説明

照明用カラーチェンジャー

【目的】 1台のモータでカラーフィルムを移動させると共に、このカラーフィルムの巻取りや巻戻しにおけるカラーフィルムの弛みや過張力の発生を防止するようにした照明用カラーチェンジャーを提供する。
【構成】 第1回転軸3を、直線状に配設した主動軸3aと従動軸3bとに分割すると共に、第1ロール5を第1,第2,第3ロール片5a,5b,5cに分割し、従動軸3bを第1ロール片5a及び第2ロール片5bに固定し、主動軸3aを第2ロール片5bに回転自在に設け、主動軸3aと第2ロール片5bとを渦巻きばね23を介して連結したことにより、第1ロールと第2ロールとの間のカラーフィルムに弛みや過張力が発生することがなく、高速でのカラーフィルムの巻取りや巻戻しを確実に達成することができる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、照明用カラーチェンジャーに関し、特に、1台のモータでカラーフィルムを移動させると共に、このカラーフィルムの巻取りや巻戻しにおけるカラーフィルムの弛みや過張力の発生を防止するための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から一般的に利用されていたこの種の照明用カラーチェンジャーとしては、図示していないが、箱状の基体内において第1回転軸と第2回転軸が平行に配設され、第1及び第2回転軸には軸線方向に延在する第1及び第2ロールが固設されている。この第1ロールには長尺状のカラーフィルムの一端が固着され、第2ロールにはこのカラーフィルムが多数巻回された後に、その他端が固着されている。なお、このカラーフィルムには、長手方向即ち移動方向に対して多数の色が区分けされるように配色されている。従って、カラーフィルムの巻取り量に応じて、第1ロールと第2ロールとの間に任意の色を出現させることができる。
【0003】
ここで、第1及び第2回転軸には、それぞれ第1及び第2サーボモータが独立して固設され、これら2台のサーボモータを適宜に駆動させて、第1及び第2回転軸を所定量だけ正転又は反転させている。すなわち、第1ロール側にカラーフィルムを巻取る場合には、第1回転軸に設けた第1サーボモータを所定時間だけ駆動させ、第2ロール側にカラーフィルムを巻取る場合には、第2回転軸に設けた第2サーボモータを所定時間だけ駆動させる。
【0004】
従って、利用者の遠隔操作により、第1サーボモータ又は第2サーボモータを適宜に制御しながら、第1ロールと第2ロールとの間に任意の色を出現させ、その色を、カラーフィルムの後方に配置したライトにより、劇場の舞台や撮影スタジオのセットに向けて投射することができる。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
従来の照明用カラーチェンジャーは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、2台の第1及び第2サーボモータにより、第1及び第2回転軸を個別的に制御しているため、装置自体が大型かつコストアップになると共に、第1及び第2ロールによるカラーフィルムの巻取りや巻戻し時に、ロール間のカラーフィルムに弛みや過張力が発生するので、カラーフィルムが損傷し易く、しかも照明効果に悪影響を与えるといった課題があった。
【0006】
本考案は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、1台のモータでカラーフィルムを移動させると共に、このカラーフィルムの巻取りや巻戻しにおけるカラーフィルムの弛みや過張力の発生を防止するようにした照明用カラーチェンジャーを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案による照明用カラーチェンジャーは、基体の両端に配設した第1及び第2ロールを回転させる第1及び第2回転軸と、前記第1及び第2ロールに巻かれて巻取り及び巻戻しがなされるカラーフィルムとを備え、このカラーフィルムに後方からライトを当てることで任意の色を前方に投射するように構成した照明用カラーチェンジャーにおいて、 前記第1回転軸を、直線状に配設した主動軸と従動軸とに分割すると共に、前記第1ロールを第1,第2,第3ロール片に分割し、前記従動軸を前記第1ロール片及び第2ロール片に固定し、前記主動軸を前記第2ロール片に回転自在に設け、前記主動軸と前記第2ロール片とを渦巻きばねを介して連結した構成である。
【0008】
さらに詳細には、前記第2ロール片内に形成した中空部に前記渦巻きばねを配設し、前記中空部内に粘性流体を封入した構成である。
【0009】
【作用】
本考案による照明用カラーチェンジャーにおいては、第1及び第2ロールに巻回されたカラーフィルムを移動させる場合、1個のサーボモータを介して第1回転軸と第2回転軸とを同期させながら同一方向に回転させる。この時、第1回転軸の主導軸にはサーボモータによる直接的な回転力が発生し、その回転力は渦巻きばねを介して第1ロールに伝達される。そして、回転中において、渦巻きばねに蓄積された回転エネルギにより、第1回転軸の回転方向即ちカラーフィルムの送り方向と反対の方向に第1ロールを回転させようとする反力が発生し、その結果、第1ロールと第2ロールとの間のカラーフィルムに常に所定の張力を加えながら、カラーフィルムを適確に送り続けることができる。
【0010】
【実施例】
以下、図面と共に本考案による照明用カラーチェンジャーの好適な実施例について詳細に説明する。
【0011】
図1において符号1で示すものは箱状の基体であり、この基体1の中央には円形の開口部2が形成され、基体1の両端には、この開口部2を挟むように第1回転軸3及び第2回転軸4が平行に配設されている。前記第1及び第2回転軸3,4の中央には第1及び第2ロール5,6が配設され、前記第2ロール6はピン7を介して第2回転軸4に固設されている。なお、第1ロール5は、第1回転軸3の一端に位置する第1ロール片5aと、第1回転軸3の中央に位置する第2ロール片5bと、第1回転軸3の他端に位置する第3ロール片5cとからなる3分割で構成されていると共に、長尺状のカラーフィルム8の一端8aの幅方向における両端及び中央がそれぞれ支持されている。
【0012】
さらに、前記第2ロール6は、第2回転軸4の一端に位置する第1ロール片6aと、第2回転軸4の中央に位置する第2ロール片6bと、第2回転軸4の他端に位置する第3ロール片6cとからなる3分割で構成されていると共に、前記カラーフィルム8の他端8bの幅方向における両端及び中央がそれぞれ支持されている。なお、このカラーフィルム8の一端は第1ロール5に固着され、他端は第2ロール6に固着され、第1及び第2ロール5,6からカラーフィルム8が外れないようになっている。
【0013】
また、第1及び第2回転軸3,4の各両端は、前記基体1に設けられた一対の軸受9a,9b及び10a,10bに回転自在に保持され、各軸受9a,9b及び10a,10bは、基体1から立設させた支持部材11a,11b及び12a,12bに固定されている(図2参照)。なお、このカラーフィルム8には、長手方向即ち移動方向に対して多数の色が区分けされるように配色されている。従って、カラーフィルム8の巻取り量に応じて、前記開口2に対応するカラーフィルム8の色を任意に出現させることができる。
【0014】
前記第1及び第2回転軸3,4の各軸受9b,10bを貫通した外方位置には第1及び第2プーリ12,13が固設され、この第1プーリ12と第2プーリ13は、図3に示すようにタイミングベルト14を介して連結され、そして、このタイミングベルト14の駆動力を適確に第1及び第2プーリ12,13に伝達させるために、タイミングベルト14に絞り用のアイドラローラ15を付勢させている。また、前記基体1内にはエンコーダ付きDCサーボモータ16が配設され、このDCサーボモータ16に設けられた駆動プーリ17と第2回転軸4の第2プーリ13とは駆動ベルト18を介して連結されている。
【0015】
従って、このDCサーボモータ16を駆動させることにより、駆動ベルト18を介して第2回転軸4が回転すると共に、この回転力がタイミングベルト14を介して第1回転軸3にも伝達される。その結果、第1回転軸3と第2回転軸4を、同一方向に同期して回転させることができる。なお、第1回転軸3と第2回転軸4とを同期させるにあたって、第1プーリ12の径と第2プーリ13の径を同一にすることが好ましい。
【0016】
次に、前記第1回転軸3は、前記第1プーリ12を有する主動軸3aと、この主動軸3aに対して一直線状に配設した従動軸3bとに分割されている。さらに、図4に示すように、前記従動軸3bは、連結ピン19を介して円筒状の第2ロール片5bの一端5bAに固定されている。この第2ロール片5bの他端側5bBからは、中空部20を貫通して前記主動軸3aが挿入され、この主動軸3aは、前記一端5bAに対して回転自在に配設される必要があるので、中空部20の両端に配設した第1及び第2軸受21,22を介してこの第2ロール片5bに回転自在に設けられている。
【0017】
前記、中空部20内には、渦巻きばね(例えばゼンマイばね)23が配設されていると共に、油等からなる粘性流体24が封入され、更に、この渦巻きばね23の一端23aは主動軸3aに固定され、その他端23bは前記一端5bAに固定されている。
前記渦巻きばね23はカラーフィルムを固着後、主動軸3aをA方向に回しプリテンションをかける。これにより、カラーフィルムの巻き太りによるカラーフィルムのの弛を防ぐ事が可能となる。
【0018】
なお、主動軸3aを矢印Aと反対の矢印B方向に回転させた場合でも、カラーフィルム8にはテンションがかかり、カラーフィルム8の弛みを防止できる。また、前記渦巻きばね23は、ゼンマイばねのように平面的に渦を巻いたものに限らず、竹の子状に巻いたものを利用しても初期の目的を達成することができる。
【0019】
更に、基体1内には、ライトから受ける熱でカラーフィルム8が変形することを防止するための冷却ファン25と、カラーフィルム8に付された原点記号を読み取る原点出しフォトセンサ26と、DCサーボモータ16等を制御する基板27と、電源(図示せず)に接続させるコネクタ28と、遠隔操作による信号を基板27に送り込むコネクタ29とを備えている。
【0020】
次に、前述の構成に基づいて、本考案の照明用カラーチェンジャーの動作を説明する。
DCサーボモータ16を駆動させ、第1及び第2ロール5,6によってカラーフィルム8を巻きながら、原点出しフォトセンサ26によってカラーフィルム8を初期位置で停止させ、この位置を原点(基準)としてカラーフィルム8の配色毎に番地が決定される。次に、遠隔操作により、カラーフィルム8の任意の番地を選択した後、DCサーボモータ16を駆動させると、第1及び第2回転軸3,4が所定量だけ同一方向に回転し、カラーフィルム8を、例えば矢印C方向に移動させる。この時、カラーフィルム8は、第2ロール6に対して所定量だけ巻き付けられると共に、第2ロール5から所定量だけ送り出される。なお、矢印D方向にカラーフィルム8を移動させる場合は、前述とは反対になる。
【0021】
そして、カラーフィルム8の移動中において、渦巻きばね23に蓄積された回転エネルギにより、第1回転軸3の回転方向即ちカラーフィルム8の送り方向と反対の方向に第1ロール5を回転させようとする反力が発生し、その結果、第1ロール5と第2ロール6との間のカラーフィルム8に常に適度な張力が加えられつつ回転移動が行われる。その後、カラーフィルム8が所定の番地に達すると同時にDCサーボモータ16を停止させる。この時、第1回転軸3の主動軸3aの回転及び第2回転軸4の回転も即座に停止する結果、渦巻きばね23を介在させた第1ロール5はその慣性力で第1回転軸3と同一の方向に空転しようとする。
【0022】
しかしながら、カラーフィルム8の弛みの原因となる第1ロール5の急激な空転力は、第2ロール片5bの中空部20に封入された粘性流体24の緩衝力により比較的緩やかな空転力に転換される。その一方で、この空転力は渦巻きばね23の反力で打ち消され続け、カラーフィルム8に張力を発生させつつ、第1ロール5と第2ロール6との間、すなわち開口部2の前方に所望の色を出現させる。
そして、その色を、開口部2の後方に配置したライト(図示せず)により、劇場の舞台や撮影スタジオのセットに向けて投射することができる。なお、前述の粘性流体24は、カラーフィルム8の高速送りに対応させて、第1回転軸3を高速で回転させた場合に特に有効である。
【0023】
【考案の効果】
本考案による照明用カラーチェンジャーは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、第1回転軸を直線状に配設した主動軸と従動軸とに分割すると共に第1ロールを第1〜第3ロール片に3分割し、従動軸を第1ロール片に固定すると共に主動軸と第2ロール片とを渦巻きばねを介して連結したことにより、第1及び第2ロールによるカラーフィルムの巻取りや巻戻し時に、反力作用を有する第2ロール片による張力の作用により第1ロールと第2ロールとの間のカラーフィルムに弛みや過張力が発生することがなく、従って、カラーフィルムが損傷し難く、照明効果に悪影響を与えることがない。しかも、高速でのカラーフィルムの巻取りや巻戻しを確実に達成することができるといった優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の照明用カラーチェンジャーの前面の蓋を取った状態を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の底面図である。
【図4】本考案の照明用カラーチェンジャーの要部を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基体
3 第1回転軸
3a 主動軸
3b 従動軸
4 第2回転軸
5 第1ロール
5a 第1ロール片
5b 第2ロール片
5c 第3ロール片
6 第2ロール
8 カラーフィルム
23 渦巻きばね

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 基体(1)の両端に配設した第1及び第2ロール(5,6)を回転させる第1及び第2回転軸(3,4)と、前記第1及び第2ロール(5,6)に巻かれて巻取り及び巻戻しがなされるカラーフィルム(8)とを備え、このカラーフィルム(8)に後方からライトを当てることで任意の色を前方に投射するように構成した照明用カラーチェンジャーにおいて、前記第1回転軸(3)を、直線状に配設した主動軸(3a)と従動軸(3b)とに分割すると共に、前記第1ロール(5)を第1,第2,第3ロール片(5a,5b,5c)に分割し、前記従動軸(3b)を前記第1ロール片(5a)及び第2ロール片(5b)に固定し、前記主動軸(3a)を前記第2ロール片(5b)に回転自在に設け、前記主動軸(3a)と前記第2ロール片(5b)とを渦巻きばね(23)を介して連結したことを特徴とする照明用カラーチェンジャー。
【請求項2】 前記第2ロール片(5b)内に形成した中空部(20)に前記渦巻きばね(23)を配設し、前記中空部(20)内に粘性流体(24)を封入したことを特徴とする請求項1記載の照明用カラーチェンジャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【登録番号】第3011204号
【登録日】平成7年(1995)3月8日
【発行日】平成7年(1995)5月23日
【考案の名称】照明用カラーチェンジャー
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−14138
【出願日】平成6年(1994)11月16日
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【出願人】(390032573)丸茂電機株式会社 (17)