説明

熱交換システム

【課題】熱交換効率が高く、施工の労力やコストを節減することが出来る熱交換システムの提案。
【解決手段】配管系Laと、当該配管系を水中に浸漬する貯水設備150を備え、前記配管系Laは内部に熱媒が流過して貯水設備中の水と熱交換をする機能を有して構成されており、前記熱媒は二酸化炭素であり、二酸化炭素の気化熱と貯水設備内の水とで熱交換しており、二酸化炭素の気化熱と貯水設備内の水とで熱交換するために、前記配管系における貯水設備を出た領域を流れる二酸化炭素の温度が5℃〜40℃に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中から熱を回収し、及び/又は、水中に熱を排出して、空調、給湯その他の熱的負荷に利用する熱交換技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内では、地中の温度は一年を通じて約15℃程度であり、日本国内における冬場の気温は15℃よりも遥かに低温であり、夏場の気温は15℃よりも遥かに高温である。
このことから、例えば空調、給湯その他の熱的負荷に対して、係る温度差を有効利用することが考えられる。
そのため、発明者は地熱を回収して利用する技術について、研究を重ねた。
【0003】
従来技術において、地熱の回収(或いは、地中への排熱)は、地中に埋設された配管中に、公知の液相熱媒(ブライン)を流過せしめ、当該液相熱媒と地熱とで熱交換(いわゆる「顕熱−顕熱熱交換」)を行なっている。
しかし、熱媒が地熱と熱交換を行なうために必要な面積を確保するために、冷媒を流過させる配管径が大きくなってしまう。
また、例えば空調機器が適切に作動するだけの熱量を回収するためには、非常に長い配管を地中の深い領域まで埋設しなければならない。
そして、大径の配管を地中深い領域まで埋設するために、多大なコストが必要になってしまうという問題が存在する。
【0004】
その他の従来技術として、例えば、地下水を熱媒体として利用して、地下において蓄熱する技術も提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)では、竪穴井戸を穿孔する必要があり、蓄熱量が多くなると竪穴の深度を増加しなくてはならないので、上述した問題点を解決することは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−38507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、熱交換効率が高く、施工のための労力やコストを節減することが出来る熱交換システムの提案を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、種々研究の結果、熱媒(或いは冷媒)として二酸化炭素(CO)を用いた場合には、地熱を利用するよりも、暖房運転時には水中から熱媒に熱を回収し、冷房運転時には水中に熱媒の熱を排出する方が、熱交換効率が向上することを発見した。そして、熱媒(或いは冷媒)である二酸化炭素(CO)の温度が5℃〜40℃であると、熱交換効率が極めて高くなることを見出した。
本発明は係る知見に基づいて提案された。
【0008】
本発明の熱交換システムは、配管系(La、9)と、当該配管系(La、9)を水中に浸漬する貯水設備(水タンク150、貯水池GH)を備え、前記配管系(La、9)は内部に熱媒が流過して貯水設備(150、GH)中の水と熱交換をする機能を有して構成されており、当該配管系(La、9)は(例えば、空調負荷3や給湯負荷8を介装した)圧縮式空調機(第1の熱媒ラインLb、室外機1、室内機2、コンプレッサ4、減圧弁V3、四方弁V4を備えた圧縮式空調機)が接続された熱交換器(例えば、熱的負荷が圧縮式空調機であれば室外機1)を介装しており、前記熱媒は二酸化炭素であり、二酸化炭素の気化熱(或いは、凝縮熱)と貯水設備(150、GH)内の水とで熱交換しており(冷房時は二酸化炭素の凝縮熱を貯水設備内の水に投入し、暖房時は二酸化炭素の気化熱を貯水設備内の水から奪い)、二酸化炭素の気化熱(或いは、凝縮熱)と貯水設備(150、GH)内の水とで熱交換するために、前記配管系(La、9)における貯水設備(水タンク150、貯水池GH)を出た領域を流れる二酸化炭素の温度が5℃〜40℃に設定されていることを特徴としている。
【0009】
ここで、前記配管系(La、9)は二重管(9)で構成されており、内管(91)を液相の二酸化炭素が流れ、外管(92)を気相の二酸化炭素が流れる様に構成することが出来る。もちろん、前記配管系(La、9)を単管で構成しても良い。
本発明において、前記配管系(La、9)における貯水設備(水タンク150、貯水池GH)を出た領域を流れる二酸化炭素の温度(5℃〜40℃)は、貯水設備内の水温に概略等しい。
当該二酸化炭素の温度は、前記配管系(La、9)における二酸化炭素の圧力に対応している。そして、前記二酸化炭素の温度が低温過ぎ(5℃未満)、或いは、前記二酸化炭素の温度が高温過ぎる(40℃よりも高温)と、熱交換効率が著しく低下してしまう。
そして、貯水設備(水タンク150、貯水池GH)を出た領域を流れる二酸化炭素の温度としては、圧縮して圧力を上げても二酸化炭素が液化しなくなる温度である臨界点(31.1℃)近傍であることが望ましい。
【0010】
本発明において、冷房運転を行う場合には、配管系(La、9)の貯水設備(150、GH)へ入る領域を流れる二酸化炭素の温度(図26(A)、図28でプロット「○」で示す温度:図4において温度センサ7で計測される温度)と、貯水設備(150、GH)内の水温(図26(A)、図28で点線の特性曲線で示す温度:図4において温度センサTW1で計測される温度)の温度差が60℃以下であることが好ましい。
【0011】
或いは、本発明において、暖房運転を行う場合には、貯水設備(150、GH)内の水温(図27(A)で点線の特性曲線で示す温度:図3において温度センサTW1で計測される温度)と、配管系(La、9)の貯水設備(150、GH)へ入る領域を流れる二酸化炭素の温度(図27(A)でプロット「○」で示す温度:図3において温度センサ6で計測される温度)との温度差が30℃以下であることが好ましい。
【0012】
また本発明において、前記配管系(La、9D)は、複数系統に分岐しているのが好ましい。
或いは、前記配管系(La、9E、9F)は、螺旋形に配置されているのが好ましい。
【0013】
本発明の実施に際して、前記貯水設備としては、いわゆる水タンク(150)や貯水池(GH)によって構成することが出来る。
また、熱媒が流れている配管系(La、9)が浸漬する程度の水深を有する暗渠や溝(或いは開渠)により、前記貯水設備を構成することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
上述する構成を具備する本発明によれば、熱媒として二酸化炭素を使用しており、二酸化炭素の気化熱(或いは、凝縮熱)と、貯水設備(水タンク150、貯水池GH)内の水が保有する顕熱とを熱交換する。すなわち、貯水設備(水タンク150、貯水池GH)内の水が保有する熱量を回収するに際しては、液相の二酸化炭素が前記水から気化熱を回収し、貯水設備内の水に熱を排出する場合には、気相の二酸化炭素が貯水設備内の水中(G)に凝縮熱を排出して凝縮する。
換言すれば、二酸化炭素で構成された熱媒の潜熱と、貯水設備内の水の顕熱とが、いわゆる「潜熱−顕熱熱交換」を行なう。
ここで、「潜熱−顕熱熱交換」は、従来のいわゆる「顕熱−顕熱熱交換」に比較して、単位量あたりの熱媒が多量の熱を回収或いは排出することが出来るため、熱交換効率が大幅に向上する。
【0015】
また、本発明によれば、貯水設備(150)を出た領域を流れる二酸化炭素の温度が5℃〜40℃に設定されており、二酸化炭素を圧縮して圧力を上げても二酸化炭素が液化しなくなる温度である臨界点(31.1℃)近傍の温度に設定されている。後述するように、発明者の実験によれば、貯水設備(水タンク150、貯水池GH)を出た領域を流れる二酸化炭素の温度が臨界点(31.1℃)近傍であれば、二酸化炭素と水との熱交換効率が向上する。
ここで、貯水設備を出た領域を流れる二酸化炭素の温度が高温過ぎる場合(40℃よりも高温の場合)には、冷房時において熱交換効率が低下してしまうことが、後述する発明者の実験から明らかである。
一方、貯水設備を出た領域を流れる二酸化炭素の温度が低温過ぎる場合(5℃よりも低温の場合)には、前記配管系(La、9)内の熱媒の圧力が低圧になり、熱媒(二酸化炭素)を自然循環させる場合には不都合となり得る。
【0016】
それに加えて、本発明では熱媒(冷媒)として二酸化炭素を用いており、二酸化炭素は、従来技術で用いられているブラインに比較して、熱容量が大きい。
そのため、本発明によれば、熱媒が貯水設備内の水から熱量を効率的に回収し、或いは、効率的に排出することが出来るので、熱媒が流れる配管系(La、9)を短く、細くすることができる。また、熱媒が流れる配管(La、9)を設置するための労力及びコストを大幅に削減することが出来る。
【0017】
ここで、熱媒にブラインを使用し且つ熱媒と地熱で熱交換を行なっている従来技術の場合には、ブラインが流れる地中配管を、基礎杭に沿って配置するか、或いは、基礎杭の中に当該地中配管を配置しなければならず、基礎杭施工に際して、余分なコストの発生を惹起している。
また、ブラインが流れる地中配管を地中杭近傍に配置しない場合には、当該地中配管を埋設するための井戸を掘削しなければならず、そのためのコストが発生してしまう。
これに対して本発明では、地中(G)に配管系(La、9)を埋設する必要が無く、且つ、当該配管系(La、9)を短く、細くすることができるので、配管系埋設に伴う従来技術における労力及びコストを、大幅に削減することができる。
【0018】
さらに本発明において、熱媒が流れる配管系(La)を二重管(9)で構成している場合には、例えば貯水設備内の水が保有する熱量を回収する場合(暖房運転)には、熱交換器(例えば、室外機1)から送られてきた液相の二酸化炭素が二重管(9)の内管(91)を降下する。ここで、液相の二酸化炭素は気相の二酸化炭素に比較して比重が大きいため、液相の二酸化炭素はその質量により、下方へ落下する。
一方、液相の二酸化炭素が貯水設備内の水から気化熱を回収して気化すると、気相の二酸化炭素は、液相の二酸化炭素に比較して比重が小さく、熱交換器(例えば、室外機1)に向かって、二重管(9)の外管(92)を上昇する。
そのため、外部動力を設けなくても、液相の二酸化炭素と気相の二酸化炭素は、二重管内を流過する。
【0019】
本発明において、貯水設備内の配管系(9D)を複数系統設ければ、貯水設備内の水が保有する熱量を効率的に回収し、貯水設備内の水に熱を排出することが出来る。
ここで、貯水設備内の配管系を螺旋形(9E、9F)に配置すれば、円周方向長さは直径の3倍なので、掘削深さが従来技術の1/3程度で済む。
【0020】
本発明において、冷房運転を行う場合に、配管系(La、9)の貯水設備(150、GH)へ入る領域を流れる二酸化炭素の温度(図26(A)、図28でプロット「○」で示す温度:図4において温度センサ7で計測される温度)と、貯水設備(150、GH)内の水温(図26(A)、図28で点線の特性曲線で示す温度:図4において温度センサTW1で計測される温度)の温度差を60℃以下にすれば、冷房効率を低下させることなく、冷房運転を行うことが出来る。
そのことは、発明者の実験により確認されている。
【0021】
或いは、本発明において、暖房運転を行う場合には、貯水設備(150、GH)内の水温(図27(A)で点線の特性曲線で示す温度:図3において温度センサTW1で計測される温度)と、配管系(La、9)の貯水設備(150、GH)へ入る領域を流れる二酸化炭素の温度(図27(A)でプロット「○」で示す温度:図3において温度センサ6で計測される温度)との温度差が30℃以下にすれば、暖房効率を低下させることなく、暖房運転を行うことが出来る。
これについても、発明者の実験により確認されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態の概要を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態における冷房・暖房を切替える制御を示したフローチャート図である。
【図3】図1において、暖房運転を行う場合の熱媒の流れを示す図である。
【図4】図1において、冷房運転を行う場合の熱媒の流れを示す図である。
【図5】配管を二重管にした場合に、暖房運転時の熱媒の流れを示す部分断面図である。
【図6】配管を二重管にした場合に、冷房運転時の熱媒の流れを示す部分断面図である。
【図7】二重管の下端部の構造を示すブロック図である。
【図8】図7において、暖房運転を行う場合を示す図である。
【図9】図7において、冷房運転を行う場合を示す図である。
【図10】二重管上端部を示すブロック図である。
【図11】二重管上端部の変形例を示すブロック図である。
【図12】二重管の第1変形例を示す横断面図である。
【図13】二重管の第2変形例を示す縦断面図である。
【図14】第1実施形態における制御を説明するブロック図である。
【図15】図14における制御を示すフローチャートである。
【図16】第1実施形態の変形例を示す図である。
【図17】本発明の第2実施形態の要部を示すブロック図である。
【図18】本発明の第3実施形態の要部を示すブロック図である。
【図19】第3実施形態における施工手順を示すブロック図である。
【図20】図19に連続する施工手順を示すブロック図である。
【図21】図20に連続する施工手順を示すブロック図である。
【図22】本発明の第4実施形態の要部を示すブロック図である。
【図23】本発明の第5実施形態の要部を示すブロック図である。
【図24】本発明の第6実施形態の要部を示すブロック図である。
【図25】実験例で用いた実験装置を示すブロック図である。
【図26】冷房時の実験結果を示す特性図である。
【図27】暖房時の実験結果を示す特性図である。
【図28】図26における運転条件を変更した場合の冷房時の実験結果を示す特性図である。
【図29】第1実施形態における制御を説明するブロック図である。
【図30】図29における制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態では、熱交換システムの一例として、空調システムが例示されている。
換言すれば、図示の実施形態では、熱的負荷として、例えば、空調機3が接続されている。
【0024】
図1〜図16は、本発明の第1実施形態(各種変形例を含む)を示している。
ここで、図1、図3、図4は、動作の説明を理解し易くするため、水タンクに浸漬された配管(La)の一部を実際とは異なった構成として示している。水タンクに浸漬された配管(La)における構成については、後述する。
なお、図1では冷暖房切替制御の制御系(コントロールユニット50等)を図示しているが、図3、図4では当該制御系は図示を省略している。
最初に図1を参照して、第1実施形態に概要を説明する。
【0025】
図1において、全体を符号100で示す空調システム(熱交換システム)は、第1の熱交換器(以下、「室外機」と記載)1、第2の熱交換器(以下、「室内機」と記載)2、熱的負荷である空調機3(温水床暖房等も含む)、貯水設備である水タンク150、水タンク150に浸漬された配管系La、第1の熱媒ラインLb、第2の熱媒ラインLcを有している。
【0026】
水タンク150に浸漬された配管系Laは、第1の熱交換器1、ポンプ5、開閉バルブV1、V2、温度センサ6、7を介装している。そして、配管系La内には、熱媒である液相二酸化炭素或いは気相二酸化炭素(以下、二酸化炭素を「CO」と記載する)が流れている。
配管系Laは、ラインLa1〜La5を有している。
水タンク150内の水温を計測するため、水タンク150には温度センサ(水温センサ)TW1が配置されている。
【0027】
ラインLa1は、ポンプ5の吐出口5oとバルブV1を接続している。
ラインLa2は、バルブV1と室外機1の接続口11とを接続している。ラインLa2において、バルブV1近傍には分岐点B1が設けられ、接続口11近傍には温度センサ6が介装されている。
ラインLa3は、室外機1の接続口12とバルブV2とを接続している。ラインLa3において、バルブV2近傍には分岐点B2が設けられ、接続口12近傍には温度センサ7が介装されている。
ラインLa4は、バルブV2とポンプ5の吸入口5iとを接続している。
ラインLa5は、分岐点B1と分岐点B2を接続して、ポンプ5をバイパスするバイパスラインである。
【0028】
図1では、配管系LaのラインLa2及びラインLa3の室外機1側の一部を除き、配管系Laは水タンク150内の水Wに浸漬されている。水タンク150内の水Wに浸漬された配管系Laの構成については、図5〜図13を参照して後述する。
【0029】
図1において、第1の熱媒ラインLbは、室外機1、室内機2、コンプレッサ4、減圧弁V3、四方弁V4を介装して、圧縮式空調機を構成している。そして、熱媒ラインLb内には、熱媒である1次ブライン(例えばフロンR134)が流れる。
第1の熱媒ラインLbは、ラインLb1〜Lb5を有している。
【0030】
ラインLb1は、コンプレッサ4の吐出口4oと四方弁V4のポートVp1を接続している。
ラインLb2は、四方弁V4のポートVp2と室内機2の接続口21とを接続している。
ラインLb3は、室内機2の接続口22と室外機1の接続口13とを接続している。ラインLb3には、減圧弁V3が介装されている。
ラインLb4は、室外機1の接続口14と四方弁V4のポートVp3を接続している。
ラインLb5は、四方弁V4のポートVp4とコンプレッサ4の吸入口4iとを接続している。
【0031】
第2の熱媒ラインLcは、室内機2、空調機3を介装している。熱媒ラインLc内を、熱媒である2次ブライン(例えば水)が流れている。
第2の熱媒ラインLcは、ラインLc1とラインLc2を有している。
ラインLc1は、空調機3の接続口31と室内機2の接続口23を接続している。ラインLc2は、室内機2の接続口24と空調機3の接続口32とを接続している。
【0032】
図1で示す様に、熱交換システム100は、制御手段であるコントロールユニット50を備えている。コントロールユニット50は、制御信号ラインSoを介して、コンプレッサ4、ポンプ5、開閉弁V1、V2と接続されている。
【0033】
次に図2を参照して、図1の空調機3を運転する際の、冷房・暖房の切替制御について説明する。
図2のステップS1では、自動制御或いはマニュアル操作により、コントロールユニット50を備えた図示しない制御盤を操作して、空調機3を作動させる。
ステップS2では、自動制御或いはマニュアル操作により、暖房運転を行うか、或いは、冷房運転を行なうかを決定し、決定された運転を行う。
【0034】
暖房運転を実行するのであれば(ステップS2で「暖房」)、コントロールユニット50により、水タンク150に浸漬された配管系Laの開閉バルブV1、V2を閉鎖し、配管系Laに介装されたポンプ5を停止する(ステップS3)。
そしてステップS4に進み、四方弁V4を暖房側に切替える。四方弁V4が暖房側に切替えられると、四方弁V4のポートVp1とポートVp2が連通し、ポートVp3とポートVp4が連通する(図3参照)。
【0035】
一方、冷房運転を実行するのであれば(ステップS2で「冷房」)、コントロールユニット50により、配管系Laに介装された開閉バルブV1、V2を開放し、配管系Laに介装したポンプ5を作動させる(ステップS5)。
そして、ステップS6に進み、四方弁V4を冷房側に切替える。四方弁V4が冷房側に切替えられると、四方弁V4のポートVp1とポートVp3が連通し、ポートVp2とポートVp4が連通する(図4参照)。
【0036】
ステップS4、或いはステップS6が完了するとステップS7に進み、コントロールユニット50は、第1の熱媒ラインLbに介装されたコンプレッサ4を作動して、暖房運転或いは冷房運転を実行して、ステップS8に進む。
ステップS8では、コントロールユニット50は暖房運転或いは冷房運転の終了操作が行われた否かを判断する。終了操作が行われたのであれば(ステップS8がYES)、制御を終了する。
一方、終了操作が行なわれていなければ(ステップS8がNO)、ステップS2まで戻り、ステップS2以降を繰り返す。
【0037】
図3を参照して、暖房運転を行う場合について説明する。
図3で示す暖房運転時には、前述したように、配管系Laに介装された開閉バルブV1、V2は閉鎖し、配管系Laに介装したポンプ5が停止する。
そして、第1の熱媒ラインLbに介装された四方弁V4が暖房側に切り替わり、四方弁V4のポートVp1とポートVp2が連通し、ポートVp3とポートVp4が連通する。
そして、コンプレッサ4が作動して、熱媒(例えば、フロンR134)が圧縮されて高温高圧の気相フロンとなって、コンプレッサ4の吐出口4oから吐出される。
【0038】
コンプレッサ4から吐出された高温高圧の気相フロンは、ラインLb1、四方弁V4のポートVp1、ポートVp2、ラインLb2を経由して、室内機2の第1の接続口21から室内機2の熱交換部2hに流入する。
室内機2の熱交換部2h内で高温高圧の気相フロンは、第2の熱媒ラインLcを流れる熱媒(空調機3からラインLc1を介して室内機2に流入した熱媒:例えば水)と熱交換を行う。室内機2における熱交換により、熱媒ラインLcを流れる水(熱媒)は暖められ、高温高圧の気相フロンは気化熱を失って凝縮し、高圧の液相フロンとなる。
室内機2で温められた水は、ラインLc2から空調機3に送られ、空調機3における図示しないラジエータで放熱して、空調機3を設置した空間の暖房を実行する。図示しないラジエータで放熱した後、熱媒である水は、再びラインLc1経由で室内機2に送られる。
【0039】
一方、室内機2において凝縮した高圧液相フロンは、室内機2の接続口22からラインLb3を経由して、室外機1の接続口13から室外機1内の熱交換部1hに流入する。高圧液相フロンがラインLb3を流過する際に、減圧弁V3で減圧されて、低圧液相フロンとなる。
室外機1の熱交換部1hにおいて、低圧の液相フロンは、水タンク150に浸漬された配管系Laを流れる気相COと熱交換を行なう。そして、気相COの凝縮熱を低圧液相フロンに投入するため、配管系Laを流れる気相COは凝縮して、液相COとなる。すなわち、熱交換部1hにおいて、低圧液相フロンと気相COが潜熱である気化熱を気相COの凝縮熱で熱交換して、いわゆる「潜熱−潜熱熱交換」を行なう。その結果、低圧液相フロンは気化して、低圧気相フロンとなる。
室外機1で気化した低圧気相フロンは、室外機1の接続口14、ラインLb4、四方弁V4のポートVp3、Vp4、ラインLb5を経由して、コンプレッサ4の流入口4iに流入する。そして、コンプレッサ4で圧縮されて、さらに高温高圧の気相フロンとなり、吐出口4oから吐出される。
【0040】
一方、室外機1で凝縮した液相COは、室外機1の接続口11から排出され、ラインLa2を流過して、その自重により下降する。ラインLa2を流過する際には、液相COは、水タンク150内の水Wによって気化熱が投入され、気相COに相変化する。
暖房運転時には開閉弁V1、V2が閉塞しているため、ラインLa2を流過するCOは、分岐点B1からバイパスLa5を流れ、分岐点B2からラインLa3に流入する。
【0041】
ラインLa3に流入するCOは水タンク150内の水Wの保有する熱が十分に投入されて気化している。
ここで、室外機1から排出される液相COは、気相COに比して比重が大きい。そのため、ラインLa3内の気相COは、液相COに押し出されるようにラインLa3内を上昇する。そのため、暖房運転時には、CO搬送用ポンプ5を作動させる必要がない。
ラインLa3内を上昇した気相COは、接続口12から室外機1内に流入する。そして、上述した様に、低圧気相フロンに凝縮熱を投入する。
【0042】
次に、図4を参照して、冷房運転を行う場合について説明する。
図4の冷房運転時には、前述したように、配管系Laに介装された開閉バルブV1、V2を開放し、同時に配管系Laに介装したポンプ5を作動する。
配管系Laでは、ポンプ5で昇圧された液相COは、吐出口5o、ラインLa1、開閉弁V1、ラインLa2を上昇する。そして、接続口11を経由して室外機1内の熱交換部1hに流入する。
【0043】
室外機1では、液相COは、コンプレッサ4の吐出口4oから吐出した高圧気相フロンと気化熱を交換する。気化熱を投入された液相COは気相COとなり、接続口12、ラインLa3、開閉弁V2、ラインLa4経由でポンプ5の吸入口5iに流入する。
ここで、ラインLa3には、ポンプ5の吸入口5iの負圧が作用するので、室外機1で気化した気相COは、ラインLa3を水タンク150内に向かって降下する。
気相COは、ラインLa3を降下する間に水タンク150内の水Wへ凝縮熱を捨てて凝縮し、液相COとなる。そして、ポンプ5の吸入口5iの負圧により、液相COはラインLa5に分岐することなく、全量がラインLa4を流れ、ポンプ5の吸入口5iに吸い込まれる。
【0044】
冷房運転に際しては、第1の熱媒ラインLbに介装された四方弁V4は冷房側に切り替わり、四方弁V4のポートVp1とポートVp3が連通し、ポートVp2とポートVp4が連通する。
コンプレッサ4が起動して、熱媒であるフロンR134が圧縮されて高温高圧の気相フロンとして吐出口4oから吐出される。
【0045】
コンプレッサ4から吐出された高温高圧の気相フロンは、ラインLb1、四方弁V4のポートVp1、ポートVp3及びラインLb4を経由して、室外機1の接続口14から室外機1の熱交換部1hに流入する。
室外機1の熱交換部1h内で高温高圧の気相フロンは、配管系LaのラインLa2から接続口11に流入した液相COに凝縮熱を投入し(熱交換を行ない)、凝縮して、高圧の液相フロンとなる。その際に、配管系Laの液相COは気化する。
【0046】
室外機1内で凝縮した高圧の液相フロンは、接続口13からラインLb3に排出され、ラインLb3に介装された減圧弁V3によって減圧されて、低圧の液相フロンとなる。低圧液相フロンは、接続口22から室内機2の熱交換部2hに流入する。
熱交換部2h内では、第1熱媒ラインLbを流過する低圧液相フロンは、第2熱媒ラインLcを流過する水(熱煤)と熱交換を行ない、気化熱が投入されて低圧の気相フロンとなる。その際に、第2熱媒ラインLcを流過する水は、第1熱媒ラインLbを流過するフロンに熱を投入した分だけ、降温する。
換言すると、室内機2では、第2熱媒ラインLcを流過する水(熱媒)の顕熱と、第1熱媒ラインLbを流過するフロンの潜熱とが熱交換される(顕熱−潜熱熱交換)。
【0047】
室内機2の接続口23から排出された冷水は、空調機3の接続口31から空調機3内に流入して、空調機が設置された空間を冷房する。冷媒(水)は、空調機3内で室内空気を冷やして、接続口32からラインLc2経由で室内機2の接続口24に送られる。
一方、室内機2内で気化した低圧気相フロンは、室内機2の接続口21、ラインLb2、四方弁V4のポートVp2、Vp4、ラインLb5を経由して、コンプレッサ4の吸入口4iから吸い込まれる。そして、コンプレッサ4で圧縮されて、高圧気相フロンとして吐出口4oから吐出される。
【0048】
図3で示す暖房運転の場合、配管系Laを流れるCOは、ポンプ5を稼動しなくても、水タンク150に浸漬された領域を含んで良好に循環した。
それに対して図4で示す冷房運転の場合は、上述した通り、配管系Laを流れるCOは、ポンプ5を稼動しなければ、配管系La内を循環しない。
係るポンプ5及びラインLa1、La4、La5については、図7〜図9を参照して後述する。
ここで、図3で示す暖房運転においても、図4で示す冷房運転においても、室外機1では、配管系Laを流れるCOと第1熱媒ラインLbを流れるフロンとが気化熱を熱交換して、いわゆる「潜熱−潜熱交換」を行うので、大量の熱量が交換されて、効率が高くなる。
【0049】
図1、図3、図4では、熱媒が流れる水タンク150内の配管系Laを、往復する経路が別体に構成されたU字管状により構成しているが、図示の実施形態では、係る水タンク150内の配管を二重管で構成しても良い。
係る二重管については、図5〜図12を参照して説明する。
図5において、配管系Laを構成する二重管9は、内管91と外管92とで構成されている。
図5で示す様に、暖房時(図3参照)においては、室外機1から送られてきた液相COが二重管9の内管91を降下する。
【0050】
液相COは気相COに比較して比重が大きいため、その重量により、下方へ落下する。
液相COが水タンク150内の水から気化熱を投入されると、気化して気相COとなる。そして、気相COは液相COに比較して比重が小さいので、二重管9の外管92を上昇して、室外機1に向かう。
すなわち、図3の暖房時には、水タンク150内の水W中に送るべき液相COは内管91を自重により下方へ落下し、水タンク150内の水W中から戻る気相COは外管92を上昇するので、二重配管9中を熱媒であるCOが流れるための動力を外部から供給する必要がない。
【0051】
図4を参照して説明した冷房時には、図6で示すように、室外機1から送られる気相COが、二重管9の外管92を下降する。そして、気相のCOが気化熱を水タンク150内の水Wに投入して凝縮した液相のCOは、室外機1に向かって、二重管9の内管91を上昇する。
ここで、冷房時には暖房時とは異なり、比重の小さい気相COを下降させ、比重の小さい液相COを上昇させるため、動力が必要となる。
【0052】
そのため、図7で示すように、二重管9の外管92の底部に第1の開閉弁Vb1を設け、その先にCO循環用のポンプ5を設けている。
そして、内管91の下端には第2の開閉弁Vb2を取り付けている。ここで、第2の開閉弁Vb2を開放すると内管91の先端が外管92に連通し、第2の開閉弁Vb2を閉鎖すると内管91の先端が閉塞する。
ポンプ5の吐出口と内管91の底部近傍がライン93で接続されており、ライン93には第3の開閉弁Vb3が介装されている。
【0053】
暖房時には、図8で示すように、第1の開閉弁Vb1及び第3の開閉弁Vb3を閉塞し、第2の開閉弁Vb2を開放する。
上述したように、暖房時においては、内管91から下降した液相COは、水タンク150内の水Wと熱交換して気化熱が投入されて気相COとなる。そして、気相COは第2の開閉弁Vb2を介して外管92の底部近傍に流入し、外管92の底部から外管92を上昇する。ここで、気相COと液相COが混在して、いわゆる「気相2相流」となって外管92に流入したとしても、水タンク150内の水Wと熱交換して、完全に気相COとなって室外機1側へ上昇する。
【0054】
図示されていないが、液相COが水タンク150内の水W中で気化しない場合に、気化を促進する機構(例えば、加熱機構)を設けることが可能である。
【0055】
冷房時には、図9で示すように、内管91先端の第2の開閉弁Vb2を閉塞し、第1の開閉弁Vb1及び第3の開閉弁Vb3を開放して、ポンプ5を作動させる。
ポンプ5を作動することにより、外管92内に負圧が作用するので、比重が小さい気相のCOが下降する。
外管92を下降してきた気相COは、下降途中で、水タンク150内に気化熱を排出して凝縮される。そして、液相COとしてポンプ5に吸引される。ポンプ5から吐出された液相COは、ライン93、第3の開閉弁Vb3を経由して、内管91から室外機1に圧送される。
【0056】
図5〜図9を参照して説明したように、冷房時と暖房時とでは、室外機1から出る熱媒と室外機1に入る熱媒が、二重管9の内管91を流れるのか、二重管9の外管92を流れるのかが相違する。
図10は、二重管9の室外機側端部(上端部)における配管の構成を模式的に示している。
図10において、二重管9における内管91の上端は、図1〜図3で示すラインLa2が接続されており、外管92の上端は、図1〜図3で示すラインLa3が接続されている。
【0057】
なお、冷房時と暖房時において、配管系Laを流れるCOと第1熱媒ラインLbを流れるフロンの流れる方向が、図1〜図3で示すのとは相違する場合が存在する。
そのような場合に対応するために、図11で示す様に、配管系La側に4つのバルブVa1〜Va4を介装し、ラインLa2、ラインLa3が、内管92、外管93の何れにも連通可能に構成することも可能である。
【0058】
図11では、室外機1の接続口11に連通したラインLa2と、室外機1の接続口12に連通したラインLa3が、外管92に連通している。ラインLa2には開閉弁Va1が介装され、ラインLa3には開閉弁Va2が介装されている。
ラインLa2の分岐点Ba2からラインLa6が分岐しており、内管91に連通している。また、ラインLa3の分岐点Ba3からラインLa7が分岐しており、内管91に連通している。
ラインLa6には開閉弁Va3が介装され、ラインLa7には開閉弁Va4が介装されている。
【0059】
図5〜図11を参照して説明した二重管9の第1変形例が、図12で示されている。
図12の第1変形例では、二重管9Aの外管92Aが、長手方向(中心線CL方向)について、凹凸が形成されている。係る凹凸を形成することにより、表面積を増大させ、熱の交換効率を高めている。
図示はされていないが、二重管9Aの内管91Aについても、長手方向について凹凸が形成されていても良い。
【0060】
図13は、二重管9の第2変形例が示されている。
図13の第2変形例では、二重管9Bの外管92Bが、円周方向について凹凸を設け、以って、表面積を増大させ、熱の交換効率を高めている。
係る第2変形例において、図示はされていないが、二重管9Bの内管91Bに、円周方向の凹凸を形成しても良い。
さらに、二重管9の変形例として、図示はされていないが、二重管の外管(或いは、外管及び内管)に、フィンを設けることも可能である。
【0061】
第1実施形態によれば、熱媒としてCOを使用しており、COの気化熱(凝縮熱)を、水タンク150内の水との熱交換により熱媒に投入し、或いは、熱媒から水タンク150内の水に排出している。そして、CO熱媒の潜熱と、水タンク150内の水Wの顕熱とで、いわゆる「潜熱−顕熱熱交換」を行なう。
ここで、「潜熱−顕熱熱交換」は、「顕熱−顕熱熱交換」に比較して、単位量の熱媒当たり多量の熱を回収或いは排出することが出来るので、熱効率が良好となる。
【0062】
また、COは、従来技術で用いられているブラインに比較して、熱容量が大きい。
そのため、第1実施形態よれば、熱媒が水タンク150内の水が保有する熱量を効率的に回収し、或いは、水タンク150内の水Wに熱を効率的に排出することが出来るので、水タンク150内の水Wに浸漬される配管系La(二重管9)を短くして、細くすることができる。
そのため、水タンク150内の水Wに配管系La(二重管9)を浸漬させる際に、地中深い領域まで掘削する必要が無く、配管埋設のために多大なスペースを必要としない。
【0063】
熱媒に液相のブラインを使用した従来の地熱を利用する技術の場合には、液相ブラインが流れる地中配管系を基礎杭に沿って配置するか、或いは、基礎杭の中に当該地中配管を配置しなければならず、基礎杭施工に際して、余分なコストの発生を惹起している。
また、ブラインが流れる地中配管を地中杭近傍に配置しない場合には、当該地中配管を埋設するための井戸を地中深い領域まで掘削しなければならず、そのためのコストが発生してしまう。
第1実施形態によれば、水タンク150内の水Wに浸漬させる配管系La(二重管9)を短く且つ細くすることができるので、上述した様なコストが発生しない。
【0064】
第1実施形態では、水タンク150内の水Wに浸漬させる配管系Laを二重管9で構成している。
上述したように、暖房運転時には、比重の大きい液相COが二重管9の内管91を降下し、水タンク150内の水が保有する熱量(気化熱)が投入されて気化した気相COは二重管9の外管92を上昇するので、配管系La内を熱媒であるCOが循環するに際して、外部動力を必要としない。
したがって、暖房時の運転コストが軽減できる。
【0065】
図14は、第1実施形態における制御を示している。
発明者の研究及び実験によれば、水タンク150から出た配管系内の熱媒(CO)の温度が5℃〜40℃であれば、暖房効率或いは冷房効率が最も向上することが判明している。
貯水設備を出た領域を流れる二酸化炭素の温度が40℃よりも高温の場合には、冷房時において熱交換効率が低下してしまう。一方、貯水設備を出た領域を流れる二酸化炭素の温度が5℃よりも低温の場合には、前記配管系La内の熱媒の圧力が低圧になり、熱倍である二酸化炭素を自然循環させる場合には、二酸化炭素が配管系La内を循環し難くなる。
【0066】
室外機1から、水タンク150内の水Wに送られるCOの温度は、その時点におけるCOの温度(圧力)と、システム全体における熱媒COの量に依存する。
そのため、図14では、室外機1から、水タンク150内の水Wに送られるCOの温度(圧力)に応答して、水タンク150から出た配管系内の熱媒(CO)の温度が5℃〜40℃になる様に、システム全体のCOの量を制御する構成を示している。
図14において、CO量は、CO供給源10からの流入経路(CO供給ライン)Lcに介装された流量調整弁Vcの開度と、水タンク150内の配管系La9に接続された排出系統Leに介装された排出弁Va(流量調整弁としての機能を有している)の開度により、制御されている。
【0067】
図14においても、室外機1と水タンク150内の配管系La9とは、配管La(La20、La30)によって閉回路に構成されている。
なお、図14では、水タンク150の水中に浸漬されたCO配管系La9は、二重管ではなく単管で構成されており、U字状管として表現されている。
図14において、配管LaはラインLa20、ラインLa30で構成されている。そして、ラインLa20は、接続箇所Pa2と室外機1の接続口11とを接続し、ラインLa30は室外機1の接続口12と接続箇所Pa3とを接続している。換言すれば、接続箇所Pa2で配管La20と配管La9が接続され、接続箇所Pa3で配管La9と配管La30が接続されている。
【0068】
ラインLa20は排出弁Va(流量調整弁)を介装している。
また、ラインLa20において、室外機1と排出弁Vaとの間の領域には、CO供給ラインLcが接続されており、CO供給ラインLcはCO供給源10に連通している。
CO供給ラインLcにはCO供給量調節弁Vcが介装されており、CO供給量調節弁Vcの開度を制御することにより、配管系9aを循環するCOの供給量が調節される。
【0069】
ラインLa20において、排出弁Vaと配管La9における接続箇所Pa2との間の領域には、温度センサ6(或いは圧力センサ40)が介装されている。
ここで、図14において、温度センサ6(或いは圧力センサ40)はラインLa20に接続されているが、実際の機器においては、ラインLa20とラインLa30の内、熱媒であるCOが室外機1から流出する側のラインに介装される。
そして、仮に暖房運転と冷房運転とで、熱媒であるCOが室外機1に流入する側のラインが切り替わるのであれば、温度センサ6(或いは圧力センサ4)は、ラインLa20とラインLa30の双方に介装されるのが好ましい。
【0070】
図14では、制御手段であるコントロールユニット50Aを備えている。
コントロールユニット50Aは、入力信号ラインSiを介して温度センサ6及び圧力センサ40と接続されている。
またコントロールユニット50Aは、制御信号ラインSoを介して排出弁Va及びCO供給量調節弁Vcと接続されている。
【0071】
次に、主として図15を参照して、図14をも併せて参照しつつ、CO供給量の制御について説明する。
図15において、ステップS11では、温度センサ6によってラインLa20を流れるCO(例えば、暖房時であれば液相CO)温度を計測し、或いは、圧力センサ40によってラインLa20を流れるCO圧力を計測する(ステップS12)。
【0072】
ステップS13では、コントロールユニット50Aは、排出弁(流量調節弁)Vaの開度を決定する。
明確には図示されていないが、コントロールユニット50A内には、予め決定された特性、すなわち、ラインLa20を流れるCO温度(或いはCO圧力)と、室外機1から水タンク150内の水中に送られる熱媒の温度が所定の温度となる熱媒CO量(以下、「所定熱媒量」と記載する)との関係(特性)が記憶されている。
また、コントロールユニット50Aは、その時点における排出弁Va及びCO供給量調節弁Vcの弁開度から、その時点において配管系9aを循環するCO量(以下、「CO循環量」と記載する)を求める機能を有している。
さらに、コントロールユニット50Aは、その時点におけるCO循環量と、その時点における所定熱媒量とするための排出弁Va及びCO供給量調節弁Vcの弁開度とを比較して、排出弁Va及びCO供給量調節弁Vcの弁開度を決定する機能を有している。
【0073】
次のステップS14では、コントロールユニット50Aは、その時点における排出弁Va及びCO供給量調節弁Vcの弁開度からCO循環量を求め、所定熱媒量と比較して適正であるか否かを判断する。
CO循環量が適正であれば(ステップS14がYES)、排出弁Va及びCO供給量調節弁Vcの弁開度をそのまま維持して(ステップS15)、ステップS18に進む。
CO循環量が大き過ぎたならば(ステップS14が「大」)、CO供給量調節弁Vcの弁開度を減少し、及び/又は、排出弁Vaの弁開度を増加させる(ステップS16)。そしてステップS18に進む。
CO循環量が小さ過ぎたならば(ステップS14が「小」)、CO供給量調節弁Vcの弁開度を増加し、及び/又は、排出弁Vaの弁開度を減少させる(ステップS17)。そしてステップS18に進む。
【0074】
ステップS18では、システムの稼動を終了するか否かを判断する。
システムの稼動を終了するのであれば(ステップS18がYES)、制御を終了する。
システムの稼動を続行するのであれば(ステップS18がNO)、ステップS11まで戻り、ステップS11以降を繰り返す。
図14、図15におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図13を参照して説明したのと同様である。
【0075】
第1実施形態においては、実験例を参照して後述するように、冷房運転を行う場合には、配管系Laの水タンク150へ入る領域を流れる二酸化炭素の温度(図26(A)、図28でプロット「○」で示す温度:図4において温度センサ7で計測される温度)と、水タンク150内の水温(図26(A)、図28で点線の特性曲線で示す温度:図4において温度センサTW1で計測される温度)の温度差を、60℃以下にしている。
一方、暖房運転を行う場合には、水タンク150内の水温(図27(A)で点線の特性曲線で示す温度:図3において温度センサTW1で計測される温度)と、配管系Laの水タンク150へ入る領域を流れる二酸化炭素の温度(図27(A)でプロット「○」で示す温度:図3において温度センサ6で計測される温度)との温度差を、30℃以下にしている。
【0076】
ここで、図14、図15を参照して説明したように、室外機1から水タンク150に送られるCOの温度(図26(A)、図27(A)、図28でプロット「○」で示す温度)は、その時点におけるCOの温度(圧力)と、システム全体における熱媒COの量に依存する。
そのため、水タンク1内の水温(温度センサTW1で計測された温度)と、配管Laの水タンク1へ入る領域を流れるCOの温度(温度センサ6、7の水タンク1へ入る領域側で計測された温度)の温度差を制御するためには、システム100全体のCOの量を調整すれば良い。
【0077】
第1実施形態について、冷房運転を行う場合に、配管系Laの水タンク150へ入る領域を流れる二酸化炭素の温度と、水タンク150内の水温との温度差を60℃以下にして、暖房運転を行う場合に、水タンク150内の水温と、配管系Laの水タンク150へ入る領域を流れる二酸化炭素の温度との温度差を、30℃以下にするため、システム100全体のCOの量を調整する制御について、図29、図30を参照して説明する。
図29において、システム100全体のCOの量を調整するためには、CO供給源10からのCO供給量と、配管Laに接続された排出系統Leを介して排出されるCO量(CO排出量)を制御すれば良い。
そして、CO供給源からのCO供給量を制御するためには、例えば、CO供給源と配管Laとを連通する配管系に流量調整弁Vcを介装し、当該流量調整弁の弁開度を制御すれば良い。また、CO排出量を制御するためには、例えば、排出系統Leに排出弁Vaを介装し、当該排出弁の弁開度を制御すれば良い。
【0078】
すなわち、冷房運転時においては、配管系Laの水タンク150へ入る領域La30を流れる二酸化炭素の温度(図26(A)、図28でプロット「○」で示す温度)を温度センサ7で計測し、水タンク150内の水温(図26(A)、図28で点線の特性曲線で示す温度)を温度センサTW1で計測し、温度センサ7、TW1の計測結果をコントロールユニット50Bに送り、コントロールユニット50B内に記憶された特性図、特性式、テーブル、その他により、温度センサ7、TW1の計測結果における温度差が60℃以下になる様に、CO供給量とCO排出量を調整する。
一方、暖房運転時には、水タンク150内の水温(図27(A)で点線の特性曲線で示す温度)を温度センサTW1で計測し、配管系Laの水タンク150へ入る領域La20を流れる二酸化炭素の温度(図27(A)でプロット「○」で示す温度)を温度センサ6で計測し、温度センサTW1、6の計測結果をコントロールユニット50Bに送り、コントロールユニット50B内に記憶された特性図、特性式、テーブル、その他により、温度センサ6、TW1の計測結果における温度差が30℃以下になる様に、CO供給量とCO排出量を調整する。
CO供給量とCO排出量の調整について、主として図30に基づいて、図29を参照して説明する。
【0079】
図30におけるステップS11Aでは、冷房運転時には温度センサ7、TW1によりCO温度或いは水タンク150内の水温を計測し、暖房運転時には、温度センサTW1、6により水タンク150内の水温或いはCO温度を計測する。
そして、ステップS13Aでは、冷房運転時には温度センサ7、TW1により計測された温度の温度差、暖房運転時には、温度センサTW1、6により計測された温度の温度差に基づいて、コントロールユニット50Bにより、システム100全体のCOの量、或いは、排出弁Va及びCO供給量調節弁Vcの弁開度を決定する。それと共に、コントロールユニット50Bにより、その時点(制御サイクル)における排出弁Va及びCO供給量調節弁Vcの弁開度から、その時点(制御サイクル)におけるいシステム100全体のCOの量(以下、「CO循環量」と記載する)を決定する。
【0080】
ステップS14Aでは、コントロールユニット50Bは、その時点におけるCO循環量と、前記温度差(冷房時60℃以下、暖房時30℃以下)とするための所定CO循環量と、その時点(制御サイクル)におけるCO循環量を比較する。
CO循環量が適正であれば(ステップS14AがYES)、排出弁Va及びCO供給量調節弁Vcの弁開度をそのまま維持して(ステップS15A)、ステップS18Aに進む。
CO循環量が大き過ぎたならば(ステップS14Aが「大」)、CO供給量調節弁Vcの弁開度を減少し、及び/又は、排出弁Vaの弁開度を増加させる(ステップS16A)。そしてステップS18Aに進む。
CO循環量が小さ過ぎたならば(ステップS14Aが「小」)、CO供給量調節弁Vcの弁開度を増加し、及び/又は、排出弁Vaの弁開度を減少させる(ステップS17A)。そしてステップS18Aに進む。
そして、ステップS18で、システムの稼動を終了するか否かを判断し、システムの稼動を続行するのであれば(ステップS18がNO)、ステップS11以降を繰り返す。
図29、図30を参照して説明した制御により、システム100のCO循環量を調整して、前記温度差(冷房時60℃以下、暖房時30℃以下)を維持することが出来る。
図29、図30におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図15を参照して説明したのと同様である。
【0081】
図16は、第1実施形態の変形例を示している。
図1〜図14では、第1の熱媒ラインLbには、熱的負荷として、空調負荷(空調機3を介装した第2の熱媒ラインLc)のみが室内機2を介して(熱的に)接続されている。
それに対して、図16では、第1の熱媒ラインLbには、熱的負荷として、給湯負荷8も(熱的に)接続されている。
図16において、第1の熱媒ラインLbにおける四方弁V4のポートVp2と室内機2の接続口21とを接続するラインLb2に、給湯負荷(例えば給湯器)8が介装されている。
給湯器8による給湯は、図3で説明した第1実施形態の暖房運転と同様の暖房運転で行われる。
なお、図示はされていないが、空調負荷を省略して、給湯負荷8のみを設けることも可能である。
図16の変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図15の実施形態と同様である。
これに加えて、図示はされていないが、四方弁V4、水タンク150内におけるラインLa1、La4、ポンプ5を省略して、図1〜図15の第1実施形態を暖房運転のみを行なうシステムとすることが可能である。
その場合においても、図16の変形例のように、給湯負荷と空調負荷を併設し、或いは、給湯負荷のみを設けることが出来る。
【0082】
図17は本発明の第2実施形態を示す。
第1実施形態では、水タンク150内の水Wと熱媒であるCOの気化熱(或いは、凝縮熱)とを熱交換するためのCO配管は、一系統のみ設けられている。
しかし、図17の第2実施形態では、当該CO配管を分岐して、二系統設けて、二系統の各々において、熱媒であるCOの気化熱(或いは、凝縮熱)と水タンク150内の水が保有する熱と熱交換することを可能としている。
【0083】
図17において、室外機1を循環するCO配管Laは、水タンク150の上縁近傍で、二重管9Cに接続されている。二重管9Cの下端には三方弁V30が介装されている。三方弁V30には、同一仕様の二重管9D、9Dが分岐して接続されている。そして、同一仕様の二重管9D、9Dの各々は、水タンク150の水Wに浸漬されている。二重管9D自体は、図5〜図13で示すのと同様である。
ここで、図17において、二重管9Dを流れるCO相互に熱的に影響を及ぼすことがないように、或いは、二重管9Dを流れるCO同士で熱交換を行う(二重管9Dを流れるCO同士が熱的干渉をする)ことがないように、分岐した配管9D、9D相互の距離は、最低でも1mは離隔している必要がある。
【0084】
上述した第2実施形態によれば、水タンク150の水Wに浸漬された配管系9Dを複数系統設けているので、水タンク150の水が保有する熱量を効率的に回収し、或いは、水タンク150の水Wに熱を排出することが出来る。
図17の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図16の第1実施形態と同様である。
【0085】
図18〜図21は、本発明の第3実施形態を示している。
図1〜図17の実施形態ではCO配管系は水タンク150内の水Wに浸漬されているが、図18〜図21の第3実施形態は、貯水池GHにCO配管系が浸漬される。
図18において、CO配管系Laは螺旋状の二重管9Eに接続されている。ただし、直線状の二重管9Cを介装させても良いし、配管系Laと螺旋状の二重管9Eとを接続しても良い。
【0086】
CO配管系である二重管9Eを、貯水池GH内に螺旋形に浸漬するためには、CO配管(二重管9E)を可撓性の良好な材料で構成する。そして、貯水池GH内へ螺旋形に挿入して配置する。
或いは、形状記憶合金でCO配管(二重管9E)を構成し、当該形状記憶合金に、貯水池GH内の水中温度が5℃〜40℃になると、図18で示す螺旋状となる様に形状を記憶させて、貯水池GH内へ螺旋形に配置すれば良い。
【0087】
図18〜図21の第3実施形態によれば、貯水池GH内に配管系9Eを螺旋形に配置しているので、円周方向長さは、直径の3倍となり、COと水との熱交換に必要な長さを十分に確保した状態で、貯水池GHの深さ方向寸法を、従来の1/3程度に減少することが出来る。
そして、貯水池GHの深さ方向寸法が減少する結果、システムを施工するためのコストがさらに節減される。
ここで、螺旋形の配管系9E内の各部分を流れるCOが相互に熱交換をしてしまう(螺旋径の配管系9E内の各部分を流れるCOが相互に熱的な影響を及ぼし合う)ことが無い様に、螺旋形のピッチ及び直径は、1m以上であることが好ましい。
【0088】
図19〜図21は、第3実施形態の施工手順を示している。
図19〜図21の第3実施形態の施工に際しては、先ず、図19で示すように土壌Gに縦孔を掘削して、掘削された縦孔の内壁面を固結材等で被覆して、土壌の崩落を防止する。以って、配管系9Eを配置するための貯水池GHを造成する。そして、図20で示すように、貯水池GH内に螺旋系の配管系9Eを配置する。
ここで、螺旋系の配管系9Eにおけるピッチ及び直径は、1m以上であって、且つ、出来る限り小さいことが好ましい。ピッチ及び直径が1m以下であれば、螺旋形の配管系9E内の各部分を流れるCOが相互に熱交換をしてしまう(螺旋径の配管系9E内の各部分を流れるCOが相互に熱的な影響を及ぼし合う)からであり、螺旋形の配管系9Eのピッチ及び直径が大きいと、貯水池GHの径及び深さが大きくしなければならないからである。
【0089】
貯水池GH内に螺旋系の配管系9Eを配置した後、図21で示すように、貯水池GHに水Wを充填する。
ここで、水Wは地下水であっても良い。地下水の温度レベルは、土壌Gと同程度である。
図18〜図21の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図17の各実施形態と同様である。
【0090】
図22は、本発明の第4実施形態を示している。
図22の第4実施形態は、図17の第2実施形態と図18〜図21の第3実施形態との組み合わせに相当するものである。
図22において、室外機1を循環するCO配管Laは、二重管9Cに接続されている。そして、二重管9Cの下端には三方弁V30が介装されている。
三方弁V30からは水中に浸漬される二重管9Dと螺旋状の二重管9Eが分岐して接続されている。
二重管9Dの構成は、第1実施形態の図5〜図13で説明したと同様の構成であり、二重管9Cと同一の使用である。一方、螺旋状の二重管9Eは、図18〜図21で示した第3実施形態の螺旋状の二重管9Eと同様である。
【0091】
図22の第4実施形態によれば、図17〜図21の各実施形態よりも、さらに効率良く水タンク150内の水が保有する熱量を回収することができる。
図22の第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図21の各実施形態と同様である。
【0092】
図23は、本発明の第5実施形態を示している。
図23の実施形態では、図22の第4実施形態に対して、三方弁3Vから分岐する二重管が、何れも螺旋状の二重管9Eとなっている。
ここで、螺旋形の二重管(CO配管)9E同士が熱的干渉をすることが無い様に、最も近接した部分において、最低1mは離隔している必要がある。
【0093】
図23の第5実施形態によれば、図22の第4実施形態よりも更に高効率に、水タンク150内の水が保有する熱量を回収することができる。
【0094】
図23の第5実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図22の各実施形態と同様である。
【0095】
図24は、本発明の第6実施形態を示している。
図24の第6実施形態では、図23の第5実施形態と同様に、三方弁3Vから分岐する二重管が、何れも螺旋形に配置されているが、一方の螺旋状の二重管9Fが、他方の螺旋状の二重管9E(図23の二重管9Eと同じ)の半径方向外方で、他方の螺旋状の二重管9Eを包囲する様に配置されている。
この場合においても、螺旋形の二重管(CO配管)9E、9F同士が熱的干渉をすることが無い様に、螺旋形の二重管(CO配管)9E、9Fにおいて、直径方向については、最低1mは離隔している。
それに加えて2つの螺旋形の二重管9E、9Fの各々において、上下方向(螺旋のピッチ方向)について、最低1mは離隔している必要がある。
【0096】
図24の第6実施形態によれば、図23の第5実施形態に比べて、分岐した二重管9E、9Fを配置するための水平方向のスペースを少なくすることが出来ると共に、水中に浸漬させる管9Fの長さを短くしても、水タンク150内の水が保有する熱量の回収量を維持或いは増加することが出来る。
図24の第6実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図23の各実施形態と同様である。
【0097】
[実験例]
次に、図25〜図28を参照して、本発明の実験例について説明する。
図25は、実験例で使用した実験装置の概要を示している。
図25において、全体を符号500で示す実験装置は、第1の水タンク150、ヒートポンプHP、第2の水タンク200、第1の水タンク150及びヒートポンプHPに連通する配管系LaE、ヒートポンプHP及び第2の水タンク200に連通する配管系LcEを備えている。
第2の水タンク200は、図1等で示す空調機(温水床暖房等も含む)3に相当する熱的負荷として設けられている。すなわち、第2の水タンク200は熱的負荷を示している。
また、図25におけるヒートポンプHPは、図1等において、室外機1、室内機2、コンプレッサ4、減圧弁V3、四方弁V4を有している圧縮式空調機に相当している。
【0098】
配管系LaE内には熱媒であるCOが流れており、ヒートポンプHPから第1の水タンク150に向う配管系(矢印Fa参照)には、そこを流れるCOの温度を計測する温度センサTs1が介装されている。温度センサTs1が計測した温度は、図26(A)、図27(A)、図28において、プロット「○」で示されている。
第1の水タンク150からヒートポンプHPに向う配管系(矢印Fb参照)には、そこを流れるCOの温度を計測する温度センサTs2が介装されている。温度センサTs2が計測した温度は、図26(A)、図27(A)、図28において、プロット「△」で示されている。
第1の水タンク150内には、そこに貯留された水の水温を計測するための温度センサTs3が設けられている。温度センサTs3で計測された水タンク150内の水温は、図26(A)、図27(A)、図28において点線で示す特性線で示されている。
【0099】
また、配管系LcE内にも熱媒(例えば、水)が流れており、ヒートポンプHPから第2の水タンク200に向う配管系(矢印Fc参照)には、そこを流れる熱媒(水)の温度を計測する温度センサTs4が介装されている。温度センサTs4が計測した温度は、図26(B)、図27(B)において、プロット「○」で示されている。
第2の水タンク200からヒートポンプHPに向う配管系(矢印Fd参照)には、そこを流れる熱媒(水)の温度を計測する温度センサTs5が介装されている。温度センサTs5が計測した温度は、図26(B)、図27(B)において、プロット「△」で示されている。
【0100】
実験例では、図25で示す実験装置を稼動して、温度センサTs1〜Ts5で計測された温度を求め、実験装置稼動開始からの経過時間と計測された温度との特性を求めた。
図26(A)〜(C)、図27(A)〜(C)、図28では、その様な経過時間−温度特性の特性曲線を示している。
【0101】
図26は、冷房運転に関する実験結果を示している。
図26において、(A)は、ヒートポンプHPを出て第1の水タンク150に向うCOの温度特性(温度センサTs1の計測結果の時間特性:プロット「○」)と、第1の水タンク150を出てヒートポンプHPに向うCOの温度特性(温度センサTs2の計測結果の時間特性:プロット「△」)と、COの凝縮温度(濃い実線で示す特性)と、COの臨界点(薄い実線で示す特性)と、水タンク150内の温度特性(温度センサTs3で計測結果の時間特性:点線で示す特性)を示している。
【0102】
図26の(B)は、ヒートポンプHPから第2の水タンク200に向う熱媒(水)の温度特性(温度センサTs4の計測結果の時間特性:プロット「○」)と、第2の水タンク200からヒートポンプHPに戻る熱媒(水)の温度特性(温度センサTs5の計測結果の時間特性:プロット「△」)を示している。
図26の(C)は、図26の(B)におけるヒートポンプHPから第2の水タンク200に向う熱媒(水)の温度(温度センサTs4の計測結果:プロット「○」)と、第2の水タンク200からヒートポンプHPに戻る熱媒(水)の温度(温度センサTs5の計測結果:プロット「△」)との温度差の特性を示しており、第2の水タンク200に投入された熱量、或いは、冷却能力の特性を示している。
【0103】
図27は、暖房運転に関する実験結果を示している。
図27において、(A)、(B)における特性曲線は、図26の(A)、(B)における特性曲線と、同様である。
図27の(C)は、暖房能力の特性を示している。
【0104】
冷房運転時を示す図26の(C)において、経過時間(横軸)が2min.以降の領域では、冷房能力(縦軸)が非常に高い(22〜23kW)。
図26の(C)には明示していないが、直径3インチ、長さ50mのパイプを地下に埋設して、地熱と熱交換をした場合において、実験例と同一の条件で冷房能力を計測した場合には、冷房能力は5kWであった。この数値と比較すれば、実験例において得られた冷房能力が非常に高いことが理解出来る。
【0105】
同様に、暖房運転時を示す図27(C)において、経過時間(横軸)が30min.を超えた以降の領域では、暖房能力(縦軸)が高い数値まで上昇している。
図27(C)では明示されていないが、発明者の実験では、直径3インチ、長さ50mのパイプを地下に埋設して、地熱と熱交換をした場合において、実験例と同一の条件で暖房能力を計測した場合には、暖房能力は5kWであった。
図27の(C)において、経過時間(横軸)が30min.を超えた以降の領域における暖房能力は10kW近傍に達しており、地熱と熱交換を行なった場合に比較して、暖房能力は向上していることが明らかである。
30min.前後の段階で、水タンク150内を流れるCOの温度が臨界点近傍まで昇温し、COの比熱が上昇して熱交換効率が向上したため、暖房能力も向上したと推定される。
図26(C)、図27(C)から、本発明によれば、熱交換効率が向上し、その結果、冷房能力と暖房能力が向上することが明らかになった。
【0106】
冷房運転時を示す図26(C)において、実験装置稼動開始から22min.程度経過すると、冷房能力が低下する傾向が見られる。そして、経過時間が54min.以降は、冷房能力が急激に低下している。
実験装置稼動開始から22min.程度経過すると、水タンク150を流れるCOの温度が臨界点よりも高温となり、COの比熱が減少する領域になってしまい、熱交換効率が低下したものと推定される。そして、実験装置稼動開始から54min.経過すると、水タンク150を流れるCOの温度がさらに昇温して、比熱が顕著に減少したものと推定される。
図25で示す実験装置では、水タンク150内を流れるCOの温度を検出することは出来ないが、水タンク150に流入するCOの温度(プロット「○」)と、水タンク150から流出するCOの温度(プロット「△」)が、臨界点温度(図26(A)の薄い実線)よりも高温になり過ぎると、熱交換効率が低下して、冷房能力も低下することが明らかである。
【0107】
一方、暖房運転時を示す図27(A)では、60min.が経過しても、水タンク150に流入するCOの温度(プロット「○」)と、水タンク150から流出するCOの温度(プロット「△」)は、共に、臨界点温度(図27(A)の薄い実線)から離隔していない。そのため、水タンク150内を流れるCOの温度も臨界点温度から離隔してはいないと考えられる。
そのため、図27(C)において、COの熱交換効率は低下しておらず、暖房能力は、60min.が経過しても高い能力を維持していると推定される。
【0108】
図26、図27より、水タンク150から流出するCOの温度(プロット「△」)が40℃以下であれば、実験装置における冷房能力、暖房能力は低下しないことが明らかである。
図示はされていないが、水タンク150に流入するCOの温度と、水タンク150から流出するCOの温度が、臨界点温度よりも低温過ぎる場合(5℃以下)には、COが自然循環する場合においては、冷房能力、暖房能力が低下することが、図25で示す実験装置を用いた実験から分かった。
これは、配管系LaE内の熱媒の圧力が低圧になり、配管系LaEにおける熱媒(CO)の循環効率が低下したことに起因していると推定される。
【0109】
冷房運転時の実験であって、図26とは異なる運転条件の実験結果が、図28で示されている。換言すると、図28は図26(A)と同様な特性図である。
図28で示すように、冷房運転時には、水タンク150内の水温(図28で点線の特性曲線で示す)と、水タンク150内に流入するCOの温度(プロット「○」)との温度差Δは、60℃以下になっている。
図28では明示されていないが、発明者の実験によれば、冷房運転の際に、水タンク150内の水温(図28で点線の特性曲線で示す)と、水タンク150内に流入するCOの温度(プロット「○」)との温度差Δが60℃を超えると、暖房能力が低下することが確認されている。
その結果、冷房運転を行う場合には、配管系(La、9)の貯水設備(150、GH)へ入る領域を流れるCOの温度(図26(A)、図28でプロット「○」で示す温度:図4において温度センサ7で計測される温度)と、貯水設備(150、GH)内の水温(図26(A)、図28で点線の特性曲線で示す温度:図4において温度センサTW1で計測される温度)の温度差を60℃以下にするべきであることが確認された。
【0110】
図27(A)において、暖房運転時では、水タンク150内の水温(図27(A)で点線の特性曲線で示す)と、水タンク150内に流入するCOの温度(プロット「○」)との温度差Δは、30℃以下になっている。
図27では明示されていないが、発明者の実験によれば、暖房運転の際に、水タンク150内の水温(図27(A)で点線の特性曲線で示す)と、水タンク150内に流入するCOの温度(プロット「○」)との温度差Δ(図27(A)参照)が30℃を超えると、暖房能力が低下することが確認されている。
その結果、暖房運転を行う場合には、貯水設備(150、GH)内の水温(図27(A)で点線の特性曲線で示す温度:図3において温度センサTW1で計測される温度)と、配管系(La、9)の貯水設備(150、GH)へ入る領域を流れるCOの温度(図27(A)でプロット「○」で示す温度:図3において温度センサ6で計測される温度)との温度差が30℃以下にするべきであることが確認された。
【0111】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
図示の実施形態では、貯水設備としては水タンク150や貯水池GHが示されているが、貯水設備として、熱媒が流れている配管系が浸漬する程度の水深の暗渠や溝(或いは開渠)とすることも可能である。
【符号の説明】
【0112】
1・・・第1の熱交換器/室外機
2・・・第2の熱交換器/室内機
3・・・空調機
4・・・コンプレッサ
5・・・ポンプ
6、7・・・温度センサ
8・・・給湯器
9・・・二重管
10・・・CO供給源
150・・・水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管系と、当該配管系を水中に浸漬する貯水設備を備え、前記配管系は内部に熱媒が流過して貯水設備中の水と熱交換をする機能を有して構成されており、当該配管系は圧縮式空調機が接続された熱交換器を介装しており、前記熱媒は二酸化炭素であり、二酸化炭素の気化熱と貯水設備内の水とで熱交換しており、二酸化炭素の気化熱と貯水設備内の水とで熱交換するために、前記配管系における貯水設備を出た領域を流れる二酸化炭素の温度が5℃〜40℃に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
冷房運転を行う場合には、貯水設備内の水温と、配管系の貯水設備へ入る領域を流れる二酸化炭素の温度の温度差が60℃以下である請求項1の熱交換システム。
【請求項3】
暖房運転を行う場合には、貯水設備内の水温と、配管系の貯水設備へ入る領域を流れる二酸化炭素の温度の温度差が30℃以下である請求項1、2の何れかの熱交換システム。
【請求項4】
前記配管系は、複数系統に分岐している請求項1〜3の何れか1項の熱交換システム。
【請求項5】
前記配管系は、螺旋形に配置されている請求項1〜4の何れか1項の熱交換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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