説明

熱伝導部材

【課題】筒状セラミックス体を金属管で被覆する場合において、熱的な結合状態を保ちつつ、セラミックスと金属の熱膨張係数の違いに起因する熱応力を緩和する熱伝導部材を提供する。
【解決手段】熱伝導部材10は、一方の端面2から他方の端面2まで貫通し、加熱体である第一の流体が流通する流路を有する筒状セラミックス体11と、筒状セラミックス体11の外周壁7(外周面7h)に嵌合する金属管12と、筒状セラミックス体11と金属管12との間に金属からなる中間材13と、を備える。そして、金属管12内で、複数の筒状セラミックス体11が、軸方向に並んで分断された状態で備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状セラミックス体を金属管で被覆した熱伝導部材に関する。
【背景技術】
【0002】
高温の流体から低温の流体へ熱交換することにより、熱を有効利用することができる。例えば、エンジンなどの燃焼排ガスなどの高温気体からの熱を回収する熱回収技術がある。気体/液体熱交換器としては、自動車のラジエター、空調室外機などのフィン付チューブ型熱交換器が一般的である。しかしながら、例えば自動車排ガスのような気体から熱を回収するには、一般的な金属製熱交換器では耐熱性に乏しく、高温での使用が困難である。そこで、耐熱性、耐熱衝撃、耐腐食などを有する耐熱金属やセラミックス材料などが適している。しかし耐熱金属は、価格が高い上に加工が難しい、密度が高く重い、熱伝導が低いなどの課題がある。
【0003】
そこで、セラミックス材料を用いた熱回収技術が開発されている。例えば、筒状セラミックス体を用いて熱交換を行う技術がある。この場合、筒状セラミックス体の内部に第一の流体を流通させ、外部に第二の流体を流通させることにより、熱交換を行う。気体と液体とで筒状セラミックス体を用いて熱交換する場合、筒状セラミックス体が液体漏れを起こし2つの流体が混ざり合うことがないように、筒状セラミックス体をシールドする必要がある。
【0004】
特許文献1には、筒状セラミックス体であるセラミックス製のハニカム構造体と金属基材(金属管)を一体化させることで熱を回収する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−327627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、セラミックス製のハニカム構造体と金属基材(金属管)とを一体化させた場合、使用時に熱膨張および収縮が繰り返し発生し、ハニカム構造体と金属基材(金属管)との密着性が悪化したり、熱応力によりハニカム構造体が損傷したりする問題がある。
【0007】
筒状セラミックス体と金属管とを、ロウ付けや溶湯接合等の、接合界面において化学的な結合がなされる接合方法にて接合する場合、伝熱特性を良好にできる。しかし、セラミクスと金属の熱膨張係数の違いから、冷却時に大きな熱(残留)応力がかかる。また、熱回収目的で使用される場合の様に、製品の少なくても一部が高温になる場合などは、その応力状態が複合されるため複雑になり、熱サイクルの繰返しによって破損してしまう問題が出やすい。特に、長手方向(軸方向)については対策が求められている。
【0008】
本発明の課題は、筒状セラミックス体を金属管で被覆する場合において、熱的な結合状態を保ちつつ、セラミックスと金属の熱膨張係数の違いに起因する熱応力を緩和する熱伝導部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、金属管内にて、複数の筒状セラミックス体を軸方向に配置することにより、上記課題を解決しうることを見出した。本発明によれば、以下の熱交換部材が提供される。
【0010】
[1] 一方の端面から他方の端面まで貫通し、加熱体である第一の流体が流通する流路を有する筒状セラミックス体と、前記筒状セラミックス体の外周面に嵌合する金属管と、前記筒状セラミックス体と前記金属管との間に、金属からなる中間材と、を備え、前記金属管内で、軸方向に並んで複数の前記筒状セラミックス体が分断されて備えられており、前記筒状セラミックス体の内部に前記第一の流体を、前記金属管の外周面側に前記第一の流体よりも低温の第二の流体を流通させ、前記第一の流体と前記第二の流体との熱交換を行う熱伝導部材。
【0011】
[2] 前記金属管内において、前記筒状セラミックス体同士は、軟質材を介して前記軸方向に直列配置されている前記[1]に記載の熱伝導部材。
【0012】
[3] 前記軟質材は、グラファイトシート、セラミックファイバーシート、アルミシート、銅シートのいずれかである前記[2]に記載の熱伝導部材。
【0013】
[4] 前記筒状セラミックス体は、熱伝導率が100W/m・K以上である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱伝導部材。
【0014】
[5] 前記筒状セラミックス体は、隔壁を有し、前記隔壁によって、流体の流路となる多数のセルが区画形成されたハニカム構造体である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱伝導部材。
【0015】
[6] 前記ハニカム構造体は、炭化珪素を含む前記[5]に記載の熱伝導部材。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱伝導部材は、筒状セラミックス体にひびや割れが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の熱伝導部材を示す軸方向の一方の端面から見た模式図である。
【図2】本発明の熱伝導部材を示す斜視図である。
【図3】本発明の熱伝導部材を示す分解斜視図である。
【図4】2つのハニカム構造体を相対角度45°回転させて直列配置した実施形態を示す斜視図である。
【図5】冷却による熱応力発生を説明するための模式図である。
【図6】本発明の熱伝導部材の他の実施形態を示す軸方向の一方の端面から見た模式図である。
【図7】蛇腹構造の金属管を備える熱伝導部材を示す断面図である。
【図8】本発明の熱伝導部材を含む熱交換器を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0019】
図1に、本発明の熱伝導部材10を軸方向の一方の端面から見た図、図2に、熱伝導部材10の斜視図を示す。熱伝導部材10は、一方の端面2から他方の端面2まで貫通し、加熱体である第一の流体が流通する流路を有する筒状セラミックス体11と、筒状セラミックス体11の外周壁7(外周面7h)に嵌合する金属管12と、筒状セラミックス体11と金属管12との間に金属からなる中間材13と、を備える。そして、金属管12内で、複数の筒状セラミックス体11が、軸方向に並んで分断された状態で備えられている。筒状セラミックス体11の内部に第一の流体を、金属管12の外周面12h側に第一の流体よりも低温の第二の流体を流通させることにより、第一の流体と第二の流体との熱交換を行うことができる。金属管12と筒状セラミックス体11とを一体化することにより、第一の流体と第二の流体とが混ざり合うことを防止することができる。
【0020】
図3に、本発明の熱伝導部材10の分解斜視図を示す。図3は、金属管12内に2つの筒状セラミックス体11を備える実施形態である。図3に示すように、金属管12内において、筒状セラミックス体11,11同士は、軸方向に直列配置されている。このとき、筒状セラミックス体11,11同士は、軟質材14を挟んだ状態で接合されていることが好ましい。このように、筒状セラミックス体11,11同士が、軟質材14を介して直列配置されると、端面に発生する応力レベルを大きく下げることができる。
【0021】
金属管12と筒状セラミックス体11との間で膨張や収縮の度合いが大きく異なる状態にあっても、複数の筒状セラミックス体11が分断されて備えられているため、熱応力が緩和する。そのため、金属管12から筒状セラミックス体11へと、あるいは、筒状セラミックス体11から金属管12へと大きな応力が及びにくくなる。その結果、金属管12や筒状セラミックス体11にひびや割れが生じにくくなる。
【0022】
筒状セラミックス体11は、軸方向の長さを短く分割することにより、複数に分割することができる。あるいは、初めから軸方向の長さが短い筒状セラミックス体11を成形してもよい。軸方向の長さを短くするほど良いが、分割するほど加工コストが上昇するため、10分割程度までが好ましい。
【0023】
また、筒状セラミックス体11,11同士の間に挟む軟質材14としては、グラファイトシート、セラミックファイバーシート、アルミシート、銅シート等が挙げられる。図3に示すように、軟質材14は、リング状であることが好ましい。グラファイトシートについて、より具体的には、膨張黒鉛を主成分とし、シート状に成形した膨張黒鉛シートが好適例として挙げられる。セラミックファイバーシートとしては、炭素繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維などの無機質のセラミック繊維を含んだカーボンファイバーシート(フェルト)、アルミナファイバーシート(フェルト)、シリカファイバーシート(フェルト)等を採用することができる。アルミシート、銅シートについては、アルミ合金あるいは銅合金をシート状に圧延したものが挙げられるが、純アルミ、純銅がより好ましい。このような形状の軟質材14により、軸方向の伸縮を吸収することができ、熱応力を緩和することができる。また、筒状セラミックス体11,11同士の間に隙間が空くことで、セル3を通過する流体の流路抵抗を増加させる効果が得られる。
【0024】
さらに、分割したそれぞれの筒状セラミックス体11がハニカム構造体1である場合に、セル3の位相を回転させることも好ましい。図4は、2つのハニカム構造体1の相対角度を45°回転させた状態を示す。このようにすることにより、セル3を通過する流体の流路抵抗を増加させる効果が得られる。これにより、流体との熱の授受を増加させることができる。
【0025】
図5に冷却による熱応力発生を説明するための模式図を示す。図5の上図は、加熱状態の熱伝導部材10を示す断面図である。また、下図は、常温時の熱伝導部材10の断面図である。金属管10と筒状セラミックス体11との熱膨張率が異なるため、常温時において、ひずみが発生する。しかしながら、図5に示すように、本発明の熱伝導部材10は筒状セラミックス体11が分割された状態で、複数、直列配置されているため、熱応力を緩和することができる。このため、金属管12や筒状セラミックス体11にひびや割れが生じにくくなる。
【0026】
中間材に用いる金属としては、ニッケル(Ni)、鉄(Fu)、銅(Cu)、銀(Ag)、チタン(Ti)、アルミ(Al)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種が含まれる合金金属が挙げられる。これらの金属を用いて、ろう付け、溶湯接合等により、金属管12と筒状セラミックス体11とを一体化することができる。すなわち、中間材は、金属管12と筒状セラミックス体11とを接合する接合材として機能する。
【0027】
また、中間材13が軟質粒子を分散した金属から形成されていることも好ましい。中間材13が軟質粒子を分散した金属から形成されている場合には、金属管12と筒状セラミックス体11との間で膨張や収縮の度合いが大きく異なる状態にあっても、中間材13が応力を緩和するので、金属管12から筒状セラミックス体11へと、あるいは、筒状セラミックス体11から金属管12へと大きな応力が及びにくくなる。その結果、金属管12や筒状セラミックス体11にひびや割れが生じにくくなる。さらに、中間材13が軟質粒子を分散した金属から形成されている場合には、金属管12と筒状セラミックス体11との間で膨張や収縮の度合いが非常に大きく異なる状態になると、中間材13が先に破損し、金属管12や筒状セラミックス体11にひびや割れを生じさせないようにできる。
【0028】
本発明の熱伝導部材10では、軟質粒子としては、中空の金属粒子、膨張黒鉛を主成分する粒子、鱗状黒鉛を主成分とする粒子、土状黒鉛を主成分とする粒子、人造黒鉛を主成分とする粒子からなる群から選ばれる1種以上を含んだものを用いることができる。本明細書にいう膨張黒鉛を主成分とする軟質粒子とは、軟質粒子が膨張黒鉛を50質量%以上含む粒子もしくは凝集粒子(二次粒子)のことをいう。また、鱗状黒鉛や土状黒鉛や人造黒鉛についても、主成分とするとは50質量%以上含むこと意味する。
【0029】
また、本発明に使用できる軟質粒子は、平均粒子径が50〜2000μmであることが好ましい。このように軟質粒子の平均粒子径が50〜2000μmである場合には、軟質粒子の働きが発現しやすくなり、その結果、中間材13の弾性率を低下させることができ柔軟性が付与される。そのため、中間材13が応力を緩和する作用を十分に発現できるようになる。
【0030】
筒状セラミックス体11は、熱伝導率が100W/m・K以上であることが好ましい。より好ましくは、120〜300W/m・K、さらに好ましくは、150〜300W/m・Kである。この範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、効率的に筒状セラミックス体11内の熱を金属管12の外側に排出できる。
【0031】
なお、筒状セラミックス体11とは、セラミックスで筒状に形成され、軸方向の一方の端面2から他方の端面2まで貫通する流体の流路を有するものである。筒状とは、円筒状(円柱状)に限らず、軸(長手)方向に垂直な断面が四角形、またはその他の多角形の、角柱状であってもよい。筒状セラミックス体11は、隔壁4を有し、隔壁4によって、流体の流路となる多数のセル3が区画形成されたハニカム構造体1であることが好ましい。隔壁4を有することにより、筒状セラミックス体11の内部を流通する流体からの熱を効率よく集熱し、外部に伝達することができる。図1及び図2は、多数のセル3が形成されたハニカム構造体1を筒状セラミックス体11として用いた実施形態である。また、図6には、隔壁4を有さず外周壁7のみで内部が中空のセラミックス管を筒状セラミックス体11として用いた実施形態を示す。
【0032】
筒状セラミックス体11は、耐熱性に優れるセラミックスを用いることが好ましく、特に伝熱性を考慮すると、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)が主成分であることが好ましい。なお、主成分とは、筒状セラミックス体11の50質量%以上が炭化珪素であることを意味する。
【0033】
但し、必ずしも筒状セラミックス体11の全体がSiC(炭化珪素)で構成されている必要はなく、SiC(炭化珪素)が本体中に含まれていれば良い。即ち、筒状セラミックス体11は、SiC(炭化珪素)を含むセラミックスからなるものであることが好ましい。
【0034】
但し、SiC(炭化珪素)であっても多孔体の場合は高い熱伝導率が得られないため、筒状セラミックス体11の作製過程でシリコンを含浸させて緻密体構造とすることが好ましい。緻密体構造にすることで高い熱伝導率が得られる。例えば、SiC(炭化珪素)の多孔体の場合、20W/m・K程度であるが、緻密体とすることにより、150W/m・K程度とすることができる。
【0035】
筒状セラミックス体11として、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si、及びSiC等を採用することができるが、高い熱交換率を得るための緻密体構造とするためにSi含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを採用することができる。Si含浸SiCは、SiC粒子表面を金属珪素融体の凝固物が取り囲むとともに、金属珪素を介してSiCが一体に接合した構造を有するため、炭化珪素が酸素を含む雰囲気から遮断され、酸化から防止される。さらに、SiCは、熱伝導率が高く、放熱しやすいという特徴を有するが、Siを含浸するSiCは、高い熱伝導率や耐熱性を示しつつ、緻密に形成され、伝熱部材として十分な強度を示す。つまり、Si−SiC系[Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC]材料からなる筒状セラミックス体11は、耐熱性、耐熱衝撃性、耐酸化性をはじめ、酸やアルカリなどに対する耐蝕性に優れた特性を示すとともに、高熱伝導率を示す。
【0036】
筒状セラミックス体11を、隔壁4によって流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体1として形成する場合、セル形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、その他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
【0037】
ハニカム構造体1のセル密度(即ち、単位断面積当たりのセルの数)については特に制限はなく、目的に応じて適宜設計すればよいが、25〜2000セル/平方インチ(4〜320セル/cm)の範囲であることが好ましい。セル密度が25セル/平方インチより小さくなると、隔壁4の強度、ひいてはハニカム構造体1自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)が不足するおそれがある。一方、セル密度が2000セル/平方インチを超えると、熱媒体が流れる際の圧力損失が大きくなるおそれがある。
【0038】
また、ハニカム構造体1の1つ当たりのセル数は、1〜10,000が望ましく、200〜2,000が特に望ましい。セル数が多すぎるとハニカム自体が大きくなるため第一の流体側から第二の流体側までの熱伝導距離が長くなり、熱伝導ロスが大きくなり熱流束が小さくなる。またセル数が少ない時には第一の流体側の熱伝達面積が小さくなり第一の流体側の熱抵抗を下げることが出来ず熱流束が小さくなる。
【0039】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の厚さ(壁厚)についても、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。壁厚を50μm〜2mmとすることが好ましく、60〜500μmとすることが更に好ましい。壁厚を50μm未満とすると、機械的強度が低下して衝撃や熱応力によって破損することがある。一方、2mmを超えると、ハニカム構造体側に占めるセル容積の割合が低くなったり、流体の圧力損失が大きくなったり、熱媒体が透過する熱交換率が低下するといった不具合が発生するおそれがある。
【0040】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の密度は、0.5〜5g/cmであることが好ましい。0.5g/cm未満の場合、隔壁4は強度不足となり、第一流体が流路内を通り抜ける際に圧力により隔壁4が破損する可能性がある。また、5g/cmを超えると、ハニカム構造体1自体が重くなり、軽量化の特徴が損なわれる可能性がある。上記の範囲の密度とすることにより、ハニカム構造体1を強固なものとすることができる。また、熱伝導率を向上させる効果も得られる。
【0041】
熱交換器30(図8参照)に流通させる第一の流体(高温側)が排ガスの場合、第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1のセル3内部の壁面には、触媒が担持されていることが好ましい。これは、排ガス浄化の役割に加えて、排ガス浄化の際に発生する反応熱(発熱反応)も熱交換することが可能になるためである。貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、亜鉛、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有すると良い。これらは金属、酸化物、及びそれ以外の化合物であっても良い。
【0042】
第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1の第一流体流通部5のセル3の隔壁4に担持される触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10〜400g/Lであることが好ましく、貴金属であれば0.1〜5g/Lであることが更に好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L未満とすると、触媒作用が発現し難いおそれがある。一方、400g/Lを超えると、圧損が大きくなる他、製造コストが上昇するおそれがある。
【0043】
金属管12としては、耐熱性、耐蝕性のあるものが好ましく、例えば、SUS管、銅管、真鍮管等を用いることができる。金属管12としては、円筒状の管(軸方向に垂直な断面が円)に限られず、蛇腹構造の金属管12であってもよい。図7に蛇腹構造の金属管を備える熱伝導部材を示す。金属管12は、外側に折れ曲がって突出しつつ筒状セラミックス体11の外周を囲む環状のひだ部15を有する。このひだ部15により、金属管12は軸方向(一方の端面2と他方の端面2とを結ぶ方向)に沿って伸縮することができる。
【0044】
ひだ部15が伸縮する際には、ひだ部15の内面15sに中間材13と接合しない部分があるので、金属管12における伸縮の大きさが筒状セラミックス体11や中間材13における伸縮の大きさと異なる状態の時でも、金属管12は、中間材13との接合状態を保ったまま、ひだ部15の開き度合いを変化させることにより、軸方向に沿って自在に伸縮できる。このように金属管12が自在に伸縮できるので、本発明の熱伝導部材10では、金属管12と筒状セラミックス体11との間で伸縮の大きさが大きく異なる状態にあっても、金属管12から筒状セラミックス体11へと大きな応力が及びにくくなり、その結果として筒状セラミックス体11にひびや割れが生じにくい。
【0045】
次に、本発明の熱伝導部材10の製造方法を説明する。まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。ハニカム構造体1の材料としては、前述のセラミックスを用いることができるが、例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム構造体1を製造する場合、所定量のC粉末、SiC粉末、バインダー、水又は有機溶媒を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得る。
【0046】
そしてハニカム成形体を乾燥し、Si含浸焼成することによって、隔壁4によってガスの流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体1を得ることができる。
【0047】
次に、ろう付けにより、金属管12とハニカム構造体1とを接合する方法を説明する。複数のハニカム構造体1を、軟質材14を介した状態で直列に配置する。ハニカム構造体1に金属管12を被せて、ハニカム構造体1と金属管12との間隙にろう材を充填する。ろう材としては、銀ろう材、銅ろう材、黄銅ろう材、アルミろう材、Niろう材等を用いることができる。ろう材は、ペースト状、シート状のものを利用することができる。常温で入らない場合は、金属管12を温めるとよい。そして、真空中でろう材の固相線温度以上に昇温してろう付けする。その際に、金属管12の外側から型で圧縮、矯正した状態でろう付けしても良い。間隙に充填されたろう材は、昇温、冷却により中間材13となり、金属管12とハニカム構造体1とが接合される。中間材13は、金属管12とハニカム構造体1とを接合する接合材である。
【0048】
あるいは、溶融状態の金属により溶湯を作製し、この溶湯を金属管12とハニカム構造体1との隙間に充填し、次いで溶湯を固化させることにより、金属からなる中間材13により金属管12とハニカム構造体1とを接合することができる。なお、本明細書にいう溶融状態とは、完全溶融状態のみならず、半溶融状態(固体から、固液共存になった状態)、半凝固状態(一度液体にしてから、液固共存になった状態)のセミソリッドも含む。
【0049】
金属管12とハニカム構造体1との間隙に溶湯を充填する方法としては、重力鋳造、低圧鋳造、ダイキャスト(高圧鋳造)等を用いることができる。ダイキャストは、サイクルタイム(コスト)に優れ、狭い隙間に溶湯を充填しやすい。また、低圧鋳造は、サイクルタイムは長くなるが、品質、材料歩留り等に優れる。
【0050】
図8に本発明の熱伝導部材10を含む熱交換器30の斜視図を示す。図8に示すように、熱交換器30は、熱伝導部材10(ハニカム構造体1+中間材13+金属管12)と、熱伝導部材10を内部に含むケーシング21とによって形成されている。筒状セラミックス体11のハニカム構造体1のセル3が第一の流体が流通する第一流体流通部5となる。熱交換器30は、ハニカム構造体1のセル3内を、第二の流体よりも高温の第一の流体が流通するように構成されている。また、ケーシング21に第二の流体の入口22及び出口23が形成されており、第二の流体は、熱伝導部材10の金属管12の外周面12h上を流通する。
【0051】
つまり、ケーシング21の内側面24と金属管12の外周面12hとによって第二流体流通部6が形成されている。第二流体流通部6は、ケーシング21と金属管12の外周面12hとによって形成された第二の流体の流通部であり、第一流体流通部5とハニカム構造体1の隔壁4、中間材13、金属管12によって隔たれて熱伝導可能とされており、第一流体流通部5を流通する第一の流体の熱を隔壁4、中間材13、金属管12を介して受け取り、流通する第二の流体である被加熱体へ熱を伝達する。第一の流体と第二の流体とは、完全に分離されており、これらの流体は混じり合わないように構成されている。
【0052】
第一流体流通部5は、ハニカム構造として形成されており、ハニカム構造の場合、流体がセル3の中を通り抜ける時には、流体は隔壁4により別のセル3に流れ込むことが出来ず、ハニカム構造体1の入口から出口へと直線的に流体が進む。また、本発明の熱交換器30内のハニカム構造体1は、目封止されておらず、流体の伝熱面積が増し熱交換器30のサイズを小さくすることができる。これにより、熱交換器30の単位体積あたりの伝熱量を大きくすることができる。さらに、ハニカム構造体1に目封止部の形成やスリットの形成等の加工を施すことが不要なため、熱交換器30は、製造コストを低減することができる。
【0053】
熱交換器30は、第二の流体よりも高温である第一の流体を流通させ、第一の流体から第二の流体へ熱伝導するようにすることが好ましい。第一の流体として気体を流通させ、第二の流体として液体を流通させると、第一の流体と第二の流体の熱交換を効率よく行うことができる。つまり、本発明の熱交換器30は、気体/液体熱交換器として適用することができる。
【0054】
以上のような構成の本発明の熱交換器30に流通させる第一の流体である加熱体としては、熱を有する媒体であれば、気体、液体等、特に限定されない。例えば、気体であれば自動車の排ガス等が挙げられる。また、加熱体から熱を奪う(熱交換する)第二の流体である被加熱体は、加熱体よりも低い温度であれば、媒体としては、気体、液体等、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の熱交換部材は、加熱体(高温側)と被加熱体(低温側)で熱交換する用途であれば、自動車分野、産業分野であっても特に限定されない。特に、加熱体または被加熱体の少なくとも一方が液体の場合に好適である。自動車分野で排ガスから排熱回収用途で使用する場合は、自動車の燃費向上に役立てることができる。
【符号の説明】
【0056】
1:ハニカム構造体、2:(軸方向の)端面、3:セル、4:隔壁、5:第一流体流通部、6:第二流体流通部、7:外周壁、7h:(筒状セラミックス体の)外周面、10:熱伝導部材、11:筒状セラミックス体、12:金属管、12h:(金属管の)外周面、13:中間材、15:ひだ部、15s:内面、21:ケーシング、22:(第二の流体の)入口、23:(第二の流体の)出口、24:(ケーシングの)内側面、30:熱交換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面から他方の端面まで貫通し、加熱体である第一の流体が流通する流路を有する筒状セラミックス体と、
前記筒状セラミックス体の外周面に嵌合する金属管と、
前記筒状セラミックス体と前記金属管との間に、金属からなる中間材と、を備え、
前記金属管内で、軸方向に並んで複数の前記筒状セラミックス体が分断されて備えられており、
前記筒状セラミックス体の内部に前記第一の流体を、前記金属管の外周面側に前記第一の流体よりも低温の第二の流体を流通させ、前記第一の流体と前記第二の流体との熱交換を行う熱伝導部材。
【請求項2】
前記金属管内において、前記筒状セラミックス体同士は、軟質材を介して前記軸方向に直列配置されている請求項1に記載の熱伝導部材。
【請求項3】
前記軟質材は、グラファイトシート、セラミックファイバーシート、アルミシート、銅シートのいずれかである請求項2に記載の熱伝導部材。
【請求項4】
前記筒状セラミックス体は、熱伝導率が100W/m・K以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱伝導部材。
【請求項5】
前記筒状セラミックス体は、隔壁を有し、前記隔壁によって、流体の流路となる多数のセルが区画形成されたハニカム構造体である請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱伝導部材。
【請求項6】
前記ハニカム構造体は、炭化珪素を含む請求項5に記載の熱伝導部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202657(P2012−202657A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69647(P2011−69647)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】