説明

熱交換形換気装置

【課題】従来の熱交換形換気装置は、給気風路と排気風路のダクト配管長さが異なる場合、給気風量と排気風量のバランスが崩れるという課題があった。
【解決手段】給気用ファン8により屋外から室内に送風される給気送風経路6と、排気用ファン9により室内から室外に送風される排気送風経路7とを本体内に備え、給気用ファン8と排気用ファン9は1つの電動機10の回転軸に取り付けられ、給気送風経路6と排気送風経路7とが交差する位置に熱交換素子11を配置し、給気送風経路6と排気送風経路7にそれぞれ開口調整部(給気側開口調整部12、排気側開口調整部13)を取り付けて、ダクト配管長さが異なる場合においても、給気風量と排気風量のバランスを整合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気と室内空気を熱交換する熱交換形換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱交換形換気装置は、本体下面に設けられた室内排気口から室内空気を屋外に強制的に排気するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その熱交換形換気装置について、図11を参照しながら説明する。
【0004】
図11に示すように、換気装置本体101は、給気ファン102により、新鮮な外気を外気給気口から導入し、ダクトを通って換気装置本体101の外気取入口103から取り入れ、内蔵する熱交換素子104を介して本体給気口105から吹き出し、ダクトを通って室内給気口から室内に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−106427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の熱交換形換気装置においては、給気送風経路が排気送風経路より長いダクト配管長さとなった場合、排気側のダクト圧損が小さくなるため、給気風量を所定の風量と設定したときに、排気風量は給気風量に対し大きな値となる。このとき給気風量と排気風量のバランスが崩れ、排気風量が給気風量よりも大きくなり、室内は負圧となり、扉が開きにくいなどの不具合を生じる課題があった。また給気送風経路が排気送風経路より短いダクト配管長さとなった場合、排気送風経路のダクト圧損が大きくなるため、給気風量を所定の風量と設定したときに、排気風量は給気風量に対し小さな値となる。このとき給気風量と排気風量のバランスが崩れ、排気風量は給気風量よりも小さくなり、室内は正圧となり、扉が閉まりにくいなどの不具合が生じる課題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、ダクト配管長さが異なる場合においても、給気風量と排気風量のバランスを整合することができる熱交換形換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明は、給気用ファンにより屋外から室内に送風される給気送風経路と、排気用ファンにより室内から室外に送風される排気送風経路とを本体内に備え、前記給気用ファンと前記排気用ファンは1つの電動機の回転軸に取り付けられ、前記給気送風経路と前記排気送風経路とが交差する位置に熱交換素子を配置し、前記給気送風経路と前記排気送風経路にそれぞれ開口調整部を有したことを特徴としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給気用ファンにより屋外から室内に送風される給気送風経路と、排気用ファンにより室内から室外に送風される排気送風経路とを本体内に備え、前記給気用ファンと前記排気用ファンは1つの電動機の回転軸に取り付けられ、前記給気送風経路と前記排気送風経路とが交差する位置に熱交換素子を配置し、前記給気送風経路と前記排気送風経路にそれぞれ開口調整部を有したことを特徴とする熱交換形換気装置により、各経路の開口面積が変わることで、各経路を通過する風量を増減することができるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1の熱交換形換気装置を示す下方斜視図
【図2】同熱交換形換気装置を示す側面断面図
【図3】同熱交換形換気装置の排気送風経路を示す部分斜視図
【図4】同熱交換形換気装置の給気側開口調整部を示す部分斜視図
【図5】同熱交換形換気装置の排気側開口調整部を示す部分斜視図
【図6】同開口調整部の斜視図
【図7】同電動機付開口調整部の斜視図
【図8】同電動機付開口調整部の分解斜視図
【図9】同ヒーターを設けた熱交換形換気装置を示す部分斜視図
【図10】同フィルターを設けた熱交換形換気装置を示す側面断面図
【図11】従来の熱交換形換気装置を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の請求項1記載の熱交換形換気装置は、給気用ファンにより屋外から室内に送風される給気送風経路と、排気用ファンにより室内から室外に送風される排気送風経路とを本体内に備え、前記給気用ファンと前記排気用ファンは1つの電動機の回転軸に取り付けられ、前記給気送風経路と前記排気送風経路とが交差する位置に熱交換素子を配置し、前記給気送風経路と前記排気送風経路にそれぞれ開口調整部を取り付けたという構成を有する。これにより、給気送風経路と排気送風経路の開口調整部により各経路の開口面積を変動させることができ、各経路の開口面積が変わることで、各経路を通過する風量を増減することができるという効果を奏する。
【0012】
また、前記開口調整部は、送風経路に配置した遮蔽部と、この遮蔽部に連結して、前記遮蔽部を動作させる電動部で構成した構成にしてもよい。これにより、開口調整部が電動機により動くことで、開口面積を電動機により変動させることができ、電動機で各経路を通過する風量を増減することができるという効果を奏する。
【0013】
また、前記給気送風経路、前記排気送風経路内にそれぞれ設けて、各送風経路の風量を計測する計測手段と、これらの計測手段の出力を入力として、前記電動部を制御して前記遮蔽部の開度を調節する制御手段を有した構成にしてもよい。これにより、給気送風経路と排気送風経路の風量を計測し、その情報に基づき制御手段により電動機の動作を制御することができ、給気送風経路と排気送風経路の風量を計測し、自動で各経路を通過する風量を調整することができるという効果を奏する。
【0014】
また、前記給気送風経路には、前記開口調整部の直前あるいは直後に加熱手段を設けた構成としてもよい。これにより、給気送風経路の空気を加熱し、外気から導入した空気を暖めることができるという効果を奏する。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態の熱交換形換気装置1について、図1、2、3を用いて内部の構成と給気送風経路6、排気送風経路7について説明する。図1に示すように、熱交換形換気装置1は、箱形の下部に室内空気吸込口5を設け、側面に外気吸込口2、室内空気排気口3、そして、この側面に対向した側面に外気給気口4を設けた構成である。
【0017】
図2に示すように、熱交換形換気装置1は、新鮮な室外の外気の空気を側面の外気吸込口2から吸込み、熱交換形換気装置1の内部の熱交換素子11を通って外気給気口4から室内に供給される給気送風経路6を備えている。一方、図3に示すように、室内の汚染された空気は室内空気吸込口5から吸い込まれ、熱交換素子11を通って室内空気排気口3から室外に排気される排気送風経路7を備えている。このとき、熱交換素子11は、排気される空気の熱量を給気される空気に供給する、または、給気される空気の熱量を排気される空気の熱量に供給する、熱回収の機能を有している。
【0018】
図2に示すように、外気吸込口2から導入される新鮮な室外の空気と室内空気吸込口5から導入される室内の汚染された空気は、電動機10に同一軸にて連結された給気用ファン8と排気用ファン9によりそれぞれの給気送風経路6と排気送風経路7を流れる。熱交換素子11は給気送風経路6と排気送風経路7とが交差する位置に配設される。給気用ファン8と排気用ファン9は、同じ性能を持つ羽根車を用いている。
【0019】
また、外気吸込口2、室内空気排気口3、外気給気口4には、それぞれダクト(図示せず)が接続できる形状となっている。外気吸込口2と室内空気排気口3に接続したダクトは建物外壁面まで引き回して建物外の外気と連通する。外気給気口4に接続したダクトは居室の天井面または壁面と連通されて室内へ外気を給気する。
【0020】
そして、本実施の形態の最も特徴的な部分は、図4に示すように、給気送風経路6に給気側開口調整部12を取り付けたものである。また図5に示すように、排気送風経路7に排気側開口調整部13を取り付けたものである。図6に給気側開口調整部12と排気側開口調整部13に用いる開口調整部14を示す。開口調整部14は開口部16を備えた保持部17と遮蔽部15からなる。開口調整部14は、前記給気送風経路6および前記排気送風経路7に隙間なく設置される。これにより給気風量および排気風量は、全て(給気側開口調整部12または排気側開口調整部13の)開口部16を通過することとなる。開口部16は遮蔽部15を調整することで開口部16の開口面積を変動させることができる。そして、各経路の開口面積が変わることで、各経路を通過する風量を増減調整することができる。
【0021】
上記構成による本実施の形態の熱交換形換気装置1の動作について説明する。
【0022】
熱交換形換気装置1は、施工後、外気吸込口2、室内空気排気口3、外気給気口4に、それぞれダクトが接続される。外気吸込口2と室内空気排気口3に接続したダクトは建物外壁面まで引き回して建物外の外気と連通する。外気給気口4に接続したダクトは居室の天井面または壁面と連通されて室内へ外気を給気する。
【0023】
このとき給気送風経路6が排気送風経路7より長いダクト配管長さとなった場合、排気送風経路7のダクト圧損が小さくなる。そのため、給気風量を所定の風量と設定し運転すると、排気風量は給気風量に対し大きな値となる。このとき、排気送風経路7に取り付けた排気側開口調整部13の遮蔽部15を調整し開口部16を小さくして排気送風経路7のダクト圧損を大きくする。そうすることで、排気風量は小さくすることができ、ダクト圧損を給気側と等しくして、給気風量と排気風量のバランスをとることができる。
【0024】
また、給気送風経路6が排気送風経路7より短いダクト配管長さとなった場合、排気送風経路7のダクト圧損が大きくなる。そのため、給気風量を所定の風量に設定したときに、(同じ回転軸で給気用ファン8と排気用ファン9を回すので)排気風量は給気風量に対し小さな値となる。排気風量が所定の風量に足りないため電動機10の回転数を上げ所定の風量を出そうとする。この回転数の増加により排気風量は所定の風量となるが、同時に給気風量は所定の風量よりも大きな値となり、給気風量は排気風量に対し大きな値となる。このとき給気送風経路6に取り付けた給気側開口調整部12の遮蔽部15を調整し開口部16を小さくすることで給気送風経路6のダクト圧損を大きくする。このようにして、給気風量を小さくすることができ、ダクト圧損を排気側と等しくして、給気風量と排気風量のバランスをとることができる。
【0025】
ダクト施工の状態により、給気風量が排気風量より大きくなる、もしくは、給気風量が排気風量より小さくなる、二つの場合が起こるが、給気側開口調整部12と排気側開口調整部13の二つの開口調整部を持つことでいずれの状態にも対応でき、給気風量と排気風量のバランスを保つことが可能となる。
【0026】
このように本実施の形態の熱交換形換気装置1によれば、ダクト配管長さが異なる場合においても、給気風量と排気風量のバランスを整合することができる効果を奏する。
【0027】
また、図7、8に示すのは、遮蔽部19を開口調整用電動機22で動かす電動開口調整部18である。この電動開口調整部18を給気側開口調整部12と排気側開口調整部13に適用しても良い。図8に示すように、電動開口調整部18は、保持部21に開口調整用電動機22を電動機保持カバー23で保持している。そして、開口調整用電動機22の回転軸には、歯車20が取り付けられている。遮蔽部19は、その縁に歯車20にかみあう直線歯車が備えられ、カバー24で保持部21に保持されている。
【0028】
送風経路(給気送風経路6、排気送風経路7)に隙間なく配置した電動開口調整部18は、開口調整用電動機22を駆動させることで遮蔽部19をスライドさせ、開口部25の開度を全閉から全開まで調整する。
【0029】
上記構成とすることで、開口調整用電動機22で遮蔽部19を動かすことによって、施工時の試運転調整を簡略化し、施工性を向上させることができる。
【0030】
また、図示しないが、給気送風経路6と排気送風経路7の風量を計測する計測手段(以降、風量センサー)を給気送風経路6と排気送風経路7に各々設置する。そして、給気送風経路6と排気送風経路7に設けたそれぞれの電動開口調整部18を制御する制御手段を備える。この制御手段は、風量センサーにて各送風経路の風量を計測して、前述の電動開口調整部18の開度調整を行う。すなわち、風量センサーの計測値が所定風量に足りない場合は、開口調整用電動機22および遮蔽部19を動作させ、各送風経路の開口部25を広げる。一方、所定風量を超える場合は、開口調整用電動機22および遮蔽部19を動作させ、各送風経路の開口部25を狭める。このようにして、所定の風量になるように電動開口調整部18の動作を制御する。
【0031】
上記構成において、熱交換形換気装置1を運転し、給気送風経路6と排気送風経路7にそれぞれ気流が流れ、各経路に設置した風量センサーが流れている風量を確認する。所定の風量より小さな風量が検出された経路においては、電動機10の回転数を大きくする。そして、再び風量センサーにて風量を確認し、所定の風量が検出されるまで電動機10の回転数を大きくする。所定の風量より大きな風量が検出された経路においては、経路に設置された電動開口調整部18を動作させ、開口部25を狭める。これにより経路の圧損が大きくなり、風量は小さくなる。再び風量センサーにて風量を確認し、所定風量になっていなければ、再び電動開口調整部18を動作させ、開口部25を調整する。この一連の動作を繰り返すことで所定の風量を実現する。
【0032】
上記構成とすることで、給気送風経路6と排気送風経路7の風量を計測し、自動で各経路を通過する風量を所定の風量に調整することができるという効果を奏する。
【0033】
また、図9に示すように、給気送風経路6に、給気側開口調整部12に隣接して加熱手段であるヒーター26を設ける。さらに、ヒーター26は、給気送風経路6の熱交換素子11の上流側に設ける。
【0034】
上記構成とすることで、ヒーター26により、外気から導入した空気を加熱し暖める。ここで、外気が氷点下の場合、冷たい外気が室内の暖かい空気と熱交換素子11を介して接すると、室内の暖かい空気が急激に冷やされ露点温度に到達し結露水を発生する。しかし、導入した外気を暖めることで、室内の暖かい空気の急激な温度低下を防ぐことができ、結露水の発生を防ぐことができる。また、結露水凍結による熱交換素子11の凍結を防ぐことができる。
【0035】
なお、図9では、ヒーター26は、給気側開口調整部12の下流側に配置したが、上流側に配置しても良い。
【0036】
また、図10に示すように給気送風経路6において給気側開口調整部12の上流側に外気用フィルタ27を、また、排気送風経路7において排気側開口調整部13の上流側に室内空気用フィルタ28を設ける。
【0037】
上記構成とすることで、給気送風経路6においては、外気用フィルタ27により外気から導入した空気が清浄され、粉塵や異物が進入し給気側開口調整部12に付着することで、遮蔽部19が動作しにくく、また、異物の付着により開口部25が完全に閉じない、などの給気側開口調整部12の不具合を回避することができる。また排気送風経路においては、室内空気用フィルタ28により、室内の塵埃が除去され、粉塵や異物が進入し排気側開口調整部13に付着することで、遮蔽部19が動作しにくく、また、異物の付着により開口部25が完全に閉じない、などの排気側開口調整部13の不具合を回避することができる。
【0038】
上記構成とすることで、給気側開口調整部12の外気による汚染を防ぐことができ、また、排気側開口調整部13の室内空気による汚染を防ぐことができ、安定して給気風量と排気風量の風量バランスをとることができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明にかかる熱交換形換気装置は、外気と室内空気の熱交換を目的とするダクト式の熱交換気装置、ダクト式の空気調和装置などの用途として有効である。
【符号の説明】
【0040】
1 熱交換形換気装置
2 外気吸込口
3 室内空気排気口
4 外気給気口
5 室内空気吸込口
6 給気送風経路
7 排気送風経路
8 給気用ファン
9 排気用ファン
10 電動機
11 熱交換素子
12 給気側開口調整部
13 排気側開口調整部
14 開口調整部
15 遮蔽部
16 開口部
17 保持部
18 電動開口調整部
19 遮蔽部
20 歯車
21 保持部
22 開口調整用電動機
23 電動機保持カバー
24 カバー
25 開口部
26 ヒーター
27 外気用フィルタ
28 室内空気用フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気用ファンにより屋外から室内に送風される給気送風経路と、
排気用ファンにより室内から室外に送風される排気送風経路とを本体内に備え、
前記給気用ファンと前記排気用ファンは1つの電動機の回転軸に取り付けられ、
前記給気送風経路と前記排気送風経路とが交差する位置に熱交換素子を配置し、
前記給気送風経路と前記排気送風経路にそれぞれ開口調整部を有したことを特徴とする熱交換形換気装置。
【請求項2】
前記開口調整部は、送風経路に配置した遮蔽部と、
この遮蔽部に連結して、前記遮蔽部を動作させる電動部で構成したことを特徴とする請求項1記載の熱交換形換気装置。
【請求項3】
前記給気送風経路、前記排気送風経路内にそれぞれ設けて、各送風経路の風量を計測する計測手段と、
これらの計測手段の出力を入力として、前記電動部を制御して前記遮蔽部の開度を調節する制御手段を有したことを特徴とする請求項2記載の熱交換形換気装置。
【請求項4】
前記給気送風経路には、前記開口調整部の直前あるいは直後に加熱手段を設けたことを特徴とした請求項1から3のいずれかに記載の熱交換形換気装置。
【請求項5】
前記給気送風経路および排気送風経路にフィルタを設けたことを特徴とした請求項1から4のいずれかに記載の熱交換形換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−104635(P2013−104635A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250361(P2011−250361)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)