説明

焼魚臭用消臭剤組成物

【課題】焼魚臭の消臭効果に優れた消臭剤組成物を提供する。
【解決手段】焼魚臭の消臭効果に優れた消臭剤組成物は、cis−3−ヘキセノール等の特定の高揮発性香料、γ−ウンデカラクトン等の特定の低揮発性香料、及び酢酸ベンジル等の特定の中極性溶剤を含有する。更に、この消臭剤組成物は、特定のポリヒドロキシアミン化合物を含有することが好ましい。また、焼魚臭の消臭効果の判定方法及び焼魚臭消臭剤スクリーニング方法においては、炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類を焼魚臭指標物質とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼魚臭の消臭効果に優れた消臭剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の住居用の消臭組成物は、住居空間内や洗濯物の不快臭の中でも主として煙草臭や汗臭を消臭することを意図したものが多い。このような消臭組成物として水に低級アルコールと香料とを配合した組成物が提案されている(例えば特許文献1〜3)。
【0003】
また、近年、一般家庭の台所がオープンキッチン化してきたことに伴い、調理時に生ずる臭いが住居空間全体に拡散し、更にカーテン、ソファ、衣服などの繊維製品に付着してしまうという問題が顕著となっている。
【0004】
【特許文献1】特表平10−503958号公報
【特許文献2】特開2000−342669号公報
【特許文献3】特開2006−325902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、調理臭、特に焼魚臭については、主として換気によって対応しており、他に適切な方法がないのが現状であった。
【0006】
本発明は、以上の従来の問題を解決しようとするものであり、焼魚臭の消臭効果に優れた消臭剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の目的を達成すべく、焼魚臭の原因物質の分析を行ったところ、焼魚臭特有の原因物質が、従来知られていない炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類であることを見出した(図1の焼魚グリル汚れの抽出物のGCチャート参照)。そして、炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類に由来する焼魚臭の消臭について研究したところ、特定の高揮発性香料と特定の低揮発性香料と特定の中極性溶剤とを同時に配合した消臭剤組成物が、焼魚臭の消臭効果を示すことを見出し、本発明の焼魚臭用消臭剤組成物を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する焼魚臭用消臭剤組成物を提供する。
【0009】
成分(A):
cis−3−ヘキセノール、酢酸cis−3−ヘキセニル、シトラール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、1,8−シネオール、ゲラニオール、l−カルボン、l−メントン、リナロール、リナロールオキサイド、酢酸リナリル、α−メチルイオノン、γ−メチルイオノン、フェノキシエチルアルコール、フェニルエチルアルコール、テトラヒドロリナロール及びジメチルテトラヒドロベンズアルデヒドからなる群より選択される少なくとも一種の香料素材。
【0010】
成分(B):
γ−ウンデカラクトン、3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、エチル 2−tert−ブチルシクロヘキシルカルボネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)−プロパナール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、ジヒドロジャスモン酸メチル、3−メチルシクロペンタデセノン、エチレンドデカンジオエート、フェニルヘキサノール及び2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オールからなる群より選択される少なくとも一種の香料素材。
【0011】
成分(C):
酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、サリチル酸シクロヘキシル、ファルネソール、ミリスチン酸イソプロピル、リモネン、イソ酪酸フェノキシエチル及びクエン酸トリエチルからなる群より選択される少なくとも一種の中極性溶剤。
【0012】
また、本発明は、焼魚臭に対する任意の化合物又は組成物の消臭効果を判定する方法であって、炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類を焼魚臭指標物質とする焼魚臭消臭効果判定方法; 焼魚臭消臭効果を有する化合物又は組成物のスクリーニング方法であって、炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類を焼魚臭指標物質とする焼魚臭消臭剤スクリーニング方法; 及び炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類を含有する焼魚臭指標組成物、を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の焼魚臭用消臭剤組成物は、特定の高揮発性香料、特定の低揮発性香料、及び特定の中極性溶剤を同時に含有する。このため、焼魚臭を効果的に消臭することができる。また、炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類を焼魚臭指標物質として選択した場合には、焼魚臭に対する任意の化合物又は組成物の消臭効果の判定方法又はスクリーニング方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する焼魚臭用消臭剤組成物である。
【0015】
成分(A)は、cis−3−ヘキセノール、酢酸cis−3−ヘキセニル、シトラール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、1,8−シネオール、ゲラニオール、l−カルボン、l−メントン、リナロール、リナロールオキサイド、酢酸リナリル、α−メチルイオノン、γ−メチルイオノン、フェノキシエチルアルコール、フェニルエチルアルコール、テトラヒドロリナロール及びジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(トリプラール)からなる群より選択される少なくとも一種の香料素材であり、二種以上を同時に使用することができる。これらの香料素材は、いわゆる高揮発性香料素材であるが、ここで、“高揮発性”とは沸点250℃未満の香料素材を意味する。このような成分(A)を使用することにより消臭剤組成物の使用直後に高い消臭効果が得られる。
【0016】
好ましい成分(A)としては、cis−3−ヘキセノール、シトラール、1,8−シネオール、ゲラニオール、リナロール、酢酸リナリル、α−メチルイオノン、γ−メチルイオノン、フェノキシエチルアルコール及びフェニルエチルアルコールからなる群より選択される少なくとも一種の香料素材が挙げられる。
【0017】
成分(B)は、γ−ウンデカラクトン、3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン(アンブロキサン)、α−ダマスコン、β−ダマスコン、エチル 2−tert−ブチルシクロヘキシルカルボネート(フロラマット)、ヘキシルシンナミックアルデヒド、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)−プロパナール(リリアール)、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(リラール)、ジヒドロジャスモン酸メチル、3−メチルシクロペンタデセノン、エチレンドデカンジオエート、フェニルヘキサノール、及び2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール(サンダルマイソールコア)からなる群より選択される少なくとも一種の香料素材であり、二種以上を同時に使用することができる。これらの香料素材は、いわゆる低揮発性香料素材であるが、ここで、“低揮発性”とは沸点250℃以上の香料素材を意味する。このような成分(B)を使用することにより長時間にわたって消臭効果が得られる。
【0018】
好ましい成分(B)としては、γ−ウンデカラクトン、3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、ヘキシルシンナミックアルデヒド、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)−プロパナール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、ジヒドロジャスモン酸メチル及び2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オールからなる群より選択される少なくとも一種の香料素材が挙げられる。
【0019】
成分(C)は、酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、サリチル酸シクロヘキシル、ファルネソール、ミリスチン酸イソプロピル、リモネン、イソ酪酸フェノキシエチル及びクエン酸トリエチルからなる群より選択される少なくとも一種の中極性溶剤であり、二種以上を同時に使用することができる。ここで、“中極性”とは消臭対象となる4,5−エポキシ−2−アルケナール類と同程度の極性を有し、相溶性が高いことを意味する。
【0020】
好ましい成分(C)としては、サリチル酸シクロヘキシル、ファルネソール、ミリスチン酸イソプロピル、イソ酪酸フェノキシエチル及びクエン酸トリエチルからなる群より選択される少なくとも一種以上の中極性溶剤が挙げられる。
【0021】
成分(A)の香料素材に対する成分(B)に属する香料素材の質量比[(B)/(A))は0.1〜10、より好ましくは、0.5〜4である。また、成分(A)に対する成分(C)の化合物の質量比[(C)/(A)]は好ましくは0.3〜20、より好ましくは、1〜20である。
【0022】
成分(A)、成分(B)及び成分(C)の消臭剤組成物中の合計配合量は、好ましくは0.0001〜1質量%、より好ましくは0.001〜0.2質量%、更に好ましくは0.005〜0.1質量%である。配合量がこの範囲であれば、十分な消臭効果が得られる。
【0023】
本発明の焼魚臭用消臭剤組成物は、更に成分(D)として、消臭効果を増強するために、次の一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(以下、単に「ポリヒドロキシアミン化合物類」という)を含有することが好ましい。
【0024】
【化1】



【0025】
式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R及びRは、炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0026】
の炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。また、Rの炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0027】
好ましいRとしては、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基又は2−ヒドロキシエチル基が挙げられ、より好ましくは水素原子、ヒドロキシメチル基又は2−ヒドロキシエチル基が挙げられる。
【0028】
式(1)中、Rの炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、Rの炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基として、Rの炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0029】
好ましいRとしては、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシエチル基が挙げられ、より好ましくは水素原子が挙げられる。
【0030】
式(1)中、R及びRの炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましく挙げられ、特にメチレン基が好ましく挙げられる。R及びRの炭素数1〜5のアルキレン基は、同一のものでも異なっているものであってもよい。
【0031】
式(1)のポリヒドロキシアミン化合物類の具体例としては、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等、及びそれらと塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等との塩が挙げられる。
【0032】
好ましいポリヒドロキシアミン化合物類としては、消臭性能等の観点から、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール及びそれらと塩酸等との塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0033】
ポリヒドロキシアミン化合物類を、塩酸等との塩として用いる場合は、塩基を添加することによりpHの調整をすることができる。用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0034】
ポリヒドロキシアミン化合物類は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、上述したようなポリヒドロキシアミン化合物類は常法により製造することができる。
【0035】
ポリヒドロキシアミン化合物類の消臭剤組成物中の配合量は、好ましくは0.005〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.03〜1質量%である。
【0036】
本発明の焼魚臭用消臭剤組成物には、成分(A)〜(C)、(D)に加えて界面活性剤やシクロデキストリン類を配合することができる。
【0037】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、より好ましくは両性界面活性剤である。好ましい両性界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸とジメチルアミノプロピルアミンとのアミド化合物を過酸化水素により反応させて得ることができるアミドプロピルアミンオキシドを挙げることができる。
【0038】
本発明の消臭剤組成物において両性界面活性剤を使用した場合、消臭剤組成物中に好ましくは0.005〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.03〜1質量%となるように配合する。
【0039】
また、シクロデキストリン類としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン及び/又はそれらの誘導体及び/又はそれらの混合物のような、公知のシクロデキストリンが挙げられる。中でも消臭効果の点からメチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを好ましく使用できる。
【0040】
本発明の焼魚臭用消臭剤組成物においてシクロデキストリン類を使用した場合、消臭剤組成物中に好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%、更に好ましくは0.4〜2質量%となるように配合する。
【0041】
本発明の焼魚臭用消臭剤組成物には、消臭効果の点から、茶、山茶花、椿、サカキ、ヒサカキ、モッコク等のツバキ科植物の生葉、その乾燥物、その加熱処理物等の抽出物を配合することができる。これらの中では茶の生葉もしくはその乾燥物、あるいは蒸気若しくは焙煎等により加熱処理されたものが好ましく、中でも緑茶乾留エキスが、優れた消臭性能、入手の容易性、安全性等の観点から好ましい。
【0042】
本発明の焼魚臭用消臭剤組成物は、水を基剤とするのが好ましい。水に加え、エタノール等の低級アルコール類、グリセリン、プロピレングリコール等の低級多価アルコール、その他の水溶性有機溶剤を配合することができる。
【0043】
本発明の焼魚臭用消臭剤組成物には、上述した成分以外に、更にpH調整剤、色素、増粘剤、防腐剤などを適宜配合できる。
【0044】
本発明の焼魚臭用消臭剤組成物は、成分(A)、(B)及び(C)並びに水、更に(D)や他の添加成分を、常法に従って均一に混合することにより製造することができ、スプレーボトルやエアゾール缶に注入して使用することができる。
【0045】
本発明の焼魚臭用消臭剤組成物は、焼魚臭のする住居空間へ直接噴霧、自然蒸散または強制揮散させて使用することができる。また、焼魚臭が付着した衣類、カーテン、布製ソファ等の繊維製品や、他の木製物品、樹脂製物品、金属性物品等に直接噴霧して使用することもできる。また、焼魚の調理に使用した魚焼グリル等の調理器具やその周辺に噴霧し、あるいは布帛や紙等に含浸させたものを使用することもできる。
【0046】
また、本発明者らは、炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類が焼魚臭指標物質として有用なことを見出した。
【0047】
炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類を焼魚臭指標物質とする焼魚臭消臭効果判定方法もしくは焼魚臭消臭剤スクリーニング方法は本発明の一部であり、これを利用することにより任意の香料素材、化合物あるいは組成物の焼魚臭の消臭効果を確認することができる。また、炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類を含有する焼魚臭指標組成物は、焼魚臭消臭効果判定方法や焼魚臭消臭剤スクリーニング方法を実施するために、有機揮発性溶剤の溶液として使用することができる。なお、炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類の具体例としては、4,5−エポキシ−2−ヘプテナール−1、4,5−エポキシ−2−ノネナール−1、4,5−エポキシ−2−デセナール−1等を挙げることができる。中でも、4,5−エポキシ−2−デセナール−1を焼魚臭指標物質として選択することが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
【0049】
試験例1
成分(A)〜(C)の焼魚臭の消臭効果の判定を以下のように行った。
【0050】
(試験布の作成)
10cm四方の試験布(綿100%)に、4,5−エポキシ−2−デセナール−1の1%トリアセチン溶液50μLをマイクロピペットにて滴下し、さらに、表1の成分(A)もしくは(B)の0.005質量%又は成分(C)の0.05質量%とエタノール15質量%と水(残部)とを混合した試験液100μLを滴下した。
【0051】
(消臭効果の判定)
試験液を滴下した直後と3時間後とに、試験布を30歳代の女性5人に臭いを嗅いでもらい、焼魚臭に基づく不快臭が感じられるか否かについて官能試験を行い、以下の評価基準に従って合議によって評価した。得られた結果を表1に示す。
【0052】
AA: 無臭、又は不快臭とはっきり分からないが、かすかにニオイを感じる場合
A: 不快臭を感じるが弱くてあまり気にならない場合
B: 不快臭が気になる場合
C: 不快臭が強い場合








【0053】
【表1】








【0054】
表1から、成分(A)は、全体として噴霧直後の消臭効果(対焼魚臭)が非常に高いが、消臭効果の持続性がやや劣る傾向を有していることがわかる。成分(B)は、全体として特に消臭効果(対焼魚臭)の持続性が良好である傾向を有していることがわかる。成分(C)は、全体として、噴霧直後の消臭効果(対焼魚臭)が十分とは云えないが、持続性に優れていることがわかる。
【0055】
実施例1〜24及び比較例1〜3
表2〜表4に示した成分を常法に従って均一に混合撹拌することにより、本願発明の実施例1〜24の焼魚臭用消臭剤組成物並びに比較例1〜3を調製した。得られた焼魚臭用消臭剤組成物について、試験例1と同様に焼魚臭に対する消臭効果を判定した。得られた結果を表2〜表4に併せて示す。






































【0056】
【表2】





【0057】
【表3】




【0058】
【表4】

【0059】
表2〜表4の結果から、成分(A)〜(C)を含有する実施例1〜24の焼魚臭用消臭剤組成物は、焼魚臭を良好に消臭できたことが解る。一方、成分(A)、(B)及び(C)のいずれかを欠いた比較例1〜3の焼魚臭用消臭剤組成物は、消臭効果が不充分であったことがわかる。
【0060】
実施例25
表5に示した成分を常法に従って均一に混合撹拌することにより、焼魚臭用消臭剤組成物を調製した。得られた焼魚臭用消臭剤組成物について、試験例1と同様に焼魚臭に対する消臭効果を判定したところ、実施例1の焼魚臭用消臭剤組成物と同様な良好な消臭効果を示した。
【0061】
【表5】

【0062】
実施例26
表6に示した成分を常法に従って均一に混合撹拌することにより、焼魚臭用消臭剤組成物を調製した。得られた焼魚臭用消臭剤組成物について、試験例1と同様に焼魚臭に対する消臭効果を判定したところ、実施例1の焼魚臭用消臭剤組成物と同様な良好な消臭効果を示した。
【0063】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の焼魚臭用消臭剤組成物は、特定の高揮発性香料、特定の低揮発性香料、及び特定の中極性溶剤を同時に含有する。このため、焼魚臭を効果的に消臭することができる。従って、住居用の消臭剤組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】焼魚グリル汚れの抽出物のGCチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する焼魚臭用消臭剤組成物。
成分(A): cis−3−ヘキセノール、酢酸cis−3−ヘキセニル、シトラール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、1,8−シネオール、ゲラニオール、l−カルボン、l−メントン、リナロール、リナロールオキサイド、酢酸リナリル、α−メチルイオノン、γ−メチルイオノン、フェノキシエチルアルコール、フェニルエチルアルコール、テトラヒドロリナロール及びジメチルテトラヒドロベンズアルデヒドからなる群より選択される少なくとも一種の香料素材
成分(B): γ−ウンデカラクトン、3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、エチル 2−tert−ブチルシクロヘキシルカルボネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)−プロパナール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、ジヒドロジャスモン酸メチル、3−メチルシクロペンタデセノン、エチレンドデカンジオエート、フェニルヘキサノール及び2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オールからなる群より選択される少なくとも一種の香料素材
成分(C): 酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、サリチル酸シクロヘキシル、ファルネソール、ミリスチン酸イソプロピル、リモネン、イソ酪酸フェノキシエチル及びクエン酸トリエチルからなる群より選択される少なくとも一種の中極性溶剤
【請求項2】
更に、成分(D)として以下の一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物を含有する請求項1記載の焼魚臭用消臭剤組成物。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R及びRは、炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R及びRは、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
焼魚臭に対する任意の化合物又は組成物の消臭効果を判定する方法であって、炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類を焼魚臭指標物質とする焼魚臭消臭効果判定方法。
【請求項4】
焼魚臭消臭効果を有する化合物又は組成物のスクリーニング方法であって、炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類を焼魚臭指標物質とする焼魚臭消臭剤スクリーニング方法。
【請求項5】
炭素数7〜10の、4,5−エポキシ−2−アルケナール類を含有する焼魚臭指標組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−295877(P2008−295877A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147307(P2007−147307)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】