説明

焼成粉末菓子

焼成粉末状菓子及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001]本発明は、焼成粉末菓子に関する。
【発明の背景】
【0002】
[0002]Rostagno等、「焼成による成形食品の製造方法(Process for the Production of a Molded Food Product by Sintering)」という名称の米国特許第4,394,395号は、粉末状食品の出発材料、特に低脂肪で、炭水化物含有量の高い出発材料から、個々の成形食品を製造する方法に関する。成形されたその粉末状出発材料は、最終製品中の水分を減少させるために被覆されず、焼成の前に粒子を圧縮するために圧力をかけられる。その結果、このタイプの方法からの製品は、一般に硬く、脆く、又は乾燥している。
【0003】
[0003]軽い食感で即溶性の感覚を付与することができる菓子を提供することが望ましい。軽い食感の形態とは、その質感が、良好な口溶け感、飽きさせないこと、多孔質構造を有すること、及びサクサクしていることを特徴とする形態である。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明の一目的は、従来の焼成菓子製品及びそれらの製造方法の欠点の、少なくとも1つを未然に防ぐ又は軽減することである。
【0005】
[0005]本発明の最初の一態様では、軽い質感を伴う焼成粉末からなる少なくとも一部分を含む焼成粉末菓子は、密度が0.1〜0.6g/ml、好ましくは0.2〜0.5g/ml、より好ましくは0.25〜0.35g/ml、閉じた細孔が15〜70%、好ましくは25〜60%、より好ましくは40〜50%、開いた細孔が10〜45%、好ましくは20〜40%、より好ましくは25〜35%、全細孔が15〜90%、好ましくは30〜75%、より好ましくは40〜65%であることを特徴とする。
【0006】
[0006]本発明の別の一態様では、良好な口溶け感、多孔質構造、及びサクサクした構造を有し、飽きさせない質感を伴う、焼成粉末からなる中心片を含む焼成粉末菓子が提供される。
【0007】
[0007]別の一態様では、本発明は、個々の粒子を含む粉末出発材料を得るステップ、及びその粉末を圧縮せずに焼成し、それによって個々の粒子がそれらの表面で溶融し互いに接着して、構造化された多孔質の融合製品を形成するステップを含む、粉末菓子の製造方法を提供する。
【0008】
[0008]本発明の他の態様及び特徴は、本発明の特定の実施形態の下記説明を検討することによって、当業者には明らかとなろう。
【詳細な説明】
【0009】
[0012]本明細書では、ポケット細孔又は開いた細孔(図1の「A」参照のこと)という用語は、同義語として使用される。本発明の製品のような、軽く、サクサクした製品中の開いた細孔又はポケット細孔が定義するものは、少なくとも3個の粒子の間の空間によって作り出された開いた空間の全領域である。開いた細孔は、外側及び空気に対して「開いて」おり、又は構造の溶解を必要とせずに液体がその空間内へ容易に移動することができる。100%のポケット細孔とは、粒子が存在せず、空間のみであることを表し、0%は、固体粒子のみであり、空間が存在しないことになる。
【0010】
[0013]本明細書では、閉じた細孔(図1の「B」参照のこと)という用語は、固体中に捕捉された細孔又は空間の総量として定義される。液体は、前記固体をある程度溶解せずには細孔中に存在し得ない。
【0011】
[0014]本明細書では、全てのパーセンテージは、別段の指定がない限り重量で表し、細孔又は密度を表す場合には、それらは菓子製品の焼成された部分のみ、すなわちコーティング、包含物等なしで表されることに留意することが重要である。
【0012】
[0015]本発明は、例えば乳製品菓子の中心部分などの乳製品菓子中、又は他のどんな菓子中にも使用することができる焼成製品に関する。焼成製品は、ホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、ダークチョコレート、チョコレート配合物のようなチョコレートの層など1種又は複数の層、あるいは砂糖ベースの菓子製品を含めた他の菓子用コーティングで被覆することができる。
【0013】
[0016]本発明の焼成製品は、菓子製品の中心部分として使用することができるが、当業者の知識に従って使用することもできる。例えば、ウエハースの間の詰め物として、コーティングの一部分として、又はコーティングとして使用することもできる。また、一方の層は本発明の焼成製品によって形成され、他方の層は異なる色及び/又は密度からなるが、本発明のもう1つの焼成製品によって形成され、あるいはさらに、他方の層が、例えば歯応えの良いチョコレートの層でもよい層状の製品中に使用することができる。焼成片は、コーティング又は他の成分なしに、そのまま消費することもできる。焼成された材料は、包含物として他の菓子類に使用することができる(クランチバー中の米のように)。
【0014】
[0017]本発明の焼成製品は、ナッツ、膨張させたシリアル(puffed cereals)、チョコレートチップ、砂糖小片、フルーツ片、キャラメル片、ビスケット、ウエハース、クリームなどの包含物を含むことができる。
【0015】
[0018]焼成製品は、少なくとも1種のガラス状粉末を含有しなければならない。ガラス状粉末は、ガラス転移温度の存在によって特徴付けることができる。ガラス状粉末は、乳製品粉末でよいが、他のタイプの粉末でもよい。例えば、チョコレート粉末、又はフルーツ濃縮粉末、又は麦芽乳粉末、マルトデキストリン、固体コーンシロップ、及び他の炭水化物など、砂糖ベースの粉末とすることができる。
【0016】
[0019]焼成製品が乳製品粉末から製造される場合、その乳製品粉末は、乳、クリーム、練乳、無水乳脂肪、乳固形分、乳タンパク質、乳タンパク質分離物、乳清、バター、ヨーグルト、カゼイン、カゼイン塩、及びタンパク質含有乳製品の代用品の少なくとも1種など、いかなる乳由来製品又は乳成分でもよい乳製品成分を含有する。乳製品の代用品は、大豆タンパク、大豆タンパク質分離物、豆乳、小麦タンパク質、小麦タンパク質分離物、及びココナッツミルクを含むことができる。好ましい乳製品成分は、脱脂粉乳又は全脂粉乳などの粉乳である。乳製品成分は、好ましくは、得られる製品の質感が、多孔質でサクサクしており、良好な口溶け感を有するように選択される。
【0017】
[0020]焼成製品が、砂糖ベースの粉末から製造される場合、その粉末は、ガラス転移点を有する少なくとも1種の炭化水素又は他の材料、あるいはマルトデキストリン、固体コーンシロップ、フルクトース、デキストロース、スクロース、ラクトース、マルトース、又は他の単糖類、二糖類、もしくは多糖類などの組合せを含有する。その組成物は、タンパク質、香味剤、又は脂質など、他の材料を含むこともできる。
【0018】
[0021]全脂粉乳又は脱脂粉乳、及び他の乳由来製品、ならびに他の任意の砂糖ベースの粉末から調製される場合、焼成したその乳製品は、消費者に乳固形分の多い製品を「軽い食感」の形態で提供することができる。軽い食感とは、製品の質感を説明するために使用される用語である。有利なことには、本発明の製品は、サクサクしており、多孔質で、良好な口溶け感を有しており、飽きさせないものとすることができる。この焼成製品は、乳製品が使用される場合、他の多くの菓子製品よりも栄養価が高く、コップ一杯の液体乳と同程度の量の乳固形分、高いカルシウム含有量、高い乳タンパク質レベルを有することができる。例えば、乳固形分に関して、粉乳70%を含有する乳製品の粉末から製造され、ホワイトチョコレートで被覆されたバーは、最終製品100グラム当たり乳固形分約43gを提供することができる。同時に、乳製品の中心部分は軽く、従来の脂肪ベースの菓子より飽きさせない食感を提供する。製品の風味は、新鮮乳のものである。製品特性のこの組合せ(高い乳固形分、新鮮乳の風味、軽い食感の質感)は、菓子分野においては目下存在しない。
【0019】
[0022]焼成乳製品は、甘味剤を含有することもできる。本発明で使用することができる甘味剤は、当分野で周知であり、それだけには限らないが、マルトースの多いコーンシロップなどのコーンシロップ、小麦シロップ、低分子量のデンプン又はマルトデキストリン、スクロース、フルクトース、水性甘ショ糖、デキストロース、マルトース、ラクトース、マルチトリオース、糖蜜、蜂蜜、ガラクトース、及びソルビトール、キシリトール、マンニトール、ラクチトール、サッカリン、アスパルテーム、マルチトール、又はイソマルトなどの当分野で周知の砂糖代用品、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0020】
[0023]一態様によれば、乳製品の出発粉末中の甘味剤の割合は、乳製品粉末の出発材料の重量に対して0〜50重量%とすることができる。好ましくは、乳製品の出発粉末中のスクロースなどの甘味剤の重量は、10〜20%である。一態様では、本発明は、粉乳60〜90%(全脂粉乳など)、スクロース10〜20%、及びマルトデキストリン10〜20%を含有する乳製品粉末から製造された乳製品菓子を提供する。一態様では、乳製品粉末の出発材料は、粉乳70%、スクロース15%、マルトデキストリン15%を含有する。
【0021】
[0024]一態様によれば、炭水化物ベースの出発粉末中の甘味剤の割合は、粉末出発材料の重量に対して1〜100重量%とすることができる。好ましくは、出発粉末中の24DE固体コーンシロップなどの甘味剤の重量は、20〜80%である。一態様では、本発明は、24DE固体コーンシロップ90〜98%、スクロース0〜9%、香味剤0〜3%を含有する粉末から製造された菓子を提供する。
【0022】
[0025]出発材料は、それが乳製品ベースであっても砂糖ベースであっても、前記出発材料と他の粉末との混合物とすることができる。他の粉末は、例えば、Nesquik(登録商標)、Milo(登録商標)、ココア粉末、フルーツ粉末、チョコレート粉末でよい。他の粉末の割合は、各粉末を組み合せてもなお、最終ブレンド中に閉じた細孔を最小限15%付与するようなレベルでなければならない。実際の量は、粉末それぞれの閉じた細孔に依存して決まる。
【0023】
[0026]好ましくは、菓子製品の焼成部分は、周囲温度より高いTgを維持するのに十分低い含水率を有する。異なる材料は異なるTgを有するので正確な数字を示すことは重要ではないが、菓子製品の焼成部分は、好ましくは12%未満、より好ましくは6%未満、さらにより好ましくは5%未満の含水率を有すると言うことができる。
【0024】
[0027]焼成製品は、香味剤、着色剤、充填剤、酸味料、安定剤、乳化剤、緩衝剤、及び小さい菓子製品など、いくつかの他の成分のいずれかを含むことができる。その例には、フルーツ抽出物、フルーツ粉末、マルトデキストリン、ココア、コーヒー、チコリ、麦芽シリアルのようなシリアル、脂肪、レシチン、煮詰めたキャラメル、ヌガティーヌ(nougatine)、ナッツ、シロップ、チョコレート片、膨張させたシリアル(expanded cereals)、ならびにドライフルーツ又はサイズを縮小した糖果もしくはそのままの糖果が含まれる。これらの成分は粉末の形態でよく、あるいはチョコレート又はフルーツ片など、乳製品粉末とブレンドされるより大きな片部でもよい。
【0025】
[0028]本発明の一態様による焼成菓子製品は、軽い質感を有する。この軽い質感は、咀嚼後、急速に口内で溶解し、歯の上に粘着性の残渣を残さない、構造化された多孔質のマトリックスから生じる。製品の質感は、質的ならびに物理的に説明することができる。細孔(閉じた細孔、開いた細孔又はポケット細孔、及び全細孔)は、サンプル中に存在する空気空間量の尺度であり、したがって、製品の稠密度の尺度である。良好な「口溶け」感は、溶解速度の関数として測定することができ、製品が速く溶解するほどより良好な「口溶け」感である。密度及び硬さも、製品の質感の尺度である。
【0026】
[0029]本発明の一態様による製品は、好ましくは、密度が0.1〜0.6、好ましくは0.2〜0.5g/ml、より好ましくは0.25〜0.35g/mlであり、閉じた細孔が15〜70%、好ましくは25〜60%、より好ましくは40〜50%、開いた細孔が10〜45%、好ましくは20〜40%、より好ましくは25〜35%、全細孔が15〜90%、好ましくは30〜75%、より好ましくは40〜65%である。例えば硬さ及び溶解速度等、さらなる測定値を使用して、本発明の焼成製品の軽い質感を開示することができた。ただしこれらのパラメータは、細孔によって溶解速度が定められ、細孔及び密度によって硬さが定められるように、先に開示したものに関連する。しかし、本発明を完全に開示するためには、本発明の製品は、好ましくは溶解速度が1〜10秒(水400ml中、85℃で攪拌しながら分散したサンプル7gの半減期)であり、4000〜40000gの間の力から構成され得る硬さを有することになる。
【0027】
[0030]これらの尺度は質感の尺度であり、菓子製品の焼成部分のみに関し、すなわちコーティング、あるいはチョコレート又は層として使用されるウエハースといった他の可能な成分、あるいはナッツなどの含有物は含まれない。
【0028】
[0031]焼成乳製品は、ホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、又はダークチョコレートのようなチョコレートの層など1種又は複数の層、あるいは他の菓子用コーティングで被覆することができる。外側コーティングはさらに、ナッツ、フルーツ、シリアル、キャンディ、及び当業者には周知の他の材料を含有することができる。この外側の層が存在する場合には、乳製品の中心部分の風味を補うことができる。
【0029】
[0032]本発明の粉末菓子の製造方法は、焼成を伴う。焼成は、熱及び/又は湿度を適用することによって粉末塊中の粒子の隣接する表面を結合させ、その粒子の表面のみを溶融させ、粉末が凝集塊を形成するようにさせるものである。焼成によって粉末塊は強度を増し、通常、高密度化を生ずる。粉末塊は、ガラス状態で出発する。十分な熱及び/又は湿度により、粉末塊はガラス転移温度(Tg)に達し、その時点で粒子はゴム状態に入り、表面が粘着質となり、互いに融着する。熱及び/又は湿度が除去されると、粒子はTg未満の温度に戻り、その片部は固体としてのガラス状態に戻る。Tgは、粉乳などの粉末の含水率に反比例する。したがって、粉末に十分な水分を与える場合、Tgに達するための温度上昇は必要とされない。
【0030】
[0033]本発明の焼成製品は、粉末出発材料を提供するステップ、及びその粉末を圧縮せずに焼成し、それによって個々の粒子がそれらの表面で溶融し互いに接着して、構造化された多孔質の融合製品を形成するステップを含む方法によって製造することができる。
【0031】
[0034]本発明の菓子製品の焼成部分は、焼成の前に圧縮すべきではない。実際、通常の焼成(Rostagnoによって説明されるような)は、圧縮ステップを用いて、例えばピストン等を使用して、最小限1kg/cmの圧力で実施される。この圧縮は、粒子と粒子の接触レベルを確実に高めるために使用するべきであると報告されている。本発明者らは、焼成条件を制御することによって、広範な圧縮を必要とせずに凝集塊を実現できることを見出した。
【0032】
[0035]粉末出発材料の少なくとも一部分は、噴霧乾燥法によって調製される。必要とされるその部分は、いかなるブレンドの粉末の最終組成においても、最小限15%の閉じた細孔を実現するのに十分である。粉末の成分を溶液中に溶解させ、得られた溶液を噴霧乾燥する。空気、亜酸化窒素、二酸化炭素、又は窒素ガスを使用して、水溶液を発泡噴霧乾燥することができる。ガス圧入システムの使用は、ガスを粉末中に捕捉し、閉じた細孔として判定される多孔質構造を作り出す働きをする。粒子の形状及び粒径を変えるために使用することができる他の要素には、ノズルのタイプ、溶液の粘性、及び噴霧速度が含まれる。乳混合物として全体として噴霧乾燥する場合、得られる粉末は、急速な水分除去及び冷却によって作り出される非晶質材料の一部分を有する。
【0033】
[0036]前述のように、他の成分は、噴霧乾燥前(その場合、それらは好ましくは可溶性である)又は噴霧乾燥後に、パットライス(puffed rice)、又はチョコレート片、ナッツ、ドライフルーツ、ココア粉末、麦芽粉末、香味剤、結晶質物質、改質されたデンプン、あるいは当業者には周知の他の小包含物を添加するなどして、粉末に添加することができる。
【0034】
[0037]好ましくは、粉末状成分の粒径は、約0.001〜3.0mm(1〜3000ミクロン)である。
【0035】
[0038]一例としての一態様において、噴霧乾燥された粉末のみが焼成に使用される場合(コーティング及び包含物なし)、焼成された材料は、密度が0.1〜0.6g/ml、閉じた細孔が15〜70%、開いた細孔が10〜45%、全細孔が15〜90%であることを特徴とする。
【0036】
[0039]粉末は事前圧縮なしに焼成されるが、それがこのプロセスの重要な特徴の1つである。このように圧縮を行わないことは重要である。というのは、圧縮によって、軽く、多孔質の質感が損なわれるからである。
【0037】
[0040]粉末の温度がTgより高くなるように、温度及び/又は湿度を上げる。温度が高すぎると、粉末は、望ましくない褐変、カラメル化、及び構造の崩壊/収縮を生ずることがある。Tgを上回る温度に達すると、個々の粒子はゴム状態に入り、表面が粘着質となり、互いに融着する。Tg未満に冷却すると、片部は固体としてのガラス状態に戻る。焼成の時間及び温度は、Tg、粉末の組成、粉末の含水率、焼成を実施する空間の湿度等を含めた様々な要素に依存する。
【0038】
[0041]好ましくは、焼成中の水分損失は、例えば湿度を上昇させることによって、又は焼成中に粉末を被覆することによって防止される。水分を保持することによって、褐変及び望ましくない異臭の形成を回避しながら低温での融解を強める。
【0039】
[0042]焼成の完了後、構造化された多孔質製品をTg未満の温度にして、その製品を再凝固させることができる。
【0040】
[0043]焼成は、大きな1つの受容体としての粉末、又は個々の受容体としての粉末で実施することができる。焼成が大きな1つの受容体としての粉末で実施される場合、個々の部分は、焼成後、冷却前、又は冷却後に分割することができる。
【0041】
[0044]あるいは一態様では、成形型を使用することもできる。このような場合、この方法は、成形型に乳製品粉末などの粉末をゆるく充填するステップと、個々の粒子がそれらの表面で溶融し互いに接着して、多孔質構造の融合製品を形成するように粉末を焼成するステップと、その成形型から製品を取り出すステップとを含み得る。成形型は、水分損失を防止し、又は動作温度での加熱ユニットの雰囲気が、所与の粉末のAwよりも高いレベルに加湿されるのを防止するために、焼成中に被覆することができる。当分野で周知のように、菓子を製造するためのいかなるタイプの成形型も、所望の形状とサイズに応じて使用することができる。例えば、球形の成形型又は棒形の成形型を使用することができる。
【0042】
[0045]別の適用では、粉末をシート又はベルトの上にゆるく広げることができ、この場合も互いの接着力を高めながらそれらの表面で個々の粒子を溶融させて、多孔質構造の融合製品を形成し、所望の形状及びサイズに切ることができる。粉末のシートは、水分損失を回避し、又は動作温度での加熱ユニットの雰囲気が、所与の粉末のAwよりも高いレベルに上昇するのを回避するために、被覆することができる。
【0043】
[0046]本発明の焼成製品の製造方法は、以下のステップを含むことができる。まず、ガラス状の相を有する任意の粉末又は小粒子を成形型に充填し、あるいはシート又は他の個々の形状に予め形成する。前述のように、粉末は異なる粉末の混合物でよいことを理解すべきである。場合によっては、成形型又は形成装置の表面を水平にし、及び/又はその表面から超過した粉末を除去するために、必要に応じて軽く削られる。粉末/粒子は圧縮を受けず、それにより粒子間結合が塑性流動によってガラス転移温度(Tg)より上で形成される。次いで製品がTg未満に冷却されると、これらの結合が凝固する。重要な粒子の完全性は、主として粒子の表面から単離した結合形成を伴い、損なわれずに大部分が残る。場合によっては、加熱の前に成形型を反転させて、粉末/粒子を取り出すことができる。粉末/粒子の凝集性質によって、成形型の形状を保持させることができる。成形型の、シート状の、又は形成された粉末/粒子を、焼成の加熱処理中の水分損失を防止するために密封し、あるいは加熱環境の相対湿度が粉末の水分を保持するのに十分高い場合には、雰囲気に開放したままにすることができる。次いで、粉末又は粒子は、粉末のガラス転移温度に近い温度で、ある期間の加熱処理にかけられる。その温度は、成形型の、シート状の、又は形成された粉末/粒子が同一配向にある数分の継続時間(一般に5〜20分)中、ほとんどの調製物について40℃〜140℃の範囲となるはずであり、焼成後に成形する場合には、製品をTg未満に冷却して凝固させる。シート状にする場合には、製品を各形状に切ることができる。焼成後、予め形成された片部を冷却する。
【0044】
[0047]次いで、望むならその片部をさらなる菓子製品で被覆することができる。
【0045】
[0048]本発明の製品は、前述のように、菓子分野で知られていない構造及び口内での効果を有する。これらの効果は、図2及び3に例示される。
【0046】
[0049]図2は、非多孔質粒子が融着している現行技術を示す。口内での溶解の助けとなる開いた細孔が存在するものの、粒子は閉じた細孔を有していない。このことの効果は、唾液又は溶液が粒子間に入り込んで結合力を破壊させることができても、粒子の内部に急速には入り込まないということである。この粒子の溶解速度は、同一組成の材料に対し、本発明の粒子と比べて遅い。この粒子は、舌触りに違和感があり、ゆっくりと溶解する間にざらつき、又は砂のように感じることがある(同一材料に基づく)。
【0047】
[0050]図3は、本発明の粒子の多孔質性質を明示している。閉じた細孔によって、溶媒が粒子に入り込み、溶解速度を上げるための通路を可能にする。さらに、細孔の周りの壁部は薄く、やはり溶解速度が上がる。本発明の粒子は、口内での砂のような、又はざらつく感覚を最小限に抑えるものである。
【0048】
実施例1
[0051]窒素ガス圧入を用いて加糖乳混合物を気泡噴霧乾燥させ、低密度で高度多孔質(閉じた細孔30〜70%)の噴霧乾燥した甘味粉乳を製造した。甘味乳混合物の最初の配合は、全脂乳粉70%、スクロース15%、及びマルトデキストリン15%(乾燥ベース)であった。次いでこの粉末を用いて、従来の成形型にゆるく充填した。成形型を被覆し、対流式オーブン中で加熱して、粉末の温度をそのガラス転移温度(Tg)より高い温度に上昇させた。加熱前、圧縮は行わなかった。オーブンを280°F(約137℃)に設定し、菓子をオーブン中に約10分間置いた。菓子を放置冷却し、成形型から取り出した。
【0049】
[0052]次いで、この片部、又は菓子の中心部分を、従来のチョコレート又は様々なコーティング配合物で覆った。
【0050】
[0053]最終製品は、軽く、口内で急速に溶解し、歯に粘着しない。最終製品は、高濃度の乳固形分(70%)を供給し、新鮮乳の風味を有する。
【0051】
実施例2
[0054]乳製品ベースの混合物を乾燥させて、低密度で高度多孔質(閉じた細孔15〜70%)の粉末を製造した。乳製品ベースの混合物の最初の配合は、全脂乳粉70%、スクロース0〜15%、及び低DEコーンシロップ固体15〜30%(乾燥ベース)であった。次いで、この粉末を従来の成形型にゆるく充填し、予成形シート又は個々の予成形片部に製造した。次いで製品を焼成するために、粉末を被覆された成形型の中で加熱し、又は粉末を被覆せずに湿った大気にさらして、(12〜21%RH)粉末のガラス転移より高くする。加熱前、圧縮は行わない。オーブンを240°F(115.5℃)に設定し、菓子をオーブン中に約8分間置いた。次いで菓子製品を放置冷却して、固体状態にする。この製品は、密度が0.1〜0.6g/ml、閉じた細孔が15〜70%、開いた細孔が10〜45%、全細孔が15〜90%であることを特徴とする。
【0052】
[0055]次いでこの片部、又は菓子の中心部分を、従来のチョコレート又は様々なコーティング配合物で覆った。
【0053】
[0056]最終製品は、軽く、口内で急速に溶解し、歯に粘着しない。最終製品は、高濃度の乳固形分(50〜100%)を供給し、新鮮乳の風味を有する。
【0054】
実施例3
[0057]異なる物性を有する2種又は複数の粉末/粒子を使用して、他にない製品を形成することができる。粉末/粒子は、非晶質であっても結晶質であってもよい(2つの材料がブレンドされるときに、そのブレンドの閉じた細孔が少なくとも15%となるように、1つはガラス状態である少なくとも一部分を有し、1つは最小限の閉じた細孔を有する必要がある)。粉末の例には、それだけには限らないが、粉乳、フルーツ粉末、Nesquik、Milo、香味剤、及び着色剤が含まれる。以下の適用によって製造される製品は、密度が0.1〜0.6g/ml、閉じた細孔が15〜70%、開いた細孔が10〜45%、全細孔が15〜90%であることを特徴とする。この適用は、以下の方法で使用することができる。
【0055】
実施例3A
[0058]1つが主に非晶質ガラスからなり、1つが主に結晶質材料からなる2種又は複数の粉末を一緒にドライブレンドし、シート又は個々の片部に焼成することができる。高度に結晶質の砂糖製品の例では、閉じた細孔を40%有する乾燥乳製品ベースの混合物を、Nesquik(結晶質スクロースの占める割合が高い)と、50/50の比でドライブレンドした。そのドライブレンドを、焼き皿の上に広げてシートを形成し、次いで約5%RHの雰囲気下で約2分間加熱した後、雰囲気の湿度を約20%RHに上げて製品を焼成した。製品をさらに4分間加熱した。その4分間、補給空気(5%RH)を加えることによって、オーブン中の湿度を約14%まで低減した。加熱前、圧縮は行わない。オーブンを240°F(115.5℃)に設定した。次いで菓子製品を放置冷却して固体状態にする。
【0056】
実施例3B
[0059]異なるガラス転移温度を有する2種又は複数の粉末を一緒にドライブレンドし、シート又は個々の片部に焼成することができる。このドライブレンドは、低いガラス転移温度を有する材料が燃焼するのを防止し、構造が崩壊するのを防止する温度で焼成しなければならない。この温度でのこの材料の塑性流動によって、より高いガラス転移の残りの材料をそれに粘着させ、したがって、より高くより厳しい温度に達する必要なしに、ドライブレンドした塊全体を焼成する。得られた製品の特長として、密度が0.1〜0.6g/ml、閉じた細孔が15〜70%、開いた細孔が10〜45%、全細孔が15〜90%、硬度が4000〜40000gの力、及び溶解速度が1〜10秒であることが挙げられる。一例として、閉じた細孔を40%有する乾燥乳製品ベースの混合物を、乾燥ラズベリー粉末と、50/50の比でドライブレンドした。そのドライブレンドを、焼き皿の上に広げてシートを形成し、次いで約5%RHの雰囲気下で約2分間加熱し、2分後に雰囲気の湿度を約12%RHに上げて製品を焼成した。製品をさらに3分間加熱した。その3分間、補給空気(5%RH)を加えることによって、オーブン中の湿度を約8%まで低減した。加熱前、圧縮は行わない。オーブンを220°F(104.4℃)に設定した。次いで菓子製品を放置冷却して固体状態にする。
【0057】
[0060]異なるガラス転移点を有する2種類の粉末を、粉末1と粉末2が交互に重なる層状の製品として使用することができる。より高いTgで確実に粉末を完全焼成するために、温度条件及びRH条件を用いなければならない。各粉末の異なるガラス転移温度により、粉末のTgが低いと、より脆い構造が形成され、したがって多様な質感、多様な風味の最終製品が製造されることになる。
【0058】
[0061]前述の本発明の実施形態は、単なる例示にすぎない。当業者は、添付の特許請求の範囲のみによって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、個々の実施形態に変更、修正、及び変形を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ポケット細孔及び開いた細孔によって示されるものの略図である。
【図2】現行技術を示す、焼成製品のSEM画像である。
【図3】本発明による焼成製品のSEM画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.1〜0.6g/ml、閉じた細孔が15〜70%、ポケット細孔が10〜45%、全細孔が15〜90%であることを特徴とする、軽い質感を伴う少なくとも1種の焼成した粉末を含む、焼成粉末菓子。
【請求項2】
前記焼成した粉末は、フルーツ、乳、コーヒー、十分煮詰めたキャンディ、ビスケット、ウエハース、及び/又はおこげなどの非晶質粒子を含む、請求項1記載の焼成粉末菓子。
【請求項3】
前記焼成した粉末は、砂糖、塩、酸、及び/又はデンプンなどの結晶質成分を含む、請求項1又は請求項2記載の焼成粉末菓子。
【請求項4】
前記焼成した粉末菓子は、被覆されている、前記請求項のいずれかに記載の焼成粉末菓子。
【請求項5】
前記質感は、良好な口溶け感、多孔質構造、及びサクサクした構造を有し、飽きさせないものである、前記請求項のいずれかに記載の焼成粉末菓子。
【請求項6】
(a)個々の粒子を含む、噴霧乾燥した粉末出発材料を得るステップと、
(b)前記噴霧乾燥した粉末出発材料を圧縮することなく粉末を焼成し、それによって個々の粒子がそれらの表面で溶融し互いに接着し、構造化された多孔質の融合製品を形成するステップと、
を含む、少なくとも1種の焼成した粉末を含む焼成粉末菓子の製造方法。
【請求項7】
前記出発材料は、ココア、麦芽、紅茶、コーヒー、フルーツ、デンプン、その他炭水化物及びタンパク質の少なくとも1つをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
焼成中の乳製品粉末から水分損失を防止するステップをさらに含む、請求項6又は請求項7記載の方法。
【請求項9】
構造化された多孔質の融合製品を被覆するステップをさらに含む、請求項6〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項記載の方法によって製造される、焼成粉末菓子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−505624(P2008−505624A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519731(P2007−519731)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007382
【国際公開番号】WO2006/005525
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】