説明

焼きプリン用シワ改善剤及び焼きプリン

【課題】焼きプリン表面のシワの発生を抑制することができる焼きプリン用シワ改善剤、及び表面のシワの発生が抑制された焼きプリンを提供する。
【解決手段】イヌリンを有効成分として含有する焼きプリン用シワ改善剤、及びイヌリンを添加する焼きプリン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼きプリン表面のシワの発生を抑制することができる焼きプリン用シワ改善剤、及び表面のシワの発生が抑制された焼きプリンに関する。
【背景技術】
【0002】
オーブンを使用した洋生菓子として、代表的なものに焼きプリンがある。焼きプリンは、卵原料、乳原料及び甘味料等からなる原料混合液を耐熱性容器に充填し、オーブン等で焼成して加熱凝固した洋生菓子で、近年、コンビニエンスストアーやスーパーマーケットにて消費が伸びている。
【0003】
しかしながら、このような焼きプリンは、焼成後に品温が低下する際に表面にシワが発生する問題があった。特に、室温以下(0〜15℃)のチルド保管用のチルド焼きプリンは、焼成後に品温0〜15℃に冷却する際に表面にシワが発生しやすい傾向がある。また、冷凍保管用の冷凍焼きプリンについても、焼成後に冷却、冷凍する際に表面にシワが発生しやすい。このような焼きプリン表面のシワは、コンビニエンスストアーやスーパーマーケット等の店頭で陳列された際に見栄えが悪いことから改善が望まれている。
【0004】
プリンの外観を改善する技術としては、特開平6−261705号公報(特許文献1)には、プリンベースを一度蒸煮した後に、ゼラチンを含有した含気泡ベースを載せてオーブンで焼成すると、プリンベースにスが入らず、見栄えのよいプリンができることが提案されている。しかしながら、この特許文献においては、上述した焼きプリン表面のシワ改善については一切検討されていない。
【0005】
【特許文献1】特開平6−261705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、焼きプリン表面のシワの発生を抑制することができる焼きプリン用シワ改善剤、及び表面のシワの発生が抑制された焼きプリンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、イヌリンを添加した焼きプリンは、意外にも表面のシワの発生が抑制されることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)イヌリンを有効成分として含有する焼きプリン用シワ改善剤、(2)イヌリンを添加する焼きプリン、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の焼きプリン用シワ改善剤によれば、焼きプリン表面のシワの発生を抑制することができる。特に、表面にシワが発生しやすいチルド焼きプリンや冷凍焼きプリンであっても、表面のシワの発生を抑制することができる。このような表面のシワの発生が抑制された焼きプリンは、コンビニエンスストアーやスーパーマーケット等の店頭で陳列された際に大変外観がよいことから、これら焼きプリンの更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0011】
本発明の焼きプリンとは、卵黄、乳原料、及び甘味料を含む原料混合液を、耐熱性容器に充填し、焼成して凝固したものをいう。
【0012】
前記焼きプリンの原料は、従来の焼きプリンにおいて使用されるものであれば特に限定は無く、例えば、卵黄としては、生卵黄の他、殺菌卵黄等が挙げられ、乳原料としては、牛乳、粉乳及び生クリーム等が挙げられる。また、甘味料としては、砂糖、水あめ等の糖類やステビア、スクラロース等が挙げられる。なお、焼きプリンには、本発明の効果を損なわない範囲で、従来の焼きプリンにおいて使用される種々の原料、例えば、カボチャやサツマイモ等の野菜やマンゴー等のペースト状物、香料、乳化剤、増粘安定剤等を含有してもよい。
【0013】
前記耐熱性容器とは、従来の焼きプリンにおいて使用されるものであれば特に限定は無く、例えば、紙、アルミ、耐熱性樹脂等の耐熱性容器が挙げられる。
【0014】
焼成方法は、従来の焼きプリンで行われる方法であれば特に限定されず、例えば、オーブン、スチームコンベクション等の加熱調理設備で、好ましくは120〜250℃、より好ましくは150〜250℃で焼成したものであればよい。
【0015】
本発明の焼きプリン用シワ改善剤は、イヌリンを有効成分として含有することを特徴とする。このような本発明の焼きプリン用シワ改善剤は、上述した焼きプリンに添加することで、焼きプリン表面の「シワ」を改善する効果が得られる。
【0016】
前記焼きプリン表面の「シワ」は、卵黄、乳原料及び甘味料を含む混合液を、耐熱性容器に充填し、焼成して加熱凝固した後、冷却する際に、表面に細かい筋目がちぢみよったものである。このようなシワの発生が抑制されることにより、好ましい外観が得られる。
【0017】
前記焼きプリン表面のシワは、焼成後、室温以下(0〜15℃)のチルド保管用に冷却されるチルド品や、フリーザーで急速に冷却される冷凍品において特に発生しやすい。しかしながら、本発明の焼きプリン用シワ改善剤によれば、焼きプリン表面のシワを抑制することができることから、本発明は、このようにシワがより発生しやすいチルド焼きプリン及び冷凍焼きプリンにおいて好適に実施できる。
【0018】
本発明の焼きプリン用シワ改善剤の有効成分であるイヌリンとは、スクロースのフラクトース側にD−フラクトフラノースがβ−(2→1)結合で順次脱水重合した多糖類であって、グルコースに2分子以上のフラクトースが重合したものである。前記イヌリンとしては、その製法は特に限定されるものではなく、例えば、スクロースから酵素合成法により得られたもの、あるいは、チコリやキクイモの塊茎等の植物から得られたもの等を用いることができる。
【0019】
このような本発明の焼きプリン用シワ改善剤は、有効成分である上述したイヌリンを含有したものであればよく、イヌリンの他に本発明の効果を損なわない範囲で、デキストリン、デキストリンアルコール、澱粉等の賦形材や他の品質改良剤等を含有させたものであってもよい。
【0020】
焼きプリンへの焼きプリン用シワ改善剤の添加量は、シワ改善剤の有効成分であるイヌリンのシワ改善効果が発現する程度の量を添加すればよく、具体的には、焼きプリン全体に対して有効成分であるイヌリン換算で好ましくは0.1〜20%、より好ましくは1〜15%である。添加量が前記範囲より少ないと、シワの発生の抑制効果が得られにくく、前記範囲より多いと焼きプリンの食感が悪くなってしまう場合があり好ましくない。
【0021】
本発明の焼きプリンは、焼きプリン表面の「シワ」を改善する効果を有する上述したイヌリンを添加したものである。このような本発明の焼きプリンは、焼成後に冷却された際に生じる表面のシワの発生が抑制され外観に優れたものとなる。焼きプリンへのイヌリンの添加量は、上述と同様、焼きプリン全体に対して好ましくは0.1〜20%、より好ましくは1〜15%である。
【0022】
以下、本発明について、実施例、比較例、及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
焼きプリン用シワ改善剤としてイヌリンを添加し、チルド焼きプリンを製造した。すなわち、卵黄20部、クリーム加工品20部、牛乳10部、イヌリン5部、還元水あめ8部、砂糖5部及び清水32部をミキサーに投入して撹拌混合し原料混合液を調製した。次に、得られた原料混合液を150cc容量の耐熱性樹脂製のプリン用カップに125gずつ充填した。続いて、お湯を張ったバットを入れたオーブンを180℃に加熱し、原料混合液を充填したプリン用カップをこの加熱したオーブンに入れ湯せんしながら15分間焼成して原料混合液を凝固させた後、冷却機(雰囲気温度5℃)で品温10℃まで冷却し、チルド焼きプリンを調製した。
【0024】
[比較例1]
実施例1において、イヌリンを配合せず、その減少分は清水の配合量を増やして補正した他は、実施例1と同様にしてチルド焼きプリンを調製した。
【0025】
[比較例2〜4]
実施例1において、イヌリンを結晶セルロース、デキストリン、トレハロースにそれぞれ置き換えた他は、実施例1と同様にして添加剤の異なる3種類のチルド焼きプリン(比較例2〜4)を調製した。
【0026】
[試験例1]
実施例1及び比較例2〜4で得られた4種類のチルド焼きプリンの表面のシワ発生の程度を下記評価基準により評価した。結果を表1に示す。
【0027】
<シワ発生の程度の評価基準>
A:シワが確認できない。
B:シワが少ない。
C:ややシワが多い。
D:シワが多い。
【0028】
【表1】

【0029】
表1より、添加剤を含有しないチルド焼きプリン(比較例1)は、表面にシワが多く発生したのに対し、イヌリンを添加した実施例1のチルド焼きプリンは、表面のシワの発生が抑制されたことが理解できる。一方、イヌリン代えて結晶セルロース、デキストリン、トレハロースを添加したチルド焼きプリン(比較例2〜4)は、シワの発生が多くシワの発生が抑制されなかった。
【0030】
[試験例2]
実施例1において、イヌリンの配合量を0%、0.1%、1%、5%、15%、20%に変え、その減少分又は増加分は清水の配合量で補正した以外は同様にしてイヌリン添加量の異なる6種類のチルド焼きプリンを調製した。これらのチルド焼きプリンについて、それぞれ表面のシワ発生の程度を試験例1と同様の評価基準により評価した。更に、各チルド焼きプリンを喫食してかたさを下記評価基準により評価した。結果を表2に示す。
【0031】
<食感の評価基準>
A:ソフトな食感である。
B:ややかたい食感である。
C:かたい食感である。
【0032】
【表2】

【0033】
表1より、イヌリン添加量が焼きプリン全体に対して0.1〜20%の場合(試験品2〜6)は、表面のシワの発生が抑制されたことが理解できる。特に、イヌリン添加量が焼きプリン全体に対して1〜15%の場合(試験品3〜5)は、シワの発生が少なく大変好ましく、しかも、ソフトな食感であり大変好ましかった。
【0034】
[実施例2]
焼きプリン用シワ改善剤としてイヌリンを添加し、冷凍焼きプリンを製造した。すなわち、実施例1で得られた品温10℃のチルド焼きプリンを、フリーザー(雰囲気温度−40℃)で急速凍結し、冷凍焼きプリン(品温−20℃)を製造した。得られた冷凍焼きプリンを10℃の冷蔵庫で1日保管して解凍した。
【0035】
解凍後の焼きプリンは、表面のシワの発生が抑制されており外観がよく好ましかった。また、食感もソフトで好ましいものであった。
【0036】
[実施例3]
焼きプリン用シワ改善剤としてイヌリンを添加し、チルド焼きプリンを製造した。すなわち、卵黄20部、生クリーム10部、牛乳10部、カボチャペースト10部、イヌリン5部、還元水あめ8部、砂糖5部及び清水32部をミキサーに投入して撹拌混合し原料混合液を調製した。次に、得られた原料混合液を150cc容量の耐熱性樹脂製のプリン用カップに125gずつ充填した。続いて、お湯を張ったバットを入れたオーブンを180℃に加熱し、原料混合液を充填したプリン用カップをこの加熱したオーブンに入れ湯せんしながら15分間焼成して原料混合液を凝固させた後、冷却機(雰囲気温度5℃)で品温10℃まで冷却し、チルド焼きプリンを調製した。
【0037】
得られたチルド焼きプリンは、表面のシワの発生が抑制されており外観がよく好ましかった。また、食感もソフトで好ましいものであった。














【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌリンを有効成分として含有することを特徴とする焼きプリン用シワ改善剤。
【請求項2】
イヌリンを添加することを特徴とする焼きプリン。


【公開番号】特開2011−110000(P2011−110000A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271092(P2009−271092)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】