スロットの受信完了割り込みで、第1アンテナ31及び第2アンテナ32のダイバーシティー制御を開始する。
【0056】
ステップS2において、制御部36は、第1アンテナ31で受信したデータが高速適応変調に対応しているか判定する。高速適応変調に対応している場合(Yes)には、ステップS3へ移り、高速適応変調に対応していない場合(No)には、ステップS6へ移る。なお、この高速適応変調とは、1スロットごとに変調方式を切り替えることができる通信方式のことを示す。
【0057】
ステップS3において、制御部36は、ダイバーシティー制御における判定モードがモニタ判定モードであるか判定する。このモニタ判定モードとは、高速適応変調に基づいて、1スロットごとに図7に示された閾値テーブルに基づき、NMSEが閾値を超えたか否かを判定するモードのことである。モニタ判定モードである場合(Yes)には、ステップS4へ移り、NMSE判定モードである場合(No)には、ステップS5へ移る。
【0058】
ステップS4において、制御部36は、モニタ判定モードの処理を実行する。ステップS5において、制御部36は、NMSE判定モードの処理を実行する。ステップS6において、制御部36は、FER判定モードの処理を実行する。
【0059】
図10は、図9のステップS4におけるモニタ判定モードの処理について示すフローチャートである。
【0060】
ステップS41において、精度算出部361は、1スロット中のデータを参照して、MIを取得する。そして、精度算出部361は、上述した算出方法を用いて、取得したMIにおけるデータシンボルよりNMSEを算出する。
【0061】
ステップS42において、判定部362は、算出されたNMSEがメモリ37に記憶される閾値を超えているか判定する。NMSEが閾値を超えている場合(Yes)には、ステップS43へ移り、NMSEが閾値を超えない場合(No)には、処理を終了する。ステップS43において、制御部36は、タイマ判定モードの処理を実行する。
【0062】
図11は、図10のステップS43におけるタイマ判定モードの処理について示すフローチャートである。
【0063】
ステップS431において、制御部36は、メモリ37に記憶されているCS(Cell Station、基地局)情報を取得する。本実施形態のPHS端末1では、現在通信可能な基地局A又はBのいずれかのCS情報を取得し、メモリ37に基地局A又はBの位置を記憶することができる。
【0064】
ステップS432において、制御部36は、CS(基地局)タイマが動作中であるか判定する。CSタイマが開始される時間については、ステップS437で定義される。CSタイマが動作中である場合(Yes)には、ステップS433へ移り、CSタイマが動作中でない場合(No)には、ステップS435へ移る。
【0065】
ステップS433において、制御部36は、メモリ37に記憶されているアンテナ情報を取得する。
【0066】
ステップS434において、選択制御部363は、取得したアンテナ情報に基づいて、アンテナ切替回路33により第1アンテナ31又は第2アンテナ32を選択する。具体的には、選択制御部363は、現在使用されている第1アンテナ31と取得したアンテナ情報とが異なれば第2アンテナ32に切り替え、同一であれば第1アンテナ31を維持する。
【0067】
ステップS435において、CSタイマが既に満了していたら、選択制御部363は、現在使用されている第1アンテナ31を第2アンテナ32に切り替える。ステップS436において、選択制御部363は、切り替えた第2アンテナ32のアンテナ情報をメモリ37に記憶する。
【0068】
ステップS437において、制御部36は、CSタイマのカウントを開始する。なお、CSタイマは、基地局A及びBのそれぞれについて設定することできる。CSタイマのカウントは、例えば、100msecで満了となる。
ステップS438において、制御部36は、NMSE判定モードに移行する。
【0069】
図12は、図9のステップS5におけるNMSE判定モードの処理について示すフローチャートである。
【0070】
ステップS51において、制御部36は、ステップS1において受信が完了したスロットからMIを取得する。
ステップS52において、制御部36は、ステップS51において今回取得したMIと前回取得したMIとが一致するか判定する。一致する場合(Yes)には、ステップS53へ移り、一致しない場合(No)には、ステップS55へ移る。
【0071】
ステップS53において、精度算出部361は、上述した算出方法を用いて、取得したMIに対応するNMSEを算出する。
【0072】
ステップS54において、制御部36は、今回算出されたNMSEが前回算出されたNMSEよりも小さいか判定する。今回算出されたNMSEが前回算出されたNMSEよりも小さい場合(つまり、今回のほうが、アンテナ感度が良好であると判断された場合)には(Yes)、ステップS56へ移り、今回算出されたNMSEが前回算出されたNMSE以上の場合(つまり前回のほうが、アンテナ感度が良好であると判断された場合)には(No)、ステップS55へ移る。
【0073】
ステップS55において、選択制御部363は、第1アンテナ31又は第2アンテナ32を他方のアンテナへ切り替えるようにアンテナ切替回路33を制御する。なお、ステップS435において、例示的に第2アンテナ32が選択されている。具体的には、選択制御部363は、ステップS52〜ステップS54において、今回取得したMIと前回取得したMIとが一致し、且つ今回算出されたが前回算出されたNMSEよりも小さい場合には、現在選択されている第2アンテナ32の選択を維持する。一方、選択制御部363は、ステップS52において、今回取得したMIと前回取得したMIとが一致しない場合には、現在選択されている第2アンテナ32から第1アンテナ31に切り替えるようにアンテナ切替回路33を制御する。
【0074】
ステップS56において、制御部36は、第1アンテナ31又は第2アンテナ32のアンテナ情報及びCS情報をメモリ37に記憶する。
ステップS57において、制御部36は、上述したモニタ判定モードへ移行する。
【0075】
図13は、図9のステップS6におけるFER判定モードの処理について示すフローチャートである。
【0076】
ステップS61において、制御部36は、ステップS1において受信完了割り込みを行ったスロットでのFER判定モードの処理を実行する。
ステップS62において、制御部36は、直近の所定数のフレーム(例えば、10フレーム(80スロット))中のスロットにおけるエラーをしたスロットの数を算出する。
【0077】
ステップS63において、制御部36は、ステップS62において算出したエラーをしたスロットの数が前回アンテナを切り替える前のエラーをしたスロットの数に達しているか判定する。算出したエラーをしたスロットの数がアンテナを切り替える前のエラーをしたスロットの数に達している場合(Yes)には、ステップS64へ移り、算出したエラーをしたスロットの数がアンテナを切り替える前のエラーをしたスロットの数に達していない場合(No)には、ステップS65へ移る。
【0078】
ステップS64において、選択制御部363は、例えば、現在選択されている第1アンテナ31を第2アンテナ32に切り替える。
【0079】
ステップS65において、制御部36は、前回アンテナを切り替える前から所定の期間(例えば、30フレーム)が経過したか判定する。所定の期間が経過した場合(Yes)には、ステップS66へ移り、FER判定モードを終了する。一方、所定の期間が経過していない場合(No)には、ステップS67へ移り、FER判定モードを続行する。
【0080】
以上説明したように、本実施形態のPHS端末1によれば、精度算出部361によりデータシンボルの実測値と理論値との差分である差分値に基づいて、第1アンテナ31又は第2アンテナ32により受信されたデータの精度評価値(NMSE)を算出し、判定部362により算出されたデータの精度評価値(NMSE)が所定の閾値を超えるか判定する。そして、データの精度評価値(NMSE)が所定の閾値を超える場合には、選択されている一つのアンテナ(例えば、第1アンテナ31)から他のアンテナ(例えば、第2アンテナ32)を選択するようにアンテナ切替回路33を選択制御部363により制御する。
【0081】
すなわち、本実施形態のPHS端末1は、通信品質の判定を、スロットにエラーが発生したか否かではなく、データシンボルの実測値を含むスロットにおけるデータの精度評価値を用いて行う。このため、PHS端末1は、アンテナを切り替えた場合であっても、アンテナを切り替える契機となったスロットを用いて情報を伝達することが可能になる。したがって、スロットを有効に活用することができ、特に、PHS端末1が高速適応変調を行う場合において、スループットを向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態のPHS端末1によれば、精度算出部361は、上述した算出方法を用い、データシンボルの実測値と理論値との差分値の平均値に基づいて、データの精度評価値(NMSE)を算出する。これにより、算出されたデータの精度評価値(NMSE)には、データシンボルを含むデータを送信した送信側の変調の精度、受信系全体の雑音指数等が加味される。すなわち、PHS端末1は、通信品質の判定をより高い精度で行うことができる。
【0083】
また、本実施形態のPHS端末1によれば、データを構成する一つのスロットに含まれるデータシンボルを用いて、データの精度評価値(NMSE)を算出する。すなわち、PHS端末1は、通信品質の判定に他のスロットに含まれるデータシンボルを用いないため、より短時間で、スループットを向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態のPHS端末1によれば、メモリ37は、所定の閾値として、変調方式ごとに異なる値を記憶する。このため、PHS端末1は、変調方式に応じた閾値により通信品質の判定を行うことができる。したがって、PHS端末1は、通信品質の判定をより高い精度で行うことができる。
【0085】
また、本実施形態のPHS端末1によれば、選択制御部363は、データを構成する1フレーム中のチャネル単位でアンテナを選択する制御を行う。したがって、PHS端末1は、チャネル単位で通信に好適なアンテナを選択できるため、スループットの向上を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態のPHS端末1によれば、選択制御部363は、アンテナ切替回路33により選択されている一つのアンテナから他のアンテナを選択した場合には、他のアンテナの選択を一定期間(例えば、10フレーム)維持するようにアンテナ切替回路33の制御を行う。したがって、アンテナ切り替えの頻度を低減することができるため、スループットの向上を図ることができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、PHS端末1は、2本のアンテナを有していたが、本発明はこれに制限されず、3本以上のアンテナを有していてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 PHS端末(無線通信装置)
31 第1アンテナ(複数のアンテナ)
32 第2アンテナ(複数のアンテナ)
33 アンテナ切替回路(選択部)
37 メモリ(記憶部)
361 精度算出部
362 判定部
363 選択制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、PHS(Personal Handy phone System)端末等の無線通信装置は、TDMA(Time Division Multiple Access、時分割多元接続)方式で基地局と通信を行っているものがある。また、このような無線通信装置は、複数のアンテナを備えている。近年、市場に流通している多くの無線通信装置は、複数のアンテナのうち、最も受信感度が良好なアンテナを選択して基地局との通信を行うダイバーシティー制御機能を有している。
【0003】
ダイバーシティー制御機能としては、例えば、FER(Frame Error Rate、フレームエラー率)に基づいて受信感度の良好なアンテナを選択する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。FERは、無線通信装置と基地局との間で過去に通信が行われたデータの複数のスロットのうち、エラーが発生したスロットの数に基づいて算出される。特許文献1に記載された技術では、FERが所定の閾値を超えた場合に、アンテナを切り替える制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−88866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、FERが所定の閾値を超えた場合、すなわち、スロットでエラーが発生した場合を契機としてアンテナを切り替える制御を行う。この場合、エラーが発生したスロットに格納されたデータは、使用することができない。したがって、エラーが発生したスロットに格納されたデータは、無駄になってしまため、データ通信のスループットを低下させてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、スループットを向上させることが可能な無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線通信装置は、上記課題を解決するために、所定の変調方式で変調されたデータを受信する複数のアンテナと、前記複数のアンテナのうちいずれか一つのアンテナを選択する選択部と、前記選択部により選択された一つのアンテナにより受信されたデータを構成するデータのデータシンボルの理論値を記憶する記憶部と、前記データシンボルの実測値と前記記憶部に記憶された前記所定の変調方式における前記理論値との差分である差分値に基づいて前記一つのアンテナにより受信された前記データの精度評価値を算出する精度算出部と、前記データの精度評価値に基づいて前記選択部により選択されている前記一つのアンテナから他のアンテナを選択するように前記選択部を制御する選択制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記精度算出部は、前記差分値の平均値に基づいて前記データの精度評価値を算出することが好ましい。
【0009】
また、前記精度算出部は、前記データを構成する一つのスロットに含まれる前記データシンボルを用いて前記データの精度評価値を算出することが好ましい。
【0010】
また、前記記憶部は、所定の閾値として、前記変調方式ごとに異なる複数の値を記憶することが好ましい。
【0011】
また、前記選択制御部は、前記データを構成する1フレーム中のチャネル単位で前記複数のアンテナを選択する制御を行うことが好ましい。
【0012】
また、前記選択制御部は、前記選択部により選択されている前記一つのアンテナから前記他のアンテナを選択した場合には、当該他のアンテナの選択を一定期間維持するように前記選択部の制御を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スループットを向上させることが可能な無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る無線通信システムの構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係るPHS端末の外観斜視図である。
【図3】本実施形態に係るPHS端末の機能を示すブロック図である。
【図4】本実施形態の無線通信システムにおけるPHS端末と基地局との間におけるTDMA−TDD方式の通信を示す模式図である。
【図5】図4に示すTDMA−TDD方式の通信において、チャネルのデータ構造について示す図である。
【図6】QPSKで変調されたデータを構成するデータシンボルの理論値及びデータシンボルの実測値がプロットされたコンスタレーションパターンを示す図である。
【図7】メモリに記憶される閾値テーブルを示す図である。
【図8】1フレーム中の各チャネルにおいて選択されるアンテナについて示す模式図である。
【図9】本実施形態の制御部によるメイン処理について示すフローチャートである。
【図10】モニタ判定モードの処理について示すフローチャートである。
【図11】タイマ判定モードの処理について示すフローチャートである。
【図12】NMSE判定モードの処理について示すフローチャートである。
【図13】FER判定モードの処理について示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、本実施形態では、無線通信装置の一例として、PHS端末1について説明する。なお、本発明の無線通信装置は、これに限られず、例えば、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)の他、通信機能を備えたナビゲーション装置やパーソナルコンピュータ、さらに、これらに接続される通信モジュール等、様々な無線通信装置に適用可能である。
【0016】
図1は、本実施形態に係る無線通信システム100の構成を示す概略図である。PHS端末1は、近隣の基地局A又は基地局Bと通信し、公衆通信網Nを介して他の端末と互いに接続される。
【0017】
PHS端末1は、時分割多重接続(TDMA:Time Division Multiple Access)方式及び時分割複信(TDD:Time Division Duplex)方式を多元接続技術として用いて通信を行うものである。また、このPHS端末1は、複数のアンテナを有し、受信信号強度の優れたアンテナを選択的に使用するダイバーシティー制御機能を備える。ダイバーシティー制御については、後述する。
【0018】
基地局A及び基地局Bは、PHS端末1と通信することが可能なPHS端末1の近隣に位置するPHS用の基地局であり、PHS端末1と同様にTDMA及びTDD方式に基づいて通信を行う。なお、本実施形態のPHS端末1は、基地局Aと基地局Bとのうち、基地局Aに位置登録を行い、基地局Aと接続する。
【0019】
図2は、本実施形態に係るPHS端末1の外観斜視図である。なお、図2は、いわゆる折り畳み型の端末の形態を示しているが、本発明に係る無線通信端末の形態はこれに限られない。例えば、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)や、操作部と表示部とが1つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ)でもよい。
【0020】
PHS端末1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備える。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、PHS端末1の使用者が通話時に発した音声が入力されるマイク12と、を備える。操作部11は、各種設定機能や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字やメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。
【0021】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するための表示部21と、通話の相手側の音声を出力するスピーカ22と、を備える。
【0022】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、PHS端末1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開放状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(折畳み状態)にしたりできる。
【0023】
図3は、本実施形態に係るPHS端末1の機能を示すブロック図である。PHS端末1は、操作部11と、表示部21と、複数のアンテナとしての第1アンテナ31及び第2アンテナ32と、選択部としてのアンテナ切替回路33と、通信部34と、信号処理部35と、制御部36と、記憶部としてのメモリ37と、マイク12と、スピーカ22と、を備える。
【0024】
第1アンテナ31及び第2アンテナ32は、基地局Aとの間で各種信号を送受信する。具体的には、第1アンテナ31及び第2アンテナ32は、所定の変調方式で変調されたデータを受信する。第1アンテナ31及び第2アンテナ32は、制御部36の制御に従い、アンテナ切替回路33によって選択的にいずれか一方に切り替えられ、基地局Aとの通信に使用される。
【0025】
アンテナ切替回路33は、第1アンテナ31及び第2アンテナ32のうち、いずれか一つのアンテナを選択する。具体的には、アンテナ切替回路33は、制御部36の制御に従い、第1アンテナ31及び第2アンテナ32のいずれか一方へ切り替える。
【0026】
通信部34は、例えば、増幅器、送信回路、受信回路等から構成される。通信部34は、制御部36の制御に従い、受信した信号のFERやRSSI(Received Signal Strength Indicator、受信電界強度)を測定する。そして、通信部34は、測定したFERやRSSIを制御部36に送信する。
【0027】
信号処理部35は、制御部36の制御に従い、通信部34が基地局Aと送受信する信号のデジタル変調及び復調を行う。また、信号処理部35は、マイク12及びスピーカ22と送受信する音声信号の符号化及び復号を行う。
【0028】
制御部36は、CPU、内部メモリ等から構成され、携帯電話機1の全体を制御する。制御部36は、例えば、表示部21、アンテナ切替回路33、通信部34、信号処理部35等に対して所定の制御を行う。また、制御部36は、操作部11等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。そして、制御部36は、処理実行の際には、メモリ37を制御し、各種プログラム及びデータを読み出しや、データの書き込み等を行う。
【0029】
また、制御部36は、精度算出部361と、判定部362と、選択制御部363と、を備える。
【0030】
メモリ37は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部36による演算処理に利用される。また、本実施形態に係る各種プログラム、後述の変調方式テーブル、シンボルデータの理論値等を記憶する。なお、メモリ37は、着脱可能な外部メモリを兼ねていてもよい。
【0031】
具体的には、メモリ37は、アンテナ切替回路33により切り替えられた一つのアンテナ(第1アンテナ31又は第2アンテナ32)により受信されたデータを構成するデータシンボルの理論値を変調方式ごとに記憶する。また、本実施形態の無線通信システム100では、所定の変調方式として、例えば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、8PSK(8 Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)、32QAM(32 Quadrature Amplitude Modulation)、64QAM(64 Quadrature Amplitude Modulation)等を用いることができる。
【0032】
図4は、本実施形態の無線通信システム100におけるPHS端末1と基地局Aとの間におけるTDMA−TDD方式の通信を示す模式図である。PHS端末1及び基地局Aは、多元接続技術としてTDMA−TDD方式を用い、通信を行う。
【0033】
図4に示すように、PHS端末1と基地局Aとの通信において、1周波数帯域に対する多重化数(チャネル)は4つである。また、1スロットのスロット長は、0.625msecである。ここで、1スロットとは、1周波数帯域の時分割による最小単位である。各スロットにおける「C1」、「C2」、「C3」及び「C4」は、各スロットに割り当てられたチャネルを示す。
【0034】
また、1フレームは、8つのスロットから構成され、1フレームのフレーム長は、5msecである。1フレームの前半部分(2.5msec)は、基地局AからPHS端末1への通信に使用され、1フレームの後半部分(2.5msec)は、PHS端末1から基地局Aへの通信に使用される。また、複数フレームによって構成されるマルチフレームのマルチフレーム長は、100msecである。なお、基地局Aは、通信においてフレーム単位で同期を行う。
【0035】
図5は、図4に示すTDMA−TDD方式の通信において、チャネルC1のデータ構造について示す図である。図5に示すように、チャネルC1のデータは、プリアンブルやユニークデータを有するヘッダ情報と、MI(Modulation Information)と、実データと、を備える。例えば、ヘッダ情報及びMIは、QPSKで変調され、実データは、その通信を行っているときにおいて最適な各変調方式で変調されている。なお、図5では、チャネルC1のデータ構造について示したが、チャネルC2〜C4のデータも同様のデータ構造を有する。MIとは、実データの変調方式が具体的に何であるか(BPSK、QPSK、8PSK等のいずれかであるか)についての情報を示すものである。
【0036】
次に、本実施形態の制御部36によるダイバーシティー制御について説明する。
第1アンテナ31又は第2アンテナ32により基地局Aから送信されたデータが受信されると、精度算出部361は、受信されたデータを構成するデータシンボルの実測値と、メモリ37に記憶された所定の変調方式におけるデータシンボルの理論値との差分である差分値に基づいて、第1アンテナ31又は第2アンテナ32により受信されたデータの精度評価値を算出する。
【0037】
判定部362は、精度算出部361により算出されたデータの精度評価値が所定の閾値を超えるか判定する。
【0038】
選択制御部363は、判定部362の判定の結果、データの精度評価値が所定の閾値を超える場合には、アンテナ切替回路33により選択されている一つのアンテナ(例えば、第1アンテナ31)から他のアンテナ(例えば、第2アンテナ32)を選択するようにアンテナ切替回路33を制御する。
【0039】
ここで、データシンボルとは、所定の変調方式におけるデータを送信(又は受信)する際の最小単位をいう。例えば、BPSKでは、1データシンボルで1ビット、QPSKでは、1データシンボルで2ビットの情報を送信(又は受信)する。
【0040】
次に、上述した制御部36の具体的な制御について図6から図8を参照しながら説明する。図6は、QPSKで変調されたデータを構成するデータシンボルの理論値及びデータシンボルの実測値がプロットされたコンスタレーションパターンを示す図である。図6のQPSKのコンスタレーションパターンでは、同位相(In−phase)の信号を複素平面上の実数軸(横軸)に示し、90度位相ずれ(Quadrature)の信号を複素平面上の虚数軸(縦軸)に示している。
【0041】
図6に示すように、QPSKで変調されたデータを構成する各データシンボル(00、01、10、11)の理論値は、●(丸)で表される。また、QPSKで変調され、第1アンテナ31又は第2アンテナ32で受信されたデータを構成するデータシンボルの実測値は、×(バツ)で表される。データシンボルの実測値は、データシンボルを含むデータを送信した送信側の変調の精度、PHS端末1のアンテナの本数やアンテナ方式、受信系全体の雑音指数等によりデータシンボルの理論値からずれが生じる。
【0042】
そこで、精度算出部361は、データシンボルの実測値と、データシンボルの理論値とのずれ(差分)である差分値を算出し、算出した差分値に基づいて、データの精度評価値を算出する。ここで、精度算出部361は、データシンボルの実測値がコンスタレーションパターンにプロットされる位置に関わらず、最も近傍に位置するいずれかのデータシンボルの理論値との差分を算出する。例えば、図6では、データシンボル(11)の理論値の近傍にデータシンボルの実測値がプロットされているため、データシンボル(11)の理論値とデータシンボルの実測値との差分値を算出する。
【0043】
詳細には、精度算出部361は、データシンボルの実測値とデータシンボルの理論値との差分値(理論値と実測値との2点間の距離の長さ)の平均値に基づいて、データの精度評価値を算出する。ここで、精度算出部361は、データを構成する一つのスロットに含まれる実データのデータシンボルを用いてデータの精度評価値を算出する。
【0044】
本実施形態では、精度算出部361は、データの精度評価値として、正規化平均2乗誤差平滑値((Normalized Mean Squared Error:NMSE)平滑値)を用いる。
【0045】
以下に、精度算出部361による正規化平均2乗誤差平滑値(NMSE平滑値)を用いたデータの精度評価値の算出方法について説明する。
【0046】
精度算出部361は、NMSE平滑値(以下、単にNMSEという)を算出するために、正規化平均2乗誤差(Mean Squared Error:MSE)を算出する。MSEは、データシンボルの理論値とデータシンボルの実測値との差分値の2乗の和をスロット内位相識別点(又は位相振幅識別点)の数で除算することにより算出される。
【0047】
詳細には、精度算出部361は、コンスタレーションパターン上に実データからサンプリングした所定の数(例えば、32個)のデータシンボルの実測値がプロットされ、それぞれに対して理論値との差分を算出する。なお、データシンボルの実測値をサンプリングした所定の数(例えば、32個)は、上述したスロット内位相識別点(又は位相振幅識別点)に相当する。次に、精度算出部361は、算出した差分値の平均値を、データシンボルの実測値をサンプリングした所定の数(例えば、32個)で除算することによりMSEを算出する。そして、算出されたMSEのフレーム平均を求めて、NMSEを算出する。フレーム平均を算出する方法としては、下記の式(1)に示す移動平均(指数平滑法)を用いる。
【0048】
NMSE(t)=s*MSE(t)+(1−s)*MSE(t−1)・・・(1)
【0049】
ここで、MSE(t)は、今回の(現在の)正規化平均2乗誤差であり、MSE(t−1)は、前回の正規化平均2乗誤差であり、sは、平滑化定数(0≦s≦1)であり、tは、時刻(5msecのフレームを単位とした整数)である。
【0050】
そして、判定部362は、精度算出部361により算出されたNMSEがメモリ37に記憶される所定の閾値を超えるか判定する。ここで、所定の閾値は、変調方式ごとに異なる複数の値がメモリ37内の閾値テーブルに記憶されている。
【0051】
図7は、メモリ37に記憶される閾値テーブルを示す図である。図7に示すように、閾値テーブルには、変調方式と閾値とが対応付けて記憶されている。変調方式ごとの閾値は、例えば、各変調方式において、NMSEを算出するスロットの直前の30フレーム内にFERが4%となる場合のNMSEに相当する値である。
【0052】
選択制御部363は、判定部362の判定の結果、算出されたNMSEが所定の閾値を超える場合には、アンテナ切替回路33により選択されている一つのアンテナ(例えば、第1アンテナ31)から他のアンテナ(例えば、第2アンテナ32)を選択するようにアンテナ切替回路33を制御する。一方、選択制御部363は、判定部362の判定の結果、NMSEが所定の閾値を超えない場合には、アンテナ切替回路33により選択されている一つのアンテナの選択を維持するようにアンテナ切替回路33を制御する。
【0053】
図8は、1フレーム中の各チャネルにおいて選択されるアンテナについて示す模式図である。なお、図8(A)〜図8(C)中の各フレームにおける「31」は、第1アンテナ31を示し、「32」は、第2アンテナ32を示す。図8(A)〜図8(C)に示すように、選択制御部363は、1フレーム中のチャネル単位で第1アンテナ31又は第2アンテナ32を選択する制御を行う。具体的には、図8(A)に示すように、選択制御部363は、チャネルC1〜C4の全てにおいて第1アンテナ31を選択してもよい。また、図8(B)に示すように、選択制御部363は、チャネルC1及びC2において第1アンテナ31を選択し、チャネルC3及びC4において第2アンテナ32を選択してもよい。また、図8(C)に示すように、選択制御部363は、チャネルC1及びC3において第1アンテナ31を選択し、チャネルC2及びC4において第2アンテナ32を選択してもよい。
【0054】
次に、図9〜図13を参照しながら本実施形態の制御部36の具体的な処理の流れについて説明する。図9は、本実施形態の制御部36によるメイン処理について示すフローチャートである。なお、図9の処理の開始時には、アンテナ切替回路33により第1アンテナ31に切り替えられているものとする。
【0055】
ステップS1において、制御部36は、各スロットの受信完了割り込みで、第1アンテナ31及び第2アンテナ32のダイバーシティー制御を開始する。
【0056】
ステップS2において、制御部36は、第1アンテナ31で受信したデータが高速適応変調に対応しているか判定する。高速適応変調に対応している場合(Yes)には、ステップS3へ移り、高速適応変調に対応していない場合(No)には、ステップS6へ移る。なお、この高速適応変調とは、1スロットごとに変調方式を切り替えることができる通信方式のことを示す。
【0057】
ステップS3において、制御部36は、ダイバーシティー制御における判定モードがモニタ判定モードであるか判定する。このモニタ判定モードとは、高速適応変調に基づいて、1スロットごとに図7に示された閾値テーブルに基づき、NMSEが閾値を超えたか否かを判定するモードのことである。モニタ判定モードである場合(Yes)には、ステップS4へ移り、NMSE判定モードである場合(No)には、ステップS5へ移る。
【0058】
ステップS4において、制御部36は、モニタ判定モードの処理を実行する。ステップS5において、制御部36は、NMSE判定モードの処理を実行する。ステップS6において、制御部36は、FER判定モードの処理を実行する。
【0059】
図10は、図9のステップS4におけるモニタ判定モードの処理について示すフローチャートである。
【0060】
ステップS41において、精度算出部361は、1スロット中のデータを参照して、MIを取得する。そして、精度算出部361は、上述した算出方法を用いて、取得したMIにおけるデータシンボルよりNMSEを算出する。
【0061】
ステップS42において、判定部362は、算出されたNMSEがメモリ37に記憶される閾値を超えているか判定する。NMSEが閾値を超えている場合(Yes)には、ステップS43へ移り、NMSEが閾値を超えない場合(No)には、処理を終了する。ステップS43において、制御部36は、タイマ判定モードの処理を実行する。
【0062】
図11は、図10のステップS43におけるタイマ判定モードの処理について示すフローチャートである。
【0063】
ステップS431において、制御部36は、メモリ37に記憶されているCS(Cell Station、基地局)情報を取得する。本実施形態のPHS端末1では、現在通信可能な基地局A又はBのいずれかのCS情報を取得し、メモリ37に基地局A又はBの位置を記憶することができる。
【0064】
ステップS432において、制御部36は、CS(基地局)タイマが動作中であるか判定する。CSタイマが開始される時間については、ステップS437で定義される。CSタイマが動作中である場合(Yes)には、ステップS433へ移り、CSタイマが動作中でない場合(No)には、ステップS435へ移る。
【0065】
ステップS433において、制御部36は、メモリ37に記憶されているアンテナ情報を取得する。
【0066】
ステップS434において、選択制御部363は、取得したアンテナ情報に基づいて、アンテナ切替回路33により第1アンテナ31又は第2アンテナ32を選択する。具体的には、選択制御部363は、現在使用されている第1アンテナ31と取得したアンテナ情報とが異なれば第2アンテナ32に切り替え、同一であれば第1アンテナ31を維持する。
【0067】
ステップS435において、CSタイマが既に満了していたら、選択制御部363は、現在使用されている第1アンテナ31を第2アンテナ32に切り替える。ステップS436において、選択制御部363は、切り替えた第2アンテナ32のアンテナ情報をメモリ37に記憶する。
【0068】
ステップS437において、制御部36は、CSタイマのカウントを開始する。なお、CSタイマは、基地局A及びBのそれぞれについて設定することできる。CSタイマのカウントは、例えば、100msecで満了となる。
ステップS438において、制御部36は、NMSE判定モードに移行する。
【0069】
図12は、図9のステップS5におけるNMSE判定モードの処理について示すフローチャートである。
【0070】
ステップS51において、制御部36は、ステップS1において受信が完了したスロットからMIを取得する。
ステップS52において、制御部36は、ステップS51において今回取得したMIと前回取得したMIとが一致するか判定する。一致する場合(Yes)には、ステップS53へ移り、一致しない場合(No)には、ステップS55へ移る。
【0071】
ステップS53において、精度算出部361は、上述した算出方法を用いて、取得したMIに対応するNMSEを算出する。
【0072】
ステップS54において、制御部36は、今回算出されたNMSEが前回算出されたNMSEよりも小さいか判定する。今回算出されたNMSEが前回算出されたNMSEよりも小さい場合(つまり、今回のほうが、アンテナ感度が良好であると判断された場合)には(Yes)、ステップS56へ移り、今回算出されたNMSEが前回算出されたNMSE以上の場合(つまり前回のほうが、アンテナ感度が良好であると判断された場合)には(No)、ステップS55へ移る。
【0073】
ステップS55において、選択制御部363は、第1アンテナ31又は第2アンテナ32を他方のアンテナへ切り替えるようにアンテナ切替回路33を制御する。なお、ステップS435において、例示的に第2アンテナ32が選択されている。具体的には、選択制御部363は、ステップS52〜ステップS54において、今回取得したMIと前回取得したMIとが一致し、且つ今回算出されたが前回算出されたNMSEよりも小さい場合には、現在選択されている第2アンテナ32の選択を維持する。一方、選択制御部363は、ステップS52において、今回取得したMIと前回取得したMIとが一致しない場合には、現在選択されている第2アンテナ32から第1アンテナ31に切り替えるようにアンテナ切替回路33を制御する。
【0074】
ステップS56において、制御部36は、第1アンテナ31又は第2アンテナ32のアンテナ情報及びCS情報をメモリ37に記憶する。
ステップS57において、制御部36は、上述したモニタ判定モードへ移行する。
【0075】
図13は、図9のステップS6におけるFER判定モードの処理について示すフローチャートである。
【0076】
ステップS61において、制御部36は、ステップS1において受信完了割り込みを行ったスロットでのFER判定モードの処理を実行する。
ステップS62において、制御部36は、直近の所定数のフレーム(例えば、10フレーム(80スロット))中のスロットにおけるエラーをしたスロットの数を算出する。
【0077】
ステップS63において、制御部36は、ステップS62において算出したエラーをしたスロットの数が前回アンテナを切り替える前のエラーをしたスロットの数に達しているか判定する。算出したエラーをしたスロットの数がアンテナを切り替える前のエラーをしたスロットの数に達している場合(Yes)には、ステップS64へ移り、算出したエラーをしたスロットの数がアンテナを切り替える前のエラーをしたスロットの数に達していない場合(No)には、ステップS65へ移る。
【0078】
ステップS64において、選択制御部363は、例えば、現在選択されている第1アンテナ31を第2アンテナ32に切り替える。
【0079】
ステップS65において、制御部36は、前回アンテナを切り替える前から所定の期間(例えば、30フレーム)が経過したか判定する。所定の期間が経過した場合(Yes)には、ステップS66へ移り、FER判定モードを終了する。一方、所定の期間が経過していない場合(No)には、ステップS67へ移り、FER判定モードを続行する。
【0080】
以上説明したように、本実施形態のPHS端末1によれば、精度算出部361によりデータシンボルの実測値と理論値との差分である差分値に基づいて、第1アンテナ31又は第2アンテナ32により受信されたデータの精度評価値(NMSE)を算出し、判定部362により算出されたデータの精度評価値(NMSE)が所定の閾値を超えるか判定する。そして、データの精度評価値(NMSE)が所定の閾値を超える場合には、選択されている一つのアンテナ(例えば、第1アンテナ31)から他のアンテナ(例えば、第2アンテナ32)を選択するようにアンテナ切替回路33を選択制御部363により制御する。
【0081】
すなわち、本実施形態のPHS端末1は、通信品質の判定を、スロットにエラーが発生したか否かではなく、データシンボルの実測値を含むスロットにおけるデータの精度評価値を用いて行う。このため、PHS端末1は、アンテナを切り替えた場合であっても、アンテナを切り替える契機となったスロットを用いて情報を伝達することが可能になる。したがって、スロットを有効に活用することができ、特に、PHS端末1が高速適応変調を行う場合において、スループットを向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態のPHS端末1によれば、精度算出部361は、上述した算出方法を用い、データシンボルの実測値と理論値との差分値の平均値に基づいて、データの精度評価値(NMSE)を算出する。これにより、算出されたデータの精度評価値(NMSE)には、データシンボルを含むデータを送信した送信側の変調の精度、受信系全体の雑音指数等が加味される。すなわち、PHS端末1は、通信品質の判定をより高い精度で行うことができる。
【0083】
また、本実施形態のPHS端末1によれば、データを構成する一つのスロットに含まれるデータシンボルを用いて、データの精度評価値(NMSE)を算出する。すなわち、PHS端末1は、通信品質の判定に他のスロットに含まれるデータシンボルを用いないため、より短時間で、スループットを向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態のPHS端末1によれば、メモリ37は、所定の閾値として、変調方式ごとに異なる値を記憶する。このため、PHS端末1は、変調方式に応じた閾値により通信品質の判定を行うことができる。したがって、PHS端末1は、通信品質の判定をより高い精度で行うことができる。
【0085】
また、本実施形態のPHS端末1によれば、選択制御部363は、データを構成する1フレーム中のチャネル単位でアンテナを選択する制御を行う。したがって、PHS端末1は、チャネル単位で通信に好適なアンテナを選択できるため、スループットの向上を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態のPHS端末1によれば、選択制御部363は、アンテナ切替回路33により選択されている一つのアンテナから他のアンテナを選択した場合には、他のアンテナの選択を一定期間(例えば、10フレーム)維持するようにアンテナ切替回路33の制御を行う。したがって、アンテナ切り替えの頻度を低減することができるため、スループットの向上を図ることができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、PHS端末1は、2本のアンテナを有していたが、本発明はこれに制限されず、3本以上のアンテナを有していてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 PHS端末(無線通信装置)
31 第1アンテナ(複数のアンテナ)
32 第2アンテナ(複数のアンテナ)
33 アンテナ切替回路(選択部)
37 メモリ(記憶部)
361 精度算出部
362 判定部
363 選択制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の変調方式で変調されたデータを受信する複数のアンテナと、
前記複数のアンテナのうちいずれか一つのアンテナを選択する選択部と、
前記選択部により選択された一つのアンテナにより受信されたデータを構成するデータのデータシンボルの理論値を記憶する記憶部と、
前記データシンボルの実測値と前記記憶部に記憶された前記所定の変調方式における前記理論値との差分である差分値に基づいて前記一つのアンテナにより受信された前記データの精度評価値を算出する精度算出部と、
前記データの精度評価値に基づいて前記選択部により選択されている前記一つのアンテナから他のアンテナを選択するように前記選択部を制御する選択制御部と、を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記精度算出部は、前記差分値の平均値に基づいて前記データの精度評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記精度算出部は、前記データを構成する一つのスロットに含まれる前記データシンボルを用いて前記データの精度評価値を算出すること特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記記憶部は、所定の閾値として、前記変調方式ごとに異なる複数の値を記憶することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記選択制御部は、前記データを構成する1フレーム中のチャネル単位で前記複数のアンテナを選択する制御を行うこと特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記選択制御部は、前記選択部により選択されている前記一つのアンテナから前記他のアンテナを選択した場合には、当該他のアンテナの選択を一定期間維持するように前記選択部の制御を行うこと特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項1】
所定の変調方式で変調されたデータを受信する複数のアンテナと、
前記複数のアンテナのうちいずれか一つのアンテナを選択する選択部と、
前記選択部により選択された一つのアンテナにより受信されたデータを構成するデータのデータシンボルの理論値を記憶する記憶部と、
前記データシンボルの実測値と前記記憶部に記憶された前記所定の変調方式における前記理論値との差分である差分値に基づいて前記一つのアンテナにより受信された前記データの精度評価値を算出する精度算出部と、
前記データの精度評価値に基づいて前記選択部により選択されている前記一つのアンテナから他のアンテナを選択するように前記選択部を制御する選択制御部と、を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記精度算出部は、前記差分値の平均値に基づいて前記データの精度評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記精度算出部は、前記データを構成する一つのスロットに含まれる前記データシンボルを用いて前記データの精度評価値を算出すること特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記記憶部は、所定の閾値として、前記変調方式ごとに異なる複数の値を記憶することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記選択制御部は、前記データを構成する1フレーム中のチャネル単位で前記複数のアンテナを選択する制御を行うこと特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記選択制御部は、前記選択部により選択されている前記一つのアンテナから前記他のアンテナを選択した場合には、当該他のアンテナの選択を一定期間維持するように前記選択部の制御を行うこと特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−30143(P2011−30143A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176351(P2009−176351)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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