説明

照明器具

【課題】照射角度を必要な角度に調整することができるとともに、器具を確実に必要な角度に固定することが可能な照明器具を提供する。
【解決手段】照明器具10は、器具本体11、角度調整部材12、アーム13、固定部材14を具備している。器具本体11は、光源11cが内部に配設され、外部にアーム軸支部11gを有する。角度調整部材12は、器具本体に設けられ、アーム軸支部を中心とした円の軌跡上に位置し、所定の間隔を有して形成された複数の係合孔12bを有する。アーム13は、器具本体のアーム軸支部に軸支され、角度調整部材の複数の係合孔に対向して形成された長孔13cを有する。固定部材14は、アームの長孔と角度調整部材の係合孔を係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照射角度を調整することが可能な照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁面や看板等の屋外用の照明として用いられ、照射方向を調整できるようにした照射角度調整機構付の投光器や照射器等の照明器具が商品化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−276487号公報
【特許文献2】特開2011−134472号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種、照明器具の照射角度調整機構は、回転板を金具で挟み込み、その摩擦で固定した構成や、回転軸を直接固定して構成されることが多い。これら構成では、固定用のボルトが緩んだ場合、角度調整部分が可動してしまい、器具本体がアームや他の構造物等に当たり器具が損傷する恐れがある。
【0005】
このため、照射角度を必要な角度に調整することができるとともに、器具を確実に必要な角度に固定することが可能な照明器具を如何にして構成するかが重要な課題となっている。
【0006】

本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、照射角度を必要な角度に調整することができるとともに、器具を確実に必要な角度に固定することが可能な照明器具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の照明器具は、器具本体、角度調整部材、アーム、固定部材を具備している。器具本体は、光源が内部に配設され、外部にアーム軸支部を有する。角度調整部材は、器具本体に設けられ、アーム軸支部を中心とした円の軌跡上に位置し、所定の間隔を有して形成された複数の係合孔を有する。アームは、器具本体のアーム軸支部に軸支され、角度調整部材の複数の係合孔に対向して形成された長孔を有する。固定部材は、アームの長孔と角度調整部材の係合孔を係合させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、照射角度を必要な角度に調整することができるとともに、器具を確実に必要な角度に固定することが可能な照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態である照明器具を示す斜視図。
【図2】同じく照明器具の角度調整機構を示す斜視図。
【図3】同じく照明器具の角度調整機構を示し、(a)は固定手段を外した状態を示す斜視図、(b)は固定手段を示す斜視図。
【図4】同じく照明器具の角度調整機構の正面図。
【図5】同じく照明器具の角度調整機構を示し、(a)は器具本体を垂直に設置した状態を示す正面図、(b)は器具本体を斜め下方に向けて設置した状態を示す正面図。
【図6】同じく照明器具の角度調整機構を示し、器具本体を斜め上方に向けて設置した状態を示す正面図。
【図7】同じく照明器具を建物の壁面を照明するために設置した状態を示す側面図。
【図8】同じく照明器具の変形例を示し、(a)は第1の変形例における角度調整機構の正面図、(b)は本(a)図のb−b線に沿う第2の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、照明器具の実施形態につき、図に従い説明する。本実施形態は、建物の壁面を照明する投光器としての照明器具を構成するもので、図1〜図6に示すように、照明器具10は、光源11cが内部に配設される器具本体11、器具本体11に設けられる角度調整部材12、器具本体11に軸支されるアーム13、アーム13と角度調整部材12を係合させる固定部材14等で構成する。
【0011】
器具本体11は、図1に示すように、アルミニウムダイキャスト等で強固な矩形箱状をなすケース体として構成され、前面側に発光部11a、後面側に電装部11bが設けられる。発光部11aは、前面を開放したケース体をなし、ケース体の底面に光源11cが配設される。光源は、本実施形態では、発光ダイオード(以下「LED」と称する)を有するLEDモジュール11cで構成され、複数個、本実施形態では、6個のLEDモジュール11cが略等間隔に配設されている。
【0012】
図中11dは、発光部11aの開放した前面に設けられた透明な強化ガラスからなる透光パネルで、LEDモジュール11cから放射された光が、透孔パネル11dを透過して外部に向けて放射される。また11eは、発光部の背面側に一体に形成された放熱フィンで、LEDモジュール11cの点灯時に発生する熱を外部に放熱させてLEDの発光効率の低下を抑制している。
【0013】
電装部11bは、後面を開放したケース状をなし、ケース内にLEDを点灯制御するための電源部および点灯装置(図示省略)が配設され、アルミニウムダイキャスト等で構成された蓋体11fによって閉塞されている。上記に構成された器具本体11の両側面には、後述するアーム13を回動可能に軸支するためのネジ孔からなるアーム軸支部11gが形成されている。
【0014】
角度調整部材12は、器具本体11の角度調整機構を構成する部材で、本実施形態では、器具本体11と別個に構成された強度の強い肉厚の鋼板からなる角度調整板12で構成される。角度調整板12は、図4に示すように、略扇状をなす形状に形成され、扇の要となる軸12aを中心とする円aの軌跡上に位置して、所定の間隔、本実施形態では、略等しい間隔を有して複数の係合孔12bが形成される。
【0015】
係合孔12bは、本実施形態では、タップ付の貫通する丸孔で14個形成した。さらに、係合孔12bの間隔ピッチは、軸12aを中心とする角度α1が約10°になる間隔ピッチで、等間隔に14個の丸孔を形成した。したがって両端に位置する係合孔12bがなす角度α2は約130°になる。換言すれば、約130°の角度範囲にわたって照射角度の調整が行えるように構成されている。
【0016】
上記に構成された角度調整板12は、器具本体11の一方の側面にねじ止めまたは溶接等の手段によって強固に取り付けられる。すなわち、角度調整板12は、軸12aを器具本体11のアーム軸支部11gと同軸となるように位置させ、さらに、扇形の角度調整板12の一辺がなす線x−xが、矩形状をなす器具本体11の縦方向の稜線y−yと略平行になるように位置させて器具本体11に固定する(図4)。角度調整板12は、アルミニウムダイキャスト等によって器具本体11と一体に形成したものであってもよい。
【0017】
アーム13は、角度調整板12とともに器具本体11の角度調整機構を構成し、かつ、器具本体11を被設置部に設置するための部材で、図1に示すように、強度の強い肉厚縦長の鋼板を略U字状に折り曲げて形成する。U字の両脚部13a、13aの先端部の中央部には、器具本体11のアーム軸支部11gに回動可能に軸支するための貫通孔からなる回動孔13bをそれぞれ形成する(図3(a))。
【0018】
アーム13の一方の脚部13aには、角度調整板12に形成された複数の係合孔12bに対向して、タップなしの長孔13cが貫通して形成される。本実施形態において、長孔13cは、図4に示すように、等間隔に形成された係合孔12bの間隔ピッチ(角度10°)を跨る(オーバーラップする)長さを有して形成した。すなわち、長孔13cは、軸12a(アーム軸支部11g)を中心とする円aの軌跡上に沿う円弧状をなし、円弧の長さl1が丸孔からなる係合孔12bの間隔ピッチ(角度10°)と略等しくなるように形成する。
【0019】
また、U字の本体部分には、図1に示すように、3個の支持孔13dを貫通させて形成する。この支持孔13dによって、アーム13が被設置部に支持されて器具本体11が設置される。
【0020】
上記に構成されたアーム13は、図1に示すように、長孔13cを形成した一方の脚部を、角度調整板12が固定された側面側に位置させてアーム13の両脚部13a、13aを器具本体11の両側面に跨らせる。そして、アーム13のそれぞれの回動孔13bを器具本体11のアーム軸支部11gに合致させ、ボルト15をネジ孔からなるアーム軸支部11gにねじ込んで固定する(図2)。ボルト15は、ワッシャー15a、バネワッシャー15bを介在させてアーム軸支部11gにねじ込むことによって、アーム13がボルト15を中心として左右に所定の角度にわたって回動ができるように固定される。これにより、円aの軌跡上にそれぞれ位置するアーム13の長孔13cと角度調整板12の係合孔12bとが合致して対向するように位置する(図4)。
【0021】
固定部材14は、アーム13と角度調整板12を係合させる部材、換言すれば、器具本体11の照射角度を必要な角度に固定するための部材で、本実施形態では、図3(b)に示すように、タップ付の係合孔12bにねじ込まれる固定ボルト14aと、ナット付の座板14bで構成する。座板14bは、一端部に固定ボルト14aの先端部分が挿入される挿入孔14b1が形成され、挿入孔14b1に合致してナット14b2が溶接されている(図2)。他端部には、ボルト15が挿入され、ボルト15によって座板14bをアーム軸支部11gに対し、回動可能に固定するための固定孔14b3が形成されている。
【0022】
座板14の挿入孔14b1は、固定孔14b3がボルト15によって図2に示すように、器具本体11のアーム軸支部11gに固定された際に(アーム13を介在させて)、挿入孔14b1が、アーム13の長孔13cに合致する位置、換言すれば、長孔13cと合致している角度調整板12の係合孔12bと合致する位置に形成する。これにより、固定ボルト14aを座板14bのナット14b2にねじ込むことによって固定ボルト14aの先端部分が、アーム13の長孔13cを貫通してタップ付の係合孔12bにねじ込むことができる。
【0023】
そして、上記に構成された器具本体11とアーム13は、固定ボルト14aをねじ込むことが可能な14個のいずれかの係合孔12bを選択することによって、器具本体11に対するアーム13の固定角度、すなわち、器具本体11の照射角度を調整することができる。本実施形態においては、係合孔12bが角度約10°の間隔ピッチで14個形成されているので、10°毎に(10°ステップで)係合孔12bを選択し、固定ボルト14aを係合孔12bにねじ込み固定することによって、器具本体11の照射角度を約130°の角度範囲にわたって調整することができる。例えば、図6に示すように、器具本体11を上方に向けて設置することも可能になる。
【0024】
さらに、本実施形態においては、選択された係合孔12bによる10°毎のそれぞれの固定位置において、さらに照射角度を微調整して固定することができる。すなわち、図4に示すように、係合孔12bが軸12a(アーム軸支部11g)を中心とする円aの軌跡上に形成され、長孔13cも同一の円aの軌跡上に沿う円弧状をなし、円弧の長さl1が丸孔からなる係合孔12bの間隔ピッチに略等しくなるように形成されている。
【0025】
このため、図5(a)示すように、長孔13cの左端と右端が、隣り合う左右の2個の係合孔12b1、12b2に合致し、いずれか一方の係合孔、本例では、左端の係合孔12b2に固定ボルト14aをねじ込むことによって固定されている。この状態で器具本体11は、略垂直方向に設置されている。
【0026】
この状態で、器具本体の傾きを微調整するために、器具本体11を図5(a)中、左方に傾け、アーム軸支部11gを中心に角度10°の範囲にわたって回動させる。これにより、角度調整板12が図中矢印A方向に回動し、図5(b)に示すように、固定ボルト14aがアームの長孔13cに沿って右方向に移動し、長孔13の右端に係止する。この状態で固定ボルト14aを係合孔12bにねじ込むことによって固定する。これにより、器具本体11を約10°の角度を有して斜め下方に傾斜させた状態に、微調整をして設置することができる。
【0027】
さらに、この微調整は、14個の全ての隣接する係合孔12bにおいて同様に、長孔13cの長さ分(角度10°の範囲)だけ、器具本体11、すなわち、角度調整板12を回動させることができる。これにより、14個の係合孔12bを順次選択し、選択された位置でそれぞれ微調整することによって、器具本体11は、約130°の角度の範囲にわたり、任意の必要な角度に調整することができる。
【0028】
そして、固定ボルト14aを係合孔12bにねじ込むことによって、器具本体11を任意の必要な角度に確実に固定することができる。この固定手段は、従来のように、回転板を摩擦で固定した構成や、回転軸を直接固定して構成ではなく、固定ボルト14aを係合孔12bにねじ込むことによって確実に固定することができる。特に、本実施形態によれば、固定ボルト14aは座板14に固定されたナット14bにねじ込まれ、座板14はボルト15によってアーム軸支部11bに固定されている。
【0029】
このため、固定ボルト14aに係る荷重、すなわち、器具本体11の荷重が固定ボルト14aから座板14さらにボルト15に伝達される。これにより、器具本体11の荷重を固定ボルト14aとボルト15に分散させることが可能になり、より一層、強固で確実に固定することが可能になる。また、万一、固定ボルト14aが多少緩んだとしても、長孔13cの長さ分、すなわち、角度10°だけ回動するだけであり、器具本体11がアームや他の構造物に当たり器具が損傷する恐れは極めて少なくなる。
【0030】
上記により、照射角度を調整することが可能な照明器具10が構成され、次のようにして建物の壁面を照明するために設置されて使用される。すなわち、図7に示すように、照明器具10は、建物20の壁面21を照明するために地面等の低い位置に設置された土台に対して、アーム13の本体部分が載置され、支持孔13dを用いボルト等によって強固に取り付けられる。アーム13は、略垂直方向に設置される。
【0031】
上記のように設置された状態で、器具本体11のアーム13に対する傾斜角度を調整して器具の照射角度の設定を行う。まず、予め係合孔12bにねじ込まれていた固定ボルト14aを係合孔12bから外す。この際、固定ボルト14aは、座板14bのナット14b2からは外さない状態にしておく。
【0032】
そして、器具本体11を、アーム軸支部11gを中心にして回動し、設定する角度に該当する係合孔12bを選択する。これにより、選択された係合孔12bとアーム13の長孔13cが合致する。この状態で、固定ボルト14aを、長孔13cを貫通させて係合孔12bにねじ込む。このねじ込みは完全に強固にねじ込まない仮止め状態にしておく。そして、器具本体11をさらに傾けて長孔13cの長さ分(角度10°)にわたって角度調整板12を回動させ角度の微調整を行う。最後に固定ボルト14aを係合孔12bに対しさらに強固にねじ込む。これにより、器具本体11がアーム13に対して所定の角度、本実施形態においては、斜め上方に向けた角度をもって確実に固定され、照明器具10の照射角度の設定が完了し、建物20の壁面21に対して照明するを行うことが可能となる。
【0033】
以上、本実施形態において、長孔13cを隣接する2個の係合孔12b1、12b2に跨らせる長さに形成したが、図8(a)に示すように、2個の係合孔を跨ぐことなく、1個半分だけ跨るように構成してもよい。これによれば角度α3の角度範囲、本実施形態では、約5°の角度範囲にわたって、微調整を行うことが可能になる。
【0034】
また、本実施形態において、アーム13と角度調整板12の固定は、固定ボルト14aをタップ付の係合孔12bにねじ込むことによって固定したが、図8(b)に示すように、係合孔12bをタップなしの孔に形成し、アーム13の長孔13cと係合孔12bを貫通させるボルト14a´とナット14b2´によって固定するように構成してもよい。本構成によれば、座板14bを省略することが可能になる。
【0035】
また、本実施形態において、角度調整機構を器具本体の片側に設けたが、大型の重量がある器具等の場合には、器具本体の両側に角度調整機構を設け、より確実な角度調整と器具の確実な固定をなすように構成してもよい。また、照明器具は、投光器に限らず、トンネル用照明器具、道路灯、防犯灯、街路灯、さらには屋内スタジオ等で使用される各種の投光器や照射器などを構成してもよい。以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の設計変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
10 照明器具
11 器具本体
11c 光源
11g アーム軸支部
12 角度調整部材
12b 係合孔
13 アーム
13c 長孔
14 固定部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源が内部に配設され、外部にアーム軸支部を有する器具本体と;
器具本体に設けられ、アーム軸支部を中心とした円の軌跡上に位置し、所定の間隔を有して形成された複数の係合孔を有する角度調整部材と;
器具本体のアーム軸支部に軸支され、角度調整部材の複数の係合孔に対向して形成された長孔を有するアームと;
アームの長孔と角度調整部材の係合孔を係合させる固定部材と;
を具備していることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記複数の係合孔は、等間隔に角度調整部材に形成し、アームの長孔を係合孔の間隔ピッチを跨る長さを有して形成したことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−97986(P2013−97986A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239163(P2011−239163)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】