説明

無菌充填ラインの稼動方法

【課題】多容器種及び多品種の内容液(特に飲料)をプラスチックボトルに効率よく、無菌充填することができる無菌充填ラインの稼動方法を提供する。
【解決手段】無菌チャンバーを備えた無菌充填ラインを用い、多品種の内容液をプラスチックボトルに無菌充填する際の無菌充填ラインの稼動方法において、設定処理本数に対して無菌充填ラインを複数使用し、内容液の品種毎に、前記複数の無菌充填ラインの何れかを選択し、同一品種の内容液については、選択された無菌充填ラインを連続稼動することにより無菌充填を行い、前記複数の無菌充填ラインを並行して稼動せしめると共に、前記無菌充填ラインの数、前記内容液の品種の数、及び内容液の品種ごとの無菌充填ラインの選択は、各無菌充填ラインで少なくとも2種以上の内容液の無菌充填が行われるように設定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水、果汁飲料、炭酸飲料、茶類、コーヒー類等の多品種の内容液(一般に飲料)をPETボトルなどのプラスチックボトルに無菌充填するための無菌充填ラインを効率よく稼動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックボトルは、容易に成形し且つ量産することが可能であるばかりか、軽量であることなどから、各種飲料等の液体容器として使用されているが、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)の如きポリエステル樹脂により形成されたプラスチックボトルは、優れた透明性や表面光沢性を有すると共に、ボトル等の容器に必要な耐衝撃性、剛性、ガスバリア性をも有していることから、特に飲料の容器として広く使用されている。また、最近のポリエステルボトルは、熱固定によってその耐熱性も著しく高められている。
【0003】
このようなプラスチックボトル、特にポリエステルボトルにおいては、従来より、各種飲料を無菌充填する方法が広く採用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
この無菌充填方法は、殺菌液や熱水によりボトルを殺菌し、次いでボトルに飲料等の内容液を充填し、さらにキャップによりボトルを密封するというものであり、これらの工程は、全て、無菌状態に維持された無菌チャンバー内で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−287310号公報
【特許文献2】特開平7−291236号公報
【特許文献3】特開平7−76324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、飲料が充填されたPETボトルが大量に市販されている現状では、上記のように無菌充填法を実施するための無菌充填ラインの高速化が主流となっており、各飲料メーカーの生産工場においても、単位時間当りの処理本数の多い高速の無菌充填ラインが導入されるようになってきている。
【0006】
しかしながら、高速の無菌充填ラインを用いての無菌充填処理は、市販されている飲料の種類が少ないときには、極めて生産性が高いが、飲料の種類が増え、多品種の飲料をボトルに無菌充填して生産するような場合には、その生産性が極めて低くなるという問題がある。
【0007】
即ち、無菌充填をすべき内容液を変更する際には、そのラインを一旦停止し、無菌充填が実行されるチャンバー内を洗浄、殺菌した後、この後に、無菌充填すべき内容液の種類に応じて殺菌液の種類や液量を設定変更し、次いでラインの再稼動が行われることとなる。しかるに、高速で無菌充填を行うラインほど、チャンバーが大きく、無菌充填に際しての殺菌液の液量も大量に供給するように設定されているため、その洗浄や加熱殺菌に多大の時間や労力を要するため、ラインの稼動停止時間が極めて長くなってしまうからである。因みに、一分間辺りのボトルの処理本数で示される処理能力が約800BPMの高速無菌充填ラインにおいて、設定変更に際してのラインの稼動停止時間が約5時間である。
【0008】
現在では、飲料の種類が、水、各種の果汁飲料、炭酸飲料ばかりか、緑茶、紅茶、ウーロン茶、混合茶、ミルク入りコーヒー類など、極めて多品種であり、その内容液の種類によって殺菌液も異なっている。このため、多品種、少量生産が主流の現況下では、高速無菌充填ラインでは、その生産性が高いとは言えず、その改善が求められている。
【0009】
従って、本発明の目的は、多品種の内容液(特に飲料)をプラスチックボトルに効率よく、無菌充填することができる無菌充填ラインの稼動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、無菌チャンバーを備えた無菌充填ラインを用い、多品種の内容液をプラスチックボトルに無菌充填する際の無菌充填ラインの稼動方法において、
設定処理本数に対して無菌充填ラインを複数使用し、
内容液の品種毎に、前記複数の無菌充填ラインの何れかを選択し、同一品種の内容液については、選択された無菌充填ラインを連続稼動することにより無菌充填を行い、
前記複数の無菌充填ラインを並行して稼動せしめると共に、
前記無菌充填ラインの数、前記内容液の品種の数、及び内容液の品種ごとの無菌充填ラインの選択は、各無菌充填ラインで少なくとも2種以上の内容液の無菌充填が行われるように設定することを特徴とする無菌充填ラインの稼動方法が提供される。
【0011】
本発明の無菌充填ラインの稼動方法においては、
(1)前記無菌充填ラインが備えている無菌チャンバーには、それぞれ、その内部に、前記ボトルの供給ゾーン、前記ボトルを殺菌液及び/又は熱水で殺菌する殺菌ゾーン、内容液の充填ゾーン及びキャップによる密封ゾーンが配備されていること、
という構造の無菌充填ラインが使用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無菌充填ラインの稼動方法においては、設定処理本数に対して無菌充填ラインを複数使用し、複数の品種の内容液をプラスチックボトルに無菌充填するが、複数の無菌充填ラインを並行して稼動せしめるばかりか、各無菌充填ラインでは、少なくとも2種以上の品種の内容液についての無菌充填が行われる。このため、一本の高速の無菌充填ラインを用いて同数の品種の内容液を同じ数のボトルに無菌充填する場合と比較すると、内容液を交換する際に要する稼動停止時間を大幅に短縮することができ、短時間で無菌充填を完了させることができ、生産性を大幅に向上させることができる。
このような生産性の向上は、CO排出量の低減にも寄与するため、環境保護の観点からも極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施に使用する無菌充填ラインの代表的な配置を示す図である。
【図2】800BPMの高速無菌充填ラインを用い、7種類の飲料A〜Gを、所定本数の500mlボトルに充填するときの該ラインの稼動状態を示す図である。
【図3】本発明にしたがい、400BPMの高速無菌充填ラインを2本使用し、7種類の飲料A〜Gを、所定本数の500mlボトルに充填するときの該ラインの稼動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明方法においては、複数の無菌充填ラインが使用されるが、その構造自体は公知であり、例えば、各無菌充填ラインは、図1に示す構造を有している。
【0015】
即ち、図1において、全体として1で示す無菌充填ラインは、チャンバー10を備えており、チャンバー10内には、ボトルの搬送装置が延びており、チャンバー10の入り口側から出口側に向かって順に、供給ゾーン11、殺菌ゾーン13、充填ゾーン15及び密封ゾーン17が配置されており、内容液を充填すべきプラスチックボトルが、搬送装置によって順に各ゾーンに連続的に導入され且つ排出されるようになっている。
【0016】
チャンバー10内は、所謂クリーンルームと呼ばれるものであり、滅菌フィルターを介しての換気や壁面や搬送装置の殺菌処理などによって、レベルが10,000程度のクリーン度に維持されている。また、各ゾーンは、ブースなどによって互いに仕切られていてもよい。
【0017】
内容液を無菌充填すべきプラスチックボトルには、ポリエステルボトルが代表的であり、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系ボトルやその他のプラスチック製ボトルも知られているが、特にガスバリア性や耐熱性などの観点からポリエステルボトルが好適に使用される。
【0018】
ポリエステルボトルは、代表的にはポリエチレンテレフタレート(PET)製であるが、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の他のポリエステル製であってもよい。また、後述する熱水による殺菌など、高温に曝されるようなときには、このポリエステルボトルは、成形後或いは成形時での熱固定により耐熱性を向上させておくことが好適である。
【0019】
このようなボトルは、クリーンな状態に保持されているチャンバー10内の供給ゾーン11に導入され、搬送装置により倒立状態に保持され、必要により、温水によりボトルの外面や内面がリンスされ、次の殺菌ゾーン13に搬送される。
【0020】
殺菌ゾーン13においては、ボトル内に充填する内容液の種類に応じて、殺菌液或いは熱水により殺菌処理が行われる。
殺菌液としては、通常、過酸化水素水、過酢酸水溶液、過酸化水素と過酢酸との混合液、次亜塩素酸ソーダの水溶液などが代表的である。また、熱水としては、通常、63℃以上の温度のものが使用される。
【0021】
例えば、ミネラルウオーターなどの飲料水、麦茶、はと麦茶、多数の茶葉が混合された混合茶、ミルク入り飲料(コーヒー、紅茶等)などの飲料をボトルに充填する場合には、高度の殺菌を要するため、過酸化水素と過酢酸との混合液や次亜塩素酸ソーダの水溶液が適度の濃度に調整されて殺菌液として使用される。また、各種の果汁類を充填する場合には、殺菌の程度は中程度でよく、通常、過酸化水素水や過酢酸水溶液が使用される。さらに、炭酸飲料や緑茶、ウーロン茶、或いはミルクが添加されていないコーヒーや紅茶類では、要求される殺菌レベルは低く、熱水による殺菌が行われる。
【0022】
尚、上記のような殺菌を、殺菌液を用いて行ったときには、その後、温水によりボトル内のリンスが行われる。熱水により殺菌が行われたときは、このようなリンスは必要でない。
【0023】
尚、ボトル内面のリンスや殺菌は、ボトル内に液供給用ノズルを侵入させ、このノズルから液を吐出することにより行われる。
【0024】
殺菌終了後のボトルは、殺菌ゾーン13から充填ゾーン15に搬送され、このゾーン15で、公知の反転装置によって倒立状態から正立状態にボトルを復帰させ、次いで内容液供給パイプにより、内容液のボトル内への充填が行われる。
【0025】
ボトル内の内容液の充填後には、正立状態のまま、密封ゾーン17に搬送され、キャップによる密封が行われる。
【0026】
密封に用いるキャップは、別個のラインで、前記と同様の殺菌液等により殺菌処理が行われたものであり、密封操作は、キャップのタイプに応じて行われる。例えば、ボトルの口部に螺子係合するタイプのキャップでは、適当な治具により、内容液が充填されたボトルの口部にキャップを被せ、この状態で閉栓方向に回転することにより密封が行われる。また、容器口部に嵌合固定するタイプのキャップでは、このキャップをボトルの口部に被せた状態で打栓することにより密封が行われる。
【0027】
キャップによる密封が行われた後は、適宜、温水洗浄等によりボトルの外面を洗浄した後、チャンバー10内から排出され、適宜、乾燥した後、製品として販売に供される。
【0028】
上記のようにして内容液の無菌充填を連続的に行い、次いで、内容液の種類を変更する場合には、このライン1の稼動を停止し、チャンバー10内の殺菌処理や充填する内容液の変更(或いは、それに伴う供給パイプや殺菌液などの変更)などが行われる。チャンバー10内の殺菌処理は、例えば、過酸化水素と過酢酸との混合液や次亜塩素酸ソーダの水溶液などの高度の殺菌液を使用してチャンバー10内に残存する内容液を除去し、次いで温水等により殺菌液をリンスすることにより行われ、この際、搬送装置を空運転しておくことが好適である。また、このような稼動停止時の殺菌処理は、チャンバー10内の各ゾーン毎に行ってもよい。
【0029】
上記のようにして無菌充填ライン1を稼動停止し、その殺菌処理を完了した後は、このラインを再稼動せしめ、次の異なる品種の内容液について、それに応じた設定で無菌充填が行われる。このように、無菌充填する内容液の種類毎に、ラインの稼動、稼動停止(殺菌処理)及び再稼動を繰り返して、種々の品種についての無菌充填が行われることとなる。
【0030】
本発明においては、上記のような構造を有する無菌充填ラインを複数配置して、複数の品種の内容液をプラスチックボトル(特にポリエステルボトル)に無菌充填する。
【0031】
この際、内容液を無菌充填すべきプラスチックボトルの容量は特に制限されず、例えば容量が1リットルよりも大きい大容量ボトルであってもよいし、容量が1リットル以下の中或いは小容量ボトルであってもよい。尚、ボトルの容量を種々変更させることも可能ではあるが、ボトルの容量が変更になると殺菌条件が異なり、同じ内容液であってもラインの稼動を停止し、殺菌処理が必要となる。
【0032】
また、複数の無菌充填ラインとしては、それぞれ、処理能力が設定処理本数に対して50%以下のラインを用いる。本発明では、多品種(少なくとも4種以上)の内容液について無菌充填を行うため、処理能力の高い無菌充填ラインを用いると、内容液の変更に際しての殺菌処理のためのラインの稼動停止時間が長くなってしまい、生産効率が低下してしまうからである。
【0033】
さらに、本発明においては、無菌充填を行う内容液の種類毎に複数の無菌充填ラインの内の一つを選択し、同一の内容液については、同一の無菌充填ラインを連続的に稼動させて無菌充填を行う。同一の内容液について、複数の無菌充填ラインを用いて無菌充填を行うと、内容液の交換回数が増え、トータルの稼動停止時間が長くなってしまい、生産効率が低下してしまうからである。
【0034】
また、用いる無菌充填ラインの数、内容液の品種の数、及び内容液の品種ごとの無菌充填ラインの選択は、各無菌充填ラインで少なくとも2種以上の内容液の無菌充填が行われるように設定することが重要である。例えば、2つの無菌充填ラインを並行稼動させて無菌充填を行う場合においては、少なくとも4種の内容液を選定し、それぞれの無菌充填ラインで2種の内容液の無菌充填が行われるように設定することが必要である。一つの無菌充填ラインで1種の内容液についてのみ無菌充填が行われるように設定すると、全体のバランスを欠き、一の無菌充填ラインでの無菌充填が完了した後も他の無菌充填ラインが稼動している時間が長くなってしまい、複数の無菌充填ラインを稼動させるメリットが低減してしまい、生産効率が低下してしまうからである。
【0035】
尚、無菌充填ラインの数は、工場の設置スペース等によって定まり、通常、各工場が所有している無菌充填ラインの数は、1以上、特に1〜4程度であり、従って、一般的には、この無菌ラインの数に応じて、上記の条件を満足するように、ボトルに充填する内容液の品種の数が設定される。この数が多いほど、内容液の交換回数が増え、設定処理本数に対して無菌充填ラインを複数用いた利点が増大する。即ち、複数の無菌充填ラインにおける1ラインでの内容液の交換に要するラインの駆動停止時間は、高速の無菌充填ラインに比して短く、内容液の交換回数が多いほど、高速の無菌充填ラインを用いた場合に比して短時間で無菌充填を完了することができるからである。
【0036】
例えば、800BPMの高速無菌充填ラインを用い、90%の稼働率(即ち、720BPMの処理速度)で、以下の種類及び本数の飲料を1ロットで500mlボトルに充填するときの各飲料についての生産時間を試算すると、以下の通りである。
【0037】
<800BPM無菌充填ラインでの試算>
飲料の種類 生産本数(1ロット当りの充填本数) 生産時間
A:スポーツドリンク 1,200,000本 27.8時間
B:混合茶 1,200,000本 27.8時間
C:緑茶 600,000本 13.9時間
D:ガス飲料 240,000本 5.6時間
E:果汁系ガス飲料 216,000本 5.6時間
F:果汁飲料 120,000本 2.8時間
G:ミルクコーヒー 120,000本 2.8時間
【0038】
上記の試算結果によると、A〜Gの飲料の合計の生産時間は86.3時間であるが、飲料の交換時や全ての飲料についての充填が完了した時には、先にも述べたように、次の飲料についての充填を行うために、ラインの稼動を停止し、チャンバー内の殺菌処理を行うことが必要となる。例えば、800BPMの高速無菌充填ラインは、その設置スペースが非常に大きく、チャンバーが非常に大型であるため、その殺菌処理時間も長く、約5時間程度、ラインの稼動を停止する必要がある。従って、上記の7種類の飲料を無菌充填するのに要する実際の所要時間は、
121.3時間(86.3時間+5×7時間)
となり、約5.05日相当の時間を要する。このようなラインの稼動状態は図2に示した。
【0039】
一方、上記と同様の本数のボトルにA〜Gの飲料について、400BPMの無菌充填ラインを用いて、90%の稼働率で充填を行ったときの生産時間を試算すると、以下の通りとなる。
【0040】
<400BPM無菌充填ラインでの試算>
飲料の種類 生産本数(1ロット当りの充填本数) 生産時間
A:スポーツドリンク 1,200,000本 55.6時間
B:混合茶 1,200,000本 55.6時間
C:緑茶 600,000本 27.8時間
D:ガス飲料 240,000本 11.2時間
E:果汁系ガス飲料 216,000本 11.2時間
F:果汁飲料 120,000本 5.6時間
G:ミルクコーヒー 120,000本 5.6時間
【0041】
上記の試算結果によると、1本の400BPM無菌充填ラインを用いてのA〜Gの飲料の合計の生産時間は、800BPMの高速無菌充填ラインを用いて行った場合と比較すると長いが、本発明にしたがい、2つの400BPM無菌充填ラインX,Yを使用し、上記の7種の飲料を2つのラインX,Yに振り分けて充填を行うと、生産効率を大幅に向上させることができる。
【0042】
例えば、ラインXで飲料A,C,Fの充填を行い、ラインYで飲料B,D,E,Gの充填を行うときの各ラインの稼動状態は、図3に示す通りとなる。即ち、ラインXでの飲料A,C,Fの生産時間は、88.9時間であり、ラインYでの飲料B,D,E,Gの生産時間は、83.3時間であり、これに、飲料を交換するときの殺菌処理のための稼動停止時間が加算されて実際の所要時間となる。
【0043】
ところで、400BPMの処理能力の無菌充填ラインX,Yを並列して配置したときの合計の設置スペースは、高速ラインに比してチャンバー容積が小さいため、1本の高速充填ラインの設置スペースに比してやや大きくなる程度であるばかりか、飲料を交換するときの殺菌処理はかなり短時間でよく、800BPMの高速充填ラインでの飲料交換時の稼動停止時間が約5時間であるのに対して、400BPMの無菌充填ラインでの飲料交換時の稼動停止時間は約4時間である。従って、ラインX,Yでの実際の所要時間は、以下の通りとなる。
ラインX:100.9時間(88.9時間+4×3時間;4.2日相当)
ラインY:99.3時間(83.3+4×4時間;4.15日相当)
【0044】
従って、本発明にしたがって、400BPMの無菌充填ラインX,Yを同時に稼動させて7種の飲料A〜Gの無菌充填を行った場合、100.9時間(4.2日相当)の所要時間で無菌充填を完了させることができ、800BPMの高速無菌充填ラインを1本使用して充填を行った場合と比較して、ほぼ同等の設置スペースで所要時間を約20時間短縮することができる。これを、上記7種の飲料について、1月及び1年を通じて無菌充填を行ったときに換算すると、400BPMの無菌充填ラインを2本設置して行った場合には、1本の800BPM高速無菌充填ラインを用いて行った場合と比較して、月間で150,000ケース(1ケースは24本)、年間では1,800,000ケース、約16%の増産が可能となり、炭酸ガス排出量は、年間で約27%削減することが可能となり、その生産性は著しく向上することが理解されよう。また、これらの試算は、設定処理本数が1本の800BPM高速無菌充填ラインを使用するに対して、2本の無菌充填ラインを使用したものについてであるが、前記設定処理本数が更に多い場合は、3本或いはそれ以上の本数の無菌充填ラインを用いて、その生産性を向上させることができる。
【0045】
また、全種の内容液についての無菌充填が完了するまでの間(稼動停止時間を含む)を通じて、複数の無菌充填ラインが同時に稼動していること、即ち、各ラインでの全ての飲料の充填が完了した時点が同じとなることが理想的であるが、実際には、各種飲料についての設定充填本数が異なるため、各ラインについての充填完了時には多少のずれを生じることとなる。しかるに、このような充填完了時のずれは、できるだけ小さくすることが好ましい。
【0046】
上述した本発明によれば、設定処理本数に対して複数の無菌充填ラインを用い、これらのラインに振り分けて多品種の飲料についてのボトルへの無菌充填を行うことにより、高速の無菌充填ラインを用いた場合に比して、ほぼ同等のライン設置スペースとしながらも、その生産性を著しく向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1:無菌充填ライン
10:チャンバー
11:供給ゾーン
13:殺菌ゾーン
15:充填ゾーン
17:密封ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌チャンバーを備えた無菌充填ラインを用い、多品種の内容液をプラスチックボトルに無菌充填する際の無菌充填ラインの稼動方法において、
設定処理本数に対して無菌充填ラインを複数使用し、
内容液の品種毎に、前記複数の無菌充填ラインの何れかを選択し、同一品種の内容液については、選択された無菌充填ラインを連続稼動することにより無菌充填を行い、
前記複数の無菌充填ラインを並行して稼動せしめると共に、
前記無菌充填ラインの数、前記内容液の品種の数、及び内容液の品種ごとの無菌充填ラインの選択は、各無菌充填ラインで少なくとも2種以上の内容液の無菌充填が行われるように設定することを特徴とする無機充填ラインの稼動方法。
【請求項2】
前記無菌充填ラインが備えている無菌チャンバーには、それぞれ、その内部に、前記ボトルの供給ゾーン、前記ボトルを殺菌液及び/又は熱水で殺菌する殺菌ゾーン、内容液の充填ゾーン及びキャップによる密封ゾーンが配備されている請求項1に記載の稼動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−148517(P2011−148517A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10125(P2010−10125)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)