説明

無限遠視表示装置及び無限遠視プラネタリウム装置

【課題】無限遠視を実現することにより、迫真性のある画像を表示することができるとともに、視力の低下を惹起する虞れのない無限遠視表示装置を提供し、また、実際の星空と同様の迫真性のある星像を表示することができる無限遠視プラネタリウム装置を提供する。
【解決手段】無限遠視表示装置は、空間光変調素子1上の各点からの拡散光束を凸レンズ光学系2を介して平行光束として出射する無限遠視表示部3を複数備え、これら各無限遠視表示部3を並列的に配列させ、異なる空間光変調素子1において互いに対応する箇所からの光束が互いに平行に出射されるようにする。無限遠視プラネタリウム装置は、複数の無限遠視表示部3を観察室5内の天井部においてドーム状に配列させ、異なる星像原板1において対応する星像S1からの光束が互いに平行に出射されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物点からの拡散光束を平行光束として観察者に向けて出射することにより、無限遠視を実現する無限遠視表示装置及び無限遠視プラネタリウム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置としては、特許文献1に記載されているように、陰極線管の表示面や液晶表示装置の表示面を直接観察するように構成されたものが提案されている。また、画像表示装置としては、特許文献2に記載されているように、陰極線管や液晶表示装置が表示する画像の実像をスクリーン上に結像させ、この実像を観察するように構成されたものが提案されている。
【0003】
そして、プラネタリウム装置としては、特許文献3に記載されているように、星像原板の実像をドーム状の天井に結像させ、この実像を観察するように構成されたものが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−210707公報
【特許文献2】特開2002−268033公報
【特許文献3】特開2002−328597公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の表示装置では、陰極線管や液晶表示装置の表示面、あるいは、スクリーン上に結像された実像を観察するものであるため、観察者は、無限遠を見る状態、すなわち、無限遠視の状態で画像を観察することはない。これら陰極線管や液晶表示装置の表示面、あるいは、スクリーンは、観察者から数メートル程度の有限の距離の場所に設置されるからである。
【0006】
そのため、このような表示装置においては、表示される画像に迫真性が欠ける場合があり、また、観察者が表示面やスクリーンに近い場所、例えば、表示面やスクリーンからの距離が1メートル以下というような場所において長時間の画像観察を行うと、観察者の視力の低下(近視)が惹起される虞れがある。
【0007】
そして、プラネタリウム装置では、これら表示装置と同様に無限遠視ではないことにより、実際の星空よりも星座が小さく見えるなど、表示される星像の迫真性に欠ける。これは、ある星と他の星との間の角度(視角度)が、観察室の中央から見たときには正確に再現されていても、実際の観察者は観察室の中央から外れた位置から観察するためである。すなわち、プラネタリウム装置においては、一般に、観察者は観察室の中央部を挟んで反対側の天井部に投影される星像を観察することが多いため、観察室の中央部よりも遠い位置から当該星像を観察することとなるので、星座が実際の星空よりも小さく見えるのである。
【0008】
また、従来のプラネタリウム装置においては、観察室の中央部分に投影装置が設置されているため、この投影装置に遮られて天井部の全面を観察することができない。特に、観察室の中央部を挟んで反対側の天井部が遮られるため、極めて目障りである。
【0009】
そこで、本発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、無限遠視を実現することにより、迫真性のある画像を表示することができるとともに、視力の低下を惹起する虞れのない無限遠視表示装置を提供し、また、実際の星空と同様の迫真性のある星像を表示することができ、さらに、天井部の全面を遮られることなく観察することができる無限遠視プラネタリウム装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0011】
〔構成1〕
本発明に係る無限遠視表示装置は、空間光変調素子及び凸レンズ光学系を有し空間光変調素子上の各点からの拡散光束を凸レンズ光学系を介して平行光束として観察者に向けて出射する無限遠視表示部を複数備え、これら各無限遠視表示部は、凸レンズ光学系の観察者に対向する前面側のレンズ面の周縁同士を略々密接させて並列的に配列されており、それぞれが観察者に向けて凸レンズ光学系を介した平行光束を出射し、異なる空間光変調素子において互いに対応する箇所からの光束は、異なる凸レンズ光学系を経て、互いに平行に出射されることを特徴とするものである。
【0012】
〔構成2〕
本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置は、星像原板及び凸レンズ光学系を有し星像原板上の各点からの拡散光束を凸レンズ光学系を介して平行光束として観察者に向けて出射する無限遠視表示部を複数備え、各無限遠視表示部は、観察室内の少なくとも天井部において、凸レンズ光学系の観察者に対向する前面側のレンズ面の周縁同士を略々密接させて略々ドーム状をなして配列されており、それぞれが該観察室内方に向けて凸レンズ光学系を介した平行光束を出射し、異なる星像原板において互いに対応する星像からの光束は、異なる凸レンズ光学系を経て、互いに平行に出射されることを特徴とするものである。
【0013】
〔構成3〕
本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置は、構成2を有する無限遠視プラネタリウム装置において、星像原板は、空間光変調素子であることを特徴とするものである。
【0014】
〔構成4〕
本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置は、複数の星像原板の実像を空間上に結像させる結像装置と、各星像原板の実像からの拡散光束を平行光束として観察者に向けて反射させる複数の凹面鏡光学系とを備え、各凹面鏡光学系は、観察室内の天井部において、略々密接されてドーム状をなして配列されており、それぞれが該観察室内方に向けて平行光束を反射し、異なる星像原板において互いに対応する星像からの光束は、異なる凹面鏡光学系を経て、互いに平行な方向に反射されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る無限遠視表示装置においては、空間光変調素子上の各点からの拡散光束を凸レンズ光学系を介して平行光束として観察者に向けて出射する複数の無限遠視表示部が凸レンズ光学系の観察者に対向する前面側のレンズ面の周縁同士を略々密接させて並列的に配列され、それぞれが観察者に向けて凸レンズ光学系を介した平行光束を出射し、異なる空間光変調素子において互いに対応する箇所からの光束が、互いに平行に出射されるので、この無限遠視表示装置と観察者との位置関係に関係なく、異なる空間光変調素子において互いに対応する箇所の表示は、常に同一方向の無限遠方に存在するように観察される。すなわち、空間光変調素子による全体像は、観察者が移動しても、同一方向(例えば、この無限遠視表示装置の正面方向)の無限遠方に存在するように観察される。
【0016】
したがって、この無限遠視表示装置においては、無限遠視を実現することにより、迫真性のある画像を表示することができるとともに、視力の低下を惹起する虞れがない。
【0017】
また、本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置においては、星像原板上の各点からの拡散光束を凸レンズ光学系を介して平行光束として観察者に向けて出射する複数の無限遠視表示部が観察室内の少なくとも天井部において凸レンズ光学系の観察者に対向する前面側のレンズ面の周縁同士を略々密接させて略々ドーム状をなして配列されており、それぞれが観察室内方に向けて凸レンズ光学系を介した平行光束を出射し、異なる星像原板において互いに対応する星像からの光束が、互いに平行に出射されるので、観察室内における位置に関係なく、異なる星像原板における互いに対応する星像は、同一方向の無限遠方に存在するように観察される。すなわち、同一の星像は、観察室内における位置に関係なく、また、観察室内において観察者が移動しても、同一方向の無限遠方に存在するように観察される。
【0018】
したがって、この無限遠視プラネタリウム装置においては、実際の星空と同様の迫真性のある星像を表示することができ、さらに、天井部の全面を遮られることなく観察することができる。
【0019】
この無限遠視プラネタリウム装置において、星像原板を空間光変調素子とした場合には、星像の変更、移動を容易に行うことができ、また、カラー表示をも容易に行うことができる。
【0020】
そして、本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置においては、複数の星像原板の実像を空間上に結像させる結像装置と、各星像原板の実像からの拡散光束を平行光束として観察者に向けて反射させる複数の凹面鏡光学系とを備え、各凹面鏡光学系は、観察室内の天井部において略々密接されてドーム状をなして配列され、それぞれが該観察室内方に向けて平行光束を反射し、異なる星像原板において互いに対応する星像からの光束を互いに平行な方向に反射するので、観察室内における位置に関係なく、異なる星像原板における互いに対応する星像は、同一方向の無限遠方に存在するように観察される。すなわち、同一の星像は、観察室内における位置に関係なく、また、観察室内において観察者が移動しても、同一方向の無限遠方に存在するように観察される。
【0021】
したがって、この無限遠視プラネタリウム装置においては、実際の星空と同様の迫真性のある星像を表示することができる。
【0022】
すなわち、本発明は、無限遠視を実現することにより、迫真性のある画像を表示することがでるとともに、視力の低下を惹起する虞れのない無限遠視表示装置を提供し、また、実際の星空と同様の迫真性のある星像を表示することができる無限遠視プラネタリウム装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0024】
〔無限遠視表示装置の構成(1)〕
本発明に係る無限遠視表示装置は、図1に示すように、画像表示を行う空間光変調素子1及び凸レンズ光学系2を有し空間光変調素子1上の各点からの拡散光束を凸レンズ光学系2を介して平行光束として観察者に向けて出射する無限遠視表示部3を、複数備えている。空間光変調素子1は、例えば、液晶表示パネル(LCD)、DMD(デジタルミラーデバイス)などである。
【0025】
これら各無限遠視表示部3は、凸レンズ光学系2を略々密接させて並列的に配列されており、それぞれが観察者に向けて凸レンズ光学系2を介した平行光束を出射する。
【0026】
凸レンズ光学系2は、観察者に対向する前面側のレンズ面の全面から平行光束を出射する光学系であることが望ましく、また、隣接する凸レンズ光学系2と前面側のレンズ面の周縁同士を密接させて配列されることが望ましい。そのため、凸レンズ光学系2は、前面側のレンズ面を矩形や正六角形として構成することが望ましい。前面側のレンズ面が矩形や正六角形であれば、このレンズ面を密接させて隙間無く配列することができるからである。
【0027】
さらに、凸レンズ光学系2は、前面側のレンズ面からなるべく広い角度で平行光束を出射できる光学系であることが望ましい。このような特性を有する光学系としては、例えば、いわゆるレトロフォーカスタイプのレンズ構成が考えられる。
【0028】
レトロフォーカスタイプの光学系は、撮像レンズとして使用される場合においては広角レンズとして使用されるレンズ構成であり、広い画角範囲から入射する平行光束を撮像領域(撮像素子や感光フィルム)に集光させて結像させる。この無限遠視表示装置における凸レンズ光学系2としては、撮像領域に代えて空間光変調素子1が配置されており、この空間光変調素子1からの光が広い角度範囲に亘って平行光束として出射されることとなる。 また、 レトロフォーカスタイプの光学系は、前面側のレンズ群が後群よりも大口径となる傾向があるため、前面側のレンズ面の周縁同士を密接させて配列することに適している。
【0029】
この実施の形態においては、各凸レンズ光学系2は、光軸を互いに平行として設置されている。各凸レンズ光学系2の光軸が互いに平行である場合においては、各空間光変調素子1は、常に同一の画像を同期して(同時に)表示することとなる。
【0030】
すなわち、この無限遠視表示装置においては、異なる空間光変調素子1において互いに対応する箇所(同一画像上の対応する箇所)a1,b1,c1からの光束は、異なる凸レンズ光学系2を経て、互いに平行な平行光束A1,B1,C1として出射される。同様に、異なる空間光変調素子1における互いに対応する箇所(同一画像上の対応する箇所)a2,b2,c2からの光束は、異なる凸レンズ光学系2を経て、互いに平行な平行光束A2,B2,C2として出射される。また、異なる空間光変調素子1における互いに対応する箇所(同一画像上の対応する箇所)a3,b3,c3からの光束は、異なる凸レンズ光学系2を経て、互いに平行な平行光束A3,B3,C3として出射される。
【0031】
したがって、この無限遠視表示装置においては、この無限遠視表示装置と観察者との位置関係に関係なく、異なる空間光変調素子1において互いに対応する箇所(a1,b1,c1)、(a2,b2,c2)、(a3,b3,c3)の表示は、常に同一方向の無限遠方に存在するように観察される。すなわち、空間光変調素子1による全体像は、観察者が移動しても、同一方向(例えば、この無限遠視表示装置の正面方向)の無限遠方に存在するように観察される。そして、空間光変調素子1により表示される全体像の視角は、図1中のθで示すように、空間光変調素子1の両隅部からの光束のなす角度θによって決まる。
【0032】
このようにして、この無限遠視表示装置においては、無限遠視が実現され、迫真性のある画像を表示することができるとともに、無限遠視表示装置に接近して表示画像を観察しても、視力の低下を惹起する虞れがない。
【0033】
この無限遠視表示装置は、図2に示すように、前述した複数の無限遠視表示部3を筐体4内に収納し、凸レンズ光学系2を密接させて2次元マトリクス状に並列的に配列させて構成することができる。このように構成した無限遠視表示装置においては、筐体4の前方位置が、画像の観察が可能な領域であり、この領域内にいる観察者は、その位置に依らず、同一方向(例えば、この無限遠視表示装置の正面方向)の無限遠方に存在するように見える画像を観察することができる。
【0034】
また、この無限遠視表示装置を壁面に設置すれば、そこに無限遠方に存在するように見える風景などを表示することができるので、観察者に対して、室内空間が無限遠方に拡大されたような感覚を与えることができる。
【0035】
〔無限遠視表示装置の構成(2)〕
この無限遠視表示装置は、空間光変調素子1を1個として、各凸レンズ光学系2に画像光を分配するように構成することもできる。すなわち、1個の空間光変調素子1からの光を、ハーフミラー等によって複数の光路に分岐させ、これら分岐された光のそれぞれを各凸レンズ光学系2に入射させれば、各凸レンズ光学系2に対応させて複数の空間光変調素子1を設けた場合と同様の表示を行うことができる。
【0036】
〔無限遠視表示装置の構成(3)〕
また、この無限遠視表示装置は、前述した無限遠視表示装置の構成(1)、または、(2)において、各凸レンズ光学系2の光軸を平行でなくし、各無限遠視表示部3が観察者を囲むように、すなわち、各凸レンズ光学系2の光軸が観察者側の空間において交差するように配置して構成してもよい。
【0037】
この場合には、各空間光変調素子1が表示する画像は、各凸レンズ光学系2の光軸の傾きに応じてずれた画像とする。ただし、各画像における対応する箇所(図1におけるa1,b1,c1や、a2,b2,c2、または、a3,b3,c3)からの光束が、互いに平行に出射されることは維持する。
【0038】
この場合には、各無限遠視表示部3は、観察者の全周を囲んで配置するようにしてもよい。各無限遠視表示部3を観察者の全周を囲んで配置すると、観察者は、いずれの方向を見ても無限遠方に存在するように見える風景などが表示されているので、広大な空間内に居るような感覚を得ることができる。
【0039】
〔無限遠視プラネタリウム装置の構成(1)〕
本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置は、図3(縦断面図)及び図4(横断面図)に示すように、星像原板1及び凸レンズ光学系2を有し星像原板1上の各点からの拡散光束を凸レンズ光学系2を介して平行光束として観察者に向けて出射する無限遠視表示部3を複数備えている。なお、各無限遠視表示部3の構成は、前述の無限遠視表示装置における無限遠視表示部3と同様のものである。
【0040】
各無限遠視表示部3は、観察室5内の天井部において、凸レンズ光学系2の観察者に対向する前面側のレンズ面の周縁同士を略々密接させて略々ドーム状をなして配列されている。各無限遠視表示部3は、それぞれが観察室5の内方に向けて、凸レンズ光学系2を介した平行光束を出射する。
【0041】
この無限遠視プラネタリウム装置においても、前述の無限遠視表示装置と同様に、凸レンズ光学系2は、観察者に対向する前面側のレンズ面の全面から平行光束を出射する光学系であることが望ましく、また、隣接する凸レンズ光学系2と前面側のレンズ面の周縁同士を密接させて配列されることが望ましい。そのため、凸レンズ光学系2は、正六角形として構成することが望ましい。前面側のレンズ面が正六角形であれば、このレンズ面を密接させて隙間無く配列することができるからである。
【0042】
さらに、凸レンズ光学系2は、前面側のレンズ面からなるべく広い角度で平行光束を出射できる光学系であることが望ましい。このような特性を有する光学系としては、例えば、いわゆるレトロフォーカスタイプのレンズ構成が考えられる。
【0043】
そして、この無限遠視プラネタリウム装置においては、図3及び図4に示すように、異なる星像原板1において互いに対応する星像S1からの光束は、異なる凸レンズ光学系2を経て、互いに平行な平行光束Sとして出射される。また、図4に示すように、異なる星像原板1において互いに対応する星像S2からの光束は、異なる凸レンズ光学系2を経て、互いに平行な平行光束Tとして出射される。
【0044】
この無限遠視プラネタリウム装置において、各無限遠視表示部3における星像原板1は、対応する星像S1,S2からの光束が互いに平行に出射されるように、各無限遠視表示部3の位置及び傾きに応じて、異なる(位置の異なる)星像を表示している。
【0045】
したがって、この無限遠視プラネタリウム装置においては、観察室5内における位置に関係なく、異なる星像原板1における互いに対応する星像S1は、同一方向の無限遠方に存在するように観察される。すなわち、同一の星像S1は、観察室5内における位置に関係なく、また、観察室5内において観察者が移動しても、同一方向の無限遠方に存在するように観察される。
【0046】
したがって、この無限遠視プラネタリウム装置においては、実際の星空と同様の迫真性のある星像を表示することができる。
【0047】
そして、この無限遠視プラネタリウム装置においては、星像原板1は、空間光変調素子とすることができる。星像原板1を液晶表示パネルのような空間光変調素子とした場合には、星像の変更、移動を容易に行うことができ、また、カラー表示をも容易に行うことができる。
【0048】
そして、この無限遠視プラネタリウム装置においては、観察室5の中央部分に、従来のプラネタリウム装置において設置されていたような投影装置が存在しないため、観察室5内のいずれの箇所からも、天井面の全面を遮るものなく観察することができ、壮大な星像を余すところなく鑑賞することができる。
【0049】
また、この無限遠視プラネタリウム装置においては、天井面のみならず、壁面及び床面にも、天井面と同様に複数の無限遠視表示部3を密接配置して設置すれば、全天球の星像を同時に表示することができ、観察者は、あたかも宇宙空間に浮かんでいるような感覚を得ることができる(前述の図4は、横断面図であるが、この場合には、図4を縦断面図(側面図)としてみた構成となる)。
【0050】
〔無限遠視プラネタリウム装置において表示される星像について〕
この無限遠視プラネタリウム装置において、図5に示すように、各無限遠視表示部3の凸レンズ光学系2の光軸同士のなす角度αは、観察室5内における当該無限遠視表示部3の設置位置に対応している。
【0051】
各無限遠視表示部3において表示される星像は、観察室5内における当該無限遠視表示部3の位置を天球上における位置に対応させたときの、その位置を中心とした星像である。中心からの表示範囲は、各無限遠視表示部3における出射可能な光束の角度範囲βに等しい。
【0052】
この無限遠視プラネタリウム装置においては、ある地点のある時点で表示されるべき天球全体の星像の状態を設定し、この星像から、各無限遠視表示部3が表示すべき領域を分割(切り出し)した星像を画像情報として生成して表示することができる。
【0053】
このような画像情報は、図6に示すように、コンピュータソフトを用いて、コンピュータグラフィックの技術によって生成することができる。すなわち、天球全体の星像をデータベース化し、表示されるべき天球全体の星像をソフト上において仮想的に設定し、この星像から領域分割(切り出し)を行って、各無限遠視表示部3に供給すべき画像情報を生成することができる。
【0054】
すなわち、このコンピュータソフトがスタートすると、ステップst1に進み、緯度、経度の設定を行い、地球上のある地点の設定を行う。次に、ステップst2に進み、年月日、時刻の設定を行う。このステップst2まで実行すると、全天に表示されるべき星像が決定される。
【0055】
次に、ステップst3に進み、天球全体の星像のデータベースから、各無限遠視表示部3が出射可能な光束の角度範囲に応じて、各無限遠視表示部3が表示すべき星像のデータを切り出して画像情報とする。
【0056】
そして、ステップst4に進み、各画像情報を各無限遠視表示部3に供給する。各無限遠視表示部3は、供給された画像情報に応じた星像を表示する。そして、ステップst1に戻る。
【0057】
ステップst2では、年月日、時刻を通常の時計に応じて(つまり、時刻の進行に応じて)、あるいは、通常の時計よりも早く、順算、または、逆算してもよい。時刻を通常の時計に応じて順算してゆけば、星像は、日周運動に相当して移動することとなる。
【0058】
なお、この無限遠視プラネタリウム装置においては、星像のみならず、通常の画像表示をも行うことができる。
【0059】
〔無限遠視プラネタリウム装置の構成(2)〕
本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置は、図7に示すように、複数の星像原板1の実像7を空間上に結像させる結像装置と、各星像原板1の実像7からの拡散光束を平行光束として観察者に向けて反射させる複数の凹面鏡光学系8とを備えている。結像装置は、各星像原板1に対応された複数の凸レンズ光学系6を有して構成されている。
【0060】
各凹面鏡光学系8は、それぞれが凹面鏡であり、観察室5内の天井部において、略々密接されてドーム状をなして配列され、全体として半球状をないしている。各凹面鏡光学系8は、それぞれが観察室5の内方に向けて平行光束を反射する。
【0061】
この無限遠視プラネタリウム装置においては、異なる星像原板1において互いに対応する星像D0からの光束は、異なる凸レンズ光学系6を経て実像7において星像D1として結像された後、拡散して、凹面鏡光学系8により、互いに平行な平行光束Dとして反射される。この無限遠視プラネタリウム装置において、各星像原板1は、対応する星像からの光束が互いに平行に反射されるように、各凸レンズ光学系6の位置及び傾きに応じて、異なる(位置の異なる)星像を表示している。
【0062】
したがって、この無限遠視プラネタリウム装置においては、観察室5内における位置に関係なく、異なる星像原板1における互いに対応する星像は、同一方向の無限遠方に存在するように観察される。すなわち、同一の星像は、観察室5内における位置に関係なく、また、観察室5内において観察者が移動しても、同一方向の無限遠方に存在するように観察される。
【0063】
したがって、この無限遠視プラネタリウム装置においては、実際の星空と同様の迫真性のある星像を表示することができる。
【0064】
この無限遠視プラネタリウム装置において表示される星像については、無限遠視プラネタリウム装置の構成(1)で示したものと同様である。また、この無限遠視プラネタリウム装置においても、星像のみならず、通常の画像表示も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る無限遠視表示装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る無限遠視表示装置の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置の構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置の構成を示す横断面図である。
【図5】本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置における各無限遠視表示部が表示する星像の決め方を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置における各無限遠視表示部が表示する星像を生成するコンピュータソフトを示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る無限遠視プラネタリウム装置の構成の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 空間光変調素子、星像原板
2 凸レンズ光学系
3 無限遠視表示部
4 筐体
5 観察室
6 結像装置
7 実像
8 凹面鏡光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間光変調素子及び凸レンズ光学系を有し、前記空間光変調素子上の各点からの拡散光束を前記凸レンズ光学系を介して平行光束として観察者に向けて出射する無限遠視表示部を複数備え、
前記各無限遠視表示部は、前記凸レンズ光学系の前記観察者に対向する前面側のレンズ面の周縁同士を略々密接させて並列的に配列されており、それぞれが観察者に向けて前記凸レンズ光学系を介した平行光束を出射し、異なる空間光変調素子において互いに対応する箇所からの光束は、異なる凸レンズ光学系を経て、互いに平行に出射される
ことを特徴とする無限遠視表示装置。
【請求項2】
星像原板及び凸レンズ光学系を有し、前記星像原板上の各点からの拡散光束を前記凸レンズ光学系を介して平行光束として観察者に向けて出射する無限遠視表示部を複数備え、
前記各無限遠視表示部は、観察室内の少なくとも天井部において、前記凸レンズ光学系の前記観察者に対向する前面側のレンズ面の周縁同士を略々密接させて略々ドーム状をなして配列されており、それぞれが該観察室内方に向けて前記凸レンズ光学系を介した平行光束を出射し、異なる星像原板において互いに対応する星像からの光束は、異なる凸レンズ光学系を経て、互いに平行に出射される
ことを特徴とする無限遠視プラネタリウム装置。
【請求項3】
前記星像原板は、空間光変調素子である
ことを特徴とする請求項2記載の無限遠視プラネタリウム装置。
【請求項4】
複数の星像原板の実像を空間上に結像させる結像装置と、
前記各星像原板の実像からの拡散光束を平行光束として観察者に向けて反射させる複数の凹面鏡光学系と
を備え、
前記各凹面鏡光学系は、観察室内の天井部において、略々密接されてドーム状をなして配列されており、それぞれが該観察室内方に向けて前記平行光束を反射し、異なる星像原板において互いに対応する星像からの光束は、異なる凹面鏡光学系を経て、互いに平行な方向に反射される
ことを特徴とする無限遠視プラネタリウム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−140500(P2007−140500A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283466(P2006−283466)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(505389503)
【Fターム(参考)】