説明

熱伝導率が低い組成物と断熱体

【課題】本発明は改良された熱伝導値を有する粒状組成物を提供する。
【解決手段】本発明の一実施態様として、103421Paの荷重下、20℃で、窒素中、133.322〜13332.2Paの範囲内の圧力において、160kg/m3以下の充填密度、並びに133.322〜1333.322Paにおいて(0.260ln P+4.53milliWatt/meterK(mW/m・K)以下の熱伝導率及び1333.322〜13332.2Paにおいて(0.824ln P+0.47)mW/m・K以下の熱伝導率を有する粒状組成物である。好ましい粒状組成物はゲル組成物である。また、この粒状組成物を含む断熱体についても開示した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は熱伝導特性が改良された組成物に関する。また、この発明は前記組成物を含有してなる断熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱材料は、現在、窓、建造物、電気器具ならびにその外の産業用および家庭用の設備をはじめとする諸用途に使用されている。断熱の一つのタイプは、“減圧内粉体(powder-in-vacuum)”断熱であり、この場合、減圧空間に、粒状断熱組成物、例えば粉体が充填されている。減圧内粉体断熱は、冷蔵庫、湯沸し器、ならびに高温と低温の液体を貯蔵し輸送するのに用いる装置をはじめとする家庭用および産業用の電気器具を含む用途の断熱パネルに利用できる。
【0003】
用語“減圧パネル”または“減圧断熱パネル”は、減圧内粉体断熱、例えば内圧を下げた断熱構造体を説明するのに利用できる。減圧断熱パネルは、一般に、断熱組成物と、充填材を囲む実質的に不透過性のフィルムで製造された容器とで構成されている。この容器は、一般に、内圧が大気圧より低くなるまで排気され、次いで耐密的にシールされる。断熱組成物の機能には、断熱値を与えることに加えて、容器が、排気されているときに、潰れないように容器の皮膜を支持する機能がある。
【0004】
減圧断熱パネルは、冷蔵電気器具の器壁を含む断熱用途に有利に利用できる。このようなパネルは、20年を超える電気器具の寿命の期間、有効であり続けることが有利である。
【0005】
減圧パネルの断熱特性は、利用される粒状組成物の熱伝導率と、達成されて維持される真空度の関数である。
【0006】
減圧空間に断熱材料が充填される断熱システムを使用するときに遭遇する難点が少なくともいくつかある。一般に、減圧レベルが周囲よりはるかに低ければ低いほど、より大きな断熱値が得られ、あるいは、換言すれば、絶対圧力が増大すると熱伝導率が大きくなる。その結果、周囲よりはるかに低い減圧レベル(低い絶対圧力)を達成し、より大きな初期断熱値(低い熱伝導率)を与え、そして漏洩、温度上昇および/または断熱材料の気体放出によって減圧レベルが損われて断熱値が低下するのを最少限にする必要があるので製造コストが増大する。その上に、断熱材料を保持しかつ低い減圧レベルを維持する実質的に気体不透過性のバリヤー材料(例えば減圧バッグ)が必要なため、製造・生産コストが増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱伝導率が改善された組成物をもっていれば有利であろう。このような組成物は、限定されないが、内部圧力が低い断熱パネルまたは他の形態の減圧内粉体断熱の断熱パネルを含む断熱構造体で使用するのに有利であろう。
【0008】
また、これまで知られている断熱材料より、周囲圧力に近い減圧レベルで、一般的な断熱用途に用いるのに十分な熱伝導率を達成して、周囲の条件よりはるかに離れた減圧レベルを達成することおよびその減圧レベルを維持するために高度に不透過性のバリヤー材料が必要であることに伴う製造・生産コストを下げる組成物を入手することは有利であろう。このような断熱組成物は、その断熱構造体の有効寿命を延ばすのに有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、103421Pa (15psi)の荷重下、20℃で、窒素中、 133.322〜13332.2Pa(1〜100 トル)の範囲内の圧力(P)において;充填密度が 160kg/m3(kg/m3)以下であり、かつ 133.322〜1333.322Paにおける熱伝導率(TC)が、 0.260ln P+4.53ミリワット/メートルK(mW/m・K)以下であり〔TC(0.260ln P +4.53)mW/m・K〕、そして1333.322〜13332.2Pa におけるTCが(0.824ln P+0.47)mW/m・K以下である〔TC(0.824ln P+0.47)mW/m・K〕粒状組成物を提供するものである。
【0010】
この発明の一態様で、103421Paの荷重下、20℃で、窒素中133.322Pa(1トル)の圧力において;充填密度が 160kg/m3 以下であり、かつTCが 5.8mW/m・K以下である粒状組成物が提供される。
【0011】
この発明の他の一態様で、103421Paの荷重下、20℃で、窒素中1333.22Pa(10トル)の圧力において;充填密度が 160kg/m3 以下であり、かつTCが 6.4mW/m・K以下である粒状組成物が提供される。
【0012】
この発明のさらに他の態様で、103421Paの荷重下、20℃で、窒素中13332.2 Pa(100トル)の圧力において;充填密度が 160kg/m3 以下であり、かつTCが9mW/m・K以下である粒状組成物が提供される。
【0013】
この発明のさらに他の一態様で、103421Pa(15psi)の荷重下、20℃で、窒素中、 133.322〜13332.2Pa(1〜100 トル)の圧力(P)範囲内において;充填密度が 160kg/m3 以下であり、そして133.22〜1333.322Paにおける熱伝導率が、 0.260ln P+4.53ミリワット/メートルK(mW/m・K)以下であり〔TC 0.260ln P+4.53)mW/m・K〕、かつ1333.322〜13332.2Pa におけるTCが(0.824ln P+0.47)mW/m・K以下である〔TC 0.824ln P+0.47)mW/m・K〕粒状組成物が提供される。
【0014】
用語“粒状”は、この発明の組成物について本明細書で使用する場合、個々の粒子、顆粒、繊維および/またはその混合物を含んでなる非単相構造体を意味する。この発明の好ましい組成物はゲル組成物である。
【0015】
この発明のその外の態様で、多孔度が0.95以上であり、かつロッド密度(rod density)が 100kg/m3 以下である、超臨界乾燥なしで製造されるゲル組成物が提供される。
【0016】
また、この発明は、この発明の組成物を含有してなる断熱体を提供するものである。
【0017】
この発明の組成物と断熱の特徴と利点は、以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明は、103421Pa (15psi)の荷重下、20℃で、窒素中、 133.322〜13332.2Pa(1〜100 トル)の範囲内の圧力(P)において;充填密度が 160kg/m3 以下、好ましくは 140kg/m3 以下、より好ましくは10〜120 kg/m3 であり、そして 133.322〜1333.322Paにおける熱伝導率(TC)が、 0.260ln P+4.53ミリワット/メートルK(mW/m・K)以下〔TC(0.260ln P +4.53)mW/m・K〕、好ましくは(0.304ln P+3.97)mW/m・K以下〔TC(0.304ln P+3.91)mW/m・K〕であり、および1333.322〜13332.2Pa におけるTCが、(0.824ln P+0.47)mW/m・K以下〔TC(0.824ln P+0.47)mW/m・K〕、好ましくは(0.825ln P+0.16)mW/m・K以下〔TC(0.825ln P+0.16)mW/m・K〕である粒状組成物を提供するものである。
【0019】
本明細書で利用する式中の用語“ln”は自然対数(loge1=ln1=0)を意味する。
【0020】
図1は、この発明の組成物を説明するのに本明細書で利用する式のグラフを示す。図1中の上方の曲線は、 133.322〜1333.322PaにおいてTC=(0.260ln P+4.53)mW/m・Kおよび1333.322〜13332.2Pa においてTC=(0.824ln P+0.47)mW/m・Kを示す。図1中の下方の曲線は、 133.322〜1333.322PaにおいてTC=(0.304ln P+3.91)mW/m・Kおよび1333.322〜13332.2Pa においてTC=(0.825ln P+0.16)mW/m・Kを示す。
【0021】
この発明の一態様で、103421Paの荷重下、20℃で、窒素中、133.322Pa(1トル)の圧力において;充填密度が 160kg/m3 以下、好ましくは 140kg/m3 以下、より好ましくは10〜120 kg/m3 であり、そして、TCが 5.8mW/m・K以下、好ましくは 5.4mW/m・K以下である粒状組成物が提供される。
【0022】
この発明の別の一態様で、103421Paの荷重下、20℃で、窒素中、1333.22Pa(10トル)の圧力において;充填密度が 160kg/m3 以下、好ましくは 140kg/m3 以下、より好ましくは10〜120 kg/m3 であり、そして、TCが 6.4mW/m・K以下、好ましくは 6.1mW/m・K以下である粒状組成物が提供される。
【0023】
この発明の他の一態様で、103421Paの荷重下、20℃で、窒素中、13332.2Pa (100トル)の圧力において;充填密度が 160kg/m3 以下、好ましくは 140kg/m3 以下、より好ましくは10〜120 kg/m3 であり、そして、TCが9mW/m・K以下、好ましくは8mW/m・K以下である粒状組成物が提供される。
【0024】
この発明の別の一態様で、103421Pa(15psi)の荷重下、20℃で、窒素中、 133.322〜13332.2Pa(1〜100 トル)の範囲内の圧力(P)において;充填密度が 160kg/m3 以下、好ましくは 140kg/m3 以下、より好ましくは10〜120 kg/m3 であり、そして、 133.322〜1333.322Paにおける熱伝導率(TC)が、 0.260ln P+4.53ミリワット/メートルK(mW/m・K)以下〔TC(0.260ln P +4.53)mW/m・K〕、好ましくは(0.304ln P+3.91)mW/m・K以下〔TC(0.304ln P+3.91)mW/m・K〕であり、および1333.322〜13332.2Pa におけるTCが、(0.824ln P+0.47)mW/m・K以下〔TC(0.824ln P+0.47)mW/m・K〕、好ましくは(0.825ln P+0.16)mW/m・K以下〔TC(0.825ln P+0.16)mW/m・K〕である粒状組成物が提供される。
【0025】
この発明の組成物に関する前記説明は、 133.322〜13332.2Pa(1〜100 トル)の範囲内の圧力を含む選択された圧力について行なっている。その選択された圧力は、この発明の組成物のTCを決定するのに利用する真空チャンバー内の圧力を意味する。
【0026】
この発明の組成物は、限定されないが、パネル(例えば減圧内粉体のパネル)、ブランケット、壁、ハウジングなどを含む断熱用途で熱伝達を減らすため、断熱材料として有利に利用できる。
【0027】
この発明の組成物は、減圧下の構造体、例えば、減圧パネルに利用される減圧バッグに断熱材料として使用するのに特に有利用である。
【0028】
熱伝導率(“TC”)は、材料の断熱能力の尺度である。TCは、SI単位のミリワット/メートルK(mW/m・K)および英国単位の(BTU)(インチ)/(hr)(フィート2)( °F)で示すことができる。TCの数値が大きいことは、熱伝導率が大で断熱性が低いことに相当する。熱伝導率の数値が小さいことは、断熱性が優れていることに相当する。
【0029】
TCは熱抵抗の逆数である。熱抵抗は、SI単位の(メートル)(K)/ミリワットおよび英国単位の(hr)(フィート2)( °F)/(BTU)(インチ)(通常R値/インチで表されることが多い)で報告することができる。熱抵抗の値が大きいことは、断熱性能が優れていることに相当ししたがってTCが低いことに相当する。
【0030】
本明細書で説明し報告するTC値は、下記式:
熱抵抗=1/TC
を用いて、熱抵抗値に容易に変換できる。
【0031】
多孔質の粒状組成物の場合、TCは、環境条件、例えば、大気、温度、微細孔を囲みおよび/または満たす圧力などの関数として変えることができる。例えば、断熱組成物が減圧下にある断熱の場合、TCは、達成され維持される真空度に影響される。
【0032】
TCについては、ASTMの専門用語標準C−168 により詳細に記載されている。本明細書で報告される熱伝導率(TC)値は、ASTM試験法C1114−92を利用する当該技術分野で公知の方法で測定した。TC測定の手順については、以下により詳細に述べる。
【0033】
充填密度は、組成物の質量または重量をその容積で割算して得た値を意味する。組成物の質量または重量とその容積は、通常の方法を利用して測定できる。
【0034】
断熱組成物の有用性は、一部は、所望のTCにおけるその密度によって決まる。組成物の密度が高ければ高いほど、所望の断熱度を達成するのにより多量の材料を使用する必要がある。一般に、より多量の材料を使用すると経費が高くなる。
【0035】
この発明の組成物の断熱特性は、103421Pa(15psi)の外部荷重下にある組成物について説明する。103421Pa(15psi)という荷重は、公知の方法を利用して組成物を圧縮することによって得ることができる。これらの方法には、次の方法:組成物をパウチ中に移し、そのパウチを密封し、次いでそのパウチを2枚の金属板の間に入れて、端縁が103421Pa(15psi)の外部荷重に圧迫されることなく、一軸方向に圧縮する方法がある。圧縮は、TCを測定する間、維持される。
【0036】
この発明の組成物を説明する際に使用される温度20℃は、TCを測定するときの温度を意味する。
【0037】
この発明を説明する際に使用される用語“窒素”は、主要成分として窒素を含有する気体の雰囲気を意味する。この発明の組成物の特性は、この発明の組成物の細孔内および該組成物を囲む気体が窒素の場合について説明される。この発明を説明する際に窒素を参照すると、この発明の組成物のTCと他の組成物のTCを比較する方法が提供される。しかし、この発明の組成物の実施態様で、周囲の雰囲気は、空気、窒素または熱伝導率が異なる気体、例えば熱伝導率が低いアルゴン、クリプトンまたはキセノンを含有してもよい。
【0038】
この発明の組成物の好ましい実施態様は、BET 表面積が、 200m2 /g以上、好ましくは 400m2 /g以上、より好ましくは 500m2 /g以上である。BET 表面積はASTM試験法D1993を利用して測定できる。
【0039】
この発明の組成物の好ましい実施態様で、粒子の間の粒間空間の大きさと大きさの分布は、平均粒径が50〜500 ミクロン、好ましくは50〜250 ミクロンである粒子を含んでなる組成物を利用することによって最小になる。これらの粒径は、通常の方法、例えばミリング法および/または物理的分離法で達成できる。
【0040】
この発明の組成物の好ましい実施態様は、多孔度が0.90以上、より好ましくは0.93以上の組成物である。多孔度は、粒状材料中および粒状材料のまわりの細孔の試料容積に対する分率と定義され、下記式で求めることができる。
(多孔質型のロッド密度の測定値)
多孔度=1− ──────────────────
(中実型の材料の密度)
多孔度の測定の詳細は後に述べる。
【0041】
この発明の好ましい組成物は、ゲル成分を含んでなるゲル組成物である。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語“ゲル組成物”には、限定されないが、超臨界乾燥ありまたはなしで製造されるエーロゲルおよびキセロゲルなどが含まれる。
【0043】
この発明の組成物に使用するのに適しているゲル成分としては、シリカゲル、チタニアゲル、アルミナゲルなどのような金属酸化物ゲルを含む酸化物ゲル;レゾルシノール−ホルムアルデヒド(R−F)ゲル、メラミン−ホルムアルデヒド(M−F)ゲル、フェノール−フルフラール(P−F)ゲルなどのような高分子ゲルがある。好ましいゲル成分は金属酸化物のゲルである。“ゲル”および“ゲル成分”の詳細な説明は、国際特許願公開第WO96/18456 に記載されており、その開示事項は本願に援用するものである。ゲル成分は好ましくはシリカエーロゾルであり、より好ましくは、ケイ酸ナトリウムの前駆体から製造されるシリカエーロゾルである。
【0044】
また、不透明剤を含有するゲル組成物も好ましい。
【0045】
適当な不透明剤としては、赤外線が組成物を透過するのを最少限にする薬剤があり、限定されないが、炭素質の材料、酸化鉄類、Al2O3, FeTiO3, TiO2, ZyO2 および他の不透明剤など当該技術分野で公知のものが含まれる。好ましい不透明剤は炭素質材料である。炭素質材料としては、カーボンブラック;活性炭;黒鉛;カーボンブラックと金属酸化物(例えばシリカ)を含有する複合体;およびこのような炭素質フィラー材料の混合物がある。不透明剤として、より好ましいのはカーボンブラックである。好ましいカーボンブラックは、窒素表面積(N2SA)が、少なくとも10m2 /g、好ましくは15〜500 m2 /gである。
【0046】
この発明の組成物の好ましい実施態様で、組成物は、不透明剤を、3重量%以上、好ましくは5重量%以上、一層好ましくは5〜30重量%含有している。
【0047】
不透明剤は、各種の方法で、ゲル成分と混合してもよい。不透明剤は、乾燥形態で、乾燥後のゲル成分と物理的に混合してもよい。不透明剤は、例えば、ゲル成分をゲル化させる前に、不透明剤をゲル成分と混合することによって、ゲル成分のマトリックス内に包封することが好ましい。
【0048】
ゲル組成物の取扱いやすさを改善するため、不透明剤をゲル成分に結合させることが好ましい。本明細書で使用する場合、“結合させる”という用語の意味に関する詳細は、先に引用した国際特許願公開第WO96/18456 号に記載されている。国際特許願公開第WO96/18456 号に記載されているように、結合した不透明剤、特に結合した炭素質成分を含有するゲル組成物の走査型電子顕微鏡(SEM)による画像は、ゲル成分と不透明剤が物理的に混合されている組成物、または不透明剤がゲル成分のゲルマトリック内に包封されているがそのゲルマトリックスに結合していない組成物のSEM 画像と異なっている。その上に、結合した不透明剤、特に結合した炭素質成分を含有するゲル組成物の摩擦落ち値(Rub off value)は、一般に、ゲル成分と不透明剤が物理的に混合されている組成物、または不透明剤がゲル成分のゲルマトリックス内に包封されているがそのゲルマトリックスに結合していない組成物の摩擦落ち値より小さい。
【0049】
所望の場合、不透明剤は、例えば、化学処理剤で処理して、ゲル成分に結合できるようにすることができる。国際特許願公開第WO96/18456 号で説明されているように、炭素質材料、特にカーボンブラックは、以下の方法で処理して、ゲル成分に結合可能な炭素質材料にすることができる。
【0050】
結合可能な炭素質成分は、液状反応媒体中で、ジアゾニウム塩と反応させて、その表面に少なくとも一つの有機基を結合させることによって製造することができる。好ましい反応媒体としては、水、水を含有する媒体およびアルコールを含有する媒体がある。水が最も好ましい媒体である。
【0051】
改質された炭素質成分とその各種製造法は、標題が“Reaction of Carbon Black with Diazonium Salts, Resultant Carbon Black Products and Their Uses ”の国際特許願公開第WO96/18688 号;標題が“Reaction of Carbon Materials with Diazonium Salts and Resultant Carbon Products ”の国際特許願公開第WO96/18690号;標題が“Ink Jet Ink Formulations Containing Moditied Carbon Products”の国際特許願公開第WO96/18693 号;標題が“Non-Aqueous Inks and Coatings Containing Carbon Products”の国際特許願公開第WO96/18694 号;標題が“Aqueus Inks and Coatings Containing Modified Carbon Products”の国際特許願公開第WO96/18696 号;標題が“Carbon Black Products for Coloring Mineral Binders”の国際特許願公開第WO96/18689 ;および先に引用した国際特許願公開第WO96/18456 号に記載されている。これら公開国際特許願各々の開示事項は本明細書に援用するものである。
【0052】
この発明のゲル組成物に使用する、結合可能な炭素質成分の製造法は、炭素質成分としてのカーボンブラックについて、以下のパラグラフで説明する。類似の方法を実施して、カーボンブラック以外の結合可能な炭素質成分を製造できる。
【0053】
結合可能なカーボンブラックを製造するには、ジアゾニウム塩は、カーボンブラックと反応させるのに十分に安定であることだけが必要である。したがって、その反応は、他の反応の場合、不安定でかつ分解しやすいいくつかのジアゾニウム塩を用いて実施することができる。いくつかの分解プロセスは、カーボンブラックとジアゾニウム塩との反応と競合して、カーボンブラックに結合する有機基の合計数が減少することがある。さらに、前記反応は、多くのジアゾニウム塩が分解しやすい高温で実施できる。また、高温は、ジアゾニウム塩の反応媒体に対する溶解度を増大し、かつその工程中の取扱いやすさが改善されて有利である。しかし、高温によって、他の分解工程のために、ジアゾニウム塩がいくらか失われる。
【0054】
カーボンブラックは、希薄で容易に撹拌される水性スラリーとして存在しているとき、またはカーボンブラックのペレットを製造するのに適正な量の水の存在下で、ジアゾニウム塩と反応させることができる。所望により、カーボンブラックのペレットは、通常のペレット化法を利用して製造することができる。
【0055】
カーボンブラックに結合させることができる有機基群は、官能基としてのイオン基またはイオン化可能な基で置換された有機基である。イオン化可能な基は、使用される媒体中でイオン基を形成できる基である。イオン基はアニオン基またはカチオン基でもよく、そしてイオン化可能な基はアニオンまたはカチオンを形成してもよい。
【0056】
アニオンを生成するイオン化可能な官能基としては、例えば、酸性基または酸性基の塩がある。したがって、有機基としては有機酸から誘導される基がある。有機基は、アニオンを生成するイオン化可能な基を含有している場合、好ましくは、a)芳香族基またはC1 −C12アルキル基、および(b)pKa が11未満の酸性基を少なくとも一つ、またはpKa が11未満の酸性基の塩を少なくとも一つ、またはpKa が11未満の酸性基を少なくとも一つと、pKa が11未満の酸性基の塩を少なくとも一つ混合して含有している。酸性基のpKa は、有機基全体のpKa を意味し、酸性置換基のpKa ではない。pKa は、より好ましくは10未満であり、最も好ましくは9未満である。有機基の芳香族基またはC1 −C12アルキル基は、カーボンブラックに直接結合している方が好ましい。その芳香族基は、さらに、例えばアルキル基で置換されているかまたは未置換でもよい。C1 −C12アルキル基は分枝しているかまたは分枝していなくてもよく、好ましくはエチルである。より好ましくは、有機基はフェニル基またはナフチル基であり、そして酸性基はスルホン酸基、ホスフィン酸基、ホスホン酸基またはカルボン酸基である。例としては、−COOH, −SO3Hおよび−PO3H2 ならびにそれらの塩、例えば、−COONa,−COOK, −COO - , NR4+ , −SO3Na, −HPO3Na, −SO3 - NR4 + 、およびPO3Na2であり、式中、Rはアルキル基またはフェニル基である。特に好ましいイオン化可能な置換基は、−COOHと−SO3Hおよびそれらのナトリウム塩とカリウム塩である。
【0057】
最も好ましくは、有機基は、置換もしくは未置換のスルホフェニル基またはその塩;置換もしくは未置換の(ポリスルホ)フェニル基またはその塩;置換もしくは未置換のスルホナフチル基またはその塩;または置換もしくは未置換の(ポリスルホ)ナフチル基またはその塩である。好ましい置換スルホフェニル基は、ヒドロキシスルホフェニル基またはその塩である。
【0058】
アニオンを生成するイオン化可能な官能基を有する特定の有機基は、p−スルホフェニル、4−ヒドロキシ−3−スルホフェニルおよび2−スルホエチルである。
【0059】
アミン類は、カチオン基を生成して、アニオンを生成するイオン化可能な基について先に考察したのと同じ有機基に結合できるイオン化可能な官能基の例である。例えば、アミン類は、酸性媒体中で、プロトン化されてアンモニウム基を生成することができる。アミン置換基を有する有機基は好ましくはpKb が5未満である。第四級アンモニウム基(−NR3 + ) と第四級ホスホニウム基(−PR3 + )もカチオン基の例であり、アニオンを生成するイオン化可能な基について先に考察したのと同じ有機基に結合できる。好ましくは、有機基は、フェニル基もしくはナフチル基のような芳香族基および第四級アンモニウム基もしくは第四級ホスホニウム基を含有している。その芳香族基は、好ましくは、カーボンブラックに直接、結合させる。四級化環式アミン類と四級化芳香族アミン類も有機基として使用できる。したがって、この場合には、N−置換ピリジニウム化合物類、例えばN−メチル−ピリジンを使用できる。
【0060】
固有の不透明性を有するゲル前駆体を利用することによって、またはゲルもしくはゲル前駆体の表面を化学的に改質することによって、不透明化ゲルを創製することもできる。この化学的改質は、例えば、ゲルの表面に有機組成物を結合させ、次に、その有機組成物の非炭素の成分を熱分解してゲルを不透明化することによって達成できる。
【0061】
この発明の好ましい組成物は、ゲル組成物を製造する通常の方法、例えば、通常のゾル−ゲルプロセッシングによって製造することができる。特に、この発明のゲル組成物は、本明細書の諸実施例および引用した諸特許願の諸実施例に開示された方法で製造することができ、そして、それらゲル組成物の微細構造を調整して、特定の用途に望ましい特性を最適化することができる。金属アルコキシド類、コロイド懸濁液およびその混合物を含む各種の前駆体を、各種のゲル化機構によって、利用してこの発明の組成物を合成することができる。時間、温度、pHおよび細孔流体(pore tluid)などの処理条件を変えることによって、組成物の微細構造を変えることができる。
【0062】
後記諸実施例で詳細に説明するように、この発明のゲル組成物は、ゲル前駆体の固体を含有する溶液から製造することができる。荷重下でのTCと充填密度が本明細書の特許請求の範囲の範囲内に入っているこの発明のゲル組成物は、所望の充填密度を達成するのに十分に低い重量%の固体を含有する溶液から、その溶液を、低い固体濃度が最終のゲル組成物中に維持される方式で、ゾル−ゲルプロセッシング法を利用して処理することによって製造することができる。
【0063】
特に、この発明のゲル組成物は、下記の方法によって製造することができる。すなわち、
1)最終のゲル組成物に、所望の固体濃度を達成する初期固体濃度で、ゲル前駆体の固体またはゲル前駆体と不透明剤を含有する溶液中に、例えば触媒を使用することによってゲル化を開始させ;
2)ゲル化を、予め決められた完了度まで進行させ;
3)所望により、最終のゲル組成物に望ましい機械的特性を達成するのに十分な温度と期間、ゲルを熟成し;
4)所望により、ゲルを洗浄し;
5)所望により、細孔液体を交換し;
6)所望により、ゲルを化学的に処理し;次いで
7)、生成したゲル組成物から、例えば乾燥によって液体を除去する;方法である。
【0064】
個々の方法の工程の3,4,5および/または6は、利用する場合、あらゆる順序で実施しかつ繰り返して、所望の特性を有するゲル組成物を得ることができる。
【0065】
好ましい方法において、この発明の組成物は、
ゲル前駆体の固体を含有する溶液中にゲル化を開始させ、次に、ゲル化を予め決められた完了度まで進行させ;
その初期ゲルを表面改質剤と接触させ;次いで
生成したゲルから液体を除いて、ゲル組成物を製造する;
ことを含んでなる方法によって、ゲル前駆体から製造することができる。
【0066】
ゲル前駆体から表面改質ゲル組成物を製造する上記の方法は、さらに、下記工程を一つ以上含んでいてもよい。
すなわち、
表面改質剤に接触させる前に、最終のゲル組成物に所望の機械的特性を達成するのに十分な温度と期間、初期ゲルを熟成する;
表面改質剤と接触させる前に、初期ゲルを洗浄する;
表面改質剤と接触させた後に、最終のゲル組成物に所望の機械的特性を達成するのに十分な温度と期間、生成したゲルを熟成する;
表面改質剤と接触させる前に、生成したゲル中の細孔流体を交換する;
表面改質剤と接触させた後に、生成したゲル中の細孔流体を交換する;および/または
表面改質剤と接触させた後に、ゲルを洗浄する;
工程である。
【0067】
さらに、不透明剤などの他の成分が、最終のゲル組成物中に要望される場合、これらの成分は、ゲル化を開始する前に、溶液中に添加してもよい。
【0068】
当業技術者であれば分かるように、例えばゲル成分の固体と不透明剤の固体を含有する溶液の固形分濃度は、最終組成物に要望される密度を達成するのに十分な濃度である。この発明の組成物の好ましい製造方法において、前記溶液の固形分濃度は、この発明の組成物に要望される充填密度を達成するには、8%未満があり、好ましくは7%未満である。
【0069】
この発明の組成物を製造するのに利用できる、ゲル組成物の好ましい製造方法の一例は、the University of New Mexicoに譲渡された国際特許願公開第WO94/25149 号に記載されている。なおこの特許願第の開示事項は本明細書に援用するものである。国際特許願公開第WO94/25149 号に記載されている方法において、湿潤ゲル、例えば、アルコキシド由来のシリカゲルの内部細孔表面を、乾燥させる前に、式:RxMXy(式中Rは有機基であり、MはSiまたはAlであり、そしてXはハロゲンである)で表される有機表面改質剤、例えば、トリメチルクロロシラン〔(CH3)3SiCl 〕と反応させると、次に、ゲルを、非超臨界圧力にて乾燥させた場合、乾燥中の収縮が大きく低下するという有意な変化がもたらされる。
【0070】
ゲル前駆体としては、限定されないが、当該技術分野で公知の酸化物、高分子および粒状のゲル前駆体がある。例えば以下のものがある。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
特定の前駆体を、所望の組成物のタイプに基づいて選択する。この発明の組成物のゲル成分は、ケイ酸ナトリウムの前駆体で製造することが好ましい。
【0074】
この発明の組成物に利用される不透明剤は、ゲルを製造中に添加することが好ましい。さらに詳しく述べると、不透明剤は、ゾル前駆体内に予め分散させておいて、安定なpH下でゲルに入れ、次いでそのpHを調節してゲル化を促進する。好ましい結果が得られるのは、不透明剤が、ゲル成分に結合しているかまたはゲルマトリックス内に包封されている組成物である。先に考察したように、不透明剤がゲル成分に結合しているゲル組成物を得るには、結合可能な不透明剤を使用することが好ましい。
【0075】
この発明の組成物の製造に関するその外の詳細事項は、本明細書に記載の諸実施例で提供する。
【0076】
この発明の追加の態様で、この発明の粒状組成物を含んで成る断熱体が提供される。その断熱体は、さらに、バリヤー、フィルム、構造体、膜、またはこの発明の粒状組成物を保持しおよび/または封入する他の手段を含んでいる。さらに、この発明の粒状組成物は、発泡され、押出され、成形され、または他の方法で画定可能な容積に形成される組成物の一成分として添加できる。
【0077】
この発明の断熱体の可能性がある実施態様としては、限定されないが、断熱構造体がある。構造体という用語は、本明細書で用いる場合、封入された空間を意味し、構造体は気体を抜いても抜かなくてもよく(減圧下)、この発明の粒状組成物を充填しまたは部分的に充填してもよい。このような構造体としては、限定されないが、パネル、ブランケット、壁、ハウジングなどがある。この発明の断熱体は、システムを断熱するように設計された構造形態で利用できる。
【0078】
この発明の断熱体の好ましい実施態様は、減圧断熱パネルである。その減圧断熱パネルは、減圧下のこの発明の粒状組成物およびその組成物を囲む実質的に気体不透過性のバリヤーで構成されている。この発明の断熱構造体の実施形態は、さらに追加の構造要素および/または非常に低い輻射率を達成するために処理された表面、放射線遮蔽物などを備えていてもよい。
【0079】
この発明の断熱体の一実施態様を図2に示しているが、図2は、実質的に気体不透過性の減圧バッグ4内に封入されたこの発明の粒状組成物2を示している。この発明に使用するのに適当な実質的に気体不透過性のバリヤーとしては、実質的に気体不透過性の、高分子、金属被覆高分子または金属ホイルの積層体の一つ以上の層を含んでなる金属バリヤー、バリヤーフィルムを含む封入体、例えば袋体もしくはパウチがある。
【0080】
非減圧用途では、この発明の粒状組成物は、減圧にした封入体の中に入っておらず、この発明の前記粒状組成物の画定可能な容積を形成する他の手段を採用できる。一般に、非減圧の用途では、この発明の粒状組成物は、この発明の粒状組成物の実質的にすべてを、所望の空間内に入れるの十分なバリヤー内に封入するかまたはそのバリヤーで囲む。非減圧用途に用いるのに適しているバリヤーの材料としては、限定されないが、プラスチック、セルロース材料、木材、セメント、アスファルトおよび/または金属がある。
【0081】
あるいは、この発明の粒状組成物は、発泡され、押出され、成形されまたは他の方法で画定可能な容積に形成される組成物に、一成分として添加できる。例えば、この発明の粒状組成物は、スタイロフォーム(styrofoam)組成物に一成分として添加して、次にそれをれんがに成形することができる。また、この発明の粒状組成物を含有する組成物は所望により、その後封入することができる。
【0082】
この発明の断熱体は、当該技術分野で公知の通常の方法、例えば、この発明の減圧断熱パネルの実施態様について先に記載した方法で製造することができる。この発明の他の実施態様は、同様に、当該技術分野で周知の通常の方法を使用して製造できる。
【0083】
この発明の減圧断熱パネルの実施態様は、この発明の粒状組成物を、実質的に気体不透過性バリヤーの封入体内に入れ、次にその封入体を減圧にし次いで密閉することによって製造することができる。この発明の粒状組成物は、任意に、乾燥した後、バリヤー封入体内に入れてもよい。
【0084】
所望により、この発明の粒状組成物は、多孔質のパウチ内に入れ次に圧縮して所望の形態にした後、実質的に気体不透過性でかつ実質的に水不透過性の膜封入体内に入れてもよい。また、この発明の粒状組成物は、乾燥および/または圧縮の操作中のこの発明の粒状組成物を保持するのに役立つように、乾燥工程が利用される場合、乾燥する前に、多孔質のパウチの中に入れてもよい。適当な多孔質パウチとしては、空気や湿分を通過させることができるが、粉砕された粒状混合物であるこの発明の粒状組成物を保持する材料で製造されたパウチがある。適当な多孔質パウチの例としては、ポリプロピレン、例えば、米国デラウエア州ウイルミントン所在のE.I.Dupont de Nemours Company が製造・販売しているTYVEK(登録商標)ポリプロピレンおよびCelanese Corporationが製造・販売しているCELGARD ポリプロピレンで製造された多孔質パウチ、ならびに濾紙として使用されるタイプの紙で製造された多孔質パウチがある。
【0085】
任意の乾燥操作において、多孔質パウチを使用するまたは使用しないにかかわらず、その乾燥温度は、この発明の粒状組成物から、表面の水をとりさるのに十分な温度でなければならない。一般に、その乾燥温度は少なくとも 100℃であり、その上限は、この発明の粒状組成物、または、利用される場合、多孔質パウチが劣化しない温度である。
【0086】
この発明の乾燥・圧縮された粒状組成物は、次に、気体の漏洩を防止する方式で製造した。実質的に気体不透過性バリヤーの封入体の中に入れる。この発明の粒状組成物が多孔質パウチ内で乾燥された場合は、その多孔質パウチは、単に、膜の封入体中に入れる。一般に、バリヤー封入体は、減圧にした後、その封入体を実質的に完全に満たすのに十分な量のこの発明の粒状組成物に充填される。当業技術者であれば分かるように、一般に、前記減圧にする工程によって、バリヤー封入体が収縮して、この発明の粒状組成物のまわりにぴったりと適合する。
【0087】
この発明の組成物を含んでなる減圧パネル構造体のTCは、例えば減圧パネルに利用されるプラスチック製フィルムの熱伝導率が原因で、本明細書に記載の方法で測定した。この発明の組成物単独のTCと異なっていることに注目すべきである。
【0088】
この発明の減圧断熱構造体は、所望の最終用途にしたがって、あらゆる寸法にすることができる。しかし、一般に、この発明の減圧断熱パネル構造体は、それを利用したい場合、その空間を実質的に満たすのに十分な長さ、幅および厚みをもっている。電気器具の用途、例えば冷蔵庫または冷凍庫の場合、電気器具の大きさによって、長さ、幅および厚みが変わるが、減圧断熱パネル構造体の厚みは一般に3〜50mmである。
【0089】
前記、気体不透過性バリヤー封入体の全特性は、好ましくは、破裂または他の損傷なしで、利用し続けることができる特性である。一般に、この発明の粒状組成物の画定可能な容積をつくるのに適した封入体の全厚みは、約50〜1000ミクロンの範囲内である。厚みが薄い材料は、この発明の粒状組成物を保持し、その後、必要な圧縮処理を行える十分な強さを提供するとはいえ、それを入れる装置の推定耐用年数は短かくなる。
【0090】
一般に、この発明の減圧断熱構造体の実施態様に利用される実質的に気体不透過性バリヤー封入体は、その封入体を減圧にすることができ、そして、所望により、その封入体を断熱気体で再び満たすことができる一つ以上の開口を有している。そのバッグは、第一に、所望の低い圧力、例えば 133.322〜1333.22Pa(1〜10トル)まで減圧にする。この減圧サイクルは、パネル内に低い空気分圧が確実に保持されるように繰り返すことができる。次に、封入体を熱シールして、減圧経路を閉じることによって製造工程が終了する。
【0091】
この発明の断熱体は、冷蔵庫、冷凍庫、クーラーなどの冷却電気器具の断熱媒体として有利に利用できる。さらに、この発明の各種の態様と実施態様の有効性と利点を、後記の諸実施例で示す。下記実験結果は、TCが、異なる組成物の物理特性を識別する手段を提供することを示している。例えば、ゲルのような組成物の、細孔の大きさ、細孔の大きさの分布、表面積および構造などの物理特性は、その組成物が脆いため、測定することが困難である。細孔の大きさなどの物理特性の伝統的な試験法は、たとえあっても、ゲルを変形および/または破壊するため、不正確な結果が得られることがある。これとは対照的に、TCは、ゲルを変形もしくは破壊する危険が少ないので、正確に測定することができる。後記諸実施例で示すように、組成物のTCは、例えば粒径、密度、不透明性、不透明剤のタイプと含有量および多孔度を含む、組成物の物理特性によって決まる。
【0092】
諸実施例で示すように、この発明の組成物の特性は、荷重下での有利なTCと充填密度が得られるように改質することができる。例えば、荷重下の充填密度は、所定の粒子密度を得るため、例えば粉砕によって、粒径を改質して、粒子のまわりの気体の移動が原因の、伝熱に対する気相の関与を減らし、好ましくは最少限にすることによって改質できる。
【0093】
組成物の、荷重下のTCと充填密度に反映している組成物の多孔度と強さは、例えば、適切なゲル成分、例えばシリカを選択することによって、および/またはゲルを調製するのに利用される溶液の固形分濃度を改変することによって改質することができる。この改質は、固相の熱伝導の伝熱に対する寄与を減らし好ましくは最少限にするのに利用できる。
【0094】
放射線の成分は、不透明剤を利用することによって、減らし、好ましくは最少限にすることができる。
【0095】
以下の試験法を、諸実施例で利用した。
熱伝導率(TC)と充填密度
組成物の荷重下での熱伝導率(TC)は、図3と4に示し、以下に説明する手順と装置を利用するASTM試験法C1114−92によって測定する。組成物の充填密度は、下記方法で測定する。
【0096】
1.約 200〜300 cm3 〔タップ容積(tap volume)〕の組成物試料を、 120℃のオーブン内で少なくとも2hr乾燥して、実質的に完全に乾燥する。使用される組成物の量は、4インチ(102mm)×6インチ(152mm)×0.25インチ(6mm)の大きさの、以下の工程で述べる二つのTYVEK 製パウチを完全に満たすのに十分な量である。TYVEK は、米国デラウエア州ウイルミントン所在のE.I.DuPont de Nemours Company の繊維の登録商標である。粉体の実容積(actual volume)は、変化するが、荷重下のTCを測定する際に説明する。
2.組成物の試料を、二つの等重量部分に分割して、各部分の重量を記録する。
3.組成物試料の上記各部分を、4インチ(102mm)×6インチ(152mm)×0.25インチ(6mm)の大きさのTYVEK 製パウチ中に入れる。
4.各パウチを接着剤でシールして、実質的に同じパウチを二つ作製する。これらパウチをデシケータ内に保管して、接着剤を乾燥させる。
5.接着剤が乾燥した後、前記パウチを、図3に示す薄いホイルヒーター装置12のプレートの間に入れる。図3に示すように、薄いホイルヒーター装置12はヒーター−熱電対プレート14および熱電対プレート16と18を備えている。これらのプレートは、テープで構成されている可撓性カップリング15と17で連結されている。電線24,26および28はそれぞれ、プレート14,16および18から延びて、その末端に、前記薄いホイルヒーター装置を、加熱・測定装置に接続するコネクタ手段を備えている。
6.前記薄いホイルヒーター装置とパウチは、次に、図4に示す荷重装置内に組み込まれる。薄いホイルヒーター装置12およびパウチ32と34は、パウチより表面積が大きくかつ荷重下で変形しないように十分な厚みを有するアルミニウムブロック42と44の間に置く。追加のアルミニウムピース52と53が設けられ、C−クランプのようなクランピング手段を置くための空所を、アルミニウムブロック42と44のまわりに配置できるように、実質的に平坦な面53と55をそれぞれアルミニウムブロック42と44から十分に間隔を置いて設置する。
7.工程6で組立られた荷重装置(図4)を、図4に示す固定盤62と移動盤64を備えているCarver, Model Cプレスの中に入れる。
8. 1601.28ニュートン(360ポンド)の力すなわち103421Paの力(4インチ×6インチのパウチの1平方インチ当り15ポンド)がパウチにかかるまで、間にはさまれた組込み荷重装置と固定盤62の方に、移動盤64を移動させる。
9.C−クランプを、アルミニウムプレート42と44のまわりに配置し、上記プレスによって加えられた圧力を維持するため十分に、これらプレートを締付ける。次にこのプレスを解除する。
10.熱電対シート14と16の間の間隔および熱電対シート16と18の間の間隔を、四隅全部で測定して、103421Pa(15psi)の荷重下の各パウチの厚みを求める。組成物試料の充填密度は、工程10で求めた試料の厚み、工程2で求めた試料の重量(質量)、および 15504mm2 (102mm×152 mm)(24平方インチ(4インチ×6インチ))とみなされる試料の面積から、式:充填密度=質量/(厚み×面積)によって算出する。
11.次に、荷重下の組成物試料が入っている荷重装置を、減圧にされた圧力容器中に入れ、次いで窒素を充填して、 133.322〜13332.2Pa(1〜100 トル)の選択された圧力におけるTC測定値を得る。
12.TCの測定値は、薄いフォイルヒーター装置からの電線を、電源および温度差を算出するのに利用するナノボルトメーターに接続することによって得られる。TCは、前記温度差と、利用される電力から算出する。
【0097】
上記手順において、組成物のTCは、温度20℃の窒素雰囲気内で測定される。この発明の組成物のTCは、大気中、または窒素の熱伝導率と類似の熱伝導率を有する気体の他の混合物(もしくは溶液)の中で測定した場合、実質的に等しい。この発明の組成物のTCは、大気にに対して、または組成物の細孔および分析される組成物の容積内の空間を囲んで満たす気体と類似の熱伝導率を有する気体に対して測定することができる。この発明の組成物のTCは、一般に、熱伝導率が窒素より低い気体の雰囲気内で低下する。
【0098】
温度20℃で測定値を得た場合、17〜25℃の範囲内で、TCは実質的に変動しないと考えられる。
【0099】
荷重下のTCの測定値は、この発明の組成物が、例えば、内部圧力を低下させた断熱パネルの場合のような外部荷重下にある、断熱用途における組成物の性能に関する情報を提供する。
【0100】
粒径
この発明の組成物の粒径は、1mm(18メッシュ)、 500μm(35メッシュ)、 250μm(60メッシュ)および90μm(170メッシュ)のスクリーンを利用する物理的分離法によって測定する。分離するのに、CSC Scientific Sieve Shaker, Model 18480を使用する。
【0101】
多孔度
ゲル組成物の多孔度は、その組成物のロッド密度を測定し、次に下記の方法で算出することによって求めることができる。
【0102】
ロッド密度を求めるため、ゲルを円筒形の型に流し込んで成形した。乾燥ゲルの寸法を物理的に測定することによってゲルの全容積を求めた。嵩密度は、乾燥ゲルの重量を計り、その重量値を幾何学的容積で割算することによって求めた。ロッド状形態が維持されなかった場合、または上記方法を確認する場合は、水銀置換法を利用した。
【0103】
水銀置換法による、ゲル組成物のロッド密度の測定は以下のようにして実施した。清浄な空のガラスセルに、特定の高さまで水銀を満たし、次にそのセルの重量を測定する。次に水銀を取り出して、そのセルを再び清浄にする。次に、重量既知の乾燥ゲルの試料をガラスセル中に入れ、次に水銀を、さきに述べたのと同じ特定の高さまでガラスセル中に加える。水銀と試料が入っているガラスセルの重量を測定する。次に、両方の場合の水銀の重量を、水銀の密度に基づいた容積に換算する。空のセルを満たす水銀の容積と試料が入っているセルを満たす水銀の容積の差は、置換された容積として分かっている。水銀は試料を漏らさないので、この容積は、試料の全容積に等しい。次に、前記密度を、試料の重量を前記の置換された容積で割算することによって求める。
【0104】
多孔度は、粒状材料中および粒状材料のまわりの細孔の試料容積に対する分率と定義され、下記式で求めることができる。
【0105】
(多孔質型のロッド密度の測定値)
多孔度=1− ──────────────────
(中実型の材料の密度)
【0106】
材料の中実塊の密度を、材料の組成物について測定する。不透明剤なしのシリカゲル組成物の場合、材料中実塊の密度は、シリカ中実塊の密度の 2.2g/cc(220kg/m3)とみなされる。不透明剤を含有するゲル組成物の場合、材料の中実塊の密度は、各成分の密度の加重平均値とみなされる。例えば、シリカゲル前駆体と不透明剤のカーボンブラックを含有するゲル組成物の場合、材料の中実塊の密度は、シリカの中実塊の密度(2.2g/cc)およびカーボンブラックの中実塊の密度(1.8g/cc)の加重平均値とみなされる。
【0107】
カーボンブラックの分析事項
後記諸実施例で利用されるカーボンブラックの窒素表面積(N2SA)は、m2 /gで表されるが、ASTM試験法D3037法Aにしたがって測定した。
【0108】
後記諸実施例で利用されるカーボンブラックのフタル酸ジブチルの吸着値(DBP)はml/100 gカーボンブラック(ml/100 g)で表されるが、ASTM D2414に記載の手順で測定した。
【0109】
溶液の調製
諸実施例に記載のゲル組成物は、図5に図式的に示しかつ諸実施例に一層詳細に記載されている工程を利用する、本明細書に記載の基本的ゾル−ゲル法で調製される。
【0110】
下記実施例のエーロゲルを製造するのに、ケイ酸ナトリウムの濃度が異なる3種の溶液が必要である。ケイ酸ナトリウムは、米国ペンシルベニア州バリーフォージュ所在のPQ corp.が製造している市販の溶液のN(登録商標)シリケートから得られる。N シリケートの組成は、 8.9%(w/w)のNa2O, 28.7%(w/w)のSiO2、および62.4%(w/w)の水である。N シリケートの20℃における密度は1.38g/mlである。
【0111】
1)Nシリケート72.5mlに脱イオン水 410mlを添加することによって、5%の溶液を調製する。この溶液を、諸実施例で、2M H2SO4とともに使用して、固形分濃度が約5重量%のゲル組成物を製造する。
2)Nシリケート72.5mlに脱イオン水 197mlを添加することによって、8%の溶液を調製する。この溶液を、実施例で、2M H2SO4とともに使用して、固形分濃度が約8重量%のゲル組成物を製造する。
3)濃度が5%の別の溶液は、N シリケート72.5mlを脱イオン水 330mlに添加することによって調製する。この溶液は、組成物Pを調製するのに使用する。この溶液を、実施例で、98% H2SO4とともに使用して固形分濃度が約5重量%のゲル組成物を製造する。
【0112】
カーボンブラックの特性
以下の諸実施例で使用されるカーボンブラックCB−Aは、米国マサチューセッツ州ボストンに所在のCabot Corporation が製造しているカーボンブラックであり、N2SAが24m2 /gでありそしてDBPが 132ml/100 gである。
【0113】
改質CB−Aカーボンブラックは、CB−Aカーボンブラックを、ゲル成分に結合できるように、下記手順を利用して改質して製造したものである。
【0114】
スルファニル酸10.1gおよび濃硝酸6.23gを水21gに溶解して得た溶液に、 200gのCB−Aを添加した。迅速に撹拌されている前記混合物に、NaNO2 4.87gを水10gに溶解して得た溶液を添加した。その場で、4−スルホベンゼンジアゾニウムヒドロキシド分子内塩が生成し、これはカーボンブラックCB−Aと反応する。15分後、その分散液を、 125℃のオーブンで乾燥した。
【0115】
得られたカーボンブラックの製品を“改質CB−A”と命名したが、これは4−C6H4SO3-基を結合されたカーボンブラックである。
【0116】
カーボンブラックCB−Bは、米国マサチューセッツ州ボストン所在のCabot corporation の登録商標製品であるMONARCH(登録商標) 120のカーボンブラックであり、N2SAが25m2 /gでDBP が64ml/100 gである。
【実施例】
【0117】
実施例1
この実施例は、この発明の組成物の製造方法を示す。さらに、この実施例で、この発明の組成物の熱伝導率(TC)を他の組成物と比較する。
【0118】
この発明のゲル組成物“D”は、図5に示す方法の工程を利用して製造される。
【0119】
その詳細は次のとおりである。
ゲル化の工程では、上記の5%溶液を使用する。
約 300mlのゲルの場合、20℃に保持したジャケット付ビーカー中に2M H2SO4 42mlを入れる。前記溶液を、20℃の前記ジャケット付容器中に撹拌しながら加えて滴定する。前記溶液の添加速度は1ml/min である。pHが3に到達したならば、改質CB−Aカーボンブラック/水のスラリーを添加して、その溶液を数秒間撹拌する。
【0120】
上記の改質CB−Aカーボンブラック/水のスラリーは、改質CB−Aカーボンブラック2.79gと水53gを混合し、次いで2分間、超音波処理することによって調製する。添加されるカーボンブラックと水の量は、ゲルの全固形分含量が同じまゞであるように算出される。この実施例では、ゲル組成物の15重量%が改質CB−Aカーボンブラックである。
【0121】
改質CB−Aカーボンブラック/水スラリーを添加した後、pHが5に等しくなるまで滴定を続ける。Corning pHメーター model 320とCorning “3in1”自動温度補償付きpH Combination Electrode(米国ニューヨーク州コーニング所在のCorning, Inc.)を使用してpHを測定する。
【0122】
次に、上記ゾルを、注型容器すなわち約90mlのテフロン(登録商標)製容器に注入する。そのゾルがゲル化したならば、その容器を50℃のオーブン中に15分間入れる。50℃のオーブンによる処理を行った後、そのゲルを、ダイを通じて押し出して、断面が3000μ×3000μの四角形の顆粒にする。
【0123】
塩洗浄の工程では、前記顆粒を、室温の脱イオンを用い、容積比6:1(水:ゲル)で、6回、5hrにわたって交換する。
【0124】
熟成工程では、過剰の水を除き、細孔流体だけ保持させる。次にこれら顆粒を80℃で45分間熟成する。
【0125】
溶媒交換工程では、顆粒をアセトンで5回交換して水を除く。この交換は、室温にて、容積比6:1(アセトン:ゲル)で、各交換ごとに少なくとも90分間実施する。
【0126】
第二の溶媒交換工程を実施する。上記顆粒を、ヘプタンで5回交換してアセトンを除去する。この交換は、室温にて、容積比6:1(ヘプタン:ゲル)で、各交換毎に少なくとも90分間実施する。
【0127】
TMCSによる処理工程で、上記のゲル/ヘプタン混合物に、トリメチルクロロシラン(TMCS)と、 0.1gTMCS/g湿潤ゲルのレベルで、一夜かけて添加する。この処理を終った後、ゲルをヘプタン中で2回洗浄して、未反応のTMCSを除去する。
【0128】
溶媒除去工程で、上記顆粒を、50℃のオーブン中に4hr入れる。次いで、その顆粒を、80℃のオーブン中に一晩入れ、次に顆粒の最終の溶媒除去工程を、 120℃オーブンで2時間行う。
【0129】
上記化学処理を完了した後、その顆粒をコーヒーグラインダー(Bunn, GL1)で粉砕する。図6は、粉砕後の一般的な粒径分布を示す。
【0130】
得られた粉末をふるい分けして90〜250 μmの粒径範囲の粒子を分離する(CSC Scientific Sieve Shaker, Model 18480、設定 2.5で15分間) 。
【0131】
次に、90〜250 μmのゲル試料を、TCを測定するため、上記手順にしたがって製造する。
【0132】
この発明の組成物Dの、荷重103421Pa(15psi)下の熱伝導率(TC)と充填密度、ならびに4種の対照組成物A,B,CおよびEの荷重103421Pa(15psi)下のTCと充填密度を、先に記載した手順を利用して求める。対照組成物Aは、BASF Basogel(登録商標)のシリカゲルエーロゾル試料であり、ドイツのルードビッヒシャッフェン所在のBASFが製造・販売しており、全粒子の粒径範囲は 500μm未満であり、メジアン粒径は50μm〜150 μmの範囲内である。対照組成物Bは、Degussa FK500LS(登録商標)のシリカゲルエーロゾルであり、ドイツのフランクフルト所在のDegussa Akgt. が製造・販売しており、平均粒径は3μmである。対照組成物Cは、Cabot Cab-O-Sil(登録商標)EH5であり、米国イリノイ州タスコラ所在のCabot Corporation が製造・販売しており、平均粒径は 0.2〜0.3 μmである。対照組成物Eは、エーロゲル顆粒の試料であった。対照組成物Eは、この発明の組成物Dと同じ方式で、溶媒除去によってゲル化することによって製造される。しかし対照試料Eは、押出されたまゝの形態であり、約3000μ×3000μの断面の顆粒である。
【0133】
先に述べた方式で測定した、各組成物A,B,C,DおよびEの荷重103421Pa(15psi)下の密度および熱伝導率(TC)は以下のとおりであり、また図7と8にグラフで示してある。
【0134】
【表3】

【0135】
これらの試験結果は、減圧レベルの133.322Pa, 1333.22Paおよび 13332.2Paにおいて、この発明の組成物Dによって得られた有利なTCを示している。またゲル組成物Eも、 13332.2Paにおいて、この発明の特定の態様の範囲内に入っている。ゲル組成物Dが示しているように、この発明の組成物の実施態様は、有利な荷重下TCを達成しており、この組成物による熱伝達が低いことを示している。対流がない場合、熱伝達は、気相伝導、固相伝導および輻射によって起こる。粒状組成物の多孔度と粒径は、気相伝導の熱伝達に対する関与に影響する。ゲル組成物Dの充填密度が、他の組成物に比べて低いのは、組成物Dの多孔度の高いことが反映している。組成物Dの粒径に加えて多孔度が高いことによって、気相による熱伝達が最小になっている。また、充填密度が低いことは、組成物Dが、荷重下で望ましくない程度まで変形するのに抵抗するのに十分な強さをもっていることを示す。
【0136】
組成物Dのゲル成分としてシリカを選択し、組成物Dの充填密度が低いことは、熱伝達の固相伝導を最少限にするのに役立っている。
【0137】
組成物Dに不透明剤を使用すると、熱伝達の輻射部分を最小にする働きがある。
【0138】
実施例2
この実施例は、荷重103421Pa下の充填密度のTCに対する効果を示す。組成物FとGを、図5に示すゲル法の工程を利用して製造した。その詳細は以下のとおりである。
【0139】
組成物F
組成物Fに使用したカーボンブラックは先に述べたカーボンブラックCB−Aである。組成物FのカーボンブラックCB−Aは改質されていない。
【0140】
ゲル化工程では、前記5%溶液を使用する。
【0141】
約 300mlのゲルの場合、2M H2SO4 42mlを、20℃に保持したジャケット付ビーカー中に入れる。前記溶液を、20℃の前記ジャケット付容器中に撹拌しながら添加して、滴定する。その溶液添加速度は1ml/min である。pHが3になったならば、カーボンブラック/水のスラリーを添加し、その溶液を数秒間撹拌する。
【0142】
カーボンブラックCB−A/水のスラリーは、未改質カーボン2.79gと水53gを混合し、次いで10分間、超音波処理することによって調製する。添加するカーボンブラックと水の量は、ゲルの全固形分含量が同じまゝであるように算出する。この実施例ではゲル組成物の15重量%がカーボンブラックCB−Aである。
【0143】
カーボンブラックCB−A/水のスラリーを添加した後、pHが5になるまで滴定を続ける。Corning pH metey, model 320 と自動温度補償付きCorning “3in1”pH Combination Electrode(米国ニューヨーク州コーニング所在のCorning, Inc.)をpH測定に使用する。
【0144】
次に上記ゾルを、注型容器すなわち約90mlのTeflon製容器に注入する。そのゲルがゲル化したならば、その容器を50℃のオーブン中に15分間入れる。50℃オーブンによる処理を行った後、そのゲルを押し出して、断面、が3000μ×3000μの四角形の顆粒にする。
【0145】
塩洗浄の工程では、前記顆粒を、室温脱イオン水を用い、容積比6:1(水:ゲル)で、4回交換し、各交換は90分間ずつ行う。
【0146】
熟成工程では、過剰の水を除き、細孔流体だけを保持させる。次にその顆粒を、80℃で90分間熟成する。
【0147】
溶媒交換工程では、顆粒をアセトンで4回交換して水を除去する。この交換は、室温にて、容積比6:1(アセトン:ゲル)で、各交換毎に少なくとも90分間実施する。
【0148】
第二の溶媒交換工程を実施する。上記顆粒を、ヘプタンで4回交換してアセトンを除去する。この交換は、室温にて、容積比6:1(ヘプタン:ゲル)で、各交換毎に少なくとも90分間実施する。
【0149】
TMCSによる処理工程で、上記のゲル/ヘプタン混合物に、トリメチルクロロシラン(TMCS)を、0.15gTMCS/g湿潤ゲルのレベルで、 3.5時間かけて添加する。
【0150】
溶媒除去工程で、上記顆粒を、80℃のオーブン中に一夜入れる。次に、その顆粒を、 120℃のオーブン中に2hr入れて、最後の溶媒除去を行う。
【0151】
上記化学処理を完了した後、その顆粒をコーヒーグラインダー(Bunn, GL1)で粉砕する。図6は、粉砕後の一般的な粒径分布を示す。
【0152】
組成物G
組成物Gに使用したカーボンブラックはカーボンブラックCB−Bである。組成物GのカーボンブラックCB−Bは改質されていない。
【0153】
ゲル化工程では、前記8%の溶液を使用する。
【0154】
約 680mlのゲルの場合、2M H2SO4 145mlを、20℃に維持したジャケット付ビーカー中に入れる。前記溶液を、20℃の前記ジャケット付容器中に、撹拌しながら添加して滴定する。その溶液添加速度は1ml/min である。pHが3に到達したならば、カーボンブラック/水のスラリーを添加し、その溶液を数秒間撹拌する。
【0155】
カーボンブラックCB−A/水のスラリーは、カーボンブラックCB−A 10.06gと水 118gを混合し、次に10分間、超音波処理することによって調製する。添加するカーボンブラックと水の量は、ゲルの全固形分含量が同じまゝであるように算出する。この実施例では、ゲル組成物の15重量%がカーボンブラックCB−Bである。
【0156】
カーボンブラック/水のスラリーを添加した後、pHが5になるまで滴定を続ける。Corning pH meter, model 320 と自動温度補償付きCorning “3in1”pH Combination Electrode (Corning, Inc.,米国ニューヨーク州コーニング所在)をpH測定に使用する。
【0157】
次に、上記ゾルを注型容器すなわち約90mlのTeflon製容器に注入する。そのゾルがゲル化したならば、その容器を50℃のオーブン中に15分間入れる。50℃オーブンでの処理を行った後、そのゲルを押し出して、断面が3000μ×3000μの四角形の顆粒にする。
【0158】
残りの工程では、5バッチのゲル(各バッチ約 680ml)を混合して処理した。
【0159】
塩洗浄の工程では、前記顆粒を、室温脱イオン水を用い、容積比1:1(水:ゲル)で、6回、各々90分間ずつ交換する。
【0160】
熟成工程では、過剰の水を除去し、細孔流体だけを保持させる。次にその顆粒を50℃で12〜14hr熟成させる。
【0161】
溶媒交換工程では、顆粒を、アセトンを用いて、向流モードで8回交換して水を除去する。この交換は、室温にて、容積比1:1(アセトン;ゲル)で、各交換毎に少なくとも90分間実施する。
【0162】
第二の溶媒交換工程を実施する。上記顆粒を、ヘプタンを用い向流モードで2回交換してアセトンを除去する。この交換は、室温にて、容積比1:1(ヘプタン:ゲル)で、各交換毎に少なくとも90分間実施する。
【0163】
TMCSによる処理工程で、上記のゲル/ヘプタン混合物に、トリメチルクロロシラン(TMCS)を、 0.1gTMCS/g湿潤ゲルのレベルで3hrかけて添加する。
【0164】
溶媒除去工程で、上記顆粒を、 160℃オーブン中に一夜入れる。
上記化学処理を完了した後、その顆粒をコーヒーグラインダー(Bunn, GL1)で粉砕する。図6は、粉砕後の一般的な粒径分布を示す。
【0165】
組成物FとGの荷重103421Pa下での熱伝導率(TC)と充填密度は、先に記載した手順を利用して測定する。試験結果を以下に示し、また図8にグラフで示してある。
【0166】
【表4】

【0167】
これらの試験結果は、TCに対する荷重下充填密度の効果を示している。
【0168】
荷重下充填密度は、粒状組成物の強さと多孔度を示す。この発明の組成物Fの充填密度は、この組成物が、その多孔度を維持しかつその荷重下の変形を最少限にするのに十分な強さを有し、その結果、固相伝導が熱伝達に寄与して起こすそのTCの望ましくない増大を最少限にすることを示している。
【0169】
実施例3
この実施例は、荷重103421Pa(15psi)下のTCと充填密度に対する粒径の効果を示す。
【0170】
組成物H,IおよびJを、図5に示すゲル法の工程を利用して製造する。詳細は以下のとおりである。
【0171】
組成物H
組成物Hを、溶媒除去を通じてゲル化することによって、上記組成物Dと同じ方式で製造する。
【0172】
化学処理が完了した後、その顆粒をコーヒーグラインダー(Bunn, GL1)で粉砕する。図6は、粉砕後の一般的な粒径分布を示す。
【0173】
得られた粉体を、CSC Scientific Sieve Shaker, model 18480を設定 2.5で15分間使用して、ふるいにかけ、粒径範囲が90μm未満の粒子を分離する。
【0174】
組成物I
組成物Iを、溶媒除去を通じてゲル化することによって、上記組成物Dと同じ方式で製造する。
【0175】
化学処理を完了した後、その顆粒をコーヒーグラインダー(Bunn, GL1)で粉砕する。図6は、粉砕後の一般的な粒径分布を示す。
【0176】
得られた粉体を、CSC Scientific Sieve Shaker, Model 18480を設定 2.5で15分間使用して、ふるいにかけ、粒径範囲が90〜250 μmの粒子を分離する。
【0177】
組成物J
組成物Jを、溶媒除去によってゲル化することによって、上記組成物Dと同じ方式で製造する。
【0178】
化学処理を完了した後、その顆粒をコーヒーグラインダー(Bunn, GL1)で粉砕する。図6は、粉砕後の一般的な粒径分布を示す。
【0179】
CSC Scientific Sieve Shaker, model 18480を設定 2.5で15分間使用して、前記の得られた粉体をふるいにかけ、粒径範囲が 250〜500 μmの粒子を分離する。
【0180】
上記方式で測定した各組成物H,IおよびJの荷重103421Pa下の密度、および熱伝導率は以下のとおりであり、また図9にグラフで示してある。
【0181】
【表5】

【0182】
これらの試験結果は、荷重103421Pa下のTCおよび充填密度に対する粒径の効果を示す。組成物H,IおよびJはすべてこの発明の組成物であるが、充填密度とTCが異なっている。
【0183】
組成物HとIを比較することによって示されているように、粒径が小さくなると充填密度が増大するが、粒径が小さくなると、 133.322Paと 1333.22Paの圧力におけるTCが低下する。実施例IとJが示す大きな粒径範囲では、充填密度が一定で粒径が増大するとTCが増大している。
【0184】
実施例4
ここでの例は、103421Paの荷重のもと、熱伝導率及び充填密度に関する不透明剤の種類及びその存在の効果について説明する。
【0185】
対象組成物である組成物Kは不透明剤を用いずに製造した。組成物Lは非改質カーボンブラックCB−Aの機械的混合物を使用して準備した。組成物Nは同様に非改質カーボンブラックCB−Aを使用して準備した。組成物Mは改質カーボンブラックCB−Aを使用して準備した。カーボンブラックCB−A及び改質カーボンブラックCB−Aはすでに上述した。
【0186】
組成物K,L,M及びNは図5に示したゲル加工の工程を用いて準備した。
【0187】
組成物K
ゲル化工程で5%の溶液を使用した。
【0188】
約 800mlのゲルに関し、2Mの硫酸 110mlを20℃に維持したジャケット付ビーカーに分取した。この溶液の添加速度は5ml/分である。滴定はpH5になるまで行った。コーニングpHメーター、モデル320 そして自動温度補正のついたコーニング「3in1」のpH組合せ電極(コーニング社、ニューヨーク州、コーニング)を用いてpHを測定した。
【0189】
次いで、溶液を約90mlのテフロン(登録商標)の容器である注入容器に注いだ。溶液状のゲルの入った容器を、一度50℃の炉に中に15分置いた。50℃で炉の中で処理した後、横断面が3000μ×3000μの四角形の顆粒にする。
【0190】
第1回目の塩で洗浄後、4バッチ(約 800ml)を後半の処理を行った。
【0191】
塩での洗浄工程では、粒体は室温において5回脱イオン水で処理し、第1回の水洗は一晩、そして2回目から5回目の洗浄は45分である。すべての洗浄量の割合は 1.5対1(水対ゲル)である。
【0192】
熟成工程では、過剰の水を除去し、そしてわずかに気孔に残った流体は残した。次いで、顆粒を50℃において15時間熟成した。
【0193】
溶剤による交換工程では、顆粒をアセトンで11回向流方式で処理して水を除去した。この交換は、いづれの交換も室温において少なくとも45分間、1対1の体積割合(アセトンと水)で行った。
【0194】
第2回目の溶剤による交換も行った。顆粒を2回ヘプタンを用い向流方式で交換して水を除去した。この交換は、いづれの交換も室温において少なくとも45分間、1対1(ヘプタン対水)の体積割合で行った。次いで、トリメチルクロロシランの添加を行う前に、顆粒を2000mlの新たなヘプタンに加えた。
【0195】
TMCS(トリメチルクロロシラン)による処理工程では、3時間半の間 0.1gTMCS/g湿潤ゲルのレベルでゲル/ヘプタン混合物に加えた。
【0196】
溶剤を除去する工程では、顆粒は一晩 160℃の炉の中に載置した。
【0197】
化学的処理を行った後、粒体をコーヒーグラインダー(Bunn, GL1) で粉砕した。図6では、粉砕後の粒径分布を明らかにした。この粉砕したエアロゲル試料を非改質カーボンブラックCB−Aと混ぜ合せて、エアロゲルとカーボンとの混合物中に15重量%のカーボンブラックを含むようにした。
【0198】
組成物L
組成物Lはゲル化から溶剤除去までは組成物Kと同様な方法によって準備した。
【0199】
化学的処理を行った後、顆粒をコーヒーグラインダー(Bunn, GL1)を用いて粉砕した。図6では、粉砕後の粒径分布を明らかにした。
【0200】
この粉砕したエアロゲル試料を改質していないカーボンブラックCB−Aと混ぜ合せて、エアロゲルとカーボンとの混合物中に15重量%のカーボンブラックを含むようにした。この混合物を均一に見えるようになるまで混合した。
【0201】
組成物M
ゲル化工程で、5%の溶液を使用した。
【0202】
約 300mlのゲルに関し、2Mの硫酸42mlを20℃に維持したジャケット付ビーカーに分取した。この溶液を20℃の撹拌したジャケット付ビーカーに入れて滴定した。この溶液の添加速度は1ml/分である。pH3に至った時、カーボンブラック/水のスラリーを加え、そしてこの溶液を数秒間撹拌した。
【0203】
改質カーボンブラックCB−A/水のスラリーは、2.79gの改質カーボンブラックCB−Aと53gの水とを混ぜ合せ、そして2分間高周波音で処理して準備した。加えたカーボンブラックと水の量は、ゲルの全固体含有量が残るように計算して加えられる。この15%のゲル組成物の例では、相当量の改質カーボンブラックCB−Aが含まれている。
【0204】
改質カーボンブラックCB−A/水スラリーを添加した後、pH5になるまで滴定を続けた。
【0205】
コーニングpHメーター、モデル320 そして自動温度補正のついたコーニング「3in1」のpH組合せ電極(コーニング社、ニューヨーク州、コーニング)を用いてpHを測定した。
【0206】
次いで、溶液を約90mlのテフロン(登録商標)の容器である注入容器に注いだ。溶液状のゲルの入った容器を、一度50℃の炉の中に15分間置いた。50℃で炉の中で處理した後、横断面が3000μ×3000μの四角形の顆粒にする。
【0207】
塩での洗浄の工程では、顆粒は室温で6回脱イオン水を体積比6対1(水対ゲル)の割合で処理した。
【0208】
熟成工程では、過剰の水を除去し、そしてわずかに気孔中に残った流体は残した。次いで、顆粒を80℃において60分間熟成した。
【0209】
溶剤による交換工程では、顆粒をアセトンで5回処理して水を除去した。この交換は、いづれの交換も室温において少なくとも90分間、6対1の体積割合(アセトンとゲル)で行った。
【0210】
第2回目の溶剤による交換も行った。顆粒を5回ヘプタンを用いて交換し、アセトンを除去した。この交換は、いづれの交換も室温において少なくとも90分間、6対1(ヘプタン対ゲル)の体積割合で行った。
【0211】
TMCSによる処理工程では、一晩 0.1gTMCS/g湿潤ゲルのレベルでゲル/ヘプタン混合物に加えた。TMCSで処理した後、ゲルを2回ヘプタンで洗浄して未反応のTMCSを取去いた。
【0212】
溶剤除去の工程では、顆粒を4時50℃の炉の中に置いた。次いで、顆粒を一晩80℃の炉の中に置き、そして最後に2時間 120℃の炉の中に置いて溶剤を除去した。
【0213】
化学処理を行った後、顆粒をコーヒーグラインダー(Bunn, GL1)で粉砕した。図6では、粉砕後の粒径分布を明らかにした。
【0214】
組成物N
組成物Nは上記の組成物Fと同様な方法によって準備した。
【0215】
各組成物K,L,M及びNの103421Pa荷重の下での密度及び熱伝導率は、上述した方法に従って測定し、その結果は次の如くであり、また図11にグラフを用いて示した。
【0216】
【表6】

【0217】
これらの結果は、103421Pa荷重のもとで、熱伝導率及び充填密度について不透明剤の種類及びその存在の効果を明らかにしている。
【0218】
不透明剤、特にカーボンブラックの量により、不透明剤と残りの成分との間の関係は、固体成分の熱伝導に影響を与えている。
【0219】
組成物Kの熱伝導率に対する組成物L,M及びNのそれを比較してみると、不透明剤が存在していると熱伝導率が減少することがわかる。この例における最低の熱伝導率は、ゲル先駆物質に不透明剤を付加させたものを用いた場合の組成物Mによって達成される。
【0220】
実施例5
ここでの例は、熱伝導率についてカーボンブラック不透明剤の量の影響について明らかにする。
【0221】
組成物Oは不透明剤を使用することなく準備した。組成物Pは改質カーボンブラックCB−Aを使用して準備した。組成物Qはまた改質カーボンブラックCB−Aを使用して準備した。改質カーボンブラックCB−Aについては、すでに例1において記述した。
【0222】
組成物O,P及びQは図5に示したゲル処理工程を用いて準備した。更に詳細は次に述べる。
【0223】
組成物O
組成物Nは同様の方法によって準備し、そして上述の組成物Kと同じ組成である。
【0224】
組成物P
ゲル化工程では5%の溶液を用した。
【0225】
約5000mlのゲルに対し、1235mlの脱イオン水及び65mlの濃硫酸(98%、JTビーカー)を23℃においてジャケット付反応フラスコの中で混ぜ合せた。この溶液を23℃において撹拌したジャケット付容器に加えて滴定した。溶液の添加速度は40ml/分であって、pH3になるまで続けた。pH3になった所で、カーボンブラック/水スラリーを加え、そしてこの溶液を数秒間撹拌した。
【0226】
改質カーボンブラックCB−A/水スラリーは、 25.43gの改質カーボン及び 492mlの水を加え、そして2分間高周波音波処理して得られた。加えられるカーボンブラック及び水の量は、ゲルの全固体量が同様に残るように計算される。ここでの例では、10%のゲル組成物が量的に改質カーボンブラックCB−Aを含んでいる。
【0227】
改質カーボンブラックCB−A/水スラリーを添加した後、12ml/水の添加速度でpH5になるまで滴定を続けた。このpHの測定には、Hanna pHメーターモデル HI8510E及びCole-Parmer pH電極、モデル5662−31を使用した。
【0228】
pHが5に達した後、この溶液を25分間反応フラスコの中で混合した。次いで、この溶液を2個の 29.21cm×17.78 cm×7.62cmのポリプロピレンの注入容器(11.5インチ×7インチ×3インチのポリプロピレン容器)に流し入れた。この容器を25分間65℃の炉の中に置いた。65℃で炉での處理後、このゲルを3000μ×3000μの四角形の顆粒にする。このゲルを4lの水の中に一晩放置した。
【0229】
熟成段階では、過剰の水を除去しそして 1.6lの65℃の水で置換した。次いで、この顆粒を5時間半79℃の炉の中に載置した。
【0230】
塩の洗浄工程では、顆粒は体積比3対1(水対ゲル)の脱イオン水を用い、室温で60分間に2回交換を行った。
【0231】
溶剤交換工程では、顆粒を向流方式でアセトンで5回交換を行った水を除去した。この交換は室温において各交換が少なくとも60分間体積比3対1(アセトン対ゲル)を用いて行った。
【0232】
第2回目の溶剤交換の工程も採用した。顆粒を向流方式でヘプタンと2回交換を行って溶剤を除去した。この交換は室温において各交換が少なくとも60分間体積比3対1(ヘプタン対ゲル)を用いて行った。
【0233】
TMCS処理の工程では、トリメチルクロロシラン(TMCS)を少なくとも3時間 0.1gTMCS/g湿潤ゲルのレベルでゲル/ヘプタン混合物に加えた。
【0234】
溶剤除去の工程では、顆粒を一晩 150℃の炉の中に載置した。
【0235】
化学的處理が終了した後、顆粒をコーヒーグラインダー(Bunn,GL1)の中で粉砕した。粉砕後の粒径分布を図6に示す。
【0236】
組成物Q
組成物Qは上述の組成物Mと同様の方法によって準備した。
【0237】
組成物O,P及びQの103421Pa荷重の下での密度及び熱伝導度は、すでに述べた方法に従って測定し、この結果次に示し、また図12にグラフによって示した。
【0238】
【表7】

【0239】
これらの結果は、熱伝導率についてカーボンブラック不透明剤の量の効果を明らかにしている。不透明剤を含む組成物P及びQは、不透明剤を含まない組成物Oよりも熱伝導率が低い。より多くの不透明剤を含む組成物Qは組成物Pよりも熱伝導率が低い。
【0240】
本願において記載した本願発明はその内容を説明するものであって、決して本願発明の範囲を限定するためのものではないことは、明らかに理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】図1は、この発明を説明するのに利用される諸式をグラフで示す。
【図2】図2は、この発明の断熱体の減圧断熱パネルの実施態様を示す。
【図3】図3は、熱伝導率を分析するのに利用する装置の実施形態を示す。
【図4】図4は、組成物を、103421パスカル(Pa)の荷重下において、荷重下での充填密度とTCを測定する装置の実施態様を示す。
【図5】図5は、本明細書の諸実施例に記載のゲル組成物の製造方法の例を示す模式図である。
【図6】図6は、本明細書の諸実施例に記載の実験室装置を利用して得た粒径分布のグラフである。
【図7】図7は、各種材料の熱伝導率(TC)のグラフであり、後記実施例1で考察する。
【図8】図8は、各種材料の熱伝導率(TC)の別のグラフであり、後記実施例1で考察する。
【図9】図9は、充填密度が異なる材料の熱伝導率(TC)のグラフであり、後記実施例2で考察する。
【図10】図10は、粒径が異なる材料の熱伝導率(TC)のグラフであり、後記実施例3で考察する。
【図11】図11は、不透明剤のタイプと含有量が異なる材料の熱伝導率(TC)のグラフであり、後記実施例4で考察する。
【図12】図12は、不透明剤のカーボンブラックのタイプと含有量が異なる材料の熱伝導率(TC)のグラフであり、後記実施例5で考察する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
103421Paの荷重下、20℃で窒素中、 133.322〜13332.2Pa の範囲内の圧力において、
160kg/m3 以下の充填密度並びに
133.322〜1333.322Paにおいて 0.260ln P+4.53 milliWatt/meterK(mW/m・K)以下の熱伝導率(TC)及び1333.322〜13332.2Pa において(0.824ln P+0.47)mW/m・K以下の熱伝導率を有する粒状組成物。
【請求項2】
組成物がゲル組成物である請求項1記載の粒状組成物。
【請求項3】
ゲル組成物はゲル成分と不透明剤を含んでいる請求項2記載の組成物。
【請求項4】
不透明剤はカーボンブラック、活性炭、グラファイト、並びにカーボンブラック及び金属酸化物又はこれらの混合物を含んだ複合材料である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
ゲル組成物は3重量%以上の不透明剤を含んでいる請求項4記載の組成物。
【請求項6】
不透明剤はカーボンブラックである請求項4記載の組成物。
【請求項7】
充填密度が 140kg/m3 以下である請求項2記載の組成物。
【請求項8】
133.322〜1333.322Paにおいて熱伝導率が(0.304ln P+3.91)mW/m・K以下であり、そして1333.322〜13332.2Paにおいて(0.825ln P+0.16)mW/m・K以下である請求項2記載の組成物。
【請求項9】
組成物は50〜500 ミクロンの平均粒径を有する請求項2記載の組成物。
【請求項10】
組成物は0.90以上の多孔度を有する請求項2記載の組成物。
【請求項11】
ゲル成分及び不透明剤を含む粒状ゲル組成物であって、ゲル組成物は103421Paの荷重下、20℃で窒素中、 133.322〜13332.2Paの範囲内の圧力において、
160kg/m3 以下の充填密度、
133.322〜1333.322Paにおいて 0.260ln P+4.53 milliWatt/meterK(mW/m・K)以下の熱伝導率及び1333.322〜13332.2Pa において(0.824ln P+0.47)mW/m・Kの熱伝導率、
50〜500 ミクロンの平均粒径並びに
0.90以上の多孔度を有する該組成物。
【請求項12】
不透明剤はカーボンブラックである請求項11記載の粒状ゲル組成物。
【請求項13】
103421Paの荷重下、20℃で窒素中、 1333.22Paの圧力において、 160kg/m3 以下の充填密度及び 6.4mW/m・K以下の熱伝導率を有する粒状組成物。
【請求項14】
組成物はゲル組成物である請求項13記載の粒状組成物。
【請求項15】
ゲル組成物はゲル成分及び不透明剤を含む請求項14記載の組成物。
【請求項16】
不透明剤はカーボンブラック、活性炭、グラファイト、並びにカーボンブラック及び金属酸化物又はこれらの混合物を含んだ複合材料である請求項15記載の組成物。
【請求項17】
ゲル組成物は3重量%以上の不透明剤を含んでいる請求項16記載の組成物。
【請求項18】
不透明剤はカーボンブラックである請求項16記載の組成物。
【請求項19】
充填密度が 140kg/m3 以下である請求項14記載の組成物。
【請求項20】
熱伝導率が 6.1mW/m・K以下である請求項14記載の組成物。
【請求項21】
組成物は50〜500 ミクロンの平均粒度を有する請求項14記載の組成物。
【請求項22】
組成物は0.90以上の多孔度を有する請求項14記載の組成物。
【請求項23】
ゲル成分及び不透明剤を含む粒状ゲル組成物であって、ゲル組成物は103421Paの荷重の下、20℃で窒素中、 1333.22Paの圧力において、
160kg/m3 以下の充填密度、
6.4mW/m・K以下の熱伝導率、
50〜500 ミクロンの平均粒径並びに
0.90以上の多孔度を有する該組成物。
【請求項24】
不透明剤はカーボンブラックである請求項23記載の粒状ゲル組成物。
【請求項25】
103421Paの荷重下、20℃で窒素中、 133.322Paの圧力において、 160kg/m3 以下の充填密度及び 5.8mW/m・K以下の熱伝導率を有する粒状組成物。
【請求項26】
組成物はゲル組成物である請求項25記載の粒状組成物。
【請求項27】
ゲル組成物はゲル成分及び不透明剤を含む請求項26記載の組成物。
【請求項28】
不透明剤はカーボンブラック、活性炭、グラファイト、並びにカーボンブラック及び金属酸化物又はこれらの混合物を含んだ複合材料である請求項27記載の組成物。
【請求項29】
ゲル組成物は3重量%以上の不透明剤を含んでいる請求項28記載の組成物。
【請求項30】
不透明剤はカーボンブラックである請求項28記載の組成物。
【請求項31】
充填密度が 140kg/m3 以下である請求項26記載の組成物。
【請求項32】
熱伝導率が 5.4mW/m・K以下である請求項26記載の組成物。
【請求項33】
組成物は50〜500 ミクロンの平均粒度を有する請求項26記載の組成物。
【請求項34】
組成物は0.90以上の多孔度を有する請求項26記載の組成物。
【請求項35】
ゲル成分及び不透明剤を含む粒状ゲル組成物であって、該ゲル組成物は103421Paの荷重下、20℃で窒素中、 133.322Paの圧力において、
160kg/m3 以下の充填密度、
5.8mW/m・K以下の熱伝導率、
50〜500 ミクロンの平均粒度並びに
0.90以上の多孔度を有する該組成物。
【請求項36】
不透明剤はカーボンブラックである請求項35記載の粒状ゲル組成物。
【請求項37】
103421Paの荷重下、周囲温度で窒素中、 13332.2Paの圧力において、
160kg/m3 以下の充填密度及び
9mW/m・K以下の熱伝導率を有する粒状組成物。
【請求項38】
組成物がゲル組成物である請求項37記載の粒状組成物。
【請求項39】
ゲル組成物はゲル成分及び不透明剤を含む請求項38記載の組成物。
【請求項40】
不透明剤はカーボンブラック、活性炭、グラファイト、並びにカーボンブラック及び金属酸化物又はこれらの混合物を含んだ複合材料である請求項39記載の組成物。
【請求項41】
ゲル組成物は3重量%以上の不透明剤を含んでいる請求項40記載の組成物。
【請求項42】
不透明剤はカーボンブラックである請求項40記載の組成物。
【請求項43】
充填密度が 140kg/m3 以下である請求項38記載の組成物。
【請求項44】
熱伝導率が8mW/m・K以下である請求項38記載の組成物。
【請求項45】
組成物は50〜500 ミクロンの平均粒度を有する請求項38記載の組成物。
【請求項46】
組成物は0.90以上の多孔度を有する請求項38記載の組成物。
【請求項47】
ゲル成分及び不透明剤を含む粒状ゲル組成物であって、該ゲル組成物は103421Paの荷重下、周囲温度で窒素中、 13332.2Paの圧力において、
160kg/m3 以下の充填密度、
9mW/m・K以下の熱伝導率、
50〜500 ミクロンの平均粒度並びに
0.90以上の多孔度を有する該組成物。
【請求項48】
不透明剤はカーボンブラックである請求項47記載の粒状ゲル組成物。
【請求項49】
超臨界乾燥ではない方法によって得られたゲル組成物は0.95以上の多孔度及び 100kg/m3 以下のロッド密度(rod density)を有する該組成物。
【請求項50】
ゲル組成物はゲル成分及び不透明剤を含む請求項49記載のゲル組成物。
【請求項51】
不透明剤はカーボンブラックである請求項50記載のゲル組成物。
【請求項52】
請求項1記載の粒状組成物を含んでいる断熱体。
【請求項53】
粒状組成物はゲル組成物である請求項52記載の断熱体。
【請求項54】
請求項13記載の粒状組成物を含んでいる断熱体。
【請求項55】
粒状組成物はゲル組成物である請求項54記載の断熱体。
【請求項56】
請求項25記載の粒状組成物を含んでいる断熱体。
【請求項57】
粒状組成物はゲル組成物である請求項56記載の断熱体。
【請求項58】
請求項37記載の粒状組成物を含んでいる断熱体。
【請求項59】
粒状組成物はゲル組成物である請求項58記載の断熱体。
【請求項60】
冷却器具における熱絶縁媒体として請求項52記載の断熱体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−58130(P2009−58130A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−227589(P2008−227589)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【分割の表示】特願平10−515721の分割
【原出願日】平成9年9月18日(1997.9.18)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】