説明

無電極放電ランプ

【課題】製造コストの上昇を抑えつつ膨張及び収縮のストレスによって口金に不具合が発生することを防止する。
【解決手段】バルブ2の下端部に接着される口金3の接着部35が2つのスリット36によって2つの部位35,35に分割されている。このため、スリット36がない場合に膨張及び収縮によって接着部35に加わるストレスと比較して、分割された2つの部位35,35の一つ一つに加わるストレスが緩和できる。しかも、接着部35へのスリット36の形成は、口金3の成型金型に僅かな修正(スリット36と対応する位置に突起を追加する修正)を加えることで実現できる。その結果、製造コストの上昇を抑えつつ膨張及び収縮のストレスによって口金3の接着部35に割れ等の不具合が発生することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電極放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無電極放電ランプとして図3に示すようにものがある。この無電極放電ランプは特許文献1に記載されているものであって、ランプ部1とカプラ部10とで構成される。ランプ部1はガラスのような透光性材料によって電球形状に形成されたバルブ2と、バルブ2の底に取り付けられた略円筒形の口金3とを有する。バルブ2の底には内部に落ち窪んだ円筒形の凹部(キャビティ)4が封着され、キャビティ4の底には内部空間がバルブ2内の放電空間と連通した管状部(排気管)5が溶着されている。そして、バルブ2の壁面とキャビティ4の壁面で囲まれた放電空間に希ガス(例えば、アルゴンガス)が封入されるとともに、放電空間の内壁に蛍光体を塗布した蛍光体膜が形成されている。
【0003】
排気管5はバルブ2内を排気するために用いられるものであって、その下端部がバルブ2の底から外部に引き出され、バルブ2内を排気した後、アマルガムを収納した金属容器とガラス製のロッド(何れも図示せず)を収めた状態で下端部が封止されてバブル2が密閉される。
【0004】
口金3は、図4(a),(b)に示すように両端が開口する円筒形の本体部30と、本体部30の下端に突設された外鍔31と、本体部30の内側に設けられて両端の開口と対向する平板状の内底部32と、内底部32の下面側に突設されている複数(3つ)の係止突部33と、本体部30の上部内周面より下向きに突出する係合爪34とが合成樹脂成型品として一体に形成されている。また、内底部32の中央にはバルブ2のキャビティ4と連通してカプラ部10の先端部分が挿通される挿通孔32aが貫通している。
【0005】
また口金3は、図4(b)に示すように上端側の開口よりバルブ2の下端部が挿入され、当該下端部の周面に凹設されている溝2aに係合爪34を係合した状態で本体部30の内周面における上端部分(図4(a)においてハッチングした部分)が接着剤(例えば、シリコーン接着剤)によってバルブ2の外壁に接着して固定される。
【0006】
一方、カプラ部10は、下端部が径方向に沿って膨出した円筒形の放熱シリンダ11と、放熱シリンダ11の上端面に固定された円筒形のフェライトコア12と、フェライトコア12の外周に巻回された誘導コイル13とを具備する。そして、排気管5をフェライトコア12の内側に挿通するようにして放熱シリンダ11、フェライトコア12並びに誘導コイル13をキャビティ4内に挿入してカプラ部10がランプ部1に装着される。
【0007】
そして、高周波電源を備えた点灯装置(図示せず)からカプラ部10の誘導コイル13に高周波電流を流すことでバルブ2内の放電空間に放電を生じさせて点灯するものである。
【0008】
ここで、ランプ部1とカプラ部10とは、放熱シリンダ11の膨出部11a上面に設けられている複数(3つ)の係止溝11bにそれぞれ係止突部33が挿入係止されることでカプラ部10に対してランプ部1が抜け止めされる構造となっている。尚、口金3には係止突部33や係合爪34などの構造物が必要であり、かつそれらの構造物に対して高い寸法精度が要求されるため、特許文献1に記載されている従来例では金属製ではなく合成樹脂製の成形品で口金3が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−12641号公報
【特許文献2】特開2004−55435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、無電極放電ランプは一般的な有電極の放電ランプと比べて高負荷(点灯時のインピーダンスが高い)であるためにバルブ2の管壁温度が相対的に高くなる傾向にあり、しかも、普及するにつれて高出力化並びに小型化が進んだことでさらに管壁温度が上昇する傾向にあるので、バルブ2の管壁と接触している口金3の温度も上昇し、温度上昇に伴う膨張・収縮のストレスが大きくなって口金3に割れなどの不具合が発生する虞があった。
【0011】
このような不具合の発生を防止するために口金3の本体部30(特にバルブ2に接着される部分<接着部>)の厚み(肉厚)を大きくしたり、熱ストレスに強い合成樹脂材料に変更すると口金3の製造コストが上昇するという別の問題が生じる。尚、特許文献2には、金属板を平面視C字形に加工することで口金100を形成し、バルブ2の下部に外挿した口金100を合成樹脂製の係合環101で外側から締め付けて固定する構造が開示されている(図5参照)。しかしながら、特許文献2に開示されている口金100の構造では、バルブ2に対する抜け止め用の係合爪が容易に形成できず、また、口金100の端面でバルブ2の管壁に傷をつけてバルブ2の強度を低下させてしまう虞があり、さらに、口金100の下端部が係合環101で締め付けられていないことからカプラ部10との結合強度が大きく低下するといった問題がある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、製造コストの上昇を抑えつつ膨張及び収縮のストレスによって口金に不具合が発生することを防止できる無電極放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、透光性材料からなり内部に希ガスおよび蒸気化し得る金属が封入されるとともに内部に落ち窪んだ凹部を有するバルブ、凹部が開口するバルブの端部に接着固定される口金を有するランプ部と、口金を通して挿抜自在に凹部内に収納される誘導コイル、誘導コイルを支持するとともに着脱時代に口金と結合する支持体を有するカプラ部とを備え、口金は、両端が開口した筒状の合成樹成形品からなり、一端側の開口から挿入されるバルブ端部の管壁に当該一端側の端部が接着固定されるものであって、接着固定される当該端部には、バルブ端部の挿入方向に沿って複数のスリットが形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項1の発明によれば、バルブ端部の外壁と接着される口金の端部が複数のスリットによって2つ以上の部位に分割されるため、スリットがない場合に膨張及び収縮によって口金の端部に加わるストレスと比較して、分割された複数の部位の一つ一つに加わるストレスを緩和することができる。しかも、口金端部へのスリットの形成は、口金の成型金型に僅かな修正を加えることで実現できる。その結果、製造コストの上昇を抑えつつ膨張及び収縮のストレスによって口金に不具合が発生することを防止できる。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記スリットの長さ寸法は、バルブ端部が口金内に挿入される挿入深さよりも短いことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明によれば、スリットを形成することに伴う口金の強度低下を実用上支障がない程度に抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造コストの上昇を抑えつつ膨張及び収縮のストレスによって口金に不具合が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を示し、(a)は口金の斜視図、(b)はランプ部の斜視図である。
【図2】同上の別の実施形態を示し、(a)は口金の斜視図、(b)はランプ部の斜視図である。
【図3】従来のランプ部とカプラ部を示す斜視図である。
【図4】同上を示し、(a)は口金の斜視図、(b)はランプ部の断面図である。
【図5】他の従来例を示すバルブと口金の一部省略した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、特許文献1に記載されている従来の無電極放電ランプの構成に本発明の技術思想を適用した実施形態について説明する。但し、図3及び図4に示した従来例と共通する構成には同一の符号を付して適宜図示並びに説明を省略する。
【0020】
図1(b)に示すように、本実施形態におけるランプ部1もバルブ2と口金3で構成されている。口金3は、図1(a)に示すように両端が開口する円筒形の本体部30と、本体部30の下端に突設された外鍔31と、本体部30の内側に設けられて両端の開口と対向する平板状の内底部32と、内底部32の下面側に突設されている複数の係止突部(図示せず)と、本体部30の上部内周面より下向きに突出する係合爪34とが、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PEI(ポリエーテルイミド)などの合成樹脂材料製の成型品として一体に形成されている。
【0021】
本実施形態における口金3が従来例と異なる点は、バルブ2の下端部外壁と接着剤で接着される部分、すなわち、本体部30の上端部分(以下、接着部35と呼ぶ。)に2つのスリット36が形成されている点にある。これら2つのスリット36は、接着部35においてバルブ2の端部が挿入される方向(図1における上下方向)に沿って形成されている。
【0022】
而して本実施形態では、口金3の接着部35が2つのスリット36によって2つの部位35,35に分割されるため、スリット36がない場合に膨張及び収縮によって接着部35に加わるストレスと比較して、分割された2つの部位35,35の一つ一つに加わるストレスを緩和することができる。しかも、接着部35へのスリット36の形成は、口金3の成型金型に僅かな修正(スリット36と対応する位置に突起を追加する修正)を加えることで実現できる。その結果、製造コストの上昇を抑えつつ膨張及び収縮のストレスによって口金3の接着部35に割れ等の不具合が発生することを防止できる。尚、スリット36を1つしか設けない場合、接着部35が複数の部分に分割されないために膨張及び収縮によって加わるストレスを十分に緩和することができない。
【0023】
ここで、接着部35に形成するスリット36の長さ寸法(上下方向の寸法)は、バルブ2の下端部が口金3内に挿入される挿入深さよりも短くすることが望ましい。つまり、スリット36の長さ寸法を前記挿入深さと同等あるいは長くすると、ストレス緩和の効果は大きくなるものの口金3の強度低下が大きくなってカプラ部10からランプ部1が脱落してしまう虞があるが、スリット36の長さ寸法を挿入深さよりも短くすれば、十分なストレス緩和効果を維持しつつ口金3の強度低下を実用上支障がない程度に抑えることができる。
【0024】
尚、口金3の接着部35に形成するスリット36の個数は2つに限定されるものではなく、図2に示すように本体部30の周方向に沿って3つ以上の多数のスリット36を等間隔に形成するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0025】
1 ランプ部
2 バルブ
3 口金
30 本体部
35 接着部
36 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性材料からなり内部に希ガスおよび蒸気化し得る金属が封入されるとともに内部に落ち窪んだ凹部を有するバルブ、凹部が開口するバルブの端部に接着固定される口金を有するランプ部と、口金を通して挿抜自在に凹部内に収納される誘導コイル、誘導コイルを支持するとともに着脱時代に口金と結合する支持体を有するカプラ部とを備え、
口金は、両端が開口した筒状の合成樹成形品からなり、一端側の開口から挿入されるバルブ端部の管壁に当該一端側の端部が接着固定されるものであって、接着固定される当該端部には、バルブ端部の挿入方向に沿って複数のスリットが形成されていることを特徴とする無電極放電ランプ。
【請求項2】
前記スリットの長さ寸法は、バルブ端部が口金内に挿入される挿入深さよりも短いことを特徴とする請求項1記載の無電極放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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