説明

熱交換器

【課題】ヘッダプレートとタンクプレートとを有する筒部の端部にキャップ部材を設ける場合に、給排管部との接続口を大きくして乱流の発生を抑制しながら、ヘッダプレートとタンクプレートとの接合を確実に行うことができるようにする。
【解決手段】チューブ2と、ヘッダタンク10とを備えた熱交換器1において、ヘッダタンク10は、ヘッダプレート11及びタンクプレート12が組み合わされてなる筒部13と、キャップ部材14とを備え、ヘッダプレート11と、タンクプレート12とは、筒部13の内外方向に重なるように配置され、キャップ部材14は、筒部13における端部の外側に嵌る嵌合部14bと、筒部13におけるヘッダプレート11とタンクプレート12との重なり部分に対し外側からかしめられるかしめ部14cとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッダタンクを備えた熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば車両用空調装置に設けられる熱交換器は、所定方向に並ぶ複数のチューブと、チューブの並び方向に延びるとともに該チューブの端部に連通するヘッダタンクとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のヘッダタンクは、チューブ挿入孔が形成されたヘッダプレートと、タンクを構成するタンクプレートとからなる筒部と、筒部の両端部に取り付けられるキャップ部材とを備えている。
【0003】
キャップ部材は、筒部の端部開口の内側に嵌る嵌合部(図7に示す)と、筒部の外周面に係合する爪部とを備えている。キャップ部材の嵌合部には、冷媒の給排通路を有する給排管が接続され、この給排管を介して冷媒が熱交換器に供給、または熱交換器から排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−92359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、キャップ部材の嵌合部を筒部の端部開口の内側に嵌めるようにすると、嵌合部の周囲が筒部の内面に沿うように位置することになるので、給排管を接続するための接続口は小さくなってしまう。
【0006】
そして、そのように嵌合部が筒部の内側に位置していて接続口が小さくなっていると、冷媒が例えば筒部から給排管へ流出しようとした際、嵌合部に衝突する流れが多く、乱流が発生し易い。乱流が発生すると、熱交換性能に悪影響を与えるだけでなく、大きな冷媒流通音が発生してしまう。
【0007】
さらに、特許文献1のようなヘッダプレートとタンクプレートとからなる筒部にキャップ部材の嵌合部を嵌めると、嵌合部はヘッダプレートとタンクプレートとを互いに離す方向に力を作用させることになり、不良品の発生懸念がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ヘッダプレートとタンクプレートとを有する筒部の端部にキャップ部材を設ける場合に、給排管との接続口を大きくして乱流の発生を抑制しながら、ヘッダプレートとタンクプレートとの接合を確実に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、キャップ部材を筒部の外側に嵌めるようにし、さらに、キャップ部材を、筒部のヘッダプレートとタンクプレートとの重なり部分に対し外側からかしめるようにした。
【0010】
第1の発明は、所定方向に並ぶように設けられた複数のチューブと、上記チューブの端部に連通するとともに、該チューブの並び方向に延びるヘッダタンクとを備えた熱交換器において、上記ヘッダタンクは、上記チューブの端部が挿入されるチューブ挿入孔を有するヘッダプレート及びタンク部分を形成するタンクプレートが組み合わされてなる筒部と、該筒部の端部開口を閉塞するためのキャップ部材とを備え、上記ヘッダプレートにおけるタンクプレート側と、上記タンクプレートにおけるヘッダプレート側とは、上記筒部の内外方向に重なるように配置され、上記キャップ部材は、上記筒部における端部の外側に嵌る嵌合部と、上記筒部における上記ヘッダプレートと上記タンクプレートとの重なり部分に対し外側からかしめられるかしめ部とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、キャップ部材を筒部に取り付けると、嵌合部が筒部の外側に嵌るので、従来例の筒部の内側に嵌るものに比べて、給排管部の接続口を大径にすることが可能になる。これにより、乱流の発生が抑制される。
【0012】
そして、キャップ部材のかしめ部は、ヘッダプレートとタンクプレートとの重なり部分に対し外側からかしめられるので、かしめ部が両プレートの重なり部分を外側から押さえることになり、両プレートの重なり部分を密着させることが可能になる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、上記ヘッダプレート及び上記タンクプレートの一方のプレートには、ヘッダタンク内側へ窪む凹部が形成され、上記キャップ部材のかしめ部は、上記凹部にかしめられていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、キャップ部材のかしめ部が凹部にかしめられることになるので、かしめ部が凹部から外れにくくなる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、上記ヘッダプレート及び上記タンクプレートの一方のプレート内面には、上記凹部に対応して上記ヘッダタンク内側へ突出する凸部が形成され、他方のプレートは、一方のプレートの内面側へ挿入されて上記凸部に係合して位置決めされることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、凹部の形成によって一方のプレートの内面に生じた凸部を、他方のプレートの位置決めに利用するようにしたので、位置決め部を別途形成せずに済む。
【0017】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、上記キャップ部材のかしめ部は、片状に形成され、上記かしめ部の先端側は、上記ヘッダタンクの外面から離れる方向に屈曲形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、かしめ部の先端側がヘッダタンクの外面から逃げる方向に屈曲することになるので、かしめ部の中間部分をヘッダタンクの外面に接触させてかしめることになる。これにより、かしめ部の先端側を接触させる場合に比べてかしめ部を大きく変形させることが可能になる。
【0019】
第5の発明は、第4の発明において、上記かしめ部の先端側は、上記ヘッダタンクにかしめた状態で該ヘッダタンクの外面から突出していることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、かしめ部の先端側がヘッダタンクの外面から突出していることで、かしめ部に対してかしめ力を容易に、かつ、確実に作用させることが可能になる。
【0021】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、上記ヘッダタンクの内部には、上記ヘッダプレート及び上記タンクプレートの一方のプレートの中間部分を板厚方向に折り合わせて一体に形成された仕切部が該ヘッダタンクの長手方向に延びるように形成され、上記仕切部の長手方向の端部は、上記筒部の端部開口から突出し、上記キャップ部材に形成された挿入孔に挿入されていることを特徴とするものである。
【0022】
この構成によれば、ヘッダタンクの内部に、一方のプレートと一体に形成された仕切部を設けることができるので、部品点数の増加を招くことなく、ヘッダタンクの仕切構造が得られる。
【0023】
そして、仕切部の端部がキャップ部材の挿入孔に挿入されるので、仕切部を構成する折り合わされたプレートの開きが抑制される。
【0024】
第7の発明は、第1から6のいずれか1つの発明において、上記ヘッダプレート、タンクプレート及びキャップ部材の少なくとも1つのろう付け面にはろう材が設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
この構成によれば、ろう付け時にろう付け面に設けられているろう材が溶融して流れることで各部材のろう付け確実に行われるようになる。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、キャップ部材を筒部の外側に嵌めるようにしたので、給排管部の接続口を大径にして乱流の発生を抑制できる。そして、キャップ部材のかしめ部をヘッダプレートとタンクプレートとの重なり部分に対し外側からかしめるようにしたので、両プレートの重なり部分を互いに密着させることができ、確実に接合させることができる。
【0027】
第2の発明によれば、ヘッダプレート及びタンクプレートの一方のプレートに形成した凹部にキャップ部材のかしめ部をかしめるようにしたので、キャップ部材をヘッダタンクに強固にかしめることができる。
【0028】
第3の発明によれば、一方のプレート内面に、凹部に対応した凸部を形成し、この凸部を他方のプレートの位置決め部として利用するようにしたので、構造を簡素化することができる。
【0029】
第4の発明によれば、かしめ部の先端側を、ヘッダタンクの外面から離れる方向に屈曲させたので、かしめ部を変形量を大きくしてヘッダタンクにしっかりとかしめることができる。
【0030】
第5の発明によれば、かしめ部の先端側がヘッダタンクの外面から突出しているので、かしめ部がかしめ易いものとなり、かしめ部をヘッダタンクに確実にかしめることができる。
【0031】
第6の発明によれば、一方のプレートの中間部分を板厚方向に折り合わせて仕切部を一体に形成し、仕切部の長手方向の端部を、筒部の端部開口から突出させてキャップ部材の挿入孔に挿入するようにしたので、部品点数の増加を抑制しながらヘッダタンクに仕切構造を設ける場合に、仕切部を構成する折り合わせたプレートの開きを抑制できる。これにより、組立作業性を良好にすることができる。
【0032】
第7の発明によれば、ヘッダプレート、タンクプレート及びキャップ部材の少なくとも1つのろう付け面にろう材を設けたので、各部材を密着させた状態で確実にろう付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態にかかる熱交換器を外部空気流れ方向上流側から見た斜視図である。
【図2】上側ヘッダタンク及びエンドプレートの分解斜視図である。
【図3】熱交換器の右側部分の平面図である。
【図4】上側ヘッダタンクの右側面図である。
【図5】かしめ部をかしめる前の図4におけるV−V線断面図である。
【図6】図3におけるVI−VI線断面図である。
【図7】従来例にかかるヘッダタンクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
図1は、本発明の実施形態にかかる熱交換器1の斜視図である。この熱交換器1は、例えば車両用空調装置(図示せず)の冷却用熱交換器としての冷媒蒸発器であり、図示しないケーシングに収容されてケーシング内に導入された空気を冷却するのに用いられる。外部空気の通過方向は、図1等に白抜きの矢印で示す方向である。
【0036】
熱交換器1は、多数のチューブ2及びフィン3を交互に所定方向に並べてなるコア4と、コア4の上端部に設けられた上側ヘッダタンク10と、上側ヘッダタンク10に取り付けられた給排管接続部材20と、コア4の下端部に設けられた下側ヘッダタンク30と、コア4の左右両側部にそれぞれ設けられたエンドプレート40,40とを備えている。
【0037】
コア4のチューブ2は、上下方向に延びるとともに、図5に示すように外部空気の流れ方向に所定の間隔をあけて2列設けられている。また、外部空気の流れ方向上流側に位置するチューブ2は、熱交換器1の左右方向に所定の間隔をあけて配置され、これと同様に下流側に位置するチューブ2も左右方向に間隔をあけて配置されている。各チューブ2はアルミニウム合金製であり、外部空気の流れ方向に長い断面形状を有する偏平チューブである。
【0038】
フィン3は、左右方向に並ぶチューブ2の間に配置されている。フィン3は、アルミニウム合金製であり、外部空気の流れ方向に沿って見て上下方向に連続する波形のコルゲートフィンである。チューブ2の外面またはフィン3の外面にはろう材が設けられており、このろう材によってフィン3の左右両側がチューブ2の側面にろう付けされている。
【0039】
また、エンドプレート40は、アルミニウム合金製の板材からなるものであり、図2にも示すようにコア4の側面の略全体を覆うように上下方向に延びている。エンドプレート40は、コア4の外端部に位置するフィン3にろう付けされている。
【0040】
エンドプレート40の外部空気流れ方向両側縁部には、コア4から離れる方向(外方)へ突出するリブ40a,40aが設けられている。各リブ40aは、エンドプレート40の上端近傍から下端近傍まで延びている。このリブ40aの突出方向先端は、熱交換器1が収容されるケーシング(図示せず)の内壁に接近しており、これによって熱交換器1とケーシングの内壁との間からの風洩れが抑制されるようになっている。
【0041】
上側ヘッダタンク10は、チューブ2の上端部に連通するとともに、該チューブ2の並び方向である左右方向に延びている。上側ヘッダタンク10は、チューブ2の端部が挿入されるチューブ挿入孔11a(図5に示す)を有するヘッダプレート11及びタンク部分を形成するタンクプレート12が組み合わされてなる筒部13と、該筒部13の右端部及び左端部開口を閉塞するための右側及び左側キャップ部材14、15と、仕切プレート16とを備えている。
【0042】
ヘッダプレート11及びタンクプレート12は、共にアルミニウム合金製の板材をプレス成形してなるものである。各プレート11,12の少なくとも片面(ろう付け面)にはろう材が設けられており、これらプレート11,12はいわゆるクラッド材である。
【0043】
図2や図4に示すように、ヘッダプレート11は、左右方向に延びる底壁部11bと、底壁部11bの外部空気流れ方向両端部から上方へ延びる側壁部11c,11dとを備えており、全体として上方に開放する略コ字状断面を有するチャンネル状部材である。図5に示すように、ヘッダプレート11の底壁部11bには、上記チューブ挿入孔11aが、外部空気流れ方向上流側及び下流側のチューブ2の上端部に対応して形成されている。各チューブ挿入孔11aは、チューブ2の上端部の形状に対応して外部空気の流れ方向に長く形成されている。ヘッダプレート11のチューブ挿入孔11aの周縁部がチューブ2の外周部にろう付けされている。
【0044】
ヘッダプレート11の長手方向に隣り合うチューブ挿入孔11a,11aの間は、図2に示すように、下方へ膨出するように形成された膨出部11eとされている。また、ヘッダプレート11の側壁部11c,11dの外面には、ヘッダタンク10内側へ窪む第1〜第7凹部17A〜17Gが形成されている。これら第1〜第7凹部17A〜17Gは、プレス型により形成されたものであり、従って、ヘッダプレート11の側壁部11c,11dの内面には、第1〜第7凹部17A〜17Gに対応してヘッダタンク10内側へ突出する第1〜第7凸部17a(図4、図5、図6に第1凸部のみ図示する)が形成されることになる。第1〜第7凸部17aのヘッダタンク10内面からの突出高さHは、板厚の1/2以上となるように設定されている。
【0045】
第1〜第7凹部17A〜17Gの形状は全て同じに設定されている。図2に示すように、第1凹部17Aは、ヘッダプレート11の右端部近傍に配置されている。第2凹部17Bは、第1凹部17Aから左側に離れて配置され、さらに、第3及び第4凹部17C,17Dは、第2凹部17Bから左側に離れて配置されている。第3及び第4凹部17C,17Dは、互いに接近しており、これらの間に、上記仕切プレート16が配置されるようになっている。つまり、第3及び第4凹部17C,17Dは、仕切プレート16の配設位置に対応して設けられている。第3及び第4凹部17C,17Dに仕切プレート16が挿入されると、仕切プレート16の倒れが抑制される。
【0046】
第5凹部17Eは、第4凹部17Dから左側に離れて配置され、さらに、第6凹部17Fは、第5凹部17Eから左側に離れて配置されている。第7凹部17Gは、ヘッダプレート11の左端部近傍に配置されている。
【0047】
図5に示すように、ヘッダプレート11の底壁部11bの右端部近傍には、エンドプレート40における外部空気流れ方向上流側及び下流側の上端部がそれぞれ挿入されるエンドプレート挿入孔11gが形成されている。
【0048】
図2に示すように、ヘッダプレート11の底壁部11bには、上側ヘッダタンク10の内部を外部空気流れ方向上流側の上流側空間R1(図4等に示す)と、下流側の下流側空間R2とに仕切るための仕切部18が一体に形成されている。仕切部18は、底壁部11bにおける外部空気流れ方向中央部近傍に配置されており、底壁部11bの左右方向両端部に亘って連続して延びている。仕切部18は、ヘッダプレート11の外部空気流れ方向中間部分を板厚方向に折り合わせて形成されたものであり、従って、ヘッダプレート11を構成する板材の2倍の板厚を有している。仕切部18の長手方向両端部は、筒部13の端部開口から外方へ突出しており、後述するキャップ部材14に形成された挿入孔14hに挿入されるようになっている。
【0049】
仕切部18の上端部は、側壁部11c,11dの上端部よりも上に突出しており、タンクプレート12の内面に接してろう付けされるようになっている。
【0050】
タンクプレート12は、左右方向に延びる上壁部12aと、上壁部12aの外部空気流れ方向両端部から下方へ延びる側壁部12b,12cとを備えており、全体として下方に開放する略コ字状断面を有するチャンネル状部材である。
【0051】
タンクプレート12の上壁部12aには、ヘッダプレート11の膨出部11eに対応する部位に、外部空気の流れ方向に延びる複数の窪み部12dが形成されている。また、この上壁部12aの外部空気流れ方向中央部には、左右方向に延びる凹条部12eが形成されている。図4にも示すように、凹条部12eのヘッダタンク10内面側には、上記仕切部18の上端部が嵌るようになっている。
【0052】
また、タンクプレート12の側壁部12b,12cは、ヘッダプレート11の側壁部11c,11dの内側に嵌るように形成されている。タンクプレート12の側壁部12b,12cがヘッダプレート11の側壁部11c,11dの内側に嵌った状態で、側壁部11c,11dの上側と側壁部12b,12cの下側とが筒部13の内外方向に重なるように配置される。側壁部12b,12cは、側壁部11c,11dにおける第1〜第7凹部17A〜17Gが形成された領域よりも上側の領域に重なっている。
【0053】
そして、側壁部12b,12cの外面が側壁部11c,11dの内面にろう付けされるようになっている。
【0054】
タンクプレート12の側壁部12b,12cの下端部は、ヘッダプレート11の第1〜第7凸部17aに上側から接触して係合し、これによってタンクプレート12のヘッダプレート11に対する位置決めがなされるようになっている。
【0055】
図2及び図3に示すように、タンクプレート12の上部には、仕切プレート16の組み付け時の目印となる一対の目印用凹部12g,12gが外部空気の流れ方向上流側と下流側とに計2組形成されている。これら2組の目印用凹部12g,12gは、タンクプレート12の長手方向について上記第3及び第4凹部17C,17Dの形成位置と対応している。上流側の目印用凹部12g,12gは、上壁部12aにおける側壁部12b側の部位から該側壁部12bにおける上壁部12a側の部位に亘って連続して延びる凹条に形成されている。一方、下流側の目印用凹部12g,12gは、上壁部12aにおける側壁部12c側の部位から該側壁部12cにおける上壁部12a側の部位に亘って連続して延びる凹条に形成されている。つまり、目印用凹部12g,12gは、タンクプレート12の角部に位置している。
【0056】
目印用凹部12g,12gの形成により、図3に示すように、タンクプレート12の内面には、凸部12i,12iが形成されることになり、これら凸部12i,12iの間に仕切プレート16の上部が挿入されて倒れが抑制される。また、仕切プレート16の上側の角部に対して、凸部12i,12iが厚み方向両側から接触することになるので、仕切プレート16の角部にろう材を行き渡らせることができる。
【0057】
右側キャップ部材14は、アルミニウム合金製の板材をプレス成形してなるものであり、筒部13の右端部開口を覆う閉塞板部14aと、閉塞板部14aの周縁部に形成された周壁部14bと、かしめ部14cとを有している。図5にも示すように、周壁部14bは、上側ヘッダタンク10の筒部13における右端部の外側に全周に亘って密着した状態で嵌るように形成されており、本発明の嵌合部である。このように筒部13の外側に嵌るように周壁部14bを形成したことで、従来例のように筒部13の内側に嵌る嵌合部を設けずに済む。
【0058】
閉塞板部14aには、冷媒排出管部20bが接続される排出側接続口14dが上側ヘッダタンク10の上流側空間R1に連通するように形成され、冷媒供給管部20aが接続される供給側接続口14eが上側ヘッダタンク10の下流側空間R2に連通するように形成されている。右側キャップ部材14に筒部13の内側に嵌る嵌合部を設けていないことにより、接続口14d,14eを従来例のものに比べて大径にすることが可能になる。
【0059】
閉塞板部14aにおける排出側接続口14dと供給側接続口14eとの間には、仕切部18の右端部が挿入される挿入孔14hが形成されている。図4にも示すように、この挿入孔14hは、上下方向に延びるスリット状をなしている。挿入孔14hの幅は、ヘッダプレート11の板厚の約2倍に設定されており、従って、仕切部18を構成するヘッダプレート11の折り合わせた部分が、その折り合わせた状態で挿入可能となっている。
【0060】
図5に示すように、かしめ部14cは、周壁部14bに一体に形成された片状部分で構成されており、周壁部14bの外部空気流れ方向上流側と下流側とにそれぞれ設けられている。具体的には、外部空気流れ方向上流側のかしめ部14cは、筒部13の側壁部11cの第1凹部17Aに対応する部分に位置付けられ、下流側のかしめ部14cは、筒部13の側壁部11dの第1凹部17Aに対応する部分に位置付けられている。
【0061】
各かしめ部14cは、周壁部14bの本体部分とは別に周壁部14bの内外方向に塑性変形可能となっている。つまり、上流側のかしめ部14cは側壁部11cの第1凹部17Aに対してかしめられ、下流側のかしめ部14cは側壁部11dの第1凹部17Aに対してかしめられる。
【0062】
かしめ部14cは、ヘッダプレート11とタンクプレート12との重なり部分に対し外側からかしめられる。これにより、かしめ部14cが両プレート11,12の重なり部分を外側から押さえることになり、両プレート11,12の重なり部分を互いに密着させることが可能になる。
【0063】
また、図5の部分拡大図に示すように、各かしめ部14cの先端側には、上側ヘッダタンク10の外面から離れる方向に屈曲形成された屈曲部14fが設けられている。屈曲部14fは、かしめ部14cを第1凹部17Aにかしめた状態で上側ヘッダタンク10の外面から突出するように形成されている。
【0064】
図3に示すように、給排管接続部材20は、アルミニウム合金製のブロック材で構成されており、冷媒供給管部20aと冷媒排出管部20bとを備えている。冷媒供給管部20aは、右側キャップ部材14の供給側接続口14eに挿入されて該接続口14eの周縁部にろう付けされる。冷媒排出管部20bは、排出側接続口14dに挿入されて該接続口14dの周縁部にろう付けされる。冷媒供給管部20a及び冷媒排出管部20bには、図示しない膨張弁装置から延びる配管が接続されている。
【0065】
左側キャップ部材15は、基本的には右側キャップ部材14と同様に構成されており、接続口を有していない点で右側キャップ部材14とは異なっているだけであり、詳細な説明は省略する。
【0066】
図2に示すように、仕切プレート16は、アルミニウム合金製であり、上流側空間R1及び下流側空間R2を左右方向に仕切るためのものである。
【0067】
仕切プレート16の下縁部には、ヘッダプレート11の貫通孔(図示せず)に挿入される下側凸部16aが形成されている。また、仕切プレート16の上縁部には、タンクプレート12の貫通孔12h(図3にも示す)に挿入される上側凸部16bが形成されている。さらに、仕切プレート16には、仕切部18が挿入されるスリット16cが形成されている。
【0068】
下側ヘッダタンク30も、ヘッダプレート31及びタンクプレート32が組み合わされてなる筒部33と、右側及び左側キャップ部材34、35と、仕切プレート36とを備えている。この熱交換器1には、仕切プレート16,36の配設位置や、仕切部18の構造(連通穴の設定)等によって複数のパスが形成されている。このパスの設定方法については従来周知の方法であるため、詳細な説明は省略する。
【0069】
次に、上記のように構成された熱交換器1を製造する場合について説明する。
【0070】
チューブ2及びフィン3を交互に並べ、外端部にエンドプレート40を配置し、これらを結束しておく。
【0071】
また、上側ヘッダタンク10を組み立てる。この場合、まず、図2に示すように、ヘッダプレート11に仕切プレート16を組み付ける。このとき、ヘッダプレート11の第3及び第4凹部17C,17Dが仕切プレート16の組み付け位置に形成されているので、第3及び第4凹部17C,17Dが仕切プレート16の組み付け位置を示す目印となる。よって、作業者が仕切プレート16の組付位置を容易に把握することができるとともに、仕切プレート16を誤った部位に組み付けてしまうのを防止できる。
【0072】
また、仕切プレート16の組み付け時には、仕切プレート16のスリット16cに仕切部18を差し込むとともに、第3及び第4凹部17C,17Dに対応して内面に形成された第3及び第4凸部の間に仕切プレート16を差し込む。このことで仕切プレート16が第3及び第4凸部により所定の組み付け位置まで案内されて該組み付け位置に組み付けられ、この状態で、仕切プレート16の倒れが第3及び第4凸部によって抑制される。このように、第3及び第4凹部17C,17Dをプレス成形したことで、仕切プレート16の組み付け位置の目印になるとともに、組み付け位置への案内部にもなり、さらに、仕切プレート16の倒れを抑制する倒れ抑制部にもなる。
【0073】
その後、タンクプレート12をヘッダプレート11に組み付ける。すなわち、タンクプレート12の側壁部12b,12cをヘッダプレート11の側壁部11c,11dの間に挿入していく。すると、図4や図6に示すように、タンクプレート12の側壁部12b,12cの下縁部が、ヘッダプレート11の第1〜第7凸部17aに接触して係合し、これにより、タンクプレート12のそれ以上の挿入(下方への移動)が規制されてタンクプレート12がヘッダプレート11に対し位置決めされる。
【0074】
タンクプレート12をヘッダプレート11に組み付ける際、仕切プレート16が上述したようにヘッダプレート11に位置決めされているので、タンクプレート12の凸部12i,12iの間に確実に挿入され、仕切プレート16の上側が凸部12i,12iにより案内されて所定の組み付け位置となる。仕切プレート16の上側が凸部12i,12iの間に位置することによっても仕切プレート16の倒れが抑制される。
【0075】
尚、仕切プレート16をタンクプレート12に組み付けた後、ヘッダプレート11をタンクプレート12に組み付けるようにしてもよい。
【0076】
上記のようにして筒部13が組み立てられた後、筒部13に右側及び左側キャップ部材14,15を組み付ける。右側キャップ部材14を筒部13に組み付ける際には、右側キャップ部材14の周壁部14bを筒部13の右端部の外側に嵌める。
【0077】
図5に示すように、右側キャップ部材14を嵌めると、仕切部18の右端部が筒部13の右端部開口から突出しているので、該右端部が右側キャップ部材14の挿入孔14hに挿入される。これにより、仕切部18を構成する折り合わせ部分の開きが抑制される。
【0078】
右側キャップ部材14の周壁部14bを完全に嵌めると、同図に示すように、かしめ部14cが第1凹部17Aに対応する部位に位置し、この状態で、かしめ部14cに対しヘッダタンク10内側へ向かうかしめ力を作用させる。すると、部分拡大図に仮想線で示すように、かしめ部14cがヘッダタンク10内側へ塑性変形して一部が第1凹部17A内に収容されて該凹部17Aの内面に圧接して係合する。これにより、右側キャップ部材14が筒部13から離脱しなくなるとともに、ヘッダプレート11の側壁部11c,11dがタンクプレート12の側壁部12b,12cに押し付けられる。
【0079】
かしめを行う際には、かしめ部14cの先端側にヘッダタンク10から離れる方向に屈曲した屈曲部14fが形成されているので、形成されていない場合に比べてかしめ部14cを大きく塑性変形させることができ、第1凹部17Aの内面にしっかりと係合させることができる。
【0080】
また、かしめた状態にある屈曲部14fが上側ヘッダタンク10の外面から突出するので、この屈曲部14fを押さえることで、かしめ部14cに対してかしめ力を容易に、かつ、確実に作用させることが可能になる。
【0081】
左側キャップ部材15も同様にして筒部13に組み付ける。左側キャップ部材15のかしめ部(図示せず)は、ヘッダプレート11の第7凹部17Gにかしめる。
【0082】
また、給排管接続部材20の冷媒供給管部20a及び冷媒排出管部20bを、右側キャップ部材14の供給側接続口14e及び排出側接続口14dに嵌入して給排管接続部材20を右側キャップ部材14に固定する。
【0083】
下側ヘッダタンク30も上側ヘッダタンク10と同様に組み立てる。
【0084】
上側及び下側ヘッダタンク10,30を組み立てた後、コア4のチューブ2の両端部を上側及び下側ヘッダタンク10,30のチューブ挿入孔11aに挿入し、エンドプレート40の上下両端部を上側及び下側ヘッダタンク10,30のエンドプレート挿入孔11gに挿入する。
【0085】
しかる後、コア4、上側及び下側ヘッダタンク10,30、給排管接続部材20及びエンドプレート40をろう付け用の炉内へ搬入して各部をろう付けする。
【0086】
このとき、ヘッダタンク10の目印用凹部12g,12gに対応した凸部12i,12iが仕切プレート16の上側の角部に接触しているので仕切プレート16の角部にろう材を行き渡らせることができ、ろう付け不良の発生を抑制できる。
【0087】
以上説明したように、この実施形態にかかる熱交換器1によれば、右側キャップ部材14を筒部13の外側に嵌めるようにしたので、給排管部20a,20bの接続口14d,14eを大径にして乱流の発生を抑制できる。
【0088】
そして、右側キャップ部材14のかしめ部14cをヘッダプレート11とタンクプレート12との重なり部分に対し外側からかしめるようにしたので、両プレート11,12の重なり部分を互いに密着させることができ、確実に接合させることができる。
【0089】
また、ヘッダプレート11に形成した第1凹部17Aに右側キャップ部材14のかしめ部14cをかしめるようにしたので、右側キャップ部材14をヘッダタンク10に強固にかしめることができる。
【0090】
また、ヘッダプレート11内面に、第1〜第7凹部17A〜17Gに対応した凸部17aを形成し、この凸部17aをタンクプレート12の位置決め部として利用するようにしたので、構造を簡素化することができる。
【0091】
また、かしめ部14cの突出方向先端側を、ヘッダタンク10の外面から離れる方向に屈曲させたので、かしめ部14cをかしめる際の変形量を大きくしてヘッダタンク10にしっかりとかしめることができる。
【0092】
また、かしめ部14cの突出方向先端側がヘッダタンク10の外面から突出しているので、かしめ部14cがかしめ易いものとなり、かしめ部14cをヘッダタンク10に確実にかしめることができる。
【0093】
また、ヘッダプレート11の中間部分を板厚方向に折り合わせて仕切部18を一体に形成したので、部品点数の増加を抑制しながらヘッダタンク10に仕切構造を設けることができる。そして、仕切部18の長手方向の右端部を、筒部13の右端部開口から突出させて右側キャップ部材14の挿入孔14hに挿入するようにしたので、仕切部18を構成するヘッダプレート11の折り合わせ部分の開きを抑制できる。これにより、組立作業性を良好にすることができる。
【0094】
尚、上記実施形態では、ヘッダプレート11に第1〜第7凹部17A〜17Gを形成するようにしたが、これに限らず、ヘッダプレート11をタンクプレート12の内側に嵌めるようにして、タンクプレート12の側壁部12b,12cに凹部を形成してもよい。また、凹部の数は7つに限られるものではなく、任意の数に設定することができる。
【0095】
また、上記実施形態では、チューブ2が外部空気の流れ方向に2列設けられている場合について説明したが、これに限らず、1列だけ設けられている場合にも本発明を適用することができる。
【0096】
また、上記実施形態では、本発明を冷媒蒸発器に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えばヒータコア等、各種熱交換器に適用することができる。
【0097】
また、ヘッダプレート11及びタンクプレート12のうち、一方のろう付け面にのみ、ろう材が設けられていてもよい。また、右側及び左側キャップ部材14、15のろう付け面にろう材を設けるのが好ましいが、ヘッダプレート11及びタンクプレート12にろう材を設ける場合には右側及び左側キャップ部材14、15のろう材を省略することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上説明したように、本発明にかかる熱交換器は、例えば、車両用空調装置の冷却用熱交換器として使用できる。
【符号の説明】
【0099】
1 熱交換器
2 チューブ
3 フィン
4 コア
10 上側ヘッダタンク
11 ヘッダプレート
11a チューブ挿入孔
12 タンクプレート
13 筒部
14 キャップ部材
14b 周壁部(嵌合部)
14c かしめ部
14f 屈曲部
14h 挿入孔
16 仕切プレート
18 仕切部
17A〜17G 第1〜第7凹部
17a 凸部
20 給排管接続部材
30 下側ヘッダタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に並ぶように設けられた複数のチューブと、
上記チューブの端部に連通するとともに、該チューブの並び方向に延びるヘッダタンクとを備えた熱交換器において、
上記ヘッダタンクは、上記チューブの端部が挿入されるチューブ挿入孔を有するヘッダプレート及びタンク部分を形成するタンクプレートが組み合わされてなる筒部と、該筒部の端部開口を閉塞するためのキャップ部材とを備え、
上記ヘッダプレートにおけるタンクプレート側と、上記タンクプレートにおけるヘッダプレート側とは、上記筒部の内外方向に重なるように配置され、
上記キャップ部材は、上記筒部における端部の外側に嵌る嵌合部と、上記筒部における上記ヘッダプレートと上記タンクプレートとの重なり部分に対し外側からかしめられるかしめ部とを備えていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器において、
上記ヘッダプレート及び上記タンクプレートの一方のプレートには、ヘッダタンク内側へ窪む凹部が形成され、
上記キャップ部材のかしめ部は、上記凹部にかしめられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器において、
上記ヘッダプレート及び上記タンクプレートの一方のプレート内面には、上記凹部に対応して上記ヘッダタンク内側へ突出する凸部が形成され、
他方のプレートは、一方のプレートの内面側へ挿入されて上記凸部に係合して位置決めされることを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の熱交換器において、
上記キャップ部材のかしめ部は、片状に形成され、
上記かしめ部の先端側は、上記ヘッダタンクの外面から離れる方向に屈曲形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載の熱交換器において、
上記かしめ部の先端側は、上記ヘッダタンクにかしめた状態で該ヘッダタンクの外面から突出していることを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の熱交換器において、
上記ヘッダタンクの内部には、上記ヘッダプレート及び上記タンクプレートの一方のプレートの中間部分を板厚方向に折り合わせて一体に形成された仕切部が該ヘッダタンクの長手方向に延びるように形成され、
上記仕切部の長手方向の端部は、上記筒部の端部開口から突出し、上記キャップ部材に形成された挿入孔に挿入されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の熱交換器において、
上記ヘッダプレート、タンクプレート及びキャップ部材の少なくとも1つのろう付け面にはろう材が設けられていることを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−68387(P2013−68387A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208838(P2011−208838)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)