説明

無電極放電ランプ

【課題】ランプ出力が大きい場合でも、ランプを長尺化することなく、最冷点の温度を制御して、一層高効率化することができる無電極放電ランプを提供する。
【解決手段】キャビティ22のパワーカプラ30側端部における径D1を他の部分の径D2よりも大きくしたことによりランプ封止部24の空間体積が従来よりも小さくなり、発光ボリュームを抑え、同時に発生する熱を抑制することができるので、ランプネック部の温度が低下する。これにより、ランプ出力が大きい場合でも、ランプ10を長尺化することなく、最冷点の温度を制御して、一層高効率化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ガスを封入したバルブ内には電極を持たず、誘導コイルに高周波電流を通電して形成した高周波電磁界を放電ガスに作用させることにより、放電ガスを放電させて照明光を発する無電極放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、無電極放電ランプでは、高い光出力を得るためには高い水銀蒸気圧が要求され、この水銀蒸気圧を制御する最冷点を確保することが要求される。最冷点の温度は、無電極放電ランプの点灯方向を変えると変化する。すなわち、ランプベース部を上方にして吊るした状態での点灯(「ベースアップ点灯」という。)では、例えば、ランプの頂部に設けられた突起部が最冷点となる。一方、ランプベース部を下方にした状態での点灯(「ベースダウン点灯」という。)では、ランプベース付近が最冷点となる。ベースダウン点灯時における最冷点の温度制御は、例えば、ランプを長尺にすることで行うことができるが、ランプが大型化するという問題がある。
【0003】
そこで、キャビティの一部に突起部を設け、ランプ封止部への放電を抑制させることで温度制御する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
これにより、ランプを長尺化することなく、バルブ内に設けた最冷点温度を制御することによって、点灯方向が変化しても高い光出力を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−269229号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の無電極放電ランプにおいては、ランプ出力が所定値よりも大きくなると、プラズマ部の温度影響が大きく、ベースダウン点灯時における最冷点の温度を抑制して光出力を保持することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、ランプ出力が大きい場合でも、ランプを長尺化することなく、最冷点の温度を制御して、一層高効率化することができる無電極放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無電極放電ランプは、透光性材料により形成された気密容器内に放電ガスおよび水銀等を封入してなるバルブを備え、前記バルブには、前記気密容器内に誘導電界を発生する誘導コイル、フェライトコアおよび熱伝導体からなるパワーカプラが嵌合されるキャビティが形成されており、前記誘導コイルにより形成される電磁界の作用により前記放電ガスを励起発光させる無電極放電ランプにおいて、前記キャビティの前記パワーカプラ側端部における径を他の部分の径よりも大きくした構成を有している。
【0008】
この構成により、キャビティのパワーカプラ側端部における径を他の部分の径よりも大きくしたことによりランプ封止部の空間体積が従来よりも小さくなり、発光ボリュームを抑え、同時に発生する熱を抑制することができるので、ランプネック部の温度が低下する。これにより、ランプ出力が大きい場合でも、ランプを長尺化することなく、最冷点の温度を制御して、一層高効率化することができる。
【0009】
また、本発明の無電極放電ランプは、前記パワーカプラの径を、前記キャビティの径に応じて大きく形成した構成を有している。
【0010】
この構成により、パワーカプラの径を、キャビティの径に応じて大きくしたので、ランプ封止部の放熱性が向上し、ランプネック部の温度を一層低下することができ、ランプを長尺化することなく、最冷点の温度を制御して、一層高効率化することができる。
【0011】
さらに、本発明の無電極放電ランプは、前記フェライトコアの下端部を外側へ屈曲させて、前記熱伝導体との間の距離を大きくした構成を有している。
【0012】
この構成により、フェライトコアの下端部を外側へ屈曲させて熱伝導体との間の距離を大きくしたので、磁束の一部が熱伝導体に鎖交して流れることによる渦電流損失を抑えて、一層高効率化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、キャビティのパワーカプラ側端部における径を他の部分の径よりも大きくしたことによりランプ封止部の空間体積が従来よりも小さくなり、発光ボリュームを抑え、同時に発生する熱を抑制することができるので、ランプネック部の温度が低下する。これにより、ランプ出力が大きい場合でも、ランプを長尺化することなく、最冷点の温度を制御して、一層高効率化することができるという効果を有する無電極放電ランプを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる無電極放電ランプを示す断面図
【図2】本発明の第2実施形態にかかる無電極放電ランプを示す断面図
【図3】本発明の第3実施形態にかかる無電極放電ランプを示す断面図
【図4】銅パイプ近傍で発生する渦電流損の説明図
【図5】本発明の第4実施形態にかかる無電極放電ランプを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態の無電極放電ランプについて、図面を用いて説明する。
図1は本発明の第1実施形態にかかる無電極放電ランプを示す断面図である。
【0016】
図1において、無電極放電ランプ10は、ガラス等の透光性材料により形成された気密容器21内部に、放電ガスおよび最冷点温度で制御される水銀等を封入してなる、バルブ20を有する。なお、放電ガスおよび水銀等については、後述する。
バルブ20の内面には、保護膜201および蛍光体膜202が塗布されている。なお、図1においては、一部の範囲を拡大して図示している。
【0017】
バルブ20は、気密容器21の内部に、凹部キャビティ(キャビティ)22と、凹部キャビティ22の底部から凹部キャビティ22の開口に向かって設けられている排気細管23を有する。凹部キャビティ22の周壁には、保護膜201および蛍光体膜202が塗布されている。放電空間となる気密容器21の下端部には、排気細管23を溶着した凹部キャビティ22をバルブ20に封着したランプ封止部24が設けられている。
【0018】
凹部キャビティ22には、パワーカプラ30が下方(図1において下方)から嵌合される。パワーカプラ30は、誘導電界を発生する誘導コイル31と、フェライトコア32と、誘導コイル31およびフェライトコア32を放熱して安定化させる熱伝導体33とを有する。熱伝導体33は、銅パイプ34およびアルミシリンダ35から構成される。
【0019】
図1に示すように、第1実施形態にかかる無電極放電ランプ10では、凹部キャビティ22の下部に膨径部223を設けて凹部キャビティ22を2段径キャビティとし、膨径部223の径D1を、一般部(上部)の径D2に比して大きくしている。なお、アルミシリンダ35の径は変更されておらず、膨径部223の肉厚を厚くすることにより径D1を大きくしている。
【0020】
また、図示はしないが、無電極放電ランプ10の底部付近には樹脂製の口金が取り付けられ、パワーカプラ30と嵌合して、止まるようになっている。また、凹部キャビティ22の封止部となっている。
【0021】
気密容器21の内部には、例えば、アルゴンやクリプトン等の希ガスが、また、排気細管23の内部には、水銀の蒸気圧を制御するために水銀を放出させるための総量が略17mg、重量比で50:50のZn−Hgが封入され、鉄−ニッケル合金の金属容器(図示省略)の中に収められている。また、排気細管23の内部には、金属容器の位置を固定するためのガラスロッド(図示省略)が設けられている。なお、パワーカプラ30の誘導コイル31に通電する高周波電流が数百kHzという低い周波数のため、誘導コイル31の内側にフェライトコア32の磁芯を設けている。
【0022】
このような無電極放電ランプ10を点灯させるためには、誘導コイル31を点灯回路に接続して高周波電流を供給し、誘導コイル31の周囲に高周波電磁界を発生させ、プラズマ25を発生させる。この高周波電磁界により気密容器21内の電子が加速され、電子の衝突により電離が起こり、放電が発生する。この放電により放電ガスが励起され、励起された原子は基底状態に戻るときに紫外線を発生する。この紫外線は、気密容器21の内面に塗布されている蛍光体膜202および凹部キャビティ22の周壁に塗布されている蛍光体膜222により可視光に変換されて、外部に照明光として放出される。
【0023】
以上、説明した本発明の第1実施形態にかかる無電極放電ランプ10によれば、凹部キャビティ22のパワーカプラ30側端部における径D1を他の部分の径D2よりも大きくしたことによりランプ封止部24の空間体積が従来よりも小さくなり、発光ボリュームを抑え、同時に発生する熱を抑制することができるので、ランプネック部の温度が低下する。これにより、ランプ出力が大きい場合でも、無電極放電ランプ10を長尺化することなく、最冷点の温度を制御して、一層高効率化することができる。
【0024】
また、誘導コイル31を中心に発生するプラズマ25を効率よくするには、最適なプラズマ空間を確保する必要がある。ここでは、誘導コイル31部分の凹部キャビティ22は膨径せず、凹部キャビティ22の下部のみ径D1を大きくするので、プラズマ空間が小さくなることにより発光効率が低下するのを防止することができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の無電極放電ランプについて、図面を用いて説明する。
図2は本発明の第2実施形態にかかる無電極放電ランプ10Bを示す断面図である。なお、前述した第1実施形態にかかる無電極放電ランプ10と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0026】
図2に示すように、本発明の第2実施形態にかかる無電極放電ランプ10Bでは、前述した第1実施形態にかかる無電極放電ランプ10と同様に、凹部キャビティ22の下部に膨径部223Bを設けて、膨径部223Bの径D1を、一般部(上部)の径D2に比して大きくしている。さらに、パワーカプラ30Bの径D3を凹部キャビティ22の膨径部223Bの径D1に応じて大きく形成している。
【0027】
すなわち、パワーカプラ30Bの熱伝導体33Bを構成するアルミシリンダ35Bを肉厚にして、アルミシリンダ35Bの径D3を大きくした。これに伴い、凹部キャビティ22の膨径部223Bは、肉薄に形成されることになる。
【0028】
以上、説明した本発明の第2実施形態にかかる無電極放電ランプ10Bによれば、前述した第1実施形態にかかる無電極放電ランプ10と同様の作用・効果を得るとともに、さらに、パワーカプラ30Bの径を、凹部キャビティ22の径に応じて大きくしたので、ランプ封止部24の放熱性が向上し、ランプネック部の温度を低下することができる。その結果、高出力(例えば、150W)の場合でも、長尺化することなく最冷点の制御(例えば、40℃程度)を行うことができ、一層高効率化することができる。
【0029】
また、パワーカプラ30Bにおける熱伝導体33Bの体積が増加するので、放熱性がより向上し、フェライトコア32の温度上昇を制御して、発光効率を一層向上させることができる。
【0030】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の無電極放電ランプについて、図面を用いて説明する。
図3は本発明の第3実施形態にかかる無電極放電ランプ10Cを示す断面図、図4は銅パイプ近傍で発生する渦電流損の説明図である。なお、前述した第1実施形態および第2実施形態にかかる無電極放電ランプ10、10Bと共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0031】
図3に示すように、本発明の第3実施形態にかかる無電極放電ランプ10Cでは、前述した第1実施形態にかかる無電極放電ランプ10において、フェライトコア32の下端部321を外側へ屈曲させて、下端部321と熱伝導体33である銅パイプ34との間の距離を大きくした。
【0032】
以上、説明した本発明の第3実施形態にかかる無電極放電ランプ10Cによれば、前述した第1実施形態にかかる無電極放電ランプ10と同様の作用・効果を得ることができる。
さらに、図4に示すように、フェライトコア32の下端部と銅パイプ34との距離が小さい場合に、フェライトコア32の下端部から発生する磁束の一部が銅パイプ34に鎖交することにより、渦電流が流れて渦電流損失を発生し、効率低下を招くという事態を回避することができ、一層高効率化することができる。
【0033】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態の無電極放電ランプについて、図面を用いて説明する。
図5は本発明の第4実施形態にかかる無電極放電ランプ10Dを示す断面図である。なお、前述した第1実施形態〜第3実施形態にかかる無電極放電ランプ10、10B、10Cと共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0034】
図5に示すように、本発明の第4実施形態にかかる無電極放電ランプ10Dでは、前述した第2実施形態にかかる無電極放電ランプ10Bにおいて、フェライトコア32の下端部321を外側へ屈曲させて、下端部321と熱伝導体33Bである銅パイプ34との間の距離を大きくした。
【0035】
以上、説明した本発明の第4実施形態にかかる無電極放電ランプ10Dによれば、前述した第1実施形態および第2実施形態にかかる無電極放電ランプ10、10Bと同様の作用・効果を得ることができる。
さらに、図4において前述したような、磁束が銅パイプ34と鎖交する事態を回避することができ、渦電流による渦電流損失を抑えて、効率低下を防止して一層高効率化することができる。
【0036】
なお、本発明の無電極放電ランプは、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 無電極放電ランプ
20 バルブ
21 気密容器
22 凹部キャビティ(キャビティ)
30 パワーカプラ
31 誘導コイル
32 フェライトコア
321 下端部
33 熱伝導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性材料により形成された気密容器内に放電ガスおよび水銀等を封入してなるバルブを備え、
前記バルブには、前記気密容器内に誘導電界を発生する誘導コイル、フェライトコアおよび熱伝導体からなるパワーカプラが嵌合されるキャビティが形成されており、
前記誘導コイルにより形成される電磁界の作用により前記放電ガスを励起発光させる無電極放電ランプにおいて、
前記キャビティの前記パワーカプラ側端部における径を他の部分の径よりも大きくしたことを特徴とする無電極放電ランプ。
【請求項2】
前記パワーカプラの径を、前記キャビティの径に応じて大きく形成したことを特徴とする請求項1記載の無電極放電ランプ。
【請求項3】
前記フェライトコアの下端部を外側へ屈曲させて、前記熱伝導体との間の距離を大きくしたことを特徴とする請求項1または2記載の無電極放電ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−212181(P2010−212181A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59279(P2009−59279)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】