説明

焼却灰からの土壌改良材およびその製造方法

【課題】家庭ゴミや排水処理工程で発生する汚泥等の焼却灰から低廉なコストで環境改善に寄与する有用な土壌改良材の製造方法を提供する。
【解決手段】100〜300メッシュの微粉状に粉砕処理した焼却灰を0.0001〜0.01重量%のチタン酸化物と混合し、低酸素雰囲気または還元雰囲気において300〜900℃に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭ゴミや排水処理工程で発生する汚泥等を焼却処理して得られる焼却灰を土壌改良材として利用する技術に関するものである。本発明は、特に、焼却灰が含有する各種金属を難溶性金属含有物質に変化させるとともに焼却灰の吸湿性能および保水性および消臭性を利用した土壌改良材を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、焼却灰を利用した土壌改良材としては数多くの提案がなされている。焼却灰を土壌改良材として利用するには、焼却灰に含まれる金属類を難溶化することが第一に必要とされる。例えば、ペーパースラッジ焼却灰の性状である細孔性・多孔性を損なうことなく、高強度で重金属類の有害成分の溶出を抑制した、吸湿性や保水性を有する土壌改良材に適した粒状の固化体の製造方法を提供することを目的として、 ペーパースラッジ焼却灰に、水、生石灰並びにセメントを加え、常温から98℃までの温度で混合して粒状に造粒した成形体を水熱固化反応を利用して固化体とする、細孔性・多孔性構造を有するペーパースラッジ焼却灰水熱固化体の製造方法が提案されている(特許文献1参照)
【0003】
また、 大量に廃棄物として発生するフライアッシュ灰やペーパースラッジ灰などの焼却灰を再利用し、含水量の多い軟弱土やヘドロ状汚泥を、植物の植生に好ましい団粒状の土壌環境に改良するとともに植物生体係に有害なセメントの使用量をできるだけ抑えつつ土壌強度を高め、また強度を高めることができる高含水軟弱土壌改良用団粒状固化剤が提案されている。(特許文献2参照)
【0004】
セメント類などの固化材を必要としない焼却灰からの土壌改良材としては、例えば、石炭灰等の焼却灰は、未燃の炭素を含む粉粒体と完全燃焼した粉体およびクリンカー等からなるため、粉塵が発生しやすく、固まりやすい性質がありそのままで植物を植えると生育に障害を与える。一方、有機性汚泥は、汚泥単独での脱水は大変難しく、コンポスト化にも多くの手間を必要とする他、発酵により発生する臭気が強いため有効利用するには困難を伴う。そこで、石炭燃焼灰、汚泥焼却灰等の焼却灰に、活性汚泥処理等の有機性汚泥を1〜15重量%加え、凝集・脱水・乾燥して有機性汚泥の臭気が無く肥効成分の吸着・保持に優れた土壌改良材が提案されている。(特許文献3参照)
【0005】
他の従来例としては、 焼却灰中のフッ素及びクロムの溶出を抑えて、土壌汚染、水質汚染を起こす恐れのない土壌改良材、草地改良材、埋め戻し材、盛土等、種々の用途に燃焼灰を有効利用できるようにするにあたり、石炭、RPF及び製紙スラッジなどを燃焼した際の排ガスを電気集塵器やバグフィルターなどで処理して得られるフッ素及びクロム含有燃焼灰に水を10〜100%(対灰)混合し、加熱して乾燥することにより、その燃焼灰中に含まれるフッ素及びクロムを不溶化するフッ素含有燃焼灰の処理方法(特許文献4参照)や、主に製紙スラッジを燃料とした流動床炉のバグフィルターで捕獲した飛灰からなる焼却灰に、塩基性アミノ酸を加えて粒状化した酸性土壌改良材であって、土壌の水素イオン指数(pH)の調整だけでなく、カルシウム及び窒素の徐放性能を有することにより、優れた肥料効果を発揮する酸性土壌改良材が提案されている(特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、これらの土壌改良材を製造するには、比較的多量のセメントや特殊な添加物を使用することが必要であるため原材料コストが高くなる欠点があり、また、金属類の溶出抑制を長期間に亘り持続させることについてはいまだ解決なされていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−313032号公報
【特許文献2】特開2002−363560号公報
【特許文献3】特開平9−111238号公報
【特許文献4】特開2007−313382号公報
【特許文献5】特開2008−239831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて家庭から排出されるゴミや排水処理工程等より発生する汚泥等を焼却処理する際に発生する焼却灰が土壌改良材として利用できることを見出し、さらに研究を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0009】
家庭ゴミや汚泥の焼却灰は、これまで一部をセメント原料として活用されている以外は、他の固体廃棄物と同様に埋め立て処分されていたが、本発明は、処分に困っていた廃棄物を土壌改良材として利用することにより、廃棄物を大量に有効利用することができる技術を提供するものである。
本発明の目的は、微粉状に粉砕処理した焼却灰をチタンの酸化物と混合し、低酸素雰囲気または還元雰囲気において加熱して焼却灰に含まれる金属類を難溶化した簡便な方法で土壌改良材を製造することである。また、本発明の目的は、焼却により中間処理された焼却灰をさらに高温で熱分解させて、減容し、高温溶融し冷却してスラグ化する従来法とは異なり、焼成灰を300℃前後の低温度で熱処理することにより土壌改良材を製造することである。また、本発明の目的は、長期的な視点に基づき、焼却灰を再生利用できる資源として注目し、リサイクル技術の一つとして、実用化された土壌改良材製造するものであり、焼却灰を資源化する新規な方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
本発明は下記の焼成灰とチタンの酸化物から土壌改良材を製造する方法からなる。
(1)微粉状に粉砕処理した焼却灰をチタンの酸化物と混合し、低酸素雰囲気または還元雰囲気において加熱することを特徴とする土壌改良材の製造方法。
(2)焼却灰が100〜300メッシュの微粒子に粉砕処理されている請求項1に記載の土壌改良材の製造方法。
(3)チタンの酸化物が、酸化チタンおよびチタンの複合酸化物から選ばれた1種以上の化合物である上記(1)または(2)に記載の土壌改良材の製造方法。
(4)焼却灰に対し、チタンとして0.0001〜0.01重量%のチタンの酸化物を混合し接触させる上記(1)からは(3)のいずれかに記載の土壌改良材の製造方法。
(5)焼却灰が、都市ゴミの焼却から発生する焼却灰である上記(1)から(4)のいずれかに記載の土壌改良材の製造方法。
(6)上記低酸素雰囲気または還元雰囲気における加熱温度が、300〜900℃の雰囲気温度である上記(1)から(5)のいずれかに記載の土壌改良材の製造方法。
(7)上記低酸素雰囲気または還元雰囲気における雰囲気が、酸素濃度6%以下である上記(1)から(6)のいずれかに記載の土壌改良材の製造方法。
【0011】
また、本発明は、下記の土壌改良材からなる。
(8)上記(1)から(7)のいずれかに記載の方法により焼却灰から製造されたことを特徴とする土壌改良材。
(9)粒度が0.5〜5mmの範囲にある上記(8)に記載の土壌改良材。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、焼却灰を利用した土壌改良材を簡便な方法により製造する技術を提供することができる。また、本発明の土壌改良材は、吸湿性能、保水性および消臭性を有するため軟弱土壌や悪臭を発する土壌の改良効果に優れている。更に、本発明は、焼却灰に含まれている、ダイオキシンなどの有害化合物を含まず、金属類を溶出しない安全な土壌改良材を提供することができる。また、本発明の土壌改良材の原料である家庭ゴミの焼却灰は、各自治体においても大量に入手することができるのであるため、土壌改良材を廉価で大量に製造することができ、製造プラントの立地の選択は容易である。また、本発明は、産業廃棄物として多量に排出され処理が困難となる焼却灰を積極的に利用するものでもあり、環境浄化、資源のリサイクル・有効利用に役立つという効果をも生み出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔土壌改良材の土壌改良作用〕
本発明は、微粉状に粉砕処理した焼却灰をチタンの酸化物と混合し、低酸素雰囲気または還元雰囲気において加熱して、焼却灰の吸着能などを賦活することにより、吸水性、保水性および消臭性に優れた土壌改良材を製造し提供するものである。
本発明により製造された土壌改良材は、100〜300メッシュの粒径を有することにより優れた吸水性、保水性を示すとともに優れた消臭性を示すものであるため、悪臭を有する土壌、例えば、産業廃棄物を含んだ土壌の改良には最適である。焼却灰の中にはカルシウム分が20%以上含有されている場合がある。このような焼却灰は弱い水硬性を示すことから、水分調整することで固化する性質を有する。本発明の土壌改良材もこうした性質を利用して、ミキサーでゆっくり攪拌することで小さな粒状とすることができ、例えば、砂の代替品として、吸水性を有する土壌改良用の砂として有用である。水硬性または造粒特性を付与するために少量の消石灰やセメント類を添加してもよい。
本発明の土壌改良材を使用するには、土壌1kgに対し2〜250g、好ましくは30〜150g添加混合する。また、本発明の土壌改良材に、更に消臭特性を高度化するには、公知の脱臭剤から選ばれた1種以上と併用することができる。例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、酸性白土、活性白土、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化第二鉄、金、銀、白金等の貴金属類等が挙げられる。
【0014】
[焼却灰]
本発明が原料とする焼却灰としては、都市ごみの一般焼却灰が典型的な例であるが、各種の金属化合物を含む焼却灰であれば利用することができ、焼却灰の他の例としては、活性汚泥、下水汚泥、消化汚泥等の汚泥類の焼却灰、産業廃棄物の焼却灰を挙げることができるが、有害なダイオキシン類などを含有しない焼却灰であることが望ましい。焼却灰にはカドミウム、鉛、六価クロムのような有害物質が含有されている場合があり、しかも、有害物質の種類、含有量は常に変動しているが、本発明はそれらに対応して確実に有用な土壌改良材を製造することができる方法であるとも言える。
【0015】
焼却灰には、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、塩素、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、ホウ素等の元素のほかに未燃カーボンCが含まれており、金属や非金属の化合物から成る混合物である。表1に焼却灰の含有される金属の種類と含有量の季節変動を示す。焼却灰含有金属の中では、アルミニウム、ケイ素、塩素、カルシウム、鉄の含有量が大きな値を示している。
【0016】
【表1】

【0017】
このように焼却灰の中には、典型元素が多く、遷移元素は少ない。遷移金属のチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、亜鉛等は酸素との結合が強すぎて金属酸化物となってしまうため、反応(燃焼)系は酸素量を6%以下に減らした低酸素状態あるいは還元状態の空間で加熱処理することにより触媒が製造できる。遷移金属酸化物は酸化反応に活性を示すものと、脱水素反応に活性を示すものに分けられ、例えば、Fe23、Cr23は水素分子が存在していても金属状態に還元されないので脱水素に対して良い触媒となる。焼却灰中のCrはCrO3として水に溶け易い化合物の形態で存在するので、水素との反応によりCr(OH)3となり、またCr(OH)3の燃焼工程により、安定不溶化のCr23となる。一方、SiO2、Al23、MgO等の典型金属酸化物は反応分子と酸塩基相互作用をし、反応分子にプロトンを与えたり、反応分子からプロトンを引き抜いたりして分子を活性化する。本発明の土壌改良材は、主成分として、酸化鉄(Fe34)、チタンの酸化物(TiO等)、酸化カリウム(K2O)、アルミナ(Al23)、酸化カルシウム(CaO)、シリカ(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)等を含んでいる。
【0018】
[焼却灰を微粉状に粉砕処理すること]
焼却灰は、反応器内での粒子の外表面積が大きいほど活性が大きくなるので原料焼却灰の粒径は小さいほどよい。焼却灰を土壌改良材として利用するには、焼却灰の金属成分を難溶性金属化合物に変えることが必要であり、また、触媒性能および吸着性能を高くするためには金属成分の表面を広げるために焼却灰を微粉砕にしなければならない。焼却灰を微粉化することにより生成した金属化合物の表面積が大きくなり触媒活性が大となり、添加するチタンの酸化物との反応性、ならびに、焼却灰の重金属類を含む異種金属化合物の混合物間あるいは添加するチタンの酸化物との相互分解・反応が良好となる。本発明の土壌改良材の製造方法において、焼却灰の表面積を拡大するために、好ましくは100〜300メッシュ、さらに好ましくは150〜250メッシュの微粒子に粉砕処理する粉砕処理工程を還元反応処理工程の前に設けることが好適である。
【0019】
[チタンの酸化物]
本発明の触媒能と吸着能の賦活化された焼却灰からなる土壌改良材を製造する原材料としては焼却灰とチタンの酸化物を主要成分とするものである。チタンの酸化物としては、例えば、酸化チタン、チタン酸塩またはチタン複合酸化物としてチタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉄、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸アルミニウム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム等を含むチタン複合酸化物を挙げることができる。また、チタン鉱石として知られている、イルメナイト、ゲイキ石、バイロファン石等の粉砕物を特別な処理を施すことなく用いることができる。
【0020】
焼却灰には上記チタンの酸化物をチタンとして0.0001〜0.01重量%、好適には0.0005〜0.005重量%、さらに好適には0.001〜0.005重量%添加混合し加熱処理することにより、燃焼灰に含有される金属化合物間との反応が生起されて本発明の土壌改良材が製造される。
【0021】
[焼却灰とチタンの酸化物を混合すること]
一般家庭廃棄物、下水汚泥、産業廃棄物等の焼却灰の再焼却に先だってチタンの酸化物を上記の範囲から選択した量を添加し、チタンの含有量を調整する。再焼成する時には、原料焼却灰に含まれるチタン(チタンの酸化物)量の確認が必要で、原料焼却灰に含まれるチタン(チタンの酸化物)量を勘案して添加するチタンの酸化物の量を決めて、再焼却時に粉体状のチタンの酸化物を添加して焼却する。そうすることにより、チタンの酸化物の触媒作用で、重金属類を含む異種金属化合物の混合物である焼却灰を250℃前後の低い温度で効率よく相互分解・反応させ、重金属類を難溶性金属化合物に変化させるとともに吸着能などを賦活化させて土壌改良材に再加工することができる。
【0022】
[低酸素雰囲気または還元雰囲気において加熱すること]
通常、焼却灰は金属もしくは非金属元素の酸化物の混合体であり、場合によっては毒性物質の発生もあり得るため、酸化反応を極力小さくし、金属酸化物を金属状態に近づけると同時に共存する金属類間の反応を促進するために不活性ガス雰囲気下、低酸素雰囲気下または還元雰囲気下に加熱することが好適である。チタンの酸化物の存在下に低酸素雰囲気または還元雰囲気においては、焼却灰から触媒を製造する工程において、焼却灰中に含まれる有害物質を除去または無害化することができる。通常、焼却灰からダイオキシン類を分解除去するには、ダイオキシン類の完全な分解を考慮して、処理温度は雰囲気温度900℃前後とすることが好適であるとされている。炉内温度800〜900℃で処理する加熱処理工程を設けて、焼却灰の含水率を短時間で低減(2%以下)する場合には、銅処理と同時に排ガス中のダイオキシン類の熱分解を行ってもよい。しかし、この乾燥工程は必ずしも必要ではなく、ダイオキシン類の除去を次の還元加熱工程と同時に行なうことが好ましい。
【0023】
反応雰囲気の調整には通常不活性ガスが使用される、例えば、窒素(N2)ガスを循環使用する。不活性ガスとして窒素(N2)ガスを使用すると、窒素ガスの分子量は28であり、その熱的特性(熱容量、熱伝導度、伝熱係数等)は、分子量が29の空気とほとんど差がないので、両者の乾燥特性には変わりがない。加熱機から乾燥装置へ送りこまれるガスの温度、湿度は常に一定でないと安定した運転が保持できないので、加熱器へのリターンも温度条件が一定となるよう、ガスの熱交換を行う熱回収器をつけることが好適である。
【0024】
本発明の土壌改良材を製造するには、焼却灰とチタンの酸化物を混合した後、低酸素雰囲気または還元雰囲気で加熱することにより行なうが、これは、雰囲気による酸化反応を極力小さくし、金属酸化物を金属状態に近づけると同時に共存する金属類間の反応を促進することを目的とする。本発明の土壌改良材の製造方法において、被処理焼却灰の表面積を拡大する粉砕処理工程、好ましくは100〜300メッシュの微粒子に粉砕処理する粉砕処理工程を還元反応処理工程の前に設けることが好適である。
【0025】
還元反応処理工程においては、好ましくは焼却灰温度約250℃〜600℃(炉内温度300〜900℃)に、時間20分〜40分維持することにより焼却灰中の金属類とチタンの酸化物との反応が進行する。焼却灰とチタンの酸化物を加熱処理した後に、安定化処理工程を設けることにより、生成した触媒の活性を賦活させ安定化することが好適である。この安定化反応処理工程においては、好ましくは処理温度200℃〜450℃に、時間40分〜60分維持することにより行なわれる。
【0026】
還元反応処理した後、生成物を更に粉砕して水分などの吸着能力を増進させることがなお好ましい。こうして製造した100〜300メッシュの土壌改良材は、微粉のため、使用対象によれば取り扱い性が良くないことがあるため、約0.5〜5mm程度の粒状に加工して使用することができる。粒状に加工しても、土壌改良材としての本質的な性質に変化は生じない。
【0027】
以上説明した方法により製造された本発明の土壌改良材の成分、組成は明らかではないが、主成分としてはチタン複合金属や酸化鉄、アルミナ、カルシウム、シリカ、マグネシウム等を含有する難溶性の化合物からなるものであり、含有する金属類、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、水銀およびセレン化合物の溶出はほとんど無い。
【0028】
焼却灰には種々の元素が含有されているが、本発明では原子、分子、結晶の面から化合物を解離し、触媒の活性力と元素の性質の相乗効果により再生資源とすることができる。本発明の土壌改良材は消臭作用を有しているので、悪臭の漂う土壌の改良に特に適している。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
[土壌改良材の製造]
本実施例では、焼却灰サンプルとしてストーカ炉方式の焼却場および流動床炉方式の焼却場より採取したものを使用して土壌改良材を製造した。本発明の製造装置は、焼却灰再資源化プラントシステムの還元反応設備、安定化反応設備、排煙処理設備等の設備からなる。
【0030】
(1)受入・供給設備:受入れ:原灰受入ピット100m3、供給:灰クレーン13ton/h、受入れホッパー10m3、フィーダ15ton/h
(2)選別設備:粒度選別:振動篩(スクリーン網目50mm、粒度50mm以上除外、粒度50mm以下次工程へ)鉄分選別:磁選機〔鉄分除外(比較的粗大な鉄分)〕
(3)破砕処理:粒度100メッシュ以下に破砕
(4)還元反応設備:雰囲気温度約900℃、焼却灰温度約600℃、処理時間約40分、添加剤(チタンの複合酸化物)、酸素濃度約6%、加熱源(A重油)
主反応:有機塩素化合物の脱塩素化;灰中のダイオキシン類分解、有機塩素化合物の熱分解;炉内のダイオキシン類分解;重金属化合物とチタンの複合酸化との反応、触媒活性の付与
(5)破砕・粉砕設備:破砕設備:粒度10〜20mm以下、鉄分選別:鉄分除去(比較的微細な鉄分)、粉砕処理:粒度150メッシュ(95%)
(6)安定化反応設備:処理温度約200℃、処理時間約60分、酸素濃度約6% 加熱源(廃熱利用)
製造した土壌改良材中のダイオキシン類濃度を測定したところ、「毒性等量」は「0.000」であった。また、生成物の重金属溶出性の評価実験を行ったところ、重金属類の溶出はほとんど認められなかった。
【実施例2】
【0031】
[土壌改良材の製造]
焼却灰サンプルはストーカ炉方式の焼却場より採取したものを使用した。実施例1と同様にして本発明の土壌改良材を製造した。焼却灰化から土壌改良材を製造する再資源化プラントシステムは、乾燥処理設備、還元反応設備、安定化処理設備を有し、実施例1の設備に乾燥処理設備を付属させたものである。酸素量は3%に設定して、酸素媒体による反応を抑制した。還元的雰囲気内では、特に有害元素等は酸素よりも硫黄と反応しやすく、ケイ酸塩類は逆に硫黄よりも酸素と反応しやすい。
【0032】
(1)ダイオキシン類分解処理 乾燥処理工程 処理 炉内温度800〜900℃ 効果 焼却灰の含水率低減(2%以下)
排ガス中のダイオキシン類の熱分解 粉砕処理工程 処理 乾燥焼却灰を粒度100メッシュ以下に粉砕 効果 焼却灰の表面積増大による反応速度向上及び安定化
(2)一次反応処理工程(還元処理工程)
処理: 添加剤(主成分:酸化チタン)を混入 炉内酸素濃度3% 、排煙処理設備:排ガス急冷装置+バグファイルタ、 効果: 焼却灰中のダイオキシン類の脱塩素化および熱分解
、重金属溶出防止
【実施例3】
【0033】
[金属類の溶出試験]
実施例1で製造した製品の金属溶出試験を行い、土壌改良材としての適応性を検討した。溶出した金属類の試験は、JIS K 0102におけるカドニウム、鉛、六価クロム、砒素、セレンの計量法により、水銀は昭和46環境報告59号付表1に記載の計量法によった。測定結果は表2に示した。測定した全ての金属類は難溶性となっており、本発明の土壌改良材を使用しても環境を汚染し、また人体に悪影響を及ぼすことはないことが判明した。
【0034】
【表2】

【実施例4】
【0035】
実施例1で製造した土壌改良材により家庭用ゴミから生成した汚水により汚染され悪臭のある土壌の改良を行なった。汚染土壌1kgに対し本発明の土壌改良材を50g添加し十分に撹拌することにより、土壌のべたつきは解消し、汚水に基づく悪臭は感じなくなった。こうした土壌改良効果は長期間維持された。
【実施例5】
【0036】
土壌が重金属により汚染されしかも含水量が多くて取り扱いが困難であった土壌の1kgに対し、実施例2で製造した土壌改良材を100g添加し十分に撹拌した。土壌改良材により処理した汚染土壌は、ハンドリング性が改善され、土壌浄化処理のために汚染場所より処理場へと運び出すことが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、焼却灰にチタンの酸化物類、例えば酸化チタン、チタンの複合酸化物を添加し加熱処理する簡単な反応により有用な土壌改良材を製造することを可能とするものである。特に、本発明では、入手が容易なチタンの酸化物と焼却灰との反応により簡便に土壌改良材を製造することができる。また、本発明は、排出されたごみを可能なかぎり資源化し、再利用を行った後、衛生的な状態で処理、処分することができる。本発明の土壌改良材は、被処理土壌を選ばず、さまざまな種類の土壌に適用できる、また、極めて安価に製造することができるので、低廉なコストで環境改善することができる素材として有用である。また、本発明により、低酸素雰囲気または還元雰囲気において、加熱下にチタンの酸化物と接触反応させることで、300℃前後の低温度で焼却灰に含有される金属化合物類を難溶性金属化合物に変化させ、有機塩素化合物(ダイオキシン類など)を分解する脱塩素処理が実現された。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉状に粉砕処理した焼却灰をチタンの酸化物と混合し、低酸素雰囲気または還元雰囲気において加熱することを特徴とする土壌改良材の製造方法。
【請求項2】
焼却灰が100〜300メッシュの微粒子に粉砕処理されている請求項1に記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項3】
チタンの酸化物が、酸化チタンおよびチタンの複合酸化物から選ばれた1種以上の化合物である請求項1または2に記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項4】
焼却灰に対し、チタンとして0.0001〜0.01重量%のチタンの酸化物を混合し接触させる請求項1からは3のいずれかに記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項5】
焼却灰が、都市ゴミの焼却から発生する焼却灰である請求項1から4のいずれかに記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項6】
上記低酸素雰囲気または還元雰囲気における加熱温度が、300〜900℃の雰囲気温度である請求項1から5のいずれかに記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項7】
上記低酸素雰囲気または還元雰囲気における雰囲気が、酸素濃度6%以下である請求項1から6のいずれかに記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法により焼却灰から製造されたことを特徴とする土壌改良材。
【請求項9】
粒度が0.5〜5mmの範囲にある請求項8に記載の土壌改良材。


【公開番号】特開2010−248331(P2010−248331A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97994(P2009−97994)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(595021282)株式会社ヴィプコーポレーション (2)
【Fターム(参考)】