説明

熱伝達ユニットが一体化されてなるメカニカルシール

本発明は、第1の固定シールリング(2)と、回転部品(4)と一緒に回転する第2の回転シールリング(3)とを備え、前記シールリング(2、3)が、互いに対向して互いの間にシールギャップ(5)を画定する摺動面を有し、固定シールリング(2)が、該固定シールリング(2)の内部領域(2b)に配置された一体の熱伝達ユニットを備え、冷却材を供給するための入り口開口(12)および冷却材を排出するための出口開口(13)を備え、冷却材が入り口開口(12)から出口開口(13)にシールリングの内部領域(2b)を通って流れるメカニカルシールアセンブリに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達ユニットが一体化されてなる請求項1の冒頭部分に記載のメカニカルシールアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな実施形態のメカニカルシールアセンブリが、従来技術から知られている。動作の際に、メカニカルシールの温度が比較的高くなる可能性がある。この高温は、とりわけ、例えば高温水の用途の場合や、精製所または石油化学工業において使用される場合などに、シール対象の媒体の高温に起因して生じる。シール対象の媒体の高温ゆえに、メカニカルシールの構成部品も高温になる可能性がある。この文脈において、シールリングの摺動面のひずみが生じる可能性がある。これが、特に高温の媒体が使用される場合に、メカニカルシールの応用分野を制限する結果となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、メカニカルシールアセンブリの応用分野を高温にも拡大できる一方で、単純な構造を有し、容易に低コストで製造されるメカニカルシールアセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を備えるメカニカルシールアセンブリによって達成される。従属請求項は、本発明の好ましいさらなる発展を示している。
【0005】
本発明のメカニカルシールアセンブリは、シールリングに一体化された熱伝達ユニットを設けることによって、熱の拡散の改善を可能にする。本発明によれば、大量の冷却材を使用する必要がないが、メカニカルシールにおいて生じる熱を、少量の冷却材を使用しつつ熱の源の近傍において直接的に拡散させることができる。この目的のために、冷却材を供給するための入り口開口および冷却材を排出するための出口開口が固定シールリングに設けられる。一体化される熱伝達ユニットは、固定シールリングの内部領域に配置され、入り口開口と出口開口とを接続する。結果として、本発明によれば、メカニカルシールの温度を、特に直接的にシールリングの摺動面の間のシールギャップにおいて、メカニカルシールの寿命の改善および動作特性の改善を全体として達成できるように、効果的に低下させることができる。また、2つのシールリングの間の摩擦によって生じうる熱を、直接的かつ迅速に拡散させることができる。このようにして、本発明によれば、固定シールリングに一体化された熱伝達ユニットによる効率的な熱の拡散ゆえに、より長い時間にわたって、メカニカルシールアセンブリの乾燥動作状態が生じていてもよい。これにより、本発明のメカニカルシールアセンブリは、優れた非常動作特性も提供する。
【0006】
一体化された熱伝達ユニットが、固定シールリングの内部領域に配置された多孔性の内部構造を備えることが、特に好ましい。多孔性の内部構造が、冷却材が通過して流れることができる複数の互いに接続された細孔を備えている。多孔性の内部構造は、固定シールリングの内部空間の全体に配置されるため、冷却材も、効率的かつ一定した冷却を達成できるように、シールリングの全体を通って流れることができる。
【0007】
好ましくは、多孔性の内部構造が、固定シールリングの内部領域の全体を形成し、この内部領域が、好ましくは一様の厚さを有する境界によって画定される。
【0008】
好ましくは、多孔性の内部構造が、炭化ケイ素で作られる。炭化ケイ素を製造するために、内部構造が最初にPU発泡体によって製造され、次いでPU発泡体が高温において炭素に変換され、その後に液体シリコンによる濃縮によって反応結合した炭化ケイ素になる。結果として、実質的に等しいサイズの細孔を有し、隣接する細孔のそれぞれが互いに接続されている内部領域がもたらされる。
【0009】
さらに好ましくは、固定シールリングの境界もまた炭化ケイ素で作られる。
【0010】
固定シールリングの全体を通過する冷却材の一定した流れを可能にするために、入り口開口が出口開口に対して180°の角度に配置される。これにより、冷却材を、入り口開口から出発し、出口開口に向かって、固定シールリングの両半分に沿って流すことができる。好ましくは、この場合において、入り口開口の直径が、出口開口の直径に等しい。
【0011】
さらに好ましくは、固定シールリングが矩形の断面を有し、多孔性の内部領域も、全周を巡って一様に矩形の断面を有している。
【0012】
固定シールリングの幅全体を冷却材が通過するように保証するために、入り口開口の直径は、好ましくは固定シールリングの内部領域の幅の約3分の1以上に相当する。
【0013】
好ましくは、水が冷却材として使用され、あるいは代案としては、メカニカルシールアセンブリのシール剤が冷却材として使用される。
【0014】
本発明のメカニカルシールアセンブリは、特に、高温水の用途において、精製所または石油化学工業において、もしくは重大な用途(例えば、爆発に対する保護が必要な部屋)において使用される。さらには、本発明のメカニカルシールアセンブリは、洗浄および冷却がフラッシング剤またはシール剤によって直接的に実行される多数のシールにおいて、好ましく使用することができる。
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるメカニカルシールアセンブリの概略断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、メカニカルシールアセンブリ1の断面図を概略的に示している。図1に示されているように、メカニカルシールアセンブリ1は、ハウジング部品11に配置された固定シールリング2と、回転シャフト4に配置され、シャフト4と一緒に回転軸X−Xを中心にして回転する回転シールリング3とを備えている。回転シールリング3は、固定装置6によって回転シャフト4に固定されている。固定装置6は、ねじ部材8(例えば、ウォームねじ)によってシャフトに取り付けられている。さらに、1つ以上のばね部材7が固定装置6に配置され、回転シールリング3に押しリング板9を介してシャフトの軸方向に付勢力を加えている。さらに、回転シールリング3は、シャフト4において第1のOリング10によって封じられている。
【0018】
動作時に、周状のシールギャップ5が、固定シールリング2と回転シールリング3との間に保たれ、2つの部屋の間のシールが、シールギャップ5によって既知のやり方で達成される。
【0019】
図1からさらに確認できるとおり、固定シールリング2は、外側の境界2aと、境界2aによって囲まれ、矩形の断面を有している内部領域2bとを備えるような構造である。内部領域2bが、一体化された熱伝達ユニットとして設計され、隣接する細孔にそれぞれ接続された複数の個々の細孔14によって形成されている。これにより、内部領域2bが、冷却材を流すことができる多孔性の内部構造として形成されている。この目的のために、入り口開口12および出口開口13が固定シールリング2に形成されている。入り口開口12がハウジング部品11に設けられた供給穴17に連通し、出口開口13が排出穴18に連通している。固定シールリング2は、第2および第3のOリング15、16によってハウジング部品11に対してシールされている。
【0020】
図1に矢印Aによって示されるとおり、冷却材が、供給穴17および入り口開口12を通って固定シールリング2の多孔性の内部領域2bに供給される。細孔14が、固定シールリング2の内部領域2bの全体に形成されているため、細孔14によって、供給された冷却材を流すことができる入り口開口12と出口開口13との間の接続が可能になる。入り口開口12および出口開口13が180°対向しているため、冷却材は、固定シールリング2の両リング半分を通って出口開口13に流れることができる。次いで、冷却材は、出口開口13から排出穴18を通って排出される(矢印B)。固定シールリング2を通って流れるとき、冷却材が熱を吸収でき、したがって固定シールリング2(特に、シールギャップ5)において直接的に温度を下げることができる。入り口開口12および出口開口13のそれぞれの直径が内部領域2bの幅Cの約3分の1であるため、充分な量の冷却材が固定シールリング2の内側の境界2aにおいても流れることが保証される。
【0021】
本発明によれば、このようにして固定シールリング2に一体化された熱伝達ユニットがもたらされ、シールギャップ5の領域の熱の直接的な拡散を可能にする。固定シールリング2の内部領域2bの複数の細孔14が、マイクロ熱伝達ユニットをもたらし、特にシールリング2、3の摺動面のひずみが防止される。冷却材の供給温度を選択することによって、定められた温度をシールギャップ5において容易に調節することができ、特に固定シールリング2の温度も冷却材の温度水準に保つことができる。本発明によれば、摩擦によって生じ、および/またはシール対象の製品によって生じる熱について、より迅速かつ顕著に向上した拡散を達成することができる。これにより、メカニカルシールアセンブリの寿命を顕著に延ばすことができるほか、シールギャップの領域における熱の拡散の改善ゆえに、例えば摩擦が大きくなり、したがって熱が増すことによって生じる乾燥運転状態の場合に、メカニカルシールアセンブリの非常動作特性の改善を可能にすることができる。本発明のメカニカルシールアセンブリは、メカニカルシールにおける温度がより高く、あるいは潤滑特性が良好でない用途において、好ましく使用される。シールリング2に一体化された熱伝達ユニットによって、高温水の用途において温度の上限を高めることも可能である。同時に、一体化された熱伝達ユニットは、きわめて低いコストで設けることが可能である。多孔性の内部領域2bおよび比較的薄い境界2aの肉厚による効率的な熱の伝達によって、冷却材の量を従来技術に比べて大幅に減らすことができ、これも冷却材のコストの削減につながる。以上を要約すると、本発明のメカニカルシールアセンブリの応用の温度範囲を、拡大することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の固定シールリング(2)、および
回転部品(4)と一緒に回転する第2の回転シールリング(3)
を備え、
前記シールリング(2、3)が、シールギャップ(5)を間に画定する互いに対向する摺動面を有しているメカニカルシールアセンブリであって、
前記固定シールリング(2)が、該固定シールリング(2)の内部領域(2b)に配置された一体の熱伝達ユニットを備え、冷却材を供給するための入り口開口(12)および冷却材を排出するための出口開口(13)を備え、冷却材が前記入り口開口(12)から前記出口開口(13)に前記シールリングの前記内部領域(2b)を通って流れることを特徴とする、メカニカルシールアセンブリ。
【請求項2】
前記固定シールリング(2)へと一体化された前記熱伝達ユニットが、複数の互いに接続された細孔(14)を含む多孔性の内部構造を有していることを特徴とする、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項3】
前記多孔性の内部構造が、前記固定シールリング(2)の前記内部領域(2b)の全体に形成され、該内部領域(2b)が、特に一定の厚さを有する境界(2a)によって囲まれていることを特徴とする、請求項2に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項4】
前記多孔性の内部構造が、炭化ケイ素で作られていることを特徴とする、請求項2または3に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項5】
前記境界が、炭化ケイ素で形成されていることを特徴とする、請求項3または4に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項6】
前記入り口開口(12)が、前記出口開口(13)に対して180°の角度に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項7】
前記入り口開口(12)の直径が、前記出口開口(13)の直径に等しいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項8】
前記熱伝達ユニットを収容している前記内部領域(2b)が、矩形の断面を有していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項9】
前記入り口開口(12)の直径または前記出口開口(13)の直径が、前記固定シールリング(2)の前記内部領域(2b)の幅の約3分の1であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−524504(P2011−524504A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513927(P2011−513927)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004201
【国際公開番号】WO2009/152991
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510151348)イーグルブルクマン ジャーマニー ゲセルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】