説明

熱交換ユニット

【課題】ケーシングに対する熱交換器の組み付け性やメンテナンス性を維持しながら軽量化を図った熱交換ユニットを提供する。
【解決手段】建物11に天板13a又は側板13dが取り付けられるケーシング13の内部に熱交換器15を収容している熱交換ユニットであって、熱交換器15に設けられた被係合具31と、ケーシング13の天板13aに設けられ、かつ水平方向に延びる1本のガイドレールからなり、被係合具31をスライド可能に係合させて熱交換器15を吊り下げ支持する係合具30と、ケーシング13に設けられ、かつ熱交換器15に側方から当接して当該熱交換器15の姿勢を保持する姿勢保持具43,30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内に熱交換器を備えた熱交換ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井裏に室内機が設置される天井埋込型の空気調和装置や、天井の下面に室内機が取り付けられる天井吊下型の空気調和装置が知られており、これらはいずれも室内機のケーシングの天板や側板が建物側(天井スラブ下面や天井板下面等)に取り付けられている。ケーシング内には、空気との間で熱交換を行って室内の温度や湿度等を調整する熱交換器が配置されている。
特許文献1には、室外から室内に取り入れる空気(給気)と室内から室外に排出する空気(排気)とを熱交換させ、排気に含まれる熱を給気中に回収して室内に供給する換気装置が開示されており、この換気装置のケーシングの内部には、排気と給気との間で熱交換を行うための熱交換エレメントが収容されている。熱交換エレメントは、ケーシングの天板及び底板に設けられた上下2本のガイドレールと、熱交換エレメントの前側及び後側に設けられた前後2本のガイドレールとによってスライド可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/081977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、ケーシングに対して熱交換エレメントがスライド可能に取り付けられているので、ケーシングに熱交換エレメントを取り付けるときや取り外すときに熱交換エレメントを容易に移動させることができる。したがって、熱交換エレメントの着脱を伴うメンテナンスの作業性を向上させることができる。しかし、熱交換エレメントはその四隅がガイドレールによって支持されているものの、その荷重は専らケーシングの底板にかかっているので、底板の強度を高めるために厚肉化したり多くの補強部材を設けたりしなければならず、その分装置全体の重量が大きくなり、天井裏等に対する据付作業が困難になる。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ケーシングに対する熱交換器の組み付け性やメンテナンス性を維持しながら軽量化を図った熱交換ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、建物に天板又は側板が取り付けられるケーシングの内部に熱交換器を収容している熱交換ユニットであって、
前記熱交換器に設けられた被係合具と、
前記ケーシングの天板に設けられ、かつ水平方向に延びる1本のガイドレールからなり、前記被係合具をスライド可能に係合させて前記熱交換器を吊り下げ支持する係合具と、
前記ケーシングに設けられ、かつ前記熱交換器に側方から当接して当該熱交換器の姿勢を保持する姿勢保持具と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、熱交換器に設けられた被係合具が係合具にスライド可能に係合されるので、熱交換器を係合具に沿って移動させることができる。そのため、ケーシングに対する熱交換器の取り付け作業や取り外し作業を容易に行うことができる。また、熱交換器が係合具に吊り下げ支持されるので、熱交換器の荷重をケーシングの天板側(建物側)に受け持たせることができ、ケーシングの底板を薄肉化してケーシングの軽量化及び簡素化を図り、熱交換ユニットの据付性を向上させることができる。また、係合具が1本のガイドレールからなっているので、熱交換器の支持構造を簡素化することができるとともにケーシングをより軽量化することができる。熱交換器は、1本の係合具によって吊り下げ支持されるとその姿勢が不安定になるおそれがあるが、本発明では、熱交換器の姿勢が姿勢保持具によって適切に保持され、しかも姿勢保持具は、熱交換器に側方から当接するので熱交換器の荷重(垂直荷重)を直接的に受けることがない。そのため、姿勢保持具がケーシングの底板に設けられている場合には当該底板にも荷重が付与されず、ケーシングの底板を薄肉化してケーシングの軽量化及び簡素化等を図ることができる。
【0008】
(2)前記熱交換器には、冷媒が流れる流路と、水分を吸着する吸着剤とが設けられていてもよい。
吸着剤が設けられた熱交換器は、当該吸着剤の劣化の程度等を点検するためにメンテナンスを必要とするが、係合具により熱交換器がスライド可能に支持されているので、メンテナンスのために熱交換器をケーシングから容易に取り外すことができる。
【0009】
(3)前記係合具と前記被係合具との間に、スライド抵抗を低減させる手段が設けられていてもよい。
このような構成によって、熱交換器をスムーズにスライドさせることができる。
【0010】
(4)スライド抵抗を低減させる前記手段が、前記係合具及び前記被係合具の一方に回転自在に設けられ、かつ他方に接触して転動するローラを含むことが好ましい。
【0011】
(5)前記係合具は、V字形状に凹んだ係合溝を有し、前記被係合具が、前記係合溝の溝底に係合する係止片を有していてもよい。
この構成によれば、係合溝の溝底で係止片の位置を安定させ、熱交換器をガタつきなくスライド可能に支持することができる。
【0012】
(6)前記ケーシングにシール受け部材が設けられ、
前記シール受け部材と前記熱交換器との間にシール部材が設けられ、
前記熱交換器を前記ケーシング内の取り付け位置までスライドさせる動作で、前記熱交換器を前記シール部材に押し付ける押付ガイドが設けられていてもよい。
この構成によれば、ケーシング内に熱交換器を取り付けると同時にシール部材を押圧してシール性を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱交換ユニットによれば、ケーシングに対する熱交換器の組み付け性やメンテナンス性を維持しながら軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱交換ユニットの概略的な平面断面図である。
【図2】同熱交換ユニットの概略的な側面断面図である。
【図3】熱交換ユニットの冷媒回路を示す概略図である。
【図4】熱交換ユニットの冷媒回路を示す概略図である。
【図5】熱交換器の取付構造及びシール構造を示す側面図である。
【図6】熱交換器の取付構造及びシール構造を示す正面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における熱交換器の取付構造及びシール構造を示す側面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態における熱交換器の取付構造及びシール構造を示す側面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態における熱交換器の取付構造及びシール構造を示す側面図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態における熱交換器の取付構造及びシール構造を示す側面図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態における熱交換器の取付構造及びシール構造を示す側面図である。
【図12】本発明の第7の実施の形態における下側シール受け部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔熱交換ユニットの全体構成〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る熱交換ユニットの概略的な平面断面図、図2は、同熱交換ユニットの概略的な側面断面図である。
本実施の形態の熱交換ユニットは、室内の除湿と加湿とを切り換えて行うことが可能な調湿外気処理機10とされている。この調湿外気処理機10は、天井埋込型であり、ビルなどの建物11の天井裏のスペースSに設置される。
【0016】
調湿外気処理機10は、直方体形状に形成されたケーシング13と、このケーシング13内に収容された圧縮機14、熱交換器15、ファン16、ダンパー17等を備えている。また、調湿外気処理機10は、圧縮機14や熱交換器15を含む冷媒回路25(図3参照)を備えている。ケーシング13の天板13a又は側板13b,13c,13dは、建物11の天井スラブの下面にボルトや吊り具等の固定具を用いて取付固定される。ケーシング13の前側板(図1における左側の側板)13aには、室内の空気をケーシング13内に取り入れるための第1吸込口18aと、室外の空気をケーシング13内に取り入れるための第2吸込口18bとが左右に並べて設けられている。ケーシング13の左右側板(図1における上下の側板)13dの後部側には、ケーシング13から室内へ空気を吹き出すための第1吹出口19aと、ケーシング13から室外へ空気を吹き出すための第2吹出口19bとが設けられている。第1,第2吸込口18a,18b、第1,第2吹出口19a,19bには、それぞれ室内や室外に繋がるダクト(図示省略)が接続されている。
【0017】
本実施の形態の熱交換器15は、ケーシング13内における前後方向の中間位置に左右に並べて2つ設けられている。熱交換器15は、冷媒配管とフィンとを有するフィン・アンド・チューブ型であり、前後方向の寸法に比べて上下方向寸法及び左右方向寸法が大きく形成され、略垂直に起立した姿勢で配置されている。熱交換器15の表面にはゼオライト等の吸着剤が担持されている。吸着剤は、冷媒によって冷却又は加熱され、熱交換器15を通過する空気と接触することによって、空気に含まれる水分を吸着し又は吸着した水分を空気中に放出するようになっている。
【0018】
ケーシング13内の熱交換器15の前側及び後側には、それぞれ区画壁22a,22bが設けられている。ケーシング13の右側板13dには、蓋体23によって開閉可能とされた点検口24が設けられている。点検口24は、熱交換器15の側方位置に配置されており、この点検口24を介して熱交換器15がケーシング13の内部に挿入されて取り付けられるようになっている。この熱交換器15の取付構造については後述する。
【0019】
ファン16は、後側の区画壁22bよりも後方に配置され、第1吹出口19aに対応して配置された第1ファン16aと、第2吹出口19bに対応して配置された第2ファン16bとを備えている。そして、第1,第2ファン16a,16bの作動によって第1,第2吸込口18a,18bから第1、第2吹出口19a,19bへ流れる空気流が形成される。
【0020】
ダンパー17は、前後の区画壁22a,22b等に設けられ、ケーシング13内の空気の流れを切り換える機能を有している。具体的に、ダンパー17は、図1に実線矢印で示す流れと、点線矢印で示す流れとに空気流を切り換える。
【0021】
〔冷媒回路の構成〕
次に、図3を参照して冷媒回路の構成について説明する。
冷媒回路25は、圧縮機14と、四方切換弁27と、第1熱交換器15aと、第2熱交換器15bと、膨張弁28と、これらを接続して冷媒の流路を形成する冷媒配管26とを備えている。四方切換弁27は、その第1のポートが圧縮機14の高圧側に接続され、その第2のポートが圧縮機14の低圧側に接続されている。また、四方切換弁27の第3のポートから第4のポートに向かって順に、第1熱交換器15a、膨張弁28、及び第2熱交換器15bが配置されている。
【0022】
四方切換弁27は、第1のポートが第3のポートに連通し且つ第2のポートが第4のポートに連通する第1の状態(図3(a)に示す状態)と、第1のポートが第4のポートに連通し且つ第2のポートが第3のポートに連通する第2の状態(図3(b)に示す状態)とに切り換えられる。
【0023】
ケーシング13の内部において、第1,第2熱交換器15a,15bの上流側における空気の流通経路は、室内空気が第1熱交換器15aへ送られ且つ室外空気が第2熱交換器15bへ送られる状態(図3(a)に示す状態)と、室内空気が第2熱交換器15bへ送られ且つ室外空気が第1熱交換器15aへ送られる状態(図3(b)に示す状態)とにダンパー17(図1参照)によって切り換えられる。また、第1,第2熱交換器15a,15bの下流側における空気の流通経路は、第1熱交換器15aを通過した空気が第2ファン16bへ送られ且つ第2熱交換器15bを通過した空気が第1ファン16aへ送られる状態(図3(a)に示す状態)と、第1熱交換器15aを通過した空気が第1ファン16aへ送られ且つ第2熱交換器15bを通過した空気が第2ファン16bへ送られる状態(図3(b)に示す状態)とにダンパー17によって切り換えられる。
【0024】
調湿外気処理機10は、除湿運転及び加湿運転の何れにおいても、冷媒回路25で冷媒を循環させることによって蒸気圧縮冷凍サイクルを行う。
【0025】
〔調湿運転について〕
(除湿運転)
調湿外気処理機10の除湿運転について、図3を参照しながら説明する。除湿運転は、次の第1動作と第2動作を所定の時間毎(例えば3分間毎)に切り換えて行うことによって実施される。
第1動作では、四方切換弁27が図3(a)に示す第1の状態に設定され、膨張弁28の開度が適宜調節される。そして、圧縮機14から吐出された冷媒は、第1熱交換器15、膨張弁28、第2熱交換器15bを経て圧縮機14に戻される。これにより、第1熱交換器15aが凝縮器として動作し、第2熱交換器15bが蒸発器として動作する。第1熱交換器15aでは、その表面に担持された吸着剤が冷媒によって加熱され、第2熱交換器15bでは、その表面に担持された吸着剤が冷媒によって冷却される。
【0026】
室内の空気は、第1熱交換器15aへ送られ、第1熱交換器15aを通過するときに吸着材に吸着された水分が放出されることによって加湿される。加湿された空気は、第2ファン16bに吸い込まれて室外に排出される。一方、室外の空気は、第2熱交換器15bへ送られ、第2熱交換器15bを通過するときに空気中の水分が吸着剤に吸着され、除湿される。除湿された空気は、第1ファン16aに吸い込まれて室内に供給される。
【0027】
第2動作では、四方切換弁27が図3(b)に示す第2の状態に設定され、膨張弁28の開度が適宜調節される。そして、圧縮機14から吐出された冷媒は、第2熱交換器15b、膨張弁28、第1熱交換器15aを経て圧縮機14に戻される。これにより、第2熱交換器15bが凝縮器として動作し、第1熱交換器15aが蒸発器として動作する。第2熱交換器15bでは、その表面に担持された吸着剤が冷媒によって加熱され、第1熱交換器15aでは、その表面に担持された吸着剤が冷媒によって冷却される。
【0028】
室内の空気は、第2熱交換器15bへ送られ、第2熱交換器15bを通過するときに吸着剤に吸着された水分が放出されることによって加湿される。加湿された空気は、第2ファン16bに吸い込まれて室外に排出される。一方、室外の空気は、第1熱交換器15aへ送られ、第1熱交換器15aを通過するときに空気中の水分が吸着材に吸着され、除湿される。除湿された空気は、第1ファン16aに吸い込まれて室内に供給される。
【0029】
(加湿運転)
調湿外気処理機10の加湿運転について、図4を参照しながら説明する。加湿運転は、次の第3動作と第4動作を所定の時間毎(例えば3分間毎)に切り換えて行うことによって実施される。
第3動作では、四方切換弁27が図4(a)に示す第1の状態に設定され、膨張弁28の開度が適宜調節される。そして、圧縮機14から吐出された冷媒は、第1熱交換器15a、膨張弁28、第2熱交換器15bを経て圧縮機14に戻される。これにより、第1熱交換器15aが凝縮器として動作し、第2熱交換器15bが蒸発器として動作する。第1熱交換器15aでは、その表面に担持された吸着剤が冷媒によって加熱され、第2熱交換器15bでは、その表面に担持された吸着剤が冷媒によって冷却される。
【0030】
室内の空気は、第2熱交換器15bへ送られ、第2熱交換器15bを通過するときに空気中の水分が吸着剤に吸着されることによって除湿される。除湿された空気は、第2ファン16bに吸い込まれて室外に排出される。一方、室外の空気は、第1熱交換器15aへ送られ、第1熱交換器15aを通過するときに吸着剤に吸着された水分が放出されることによって加湿される。加湿された空気は、第1ファン16aに吸い込まれて室内に供給される。
【0031】
第4動作では、四方切換弁27が図4(b)に示す第2の状態に設定され、膨張弁28の開度が適宜調節される。そして、圧縮機14から吐出された冷媒は、第2熱交換器15b、膨張弁28、第1熱交換器15aを経て圧縮機14に戻される。これにより、第2熱交換器15bが凝縮器として動作し、第1熱交換器15aが蒸発器として動作する。第1熱交換器15aでは、その表面に担持された吸着剤が冷媒によって冷却され、第2熱交換器15bでは、その表面に担持された吸着剤が冷媒によって加熱される。
【0032】
室内の空気は、第1熱交換器15aへ送られ、第1熱交換器15aを通過するときに空気中の水分が吸着材に吸着されることによって除湿される。除湿された空気は、第2ファン16bに吸い込まれて室外に排出される。一方、室外の空気は、第2熱交換器15bへ送られ、第2熱交換器15bを通過するときに吸着剤に吸着された水分が放出されることによって加湿される。加湿された空気は、第1ファン16aに吸い込まれて室内に供給される。
【0033】
以上の動作により、調湿外気処理機10は、除湿運転と加湿運転とが可能である。空気中に含まれる水分は熱交換器15a,15bの吸着剤に吸着されたのち、再び空気に放出されるため、ケーシング13内で滴下して蓄積されることがない。したがって、熱交換器15の下方にはドレンパン70が設ける必要がなく、ドレン水を処理する構造も不要である。
【0034】
〔熱交換器の取付構造及びシール構造〕
次に、ケーシング13に対する熱交換器15の取付構造及びシール構造について説明する。
図5は、熱交換器15の取付構造及びシール構造を示す側面図、図6は、同正面図である。なお、図5における左側を前側とし、右側を後側として説明する。本実施の形態の熱交換器15は、支持具29を介してケーシング13に支持されている。この支持具29は、ケーシング13に天板13aの下面に設けられた係合具30と、熱交換器15の上部に設けられ、係合具30に係合可能な被係合具31とからなっている。
【0035】
係合具30は、図5に示されるように、板材を屈曲させることによって形成されている。具体的には、係合具30は、ケーシング13の天板下面に取り付けられる取付板33と、この取付板33の前端部から下方に屈曲される垂下板34と、この垂下板34の下端から前方に屈曲する係止受け板35と、この係止受け板35の前端部から上方に屈曲される立ち上がり板36とからなり、垂下板34、係止受け板35、及び立ち上がり板36によって側面視で上向きコの字形状の係合溝37が形成されている。
【0036】
これに対して、被係合具31は、熱交換器15の前面周縁に取り付けられた仕切り板39の上部に設けられている。被係合具31は、仕切り板39の上端から後方へ屈曲する屈曲板40と、屈曲板40の後端から下方に屈曲される係止板(係止片)41とからなる。そして、この係止板41を係合溝37に挿入し、係合具30の係止受け板35の上面に係止することによって、係合具30に被係合具31が係合されている。これによって熱交換器15は、係合具30によって吊り下げ支持されており、その荷重は専らケーシング13の天板13aに付与されている。
【0037】
ケーシング13の底板13eの上面には下側シール受け部材43が設けられている。この下側シール受け部材43は、底板13eの上面に取り付けられた取付板44と、この取付板44の前端部から立ち上がる下側シール受け板45とから側面視でL字形状に形成されており、この下側シール受け板45の前面には、下側シール部材46が取り付けられている。そして、この下側シール部材46は、熱交換器15の仕切り板39の下端部後面に当接している。また、係合具30における立ち上がり板36の前面には上側シール部材47が取り付けられている。この上側シール部材47には、熱交換器15の仕切り板39の上端部後面が当接している。したがって、係合具30は、上側のシール受け部材としても機能している。
また、図1に示されるように、熱交換器15の左右側部と、ケーシング13の側板13dや点検口24の蓋体23の内面との間にも側部シール部材49が設けられている。
【0038】
これらの下側シール部材46、上側シール部材47、及び側部シール部材49によって、ケーシング13内の空気流が熱交換器15を通過することなく熱交換器15の周囲から漏れてしまうのを防止することができる。シール部材46,47,49としては、例えばエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)によって形成された独立気泡を有する発泡ゴム等を使用することができる。
【0039】
図5に示されるように、下側シール部材46及び上側シール部材47は、熱交換器15の自重が付与されることによって下側シール受け部材43及び上側シール受け部材(係合具)30との間で押圧されている。以下、この点について詳しく説明する。
熱交換器15は、一つの係合具30に対して一つの被係合具31を係合させることによって一点で支持されているので、左右方向の軸心(支点)P回りに前後方向に揺動可能となっている。そして、揺動支点Pとなる係止板41の下端部は、熱交換器15の重心位置Gに対して後方へ偏位した位置に配置されている。そのため、熱交換器15は、重心位置Gが支点Pの下方に位置するように後方(矢印A方向)へ揺動しようとし、その際に、下側シール部材46及び上側シール部材47を後方へ押圧する。
【0040】
このように熱交換器15の重量を利用してシール部材46,47を押圧することによって、例えばシール部材46,47の押圧状態を維持するために熱交換器15とシール受け部材43,30との相対位置をネジ等を用いて固定する必要が無くなる。そのため、ケーシング13に対する熱交換器15の取付構造を簡素化することができる。また、熱交換器15を1つの係合具30によって吊り下げ支持することによっても熱交換器15の取付構造を簡素化することができる。
【0041】
本実施の形態の調湿外気処理機10では、熱交換器15に吸着剤が担持されているので、この吸着剤の劣化等を点検するためにケーシング13から熱交換器15を取り外してメンテナンスを行う必要がある。本実施の形態では、上述のように熱交換器15の取付構造を簡素化することができるので、熱交換器15の取り外しも容易にすることができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0042】
また、熱交換器15は、ケーシング13の天板13aに設けられた係合具30に吊り下げ支持されているので、その荷重は専ら天板13aが受け持つことになる。ケーシング13は、その天板13aやこれに連設された側板13dが建物11の天井スラブ等に対して固定されるため、係合具30によって支持される熱交換器15の荷重を建物11側に負担させることができる。そのため、ケーシング13の底面の強度がそれほど要求されなくなり、当該底板13eを薄肉化する等、構造の簡素化及び軽量化を図ることができる。これにより調湿外気処理機10全体を軽量化し、天井裏等に対する据付性を向上させることができる。
【0043】
下側シール部材46及び上側シール部材47を取り付けている下側シール受け部材43及び上側シール受け部材(係合具)30は、熱交換器15をほぼ起立した姿勢(略垂直姿勢)に保持する姿勢保持具として機能している。具体的には、下側シール受け部材43は、下側シール部材46を介して熱交換器15の下部側面(後面)に側方(後方)から当接し、上側シール受け部材30は、上側シール部材47を介して熱交換器15の上部側面(後面)に側方(後方)から当接し、これによって熱交換器15の姿勢を保持している。
【0044】
熱交換器15は、1本の係合具30によって揺動可能に吊り下げ支持されているので、その姿勢が不安定になりやすいが、姿勢保持具43,30によって適切に姿勢が保持される。また、姿勢保持具43,30は、ケーシング13の底板13e又は天板13aに取り付けられており、熱交換器15から後方へ向けて荷重を受けるが垂直荷重をほとんど受けることがない。したがって、特に下側の姿勢保持具43が取り付けられているケーシング13の底板13eに対して熱交換器15の荷重が付与されることはなく、前述したように当該底板13eの構造の簡素化等が可能となる。
【0045】
図5に示されるように、熱交換器15は、空気流(白抜き矢印Bで示す)が前方から後方へ通過することによって後方へ向けて押されている。そのため、熱交換器15の重量に加え空気流によっても下側シール部材46及び上側シール部材47が押圧されることになる。すなわち、熱交換器15の重量による揺動方向Aを空気流Bの方向と一致させることによって、より確実にシール部材46,47を押圧し、シール性を高めることができる。
【0046】
なお、図5においては、係合具30及び被係合具31の構造をより分かりやすく示すため、係合具30の係合溝37が係止板41に対して前後に幅広く形成され、係止板41が係合溝37内で前後に大きく動き得るように描かれているが、実際は、熱交換器15の揺動が許容される程度に係合溝37は幅狭く形成され、この幅内における係止板41の前後移動で下側シール部材46、上側シール部材47によるシール性が損なわれることがないように構成される。
【0047】
係合具30は、図1に2点鎖線で示すようにケーシング13の左右方向の幅に渡るように長尺に形成されている。そして、被係合具31は係合具30に対して左右方向にスライド可能に係合している。すなわち、係合具30はガイドレールを構成し、熱交換器15は係合具30に沿って左右方向に移動可能とされている。そして、熱交換器15は、図1及び図2に示す点検口24から、ケーシング13内に挿入されるとともに、係合具30に沿って左右方向に移動させることで、所定の取付位置に取り付けられる。したがって、ケーシング13に熱交換器15を取り付ける作業を容易に行うことができる。また、ケーシング13から熱交換器15を取り出す場合、係合具30に沿って熱交換器15を左右方向に移動させることで点検口24から容易に取り外すことができる。そのため、メンテナンスの際等にケーシング13に対して熱交換器15を着脱する作業を容易に行うことができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0048】
なお、熱交換器15を係合具30に沿って左右方向に移動させるとき、熱交換器15を前方(図5の矢印Aとは反対方向)へ若干揺動させて、下側シール部材46及び上側シール部材47から熱交換器15を浮かせることによって、熱交換器15のスライド抵抗を少なくすることができるとともに、下側シール部材46及び上側シール部材47の損傷を防止することができる。
また、係合具30は、板材を屈曲させた形状であるため、それ自身がケーシング13の天板13aの補強部材として機能し、当該天板13aの強度を高めることができる。
【0049】
〔第2の実施の形態〕
図7は、本発明の第2の実施の形態における熱交換器15の取付構造及びシール構造を示す側面図である。
本実施の形態では、支持具29を構成する係合具30及び被係合具31の構成が、第1の実施の形態と異なっている。すなわち、係合具30は、垂下板34の下端から係止受け板35が前斜め上方へ向けて屈曲しており、係合具30には、上方に開放したV字形状の係合溝37が形成されている。また、被係合具31は、仕切り板39の上端から係止板41が後斜め下方に向けて屈曲している。そして、熱交換器15の揺動支点Pとなる係止板41の下端が、垂下板34と係止受け板35との境界部(係合溝37の底部)に当接している。したがって、熱交換器15の揺動支点Pが前後にずれることがなく、熱交換器15をより安定して取り付けることができる。また、係合具30及び被係合具31は、第1の実施の形態よりも屈曲回数が少なく、構造の簡素化及び製造コストの低減が図られている。
なお、係合具30における垂下板34と係止受け板35との間の屈曲角度は、仕切り板39と係止板41の屈曲角度よりも若干大きく設定されており、これによって熱交換器15の揺動範囲が確保されている。
【0050】
〔第3の実施の形態〕
図8は、本発明の第3の実施の形態における熱交換器の取付構造及びシール構造を示す側面図である。本実施の形態では、支持具29を構成する係合具30に対してローラ54が設けられ、このローラ54上を被係合具31が走行することによって、熱交換器15が左右方向に移動可能に構成されている。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0051】
ローラ54は、係合具30の垂下板34と立ち上がり板36との間に架設された軸に回転自在に支持されており、前後方向の中央に周溝56が形成されている。そして、被係合具31の係止板41の先端が周溝56に係合することによって、熱交換器15が揺動可能に支持される。
本実施の形態では、係合具30に沿って熱交換器15をスライドさせる際の抵抗が著しく低減し、ケーシング13に対する熱交換器15の取り付け作業、取り外し作業をよりスムーズに行うことができる。
【0052】
〔第4の実施の形態〕
図9は、本発明の第4の実施の形態における熱交換器の取付構造及びシール構造を示す側面図である。本実施の形態では、支持具29を構成する被係合具31に対してローラ54が設けられ、このローラ54を係合具30上で走行させることによって、熱交換器15が左右方向にスライド可能に構成されている。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0053】
ローラ54は、被係合具31の係止板41の先端部に対して回転自在に取り付けられており、係合具30の係止受け板35の上面を走行するようになっている。したがって、本実施の形態においても、係合具30に沿って熱交換器15をスライドさせる際の抵抗が著しく低減し、ケーシング13に対する熱交換器15の取り付け作業、取り外し作業をよりスムーズに行うことができる。
【0054】
〔第5の実施の形態〕
図10は、本発明の第5の実施の形態における熱交換器の取付構造及びシール構造を示す側面図である。本実施の形態では、支持具29を構成する係合具30及び被係合具31の構造が上述の実施の形態とは若干異なっている。
係合具30は、取付板33の後端から垂下板34が下方に屈曲し、この垂下板34の下端から係止受け板35が後方に屈曲し、係止受け板35の後端から立ち上がり板36が上方へ屈曲している。また、被係合具31は、仕切り板39の上端から後方へ屈曲する下側屈曲板60と、この下側屈曲板60の後端から上方へ立ち上がる立ち上がり板61と、この立ち上がり板61の上端から前方へ屈曲する上側屈曲板62と、この上側屈曲板62の前端から下方に屈曲する係止板41とを備え、この係止板41が、係止受け板35の上面に係合している。
【0055】
また、ケーシング13の天板13aの下面には上側シール受け部材64が設けられている。この上側シール受け部材64は、係合具30よりも後側に配置され、天板13aの下面に取り付けられる取付板65と、この取付板65の前端から下方に屈曲する上側シール受け板66とを有している。上側シール受け板66には、上側シール部材47が取り付けられている。そして、この上側シール部材47は、被係合具31の立ち上がり板61の後面によって押圧されている。
【0056】
本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。ただし、第1の実施の形態では、係合具30そのものが上側シール部材47を受ける上側シール受け部材として機能し、本実施の形態のような上側シール受け部材64を別体として備える必要がない。したがって、この点においては本実施の形態よりも第1の実施の形態の方が有利である。
【0057】
〔第6の実施の形態〕
図11は、本発明の第6の実施の形態における熱交換器の取付構造及びシール構造を示す側面図である。本実施の形態では、係合具30及び被係合具31が、滑り性を有する合成樹脂等を素材とした型成形品から構成されている。係合具30は、断面四角形状の棒材よりなり、その内部には、左右方向に延びる略円形の穴状溝37aと、この穴状溝37aの下端から係合部の下面に向かって延びる連設溝37bとが形成され、この穴状溝37a及び連設溝37bによって係合溝37が構成されている。被係合具31は、係合溝37の穴状溝37aにスライド可能に挿入される円柱体41aと、この円柱体41aから下方に垂下して連設溝37bにスライド可能に挿入される板状体41bとを有し、円柱体41a及び板状体41bによって係止体41が形成されている。
【0058】
本実施の形態では、上記各実施の形態と同様に、熱交換器15が1本のガイドレールからなる係合具30によって吊り下げ支持されている。しかし、熱交換器15は、連設溝37bに対して垂下体41bが当接することによって姿勢が保持され、揺動が制限されている。また、下側シール受け部材43に取り付けられた下側シール部材46が仕切り板39に当接することによっても揺動が制限されている。その他の構成は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。なお、係合溝37の連設溝37bの幅を広くして板状体41bとの間の隙間を大きくすれば、上述の各実施の形態と同様に熱交換器15を揺動可能に支持することも可能である。
【0059】
〔第7の実施の形態〕
図12は、本発明の第7の実施の形態における下側シール受け部材を示す平面図である。上述した第1〜第5の実施の形態では、熱交換器15が揺動可能に支持され、熱交換器15の重量が揺動方向に付与されることによって下側シール部材46が押圧されていたが、本実施の形態では、熱交換器15を所定の取付位置までスライドさせる動作を利用して、熱交換器15を下側シール部材46に押し付けるようにしている。
【0060】
具体的に、下側シール受け部材43の下側シール受け板45の端部(スライド方向の終端部)には、押付ガイド45aが形成されている。この押付ガイド45aは、下側シール受け板45の前側面に対向し、かつスライド方向の終端側(図12の右側)ほど、下側シール受け板45との間隔が狭くなるように傾斜している。そして、熱交換器15を所定の取付位置にスライドさせると、仕切り板39の端部が押付ガイド45aに当接し、この押付ガイド45aの傾斜に沿って仕切り板39が下側シール受け板45側に寄せられ、シール部材46を押圧する。したがって、本実施の形態では、熱交換器15の重量をかけなくても下側シール部材46を押圧することができる。
【0061】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲において適宜変更することができる。例えば、係合具30や被係合具31の構造は上記実施の形態に限定されるものではなく、1本の係合具30によって熱交換器15を吊り下げ支持できる限りにおいて種々の構造を採用することができる。また、上記実施の形態では、熱交換器15の自重や押付ガイド45aを用いることによってシール部材46,47を押圧していたが、これらに限らず、熱交換器15をシール受け部材43等に対してネジ等の固定具を介して固定することで、シール部材46,47を押圧してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10: 調湿外気処理機(熱交換ユニット)
13: ケーシング
15: 熱交換器
29: 支持具
30: 係合具(姿勢保持具)
31: 被係合具
37: 係合溝
43: 下側シール受け部材(姿勢保持具)
46: 下側シール部材
47: 上側シール部材
64: 上側シール受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物(11)に天板(13a)又は側板(13d)が取り付けられるケーシング(13)の内部に熱交換器(15)を収容している熱交換ユニットであって、
前記熱交換器(15)に設けられた被係合具(31)と、
前記ケーシング(13)の天板(13a)に設けられ、かつ水平方向に延びる1本のガイドレールからなり、前記被係合具(31)をスライド可能に係合させて前記熱交換器(15)を吊り下げ支持する係合具(30)と、
前記ケーシング(13)に設けられ、かつ前記熱交換器(15)に側方から当接して当該熱交換器(15)の姿勢を保持する姿勢保持具(43,30)と、を備えていることを特徴とする熱交換ユニット。
【請求項2】
前記熱交換器(15)には、冷媒が流れる流路と、水分を吸着する吸着剤とが設けられている請求項1に記載の熱交換ユニット。
【請求項3】
前記係合具(30)と前記被係合具(31)との間に、スライド抵抗を低減させる手段が設けられている請求項1又は2に記載の熱交換ユニット。
【請求項4】
前記手段が、前記係合具(30)及び前記被係合具(31)の一方に回転自在に設けられ、かつ他方に接触して転動するローラ(54)を含む請求項3に記載の熱交換ユニット。
【請求項5】
前記係合具(30)が、V字形状に凹んだ係合溝(37)を有し、前記被係合具(31)が、前記係合溝(37)の溝底に係合する係止片(41)を有している請求項1〜4のいずれかに記載の熱交換ユニット。
【請求項6】
前記ケーシング(13)にシール受け部材(43)が設けられ、
前記シール受け部材(43)と前記熱交換器(15)との間にシール部材(46)が設けられ、
前記熱交換器(15)を前記ケーシング(13)内の取り付け位置までスライドさせる動作で、前記熱交換器(15)を前記シール部材(36)に押し付ける押付ガイド(45a)が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の熱交換ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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