説明

熱交換器ユニット

【課題】冷却水を利用して蓄冷を行った場合でもエンジン停止時において車室内へ冷風を送風可能であり、しかも、ヒータ側の熱が蒸発器側に伝わるのを抑制する。
【解決手段】熱交換器ユニット10は、空気を冷却可能なエバポレータ部12と、該空気を加熱可能なヒータコア部14とが一体的に設けられ、前記エバポレータ部12の第1及び第2チューブ18、20と、前記ヒータコア部14の第3チューブ26には、その一端部及び他端部に上部タンク22及び下部タンク24がそれぞれ連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を通過させることで熱交換を行い、該熱交換されて調温された空気を下流側へと供給可能な熱交換器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用空調装置には、冷却手段である蒸発器と、加熱手段であるヒータコアとが設けられ、送風機によって内外気をケース内へと取り込み、前記蒸発器により冷却された空気と、前記ヒータコアにより加熱された空気とを前記ケース内で所望の混合比率で混合した後、車室内に設けられた複数の吹出口から選択的に送風することで前記車室内の温度及び湿度の調整を行っている。
【0003】
近年、車両の燃費向上や環境負荷の低減を目的として、前記車両が停車した際にエンジンを停止させるアイドリングストップ機構が普及し始めている。
【0004】
しかしながら、冷媒を圧縮して蒸発器に供給される冷媒を圧縮するための圧縮機は、一般的に、エンジンの駆動力を利用して駆動させているため、アイドリングストップ時において前記エンジンを停止させることで前記圧縮機が停止してしまうこととなり、圧縮された前記冷媒の蒸発器への供給が停止し、それに伴って、前記蒸発器による冷却が行われずに車室内へ冷風を送風することができなくなるという問題が生じる。
【0005】
そのため、エンジン停止時(アイドリングストップ時)における空調を行って車室内の快適性を維持する目的で、例えば、電動式圧縮機を採用して該エンジン停止時においても冷媒を圧縮して蒸発器へと供給することで、車室内への冷風を送風可能としたり、又は、特許文献1に開示されているように、蒸発器近傍に蓄冷器を設け、エンジン稼動時に供給される冷風によって該蓄冷器に予め冷気を蓄えておき、エンジン停止時に前記冷気から冷風を発生させて車室内へと供給することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−139201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した構成でエンジン停止時における空調を行おうとした場合に、電動式圧縮機はコストが高く、一方、蓄冷器は、車両用空調装置のケース内に設ける必要があるため、該車両用空調装置の大型化を招くと共に、該蓄冷器を設けることでコスト増加を招くという問題がある。そのため、簡素な構成でエンジン停止時における空調可能な手段が求められている。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、簡素な構成で、冷却水を利用して蓄冷を行った場合でもエンジン停止時において車室内へ冷風を送風可能であり、しかも、ヒータ側の熱が蒸発器側に伝わるのを抑制することが可能な熱交換器ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、内部に流通する第1冷媒と熱交換することで空気を冷却する第1熱交換器と、内部に流通する第2冷媒と熱交換することで、該第1熱交換器を通過した前記空気を加熱する第2熱交換器とを有する熱交換器ユニットにおいて、
前記第1熱交換器は、前記空気と前記第1冷媒との熱交換を行う第1熱交換部と、前記第1熱交換部の端部に設けられ前記第1冷媒が一時的に蓄えられる第1冷媒タンク部とを備え、前記第2熱交換器は、前記空気と前記第2冷媒との熱交換を行う第2熱交換部と、前記第2熱交換部の端部に設けられ前記第2冷媒が一時的に蓄えられる第2冷媒タンク部とを備え、前記第1冷媒タンク部と前記第2冷媒タンク部とが連結される連結部を有すると共に、前記第1冷媒タンク部と第2冷媒タンク部との間に断熱部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、内部に流通する第1冷媒と熱交換することで空気を冷却する第1熱交換器と、内部に流通する第2冷媒と熱交換することで該第1熱交換器を通過した前記空気を加熱する第2熱交換器とを有する熱交換器ユニットにおいて、第1冷媒タンク部と第2冷媒タンク部の全体又は一部を連結して構成することで小型化及び低コスト化を図りつつ、前記第1熱交換器を通過して冷却された空気を、前記第2熱交換器を通過させることで第2冷媒タンク部に蓄えられた第2冷媒を好適に冷却することができる。また、第1冷媒の蓄えられる第1冷媒タンク部と、第2冷媒の蓄えられる第2冷媒タンク部との間に断熱部を設けている。
【0011】
従って、第1熱交換器及び第2熱交換器が一体的に設けられた熱交換器ユニットを設けるという簡素な構成で、別個に蓄冷器等を設けることなく、前記ヒータにおいて第2冷媒を利用して蓄冷を行うことができると共に、冷却された第2冷媒を利用することで、例えば、車両におけるエンジンの停止時、すなわち、アイドリングストップ時において冷風を下流側へと供給することができる。また、ヒータにおける熱が第1熱交換器側へと伝わることが断熱部によって抑制されるため、前記第1熱交換器及び第2熱交換器を一体的に構成した場合でも、前記第2熱交換器が前記第1熱交換器の冷却に影響を及ぼすことを防止できる。
【0012】
さらに、第1冷媒タンク部と第2冷媒タンク部とを一体成形で形成するとよい。
【0013】
さらにまた、断熱部は、第1冷媒タンク部と第2冷媒タンク部との間に設けられた空間とするとよい。
【0014】
またさらに、断熱部は、第1冷媒タンク部と、第2冷媒タンク部との間に断熱体を設けるとよい。
【0015】
また、第1冷媒タンク部と第2冷媒タンク部は、それぞれ第1冷媒と第2冷媒が流れるチューブの両端に形成されると共に、一端の前記第1冷媒タンク部と前記第2冷媒タンク部の前記連結部は、他端の前記第1冷媒タンク部と前記第2冷媒タンク部の前記連結部と断面積を異ならせるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0017】
すなわち、内部に流通する第1冷媒と熱交換することで空気を冷却する第1熱交換器と、内部に流通する第2冷媒と熱交換することで該第1熱交換器を通過した前記空気を加熱する第2熱交換器とを有する熱交換器ユニットにおいて、第1冷媒タンク部と第2冷媒タンク部の全体又は一部を連結して構成することで小型化及び低コスト化を図りつつ、前記第1熱交換器を通過して冷却された空気を、前記第2熱交換器を通過させることで第2冷媒タンク部に蓄えられた第2冷媒を好適に冷却すると共に、前記第1冷媒タンク部と第2冷媒タンク部との間に断熱部を設けることで、別個に蓄冷器等を設けることなく、簡素な構成で前記第2熱交換器において第2冷媒を利用して蓄冷を行うことができる。その結果、冷却された第2冷媒を利用することで、例えば、車両におけるエンジンの停止時、すなわち、アイドリングストップ時において冷風を下流側へと供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱交換器ユニットの正面図である。
【図2】図2Aは、図1のIIA−IIA線に沿った断面図であり、図2Bは、図2AのIIB−IIB線に沿った断面図であり、図2Cは、図2AのIIC−IIC線に沿った断面図である。
【図3】図3Aは、本発明の第2の実施の形態に係る熱交換器ユニットの正面図であり、図3Bは、図3AのIIIB−IIIB線に沿った断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る熱交換器ユニットの全体断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る熱交換器ユニットについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0020】
図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係る熱交換器ユニットを示す。なお、本実施の形態では、熱交換器ユニット10が、車両に搭載され車室内の空調を行う車両用空調装置に設けられる場合について説明する。
【0021】
この熱交換器ユニット10は、図1及び図2A〜図2Cに示されるように、内部を通過する空気の上流側に設けられ空気を冷却するエバポレータ部(蒸発器)12と、該エバポレータ部12に隣接して下流側に設けられ前記空気を加熱するヒータコア部(ヒータ)14と、前記エバポレータ部12に供給される冷媒(第1冷媒)、前記ヒータコア部14に供給される冷却水(第2冷媒)が蓄えられるタンク部16とを含む。なお、冷却水は、車両のエンジン等に循環され所定温度に加温された状態でヒータコア部14へと供給される。
【0022】
このエバポレータ部12は、中空に形成され一直線状に延在する複数の第1及び第2チューブ(第1熱交換部)18、20と、並列に配置された第1チューブ18の間、第2チューブ20の間にそれぞれ設けられ波状に折曲されたフィン21とを備える。そして、第1及び第2チューブ18、20の一端部が、タンク部16を構成する上部タンク22にそれぞれ接続され、一方、前記第1及び第2チューブ18、20の他端部がそれぞれタンク部16を構成する下部タンク24に接続される。
【0023】
ヒータコア部14は、中空に形成され一直線状に延在する複数の第3チューブ(第2熱交換部)26と、並列に配置された第3チューブ26の間にそれぞれ設けられ波状に折曲されたフィン21とを備える。そして、第3チューブ26の一端部が、タンク部16を構成する上部タンク22にそれぞれ接続され、一方、前記第3チューブ26の他端部がそれぞれ下部タンク24に接続される。
【0024】
上部タンク22は、第1〜第3チューブ18、20、26の延在方向と直交する熱交換器ユニット10の厚さ方向に沿って延在し、その内部には、冷媒の流通する第1冷媒循環室(冷媒タンク部)28と、冷却水の循環する第1冷却水循環室(冷却水タンク部)30とが形成される。第1冷媒循環室28は、上部タンク22の一端部側において第1チューブ18と連通する冷媒導入部32と、第2チューブ20と連通する冷媒導出部34とを備える。
【0025】
また、上部タンク22の側面には、図示しない配管等の接続される冷媒導入口38、冷媒導出口40がそれぞれ形成され、前記冷媒導入口38が冷媒導入部32と連通し、前記冷媒導出口40が冷媒導出部34と連通している。
【0026】
また、図2Bに示されるように、上部タンク22において、冷媒導入部32及び冷媒導出部34は、冷媒導入口38、冷媒導出口40を有する一端部側において第1隔壁36aを介して互いに分離されると共に、前記上部タンク22の長手方向に沿った略中央部に形成され該第1隔壁36aと直交した第2隔壁36bによって、前記上部タンク22における一端部側と他端部側との連通が遮断されている。なお、第1隔壁36aは、上部タンク22の長手方向に沿って形成され、一方、第2隔壁36bは、前記長手方向と略直交する方向に形成される。すなわち、上部タンク22の他端部側では、冷媒導入部32と冷媒導出部34とが互いに連通している。
【0027】
さらに、上部タンク22は、第1冷媒循環室28と第1冷却水循環室30との間が所定間隔離間して設けられ、その間には空間部42aが設けられている。空間部42aは、中空状に形成され、上部タンク22の延在方向に沿って略同一の幅寸法で形成される。すなわち、空間部42aは、第1冷媒循環室28及び第1冷却水循環室30と略平行に形成される。
【0028】
この空間部42aは、エバポレータ部12とヒータコア部14との間の断熱を行うために設けられ、例えば、その内部が真空状態となるように設けられる。
【0029】
第1冷却水循環室30は、第1冷媒循環室28と略平行に形成され、第3チューブ26の一端部が接続されて連通している。また、上部タンク22の側面に形成された冷却水導出口46が第1冷却水循環室30と連通している。すなわち、後述する冷却水導入口52から導入され冷却水が第1冷却水循環室30へと循環した後、冷却水導出口46から排出される。
【0030】
下部タンク24は、第1〜第3チューブ18、20、26の延在方向と直交する熱交換器ユニット10の厚さ方向に沿って延在し、図2A及び図2Cに示されるように、その内部には、冷媒の流通する第2冷媒循環室(第1冷媒タンク部)48と、冷却水の循環する第2冷却水循環室(第2冷媒タンク部)50とが形成される。なお、下部タンク24は、上部タンク22と略平行に配置される。
【0031】
また、下部タンク24の側面には、図示しない配管等の接続される冷却水導入口52が形成され、前記冷却水導入口52が第2冷却水循環室50と連通している。なお、第2冷媒循環室48は、その略中央部に設けられた第3隔壁53によって第1チューブ18と連通する第1冷媒循環部55aと、第2チューブ20と連通する第2冷媒循環部55bとに分割される。
【0032】
そして、冷却水が冷却水導入口52へ供給されることで、該冷却水導入口52から第2冷却水循環室50へと導入され、複数の第3チューブ26を通じて上部タンク22側へと流通した後、第1冷却水循環室30を経て冷却水導出口46から排出される。この際、第3チューブ26の間に設けられたフィン21を通過する空気が該第3チューブ26を流通する冷却水と熱交換されることで加温される。
【0033】
換言すれば、下部タンク24の第2冷却水循環室50は、冷却水の導入される導入側タンクとして機能し、上部タンク22の第1冷却水循環室30は、前記冷却水の排出される排出側タンクとして機能する。
【0034】
また、液化した冷媒は、上部タンク22の冷媒導入口38へ供給されることで、該冷媒導入口38から第1冷媒循環室28の冷媒導入部32へと導入され、前記上部タンク22の一端部側に設けられた複数の第1チューブ18を通じて下部タンク24側へと流通した後、第3隔壁53によって分割された下部タンク24における第2冷媒循環室48の第1冷媒循環部55aへと流通する。そして、下部タンク24の他端部側に設けられた第1チューブ18によって上部タンク22側へと再び流通した後、第2チューブ20を通じて再び下部タンク24の第2冷媒循環部55bへと連通し、下部タンク24の一端部側に設けられた第2チューブ20から上部タンク22の冷媒導出部34へと流通して冷媒導出口40から排出される。
【0035】
さらに、下部タンク24は、第2冷媒循環室48と第2冷却水循環室50との間が所定間隔離間して設けられ、その間には空間部42bが設けられている。空間部42bは、中空状に形成され、下部タンク24の延在方向に沿って略同一の幅寸法で形成される。すなわち、空間部42bは、第2冷媒循環室48と第2冷却水循環室50と略平行に形成される。すなわち、上部タンク22の空間部42aと下部タンク24の空間部42bとは、互いに向い合うように配置される。
【0036】
本発明の第1の実施の形態に係る熱交換器ユニット10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0037】
先ず、図示しない冷媒供給源(例えば、圧縮機)から配管を通じて熱交換器ユニット10におけるエバポレータ部12に液化した冷媒を供給すると共に、車両のエンジン等を循環した冷却水を配管を通じて前記熱交換器ユニット10におけるヒータコア部14へと供給する。そして、熱交換器ユニット10の上流側から供給された空気が、エバポレータ部12を通過することで冷媒と熱交換されて冷却されヒータコア部14側へと流通し、前記ヒータコア部14の冷却水と熱交換されることで所定温度に加熱されて下流側へと流通する。
【0038】
次に、上述した熱交換器ユニット10を用い、走行中の車両が停車してエンジンが停止したアイドリングストップ状態に送風を行うための蓄冷を行う場合について説明する。
【0039】
車室内へ冷風を供給する通常の冷房モードにおいて、ヒータコア部14における冷却水の循環を停止させることで、前記ヒータコア部14の内部に冷却水が蓄えられた状態とする。そして、エバポレータ部12を通過して冷却された空気がヒータコア部14を通過することによって前記冷却水が徐々に冷却されていく。
【0040】
その結果、ヒータコア部14に蓄えられている冷却水が冷やされて蓄冷体となる。この際、エバポレータ部12やヒータコア部14の冷媒や冷却水の流れ方向等に合わせて、上部タンク22と下部タンク24はそれぞれ連結部の断面積を異ならせてもよい。例えば、冷却水導出口46が設けられている上部タンク22側は冷却水導入口52が設けられている下部タンク24側よりも冷却水の温度が低く、上部タンク22側の連結部の断面積を大きくした場合でもエバポレータ部12は前記ヒータコア部14の熱の影響を受けにくいため、伝熱部44を設けることで連結部の断面積を大きくし、蓄冷時に前記エバポレータ部12の冷気を伝えやすくしてもよい。
【0041】
次に、図示しないアイドリングストップ検知手段によって車両及びエンジンの停止したアイドリングストップ状態が検知される。なお、このアイドリングストップ状態では、エンジンの駆動力を利用して駆動している圧縮機が停止するため、エバポレータ部12への冷媒の供給が停止する。そして、熱交換器ユニット10の上流側から空気が供給されエバポレータ部12を通過した後、該エバポレータ部12の下流側に配置されたヒータコア部14を通過することで冷却された冷却水からなる蓄冷体によって前記空気が所定温度に冷却される。この冷却された空気が、ヒータコア部14から熱交換器ユニット10の下流側へと流通する。そして、例えば、車両用空調装置を通じて車両の車室内へと供給される。
【0042】
その結果、エンジンが停止することで圧縮機の駆動が停止したアイドリングストップ状態においても、熱交換器ユニット10のヒータコア部14に冷却水を冷却させた蓄冷体を予め蓄えておき、前記蓄冷体(冷却水)に空気を通過させることで該空気を好適に冷却して下流側へと供給することが可能となる。
【0043】
以上のように、第1の実施の形態では、上流側に設けられ内部を通過する空気を冷却するエバポレータ部12と、該エバポレータ部12に隣接して下流側に設けられ前記空気を加熱するヒータコア部14とを備える熱交換器ユニット10において、前記エバポレータ部12を通過して冷却された空気を、前記ヒータコア部14を通過させることで該ヒータコア部14に蓄えた冷却水を好適に冷却することができる。
【0044】
その結果、エバポレータ部12及びヒータコア部14が一体的に設けられた熱交換器ユニット10を設けるという簡素な構成で、別個に蓄冷器等を設けることなくヒータコア部14において冷却水を利用して蓄冷を行うことができると共に、該蓄冷された冷却水を利用することで、例えば、車両におけるエンジンの停止時、すなわち、アイドリングストップ時に車室内の冷房を好適に行うことができる。
【0045】
また、ヒータコア部14に冷却水を循環させ、空気を所望の温度に調温して下流側へと供給する際、上部タンク22及び下部タンク24において第1及び第2冷媒循環室28、48と第1及び第2冷却水循環室30、50との間に空間部42a、42bを設けることで断熱を行っているため、前記ヒータコア部14における熱がエバポレータ部12側へと伝わることを抑制することが可能となる。その結果、ヒータコア部14とエバポレータ部12との一体的に配置した場合でも、前記ヒータコア部14が前記エバポレータ部12の冷却に影響を及ぼすことを防止できる。
【0046】
さらに、空間部42a、42bを断熱部として機能させることで、冷却された冷媒の流通する第1及び第2冷媒循環室28、48と、加温された冷却水の流通する第1及び第2冷却水循環室30、50との断熱を容易且つ確実に行うことができる。
【0047】
さらにまた、熱交換器ユニット10において、エバポレータ部12とヒータコア部14とを一体的に成形することで、それぞれ別個に設ける場合と比較し、組み付け工数の削減を図ることが可能となる。
【0048】
またさらに、上部タンク22において空間部42aに隣接するように伝熱部44を設けることで、ヒータコア部14において蓄冷を行う際に、エバポレータ部12の第1冷媒循環室28から前記ヒータコア部14の第1冷却水循環室30へと冷気を好適に伝達させ、冷却水をより一層迅速に冷却することが可能である。
【0049】
また、伝熱部44を、ヒータコア部14において冷却水導出口46の設けられる上部タンク22に設けることで、冷却水は冷却水導入口52と比較して前記冷却水導出口46の近傍において温度が低下しているため、前記冷却水の温度が伝熱部44を伝ってエバポレータ部12へ及ぼす影響を抑制することができる。
【0050】
さらに、空間部42a、42bの内部に断熱材(例えば、ウレタンフォーム、発泡フォーム)を充填させることで断熱を行うようにしてもよい。
【0051】
次に、第2の実施の形態に係る熱交換器ユニット100を図3A及び図3Bに示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る熱交換器ユニット10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0052】
この第2の実施の形態に係る熱交換器ユニット100では、タンク部102を構成する上部タンク104及び下部タンク106が、エバポレータ部12及びヒータコア部14でそれぞれ別個に設けられている点で、第1の実施の形態に係る熱交換器ユニット10と相違している。
【0053】
この熱交換器ユニット100は、図3A及び図3Bに示されるように、上部タンク104は、エバポレータ部12を構成する第1及び第2チューブ18、20の一端部が接続される上部エバポレータタンク108と、ヒータコア部14を構成する第3チューブ26の一端部が接続される上部ヒータコアタンク110とを備え、前記上部エバポレータタンク108と上部ヒータコアタンク110とが互いに所定間隔離間して略平行に配置される。この上部エバポレータタンク108と上部ヒータコアタンク110との間に設けられる空間112aは断熱部として機能する。
【0054】
そして、上部エバポレータタンク108及び上部ヒータコアタンク110の両端部は、一組の第1連結プレート(接続部材)114a、114bによってそれぞれ連結される。
【0055】
一方、下部タンク106は、上述した上部タンク104と同様に、エバポレータ部12における第1及び第2チューブ18、20の他端部が接続される下部エバポレータタンク116と、ヒータコア部14における第3チューブ26の他端部が接続される下部ヒータコアタンク118とを備え、前記下部エバポレータタンク116と下部ヒータコアタンク118とが互いに所定間隔離間して略平行に配置される。この下部エバポレータタンク116と下部ヒータコアタンク118との間に設けられる空間112bは断熱部として機能する。
【0056】
そして、下部エバポレータタンク116及び下部ヒータコアタンク118の両端部は、一組の第2連結プレート(接続部材)120a、120bによってそれぞれ連結される。
【0057】
このように、第2の実施の形態に係る熱交換器ユニット100では、エバポレータ部12を構成する上部及び下部エバポレータタンク108、116と、ヒータコア部14を構成する上部及び下部ヒータコアタンク110、118とをそれぞれ別個に設けると共に、互いに所定間隔離間させて間に空間112a、112bを設けることで、簡便且つ確実に前記空間112a、112bによって前記エバポレータ部12とヒータコア部14との断熱を行うことができる。
【0058】
次に、第3の実施の形態に係る熱交換器ユニット150を図4に示す。なお、上述した第2の実施の形態に係る熱交換器ユニット100と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0059】
この第3の実施の形態に係る熱交換器ユニット150では、上部タンク104及び下部タンク106に対してエバポレータ部12とヒータコア部14との間の断熱を行うための断熱体152が設けられている点で、第2の実施の形態に係る熱交換器ユニット100と相違している。
【0060】
この熱交換器ユニット150は、図4に示されるように、タンク部102を構成する上部タンク104及び下部タンク106の外壁面に断面略U字状の断熱体152が装着される。この断熱体152は、例えば、ウレタンフォームや発泡フォームから形成され、上部タンク104及び下部タンク106の外壁面に密着して覆うように設けられる本体部154と、エバポレータ部12とヒータコア部14との境界部位となる位置に、本体部154の延在方向と直交方向に突出した分離部156とを備える。この分離部156は、上部タンク104における上部エバポレータタンク108と上部ヒータコアタンク110との間に挿入されると共に、下部タンク106における下部エバポレータタンク116と下部ヒータコアタンク118との間に挿入される。すなわち、上部及び下部エバポレータタンク108、116と上部及び下部ヒータコアタンク110、118との間に挿入されることで、互いの断熱を行い断熱部として機能している。
【0061】
このように、第3の実施の形態に係る熱交換器ユニット150では、上部タンク104及び下部タンク106に対してそれぞれ断熱体152を装着し、前記断熱体152の本体部154から突出し、上部及び下部エバポレータタンク108、116と上部及び下部ヒータコアタンク110、118との間に挿入される分離部156を設けることで、前記エバポレータ部12とヒータコア部14との断熱を簡便且つ確実に行うことができる。
【0062】
なお、本発明に係る熱交換器ユニットは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0063】
10、100、150…熱交換器ユニット
12…エバポレータ部 14…ヒータコア部
16、102…タンク部 18…第1チューブ
20…第2チューブ 22、104…上部タンク
24、106…下部タンク 26…第3チューブ
38…冷媒導入口 40…冷媒導出口
42a、42b…空間部 44…伝熱部
46…冷却水導出口 52…冷却水導入口
108…上部エバポレータタンク 110…上部ヒータコアタンク
112a、112b…空間 114a、114b…第1連結プレート
116…下部エバポレータタンク 118…下部ヒータコアタンク
120a、120b…第2連結プレート
152…断熱体 156…分離部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流通する第1冷媒と熱交換することで空気を冷却する第1熱交換器と、内部に流通する第2冷媒と熱交換することで、該第1熱交換器を通過した前記空気を加熱する第2熱交換器とを有する熱交換器ユニットにおいて、
前記第1熱交換器は、前記空気と前記第1冷媒との熱交換を行う第1熱交換部と、前記第1熱交換部の端部に設けられ前記第1冷媒が一時的に蓄えられる第1冷媒タンク部とを備え、前記第2熱交換器は、前記空気と前記第2冷媒との熱交換を行う第2熱交換部と、前記第2熱交換部の端部に設けられ前記第2冷媒が一時的に蓄えられる第2冷媒タンク部とを備え、前記第1冷媒タンク部と前記第2冷媒タンク部とが連結される連結部を有すると共に、前記第1冷媒タンク部と第2冷媒タンク部との間に断熱部を有することを特徴とする熱交換器ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の熱交換器ユニットにおいて、
前記第1冷媒タンク部と前記第2冷媒タンク部とが一体成形で形成されることを特徴とする熱交換器ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の熱交換器ユニットにおいて、
前記断熱部は、前記第1冷媒タンク部と前記第2冷媒タンク部との間に設けられた空間であることを特徴とする熱交換器ユニット。
【請求項4】
請求項1又は2記載の熱交換器ユニットにおいて、
前記断熱部は、前記第1冷媒タンク部と、前記第2冷媒タンク部との間に断熱体が設けられていることを特徴とする熱交換器ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器ユニットにおいて、
前記第1冷媒タンク部と前記第2冷媒タンク部は、それぞれ前記第1冷媒と前記第2冷媒が流れるチューブの両端に形成されると共に、一端の前記第1冷媒タンク部と前記第2冷媒タンク部の前記連結部は、他端の前記第1冷媒タンク部と前記第2冷媒タンク部の前記連結部と断面積が異なることを特徴とする熱交換器ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113572(P2013−113572A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263410(P2011−263410)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】