説明

焼却灰の溶融処理装置

【課題】 焼却灰を効率良く溶融させ、焼却灰の無害化及び減容化を図ることができる焼却灰の溶融処理装置の提供にある。
【解決手段】 コークスCと廃プラスチックを燃料に用いて焼却灰Hを溶融させる溶融炉1を備える。溶融炉1は、コークスCを燃焼させるコークス燃焼部5と、焼却灰Hを溶融させる焼却灰溶融部6と、COを燃焼させる排ガス燃焼部7と、を備える。廃プラスチック供給手段40にて、コークス燃焼部5に熱風を供給する送風路10に、その羽口37より手前において廃プラスチックが熱風と共に吹き込まれる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は焼却灰の溶融処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にゴミ焼却炉等から排出される灰(焼却灰)は、埋め立て地等に処分したりしていた。また、各種のプラスチック製品を成形する場合、その成形時に製品以外に廃材(廃プラスチック)が多量に発生している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、灰には、有害な物質を含んでいる場合があり、この様な場合、埋め立て地等に処分できず、また、灰は一般に嵩高く、その取扱いが面倒であった。また、廃プラスチックも別途プラスチック焼却装置等にて焼却する必要があり、この廃プラスチックの処分も面倒であった。
【0004】そこで、本発明では、焼却灰の無害化及び減容化を図ると共に、連続した出湯を行うことができ、しかも、廃プラスチックを有効に利用することができる焼却灰の溶融処理装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明に係る焼却灰の溶融処理装置は、コークスを燃焼させる下部のコークス燃焼部と該コークス燃焼部の上方に設けられて焼却灰を溶融させる焼却灰溶融部と該焼却灰溶融部の上方に設けられてCOを燃焼させる灰ガス燃焼部とを有する溶融炉を、備えた焼却灰の溶融処理装置であって、コークス燃焼部に熱風を供給する送風路にその羽口より手前において粉体状の廃プラスチックが該熱風とともに吹き込まれてコークスとともに燃焼して上記焼却灰溶融部の焼却灰を溶融させる廃プラスチック供給手段を、備えたものである。
【0006】この際、溶融炉の外周に沿って配設される風箱に粉体状の廃プラスチックが供給されるも、溶融炉の外周に沿って配設される風箱とコークス燃焼部とを連通連結する羽口導管に、粉体状の廃プラスチックが供給されるもよく、また、コークス燃焼部に供給する熱風の温度を350 ℃〜450 ℃とするも好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳説する。
【0008】図1と図2は本発明に係る焼却灰の溶融処理装置を示し、この溶融処理装置は溶融炉1を備え、コークスCと廃プラスチック(RPF)P(図3参照)を燃料に用いて、焼却灰Hを溶融させ、この焼却灰Hの無害化及び減容化を行うものである。廃プラスチックPは、各種プラスチックの成形時に生じ、焼却灰Hは、ゴミ焼却炉等から排出される。なお、この溶融処理装置を使用する場合、焼却灰Hは、略楕円球状の小塊体とされ、廃プラスチックPは粉体状とされる。
【0009】しかして、溶融処理装置の溶融炉1は、下端部が順次縮径した円筒状炉本体2と、該円筒状炉本体2の下方開口部を施蓋状とする炉床3と、炉本体2の上方開口部に連通連結される投入用筒体4と、を備える。即ち、円筒状炉本体2は、その下端部は、コークスCが投入されるコークス燃焼部5とされ、この上方が、略楕円球状に小塊化された焼却灰が投入される焼却灰溶融部6とされ、この上方が、排ガスCOを再燃焼させる排ガス燃焼部7とされる。
【0010】即ち、コークス燃焼部5には、熱風が供給される第1の送風路10が連通連結され、焼却灰溶融部6には、熱風が供給される第2の送風路11が連通連結され、排ガス燃焼部7には、熱風が供給される第3の送風路12が連通連結されている。ところで、各送風路10,11,12は、夫々、炉本体2の外周に沿って配設される風箱13,14,15と、各風箱13,14,15と炉本体2とを連通連結する羽口導管16,35,36と、を備え、各送風路10,11,12には、図外の熱風供給源から熱風が夫々供給される。なお、熱風供給源は、例えば、排ガスを燃焼する燃焼室と、該燃焼室からの高温の排ガスの熱にて冷風を熱風に交換する熱交換器と、を備える。
【0011】しかして、送風路10のコークス燃焼部5内の開口部、つまり、羽口37は、内面が傾斜面17とされた炉床3の該傾斜面17近傍に配設される。ところで、炉床3は、底面が該傾斜面17を有する孔部18が形成され、この傾斜面17の下端側に出滓口19が開口している。
【0012】この場合、炉床3を複数個(図例では、2個)備え、各炉床3が図示省略のスライド手段を介してスライド自在とされて、切替えが可能となっている。スライド手段は、例えば、ガイドレールと、該ガイドレール上を走行する車輪と、該車輪を回転駆動させる駆動機構等と、からなる。従って、一の炉床3の出滓口19等が詰まった場合に、他の炉床3に切り換えることができ、メンテナンスが極めて容易である。
【0013】また、炉本体2の上部には、上述の燃焼室に連通連結された連通管23(図2参照)に連結される連結管部20が形成される。なお、この連結管部20乃至炉本体2の内面には、耐火材21が被覆されている。そして、コークス燃焼部5の外周側には、水冷ジャケット部22が形成されている。
【0014】ところで、コークス燃焼部5としては、そのテーパ角度θを10°〜20°として、その最大断面積(焼却灰溶融部6及び排ガス燃焼部7の断面積)とその最小断面積との比を、(2:1)〜(4:1)とする。即ち、コークス燃焼部5をこのように設定することにより、後述するように、放散熱の発散を有効に防止することができると共に、適度なコークス量を保持できる。
【0015】また、この溶融処理装置は、粉体状の廃プラスチックPをコークス燃焼部5に供給させるための廃プラスチック供給手段40を備える。この廃プラスチック供給手段40は、図3に示すように、粉体状の廃プラスチックPを収納する収納タンク41と、該収納タンク41内の粉体状の廃プラスチックPが搬送エア路42を介して供給されるサイクロン43と、を備える。なお、収納タンク41の下方開口部にはバルブ39が設けられ、このバルブ39を介して粉体状の廃プラスチックPが搬送エア路42に供給される。また、廃プラスチックPの粒径は、例えば、約2mm〜約10mmとされる。
【0016】この場合、サイクロン43は、バルブ44及び配管45を介して羽口導管16に連通連結されている。即ち、この実施の形態では、羽口導管16は周方向に沿って所定ピッチ(具体的には、60°ピッチ)に6本配設され、この6本の内、例えば3本にサイクロン43がバルブ44及び配管45を介して連通連結されている。つまり、搬送エア路42には、複数本(この場合、3本)の分岐管46…が設けられ、この分岐管46が各サイクロン43に連通連結されている。なお、搬送エア路42には、図示省略のエア源に連通連結されている。なお、バルブ39,44は、例えば、ロータリーバルブが使用されるが、勿論、これ以外の種々のバルブの使用も可能である。
【0017】従って、収納タンク41内の粉体状の廃プラスチックPが搬送エア路42の搬送エアと共にサイクロン43に供給され、このサイクロン43から配管45を介して羽口導管16に供給され、羽口導管16から、この羽口導管16に供給される熱風と共に溶融炉1のコークス燃焼部5に供給される。
【0018】このように、第1の送風路10はコークス燃焼部5にコークスC及び廃プラスチックPを燃焼させるための熱風を供給し、第2の送風路11は焼却灰Hの予熱を行うための熱風を供給し、第3の送風路12はCO(排ガス)を燃焼させるための熱風を供給することになる。
【0019】次に、投入用筒体4は、炉本体2の上方開口部に挿入される挿入部24と、投入バケット25から焼却灰Hが投入される投入部26と、を備え、投入部26に、ダンパ27が設けられている。ダンパ27は、コーン部28と、該コーン部28を保持する鉛直保持ロッド29と、該鉛直保持ロッド29を保持する水平保持ロッド30と、投入部26の外面に付設されて水平保持ロッド30を上下動させるシリンダ31,31と、を備える。
【0020】従って、シリンダ31のピストンロッド31aが縮んだ状態でコーン部28にて、投入部26の投入口部32を施蓋状とし、ピストンロッド31aが伸びた状態で投入口部32が開状態となる。なお、投入バケット25は、支点33を中心に回動して、図1の仮想線で示すように、投入口34が投入用筒体4内に下方を向くように挿入状となった際にこの投入バケット25に供給される焼却灰Hが投入用筒体4に投入され、この投入用筒体4から炉本体2内に供給される。
【0021】次に、この焼却灰Hの溶融処理装置を用いて焼却灰Hを溶融させる溶融処理を説明する。まず、コークスCを投入バケット25を介してこの溶融炉1に投入して、コークス燃焼部5に供給する。その後、小塊化された焼却灰Hを投入バケット25を介してこの溶融炉1に投入して、焼却灰溶融部6に供給する。
【0022】そして、各送風路10,11,12から熱風を夫々コークス燃焼部5と焼却灰溶融部6と排ガス燃焼部7に供給する。この際、廃プラスチック供給手段40からコークス燃焼部5に廃プラスチックPが供給される。即ち、羽口導管16に粉体状の廃プラスチックPを供給して、この廃プラスチックPを熱風と共にコークス燃焼部5に供給する。これによって、コークス燃焼部5のコークスC及び廃プラスチックPを燃焼させ、焼却灰溶融部6の焼却灰Hを溶融させ、排ガス燃焼部7のCO(排ガス)を再燃焼させる。この際、供給される熱風の温度は、350 ℃〜450 ℃位に設定され、コークス燃焼部5の上部乃至その近傍は、約1300℃〜約2000℃とされる。
【0023】また、この炉1内の排ガスが連結管部20を介して図示省略の燃焼室に矢印の如く供給(吸引)される。この際、溶融炉1内、つまり、排ガス燃焼部7内の炉内上昇ガス速度を2.0m/s以上4.8m/s以下、特に好ましくは、3.0m/s以上3.5m/s以下とされる。即ち、炉内上昇ガス速度が2.0m/sより遅ければ、排ガスを燃焼室に吸引しにくく、逆に、炉内上昇ガス速度が4.8m/sより速ければ、塊から外れた焼却灰H等が燃焼室に吸引されるからである。つまり、上述の範囲の速度に限定すれば、焼却灰Hの歩溜りを向上させることができる。具体的には、歩溜りを約95%とすることができる。
【0024】燃焼室に吸引される排ガスは、燃焼室で再び加熱され、これにより、排ガスが無害化され、この排ガスの熱が熱交換器にて熱風に交換され、この熱風が各送風路10,11,12に供給される。
【0025】そして、溶融スラグは、炉床3の出滓口19から外部に排出される。また、コークスCと焼却灰Hとは、順次投入バケット25からこの溶融炉1内に投入(補充)され、廃プラスチックPは廃プラスチック供給手段40からコークス燃焼部5に供給され、焼却灰Hを効率良く溶融させることができる。この場合、コークスCの表面温度を上昇させてスラグの溶融温度を上昇させることができ、溶融スラグが流れ易くなって、該溶融スラグの流出が容易となる。
【0026】しかして、この溶融炉1では、コークス燃焼部5が、下端に向かって順次その断面積が減少しているので、このコークス燃焼部5からの放散熱の発散を少なくして熱効率の向上を図ることができる。また、炉床3の切替えが可能であるので、メンテナンスが容易であり、さらに、炉床3の内面が傾斜面17であるので、溶融スラグを連続して炉外へ排出させることができる。
【0027】ところで、廃プラスチックPは、送風路10の羽口37の手前において供給されるものであって、図例では、羽口導管16に供給されるが、図3に示すように、風箱13に供給されるものであっても良い。即ち、廃プラスチック供給手段40の配管45を直接風箱13に接続して該配管45から粉体状の廃プラスチックPを供給するようにしても良い。なお、溶融炉1の羽口導管16,35,36の数の増減は自由であり、羽口導管16に連通連結される廃プラスチック供給手段40の配管数の増減も自由である。
【0028】
【発明の効果】本発明は上述の如く構成しているので、次に記載する効果を奏する。
■ 請求項1記載の焼却灰の溶融処理装置によれば、コークスCと廃プラスチックPを燃料に用いて、焼却灰Hを効率良く溶融させ、この焼却灰Hの無害化及び減容化を図ることができる。特に、コークス燃焼部5のコークスCの高さを増加させることなく、コークス燃焼部5の燃焼温度を増加させることができる。また、廃プラスチックPは、コークス燃焼部5に供給される熱風とともに供給されるので、確実に廃プラスチックPを供給することができ、しかも、既存の溶融炉に簡単に廃プラスチック供給手段40を付設することができる。
■ 請求項2記載の焼却灰の溶融処理装置によれば、請求項1記載の焼却灰の溶融処理装置と同様の効果を奏すると共に、廃プラスチックPをコークス燃焼部5に満遍なく供給することができ、焼却灰Hをより効率良く溶融させることができる。
■ 請求項3記載の焼却灰の溶融処理装置によれば、請求項1記載の焼却灰の溶融処理装置と同様の効果を奏すると共に、廃プラスチックPをコークス燃焼部5により確実に供給することができる。
■ 請求項4記載の焼却灰の溶融処理装置によれば、請求項1記載の焼却灰の溶融処理装置と同様の効果を奏すると共に、コークスCの表面温度を上昇させ、スラグの溶融温度を上昇させ、連続出湯をなめらかに行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る焼却灰の溶融処理装置の要部断面図である。
【図2】要部側面図である。
【図3】廃プラスチック供給手段の簡略図である。
【符号の説明】
1 溶融炉
5 コークス燃焼部
6 焼却灰溶融部
7 排ガス燃焼部
10 送風路
13 風箱
16 羽口導管
37 羽口
40 廃プラスチック供給手段
C コークス
H 焼却灰

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コークスCを燃焼させる下部のコークス燃焼部5と該コークス燃焼部5の上方に設けられて焼却灰Hを溶融させる焼却灰溶融部6と該焼却灰溶融部6の上方に設けられてCOを燃焼させる排ガス燃焼部7とを有する溶融炉1を、備えた焼却灰の溶融処理装置であって、コークス燃焼部5に熱風を供給する送風路10にその羽口37より手前において粉体状の廃プラスチックが該熱風とともに吹き込まれてコークスCとともに燃焼して上記焼却灰溶融部6の焼却灰Hを溶融させる廃プラスチック供給手段40を、備えたことを特徴とする焼却灰の溶融処理装置。
【請求項2】 溶融炉1の外周に沿って配設される風箱13に粉体状の廃プラスチックが供給される請求項1記載の焼却灰の溶融処理装置。
【請求項3】 溶融炉1の外周に沿って配設される風箱13とコークス燃焼部5とを連通連結する羽口導管16に、粉体状の廃プラスチックが供給される請求項1記載の焼却灰の溶融処理装置。
【請求項4】 コークス燃焼部5に供給する熱風の温度を350 ℃〜450 ℃とした請求項1記載の焼却灰の溶融処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平10−148321
【公開日】平成10年(1998)6月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−324804
【出願日】平成8年(1996)11月19日
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【出願人】(591181089)株式会社ナニワ炉機研究所 (7)