説明

熱交換器

【課題】簡単な構成で熱交換器全体を効率的に防食可能な装置を備える熱交換器を提供する。
【解決手段】本体胴11、複数の冷却管13、支え板16、水室を形成する水室カバー17、冷却管13の両端部を支持する管板15を含む熱交換器本体20と、直流電流を供給可能な外部直流電源装置40と、該冷却水流入水室カバー17aに電気的に絶縁した状態で取り付けられた不溶性電極30と、電位を検出する照合電極31と、を含み、該外部直流電源装置40の直流電流出力回路の正極を該不溶性電極30と接続し、該外部直流電源装置40の直流電流出力回路の負極を、管板15、及び該支え板16に接続し、海水を介して該冷却水流入水室カバー17、管板15、及び該冷却管13に防食電流を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所などで使用される蒸気を冷却凝縮させる復水器など冷却水として
海水を使用する熱交換器に関し、特に外部電源方式による防食機能を備える熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却媒体に海水を使用する熱交換器は、発電所、化学工場を始め多くの場所で使用されていることは周知のところである。火力発電所では、ボイラで発生させた蒸気を用いて蒸気タービンを駆動し、蒸気タービンに連結する発電機で発電を行い、蒸気タービンから排気される蒸気を、復水器で冷却凝縮させ復水にしている。火力発電所で使用されるボイラ、蒸気タービンは大型で、蒸気タービンから排気される蒸気量も多いことから、排気蒸気の冷却には海水が使用されている。また、軸冷却水を冷却する淡水冷却器にも海水が冷却水として使用されている。
【0003】
火力発電所においては復水器には、一般に表面復水器が使用される。表面復水器は、本体胴上部に排気入口部を有し、本体胴内部に複数の冷却管を有する。本体胴の両側部には、冷却管に冷却水である海水を送るための冷却水流入水室、冷却管から排出される海水を集め外部に排出する冷却水流出水室が設けられている。冷却管は、両端を管板で支持され、管板は、本体胴と水室との間に固定されている。また冷却管は、管の中間部がいくつかの支え板によって支持されている。
【0004】
復水器は、冷却水として海水を使用するため、材料が腐食しやすい。このため従来から、管板、水室を局所電池作用や異種金属接触による腐食から守るために電気防食法や、酸化鉄の皮膜を形成し、酸化鉄皮膜によって腐食を抑制する方法が採用されている。図2は従来の一般的な電気防食装置を備える復水器1の概略的構成の一部を示す図である。図2に示す復水器1は、電気防食(外部電源法)により材料の腐食を防止する方法を採用し、水室2を形成するカバー3の一部に設置された陽極4を、直流電源装置5の直流電流出力回路の正極と接続し、直流電源装置5の直流電流出力回路の負極を管板6に接続し、海水を介して水室2に外部の直流電源装置5から防食電流を流し、水室2の内壁、管板6等を腐食から守っている。防食電位の検出は、水室2内に取り付けられた照合電極7を用いて行われる。
【0005】
外部電源法による電気防食に関しては、海水の水質悪化に伴い、通電開始当初は少ない防食電流であっても、防食電流が暫時増加してしまい、装置の最大出力電流値を超えてしまう事態が生じることも指摘されており、これを解決するため、防食電流通電開始から所定時間経過時に通電を停止し、通電停止から所定時間経過後に防食電流の通電を再開する手順を繰り返す方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−92980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、電気防食装置の容量を超えた防食電流が必要な状態となっても、一時的に通電を停止し、その後通電を再開することにより、再び電気防食装置の容量内で海水冷却水系統機器の防食管理電位の維持が可能となるので、新たに大容量の電気防食装置を設置する必要がないとする。
【0007】
ところで、復水器の腐食は、水室、管板のみに発生するものではなく冷却管にも発生する。しかしながら、特許文献1に記載の技術、及び図2に示すような従来の外部電源方式の電気防食法を備える復水器においては、外部電源装置の負極を管板に接続するため電気防食がおよぶ範囲は、通常、水室内壁、管板面であり、冷却管に対しては管入口より管径の約10倍程度と言われており、冷却管の中間部は電気防食により防食されない。復水器全体を防食するためには、冷却管の防食も必要であり、簡単な構成で復水器全体を効率的に防食可能な機能を備える復水器の開発が待たれている。これについては、淡水冷却器を始めとする熱交換器についても同様である。
【0008】
本発明の目的は、簡単な構成で熱交換器全体を効率的に防食可能な装置を備える熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本体胴、該本体胴に設置された複数の冷却管、該冷却管の中間部を支持する支え板、該本体胴の一端部に設けられ該冷却管に冷却水である海水を供給する冷却水流入水室を形成する冷却水流入水室カバー、該本体胴の他端部に設けられ該冷却管から流出する冷却水である海水を外部に排出する冷却水流出水室を形成する冷却水流出水室カバー、該冷却管の両端部を支持し、該本体胴と該冷却水流入水室カバーとの間及び該本体胴と該冷却水流出水室カバーとの間に各々位置し、該本体胴と該冷却水流入水室及び該本体胴と該冷却水流出水室とを仕切る一対の管板を含む熱交換器本体と、
直流電流を供給可能な外部直流電源装置と、
該冷却管と対向する側の該冷却水流入水室カバーに電気的に絶縁した状態で取り付けられた不溶性電極と、
該冷却水流入水室内に設置された該外部直流電源装置と接続し、電位を検出する照合電極と、を含み、
該外部直流電源装置の直流電流出力回路の正極を該不溶性電極と接続し、該外部直流電源装置の直流電流出力回路の負極を、防食対象物である該本体胴と該冷却水流入水室カバーとの間に位置する該管板、及び該支え板に接続し、海水を介して該冷却水流入水室カバー、該本体胴と該冷却水流入水室カバーとの間に位置する該管板、及び該冷却管に防食電流を供給することを特徴とする熱交換器である。
【0010】
また本発明で、前記熱交換器本体は、蒸気タービンから排気される排気蒸気を冷却凝縮させる復水器であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱交換器は、熱交換器本体と、外部直流電源装置を備え、外部直流電源装置の直流電流出力回路の正極を、冷却水流入水室カバーに電気的に絶縁した状態で取り付けられた不溶性電極と接続し、外部直流電源装置の直流電流出力回路の負極を、本体胴と冷却水流入水室カバーとの間に位置する防食対象である管板、及び支え板に接続し、海水を介して冷却水流入水室カバー、本体胴と冷却水流入水室カバーとの間に位置する管板、及び冷却管に防食電流を供給するので、簡単な構成で熱交換器全体を効率的に防食することができる。特に従来の外部電源方式を採用する熱交換器と異なり、冷却管全体を防食できる点に特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の一形態としての復水器10の概略的構成の一部を示す図である。本発明の復水器10は、表面復水器であり、復水器本体20と、電源装置40を主に構成される。表面復水器本体20は、本体胴11、複数の冷却管13、冷却管の中間部を支持する支え板16、水室を形成する水室カバー17、冷却管の両端部を支持する管板15などを含み構成される。
【0013】
本体胴11は、上部に蒸気タービンの排気蒸気口(図示を省略)と連結する排気入口部12を有し、内部に蒸気タービンから排気される排気蒸気を冷却する多数の冷却管13を有する。本体胴11の両側部には、冷却管13に冷却水である海水を供給するための冷却水流入水室14a、冷却管13から排出される冷却水である海水を集め外部に排出するための冷却水流出水室14b(図示を省略)を有する。
【0014】
冷却管13は、アルミニウム黄銅管で両端を一対の管板15(15a、15b(図示を省略))で水平に支持され、中間部が鋼板からなる支え板16(16a、16b、16c・・・)によって支持されている。管板15は、銅合金製で、本体胴11と水室14とを仕切る隔壁として機能するため、管板15と冷却管13との接続は、接続部から本体胴11側へ海水が流入しないように固定される。また、管板15は、本体胴11との接続部から空気が洩れ込まないように、また水室14との接続部から海水が外部に洩れないように、本体胴11と水室14との間に固定される。
【0015】
水室14を形成する水室カバー17は、内面にゴムライニングが施された鋼板からなり、冷却水が流入する冷却水流入水室14aを形成する冷却水流入水室カバー17aには、冷却水(海水)を導入するための管路18、冷却水が流出する冷却水流出水室14b(図示を省略)を形成する冷却水流出水室カバー17b(図示を省略)には、冷却水を外部に排出するための管路(図示を省略)が配設されている。また冷却水流入水室カバー17の反冷却管側に、電気防食を施すための不溶性電極30a、30bが、冷却水流入水室カバー17aとは電気的に絶縁した状態に取り付けられている。また、水室14a内には、復水器本体20内の防食電位を検出するために照合電極31が、水室14aとは電気的に絶縁した状態で取り付けられている。
【0016】
電源装置40は、電極を介して復水器本体20に防食電流(直流電流)を与える装置であり、直流電流出力回路の正極端子は、冷却水流入水室カバー17aに電気的に絶縁した状態に取り付けられた不溶性電極30a、30bと接続する。照合電極31も、電源装置40と接続され、復水器本体20内の防食電位を検出する。一方、電源装置40の直流電流出力回路の負極端子は、防食対象物である管板15a、及び支え板16(16a、16b、16c・・・)と接続する。本発明の復水器10の特徴は、従来の復水器と異なり、電源装置40の直流電流出力回路の負極を管板15aのみならず、冷却管13を支える支え板16(16a、16b、16c・・・)にも接続した点にある。
【0017】
上記のように構成される本発明の復水器10を電気防食するときは、電源装置40をONとし、直流電流出力回路の正極端子に接続された不溶性電極30a、30b(陽極)から、海水を介して管板15a、冷却管13、及び冷却水流入水室14aに防食電流を供給する。冷却管13の支え板16(16a、16b、16c・・・)は、冷却管13と電気的に導通するため、冷却管13には、支え板16(16a、16b、16c・・・)を通じて防食電流が供給される。管板15a、冷却管13、及び水室14aの電位は、照合電極31で検出され、電源装置40は、この電位が設定の電位となるように制御する。
【0018】
従来の外部電源方式を採用する復水器は、外部電源装置の直流電流出力回路の負極は、管板に接続され、冷却管には接続されていなかったため、冷却管には十分な防食電流が供給されていなかった。これに対して、本発明の復水器では、支え板が電源装置の直流電流出力回路の負極と接続するため、支え板を介して冷却管にも防食電流が十分に供給される。この結果、本発明の復水器は、冷却管も含め全体が効率的に電気防食される。また本発明の復水器は、冷却管全体、又は目的とする部分を電源装置の直流電流出力回路の陰極と接続することで、鉄イオン注入装置により、冷却管の保護皮膜形成のために注入された鉄イオン、又はコロイド粒子としてプラスに帯電した水酸化鉄粒子を、冷却管全体、又は目的とする部分に付着させ水酸化鉄の皮膜を形成させることができる。
【0019】
上記のように、本発明の特徴は、従来の外部電源方式を採用する復水器と異なり、外部電源装置の直流電流出力回路の負極を、管板のみならず支え板にも接続するため、支え板を介して冷却管にも防食電流が十分に供給され、その結果、冷却管も含め復水器全体が効率的に電気防食される点にある。これらのことから、本発明は、復水器に限定されることなく、腐食環境が強い海水を冷却用媒体として使用するような冷却器、熱交換器、例えば軸冷却水を海水で冷却する淡水冷却器などは、基本的な構成が復水器と同一であり、これらにも本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の一形態としての復水器10の概略的構成の一部を示す図である。
【図2】従来の一般的な電気防食装置を備える復水器1の概略的構成の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
10 復水器
11 本体胴
13 冷却管
14a 冷却水流入水室
15a 管板
16 支え板
17a 冷却水流入水室カバー
20 復水器本体
30 不溶性電極
31 照合電極
40 電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体胴、該本体胴に設置された複数の冷却管、該冷却管の中間部を支持する支え板、該本体胴の一端部に設けられ該冷却管に冷却水である海水を供給する冷却水流入水室を形成する冷却水流入水室カバー、該本体胴の他端部に設けられ該冷却管から流出する冷却水である海水を外部に排出する冷却水流出水室を形成する冷却水流出水室カバー、該冷却管の両端部を支持し、該本体胴と該冷却水流入水室カバーとの間及び該本体胴と該冷却水流出水室カバーとの間に各々位置し、該本体胴と該冷却水流入水室及び該本体胴と該冷却水流出水室とを仕切る一対の管板を含む熱交換器本体と、
直流電流を供給可能な外部直流電源装置と、
該冷却管と対向する側の該冷却水流入水室カバーに電気的に絶縁した状態で取り付けられた不溶性電極と、
該冷却水流入水室内に設置された該外部直流電源装置と接続し、電位を検出する照合電極と、を含み、
該外部直流電源装置の直流電流出力回路の正極を該不溶性電極と接続し、該外部直流電源装置の直流電流出力回路の負極を、防食対象物である該本体胴と該冷却水流入水室カバーとの間に位置する該管板、及び該支え板に接続し、海水を介して該冷却水流入水室カバー、該本体胴と該冷却水流入水室カバーとの間に位置する該管板、及び該冷却管に防食電流を供給することを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記熱交換器本体は、蒸気タービンから排気される排気蒸気を冷却凝縮させる復水器であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−85599(P2007−85599A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273112(P2005−273112)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)