説明

焼却灰造粒物及びその製造方法

【課題】多量に排出される焼却灰の有害物質の溶出を少なくし、単に廃棄処分するのではなく、重金属類や有害物質の溶出を抑止し、埋め立て盛土材、埋め戻し材、盛土材、さらには、一般的な土壌、植栽基盤への利用等大幅に利用展開が可能な材料である焼却灰含有造粒物を提供する。
【解決手段】下水汚泥焼却灰を50〜85質量%、中性固化材を10〜25質量%、層状ケイ酸塩鉱物を4.5〜20質量%および活性炭を0.5〜5質量%含有し、粒状である焼却灰含有造粒物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰を処理した焼却灰含有造粒物及びその製造方法に関し、詳しくは、下水汚泥や都市ごみ等の焼却灰から有害物質の溶出を抑止できる焼却灰含有造粒物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ焼却処理場で排出される焼却灰、火力発電所等から発生する石炭燃焼灰、また、下水処理場で大量に発生する下水汚泥を脱水し、さらに減量化・安定化させるため焼却処理した汚泥焼却灰等は産業廃棄物としてその大半が埋め立て処分されているが、処分場が枯渇しつつある状況である。また、焼却灰の一部はコンクリート二次製品などにわずかに利用されているのが現状であり、その利用の少ない最大の理由は、品質上で環境に対する安全性が十分でないことにある。具体的には、粉体特性においては、粉砕や分級などの機械処理を施すことで全く問題はないが、重金属類や有害物質の溶出が環境庁告示第46号「土壌環境基準」(平成3年8月23日告示)を超える恐れのある項目があるためで、主にヒ素、セレン、ふっ素、ほう素がその基準を達成することができないためである。
その現状を下水汚泥焼却灰の溶出試験につて、「土壌環境基準」(環境庁告示第46号溶出試験)と共に表示すると次の通りである。
【0003】
【表1】

【0004】
このような焼却灰を1000℃以上の高温炉で溶融させガラス化またはスラグ化させる技術があるが、現実的ではないコスト高となるためほとんど実現に至っていない。また、硫酸第一鉄やチオ硫酸ナトリウムなどを配合して加熱処理することで土壌環境基準を満足する溶出抑制効果が得られる報告がある(例えば、特許文献1、2参照)。更に、無機廃棄物あるいは焼却灰に含有する燐分を利用して水熱処理し固化体として有害物質の溶出を抑制する方法なども提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、これらは日々大量に発生する焼却灰を処理するためには限界がある。
【特許文献1】特開2006−000745公報
【特許文献2】特開2006−000746公報
【特許文献3】特開2003−275730公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の問題点を解消する、すなわち、多量に排出される焼却灰の有害物質の溶出を少なくし、単に廃棄処分するのではなく、重金属類や有害物質の溶出を抑止し、埋め立て盛土材、埋め戻し材、盛土材、さらには、一般的な土壌、植栽基盤への利用等大幅に利用展開が可能な材料を得ることを課題とする。そして、重金属類や有害物質の溶出がほとんど無く、利用範囲が広く且つ大量に利用でき、製造が容易で造粒コストが低い、焼却灰含有造粒物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記の課題に鑑みて本発明者等は鋭意検討した結果、自然環境の中で焼却灰から溶出される重金属類・有害物質の抑止を達成させるための方法として、焼却灰の粒子を直接的に加工するのではなく、適切な抑止材との併用でそれらを達成させることに成功した。
すなわち本発明は、
(1)焼却灰を50〜85質量%、中性固化材を10〜25質量%、層状ケイ酸塩鉱物を4.5〜20質量%および活性炭を0.5〜5質量%含有し、粒状であることを特徴とする焼却灰含有造粒物、
(2)前記焼却灰が下水汚泥焼却灰であることを特徴とする(1)記載の焼却灰含有造粒物、
(3)当該物の2%水分散液のpHが7.0〜9.0であり、粒密度が乾燥形態で1.1〜1.4g/cm、湿潤形態で1.4〜1.7g/cmであることを特徴とする(1)または(2)記載の焼却灰含有造粒物、
(4)粒強度が1.0〜10.0kgfであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の焼却灰含有造粒物、
(5)酸性またはアルカリ性接触環境において、有害物質の溶出が基準値未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の焼却灰含有造粒物、
(6)土壌の保水および排水性改善材であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の焼却灰含有造粒物、および、
(7)焼却灰を50〜85質量部に中性固化材を10〜25質量部、層状ケイ酸塩鉱物4.5〜20質量部および活性炭0.5〜5質量部を混合し、この混合物に加水し、造粒、乾燥、分級して造粒物とすることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の焼却灰含有造粒物を製造する方法、
を提供するものである。
なお、上記有害物質の溶出の「基準値」とは、環境庁告示第46号溶出試験による土壌環境基準(前記表1参照)に示された値である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の焼却灰含有造粒物は、これまで利用できなかった建設発生土などが用いられる埋め立て盛土材、砂利・岩石採取場所の穴の埋め戻し材、養浜など流出土砂の補給や堤防の盛土材、さらには、一般的な土壌、植栽基盤への利用等大幅に利用展開ができる。また、単に利用できるだけではなく、酸性雨やセメント系固化材混入の影響に対しても重金属類・有害物質の溶出抑制効果が維持され、土壌の物理性を改良することが可能となる。
さらに、他の溶出抑制処理方法は、コストが高く非現実的であるが、本発明の方法は、造粒が容易であるうえ造粒コストも低く抑えられ現実的である。
したがって、焼却灰はリサイクルができるものとなり、最終処分場を必要としないゼロエミッションの達成が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の焼却灰含有造粒物の好ましい実施の態様について説明する。
本発明の焼却灰含有造粒物の構成は、焼却灰、中性固化材、層状ケイ酸塩鉱物及び活性炭を基本的に含むものであり、その他必要に応じて本発明の目的に沿うメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、石灰、消石灰、多孔質粘土鉱物(例えば、ゼオライト)および高炉スラグ等の補助材を含んでいてもよい。
【0009】
本発明の処分対象物であり、造粒物の基本成分である焼却灰は、下水汚泥焼却灰、石炭燃焼灰、都市ごみ焼却灰など特に限定するものではなく、どのような焼却灰でもよいが、下水汚泥を脱水し、さらに減量化・安定化させるために焼却した下水汚泥焼却灰が好ましい。そして、焼却灰の品質は特に限定するものではないが、粉体特性として下記の項目及び範囲のものが好ましい。
(1)ブレーン比表面積: 5,000〜9,000(cm/g)
(2)比表面積(BET法): 2.0〜7.0(m/g)
(3)飽和吸水能: 0.8〜1.5(g/g)
(4)粒径 : 最大粒径100(μm)以下,平均粒径10〜30(μm)
(5)pH(2%水分散液): 7.0〜10.0
焼却灰含有造粒物中に配合する焼却灰の量は、50〜85質量%、好ましくは55〜
80質量%、さらに好ましくは65〜75質量%である。焼却灰処分量を多くする観点か
らは造粒物中の含有量が多いほど望ましいが、多すぎると造粒物の強度が弱くなり、形状
を保持できず、またその量が少なすぎると保水、排水性が低下する。
【0010】
本発明の焼却灰含有造粒物に配合する中性固化材は、基本的には中性型マグネシア固化材を使用する。広義的には、低アルカリ型マグネシア系固化材または弱アルカリ型マグネシア系固化材と呼称されるものである。これは軽焼マグネシア、非晶質水酸化アルミニウム、石膏を主体とした中性材料であり、自己硬化性を有するものである。化学物質的には、MgO、AI(OH)、CaSO・nHOである。これらの化学物質の配合比率を調整することで中性型マグネシア固化材として構成させるものである。
その配合量は、10〜25質量%、好ましくは15〜23質量%、さらに好ましくは17〜20質量%である。多すぎると強度が過剰となり、吸水、排水性も悪くなり、またその量が少なすぎると強度が確保されず、有害物質の溶出抑制作用が低下する。
【0011】
さらに、本発明の焼却灰含有造粒物の基本構成成分である層状ケイ酸塩鉱物は、配合材料間の粘結に作用し、また、その層間に重金属を取り込むことが出来る機能を有するもので、ベントナイト、酸性白土等が代表的なものであり、本発明では特にベントナイトが好ましい。その配合量は、4.5〜20質量%、好ましくは6〜18質量%、さらに好ましくは8〜15質量%である。配合量が少ないと粘結性が不足し造粒工程での作業性が思わしくなく、また出来上がった造粒物の保水性および重金属類の吸着性が好ましいものとならなくなる。また、多いことに関しては特に問題はないが、不必要(過剰)な配合量になるため上限を設定し、また、焼却灰を多量に使用することが目的であるため、その適切量としてこの上限を定めた。
【0012】
ここで使用するベントナイトは、ナトリウム型ベントナイトでも活性化ベントナイト及びカルシウム型ベントナイトでも良いが、その機能を発揮するモンモリロナイト含有量は、45%以上あることが好ましく、より好ましくは55%以上である。また、品質の目安のひとつである日本ベントナイト工業会標準試験方法の項目である膨潤力が15(ml/2g)以上、より好ましくは、20(ml/2g)以上である。
ベントナイトは止水性能を有するものであればどのようなものでも良いが、粒径75μm以下が80質量%以上含有している粉状ベントナイトナイトを用いることが好ましい。
【0013】
さらに、使用する活性炭は、市販品で良く、悪臭の吸収や有害物質の吸着に作用し、余剰に入ることで造粒の強度が低くなり、更に多く配合されると造粒不可になってしまうため、適切量としては、造粒物全体量に対して0.5〜5質量%であり、好ましくは、1〜3%である。配合量が少なすぎると、有害物質の吸着能力が低下する。活性炭は、100メッシュ(直径0.15mm)より小さい粉末が好ましく、ガス賦活炭と塩化亜鉛賦活炭の2種類のどちらでも使用可能である。
【0014】
さらに、本発明の焼却灰含有造粒物には、必要に応じて補助材として0.1〜10質量%程度含んでいてもよく、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の造粒を容易にする粘結材、石灰、消石灰等のpH調整剤、高炉スラグ等の硬化材、ゼオライト等の吸着材などを挙げることができる。
【0015】
これまでに熱処理や薬剤処理による焼却灰からの有害物質溶出抑制が多く報告されているが、本発明は構成材料及び適切量の水を加え均一に混合させ、機械的に粒を作製したものである。
本発明の焼却灰含有造粒物の製造方法について記載する。
先ず、中性固化材を10〜25質量部、層状ケイ酸塩鉱物4.5〜20質量部および活性炭0.5〜5質量部を撹拌機で均一に混合しプレミックスを調製する。得られたプレミックスを焼却灰50〜85質量部に加えて撹拌機で均一に混合する。さらに、水20〜40質量部、好ましくは25〜35質量部(水の添加量は固形分100質量部に対する量である)を加え、混合して均一な混合物を作製する。
この焼却灰含有混合物を造粒機で造粒し、焼却灰含有造粒物とする。粒形状は球状、円筒状、角柱状、立方状等どのようなものでも良いが、取扱い易さから球状、円筒状、扁平状が好ましい。
造粒物は、水分含有量1〜10%程度に乾燥し、分級して1〜25mm程度のものを本発明の造粒物とする。
【0016】
本発明の焼却灰含有造粒物は、土壌環境では基本的に好ましくない強酸性や強アルカリ性ではなく、中性域に保たれたものであり、環境に配慮したものである。すなわち、その造粒物の2%水分散液のpHが7.0〜9.0であるのが好ましい。pHが酸性域や強アルカリ性域にあると、有害物質の溶出の可能性が高くなるため好ましくない。
また、その粒密度は乾燥形態(含水率5.5〜6.5%)で1.2〜1.4g/cmであり、湿潤形態(含水率23〜32%)で1.5〜1.7g/cmである。密度が高すぎると、保水性が悪くなり、低すぎると粒強度が十分に確保されない。
【0017】
本発明の焼却灰含有物の形態は、単に中性固化材等の有害物質の溶出を抑止する材料とブレンドした粉末ではなく、造粒形態として提供するものであり、造粒成形機により粒を作製し、その際には、適量の水を加え均一混合した後に造粒したものである。尚、その後は乾燥しても湿潤状態でも良く、造粒形態は水を吸収しても崩壊することなくむしろ粒強度が高くなるものである。
造粒物の形状や寸法は、特に制限はないが、土壌への混合や均一性を考慮すると球状、円柱状または扁平状が好ましく、寸法としては形状の最も長いところでも1mm〜25mmが好ましく、より好ましくは3〜15mmである。造粒物中に含まれる焼却灰粒子は多孔質であり、その空隙に水分を取り込むことも排出することも可能であり、これらの特徴を利用することで土壌または地盤の環境を良好に保つことが可能である。
【0018】
焼却灰は熱処理や薬剤処理条件によっては、その特徴である多孔質構造が損失し、有効な機能を失ってしまう恐れがあるため好ましくない。すなわち、焼却灰と構成材料を適切に配合し粒化させることで、重金属類と有害物質の焼却灰からの溶出を抑止させ、半永久的に発生する焼却灰を土壌の一部として安全に用いることができ、リサイクルまたは最終処分場へ一切投棄しないゼロエミッションが達成可能となる。
本発明の焼却灰含有造粒物である代表的な下水汚泥焼却灰の造粒品の環境庁告示第46号溶出試験に準拠する26項目の試験結果を示すと次の通りである。
【0019】
【表2】

【0020】
本発明の焼却灰含有造粒物は乾燥形態でも湿潤形態のどちらも適性を有し、それらが土壌中に配合されても、粒状形態が半永久的に変化することなく、尚且つ、酸性雨やアルカリ土壌環境に対しても溶出抑制効果は変わらず安定である。
このことを(社)土壌環境センターが提案する酸添加溶出試験方法とアルカリ添加溶出試験方法について説明し、その試験結果を表3に示す。
酸添加溶出試験は、酸性雨を想定したものである。酸性雨をpH4.0、年間降雨量2,000mmとした。土壌を1m×1m×1m=1m、1.3トン/mとして、100年分の酸量を計算すると15.4meq/kg乾土となる。この酸量を添加して環境庁告示第46号と同様に溶出させるのが酸添加溶出試験Iである。500年分の酸量を添加するのが、酸添加溶出試験II(76.9meq/kg乾土)である。酸は硫酸、塩酸、硝酸で検討した。
アルカリ添加溶出試験は、セメント構造物が作製され土壌が消石灰に曝される場合を想定したものである。構造物に接する箇所を想定したアルカリ添加溶出試験IIは飽和消石灰液(769meq/kg乾土)とし、周辺部を想定したアルカリ添加溶出試験Iは76.9meq/kg乾土とした。
本発明の焼却灰含有造粒物の酸・アルカリ添加方法による溶出試験の主要8項目の結果は次の通りである。
【0021】
【表3】

【0022】
また、本発明の焼却灰含有造粒物はそのまま土壌として、また土壌と混合して利用することができるものである。これは、環境省告示第19号(平成15年3月6日告示)土壌含有量試験における第2種特定有害物質の含有量が表4に示すように大幅に土壌含有量基準以下であり、周辺環境に対する影響には問題がないからである。
【0023】
【表4】

【0024】
さらに本発明の焼却灰含有造粒物は、土壌中における保水性と排水性が改善され、植栽基盤には理想的な環境を付与することが可能である。
建設発生土に本発明の焼却灰含有造粒物を18%(容積比で)混合した基盤土壌と建設発生土をサンプリングし、室内分析を行った。分析結果を下記表5に示す。
【0025】
【表5】

【0026】
表5からその物理特性をみると、飽和透水係数が4.1×10−6m/secから6.8×10−6m/sec、有効水分が83L/mから98L/mへと本発明の焼却灰含有造粒物を混合した基盤土は増加していることから土壌中の排水性の向上および保水性の向上が認められる。
また、表5のpH(HO)は土壌の酸度の程度を示すもので、植物の根の代謝や無機養分の溶解度、土壌微生物の活動などと密接な関係があるが、一般に植物が順調に生育する植栽基盤土壌としてのpHは4.5〜7.5であるので、両土壌いずれも評価基準内である。
交換性アルミニウムは、植物栽培において、酸性土壌などで過剰害が問題となることが多く、可溶性アルミニウムは、施用されたリン酸と反応し難溶性の塩を形成し作物の燐酸吸収を阻害する原因となる。両土壌とも交換性アルミニウムは少ないが、可溶性アルミニウムは多いので、植栽時にはリン酸肥料を多く施肥する必要がある。
【0027】
本発明の焼却灰含有造粒物の粒強度は、1.0〜10.0kgf、好ましくは2.0〜8.0kgfである。粒強度が低すぎると、埋め立て盛り土材、埋め戻し材、土壌および建設発生土等との混合の際に壊れ、均一な混合が得られなくなる。また、高すぎると、保水性および排水性の効果的な速度が低下する。本発明では、中性固化材の配合により強度を確保することができるとともに、ベントナイトも併用するため粘結力も付与される二重の強度発現の寄与があり、それは手で潰れるような低強度ではなく、また、土壌と混合される際の機械的な衝撃に対して破壊されるものではない高い強度である(後記する表6参照)。
その強度試験方法は、木屋式硬度計D型[筒井理化学機器(株)製]により測定する。この測定は一般的な測定法とされており、「造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編)第1版(オーム社)」にも粒強度(耐圧強度)の測定には木屋式硬度計が適していると記述されている。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
[実施例1〜実施例3]
下水汚泥焼却灰(含水率:0.6%、ブレーン比表面積:7,499cm/g、比表面積(BET法):3.98m/g、飽和吸水能:0.83g/g、粒径:最大粒径57.1μm,平均粒径20.7μm、pH(2%水分散液):9.1)、中性固化材(「ランドクリーンAM」:商品名、村樫石灰工業(株)製)、ベントナイト(「クニゲルV1」:商品名、クニミネ工業(株)製)及び活性炭(「白鷺DO11」:商品名、日本エンバイロケミカルズ(株)製)を表6に示す各実施例の配合量(表の数値は質量部を示す)で、適宜水を加えながらスパルタンリューザー(ROM−2H型、不二パウダル社製)で撹拌混合し、混合物をディスクペレッタ(F−5型、不二パウダル社製)で円柱状に造粒した。その各造粒物を105℃で棚型バンド乾燥機により表5に示す状態に乾燥し、日本工業規格標準篩で分級し、実施例1〜2は直径4mm、長さ3〜10mmおよび実施例3は直径5mm、長さ5〜15mmの焼却灰含有造粒物を得た。
得られた各実施例の焼却灰含有造粒物の特性は下記表6に示す通りである(参考として後記する比較例1〜2の造粒物も併記した)。
なお、含水率は赤外線水分計(FD−230、Kett社製)により測定し、粒密度は 実寸法および質量より算出し、粒強度は木屋式硬度計D型[筒井理化学機器(株)製]により測定した。
【0030】
【表6】

【0031】
[比較例1〜比較例4]
表7に示す各比較例の配合量(表の数値は質量部を示す)で、配合材料の一部が表示のように実施例と異なる以外は実施例と同様にして、各比較例の焼却灰含有造粒物を得た。
なお、使用した高炉セメントB種は、太平洋セメント(株)製であり、高分子キレート剤は、「エポアース1000」:商品名、ミヨシ油脂(株)製である。
【0032】
上記各実施例及び比較例で得られた構成材料と配合量のそれぞれ違う焼却灰含有造粒物の溶出試験(環境庁告示第46号溶出試験に準拠)を行い主要8項目の元素についての結果を下記の表7にまとめて記載した。
【0033】
【表7】

【0034】
本発明の焼却灰含有造粒物は、優れた物理的特性を有し、いずれの重金属・有害物質の溶出も基準値以下である。比較例1は活性炭を過剰に配合したもので、十分な粒強度が得られなく、比較例2は中性固化材が少ない配合のもので、十分な粒強度が得られない。
それに対し、活性炭の配合のない比較例2は、砒素およびほう素の溶出が基準値以上である。活性炭の配合がなく、中性固化材に代えて高炉セメントB種を配合した比較例3は、セレンおよびほう素の溶出が基準値以上であり、比較例4もセレンおよびほう素の溶出が基準値以上である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰を50〜85質量%、中性固化材を10〜25質量%、層状ケイ酸塩鉱物を4.5〜20質量%および活性炭を0.5〜5質量%含有し、粒状であることを特徴とする焼却灰含有造粒物。
【請求項2】
前記焼却灰が下水汚泥焼却灰であることを特徴とする請求項1記載の焼却灰含有造粒物。
【請求項3】
当該物の2%水分散液のpHが7.0〜9.0であり、粒密度が乾燥形態で1.1〜1.4g/cm、湿潤形態で1.4〜1.7g/cmであることを特徴とする請求項1または2記載の焼却灰含有造粒物。
【請求項4】
粒強度が1.0〜10.0kgfであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼却灰含有造粒物。
【請求項5】
酸性またはアルカリ性接触環境において、有害物質の溶出が基準値未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼却灰含有造粒物。
【請求項6】
土壌の保水および排水性改善材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の焼却灰含有造粒物。
【請求項7】
焼却灰を50〜85質量部に中性固化材を10〜25質量部、層状ケイ酸塩鉱物4.5〜20質量部および活性炭0.5〜5質量部を混合し、この混合物に加水し、造粒、乾燥、分級して造粒物とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の焼却灰含有造粒物を製造する方法。

【公開番号】特開2009−270059(P2009−270059A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123679(P2008−123679)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(000104814)クニミネ工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】