説明

熱交換器及びこれを用いた給湯装置

【課題】外管の全体または下流側のみを径の大きい管によって形成せずとも、スケールの堆積による流通阻害を効果的に防止することのできる熱交換器及びこれを用いた給湯装置を提供する。
【解決手段】給湯用水の下流側となる第1の内管51の本数を上流側となる第2の内管52の本数よりも少なくすることにより、第1の外管53と各第1の内管51との間に、第2の外管54と各第2の内管52との間よりも大きい流通断面積を確保することができるので、外管53,54の全体または下流側の外管53のみを径の大きい管によって形成せずとも、スケールの堆積による下流側の外管53内の流通阻害を効果的に防止することができる。この場合、給湯用水の上流側の第2の内管52は下流側の第1の内管51よりも本数が多くなるので、各第2の内管52によって給湯用水を十分に加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヒートポンプ式給湯装置の水熱交換器として用いられる熱交換器及びこれを用いた給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のヒートポンプ式給湯装置としては、ヒートポンプ回路によって給湯用水を加熱する加熱ユニットと、加熱ユニットで生成された温水を貯溜するタンクユニットとを備え、タンクユニットの温水を浴槽や台所に供給するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この給湯装置の加熱ユニットは、圧縮機、蒸発器、水熱交換器(ガスクーラ)等からなる冷媒回路を備え、給湯用水を水熱交換器で加熱し、温水配管を介してタンクユニットに供給するようにしている。また、前記給湯装置の水熱交換器は、ヒートポンプ回路の高温冷媒を流通する内管と、内管が内部に配置された外管とからなり、内管と外管との間に給湯用水を流通することにより、内管を介して冷媒と給湯用水とを熱交換するように構成されている。
【0004】
ところで、前記内管及び外管には、給湯用水に含まれるカルシウムやマグネシウム等を主成分とする、いわゆるスケール(例えば、炭酸カルシウム)が付着しやすく、冷媒と給湯用水とを対向流とした場合は、特に給湯用水の下流側(高温側)にスケールが強固に付着して堆積し、給湯用水の流通を阻害するという問題がある。そこで、従来では外管の全体または下流側のみを径の大きい管によって形成することにより、内管と外管との間の流通断面積を十分に確保し、スケールが堆積しても給湯用水の流通が阻害されないようにしている。
【特許文献1】特開2006−46877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外管の全体または下流側のみを径の大きい管によって形成すると、外管の材料となる管の種類やコストが増加し、生産性を低下させるという問題点があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外管の全体または下流側のみを径の大きい管によって形成せずとも、スケールの堆積による流通阻害を効果的に防止することのできる熱交換器及びこれを用いた給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、第1の熱媒体を流通する伝熱性の内管と、内管が内部に配置された外管とを備え、内管と外管との間に第2の熱媒体を流通することにより、内管を介して第1の熱媒体と第2の熱媒体とを熱交換するようにした熱交換器において、前記第2の熱媒体の下流側の内管の本数が第2の熱媒体の上流側の内管の本数よりも少なくなるように構成している。
【0008】
これにより、第2の熱媒体の下流側の内管の本数が上流側の内管の本数よりも少ないことから、第2の熱媒体の下流側の外管と内管との間には、上流側の外管と内管との間よりも大きい流通断面積が確保され、例えば第2の熱媒体としての給湯用水の下流側にスケールが堆積しても、第2の熱媒体の流通が阻害されることがない。また、第2の熱媒体の上流側の内管は下流側の内管よりも本数が多いので、上流側の内管によって第2の熱媒体が十分に加熱される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2の熱媒体の下流側の外管と内管との間に上流側の外管と内管との間よりも大きい流通断面積を確保することができるので、外管の全体または下流側の外管のみを径の大きい管によって形成せずとも、スケールの堆積による下流側の外管内の流通阻害を効果的に防止することができる。従って、外管の材料となる管の種類やコストを増加させることがないので、生産性の向上を図ることができる。この場合、第2の熱媒体の上流側の内管によって第2の熱媒体を十分に加熱することができるので、全体の熱交換効率を低下させることがないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図5は本発明の一実施形態を示すもので、図1はヒートポンプ式給湯装置の概略構成図、図2は第1の水熱交換器の概略構成図、図3はその平面図、図4はその側面図、図5は図3におけるX−X線矢視方向断面図である。
【0011】
同図に示すヒートポンプ式給湯装置は、冷媒を流通する冷媒回路10と、給湯用水を流通する第1の給湯回路20と、給湯用水を流通する第2の給湯回路30と、浴槽用水を流通する浴槽用回路40と、冷媒回路10の冷媒と第1の給湯回路20の給湯用水とを熱交換する第1の水熱交換器50と、第2の給湯回路30の給湯用水と浴槽用回路40の浴槽用水とを熱交換する第2の水熱交換器60とを備え、第1の水熱交換器50は本発明の熱交換器を構成している。
【0012】
冷媒回路10は、圧縮機11、膨張弁12、空気熱交換器13及び第1の水熱交換器50を接続してなり、圧縮機11→第1の水熱交換器50→膨張弁12→空気熱交換器13→圧縮機11の順に冷媒を流通させるようになっている。尚、この冷媒回路10で使用される冷媒は、例えば二酸化炭素等の自然系冷媒である。
【0013】
第1の給湯回路20は、貯湯タンク21、第1のポンプ22及び第1の水熱交換器50を接続してなり、貯湯タンク21→第1のポンプ22→第1の水熱交換器50→貯湯タンク21の順に給湯用水を流通させるようになっている。貯湯タンク21には、給水管23及び第2の給湯回路30が接続され、給水管23から供給された給湯用水は貯湯タンク21を介して第1の給湯回路20を流通するようになっている。貯湯タンク21と浴槽41とは、第2のポンプ24が設けられた流路25を介して接続され、第2のポンプ24によって貯湯タンク21内の給湯用水が浴槽41に供給されるようになっている。
【0014】
第2の給湯回路30は、貯湯タンク21、第3のポンプ31及び第2の水熱交換器60を接続してなり、貯湯タンク21→第2の水熱交換器60→第3のポンプ31→貯湯タンク21の順に給湯用水を流通させるようになっている。
【0015】
浴槽用回路40は、浴槽41、第4のポンプ42及び第2の水熱交換器60を接続してなり、浴槽41→第4のポンプ42→第2の水熱交換器60→浴槽41の順に浴槽用水を流通させるようになっている。
【0016】
第1の水熱交換器50は、冷媒回路10及び第1の給湯回路20に接続され、冷媒回路10を流通する第1の熱媒体としての冷媒と第1の給湯回路20を流通する第2の熱媒体としての給湯用水とを熱交換させるようになっている。第1の水熱交換器50は、冷媒を流通する伝熱性の第1及び第2の内管51,52と、第1及び第2の内管51,52がそれぞれ内部に配置される第1及び第2の外管53,54と、第1及び第2の内管51,52の一端がそれぞれ接続された一対の第1の端部ヘッダー55と、第1及び第2の外管53,54の一端がそれぞれ接続された一対の第2の端部ヘッダー56と、第1及び第2の内管51,52の他端が接続された第1の中間ヘッダー57と、第1及び第2の外管53,54の他端が接続された第2の中間ヘッダー58とからなり、各内管51,52及び各外管53,54は渦巻状に巻回されている。この場合、第1の外管53内には2本の第1の内管51が配置され、第2の外管54内には4本の第2の内管52が配置されている。
【0017】
各第1の端部ヘッダー55は冷媒回路10に接続され、それぞれ冷媒の流入管55a及び流出管55bが接続されている。この場合、流入側の第1の端部ヘッダー55には各第1の内管51が互いに並列に接続され、流出側の第1の端部ヘッダー55には各第2の内管52が互いに並列に接続されている。各第2の端部ヘッダー56は第1の給湯回路20に接続され、それぞれ給湯用水の流入管56a及び流出管55bが接続されている。この場合、流入側の第2の端部ヘッダー56には各第2の内管52が貫通しており、流出側の第2の端部ヘッダー56には各第1の内管51が貫通している。
【0018】
第1の中間ヘッダー57は、一対のヘッダー部57aと、各ヘッダー部57aを互いに連通する連通管57bとからなり、一方のヘッダー部57aには各第1の内管51が互いに並列に接続され、他方のヘッダー部57aには各第2の内管52が互いに並列に接続されている。この場合、第1の中間ヘッダー57には第1及び第2の内管51,52が同一方向から接続されている。第2の中間ヘッダー58には、第1及び第2の外管53,54が同一方向から接続されるとともに、第1及び第2の内管51,52がそれぞれ貫通している。
【0019】
また、第1の内管51及び第1の外管53は、外側から内側に向かって巻回する巻回部A1 と、内側から外側に向かって巻回する巻回部A2 とが互いに上下2段に配列され、各巻回部A1 ,A2 の内側で管路を上下方向にずらすことにより、各巻回部A1 ,A2 の管路が連続するように形成されている。第2の内管52及び第2の外管54は、内側から外側に向かって巻回する巻回部A2 と、外側から内側に向かって巻回する巻回部A1 とが互いに上下2段に配列され、各巻回部A1 ,A2 の内側で管路を上下方向にずらすことにより、各巻回部A1 ,A2 の管路が連続するように形成されている。第1の内管51及び第1の外管53の巻回部A1 ,A2 は、第2の内管52及び第2の外管54の巻回部A1 ,A2 の上方に配置され、各巻回部A1 ,A2 が上下4段に配列されている。
【0020】
第2の水熱交換器60は、第2の給湯回路30及び浴槽用回路40に接続され、第2の給湯回路30の給湯用水と浴槽用回路40の浴槽用水とを熱交換させるようになっている。
【0021】
また、前記給湯装置は、冷媒回路10及び第1の水熱交換器50が配置された加熱ユニット70と、貯湯タンク21、第1のポンプ22、第2のポンプ24、第2の給湯回路30、第4のポンプ42及び第2の水熱交換器60が配置されたタンクユニット80とを備え、加熱ユニット70とタンクユニット80とは第1の給湯回路20を介して接続されている。
【0022】
以上のように構成された給湯装置においては、冷媒回路10の高温冷媒と第1の給湯回路20の給湯用水とが第1の水熱交換器50によって熱交換され、給湯用水が加熱される。第1の水熱交換器50では、図2の一点鎖線矢印に示すように、冷媒回路10の冷媒が一方の第1の端部ヘッダー55を介して各第1の内管51に流入し、各第1の内管51を流通した後、第1の中間ヘッダー57を介して各第2の内管52に流入し、各第2の内管52を流通した後、他方の第1の端部ヘッダー55を介して外部に流出する。また、図2の実線矢印に示すように、給湯回路20の給湯用水が一方の第2の端部ヘッダー56を介して第2の外管54に流入し、第2の外管54と各第2の内管52との間を流通した後、第2の中間ヘッダー58を介して第1の外管53に流入し、第1の外管53と各第1の内管51との間を流通した後、他方の第2の端部ヘッダー56を介して外部に流出する。即ち、第1の水熱交換器50では、冷媒と給湯用水が互いに反対方向に流通する。その際、給湯用水の下流側となる第1の内管51は、給湯用水の上流側となる第2の内管52よりも本数が少ないため、第1の外管53と各第1の内管51との間には、第2の外管54と各第2の内管52との間よりも大きい流通断面積が確保され、給湯用水の下流側にスケールが堆積しても給湯用水の流通が阻害されることがない。また、給湯用水の上流側の第2の内管52は下流側の第1の内管51よりも本数が多いため、各第2の内管52によって給湯用水が十分に加熱される。
【0023】
このように、本実施形態によれば、給湯用水の下流側となる第1の内管51の本数を上流側となる第2の内管52の本数よりも少なくすることにより、第1の外管53と各第1の内管51との間に、第2の外管54と各第2の内管52との間よりも大きい流通断面積を確保することができるので、外管53,54の全体または下流側の外管53のみを径の大きい管によって形成せずとも、スケールの堆積による下流側の外管53内の流通阻害を効果的に防止することができる。従って、外管53,54の材料となる管の種類やコストを増加させることがなく、生産性の向上を図ることができる。この場合、給湯用水の上流側の第2の内管52は下流側の第1の内管51よりも本数が多くなるので、各第2の内管52によって給湯用水を十分に加熱することができ、全体の熱交換効率を低下させることがないという利点がある。
【0024】
また、給湯用水の上流側と下流側との間に、第1の内管51及び第1の外管53と第2の内管52及び第2の外管54とが同一方向から接続される第1及び第2の中間ヘッダー57,58を設け、各中間ヘッダー57,58で管路を折り返すようにしたので、各内管51,52及び各外管53,54が長大になることがなく、第1の水熱交換器50の全体を小型化することができる。
【0025】
更に、各内管51,52及び各外管53,54を渦巻状に巻回するとともに、外側から内側に向かって巻回する巻回部A1 と、内側から外側に向かって巻回する巻回部A2 とを互いに上下方向に配列し、隣り合う巻回部A1 ,A2 の内側で管路を上下方向にずらすことにより、各巻回部A1 ,A2 の管路が連続するように形成したので、長さ寸法の大きい各内管51,52及び各外管53,54を効率良く巻回することができ、小型化に極めて有利である。
【0026】
尚、前記実施形態では、隣り合う巻回部A1 ,A2 の内側で管路をずらすようにしたものを示したが、巻回部A1 ,A2 の外側で管路をずらすようにしてもよい。
【0027】
また、前記実施形態では、本発明の熱交換器をヒートポンプ式給湯装置の第1の水熱交換器50として用いたものを示したが、本発明は第1の熱媒体と第2の熱媒体とを熱交換するものであれば、他の用途の熱交換器にも適用することができる。
【0028】
図6乃至図8は本発明の他の実施形態を示すもので、図6は第1の水熱交換器の平面図、図7はその側面図、図8は図6におけるY−Y線矢視方向断面図である。尚、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0029】
本実施形態では、上下4段の各巻回部A1 ,A2 のうち、下から2段目までの巻回部A1 ,A2 が他の巻回部A1 ,A2 よりも一側方(各巻回部A1 ,A2 の配列方向に直交する方向)に所定長さLだけ延出するように形成され、この延出部54aは加熱ユニット70内の蒸発器13の下方に配置されている。これにより、延出部54aを設けない場合はデッドスペースとなる蒸発器13の下方空間に延出部54aを配置することができるので、延出部54aを有する分だけ第2の外管54を長くして容量を増大させることができ、第1の水熱交換器50の能力の向上を図ることができる。
【0030】
尚、前記実施形態では、第1の水熱交換器50の延出部54aを蒸発器13の下方に配置したものを示したが、蒸発器13以外の他の機器の下方に延出部54aを配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態を示すヒートポンプ式給湯装置の概略構成図
【図2】第1の水熱交換器の概略側面図
【図3】第1の水熱交換器の平面図
【図4】第1の水熱交換器の側面図
【図5】図3におけるX−X線矢視方向断面図
【図6】本発明の他の実施形態を示す第1の水熱交換器の平面図
【図7】第1の水熱交換器の側面図
【図8】図6におけるY−Y線矢視方向断面図
【符号の説明】
【0032】
50…第1の水熱交換器、51…内管、52…外管、54a…延出部、57…第1の中間ヘッダー、58…第2の中間ヘッダー、A1 ,A2 …巻回部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱媒体を流通する伝熱性の内管と、内管が内部に配置された外管とを備え、内管と外管との間に第2の熱媒体を流通することにより、内管を介して第1の熱媒体と第2の熱媒体とを熱交換するようにした熱交換器において、
前記第2の熱媒体の下流側の内管の本数が第2の熱媒体の上流側の内管の本数よりも少なくなるように構成した
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記第2の熱媒体の上流側の内管と下流側の内管との間に設けられ、上流側の内管と下流側の内管とが同一方向から接続される第1の中間ヘッダーと、
第2の熱媒体の上流側の外管と下流側の外管との間に設けられ、上流側の外管と下流側の外管とが同一方向から接続される第2の中間ヘッダーとを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記内管及び外管を渦巻状に巻回するとともに、外側から内側に向かって巻回する巻回部と、内側から外側に向かって巻回する巻回部とを交互に配列し、隣り合う巻回部の内側または外側で管路を巻回部の配列方向にずらすことにより、各巻回部間で管路が連続するように形成した
ことを特徴とする請求項1または2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記各巻回部のうち一部の巻回部を他の巻回部よりも各巻回部の配列方向に直交する方向に延出するように形成した
ことを特徴とする請求項3記載の熱交換器。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の熱交換器を備え、
熱交換器の外管内に第2の熱媒体としての給湯用水を流通し、熱交換器の各内管に給湯用水を加熱する第1の熱媒体を流通する
ことを特徴とする給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−270809(P2009−270809A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191924(P2008−191924)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】