説明

熱交換器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、主に車両用空調装置に用いられる熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の熱交換器において、チューブエレメントにタンク部連通孔を有するタンク部を設け、これを積層してチューブエレメントのタンク部の連通によってタンクを形成するようにしたものが公知である(例えば、実開昭61−89686号公報参照)。
【0003】かかる先行技術においては、積層方向両端のチューブエレメントのタンク部のタンク部連通孔を塞ぐために、該積層方向両端のチューブエレメントの両側方にエンドプレートを配していた。そして、このエンドプレートのそれに当接される積層方向両端のチューブエレメントのタンク部のタンク部連通孔に対応する部位には、エンドプレートがタンクから受ける圧力によって変形して気密洩れが起こるのを防止するために断面が平坦状の補強用の突起が設けられ、該突起を対応するタンク部連通孔に嵌合してエンドプレートの補強をなすようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来構造の補強用の突起は断面が平坦状であるので、熱交換器のタンク内部から受ける圧力がその全面に垂直に作用し、そのために耐圧力が弱く、補強をなすには不十分なものであった。
【0005】また、上記突起はタンク部のタンク部連通孔に嵌合されるものであったので、突起が精度良く形成されていないとタンク部連通孔との嵌め合わせがうまく行なわれなかったり、或いは突起の形成位置がずれているとチューブエレメントとエンドプレートとの間に位置ずれが生じる等の不都合があった。
【0006】そこで、この発明は上記問題点に鑑み、充分な耐圧力を有する補強手段をエンドプレートに設けると共に、該エンドプレートの組み付け性の向上を図った熱交換器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明に係る熱交換器は、一対のタンク部と該一対のタンク部を連通する熱交換媒体通路とを有して成るチューブエレメントとコルゲート状のフィンとを交互に複数段積層し、積層方向両端のチューブエレメントの側方にエンドプレートを配して成る熱交換器において、前記エンドプレートのそれに当接される積層方向両端のチューブエレメントのタンク部のタンク部連通孔に対応する部位に断面が半球状に湾曲された補強用突起部を突設し、該補強用突起部を対応するタンク部連通孔に遊嵌するようにしたものである。
【0008】
【作用】したがって、断面が所定形状に湾曲された補強用突起部はタンクの内部圧を受けてもそれを各方向に分散させるため変形が抑止され、また補強用突起部をタンク部連通孔に遊嵌する構造であるから組み付け性が良く、これにより上記課題を解決することができる。
【0009】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面により説明する。
【0010】図1において、熱交換器は、チューブエレメント1とコルゲート状のフィン2とを交互に複数段積層すると共に、積層方向両端のチューブエレメント1の側方にエンドプレート4,4を配して組み付けられている。
【0011】チューブエレメント1は、図2及び図3に詳しく示されている成形プレート6を2枚最中合わせに接合して構成される。
【0012】成形プレート6は、略矩形状のもので、その一端側にリブ8,10を境に対称に穿設された各2つのタンク部連通孔12を有する一対のタンク部形成用膨出部14,16が所定の膨出幅で膨出形成され、該タンク部形成用膨出部14,16の間から他端側に向けて突条18が延設されていると共に、該突条18の周縁に前記タンク部形成用膨出部14,16に通じる略U字状の熱交換媒体通路形成用膨出部20が所定の膨出幅で膨出形成されている。また、この成形プレート6の他端側にはチューブエレメント突当部22が突出形成(図2において図示前方に向けて突出)されている。
【0013】なお、上記成形プレート6のリブ8の幅Aとリブ10の幅BとはA<B(または、A>B)となるように一方の幅が他方の幅より若干広く形成されている。
【0014】この成形プレート6を2枚最中合わせにして接合することでチューブエレメント1が構成され、その一端側では相対するタンク部形成用膨出部14,16から一対のタンク部24,24が構成され、内部では相対する熱交換媒体通路形成用膨出部20から略U字状の熱交換媒体通路26が構成されると共に、前記タンク部24,24は熱交換媒体通路26を介して連通するようになっている。
【0015】そして、この成形プレート6は、図1及び図3に示すように各タンク部24,24及びチューブエレメント突当部22を当接させて複数段積層され、タンク部24,24及びチューブエレメント突当部22の当接によって規定されるチューブエレメント間の間隙にフィン2を介挿するようになっていると共に、この積層方向両端のチューブエレメント1の側方に下記するエンドプレート4,4を配して炉中ろう付けされるようになっている。このろう付けの際には、隣接する各チューブエレメント1のタンク部24,24間は、当接するリブ8,10の幅が互いに異なっているので、その間に生じる表面張力によってろう材が良好に付着してタンク部間の接合が良好になされるようになっている。また、この当接される各タンク部24,24は、隣接する同士がタンク部連通孔12を介して連通し、熱交換媒体流出用のタンクを構成するようになっている。なお、積層方向中央に配される2枚のチューブエレメント1の図示前方のタンク部間は、一方にタンク部連通孔12を形成しないチューブエレメントを配して連通しないようになっている。
【0016】エンドプレート4は、図4(a),(b)に示すように、略矩形状のもので、その一端側に積層方向端部のチューブエレメント1のタンク部24,24に当接されるタンク当接部30が曲折形成され、このタンク当接部30の当接されるタンク部24,24の各タンク部連通孔12に対応する部位には、断面が所定形状に湾曲された補強用突起部32が所定数膨出形成されている(この実施例においては補強用突起部32を半球状に湾曲形成している)。そしてこの補強用突起部32は、対応するタンク部連通孔12に遊嵌されるようにその寸法が設定されている。また、このエンドプレート4の他端側にはチューブエレメント突当部34が突出形成されている。
【0017】かかるエンドプレート4は、図1及び図3に示すように、一端側のタンク当接部30がチューブエレメント1のタンク部24,24の膨出面に、他端側のチューブエレメント突当部34がチューブエレメント1のチューブエレメント突当部22に当接されて接続され、その間の間隙にフィン2を介挿する。そしてタンク当接部30に形成された補強用突起部32は、対応するチューブエレメント1のタンク部24,24の各タンク部連通孔12内に遊嵌され、その積層方向両端のチューブエレメント1のタンク部24,24の各タンク部連通孔12を塞ぐようになっており、このようにエンドプレート4を組み付けた状態で熱交換器のろう付けがなされるようになっている。
【0018】なお、36,38は、積層途中のチューブエレメント1に形成された熱交換媒体の出入口パイプである。
【0019】上記構造の熱交換器は、出入口パイプ36から図示前方側で積層方向中央から左半分のタンク部24の連通によって構成される入口タンクに流入された熱交換媒体が、積層方向中央から左半分のチューブエレメント1の熱交換媒体通路26内を流れ、図示後方のタンク部24の連通によって構成される通路タンク内を平行移動し、そこから積層方向中央から右半分のチューブエレメント1の熱交換媒体通路26内を流れ、図示前方側で積層方向中央から右半分のタンク部24の連通によって構成される出口タンクに集められて、出入口パイプ38から排出される、所謂4パスのフローパターンが構成されているものである。
【0020】而して、この熱交換器においては、積層方向両端のチューブエレメント1のタンク部24,24のタンク部連通孔12を塞ぐエンドプレート4の補強用突起部32の形状を半球状に湾曲形成しているから、該補強用突起部32はタンクの内部圧を受けてもそれを各方向に分散するため、容易に変形することがなく、エンドプレート4の耐圧力を従来よりも大幅に向上することができるようになっている。
【0021】また、この補強用突起部32は対応するタンク部連通孔12に遊嵌されるものであるから、エンドプレート4とチューブエレメント1との間に位置ずれ等が生じず、組み付け性の良好なものとなっている。
【0022】なお、エンドプレート4に形成される補強用突起部32の形状は上述の半球状のものに限らず、例えば図5(a),(b)に示すように、円錐状または擂鉢状のものでも良く、その他タンクの内部圧を分散できる種々の形状のものが考えられる。このような形状であれば、上述の補強用突起部32と同様の作用効果を生じる。
【0023】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、積層方向両端のチューブエレメントのタンク部のタンク部連通孔を塞ぐエンドプレートの補強用突起部の形状を断面が半球状となるように湾曲形成したので、該補強用突起部はタンクの内部圧を受けてもそれを各方向に分散し、もってエンドプレートの変形を抑止することができ、エンドプレートの耐圧力を従来よりも大幅に向上することができる。また、この補強用突起部は半球状で、対応するタンク部連通孔に遊嵌される構造であるから、エンドプレートとチューブエレメントとの間に位置ずれ等が生じず、組み付け性が向上されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例に係る熱交換器の正面図である。
【図2】成形プレートの正面図である。
【図3】要部の拡大断面図である。
【図4】エンドプレートの正面及び側面を表した図である。
【図5】他の補強用突起部の形状例を示した図である。
【符号の説明】
1 チューブエレメント
2 フィン
4 エンドプレート
6 成形プレート
12 タンク部連通孔
24 タンク部
26 熱交換媒体通路
32 補強用突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対のタンク部と該一対のタンク部を連通する熱交換媒体通路とを有して成るチューブエレメントとコルゲート状のフィンとを交互に複数段積層し、積層方向両端のチューブエレメントの側方にエンドプレートを配して成る熱交換器において、前記エンドプレートのそれに当接される積層方向両端のチューブエレメントのタンク部のタンク部連通孔に対応する部位に断面が状に湾曲された補強用突起部を突設し、該補強用突起部を対応するタンク部連通孔に遊嵌するようにしたことを特徴とする熱交換器。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3015972号(P3015972)
【登録日】平成11年12月24日(1999.12.24)
【発行日】平成12年3月6日(2000.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−29451
【出願日】平成3年1月30日(1991.1.30)
【公開番号】特開平4−356690
【公開日】平成4年12月10日(1992.12.10)
【審査請求日】平成8年11月28日(1996.11.28)
【出願人】(000003333)株式会社ゼクセル (510)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−173097(JP,A)
【文献】実開 昭58−162475(JP,U)