説明

無電解メッキ金属被覆樹脂材料の製造方法、及び異方性導電接着剤

【課題】樹脂粒子表面の一部が無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない導電粒子の割合を極力抑制し、異方性導電接着剤用途に適した導電粒子を提供する。
【解決手段】樹脂材料が無電解メッキ金属薄膜で被覆された無電解メッキ金属被覆樹脂材料の製造方法は、樹脂材料と無電解メッキ促進用の触媒金属の塩とを含有する触媒化処理液から、触媒金属を樹脂粒子の表面に析出させる触媒化処理工程を有する。触媒化処理液は、メラミン化合物を含有する。また、この製造方法は、触媒化処理工程の後に、触媒金属が析出した樹脂材料子の表面に、無電解メッキにより無電解メッキ金属薄膜を形成する無電解メッキ処理工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料の表面に無電解メッキ金属薄膜が形成された無電解メッキ金属被覆樹脂材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無電解メッキ金属被覆樹脂材料の重要な用途の一つとして、樹脂粒子の表面を無電解メッキ金属薄膜で被覆した無電解メッキ金属被覆樹脂粒子が、異方性導電フィルムに配合する導電粒子として知られている。このような導電粒子における樹脂粒子と無電解メッキ金属薄膜との間の密着性を向上させるために、樹脂粒子の表面をクロム酸や過マンガン酸などの強力な酸化剤で樹脂粒子の表面を粗化し、親水性化することが可能である。
【0003】
しかし、このような酸化剤は重金属を含むため、その使用は大きな環境負荷を伴う。また、無電解メッキに先立って樹脂粒子表面に触媒金属を析出させる工程が必須であるところ、そのような酸化剤で粗化された樹脂粒子の洗浄が不十分な場合には、均一な無電解メッキ金属薄膜の形成に必要な量の触媒金属が樹脂粒子表面に析出しない等の問題が生ずる。
【0004】
そこで、そのような酸化剤を使用せずに、樹脂粒子と無電解メッキ金属薄膜との間の密着性を向上させるために、樹脂粒子の表面をメラミン樹脂で被覆し、メラミン樹脂被膜上に無電解メッキ金属薄膜を形成することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−262495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術を、無電解メッキ用の触媒金属を吸着し難い表面を持った樹脂材料に適用した場合、樹脂材料表面に無電解メッキが析出しない部分を生じるという問題があった。特に、そのような樹脂材料が、異方性導電接着剤用の導電粒子を作製するために使用する樹脂粒子である場合、それから調製された異方性導電接着剤の接続信頼性は大きく低下することが懸念される。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解決しようとするものであり、樹脂材料表面の一部が無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない樹脂材料の割合を極力抑制できるようにすることであり、特に、樹脂材料として樹脂粒子を使用した場合に、樹脂粒子表面の一部が無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない樹脂粒子の割合を極力抑制でき、異方性導電接着剤用途に適した導電粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、無電解メッキ処理に先立って行う樹脂材料の触媒化処理の際、メラミン化合物が共存してしまうと触媒金属の塩の還元反応を阻害しかねないという予想に反し、触媒金属の塩を還元するときにメラミン化合物を共存させることにより、予想外にも上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、樹脂材料が無電解メッキ金属薄膜で被覆された無電解メッキ金属被覆樹脂材料の製造方法であって、樹脂材料と、無電解メッキ促進用の触媒金属の塩とを含有する触媒化処理液から、触媒金属を樹脂材料の表面に析出させる触媒化処理工程を有する製造方法において、触媒化処理液がメラミン化合物を含有していることを特徴とする製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、樹脂材料として樹脂粒子を使用した場合の上述の本発明の製造方法により得られた無電解メッキ金属被覆樹脂材料が、導電粒子として絶縁性接着剤中に分散してなる異方性導電接着剤を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無電解メッキ金属被覆樹脂材料の製造方法は、樹脂材料の表面を触媒化処理した後に無電解メッキ処理するものであるが、触媒化処理の際に使用する触媒化処理液中にメラミン化合物が配合されている。このため、樹脂粒子等の樹脂材料表面の一部が無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない樹脂材料の割合が極力抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、樹脂材料が無電解メッキ金属薄膜で被覆された無電解メッキ金属被覆樹脂材料の製造方法である。この製造方法は、以下に説明するように、触媒化処理工程を有し、この触媒化処理工程で使用する触媒化処理液に、メラミン化合物が配合されていることを特徴としている。なお、本発明の製造方法は、通常、触媒化処理工程の後に、電解メッキ処理工程を有している。
【0013】
<触媒化処理工程>
この工程は、樹脂材料と、無電解メッキ促進用の触媒金属の塩とを含有する触媒化処理液から、触媒金属の塩に還元剤を作用させて触媒金属に還元し、樹脂材料の表面に析出させる工程であり、触媒化処理液にメラミン化合物が配合されていることが特徴となっている。
【0014】
本発明における触媒化処理工程に、一般的に樹脂に無電解メッキを施す際に用いられる触媒化処理工程を適用することができる。そのような一般的な触媒化処理工程としては、以下に示すセンシタイジング−アクチベーティング法とキャタライジング−アクセラレーティング法とがある。
【0015】
(センシタイジング−アクチベーティング法)
樹脂材料を、センシタイザー液に5〜80℃で10秒〜10分間浸漬し、水洗し、次いでアクチベーター液に5〜80℃で10秒〜10分間浸漬する。アクチベーター液から樹脂材料を濾別し水洗し乾燥する。センシタイザー液及びアクチベーター液としては公知のものが使用できる。例えば、センシタイザー液の具体例としては、塩化第1錫5〜50g/l(リットル)と塩酸(塩化水素換算)5〜50g/lとを含有する水溶液を挙げることができる。また、アクチベーター液としては、パラジウム塩0.05〜1.0g/lを含有する水溶液が挙げられる。ここで、パラジウム塩としては、塩化パラジウム、塩化パラジウムナトリウム、塩化パラジウムカリウム、テトラアミン塩化パラジウム、硝酸パラジウムなどを挙げることができる
【0016】
(キャタライジング−アクセラレーティング法)
樹脂材料を、キャタライザー液に5〜80℃で10秒〜50分間浸し、水洗し、ついで5〜80℃で10秒〜50分間、アクセラレーター液に浸漬する。アクセラレーター液から樹脂材料を濾別し水洗する。キャタライザー液及びアクセラレーター液としては公知のものが使用できる。例えば、キャタライザー液としては、塩化第1錫5〜50g/lと上述したようなパラジウム塩0.05〜1.0g/lと塩酸(塩化水素換算)5〜50g/lとを含有するコロイド液が挙げられ、また、アクセラレーター液としては、塩酸が挙げられる。
【0017】
本発明における触媒化処理工程の具体的な一例を以下に示す。
【0018】
まず、樹脂材料10gに対し、エタノールなどの水混和性溶剤100〜200gを添加して湿潤させ、更にイオン交換水等の水500〜1000gを添加し、10〜60℃で均一に混合する。得られた混合物に、上述したようなパラジウム塩の水溶液(0.5〜1.0g/l)200〜400mlを投入した後、50〜70℃で1分〜20分加熱撹拌し、次いでメラミン化合物を0.1〜10g添加し、完全に溶解させ、50〜70℃で1〜3時間保持する。その後、還元剤、例えば、次亜リン酸水溶液(30〜60g/l)50〜200mlを加入し、更に10〜30分間撹拌を続け、パラジウムを樹脂表面に析出させる処理を挙げることができる。
【0019】
触媒化処理によりパラジウムを析出させた場合の析出量に関し、析出量のコントロールは、主として触媒化処理液中のパラジウム塩の種類や濃度、触媒化処理温度、還元剤の種類や濃度により行うことができる。一般に、析出量が少なすぎると無電解メッキ金属薄膜に欠損部分が増大する傾向があり、多すぎても析出量に見合った効果が得られず、触媒化処理コストが増大する傾向があるので、そのような弊害が生じないように析出量をコントロールすることが好ましい。
【0020】
この工程に適用する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱又は光硬化樹脂などを使用目的応じて適正選択して使用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂等の樹脂材料を挙げることができる。また、樹脂材料の形状としては、粒子、プレート、異形、立方体、フィルム等の形状を適用することができる。それらの大きさにも特に限定はない。中でも、無電解メッキ金属被覆樹脂材料を異方性導電接着剤用の導電粒子に適用する場合には、樹脂材料の素材として、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂を好ましく適用することができる。具体的には、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのホモポリマーやコポリマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートのホモポリマーやコポリマー、それらのホモポリマーやコポリマーを含有するブレンドポリマーを好ましく挙げることができる。更に、これらのホモポリマー、コポリマー、ブレンドポリマーにはウレタン変性を施すことが好ましい。
【0021】
また、樹脂材料の形状として、好ましくは粒子径0.5〜10μm、より好ましくは2〜5μmである樹脂粒子を適用することができる。
【0022】
触媒化処理液に配合させるメラミン化合物としては、水溶性であることが必要であり、例えば、メラミンのアミノ基の窒素原子にメチロール基や2−ヒドロキシエチル基(エチロール基)が1〜6個結合した化合物が挙げられる。具体的には、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン、N−(2−ヒドロキシエチル)メラミン、N,N′−ビス(2−ヒドロキシエチル)メラミン、N,N′,N″−トリス(2−ヒドロキシエチル)メラミン等のエチロールメラミンを挙げることができる。中でも、メッキ金属薄膜を安定的に形成できる点からメチロールメラミン、特にトリメチロールメラミンを好ましく使用することができる。
【0023】
メラミン化合物の触媒化処理液中の濃度は、低すぎると添加効果が少なく、樹脂材料表面にメッキが析出していない部分の割合が多くなる傾向があり、濃度が高すぎるとパラジウムの還元反応を過度に遅くする傾向があるので、好ましくは10〜1000ppm、より好ましくは20〜500ppmである。
【0024】
触媒金属の塩を還元するための還元剤としては、公知の還元剤を使用することができ、例えば、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、グリオキサゾール等を使用することができる。これらの使用量は、触媒金属の塩の使用量に応じて適宜決定することができる。
【0025】
<無電解メッキ処理工程>
この工程は、触媒金属が析出した樹脂材料の表面に、無電解メッキにより無電解メッキ金属薄膜を、従来の無電解メッキ法に準じて形成する工程である。この工程を経ることにより無電解メッキ金属被覆樹脂材料が得られる。
【0026】
(無電解メッキ金属薄膜)
無電解メッキ金属薄膜としては、無電解メッキにより形成された金薄膜、ニッケル薄膜、銅薄膜、銀薄膜、パラジウム薄膜等を例示することができる。中でも、異方性導電接続信頼性の点からニッケル薄膜を好ましく使用することができる。
【0027】
無電解メッキ金属薄膜の膜厚としては、使用する金属種により異なるが、薄すぎると無電解メッキ金属薄膜の欠損部分が増大する傾向にあり、そのような欠損部分を有する導電粒子を異方性導電接着剤に適用すると導通信頼性が低下する傾向がある。厚すぎると導電粒子が凝集し易くなる傾向があるので、好ましくは10〜500μm、より好ましくは40〜200μmである。
【0028】
<異方性導電接着剤>
以上説明した本発明の製造方法により製造される無電解メッキ金属被覆樹脂材料は、樹脂材料として樹脂粒子を使用した場合には、異方性導電接着剤に配合する導電粒子として好ましく適用することができる。具体的には、異方性導電接着剤は、本発明の製造方法により得られた無電解メッキ金属被覆樹脂粒子を、導電粒子として異方性導電接着剤中に5〜12容量%となるように、絶縁性接着剤に公知の分散手法により分散したものである。通常、ペースト状接着剤、あるいはフィルムに成形して異方性導電フィルムとして使用される。
【0029】
絶縁性接着剤としては、従来公知の絶縁性接着剤を適用することができ、好ましくは、熱硬化型エポキシ系接着剤を使用することができる。そのような熱硬化型エポキシ系接着剤は、膜形成樹脂、液状エポキシ樹脂(硬化成分)、硬化剤、シランカップリング剤等の構成成分を公知の方法で均一に混合することにより調製することができる。これらの構成成分は、接着層に求める特性等に応じて公知のものから適宜選択して使用することができる。
【0030】
膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。
【0031】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。
【0032】
硬化剤としては、ポリアミン、イミダゾール等のアニオン系硬化剤やスルホニウム塩などのカチオン系硬化剤、フェノール系硬化剤等の潜在性硬化剤を挙げることができる。
【0033】
シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0034】
熱硬化型エポキシ系接着剤には、必要に応じて充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを配合することができる。
【0035】
以上説明したように、本発明の製造方法により得られる無電解メッキ金属被覆樹脂粒子は、異方性導電接着剤用の導電粒子の他、等方性導電接着剤、磁性シールド剤に使用する導電粒子に適用することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0037】
実施例1
(触媒化処理)
500mLコニカルビーカーに、平均粒径3.1μmのエチレングリコールジメタクリレートポリマー粒子1gとエタノール20mlとを投入し、樹脂粒子をエタノールで湿潤させた後、イオン交換水100mlを投入し、超音波を印加しながら60℃に加熱した。
【0038】
得られた混合物に、メチロールメラミン水溶液(メチロールメラミン(ニカレジンS−260、日本カーバイド工業(株))1gをイオン交換水1Lに溶解させた水溶液)1.5mlを撹拌しながら添加し、更に、塩化パラジウム水溶液(0.06N塩酸1Lに塩化パラジウム1gを溶解させて得た水溶液)20mlを混合しながら添加した。続いて、次亜リン酸ナトリウム0.5gをイオン交換水10mLに溶解させた還元剤水溶液を添加し、1時間撹拌を続けながら塩化パラジウムを還元した。この段階で、メチロールメラミン濃度は10ppmであった。還元の進行に伴い、混合物は白色から濃褐色へと変化した。
【0039】
還元終了後、混合液を吸引濾過し、イオン交換水(1L)で十分に洗浄することにより、触媒化処理樹脂粒子を得た。
【0040】
(無電解ニッケルメッキ処理)
得られた触媒化処理樹脂粒子を、酒石酸ナトリウム8gを含有する0.005Nの希硫酸800mlに添加し、イオン交換水を添加して全量を1Lとした。この混合物を撹拌しながら60℃に加熱し、スラリーとした。
【0041】
得られたスラリーを60℃で撹拌しながら、100g/L濃度の硫酸ニッケル水溶液70mlと、次亜リン酸ナトリウム13g及び水酸化ナトリウム5.2gを含有する還元剤水溶液70mlとを、それぞれ5ml/分の添加速度で添加した。還元液と硫酸ニッケル水溶液との滴下終了後、ニッケルイオンの還元に伴って発生する水素の発泡が治まるまで撹拌と続けた。発泡が治まった後、樹脂粒子の表面に無電解ニッケルメッキ薄膜が形成された導電粒子を濾別し、水で洗浄後、100℃の真空乾燥器中で乾燥することにより、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。
【0042】
実施例2
メチロールメラミン水溶液の使用量を1.5mlから17mlに変更すること以外、実施例1を繰り返すことにより触媒化処理樹脂粒子を得、更に、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。なお、実施例2において、触媒化処理の際のメチロールメラミン濃度は100ppmであった。
【0043】
実施例3
メチロールメラミン水溶液の使用量を1.5mlから35mlに変更すること以外、実施例1を繰り返すことにより触媒化処理樹脂粒子を得、更に、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。なお、実施例3において、触媒化処理の際のメチロールメラミン濃度は200ppmであった。
【0044】
実施例4
メチロールメラミン水溶液の使用量を1.5mlから150mlに変更すること以外、実施例1を繰り返すことにより触媒化処理樹脂粒子を得、更に、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。なお、実施例4において、触媒化処理の際のメチロールメラミン濃度は500ppmであった。
【0045】
実施例5
メチロールメラミン水溶液に代えてメチロールメラミン粉末0.1gを使用し、実施例1を繰り返すことにより触媒化処理樹脂粒子を得た。但し、触媒化処理の際に樹脂粒子を濾過してイオン交換水1Lで洗浄した後、樹脂粒子を1Lのイオン交換水に洗い出し、更にイオン交換水を追加して全量を2Lとし、60℃で1時間撹拌洗浄した。得られた触媒化処理樹脂粒子に対し、実施例1の無電解ニッケルメッキ処理を行うことにより、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。なお、実施例5において、触媒化処理の際のメチロールメラミン濃度は1000ppmであった。
【0046】
実施例6
平均粒径3.1μmのエチレングリコールジメタクリレートポリマー粒子に代えて、平均粒径2.9μmのヘキサンジオールジアクリレート粒子を使用すること以外、実施例1を繰り返すことにより触媒化処理樹脂粒子を得、更に、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。なお、実施例6において、触媒化処理の際のメチロールメラミン濃度は10ppmであった。
【0047】
実施例7
平均粒径3.1μmのエチレングリコールジメタクリレートポリマー粒子に代えて、平均粒径2.9μmのヘキサンジオールジメタクリレート粒子を使用すること以外、実施例1を繰り返すことにより触媒化処理樹脂粒子を得、更に、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。なお、実施例7において、触媒化処理の際のメチロールメラミン濃度は10ppmであった。
【0048】
比較例1
(触媒化処理)
500mLコニカルビーカーに、平均粒径3.1μmのエチレングリコールジメタクリレートポリマー粒子1gとエタノール20mlとを投入し、樹脂粒子をエタノールで湿潤させた後、イオン交換水50mlを投入し、超音波を印加しながら60℃に加熱した。
【0049】
得られた混合物に、パラジウム触媒化液100mlを添加し、30℃で1時間撹拌した後、樹脂粒子を濾取し、イオン交換水1Lで洗浄した。次いで、洗浄した粒子を濃度10g/L、温度25℃の水酸化ナトリウム溶液100mlに投入し、10分撹拌し、その後ろ過し、続いて濾紙上の樹脂をイオン交換水で洗浄し、それにより触媒化処理樹脂粒子を得た。ここで、パラジウム触媒化液は、Rohm&Haas社のCataposit44の50mlとCataprep404の270gと水と混合して全量1Lとすることにより得られたものであり、コロイド状パラジウムを0.24g/lの濃度で含有しているものである。その他に多量の塩化第1錫と食塩とを含有している。
【0050】
(無電解ニッケルメッキ処理)
得られた触媒化処理樹脂粒子に対し、実施例1と同様に無電解ニッケルメッキ処理を施すことにより、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。
【0051】
比較例2
パラジウム触媒化処理液として、Rohm&Haas社のCatalyst6Fシステムを使用すること以外は、比較例1と同様にして触媒化処理樹脂粒子を得、更に、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。ここで、Catalyst6Fシステムは、塩酸と塩化第一錫を主成分とし金属パラジウムの微粉末を含む触媒液である。
【0052】
比較例3
(触媒化処理)
500mLコニカルビーカーに、平均粒径3.1μmのエチレングリコールジメタクリレートポリマー粒子1gとエタノール20mlとを投入し、樹脂粒子をエタノールで湿潤させた後、イオン交換水100mlを投入し、超音波を印加しながら60℃に加熱した。
【0053】
得られた混合物に、塩化パラジウム水溶液(0.06N塩酸1Lに塩化パラジウム1gを溶解させて得た水溶液)20mlを混合しながら添加した。混合後、吸引濾過し、イオン交換水(1L)で十分に洗浄した。この樹脂粒子を、100mlのイオン交換水で、塩化第1錫10g/lと濃塩酸20ml/lとを含有する還元液200ml中に洗い出し、10分間撹拌した後、濾過し、濾紙上の樹脂粒子を0.05N塩酸100mlで洗浄し、続いてイオン交換水1Lで洗浄し、濾別することにより触媒化処理樹脂粒子を得た。
【0054】
(無電解ニッケルメッキ処理)
得られた触媒化処理樹脂粒子に対し、実施例1と同様に無電解ニッケルメッキ処理を施すことにより、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。
【0055】
比較例4
メチロールメラミン水溶液を使用しないこと以外は、実施例1を繰り返すことにより触媒化処理樹脂粒子を得、更に、無電解ニッケルメッキ薄膜が表面に形成された樹脂粒子(導電粒子)を得た。無電解ニッケルメッキ薄膜の平均膜厚は80〜100μmであった。
【0056】
<評価>
実施例及び比較例の導電粒子について、メッキ成膜欠陥率とメッキ粒子凝集状態とを以下に説明するように試験・評価した。得られた結果を表1に示す。
【0057】
(メッキ成膜欠陥率)
倍率2000倍の走査電子顕微鏡(JSM−6510A、日本電子(株))により、1000個の導電粒子を観察し、粒子表面積の50%以上にわたってメッキ剥れが観察された導電粒子の割合(欠陥率)を求めた。実用上、欠陥率は5%以下であることが望まれる。
【0058】
【表1】

【0059】
表1からわかるように、実施例1〜7の無電解ニッケルメッキ被覆樹脂粒子(導電粒子)は、実用上問題のない低いメッキ成膜欠陥率を示した。他方、比較例1〜4の導電粒子は、実用上問題のある高いメッキ成膜欠陥率を示した。
【0060】
なお、比較例1〜3は、樹脂へ無電解メッキを行う際に一般的に行われている触媒化処理、無電解ニッケルメッキ処理を行った場合である。比較例4は、メチロールメラミン化合物を使用しないこと以外は実施例1を繰り返した例である。これら比較例の結果から、メチロールメラミンの存在下で触媒化処理を行うことがメッキ成膜欠陥率を低下させるのに有効であることがわかる。
【0061】
実施例8
実施例1で得られた導電粒子20質量部、フェノキシ樹脂(YP50、東都化成(株))30質量部、液状エポキシ樹脂(EP−828、三菱化学(株))30質量部、イミダゾール系硬化剤(HX3941HP、旭化成(株))30質量部とを均一に混合し、この混合物を、バーコータを用いて剥離フィルム状に塗布し、80℃で5分間プレベークすることにより異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムを、千鳥配置された金バンプを有する試験用ICチップ(バンプサイズ1800μm、バンプ高さ15μm、外側バンプ列と内側バンプ列間の距離20μm、各列内のバンプ間の距離20μm)と、対応するガラス基板との間に挟持させ、加熱加圧ヘッドにて200℃で圧力60MPaで5秒間の加熱加圧を行った。その際の外側バンプと内側バンプの導通抵抗(Ω)を常法に従って測定した。いずれも1Ω以下であり、良好な導通であった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の無電解メッキ金属被覆樹脂粒子の製造方法は、触媒化処理の際に使用する触媒化処理液中にメラミン化合物が配合されている。このため、樹脂粒子等の樹脂材料表面の一部が無電解メッキ金属薄膜で被覆されていない樹脂材料の割合が極力抑制される。よって、異方性導電接着剤に配合する導電粒子の製造方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料が無電解メッキ金属薄膜で被覆された無電解メッキ金属被覆樹脂材料の製造方法であって、樹脂材料と無電解メッキ促進用の触媒金属の塩とを含有する触媒化処理液から、触媒金属を樹脂材料の表面に析出させる触媒化処理工程を有する製造方法において、触媒化処理液がメラミン化合物を含有していることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
触媒化処理工程の後、触媒金属が析出した樹脂材料の表面に、無電解メッキにより無電解メッキ金属薄膜を形成する無電解メッキ処理工程を有する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
樹脂材料が、樹脂粒子である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
樹脂粒子が、異方性導電接着剤に使用する樹脂粒子である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項5】
メラミン化合物が、メチロールメラミンである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
触媒化処理工程において、触媒金属の塩を還元剤で還元して生成させた触媒金属を樹脂粒子の表面に析出させる請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
触媒化処理工程において、メラミン化合物の触媒化処理液中の濃度が10〜1000ppmである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
触媒金属の塩が、塩化パラジウムである請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
還元剤が、次亜リン酸ナトリウムである請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
請求項3の製造方法により得られた無電解メッキ金属被覆樹脂材料が、導電粒子として絶縁性接着剤中に分散してなる異方性導電接着剤。
【請求項11】
フィルム状に成形されている請求項10記載の異方性導電接着剤。