説明

照明装置

【課題】 照射効率に優れるとともに、構成が簡単で低コストで精度良く傷や異物を検出できるLED照明装置を提供することにある。
【解決手段】
発光部8の前方に、プリズムシート1、および集光レンズ7を配設し、その際、発光部8の放射特性と要求される出射特性に合わせ、特定方向に2つのピークを持った出射特性を示す出射光が照射面に重畳するようプリズムシート1の形状と頂角を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明装置に関し、更に詳しくは、画像処理検査装置に組み込むのに有用なLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品等の検査工程では、搬送中の検査対象物に、該搬送方向と直行するライン状照射光を当て、その反射光や透過光をCCDカメラなどでとらえる、いわゆる画像処理検査装置が使用されている。この装置は、検査対象物中の傷や異物から発せられる散乱光を捉えて、前記傷や異物を検出している。しかし、照射光と同じ向きの傷や異物からは、散乱光は殆ど発せられない。仮に微小の散乱光が発せられても、このような散乱光は、直進光により打ち消されてしまう。従って、この装置では、散乱光が捉えにくい、すなわち傷や異物が検出されない場合があるという基本的問題があった。
【0003】
そこで、本発明者は、散乱発光部の前方に、中空柱状体の並列集合体を多段に積層し、該拡散光のうち、特定方向の光(斜光)のみ出射・抽出する構造とした光抽出部品を配した照明装置を提案した。(特許文献1参照)
【0004】
しかし、上記の提案では、光抽出部品が直進光に近い光は、取り込めず、直進光を有効に使用していないので、必然的に効率が悪いという問題があった。
また、左右両方向の斜光を得るため、中空柱状体を多段化する必要があり、スペースが必要で製作コストが掛かるという問題、さらには、光抽出部品が光源装置の出射側に露出しているので、埃等が付着し汚れ易いという問題もあった。
【0005】
これに対して、最近では、プリズムシートを使用し、特定方向の斜光を得る検査用光源装置が提案されている。(特許文献2参照)
【0006】
しかしながら、この提案の光源装置においては、左右両方向の斜光を得るため、傾斜方向の異なる複数の鋸歯プリズムシートを互い違いに配置した多段構造にする必要がありプリズムシート自体の構造が複雑になるとともに製作コストが掛かるという問題があった。
また、同提案では、LEDからなる発光部を2つ設け、左右2方向別々の放射光を得る必要があるので、自ずと発光部の構成も複雑になるとともに、プリズムシート同様、発光部の製作コストが掛かるという問題があった。
さらには、この提案の光源装置では、上述したように、多段構造のプリズムシートでは出射光も多段化され出射光が不均一になり易いという懸念もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2008−118983号
【特許文献2】特開2008−304306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は照射効率に優れるとともに、構成が簡単で低コストで精度良く傷や異物を検出できるLED照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、LED光源の放射特性に適合する特定のプリズムシートを配することにより、上記の課題を一挙に解決するに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明において、以下のような顕著な効果が奏される。
1. LED光源の放射特性に合わせた特定のプリズムシートにより均一でしかも特
定範囲の出射特性を持った出射光が高精度で得られる。
2.左右対称のプリズムシートを採用したので、従来の中空柱状体では捨てていた直進光に近い入射光も出射光として有効に活用できるので照射効率が良い。
3. 従来の光抽出部品や鋸歯状プリズムを使用した場合のように光源からの左右2
方向の入射光に対応するための多段構造が不要なので、構造が簡略化されるとともに小型化できる。
4. 発光部の前方にレンズを配置することにより、光を集光し、より高光量の出射
光が得られる。また、レンズと拡散板を併用することにより、より高光量でムラのない出射光が得られる。
5. プリズムシートの凹凸が形成された面が露出しないので、プリズムシートが汚
れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る照明装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の一部破断斜視図である。
【図3】本発明で使用するプリズムシートの全体形状を示す斜視図である。
【図4】LED光源の一般的な放射特性を示す図である。
【図5】本発明の照明装置の出射特性を示す図である。
【図6】本発明で使用するプリズムシートにより1方向の入射光から2方向の出射光(斜光)が得られることを説明する図である。
【図7】本発明で使用するプリズムシートの別の態様を示す側面図である。
【図8】本発明の照明装置の別の態様を示す一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を、プリズム部が左右対称な斜面からなる左右対称型プリズムシートを採用した態様につき、添付図面を参照しながら説明する。
図1において、1はプリズムシート(以下、プリズムシート1とする。)、2、3は固定板、4は右側面板、5は左側面板である。以下、図2〜図4により、本発明の部材について詳述する。
【0013】
図2は、図1に向かって前方の固定板2の右半分と右側面板4を取り除いた際の内部状態を示す。該図で、7はレンズ、8はLED素子、そして、9はLEDを載置・配列する基板である。この態様では、LED8をライン状に横一列に配列して発光部とし、その放射光の進行方向に沿って、レンズ7、プリズムシート1が配置されている。このとき、プリズムシート1のプリズム部の稜線は同シートの長手方向と直交し、プリズム部はLED側に面している。また各部品は、その特性に応じて所望の間隔で配置してもよい。また、LEDはライン状以外にも、面状に配置したり、ライン状に配列したLEDからの出射光を導光板により面状に発光させたりしてもよい。また、発光部の発熱量が大きくなる場合には、放熱フィンを配置するなど、適宜、放熱手段を設けるとよい。
【0014】
先ず、本発明では、プリズムシート面の法線方向に対して左右対称な2方向にピークをもつ出射光が得られるが、特徴的なのは、この出射光が同一ライン上を照射する点にある。
これを実現するため、本発明では特定形状のプリズムシート1を使用した点にある。
図3には、本発明で使用するプリズムシート1の全体像が示されている。
この態様では、プリズムシート1のプリズム部1dは頂角θを挟んで平坦な2つの左右対称な斜面1aおよび1bで構成され、その2斜面から形成される稜線は同シートの長手方向と直交する幅方向と平行にある間隔で連続的に並んでいる。
詳細は後述するが、従来の1枚の鋸状プリズムが斜面の片側しか利用できないのに対して本発明のプリズムシート1では1枚で異なる2つの斜面を同時に利用でき、しかも、左右両方向の入射光がプリズムシート1の長手方向に沿った同一直線上に出射し、後述する文献2のように出射光がプリズムシート1の幅方向において左右互い違いの出射とはならないので均一で高精度な左右両方向の斜光が得られる。
【0015】
これに対して、文献2の従来方法では右斜面と左斜面の鋸状プリズムをプリズムシート1の幅方向に交互に配置した多段構造となっているので構造が複雑化するだけでなく、カメラの視野範囲内において検査対象物のミクロな照射範囲では左右2方向の斜光が、本発明のように照射面で重畳することなく、どちらかしか照射されないので、左右両方向の照射とは異なる照射条件となり場合によっては、帯状の縞模様が見えるなどの問題が発生する。これを避けるために視野範囲を狭めれば左右どちらかの照射範囲しか検出しなくなるため光が有効に使えないという問題も発生する。更に左右の斜光が検査対象物上で重なるように集光した場合は、照明と検査対象物の距離の設定がシビアになるなどの問題も発生する。
【0016】
さらに、本発明で特徴的なのは、プリズムシート1の頂角θを調整することで、要求される2方向の出射角度を得ることができることにある。またプリズムシートの透過効率を上げるため、言い換えれば反射による戻り光を少なくするために適する放射分布特性をもったLEDを選定したり、レンズを用いてLEDの放射分布特性を最適化したりすると良い。
【0017】
ここで、図6により上述したプリズムシート1に入射したLED発光部8の1方向の斜光から左右2方向の斜光が得られることを詳細に説明する。
同図ではプリズムシート1の長手方向中央を中心線として、発光部8の放射特性により直進光(a)と入射角度が異なる(b)および(c)がプリズムシート1の左斜面1aと右斜面1bにそれぞれ入射してから出射するまでの様子がスネルの法則に従って記載されている。
先ず直進光(a)は、プリズムシート1の出射端面からおのおの左方向の斜光Aと右方向の斜光Bの左右2方向の斜光となって出射する。
同様にして、(b)で示す入射光は左方向の斜光Cと右方向の斜光Dとなって出射する。一方(c)で示す入射光はプリズムシート1の右斜面1bに入射した光は、かろうじて屈折して出射光Eとなって出射する。
もう一方の左斜面1bに入射した光は、全反射光Fとなってプリズムシート1から出射しなくなり透過効率を悪くする要因となっている。
また、図4で示したようにLEDの一般的な放射特性は直進する光の成分を多く含み、放射角度が大きくなるほど光の成分が少なくなる。従って、プリズムシート1から出射される斜光のピークは、おのずとLEDからの直進光が斜光に変換される左方向の斜光Aと右方向の斜光Bと一致することになる。
それゆえ、本発明では、照射効率を最大とすべく、上記(c)のような全反射を生じない範囲内でプリズムシート1の頂角θとLEDの放射特性を設定している。
【0018】
上記の説明では、本発明では、1方向の光が2方向に変換されることを説明するため、プリズムシート1の左半分側に入射する発光部8からの左方向の斜光で説明したが、プリズムシート1の右半分側に入射する発光部8からの右方向の光も同様にして左右2方向の斜光に変換される。
従って、実際のプリズムシート1では、図4で示した発光部8の放射特性によりこれらが合成されるので、図5に示す2箇所にピークを有する出射特性が得られるのである。
【0019】
以下、図4〜図6によりLEDの放射特性と本発明の照明装置の出射特性との関連性につき、更に詳しく説明する。
LEDの放射特性は一般的には放射角が0度を中心(ピーク)とし、左右0度〜60度までの間で正規分布に近い放射特性となっている。
一方、本発明の照明装置で得ようとしている出射光の出射特性は図5に示すように、例えば左右両側25度近辺に2つのピークを有する出射特性である。
この出射特性を得つつ、尚且つ、全反射を生じさせることなく最大の出射効率を得るためには図3に示すプリズムシート1の頂角θはスネルの法則により計算すると90度近辺に設定すればよい。
【0020】
上記の説明では、照明装置の出射光の出射特性を図5に示すように左右両側25度近辺に2つのピークを示す出射特性としたが、これは一例であって、一般的に照射対象物により要求される出射特性は変化する。
この要求に応えるためには25度の場合と同様にしてプリズムシート1の頂角θをスネルの法則により算出して設定すれば良い。
【0021】
ここで、照明装置の出射特性のピーク値を5度〜70度とした場合にはプリズムシート1の頂角θは20度〜160度とする必要がある。
次に、ピッチpについては、大き過ぎると光量のムラが出るので10μm〜5mmが好ましい範囲であり、その中でも特に好ましい範囲は20μm〜100μmである。
厚さtは、あまり余り厚いと透過ロスが増え、薄過ぎると、プリズム部を形成しにくくなったり、撓んだり、あるいは強度が低下するので30μm〜5mmが好ましい範囲である。
【0022】
なお、プリズムを構成する材質は、色および表面状態も含めて、透過性に優れ、光を反射しないものであればよく、アクリル、ポリカーボネイト、ポリエステル、エポキシ等が使用可能であるが、その中でも、アクリルやポリエステルが特に好ましい。
【0023】
なお、上記の説明では、単層のプリズムシート1について説明したが、必ずしも1枚(1層)のプリズムシートである必要は無く、図7に示すように、基材1c上に基材とは別の材料からなるプリズム部1dが形成された多層プリズムシートを使用しても良い。この際、基材1cとプリズム部1dの屈折率の関係では 基材の屈折率>プリズム部の屈折率であることが望ましい。但し、屈折率差が大きすぎると全反射が生じるので0.4以内であることが好ましい。
【0024】
次に、本発明のその余の構成要件について触れる。発光部は、標準的な光量が得られるLEDや高輝度タイプ等、市販されている各種仕様のものから構成され、光量ムラを少なくするためにLEDは高密度実装が好ましい。ライン照明の場合、レンズ7は発光部から拡散される光をライン状に整形する機能を持つものであればよく、小型化、軽量化の観点から、リニアフレネルレンズが好ましく用いられる。
なお、図8に示す本発明の照明装置の別の態様においては、レンズ7とプリズムシート1との間に拡散板6を挿入した態様が示されているが、拡散板6は、LED間にみられる光量低下現象を軽減したり、LED同士の光量バラツキを少なくしたりするためのもので、ディフューザーとして公知のものから適宜選択される。
また、ここでは、リニアフレネルレンズについて詳細は割愛するが、リニアフレネルレンズはプリズムシートの長手方向と直交する方向に集光するだけであり長手方向の出射角度には影響しない。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
白色で発光面がφ5mmのパワー型LED8を27個用いて、幅20mm、長さ200mm、厚さ1.6mmのガラスエポキシ製のLED取付け基板9にライン状一列に配置した。そして、LED8から20mmの間隔で該LEDに平行にアクリル製リニアフレネルレンズ7を配置した。このリニアフレネルレンズから10mmの間隔で該レンズに平行にプリズムシート1を配置した。
【0026】
プリズムシート1は、幅25mm、長さ200mmの左右対称な2平面から構成され、プリズム部1cの頂角θが90°、ピッチpが50μm、厚さ30μm、屈折率1.49のアクリル製で、基材1dが厚さ125μm、屈折率1.66のポリエステル製の2層構造のプリズムシートを使用した。この際、プリズムシート1のプリズム部1cをLED8側に向け基材1dを照射面側に向けて配置した。
【0027】
なお、発光部であるパワー型LED8の放射特性は図4に示すような放射角が0度を中心(ピーク)とし、左右それぞれ18度でピークの半値となるような正規分布に近い放射特性のものを使用した。
【0028】
ついで、発光部(LED8)、フレネルレンズ7、およびプリズムシート1を、黒アルマイト処理を施したアルミ製の筐体にセットし、照明装置を作成した。
この結果、図5に示すような、左右25度近辺に2つのピークを有し、左右5度〜70度に渡る出射分布特性を示す均一な照明装置が実現できた。
【0029】
(実施例2)
発光部(LED8)、フレネルレンズ7および発光部であるパワー型LED8の放射特性は実施例1と同一とし、出射光の出射特性を左右両側45度近辺に2つのピークを有した出射特性とした。この場合には、プリズムシート1の頂角θは48度に設定した。プリズムシート1の幅、長さ、厚さ、屈折率、材質は実施例1と同一とした。さらに、フレネルレンズ7、筐体についても実施例1と同一とした。
この場合においても、左右45度近辺に2つのピークを有し、実施例1の場合より多少照射分布範囲が狭い35度〜75度に渡る分布特性を示す照明装置が実現できた。
【0030】
上記の説明では、左右対称な2平面(斜面)からなるプリズムシート1について説明したが、本発明の範囲内であれば、要求される出射特性に応じて、左右非対称としたり、平面でなく曲面あるいは平面と曲面の複合化したりする等の各種の変形態様が可能である。
さらに、光源の放射特性についても0度を中心(ピーク)とし、左右それぞれ0度〜60度の正規分布に近い放射特性に限定して説明したが、本発明の照明装置は、これに限らず、左右アンバランスな放射特性を有する光源あるいは正規分布でない放射特性等色々な放射特性を有した光源に対しても応用可能であることを付記しておく。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の照明装置は、簡易且つ経済的な構造で照射効率が最適となるような斜光が得られるので、傷や異物の検出のみならず、顕微鏡用、商品展示用、屋内照明用あるいは医療用の照明装置としても使用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 プリズムシート
1a プリズムシートの左斜面
1b プリズムシートの右斜面
1c 基材
1d プリズム部
2、3 固定板
4 右側面版
5 左側面板
6 拡散板
7 レンズ
8 LED
9 基板
θ プリズムシートの頂角
p プリズムシートのピッチ
t プリズムシートの厚さ












【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の放射角を有するLED発光部、該発光部の前方に、プリズムシートを配置した照明装置であって、該プリズムシートに入射したLED光から、特定方向に複数のピークを持った出射特性を示す出射光が照射面に重畳するようにしたことを特徴とした照明装置。
【請求項2】
該プリズムシートの頂角および該LED発光部の放射角に基づいて1方向の光から2方向の斜光を得る範囲に設定されていることを特徴とした請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
該特定の方向の複数のピークが左右対称の2方向である請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
該出射光の出射角が5度〜70度である請求項1〜3のいずれかに記載の照明装置
【請求項5】
該プリズムシートの頂角が20度〜160度の左右対称型プリズムである請求項1〜4のいずれかに記載の照明装置。
【請求項6】
該プリズムシートのピッチが10μm〜5mmである請求項1〜5のいずれかに記載の照明装置。
【請求項7】
該プリズムシートの厚さが30μm〜5mmである請求項1〜6のいずれかに記載の照明装置。
【請求項8】
該プリズムシートが基材とプリズム部が別体である2層構造である請求項1〜7のいずれかに記載の照明装置。
【請求項9】
該基材とプリズム部との屈折率の差が0.4以内である請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
該発光部と平行に少なくとも1つの拡散板を具備する請求項1〜9のいずれかに記載の照明装置。
【請求項11】
該発光部と平行に少なくとも1つの集光レンズを具備する請求項1〜10のいずれかに記載の照明装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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