説明

照明システム

【課題】人の誤検出による無駄な電力消費を低減した照明システムを提供する。
【解決手段】演算処理部23は、画像センサ21が照明器具1の照明範囲を撮像した画像データをもとに人の存否を検知する人検知部23aと、人検知部23aによる検知範囲内の領域が人の活動領域であるか非活動領域であるかを判定し、人検知部23a及び照明制御部3による照明器具1の制御方法を判定結果に応じて変更する領域判定部23bを備えている。人検知部23aによる人の検知に応じて照明制御部3が照明器具1を点灯させた後、人検知部23aが検知物体を人ではないと判断したことによって照明制御部3が照明器具1の光出力を低下させた時点より所定時間が経過するまでの間に、上記検知物体の検知位置付近で人検知部23aが再び人を検知すると、領域判定部23bは、人検知部23aによって再び人が検知された領域を活動領域と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具の照射領域をTVカメラで撮影し、TVカメラの撮影画像を複数に分割したエリア毎に、画像データから明るさと動体の有無とを検出し、その検出結果に基づいて照明器具の光出力を調光する照明制御システムがあった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−289377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に開示された照明制御システムでは、TVカメラの画像データから動体の有無を検出し、動体が存在すると判断されたエリアに対応する照明器具を点灯させていた。
【0005】
ところで、TVカメラなどの画像センサを人検知センサに利用する場合、画像データをもとに人の動きや明るさなどを高密度に取得できるという利点はあるが、机上に置かれた物の移動や光の変化など人の動きではないものを人の動きとして誤検知する可能性がある。そして、画像センサにより人以外のものが人の動きとして誤検知されると、人がいないにも拘わらず、人がいると誤検出されたエリアの照明器具が点灯されてしまい、無駄な電力消費が発生するという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、人の誤検出による無駄な電力消費を低減した照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願の照明システムは、照明器具と、人検知部と、照明制御部と、領域判定部とを備える。人検知部は、照明器具による照明範囲において人の存否を検知する。照明制御部は、人検知部が人を検知すると、照明器具の光出力を非検出時よりも明るく制御する。領域判定部は、人検知部による検知範囲内の領域が人の活動領域であるか非活動領域であるかを判定し、判定結果に応じて人検知部及び照明制御部による照明器具の制御方法を変更する。そして、人検知部による人の検知に応じて照明制御部が照明器具を点灯させた後、人検知部が検知物体を人ではないと判断したことによって照明制御部が照明器具の光出力を低下させた時点より所定時間が経過するまでの間に、検知物体の検知位置付近で人検知部が再び人を検知すると、領域判定部は、人検知部によって再び人が検知された領域を活動領域と判定する。
【0008】
この照明システムにおいて、領域判定部による判定対象の領域が複数の小領域に分割され、領域判定部が各々の小領域毎に活動領域であるか非活動領域であるかを判定することも好ましい。
【0009】
この照明システムにおいて、領域判定部によって判定された活動領域及び非活動領域を記憶する記憶部を備えることも好ましい。
【0010】
この照明システムにおいて、人検知部は、照明範囲を撮像する画像センサの画像データから人の存否を検知することも好ましい。
【0011】
この照明システムにおいて、領域判定部は、活動領域と非活動領域とで人検知部による人の検知感度を異ならせることも好ましい。
【0012】
この照明システムにおいて、領域判定部は、人検出部が活動領域で人を検知した場合と、非活動領域で人を検知した場合とで、照明制御部による照明器具の制御内容を変更することも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検知物体が人ではないと判定されて照明器具の光出力が低下させられた際に再び人が検知されると、再び人が検知された領域を活動領域と設定しているので、活動領域の判定を正確に行うことができ、且つ、活動領域であるか非活動領域であるかを判定した結果に応じて人検知部及び照明制御部による照明器具の制御方法が変更されるので、人の誤検出による無駄な電力消費を低減した照明システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本実施形態の照明システムの全体構成を示すブロック図、(b)は人検知部のブロック図である。
【図2】(a)は同上が適用される照明空間の説明図、(b)は画像センサによる撮像画像の例図である。
【図3】同上の動作を説明するフローチャートである。
【図4】(a)〜(c)は同上により差分画像を生成する方法を説明する説明図である。
【図5】同上による人検知枠の設定処理の説明図である。
【図6】同上による静止判定処理の説明図である。
【図7】同上による静止判定処理の説明図である。
【図8】(a)〜(c)は同上による静止人物枠内の画像の変化を検出する方法の説明図である。
【図9】(a)〜(d)は同上による非活動領域の判定処理の説明図である。
【図10】同上による非活動領域の設定方法を説明する説明図である。
【図11】(a)〜(d)は同上による活動領域の判定処理の説明図である。
【図12】(a)(b)は同上による非活動領域の設定方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の照明システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1(a)は照明システムの概略的なブロック図、図2(a)は照明システムが適用される照明空間の説明図であり、この照明システムは照明器具1とセンサ部2と照明制御部3とを主要な構成として備えている。
【0017】
この照明システムでは、センサ部2が照明範囲において人を検知していない状態では、照明制御部3が、照明器具1を消灯させるか、又は、人検知時よりも暗い所定の調光レベルで照明器具1を点灯させている。
【0018】
照明器具1は、部屋100の天井101に設置されており、下方の照明範囲を照明する。照明器具1は、商用電源(図示せず)から電力供給を受けて動作し、照明制御部3によって点灯状態が制御されている。尚、照明器具1が備える光源は特定の種類に限定されるものではなく、蛍光ランプでもよいし、発光ダイオードでもよい。
【0019】
照明制御部3は、センサ部2による人の検知情報に基づいて照明器具1の点灯状態を制御する。例えばセンサ部2から人検知信号が入力されていない非検知状態では、照明制御部3は照明器具1を消灯させるか、又は、人検知時よりも暗い調光レベルで点灯させており、この状態を待機状態という。一方、センサ部2から人検知信号が入力される検知状態では、照明制御部3は照明器具1を全点灯させるか、又は、待機状態よりも明るい調光レベルで点灯させており、この状態を通常点灯状態という。したがって、照明範囲に人がいない待機状態では、照明器具1は消灯するか、又は、通常点灯時よりも暗い調光レベルで点灯し、照明範囲に人がいる場合は、照明器具1は全点灯するか、又は、待機状態よりも明るい調光レベルで点灯することになる。尚、照明制御部3は照明器具1と別体に設けられていてもよいし、照明器具1の器具本体1a内に収納されていてもよい。
【0020】
センサ部2は、照明器具1の器具本体1aに取り付けられ、照明器具1の照明範囲内に設けられた検知範囲A1において人の存否を検出し、人の存在を検知すると、人検知信号を照明制御部3に出力する。本実施形態ではセンサ部2が、検知範囲A1を上方から撮影した画像データをもとに人の存否を検出しており、図1(a)に示すように画像センサ21と記憶部22と演算処理部23とを主要な構成として備えている。
【0021】
画像センサ21は、例えばCCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)センサなどの半導体撮像素子を備える。画像センサ21は、天井101に設置された照明器具1に取り付けられ、照明器具1の下方の照明範囲に設けられた検知範囲A1の画像を撮像する。画像センサ21は、半導体撮像素子から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、画像データ(撮像画像)に成形した後、演算処理部23に出力する。画像センサ21は、演算処理部23からの要求に応じて検知範囲A1を撮像しており、本実施形態では例えば約30分の1秒ごとに検知範囲A1を撮像し、その画像データを演算処理部23に出力する。図2(b)は画像センサ21によって撮像された画像I1の一例であり、照明器具1の下方には2台ずつ横並びに配置された計4台の作業机50が対向して配置されており、作業机50及びその近くにいる人60を上方から見下ろしたような画像になっている。
【0022】
記憶部22は、例えばDDRAM(Double Data Rate Synchronous Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリからなり、演算処理部23により読み書きが行われる種々のデータを記憶する。記憶部22には、画像センサ21から入力される画像データを複数枚記憶可能な容量のメモリが使用されている。
【0023】
演算処理部23は、例えばDSP(Digital Signal Processor)や高度イメージプロセッサのような、演算処理を高速且つ大量に処理することが可能なプロセッサにより構成される。演算処理部23には、その演算機能によって人検知部23aと領域判定部23bが設けられている。
【0024】
領域判定部23bは、人検知部23aによる検知範囲内の領域を、人が活動する活動領域と、人が活動しないと想定される非活動領域とに判定する。また領域判定部23bは、活動領域であるか非活動領域であるかの判定結果に基づいて、人検知部23a及び照明制御部3による照明器具1の制御方法を変更する。本実施形態では、領域判定部23bは、活動領域と非活動領域とで人検知部23aによる検知感度を異なる値に設定しており、例えば活動領域における人の検知感度を、非活動領域における人の検知感度よりも高感度に設定する。
【0025】
人検知部23aは、照明器具1による照明範囲において人の存否を検知する。人検知部23aは、図1(b)のブロック図に示すように、差分画像生成部24とラベリング部25と領域解析部26と存否判定部27とで構成され、これら差分画像生成部24、ラベリング部25、領域解析部26及び存否判定部27も演算処理部23の演算機能によってそれぞれ実現されている。
【0026】
差分画像生成部24は、画像センサ21から入力される現在画像と、予め記憶部22に記憶された背景画像との差分演算を行うことによって、差分画像を生成する。ラベリング部25は、差分画像にラベリング処理を施し、同一のラベルを有する画素の集合を1つの領域として抽出する。領域解析部26は、ラベリング部25によって抽出された領域毎に、その面積や重心位置を求めたり、領域を構成する複数の画素について輝度信号値の平均や分散などの統計量を演算により求める。存否判定部27は、領域解析部26による領域毎の解析結果をもとに、ラベリング部25の抽出した領域が人か否かを判定する。存否判定部27によって人が存在すると判定された場合、演算処理部23から照明制御部3に人検知信号が出力され、照明制御部3では、非検知時よりも明るい点灯状態で照明器具1を点灯させる。また照明制御部3は、演算処理部23から人検知信号が入力された時点より所定の点灯保持時間が経過するまでの間、照明器具1を通常点灯状態で点灯させており、点灯保持時間が経過するまでの間に再び人検知信号が入力されなければ、照明器具1を待機状態に切り替える。
【0027】
本実施形態の照明システムは上記のような構成を有しており、この照明システムの動作を図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0028】
先ず画像センサ21から所定のサンプリング間隔で制御部22の差分画像生成部24に画像データが入力される(図3のステップS1)。差分画像生成部24は、画像センサ21から入力される現在画像の各画素と、予め記憶部22に記憶された背景画像の対応する画素との差分演算を行う。さらに差分画像生成部24は、画素毎に差分演算の結果を所定のしきい値で二値化して差分画像を生成し、ラベリング部25に出力する(図3のステップS2)。図4(a)は現在画像の例図、同図(b)は背景画像の例図、同図(c)は差分画像の例図であり、図4中の画素群P1,P2は机など人以外の静止物に対応した画素群であり、図4中の画素群P3は人に対応した画素群である。現在画像と背景画像の両方に存在する画素群P1,P2は背景差分によって除去され、現在画像のみに存在する画素群P3が差分画像に現れる。すなわち、差分画像生成部24は、現在画像と背景画像の差分をとっているので、現在画像と背景画像とで輝度値が変化していない画素は差分をとることで輝度信号値が「0」になる。一方、人などの移動によって現在画像と背景画像とで輝度値が変化した画素は、現在画像と背景画像の差分を求めた後に二値化することで、一定の輝度信号値を有することになる。ここで、背景画像の取得方法としては、検知範囲A1に人が確実にいない状態での画像をあるタイミングで撮像し、この画像を背景画像として常時使用する方法や、1フレーム前に撮像された画像を背景画像として逐次更新する方法がある。なお本実施形態では、画像センサ21により、検知範囲A1に人が確実にいない状態での画像をあるタイミングで撮像させ、この画像を背景画像として記憶部22に記憶させている。あるタイミングで撮影された背景画像を常時使用する場合、背景画像の撮影時には存在しなかった静止物(人以外の机や椅子などの物体)が検知範囲A1に置かれると、この静止物が人と誤検出される可能性もある。そのため、画像センサ21が1フレーム前或いは所定フレーム前のタイミングで撮影された画像を背景画像として逐次更新することも好ましく、検知範囲A1内で静止している物体を背景化することができる。
【0029】
ラベリング部25では、差分画像生成部24から差分画像が入力されると、差分画像にラベリング処理を施し、同一のラベルを有する画素の集合を1つの領域として抽出する(図3のステップS3)。
【0030】
次に領域解析部26は、ラベリング部25によって抽出された領域毎に、その面積や重心位置を求めたり、領域を構成する複数の画素について輝度信号値の平均や分散などの統計量を演算により求める(図3のステップS4)。
【0031】
領域解析部26によって領域毎に解析処理が行われると、存否判定部27が、領域解析部26による領域毎の解析結果をもとに、ラベリング部25が抽出した領域が人か否かを判定する(図3のステップS5)。例えば存否判定部27は、ラベリング部25によって抽出された領域が、予め定義された人物モデルの形状や面積と合致するか否かを判定し、人物モデルに合致した領域があれば人が存在すると判断する。なお、人の存否を判定する条件としては、差分演算により抽出された領域の特徴(面積や重心位置など)を用いてもよいし、差分演算により抽出された領域に対応する画素の輝度値やエッジなどの画像の特徴を用いてもよい。
【0032】
上述のように、存否判定部27は、ラベリング部25によって抽出された領域毎に人か否かを判定しており、人ではないと判定した場合はステップS1に戻り、人であると判定した場合、この領域を包含する人検知枠を設定する(図3のステップS6)。図5は差分画像生成部24によって生成された差分画像I2の一例であり、この差分画像I2には、人に対応した領域P4と、ノイズを検出した領域P5が存在している。存否判定部27は、各々の領域P4,P5について人か否かを判定し、人と判定した領域P4には、この領域P4を包含する矩形の人検知枠F1を設定する。ここで、人検知枠F1は、差分画像I2の水平方向(図5の左右方向)及び垂直方向(図5の上下方向)において領域P4の外周部にそれぞれ外接している。
【0033】
存否判定部27が検知範囲内に人がいると判定して人検知枠を設定すると、人検知部23aから照明制御部3へ人検知信号が出力され、照明制御部3によって照明器具1が非検知時に比べてより明るい点灯状態に制御される(図3のステップS7)。例えば、照明制御部3によって照明器具1が消灯状態から点灯状態に切り替えられるか、又は、非検知時に比べてより明るい調光状態に制御される。
【0034】
ところで、背景画像にはない静止物体が検知範囲A1内に置かれた場合に、人検知部23aによって、この静止物体(例えば作業机50に置かれたノートパソコンなど)が人と誤検知され、照明器具1が待機状態から通常点灯状態に切り替えられる場合がある。そこで、演算処理部23では、存否判定部27によって人検知枠が設定された場合、人検知枠内の検知対象が静止しているか否かの静止判定を行い、人以外の静止物体を誤検知しているか否かを判断する。ここで、演算処理部23による静止判定処理について図面を参照しながら以下に説明する。
【0035】
図6は差分画像I3内に設定された人検知枠を示し、破線の枠F11〜F14は1フレーム前に作成された人検知枠であり、実線の枠F21〜F24は今回のフレームで作成された人検知枠である。演算処理部23は、最新の人検知枠F21〜F24と1フレーム前の人検知枠F11〜F14との重なり度合いを計算し、連続する2フレームで重なり度合いが所定のしきい値を越える人検知枠は、その対応付け回数を1増やす。本実施形態では例えば30分の1秒毎に画像データが入力されるので、対応付け回数が30回になれば、その人検知枠に対応する物体が略同じ場所に約1秒間いることになる。したがって、演算処理部23では、人検知枠毎にカウントした対応付け回数を所定の静止判定閾値と比較することで、対応する物体が静止しているか否かを判定する(図3のステップS8)。
【0036】
尚、人検知枠内の検知物体が静止しているか否かを判定する方法は、人検知枠の重なり度合いから判定する方法に限定されるものではなく、以下に述べるようにテンプレートマッチングによって静止しているか否かを判定することもできる。図7に示すように、演算処理部23は、存否判定部27によって差分画像内に人検知枠が設定されると、この人検知枠の画像をテンプレートTP1として記憶し、それ以降に生成される差分画像I4内をテンプレートTP1で走査する。演算処理部23は、テンプレートTP1と差分画像I4との類似度指標を計算し、類似度指標が所定のしきい値を超えると、この人検知枠に対応する検知物体が静止していると判断し、この人検知枠の対応付け回数を1増やす。ここにおいて、テンプレートマッチングの探索範囲を差分画像I4の全画面領域にすると、探索に長時間を必要とするので、探索にかかる処理量を軽減するために、テンプレートTP1を保存した領域付近に探索範囲を絞ってもよいし、人検知枠の対応付けを行う領域のみに探索範囲を絞ってもよい。また、類似度指標を求める方法にはテンプレート内で求めた輝度平均値を用いる方法や正規化相関値を用いる方法があるが、明るさ変化の影響を考慮すると、正規化相関値を用いるほうが望ましい。
【0037】
演算処理部23は、上述のように人検知枠毎に対応付け回数を求めており、ある人検知枠の対応付け回数が静止判定閾値を超えていなければ、この人検知枠に対応する人物が動いていると判断し(ステップS8のNo)、ステップS1に戻って上記の処理を繰り返す。一方、ある人検知枠の対応付け回数が所定の静止判定閾値を超えた場合、演算処理部23は、この人検知枠に対応する人物が静止していると判断し(ステップS8のYes)、この人検知枠を静止人物枠に設定する(図3のステップS9)。
【0038】
その後、演算処理部23は、静止人物枠内の画像が1フレーム前と変化しているか否か、すなわち静止人物枠内の検知対象に動きがあるか否かを判断する(図3のステップS10)。静止人物枠内の画像に変化があれば(ステップS10のYes)、演算処理部23は静止人物枠内の人物が動いていると判断して、静止人物枠を解除し(図3のステップS11)、ステップS1に戻る。この時、照明器具1は通常点灯状態を継続する。また、静止人物枠内の画像に変化がない状態が一定時間継続すると(ステップS10,S12のYes)、演算処理部23は人以外の静止物を誤検出したと判断し、検知枠を解除する(図3のステップS13)。ここで、図8(a)は第(N−1)フレームの差分画像を、図8(b)は第Nフレームの差分画像をそれぞれ示し、両画像において検知枠F31,F32が静止人物枠として設定されているものとする。検知枠F31内の画像は第Nフレームと第(N−1)フレームとで殆ど変化が無く、類似度が高いため、演算処理部23は、検知枠F31内の人P1が静止していると判断し、検知枠F31を継続して静止人物枠に設定する。一方、検知枠F32内の画像は、第Nフレームと第(N−1)フレームとで変化しており、1フレーム前の画像と類似度が低いため、演算処理部23は、検知枠F32内の人P2が動いたと判断し、静止人物枠の設定を解除する。また図8(c)は第(N−1)フレームの差分画像の一例であり、静止人物枠F31内の人P1が定期的に動いていれば、静止人物枠の設定は解除される。一方、静止人物枠F33は人以外の静止物P3を検出した検知枠であり、静止人物枠F33内の画像には変化がないため、その状態が一定時間継続すると、演算処理部23は静止物を誤検出したと判断して静止人物枠F33の設定を解除する。
【0039】
上述のように、静止人物枠内の画像に一定時間変化がなければ、演算処理部23は検知枠を解除して照明制御部3への人検知信号の出力を停止する。照明制御部3は、人検知信号が入力されなくなっても所定の動作保持時間が経過するまで照明器具1を通常点灯状態で点灯させており、動作保持時間が経過した時点で照明器具1を通常点灯状態から待機状態に切り替える。
【0040】
ところで、静止人物枠内の人物が正しく検出されている場合でも、その人物が一定時間静止していれば、演算処理部23は、静止人物枠内の画像に一定時間変化がないことから、静止人物枠の設定を解除し、人検知信号の出力を停止する。これにより、照明制御部3には制御部2から人検知信号が入力されなくなり、動作保持時間が経過した時点で、照明制御部3が照明器具1を通常点灯状態から待機状態に切り替える。この場合、照明範囲に人がいるにもかかわらず、照明器具1が消灯或いは減光点灯するため、照明範囲にいる人物はセンサ部2によって検出されるように何らかの動作を行うものと予想される。
【0041】
そこで、演算処理部23の領域判定部23bは、照明器具1が待機状態に切り替えられてから所定時間が経過するまでの間に、静止人物枠が解除された領域付近で動きが発生するか否かを判定することによって活動領域か否かの判定を行う(図3のステップS15)。所定時間内に動きがなければ(ステップS15のNo)、領域判定部23bは、静止人物枠が解除された領域を人の活動領域ではないと判断し(図3のステップS17)、ステップS1に戻る。一方、所定時間内に動きがあれば(ステップS15のYes)、領域判定部23bは、静止人物枠が解除された領域を人の活動領域であると判断し(図3のステップS17)、ステップS1に戻る。
【0042】
尚、領域判定部23bはステップS15において動きを検出できれば活動領域、検出できなければ非活動領域と判定しているが、検知範囲を複数に分割した小領域毎に誤検知の回数を計数し、その回数がしきい値を越えた場合は非検知領域であると判定してもよい。ここで、領域判定部23bによる活動領域及び非活動領域の判定方法を図9〜図11を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
先ず、人以外の静止物を誤検知したために照明器具1が通常点灯状態で点灯した後、所定時間動きがないために検知状態が解除されて、照明器具1が待機状態に切り替えられる場合の処理を図9に基づいて説明する。
【0044】
図9(a)の画像I6に示されるように作業机50に静止物60(例えばノートパソコンなど)が置かれた場合、演算処理部23の人検知部23aは、新たに置かれた静止物61を人と誤検知し、静止物61を含む領域を人検知枠F30として設定する。また、人検知部23aが静止物61を人と誤検知したために、照明制御部3によって照明器具1が待機状態よりも明るい通常点灯状態に切り替えられる。静止物61には動きがないため、演算処理部23は、上述の静止判定処理を行って人検知枠F30を静止人物枠に設定し、その後の一定時間、静止人物枠内の画像に変化がないと判定すると、図9(b)に示すように静止人物枠F30を解除し、解除した静止人物枠F30(図9(b)に破線で示す)の位置を記憶する。演算処理部23は静止人物枠F30を解除すると人検知信号の出力を停止し、照明制御部3は所定の点灯保持時間が経過した時点で照明器具1を通常点灯状態から待機状態に切り替える(図9(c)参照)。照明器具1が待機状態に切り替わっても、静止物60が動くことはなく、演算処理部23は、待機状態に切り替わった時点から所定時間が経過するまでの間に、人検知枠F30を解除した付近で何ら動きを検出できないため、人以外の物を誤検知していたと判断する。ここで、図10に示すように判定対象の撮像範囲(画像I10の全体)は、水平方向及び垂直方向にそれぞれ等分割(例えば水平方向に5等分、垂直方向に4等分)されることによって、複数の小領域B11〜B45に分割されている。記憶部22は、各々の小領域B11〜B45毎に人以外の静止物を誤検出した回数(以下、カウント値と言う。)を記憶しており、演算処理部23は、人検知後に上述の静止判定処理を行って解除した人検知枠が存在する小領域のカウント値を1つ増分させる。例えば図9(b)に示すように作業机50に置かれた静止物60を人と誤検知した後に、静止判定処理によって静止物60を包含する人検知枠F30が解除された場合、演算処理部23の領域判定部23bは、この人検知枠F30を含む小領域B32,B33(図10参照)のカウント値を1つ増分する。そして、領域判定部23bは、各小領域B11〜B45のカウント値と所定のしきい値との高低を比較し、カウント値がしきい値を越えている小領域を非活動領域と判定する。尚、領域判定部23bが、検知範囲内の領域を非活動領域に設定する際に、より広い領域を一括して非活動領域と設定するために、画像センサ21の撮像画像を特徴が類似した複数の領域に分割(クラスタリング)しておき、非活動領域と判定されたエリアが属するクラスタリング領域を全て非活動領域に設定してもよい。ここで、画像内で特徴が類似した領域は、同じ物体を撮像した領域であると考えられるので、非活動領域と判定されたエリアが属するクラスタリング領域を一括して非活動領域と設定することで、一度の処理でより広い領域を非活動領域に設定できる。例えば図12(a)に示すように画像I11内の領域B1が非活動領域と判定された場合、領域B1の近傍で特徴が類似している領域B2(図12(b)参照)の全体が非活動領域として一括で設定されるので、非活動領域の設定を容易に行うことができる。
【0045】
領域判定部23bは、活動領域であるか非活動領域であるかを判定した結果に基づいて、人検知部23a及び照明制御部3による照明気具1の制御方法を変更する。例えば領域判定部23bは、非活動領域と判定した領域を人検知部23aのマスク領域に設定したり、非活動領域と判定した領域において静止状態を判定するためのタイムアウト時間(ステップS12の一定時間)を短く設定しており、これにより人以外のものを誤検出することによって照明器具1が通常点灯状態で長時間点灯する事態を回避できる。
【0046】
次に、人の検知によって照明器具1が通常点灯状態で点灯した後、検知された人が所定時間静止し続けたために、検知状態が解除されて照明器具が待機状態に切り替えられた場合の動作を図11に基づいて説明する。図11(a)に示すように、演算処理部23が、画像センサ21によって撮像された画像I7をもとに人60を検出すると、画像I7内で人60を包含する人検知枠F31を設定する。その後、人60が静止し続けていると、演算処理部23は、上述の静止判定処理を行って静止人物枠を設定し、その後の一定時間、静止人物枠内の画像に変化がないと判定すると、図11(b)に示すように静止人物枠F31を解除し、解除した静止人物枠F31(図11(b)に破線で示す)の位置を記憶する。演算処理部23は静止人物枠F31を解除すると人検知信号の出力を停止し、照明制御部3は所定の点灯保持時間が経過した時点で照明器具1を通常点灯状態から待機状態に切り替える(図11(c)参照)。照明範囲にいる人60は、照明器具1が待機状態に切り替えられると、センサ部2に自身を検知させることによって通常点灯状態に戻すために、何らかの動作を意図的に行う。人60が動くことによって、演算処理部23は、人60の存在を検知でき、照明制御部3に人検知信号を出力して、照明器具1を点灯させる。また照明器具1が待機状態に切り替えられた時点から所定時間が経過するまでの間に、人検知枠F31を解除した領域付近で演算処理部23が人の動きを検知した場合、領域判定部23bは、解除した人検知枠F31内で正しく人を検知していたと判断する。尚、静止判定処理によって静止物と判定された人検知枠F31において正しく人が検知されていた場合、領域判定部23bは、この人検知枠F31に対応する小領域のカウント値を1つ減らしたり、カウント値をリセットしてもよい。
【0047】
上述のように、演算処理部23は、現在画像と背景画像との差分画像を求めることによって現在画像のみに存在する物体を検出しており、現在画像のみに存在する物体が検出されると、照明器具1を待機状態から通常点灯状態に切り替える。また演算処理部23は、現在画像のみに存在する物体を検出すると、この物体が静止しているか否かを判定し、静止状態が一定時間継続すると、この検知対象は静止物体であると判定して照明器具1を通常点灯状態から待機状態に切り替える。この時、検知対象が静止物体ではなく本物の人物であれば、検知範囲にいる人物は、自身が検知範囲にいるにもかかわらず照明器具1が待機状態に切り替わったことから、センサ部2に自分自身を検出させるために、何らかの動きをすると予想される。したがって、照明器具1が待機状態に切り替わってから所定時間が経過するまでの間に、人検知枠が解除された領域付近でセンサ部2が人を検知できなければ、演算処理部23は、人検知枠が解除された領域に対応する小領域のカウント値を1つ増やす。一方、照明器具1が待機状態に切り替わってから所定時間が経過するまでの間に、人検知枠が解除された領域付近でセンサ部2が人を再び検出すると、演算処理部23は、人検知枠が解除された領域に対応する小領域のカウント値を1増やすか、リセットする。そして、演算処理部23の領域判定部23bは、各小領域B11〜B45のカウント値と所定のしきい値との高低を比較し、カウント値がしきい値を越えると、該当する小領域を非活動領域と判定する。領域判定部23bは、例えば非活動領域と判定された領域を人検知のマスク領域に設定したり、非活動領域と判定された領域において静止状態を判定するためのタイムアウト時間(ステップS12の一定時間)を短く設定しており、これにより人以外のものを誤検出したことによって照明器具1が通常点灯状態で長時間点灯してしまう事態を回避できる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の照明システムは、照明器具1と人検知部23aと照明制御部3と領域判定部23bとを備える。人検知部23aは、照明器具1による照明範囲において人の存否を検知する。照明制御部3は、人検知部23aが人を検知すると、照明器具1の光出力を非検出時よりも明るく制御する。領域判定部23bは、人検知部23aによる検知範囲内の領域が人の活動領域であるか非活動領域であるかを判定し、判定結果に応じて人検知部23a及び照明制御部3による照明器具1の制御方法を変更する。そして、人検知部23aによる人の検知に応じて照明制御部3が照明器具1を点灯させた後、人検知部23aが検知物体を人ではないと判断したことによって照明制御部3が照明器具1の光出力を低下させた時点より所定時間が経過するまでの間に、上記検知物体の検知位置付近で人検知部23aが再び人を検知すると、領域判定部23bは、人検知部23aによって再び人が検知された領域を活動領域と判定する。
【0049】
これにより、検知範囲内の人物が静止し続けていたために、人ではないと誤検出された場合でも、その人物がいた領域が非活動領域と誤判定されることはなく、活動領域として正しく判定することができる。そして、領域判定部23bは、活動領域であるか非活動領域であるかの判定結果に基づいて、人検知部23a及び照明制御部3による照明器具1の制御方法を変更しているので、活動領域における検知感度を下げることなく、非活動領域において人以外の物体を誤検出したために無駄な電力消費が発生しないように、照明器具1の制御方法を変更することができる。
【0050】
また本実施形態において、領域判定部23bによる判定対象の領域が複数の小領域に分割され、領域判定部23bが各々の小領域毎に活動領域であるか非活動領域であるかを判定することも好ましい。
【0051】
これにより、判定対象の領域を分割した小領域毎に、活動領域であるか非活動領域であるかの判定を行うことができる。
【0052】
また本実施形態において、領域判定部23bによって判定された活動領域及び非活動領域を記憶する記憶部22を備えることも好ましい。
【0053】
これにより、領域判定部23bでは、記憶部22に記憶された判定結果をもとに、人検知部23a及び照明制御部3による制御方法を変更することができる。
【0054】
また本実施形態において、人検知部23aは、照明範囲を撮像する画像センサ21の画像データから人の存否を検知することも好ましい。
【0055】
これにより、人検知部23aは、画像センサ21を用いて撮像された照明範囲の画像から人の存否を検知することができ、また画像センサ21によって撮像された照明範囲の画像を別の用途にも利用することができる。
【0056】
また本実施形態において、領域判定部23bは、活動領域と非活動領域とで人検知部23aによる人の検知感度を異ならせることも好ましい。
【0057】
これにより、活動領域及び非活動領域でそれぞれ最適な検知感度を設定することができる。例えば非活動領域における検知感度を活動領域における検知感度よりも低めに設定することで、非活動領域において人以外の物体を誤検出することによって、無駄な電力消費が発生するのを抑制できる。また活動領域における検知感度は、非活動領域の検知感度よりも高めに設定されるので、検知漏れを低減できる。
【0058】
また本実施形態において、領域判定部23aは、人検出部21aが活動領域で人を検知した場合と、非活動領域で人を検知した場合とで、照明制御部3による照明器具1の制御内容を変更することも好ましい。
【0059】
これにより、活動領域で人が検知された場合と、非活動領域で人が検知された場合とでそれぞれ最適な制御内容を設定することができる。例えば領域判定部23bは、非活動領域で人が検知された場合のタイムアウト時間を、活動領域で人が検知された場合のタイムアウト時間よりも短めに設定している。したがって、非活動領域で人以外の静止物体が検出された場合には、より短い時間で人以外の静止物体と判定でき、人以外の静止物体を誤検出したことによる無駄な電力消費を低減することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 照明器具
2 センサ部
3 照明制御部
21 画像センサ
23 制御部
23a 人検知部
23b 領域判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明器具と、
前記照明器具による照明範囲において人の存否を検知する人検知部と、
前記人検知部が人を検知すると、前記照明器具の光出力を非検出時よりも明るく制御する照明制御部と、
前記人検知部による検知範囲内の領域が人の活動領域であるか非活動領域であるかを判定し、判定結果に応じて前記人検知部及び前記照明制御部による前記照明器具の制御方法を変更する領域判定部とを備え、
前記人検知部による人の検知に応じて前記照明制御部が前記照明器具を点灯させた後、前記人検知部が検知物体を人ではないと判断したことによって前記照明制御部が前記照明器具の光出力を低下させた時点より所定時間が経過するまでの間に、前記検知物体の検知位置付近で前記人検知部が再び人を検知すると、前記領域判定部は、前記人検知部によって再び人が検知された領域を活動領域と判定することを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記領域判定部による判定対象の領域が複数の小領域に分割され、前記領域判定部が各々の前記小領域毎に活動領域であるか非活動領域であるかを判定することを特徴とする請求項1記載の照明システム。
【請求項3】
前記領域判定部によって判定された活動領域及び非活動領域を記憶する記憶部を備えることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の照明システム。
【請求項4】
前記人検知部は、前記照明範囲を撮像する画像センサの画像データから人の存否を検知することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項5】
前記領域判定部は、前記活動領域と前記非活動領域とで前記人検知部による人の検知感度を異ならせたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の照明システム。
【請求項6】
前記領域判定部は、前記人検出部が前記活動領域で人を検知した場合と、前記非活動領域で人を検知した場合とで、前記照明制御部による前記照明器具の制御内容を変更することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−4235(P2013−4235A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132433(P2011−132433)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】