説明

照射された照射野の解像度を増加させるための放射線療法装置ならびに方法

放射源(23)と、コリメータ(25)と、オフセット装置とを有する放射線療法装置(21)において、
・前記放射源(23)から、照射のためのビームを、少なくとも2つの互いに反対の方向から目標体積へと配向可能であり、
・前記コリメータ(25)は、照射野(11,13)を形成するために、治療ビームを局限するための複数のコリメータエレメントを備えており、該コリメータエレメントの広がりによって、前記照射野(11,13)の解像度が予め定められ、
・前記オフセット装置は、2つの反対方向から照射された照射野(11,13)が前記解像度の数分の1だけ互いにオフセットされるように、当該2つの反対方向の照射野(11,13)の照射がオフセットされて実施されるようにする、
ことを特徴とする放射線療法装置(21)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射された照射野、−ひいてはこれと関連する−照射された線量分布における解像度を増加させるための放射線療法装置ならびに方法に関する。
【0002】
放射線療法装置は、周知のように例えば腫瘍のような病気を治療するために使用される。ここでは通常、高エネルギのX線が、例えば人体または研究用または管理用のファントムのような治療すべき目標体積へと照射される。治療すべき目標体積に合わせて線量分布が調節される。
【0003】
線量分布の調整は、通常は、ビームを側方で局限する高解像度のコリメータによって行われる。コリメータの解像度が高くなればなるほど、つまり、コリメータによって形成される照射野がより微細に段階付けられれば段階付けられるほど、望みの線量分布をより精確に供給することができる。
【0004】
しかしながら高解像度のコリメータは複雑な構造を必要としており、比較的高価である。
【0005】
本発明の課題は、簡単な構造のコリメータでも高解像度の線量分布を可能にする放射線療法装置を提供することである。さらに本発明の課題は、照射される照射野における解像度を増加させるための相応の方法を提供することである。
【0006】
本発明の課題は、独立請求項に記載された特徴により解決される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明の放射線療法装置は、放射源と、コリメータと、オフセット装置とを有しており、
・前記放射源、例えばX線源から、照射のためのビームを、少なくとも2つの互いに反対の方向から目標体積へと配向可能であり、
・前記コリメータは、照射野を形成するために、治療ビームを局限する複数のコリメータエレメントを備えており、該コリメータエレメントの広がりによって前記照射野の解像度が予め定められており、
・前記オフセット装置は、2つの互いに反対方向から照射された照射野が前記解像度の数分の1だけ互いにオフセットされるように、当該2つの互いに反対方向の照射野の照射がオフセットされて実施されるようにする。
【0008】
本発明によれば、互いに反対の空間方向からの2つのビーム束をシーケンシャルに使用することによって、照射体積に線量分布を形成し、この際、これら2つのビーム束の軸は、コリメータの解像度の数分の1だけ、例えば2分の1または4分の1だけオフセットされている。こうすることにより、放射体積において達成可能な線量分布の解像度は有利には2倍になる。したがって本発明によれば、X線療法装置のような放射療法装置における局所的な線量分布を改善することができる。
【0009】
このような放射線療法装置の利点は、線量分布の所定の解像度を達成するために必要なコリメータエレメント、例えばリーフまたはニードルを、コリメータの構造に応じて2分の1ないし4分の1にできることである。これによって格別の簡単化が達成され、ビーム形成機構の複雑性を低減することができる。
【0010】
互いに反対の方向からの照射は、シーケンシャルに行うことができる。
【0011】
コリメータに関しては、例えばコリメータエレメントの広がり−例えばリーフの幅−により、2次元の照射野の1つの方向において、または、コリメータの構造に応じて2次元の照射野の2つの方向においても、最小解像度を予め定めておくことができる。反対の方向から入射された第2の照射野において、ビーム束がまさにこの方向へと、コリメータの解像度の数分の1だけオフセットされる場合に、解像度の増加が達成される。
【0012】
この放射線療法装置はシリンダ形状を有することができ、したがってビーム束およびコリメータは、アイソセンタを中心とした回転軸を中心として回転可能に支承されている。コリメータエレメントの広がりによって、回転軸の方向における照射野の最小解像度が予め定められるように、コリメータを配置することができる。オフセット装置は、オフセットを回転軸に沿って生じさせるように構成することができる。軸オフセットは、ここではコリメータの解像度の4分の1または2分の1だけ回転方向にオフセットすることによって行われる。
【0013】
このことは例えば、放射源およびコリメータの回転を、回転軸を中心に螺旋状に行うことによって実行することができる。2分の1の回転の場合には、例えば、照射野の解像度の2分の1または4分の1だけ照射野のオフセットを行うことができる。このことは例えば、コリメータおよび放射源が、回転時に回転軸に沿った線形運動をすることによって達成することができる。したがってこの運動は螺旋形となる。
【0014】
しかしながら放射源およびコリメータは、アイソセンタを中心とした回転軸を中心にして回転可能に支承することもでき、この場合、コリメータエレメントの広がりによって、回転軸に対して垂直の方向における照射野の最小解像度が予め定められるように、コリメータを配置することができる。オフセット装置は、オフセットを回転軸に対して垂直に生じさせるように構成することができる。
【0015】
このことは例えばオフセット装置が、コリメータを通って印加された照射野が、アイソセンタに配向された半径に対して、照射野の解像度の4分の1だけ当該半径に対してオフセットされるように、配置されるようにすることによって実行することができる。照射野が4分の1だけオフセットされていることによって、互いに反対の2つの方向から照射された場合に、全体として照射野の解像度の2分の1だけオフセットされることになる。この実施形態の利点は、コリメータの幾何学的な配置のみによって、互いに反対に照射される2つの照射野におけるオフセットが既に行われることである。
【0016】
放射線療法装置における照射された照射野の解像度を増加させるための本発明の方法は
・第1の空間方向から放射される印加すべきビームを局限し、かつ、照射野の解像度を予め定める複数のコリメータエレメントを含むコリメータを用いて、第1の照射野を形成するステップと、
・第2の空間方向から放射されるビームを局限するコリメータを用いて、第2の照射野を形成し、前記第2の照射野を、前記第1の照射野に対し、前記解像度の数分の1だけ互いにオフセットするステップ
とを有する。
【0017】
第2の照射野は、第1の照射野へとシーケンシャルに照射することができ、解像度の4分の1または2分の1だけオフセットすることができる。放射源およびコリメータは、アイソセンタを中心とした回転軸を中心にして回転可能に支承することができ、照射野は、回転軸に沿って互いにオフセットすることができる。
【0018】
放射源およびコリメータの回転は、回転軸を中心に螺旋形に行うことができる。
【0019】
放射源およびコリメータは、回転軸を中心にして回転可能に支承されており、コリメータエレメントの広がりによって、回転軸に対して垂直の方向における照射野の解像度が予め定められ、回転軸に対して垂直にオフセットが行われる。例えば、コリメータを通って印加された照射野は、アイソセンタに配向された半径に対して、照射野が、照射野の解像度の4分の1だけ当該半径に対してオフセットされているように配置することができる。
【0020】
個々の特徴についての上述の説明および以下の説明、個々の特徴の利点および作用は、いずれにせよ個別的には詳細に述べていなくとも、装置カテゴリーならびに方法カテゴリーに関連しており、ここで開示された個々の特徴は、示した組み合わせとは異なる組み合わせにおいても本発明の本質をなすことができる。
【0021】
本発明の実施形態を、以下の図面に基づいてより詳細に説明する。しかしながら本願はこれらの実施形態に制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、どのようにして解像度の増加を達成できるかについての原理を説明する図である。
【図2】図2は、放射線療法装置においてどのようにして解像度の増加を達成できるかを示す図である。
【図3】図3は、別の1つの実施形態による、放射線療法装置においてどのようにして解像度の増加を達成できるかについて示す図である。
【図4】図4は、図3に図示した実施形態において、中央のアイソセンタの半径に関連した照射野のオフセットを示す図である。
【0023】
図1は、第1の照射野11と、重畳された第2の照射野13とを示す。第1の照射野11は実線によって図示されており、第2の照射野13は破線によって図示されている。
【0024】
それぞれ照射野を形成するコリメータエレメント15の投影図も図示されている。
【0025】
第1方向からビームが印加され、コリメータによって局限されることによって、照射体積に第1の照射野11が形成される。コリメータエレメント−例えばリーフ−の幅によって、1つの方向における第1の照射野11の解像度が制限されている。
【0026】
第2の照射野13の照射は反対の空間方向から行われる。より詳細に言えば、コリメータの構造によって予め定められている、解像度の制限の方向に、第2の照射野13がオフセットされるように、照射が行われる。ここでは解像度が2分の1だけオフセットされている様子が図示されており、オフセットとして別の分数も可能である。
【0027】
これによって、2つの照射野11,13を統合した線量分布は、コリメータによって予め定められた解像度の約2倍の大きさの解像度を有することとなる。
【0028】
図2は、放射線療法装置21を図示しており、この放射線療法装置21において、放射源23とコリメータ25とが回転軸27を中心に回転することができる。放射線療法装置21の別のコンポーネントは、見やすくするために図示していない。
【0029】
照射すべき目標体積(図示していない)を中心とした放射源23およびコリメータ25の回転は、螺旋形の経路29に沿って行われる。経路29は、異なる方向から照射野11,13を照射する際に、これらの照射野11,13のオフセットがコリメータ25によって予め定められた解像度のちょうど2分の1だけ行われるように選択されている。この場合には、照射野のオフセットを行うオフセット装置は、放射源23およびコリメータ25の螺旋形の運動経路を可能にする機構に相当する。
【0030】
図3は、放射線療法装置21を図示しており、この放射線療法装置21において、放射源23とコリメータ25とが回転軸27を中心に回転することができる。放射線療法装置21の別のコンポーネントは、見やすくするために図示していない。
【0031】
照射すべき目標体積(図示していない)を中心とした放射源23およびコリメータ25の回転は、環形の経路29’に沿って行われる。照射野11,13の放射は、異なる方向から照射野11,13を照射する際に、これらの照射野11,13のオフセットがコリメータ25によって予め定められた解像度のちょうど2分の1だけ行われるように選択されている。オフセットは、回転軸27に垂直の方向に沿って行われる。
【0032】
この場合には、照射野のオフセットを行うオフセット装置は、アイソセンタの仮想半径31に対して解像度の4分の1だけオフセットされた照射野の照射を可能にする機構に相当する。
【0033】
これについて図4に基づいて再度説明する。1つの照射野が、アイソセンタの半径に対して4分の1だけオフセットされて放射されることによって、反対方向から照射された際に、全体としてこれらの照射野の解像度は2分の1だけオフセットされることとなる。
【0034】
図3および図4による実施形態は互いに組み合わせることができ、例えばコリメータに関して、コリメータの照射野の2つの方向において解像度の制限が予め定められるように、コリメータを形成することもできる。
【符号の説明】
【0035】
11 第1の照射野
13 第2の照射野
15 コリメータエレメントの投影
21 放射線療法装置
23 放射源
25 コリメータ
27 回転軸
29 螺旋形の経路
29’ 環形の経路
31 アイソセンタの半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射源(23)と、コリメータ(25)と、オフセット装置とを有する放射線療法装置(21)において、
・前記放射源(23)から、照射のためのビームを、少なくとも2つの互いに反対の方向から目標体積へと配向可能であり、
・前記コリメータ(25)は、照射野(11,13)を形成するために、治療ビームを局限するための複数のコリメータエレメントを備えており、該コリメータエレメントの広がりによって、前記照射野(11,13)の解像度が予め定められ、
・前記オフセット装置は、2つの反対方向から照射された照射野(11,13)が前記解像度の数分の1だけ互いにオフセットされるように、当該2つの反対方向の照射野(11,13)の照射がオフセットされて実施されるようにする、
ことを特徴とする放射線療法装置(21)。
【請求項2】
前記オフセット装置は、前記コリメータエレメントによって予め定められた解像度の4分の1または2分の1のオフセットを生じさせるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の放射線療法装置(21)。
【請求項3】
前記放射源(23)と前記コリメータ(25)は、回転軸(27)を中心にして回転可能に支承されており、
前記コリメータエレメントの広がりによって、前記回転軸(27)の方向における前記照射野(11,13)の解像度が予め定められ、
前記オフセット装置は、前記オフセットを前記回転軸(27)に沿って生じさせるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の放射線療法装置(21)。
【請求項4】
前記放射源(23)と前記コリメータ(25)の回転は、螺旋形に行われる、
ことを特徴とする請求項3記載の放射線療法装置(21)。
【請求項5】
前記放射源(23)と前記コリメータ(25)は、回転軸(27)を中心にして回転可能に支承されており、
前記コリメータエレメントの広がりによって、前記回転軸(27)に対して垂直方向における前記照射野(11,13)の解像度が予め定められ、
前記オフセット装置は、前記オフセットを前記回転軸(27)対して垂直に生じさせるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の放射線療法装置(21)。
【請求項6】
前記オフセット装置は、前記コリメータを通って印加された照射野(11,13)が、アイソセンタに配向された半径(31)に対して、前記照射野(11,13)が当該半径(31)に対して前記照射野(11,13)の解像度の4分の1だけオフセットされるように、配置されるようにする、
ことを特徴とする請求項5記載の放射線療法装置(21)。
【請求項7】
放射線療法装置(21)における照射された照射野(11,13)の解像度を増加させるための方法において
・放射源(23)と、第1の空間方向から放射される印加すべき前記放射源(23)のビームを局限するコリメータ(25)であって、かつ、前記照射野(11)の解像度を予め定める複数のコリメータエレメントを含むコリメータ(25)とを用いて、第1の照射野(11)を形成するステップと、
・第2の空間方向から放射される別のビームを局限するコリメータ(25)を用いて、第2の照射野(13)を形成し、前記第2の照射野(13)を、前記第1の照射野に対し、前記解像度の数分の1だけ互いにオフセットするステップ
とを有する方法。
【請求項8】
前記第2の照射野を、前記第1の照射野に対し、前記解像度の4分の1または2分の1だけオフセットする、
ことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記放射源(23)と前記コリメータ(25)は、回転軸(27)を中心にして回転可能に支承されており、
前記コリメータエレメントの広がりによって、前記回転軸(27)の方向における前記照射野(11,13)の解像度を予め定め、
前記照射野(11,13)は、前記回転軸(27)に沿って互いにオフセットされており、
前記放射源(23)と前記コリメータ(25)の回転を、前記回転軸(27)を中心にしてとりわけ螺旋形に実施する、
ことを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記放射源(23)と前記コリメータ(25)は、回転軸(27)を中心にして回転可能に支承されており、
前記コリメータエレメントの広がりによって、前記回転軸(27)に対して垂直方向における前記照射野(11,13)の解像度を予め定め、前記オフセットを前記回転軸(27)対して垂直に実施する、
ことを特徴とする請求項7から9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記コリメータを通って印加された照射野(11,13)は、アイソセンタに配向された半径(31)に対して、前記照射野(11,13)が当該半径(31)に対して前記照射野(11,13)の解像度の4分の1だけオフセットされるよう配置されている、
ことを特徴とする請求項7から10のいずれか一項記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−520256(P2013−520256A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554265(P2012−554265)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051460
【国際公開番号】WO2011/104076
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】