説明

焼成用パターンシート

【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野 本発明は、ガラス粉末含有の粘接着剤層を有して被着体に対する焼成固着性に優れる焼成用パターンシートに関する。
従来の技術 多品種少量生産へと生産体制が変遷するなか、金属やガラスないし焼成セラミックなどからなる製品、あるいは半製品や部品等の管理に用いる、耐久性、耐熱性、耐薬品性に優れるラベルが要求されている。
従来、耐熱性等に優れる管理ラベルとして焼成セラミックや金属、ほうろう体などからなる基板タイプのものが知られていた。
しかしながら、ビス止め等の固着手間による簡便固着性欠如の問題、剛性による曲面固着性欠如の問題、現場等でのパターン付与の困難性による管理ラベルの臨機形成性欠如の問題、多品種少量生産体制下での個々の部品等の管理に必要な多種多用なラベルの形成性欠如の問題などがあった。
発明が解決しようとする課題 前記問題点に鑑みてガラス粉末含有シートにガラス粉末含有インクのパターンをスクリーン印刷方式で付与するようにした焼成用パターンシートが提案されている。これは焼成下に付与パターンを融合しつつ被着体に固着するようにしたもので、柔軟性、臨機なラベル形成性を有し、その焼成体は耐擦過性、耐熱性、耐薬品性に優れる。
しかしながら、多品種少量の生産体制下では予め準備すべきスクリーンが膨大の量となり、その準備に多時間、多労力を要する問題点があった。また仮に当該焼成用パターンシートに粘接着剤層を設けて簡便に仮着できるようにしたとしても、その焼成体の被着体に対する焼成固着性に乏しい問題点があった。殊に、非ガラス系セラック粉末からなるセラミックシートの場合には著しく焼成固着性に劣る問題点があった。さらに形成される焼成パターンが滲みなどで鮮明性に乏しい問題点があった。
課題を解決するための手段 本発明者らはガラス粉末含有の粘接着剤層を有する焼成用パターンシートとして焼成固着性を向上させ、前記の課題を克服したものである。
すなわち本発明は、粒径が0.1〜100μmのセラミック粉末を樹脂バインダで保形してなる非不識布状のセラミックシートの片面に、ガラス粉末含有の粘接着剤層を有し、他面に金属酸化物含有の耐熱性インクからなるパターンを有することを特徴とする焼成用パターンシートを提供するものである。
作用 上記の焼成用パターンシートは、柔軟で曲面密着性を有し、熱転写プリンタ等の適宜な印刷方式などによりパターンを臨機に付与することができると共に、粘接着剤層により被着体に簡便な仮着することができる。一方、焼成により焼成用パターンシートがそれに付与したパターンを温存しつつ焼成体化して被着体に固着し、耐熱性、耐擦過性、耐薬品性に優れる焼成パターンを形成する。その際、粘接着剤層に含有させたガラス粉末が溶融して接着剤として機能し、かつセラミックシート中にも拡散して焼成パターンを被着体に強固に密着させる。
発明の構成要素の例示 本発明において用いるセラミックシートは、セラミック粉末を樹脂バインダで非不織布状に保形したものである。
セラミック粉末としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、カルシア、マグネシアなどが単独系や混合系等として一般に用いられる。セラミック粉末の粒径は0.1〜100μm、就中0.5〜20μmが適当である。
樹脂バインダとしては、焼成時に熱分解して消失するものが用いられ、その種類につき特に限定はない。一般には、炭化水素系樹脂、ビニル系ないしスチレン系樹脂、アセタール系樹脂、ブチラール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、繊維素系樹脂などが用いられる。樹脂バインダの使用量は、併用のセラミック粉末の比重や粒度などにより適宜に決定してよい。一般にはセラミック粉末100重量部あたり5〜100重量部、就中15〜50重量部が用いられる。
セラミックシートの形成は例えば、溶剤等を用いて形成成分をボールミル等で混合し、混合液を適宜な方式でセパレータ等の支持基材上に展開して乾燥させる方法などにより行うことができる。展開方式は、ドクターブレード法が層厚の制御精度などの点より好ましい。消泡剤を併用するなどして展開層中に気泡が残らないよう充分に脱泡処理することが好ましい。セラミックシートの形成に際しては、必要に応じ可塑剤、分散剤などの適宜な添加剤を配合してよい。セラミックシートの厚さは、使用目的に応じ適宜に決定してよい。一般には10μm〜5mmとされる。
本発明の焼成用パターンシートは、セラミックシートの片面にガラス粉末含有の粘接着剤層を有し、他面に金属酸化物含有の耐熱性インクからなるパターンを有するものである。
粘接着剤層の形成に用いる粘接着剤は、被着体に仮着できる接着力を用し、焼成温度以下で熱分解するなどして焼失するものである。焼成処理、ひいては良好な焼成パターンの形成性の点より好ましく用いうる粘接着剤は、その樹脂成分がセラミックシートの樹脂バインダよりも高い熱分解温度を有するものであり、一般にはゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤などが用いられる。就中、天然ゴムないし同系の合成ゴム、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体ゴムの如きポリマの単独物からなるゴム系粘着剤、あるいはかかるポリマ100重量部に、石油系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、キシレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂の如き粘着付与樹脂を10〜300重量部、その他軟化剤、老化防止剤等の配合剤を添加してなるゴム系粘着剤、アクリル酸ないしメタクリル酸のアルキルエステルのポリマを主体とするアクリル系粘着剤などが用いられる。
粘接着剤層に含有させるガラス粉末については特に限定はない。PbO・B2O3・SiO2系、Na2O・B2O3・SiO2系、BaO・CaO・SiO2系、Na2O・Al2O3・P2O5系のガラス粉末などいずれの公知物も用いることができ、被着体の材質や焼成条件等に応じた軟化温度や膨脹率等となるよう1種又は2種以上が適宜に用いられる。ガラス粉末の粒径は0.1〜50μm、就中0.5〜10μmが適当である。粘接着剤とセラミック粉末の混合は例えば、有機溶剤等を用いてボールミル等の混合機によりそれらを混合する方式などにより行うことができる。
粘接着剤層のセラミックシートへの付設は、例えばセラミックシートの上に前記の混合液を塗設する方法や、セパレータ上に設けた粘接着剤層をセラミックシート上に移着する方法などにより行うことができる。粘接着剤層の厚さは使用目的に応じ適宜に決定してよい。一般には、1〜200μmとされる。なお、粘接着剤層の露出面にはセパレータを貼着するなどして取り扱い性を良くしておくことが望ましい。
セラミックシートの粘接着剤層を有しない面に付与するパターンは、耐熱性インクで形成する。その耐熱性インクは例えば、金属酸化物の粉末と熱溶融性バインダの1種又は2種以上を溶媒を用いるなどして適宜に混合することにより調製することができる。
金属酸化物は、形成される焼成パターンの耐擦過性や鮮明性などの点より好ましく用いられ、その例としてはコバルト、クロム、鉄、銅、マンガン、アルミニウム、チタンなどの金属の少なくとも1種を含むものなどがあげられる。粉末の粒径は0.1〜50μm、就中0.2〜5μmが適当である。
熱定着性の付与のために用いる熱溶融性バインダの例としては、ワックスやポリマなどがあげられる。好ましく用いうるワックスとしては、例えばパラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスの如きパラフィン系ワックス類、蜜ろう、カルナバワックス、木ろうの如き天然ワックス類、ヘキストワックスの如きエステル系ワックス類、ステアリルアルコール、パルミチルアルコールの如き高級アルコール系ワックス類、ステアロアミド、オレオアミド、パルミチロアミドの如き高級アミド系ワックス類、ブチルステアレート、エチルパルミテート、ミリスチルステアレートの如きエステル系ワックス類などがあげられる。ポリマとしては親水性ポリマ、疎水性ポリマのいずれも用いることができ、ワックスと併用してもよい。好ましく用いうるポリマは、環球法に基づく軟化点が40〜200℃のものである。前記の親水性ポリマの例としては、ゼラチン、その誘導体、セルロース誘導体、カゼイン等の蛋白質やデンプン等の多糖類の如き天然物ないしその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体の如き水溶性ポリマ、ビニル系ラテックス、ウレタン系ラテックスの如きポリマーラテックスなどがあげられる。好ましく用いうる疎水性ポリマの例としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、エチルセルロース、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマ、エチレン・酢酸ビニルコポリマ、塩化ビニル・酢酸ビニル・マレイン酸ターポリマ、エステルガムの如きロジン誘導体などがあげられる。
耐熱性インクにおける金属酸化物の粉末、ワックス、ポリマの組成比は適宜に決定してよい。一般には金属酸化物の粉末100重量部あたり、熱溶融性バインダ3〜1000重量部、就中ワックス3〜500重量部、ポリマ0〜500重量部が用いられる。なお耐熱性インクには柔軟剤等の適宜な添加剤を加えてもよい。柔軟剤としては通常、ひまし油、アマニ油、オリーブ油の如き植物油、鯨油の如き動物油、その他鉱油などが用いられる。
設けるパターンは、印字パターン、転写パターン、絵柄パターン、バーコードパターンなど任意である。またパターンの形成方式も任意である。手書き方式、スクリーン印刷方式等のパターン形成マスクを介しての直接塗布方式、転写紙に設けたパターンを転写する方式、プリンタによる形成方式など、適宜な方式を適用してよい。プリンタによるパターン形成方法は、適宜なパターンを能率的に、かつ精度よく形成できる利点がある。
なお本発明によるセラミックシートは、セラミック粉末の保形による非不織布状物からなることより、セラミックシートの露出面に直接良好なパターンを付与することができる。
XYプロッタ、ワイヤードット型や熱転写型ないしインパクト型などの適宜なプリンタを用いてパターンを形成するためのインクシートは、耐熱性インクを支持基材に塗布するなり、含浸させるなどして保持させることにより形成することができる。支持基材としては例えば、普通紙、コンデンサー紙、ラミネート紙、コート紙の如き紙類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミドの如き樹脂からなるフィルムないし紙・フィルム複合体、アルミニウム箔の如き金属シート、ナイロン、ポリエステル等の繊維からなる布などを用いうる。熱転写プリンタに適用するためのインクシートにあっては、耐熱性、寸法安定性、表面平滑性に優れる支持基材を用いることが望ましい。サーマルヘッド等の熱源の加熱温度で軟質化ないし可塑化せず、支持体としての強靭性を保持する耐熱性ないし寸法安定性を有し、耐熱性インクを転写を阻害しない表面平滑性を有する支持基材が好ましく用いうる。表面平滑度としては、転写率や画像の再現制度の点より、JIS P 8119に基づくベック試験機による平滑度が100秒以上、就中300秒以上のものが好ましい。支持基材の厚さは通常、熱伝導性の点より約100μm以下、就中2〜50μmが適当である。
耐熱性インクを支持基材に保持させる方式としては例えば、耐熱性インクを適宜な溶媒に溶解ないし分散させた液を支持基材に塗布する方式などがあげられる。その際、溶媒としては例えばトルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ソルベントナフサ、ヘキサン、ヘプタンなど適宜なものを用いてよい。塗布は、リバースロールコータ、押出コータ、グラビアコータ、ワイヤバーなど適宜な塗布機を用いて行ってよい。耐熱性インクを塗布層として支持基材に設ける場合、その厚さは100μm以下、就中5〜50μmが適当である。なお、耐熱性インクの塗布層を設けない支持基材面は任意に構成してよく、適宜に利用してよい。
インクシートは、必要に応じ適当な幅に裁断してリボン形態とし、これをケースに収容してインクリボンカートリッジなどとして各種のプリンタに適用される。熱転写式のインクシートとプリンタを介してセラミックシートの上にパターンを形成しつつ、熱溶融性バインダの溶融下にパターンを仮定着させて焼成用パターンシートを得る方法は、製造効率や焼成パターン形成時におけるシートの取り扱い性などに優れて好ましい。
焼成パターンの形成は、焼成用パターンシートをその粘接着剤層を介して被着体に加圧積層するなどして仮着し、形成された仮着体を焼成処理することにより行うことができる。なお焼成用パターンシートの耐熱性被着体への仮着にはロボットによる自動接着方式などを採用するこもできる。焼成条件は、セラミックシートにおけるセラミック粉末、粘接着剤層におけるガラス粉末、耐熱性インクにおける金属酸化物、被着体などに応じ適宜な加熱温度で行ってよい。
前記した焼成パターン形成方法は、耐熱レンガやその他の焼成セラミック、ないし未焼成のセラミック成形体、焼成台、金属などからなる耐熱性の被着体へのバーコード等からなる識別ラベルの付与などに好ましく適用することができる。
発明の効果 本発明の焼成用パターンシートは、非不織布状のセラミックシートと粘接着剤層と金属酸化物系パターンの組合せからなるので、セラミックシートの露出面に熱転写ブリンタ等を介して直接良好なパターンを付与できて、任意なパターンの容易かつ臨機な形成性を有し、曲面に対しても容易に適用することができる。またガラス粉末含有の粘接着剤層に基づいて簡便仮着性と共に、被着体への焼成固着力に優れ、耐擦過性、耐熱性、耐薬品性に優れる焼成パターンを形成する。
実施例実施例1 平均粒径1μmのアルミナ粉末30部(重量部、以下同じ)、平均粒径0.8μmのチタニア粉末50部、ポリイソブチルメタクリレート17部、ジブチルフタレート2部及びステアリン酸1部を、トルエン45部を用いてボートミルで均一に混合して得た混合液をドクターブレード法でセパレート上に展開し、乾燥させて厚さ60μmのセラミックシートを形成した。
一方、前記に準じて平均粒径3μmのホウ珪酸鉛ガラス系粉末50部とアクリル系粘着剤50部の混合物からなる厚さ20μmのシートを形成し、その粘着力を利用して前記のセラミックシートと積層し、粘接着剤層を形成した。
次にCuCr2O650部、パラフィンワックス45部及びエチレン・酢酸ビニル5部をボールミルでトルエン中に均一に分散させて調製した耐熱性インクを、厚さ6μmのポリエステルフィルムに塗布し、乾燥させて厚さ8μmの塗布層を有するインクシートを作製し、そのインクシートと通常の熱転写プリンタを用いて前記セラミックシートの露出面にバーゴードパターンを付与し、焼成用パターンシートを形成した。
ついで、前記の焼成用パターンシートよりセパレータを剥がしてその粘接着剤層を介し、ステンレス箔(厚さ200μm、Al含量5重量%、Cr含量20重量%)に加圧積層して仮着し、600℃で30分間焼成(空気中)した。焼成により耐熱性インク中、セラミックシート中及び粘接着剤層中の有機成分は焼失した。
前記により、ガラス粉末の溶融に基づいてステンレス箔に強固に密着した焼成パターンを得た。また焼成パターンは、そのバーコードパターンが非常に鮮明であり、耐擦過性、耐熱性、耐薬品性にも優れていた。
さらに前記の焼成用パターンシートは柔軟で、被着体の三次元曲面部分に対しても容易に仮着することができ、焼成後の密着性にも優れていた。
実施例2 実施例1に準じて転写紙の上に耐熱性インクからなるバーコードパターンを印刷し、パターンシートを得た。
次に、実施例1と同じセラミックシートの露出面に前記のパターンシートにおけるバーコードパターンを熱ロールを介し転写して焼成用パターンシートとし、これを実施例1に準じ焼成した。
前記により、ステンレス箔に強固に密着し、耐擦過性、耐熱性、耐薬品性に優れる焼成パターンを得た。またそのバーコードパターンは非常に鮮明であった。
比較例1 粘接着剤層をホウ珪酸鉛ガラス系粉末を含有しないアクリル系粘着剤で形成したほかは実施例1に準じて焼成用パターンシートを得、焼成パターンを得た。
しかし、その焼成パターンは密着不良で、容易にステンレス箔と剥離できた。
比較例2 CuCr2O6に代えてガラス粉末と黒色顔料を用いた耐熱性インクを用いたほかは実施例1に準じて焼成用パターンシートを得、焼成パターンを得た。
しかし、その焼成パターンにおけるバーコードパターンに、滲みによるパターンの融合部分が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】粒径が0.1〜100μmのセラミック粉末を樹脂バインダで保形してなる非不織布状のセラミックシートの片面に、ガラス粉末含有の粘接着剤層を有し、他面に金属酸化物含有の耐熱性インクからなるパターンを有することを特徴とする焼成用パターンシート。