説明

熱併給原子力発電システム

【課題】原子炉熱出力及び負荷変動のいずれかを吸収することができ、熱効率を向上することができる熱併給原子力発電システムを提供する。
【解決手段】熱併給原子力発電システム1は、沸騰水型原子力発電プラント2、温水生成装置17及び制御装置24を備える。原子炉3で発生した蒸気は、高圧タービン5、低圧タービン6を回転させ、復水器7で凝縮される。復水器7から冷却水排出管10に排出された冷却水が、温水供給管18に流入し、温水生成装置17において各タービンから抽気された蒸気により加熱器21A,21Bで加熱されて温水になる。制御装置24は、原子炉熱出力に基づいて、温水供給管18に設けられた流量制御弁19、加熱蒸気供給管22Aに設けた流量制御弁23A及び加熱蒸気供給管22Bに設けた流量制御弁23Bの各開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱併給原子力発電システムに係り、特に、沸騰水型原子力発電プラントに適用するのに好適な熱併給原子力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力プラントは、原子炉で発生した蒸気を、主蒸気配管を通して高圧タービン及び低圧タービンに供給する。これらのタービンは、蒸気によって回転され、タービンに連結された発電機を回転させる。これにより、発電が行われる。低圧タービンから排気された蒸気は、復水器で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管を通り、給水配管に設けられた複数段の給水加熱器によって加熱され、原子炉に供給される。
【0003】
沸騰水型原子力プラントを発電だけでなく、熱源として用いることでプラント全体での実質的な熱効率を高める熱併給発電システムが提案されている(特開昭59−48696号公報、特開昭63−3298号公報、特開平4−140406号公報及び特開2007−51565号公報)。
【0004】
特開昭59−48696号公報に記載された熱併給原子力発電システムでは、高圧タービンよりも上流側の主蒸気配管から抽気した蒸気を用いて、熱交換器で高圧側熱利用設備に供給する温水を生成している。また、高圧タービンの排気側から抽気した蒸気を用いて、他の熱交換器で低圧側熱利用設備に供給する温水を生成している。
【0005】
特開昭63−3298号公報は、復水器の排水を蒸気タービンの抽気蒸気で加熱し、過熱された排水を用いて、熱水供給管内を流れる水を加熱する熱併給原子力発電システムを記載している。
【0006】
蒸気タービンから排気された蒸気を凝縮した復水器の排水を、蒸気タービンから抽気した蒸気で加熱して温水を生成し、この温水を温水利用設備に供給する熱併給発電システムが、特開平4−140406号公報に記載されている。
【0007】
特開2007−51565号公報にも、熱併給発電システムが記載されている。この熱併給発電システムは、発電プラントの高圧タービン及び低圧タービンからそれぞれ抽気された蒸気を別々の熱交換器に導いてこれらの熱交換器で水を順次加熱し、温水利用設備に供給する温水を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−48696号公報
【特許文献2】特開昭63−3298号公報
【特許文献3】特開平4−140406号公報
【特許文献4】特開2007−51565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開昭59−48696号公報及び特開2007−51565号公報では、温水利用設備に供給する温水を生成する際に、発電に利用する蒸気による加熱により温水を生成しており、プラント全体での熱利用率が向上する。しかしながら、タービンから排気される蒸気を凝縮する復水器から排出される温排水の熱を利用していないため、発電部分の熱効率は向上しない。
【0010】
特開昭63−3298号公報及び特開平4−140406号公報に記載された熱併給発電システムでは、温水利用設備に供給する温水を、タービンから排気される蒸気を凝縮する復水器から排出される温排水を抽気蒸気で加熱することにより生成しているので、発電部分の実質的な熱効率が向上する。特開昭63−3298号公報及び特開平4−140406号公報において、復水器の温排水を利用して、温水利用設備での熱利用として意味のある50℃〜100℃の温水を生成するためには、蒸気発生装置(原子炉等)で発生した熱の多くをその温水の生成に使用する必要があり、発電プラントにおける発電量を低く抑える必要がある。
【0011】
本発明の目的は、原子炉熱出力及び負荷変動のいずれかを吸収することができ、熱効率を向上することができる熱併給原子力発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、蒸気発生装置と、蒸気発生装置で発生する蒸気が供給され、発電機を回転させるタービンと、タービンから排気される蒸気を凝縮する復水器と、復水器と蒸気発生装置を接続する給水配管と、温水生成装置と、制御装置とを備え、
温水生成装置が、水を導く第1配管と、タービンから抽気される蒸気を導く複数の第2配管と、第2配管ごとに接続されて第1配管に設けられ、第1配管で導かれる水を第2配管で供給される蒸気で加熱する複数の加熱装置と、第2配管に設けられた第1流量制御弁と、複数の第2配管ごとに設けられた複数の第2流量制御弁とを有し、
原子炉熱出力に基づいて、第1流量制御弁及び複数の第2流量制御弁のそれぞれの開度を制御する前記制御装置を有することにある。
【0013】
第1流量制御弁及び複数の第2流量制御弁のそれぞれの開度を制御することにより、原子力発電プラントの原子炉熱出力を利用した、温水生成装置での熱利用量と原子力発電プラントでの発電量の割合を調節することができるので、原子力発電プラントの原子炉熱出力の変動を温水生成装置での熱利用により吸収することができ、さらに、熱併給原子力発電システムにおけるシステム全体の熱効率が向上する。
【0014】
蒸気発生装置と、蒸気発生装置で発生する蒸気が供給され、発電機を回転させるタービンと、タービンから排気される蒸気を凝縮する復水器と、温水生成装置と、制御装置とを備え、
温水生成装置が、水を導く第1配管と、タービンから抽気される蒸気を導く複数の第2配管と、第2配管ごとに接続されて第1配管に設けられ、第1配管で導かれる前記水を第2配管で供給される蒸気で加熱する複数の加熱装置と、第2配管に設けられた第1流量制御弁と、複数の第2配管ごとに設けられた複数の第2流量制御弁とを有し、
発電量要求信号に基づいて、第1流量制御弁及び複数の第2流量制御弁のそれぞれの開度を制御する前記制御装置を有することによっても、上記した目的を達成することができる。
【0015】
第1流量制御弁及び複数の第2流量制御弁のそれぞれの開度を制御することにより、原子力発電プラントの負荷変動に対応した発電量要求信号を利用した、温水生成装置での熱利用量と原子力発電プラントでの発電量の割合を調節することができるので、原子力発電プラントの負荷変動を温水生成装置での熱利用により吸収することができ、さらに、熱併給原子力発電システムにおけるシステム全体の熱効率が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱利用量と発電量の割合を調節するため、原子炉熱出力及び負荷変動のいずれかを吸収することができ、熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の熱併給原子力発電システムの構成図である。
【図2】図1に示す制御装置で実行される制御の制御信号を生成する処理の一例を示す説明図である。
【図3】従来の沸騰水型原子力発電プラントにおける原子炉熱出力及び発電機出力の変化の一例を示す説明図である。
【図4】従来の沸騰水型原子力発電プラントにおける負荷変動に対応した原子炉熱出力及び発電機出力の変化の一例を示す説明図である。
【図5】実施例1の熱併給原子力発電システムに含まれる沸騰水型原子力発電プラントにおける原子炉熱出力及び発電機出力の変化の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施例である実施例2の熱併給原子力発電システムの構成図である。
【図7】本発明の他の実施例である実施例3の熱併給原子力発電システムの構成図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例4の熱併給原子力発電システムの構成図である。
【図9】実施例4の熱併給原子力発電システムに含まれる沸騰水型原子力発電プラントにおける原子炉熱出力及び発電機出力の変化の一例を示す説明図である。
【図10】図9に示す制御装置で実行される制御の制御信号を生成する処理の一例を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例5の熱併給原子力発電システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明者らは、原子力発電プラントを含む熱併給原子力発電システムにおけるプラント全体での実質的な熱効率の向上策について検討を行った。
【0019】
この結果、発明者らは、特開平4−140406号公報に記載されているように、タービンから排気される蒸気を凝縮した、復水器からの排水の一部をタービンからの抽気蒸気で加熱して温水を生成すれば良いとの結論を得た。これにより、海(または川)に捨てられていた熱を利用することができ、原子力発電プラント全体の実質的な熱効率を向上させることができる。さらに、発明者らは、復水器の伝熱管に接続された排水管内から取り出して温水となる排水の量、及びこの排水を加熱するタービン等からの抽気蒸気の量を原子炉熱出力(または負荷変動)に応じて制御することにより、原子炉熱出力の変動(または負荷変動)を温水生成装置での熱利用により吸収できることを新たに見出した。
【0020】
この結果、熱併給原子力発電システムを構成する原子力発電プラント全体の実質的な熱効率を向上させ、原子炉熱出力(または負荷変動)に対応可能な熱併給原子力発電システムを構成することができる。
【0021】
上記した検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の好適な一実施例である実施例1の熱併給原子力発電システムを、図1を用いて説明する。本実施例の熱併給原子力発電システム1は、原子力発電プラントとして沸騰水型原子力発電プラントを用いている。熱併給原子力発電システム1は、沸騰水型原子力発電プラント2、温水生成装置17及び制御装置24を備えている。
【0023】
沸騰水型原子力発電プラント2は、蒸気発生装置である原子炉3、主蒸気配管4、高圧タービン5、低圧タービン6、復水器7及び給水配管11を備えている。複数の燃料集合体が装荷された炉心26を有する原子炉3は、主蒸気配管4によって高圧タービン5及び低圧タービン6に接続される。低圧タービン6が接続される復水器7は、内部に複数の伝熱管8を有している。海(または川)の中に吸い込み口が配置された冷却水供給管9がそれらの伝熱管8のそれぞれの入口に連絡される。それらの伝熱管8のそれぞれの出口に、冷却水排出管10が連絡される。給水配管11が復水器7と原子炉3を接続している。低圧給水加熱器12、給水ポンプ13及び高圧給水加熱器14が、上流よりこの順番に、給水配管11に設置されている。高圧タービン5に接続された抽気蒸気管15が高圧給水加熱器14に接続される。低圧タービン6に接続された抽気蒸気管16が低圧給水加熱器12に接続される。
【0024】
圧力計27が高圧タービン5の上流で主蒸気配管4に設置される。流量計28及び温度計29が高圧給水加熱器14の下流で給水配管11に設けられる。圧力計27、流量計28及び温度計29が原子炉熱出力モニタ25に接続され、原子炉熱出力モニタ25が制御装置24に接続される。
【0025】
温水生成装置17は、温水供給管18、熱利用水流量制御弁19、加熱器21A,21B、加熱蒸気供給管22A,22B及び加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bを備えている。熱利用水流量制御弁19を設けた温水供給管18が冷却水排出管10に接続されている。加熱器21A、ポンプ20及び加熱器21Bが、この順番で、熱利用水流量制御弁19から下流に向って、温水供給管18に設けられる。温水供給管18は温水利用設備(図示せず)に接続される。加熱用蒸気流量制御弁23Aが設けられた加熱蒸気供給管22Aが、低圧タービン6と加熱器21Aを接続する。加熱用蒸気流量制御弁23Bが設けられた加熱蒸気供給管22Bが、高圧タービン5と加熱器21Bを接続する。ポンプ20の設置は、最終段の加熱器(本実施例では、加熱器21B)から流出した温水の温度が100℃を超える場合には必須である。しかし、その温度が100℃未満の場合には、ポンプ20を設置しなくても良い。また、熱利用水流量制御弁19、ポンプ20及び加熱器21の順序は、図1に示す配置順を変更しても良い。
【0026】
加熱蒸気供給管22A,22Bの低圧タービン6、高圧タービン5への接続位置は、温水生成装置17から温水利用設備に供給する温水の温度によって決定される。この温水の温度が高い場合には、加熱蒸気供給管22Aの低圧タービン6への接続位置、及び加熱蒸気供給管22Bの高圧タービン5への接続位置は、それぞれのタービンの蒸気入口により近い位置になる。
【0027】
原子炉3内の炉心26で発生した蒸気は、主蒸気配管4を通して高圧タービン5及び低圧タービン6に供給され、これらのタービンを回転させる。タービンに連結された発電機が回転され、発電が行われる。低圧タービン6から排気された蒸気は、復水器7に排気される。冷却水供給管9によって導かれた冷却水が、復水器7内に設けられた各伝熱管8に供給される。この冷却水は、復水器7内で各伝熱管8の外側を流動する蒸気を冷却し、凝縮させる。蒸気の凝縮に用いられた冷却水は、各伝熱管8から冷却水排出管10に排出される。
【0028】
蒸気の凝縮により生成された水は、給水として、給水ポンプ13で昇圧され、給水配管11を通って原子炉3に供給される。給水配管11内を流れる給水は、低圧タービン6から抽気された蒸気が抽気蒸気管16を通って導かれる低圧給水加熱器12、及び高圧タービン5から抽気された蒸気が抽気蒸気管15を通って導かれる高圧給水加熱器14によって加熱される。これらの給水加熱器による加熱により温度が上昇した給水が、原子炉3に供給される。低圧給水加熱器12及び高圧給水加熱器14にそれぞれ供給された抽気蒸気は給水の加熱によって凝縮してドレン水になる。これらのドレン水は、低圧給水加熱器12及び高圧給水加熱器14に接続されたドレン配管(図示せず)により復水器7に供給され、給水に混合される。
【0029】
復水器7の伝熱管8内で蒸気の凝縮により温度が上昇して冷却水排出管10に排出された冷却水の一部が、温水供給管18内に流入する。この冷却水は、加熱器21A,21Bによって加熱されてさらに温度が上昇した温水となり、ポンプ20で昇圧されて温水供給管18を通して温水利用設備に供給される。加熱器21Aには、温水の加熱源である、低圧タービン6から抽気された蒸気が、加熱蒸気供給管22Aにより加熱器21Aに供給される。加熱器21Bには、温水の加熱源である、高圧タービン5から抽気された蒸気が、加熱蒸気供給管22Bにより加熱器21Bに供給される。冷却水排出管10から温水供給管18内に流入した冷却水が、それらの蒸気によって加熱される。加熱器21A,21Bのそれぞれに供給された抽気蒸気は、温水供給管18内を流れる冷却水を加熱することにより凝縮され、ドレン水となって、加熱器21A,21Bに接続された、上記したドレン配管とは別のドレン配管(図示せず)によって復水器7に導かれて給水に混合される。
【0030】
以下に、本実施例における原子炉熱出力の変動の吸収について説明する。
【0031】
図3に、従来の沸騰水型原子力発電プラントの原子炉熱出力及び発電機出力の運転時間における変化の一例を示す。ここで示した運転例は、原子炉熱出力及び発電機出力が一定に保持されている。実際の沸騰水型原子力発電プラントの運転では、原子炉熱出力を一定に保持した場合でも、季節により海水温度などが変化し、沸騰水型原子力発電プラントの熱効率が変化するため、発電機出力は僅かに変動する。このため、原子炉熱出力及び発電機出力のどちらか一方を一定に保持するように制御している。ただし、季節変化による熱効率の変化は僅かであるので、図2に示された各特性は、季節による熱効率変化は無視した例を示している。
【0032】
図4は、沸騰水型原子力発電プラントの負荷変動に対応した運転を行っている場合における原子炉熱出力及び発電機出力の変化の一例を示している。海外において、全発電量に占める原子力発電プラントの発電量の割合が高い場合などに、負荷変動に応じて、原子力発電プラントの発電機出力を変化させている例がある。従来の沸騰水型原子力発電プラントでは、原子炉熱出力を変化させて発電機出力を変更している。
【0033】
図5に、本実施例における原子炉熱出力の変化に対応した原子炉熱出力及び発電機出力の変化の一例を示している。図5には、本実施例で用いられる基準熱出力(基準原子炉熱出力)が一点鎖線で示されており、実線で示された原子炉熱出力は炉心設計にて定められた原子炉熱出力である。負荷変動に対応した例については実施例4以降で説明する。
【0034】
従来の沸騰水型原子力発電プラントでは、図3に示したように原子炉熱出力は一定であるが、これは、炉心流量の制御及び制御棒位置の調整により、原子炉熱出力を一定に保っているためである。このような制御が行われない場合には、原子炉熱出力は炉心内の核燃料物質の燃焼と共に変化する。原子炉熱出力の変化トレンドは燃料設計及び炉心設計により異なる。
【0035】
本実施例の熱併給原子力発電システム1では、原子炉熱出力の変動を許容し、従来の沸騰水型原子力プラントのように、定格出力運転時において、原子炉熱出力を常に一定に保つために炉心流量の制御(例えば、炉心流量の増加)及び制御棒位置の変更を頻繁に行う必要がなくなる。すなわち、本実施例では、沸騰水型原子力プラント2の起動から、燃料集合体の交換のために沸騰水型原子力プラント2の運転を停止するまでの一つの運転サイクルにおいて、特に定格出力運転時で、何度か、炉心流量、及び制御棒位置を変更して原子炉熱出力を調整する。
【0036】
本実施例における温水生成装置17で生成する温水の温度制御について説明する。
【0037】
圧力計27が原子炉3から高圧タービン5に供給される蒸気の圧力を測定する。流量計28は原子炉3に供給される給水の流量を測定し、温度計29は最終段の高圧給水加熱器14から吐出されて原子炉3に供給される給水の温度を測定する。測定された蒸気圧力、給水流量及び給水温度が、原子炉熱出力モニタ25に入力される。原子炉熱出力モニタ25は、入力した蒸気圧力、給水流量及び給水温度に基づいて原子炉熱出力を求める。具体的には、給水温度及び給水流量を用いて給水による原子炉3への入熱量を求める。蒸気圧力を用いて蒸気の飽和温度を求め、高圧タービン5に供給される蒸気流量及びその飽和温度に基づいて蒸気による高圧タービン5への入熱量を求める。高圧タービン5に供給される蒸気流量は、原子炉3内の水位が一定に調節されるので、給水流量と同じである。この蒸気流量は、主蒸気配管3に流量計を設置して測定しても良い。原子炉熱出力モニタ25は、蒸気による高圧タービン5への入熱量から給水による原子炉3への入熱量を差し引くことによって、原子炉熱出力を算出する。原子炉熱出力を算出するこのような原子炉熱出力モニタ25は、沸騰水型原子力発電プラント2の原子炉熱出力を測定していると言える。原子炉熱出力モニタ25で求められた(測定された)原子炉熱出力が、制御装置24に入力される。
【0038】
温水生成装置17の各流量制御弁19,23A,23Bの制御を、図2を用いて説明する。これらの流量制御弁の制御は制御装置24によって行われる。制御装置24は、ステップS1及びS2の各計算により熱利用水流量制御弁19の開度を求め、ステップS3及びS4の各計算により加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を求める。図5に一点鎖線で示す基準熱出力(基準原子炉熱出力)が制御装置24の記憶装置(図示せず)に記憶されている。基準熱出力は、例えば、一運転サイクルにおける最低熱出力(沸騰水型原子力発電プラント2の起動時及び停止時を除く)にすれば良い。その最低熱出力時においても一定量の熱利用をする場合(温水生成装置17から温水利用設備に温水を供給する場合)には、基準熱出力のときにおいても熱利用水流量及び加熱用蒸気流量が0よりも大きくなるようにする。基準熱出力のときに発電のみを行う場合は、基準熱出力のときにおける熱利用水流量及び加熱用蒸気流量が共に0になるようにする。
【0039】
さらに、制御装置24の記憶装置には、図2に示す4つの特性に関する情報が記憶されている。第1特性は、原子炉熱出力と熱利用水の流量との関係を示す特性である。第2特性は熱利用水流量と弁開度の関係を示す特性であり、第3特性は原子炉熱出力と加熱用蒸気流量との関係を示す特性、及び第4特性は原子炉熱出力と弁開度の関係を示す特性である。原子炉熱出力が増加すると、熱利用水及び加熱用蒸気の各流量がそれぞれ増加する。熱利用水の流量が増加すると、熱利用水流量制御弁19の開度が増大し、加熱用蒸気の流量がそれぞれ増加すると、加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度が増大する。
【0040】
ステップS1では、原子炉熱出力モニタ25から入力された原子炉熱出力から基準熱出力を差し引いて基準熱出力からの原子炉熱出力の差分を求める。第1特性を用いて、原子炉熱出力の差分(第1特性の横軸の原子炉熱出力)に対する熱利用水の流量を求める。ステップS2では、第2特性を用いて、ステップS1で求めた熱利用水の流量に対する熱利用水流量制御弁19の開度を求める。制御装置24は、ステップS2で求めた開度に基づいて熱利用水流量制御弁19の開度を制御する。
【0041】
ステップS3では、原子炉熱出力モニタ25から入力された原子炉熱出力から基準熱出力を差し引いて基準熱出力からの原子炉熱出力の差分を求める。第3特性を用いて、原子炉熱出力の差分(第3特性の横軸の原子炉熱出力)に対する加熱用蒸気流量を求める。ステップS4では、第4特性を用いて、ステップS3で求めた加熱用蒸気流量に対する加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を求める。制御装置24は、ステップS4で求めたそれぞれの開度に基づいて加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を制御する。
【0042】
以上に述べた制御装置24による制御によって、熱利用水流量制御弁19は、ステップS1で求めた熱利用水流量に相当する冷却水が流れるように、開度が制御され、加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bは、ステップS3で求めた加熱用蒸気流量に相当する抽気蒸気が加熱器21A,21Bにそれぞれ供給されるように、それぞれの開度が制御される。熱利用水流量制御弁19の開度が上記したように制御されることによって、冷却水が、ステップS1で求めた熱利用水流量に相当する流量だけ、冷却水排出管10から温水供給管18内に流入する。
【0043】
沸騰水型原子力発電プラント2の原子炉熱出力と基準熱出力との差分の原子炉熱出力(以下、原子炉熱出力差という)に基づいて加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を制御し、加熱器21A,21Bにそれぞれ供給する抽気蒸気量を調節しているので、発電機出力は、基準熱出力に対応した発電機出力に保持される。例えば、沸騰水型原子力発電プラント2の原子炉熱出力が増加すると、高圧タービン4及び低圧タービン5内を流れる蒸気流量が増加し、発電機出力が増加する。本実施例では、このような場合には原子炉熱出力差が増加するため、加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度が増大し、加熱蒸気供給管22A,22Bにより加熱器21A,21Bにそれぞれ供給されるそれぞれの抽気蒸気量が増加する。高圧タービン4及び低圧タービン5内を流れる蒸気流量が減少し、発電機出力は基準熱出力に対応した発電機出力(図5に示す破線)に保持される。
【0044】
加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を増加させると、温水供給管18に設けられた最終段の加熱器21(本実施例では、加熱器21B)の出口での温水温度が上昇する。制御装置24は、熱利用水流量制御弁19の開度を、前述したように原子炉熱出力差に基づいて求められた開度まで増大させる。これにより、冷却水排出管10から温水供給管18に流入する冷却水の流量が増加し、温水供給管18を通して温水利用設備に供給される温水の温度上昇が抑制される。結果的に、温水温度は所定温度に保持される。
【0045】
本実施例によれば、沸騰水型原子力発電プラント2の計測された原子炉熱出力と基準熱出力との差分である原子炉熱出力差に基づいて、加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を制御して加熱器21A,21Bに供給する抽気蒸気流量を調節するので、冷却水排出管10から温水供給管18内に流入する冷却水を、原子炉熱出力差に相当する熱量により加熱器21A,21Bで加熱し、温水を生成することができる。原子炉熱出力差に基づいて、加熱器21A,21Bに供給する抽気蒸気流量を制御するので、一つの運転サイクルの少なくとも定格出力運転時において、発電機出力は、基準熱出力に対応した発電機出力に保持でき、ほぼ一定になる。本実施例は、原子炉熱出力差に基づいて熱利用水流量制御弁19の開度が制御されるので、少なくとも定格出力運転時において、加熱器21A,21Bに供給する抽気蒸気流量の増減にかかわらず、温水生成装置17から温水供給管18を通して温水利用設備に供給される温水の温度を所定温度に保持することができる。
【0046】
本実施例は、熱利用水流量制御弁19及び加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を制御することにより、沸騰水型原子力発電プラント2の原子炉熱出力を利用した、温水生成装置17での熱利用量と沸騰水型原子力発電プラント2での発電量の割合を調節することができる。この結果、沸騰水型原子力発電プラント2の原子炉熱出力の変動を温水生成装置17での熱利用により吸収することができ、沸騰水型原子力発電プラント2における発電機出力を、前述したように、所定出力に保持することができる。
【0047】
本実施例は、復水器7内の伝熱管8から冷却水排出管10を通して海(または川)に放出される、暖められた冷却水の一部を、温水供給管18により温水生成装置17に供給し、この冷却水から温水を生成しているので、復水器7から外部に放出される、沸騰水型原子力発電プラント2の排熱の一部を、温水生成装置17での温水の生成に有効に活用することができる。したがって、熱併給原子力発電システム1におけるシステム全体の熱効率が向上する。
【0048】
従来の沸騰水型原子力プラントでは、定格出力運転時において、原子炉熱出力が定格出力から低下したとき、炉心流量を常に増加させて原子炉熱出力を定格出力に保持している。これに対し、本実施例では、定格出力運転時では、炉心流量の増加による原子炉熱出力の増加は、例えば、一週間に一回の割合で行われる。このため、本実施例では、原子炉出力の制御が簡素化され、沸騰水型原子力プラントの運転性が向上する。結果的に、原子炉出力の制御系を簡略化できる。
【0049】
なお、本実施例における熱併給原子力発電システム1の全体の効率を向上させる観点からは、温水生成装置17において温水供給管18に設ける加熱器21の段数をなるべく多くし、加熱器21に供給する加熱用の抽気蒸気は、なるべく低圧の蒸気(低圧タービン6の最終段のブレードに近い位置から抽気された蒸気)を用いた方が良い。例えば、温水利用設備で利用する温水を目標とする温度(例えば、150℃)まで昇温するためには、150℃以上の高温高圧の蒸気を使用する必要がある。この場合には、まず、温水の温度を100℃まで上昇させるために、温水供給管18内を流れる水を温度の低い蒸気で加熱し、その後、温水の温度を100℃から150℃まで上昇させるために、温度の高い蒸気でさらに加熱すれば良い。このように温水生成装置17において複数段の加熱器21を設け、温水の温度が低い領域に配置された加熱器21(例えば、加熱器21A)では低温・低圧の蒸気を用いることにより、沸騰水型原子力発電プラント2の蒸気の温度・圧力が減少する過程で、そのエネルギーを高圧タービン5及び低圧タービン6で回収して発電に用いることができる。このため、熱併給原子力発電システム1におけるシステム全体の効率が向上する。これを考慮すれば、システム効率を向上させる観点からは、加熱器21に供給する加熱用蒸気の一部を、少なくとも低圧タービン6から抽気することが望ましい。
【0050】
加熱器21をなるべく多段にするという観点で見ると、低圧給水加熱器12及び高圧給水加熱器14のそれぞれに供給する各抽気蒸気の抽気点(低圧タービン6及び高圧タービン5にそれぞれ設置)とは別の抽気点を新たに設置することが考えられる。しかしながら、別の抽気点の設置は設備コスト増加へのインパクトが大きい。設備コストの増加を避けるためには、加熱蒸気供給管22Aを抽気蒸気管16に接続して加熱蒸気供給管22Bを抽気蒸気管15に接続し、高圧タービン5及び低圧タービン6に設けられる抽気点を減少させれば良い。さらに、給水配管11に設けられた給水加熱器一段あたりの給水の温度上昇幅は一般的に55℃以下である。このため、温水生成装置17において温水供給管18に設けられた複数段の加熱器21一段あたりにおける、温水供給管18で導かれる温水の温度上昇幅を55℃以下にすれば良い。これにより、熱併給原子力発電システム1におけるステム効率を高めつつ、設備コストの上昇を抑制することができる。
【0051】
本実施例では、熱利用水流量制御弁19の開度を制御しているが、熱利用水流量制御弁19の開度制御の替りに、温水供給管18に設けたポンプ20の回転数を、原子炉熱出力モニタ25で測定した原子炉熱出力を用いて制御しても良い。この場合、ポンプ20の回転数は、原子炉熱出力が大きいほど大きくなるように、制御される。また、熱利用水流量制御弁19の開度及びポンプ29の回転数の両方を制御しても良い。
【実施例2】
【0052】
本発明の他の実施例である実施例2の熱併給原子力発電システムを、図6を用いて説明する。本実施例の熱併給原子力発電システム1Aは、実施例1における熱併給原子力発電システム1において原子炉熱出力モニタ25を原子炉熱出力モニタ25Aに替えた構成を有する。熱併給原子力発電システム1Aの他の構成は熱併給原子力発電システム1と同じである。原子炉熱出力モニタ25Aは、沸騰水型原子力プラント2の原子炉3内の炉心26に設置された複数の中性子検出器30に接続される。
【0053】
炉心26に設置された各中性子検出器30は、炉心26に装荷された複数の燃料集合体に含まれた核燃料物質の核分裂によって発生する中性子束を検出する。各中性子検出器30によって検出されたそれぞれの中性子束が原子炉熱出力モニタ25Aに入力され、原子炉熱出力モニタ25Aはそれぞれの中性子束を用いて原子炉熱出力を求める。このようにして、原子炉熱出力モニタ25Aも原子炉熱出力を測定する。
【0054】
本実施例における沸騰水型原子力発電プラント2による発電、及び温水生成装置17による温水の生成は、実施例1と同様に、行われる。本実施例における制御装置24は、原子炉熱出力モニタ25Aから入力した原子炉熱出力に基づいて、実施例1における制御装置24と同様に、各流量制御弁19,23A,23Bのそれぞれの開度を制御する。
【0055】
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【実施例3】
【0056】
本発明の他の実施例である実施例3の熱併給原子力発電システムを、図7を用いて説明する。本実施例の熱併給原子力発電システム1Bは、実施例1の熱併給原子力発電システム1において沸騰水型原子力発電プラント2を加圧水型原子力発電プラント31に替えた構成を有する。熱併給原子力発電システム1Bの他の構成は熱併給原子力発電システム1と同じである。
【0057】
加圧水型原子力発電プラント31は、実施例1に用いられる沸騰水型原子力発電プラント2において、蒸気発生装置である原子炉3を、原子炉3A及び蒸気発生装置である蒸気発生器32に替えた構成を有する。蒸気発生器32は内部に複数の伝熱管(図示せず)を設けている。炉心26を有する原子炉3Aに設けられた冷却水排出ノズル(図示せず)は、一次冷却系配管33によって蒸気発生器32内のシェル側の入口部に連絡される。蒸気発生器32内のシェル側の出口部に連絡される一次冷却系配管33の戻り管部は、原子炉3Aに設けられた冷却水流入ノズル(図示せず)に接続される。給水配管11が蒸気発生器32内に設置された複数の伝熱管(図示せず)の入口側端部に連絡され、主蒸気配管4が蒸気発生器32内のそれらの伝熱管の出口側端部に連絡される。加圧水型原子力発電プラント31の他の構成は、沸騰水型原子力発電プラント2と同じである。
【0058】
加圧水型原子力発電プラント31における蒸気の生成について説明する。炉心26に装荷された燃料集合体に含まれた核燃料物質の核分裂で発生した熱により冷却水が加熱されて高温になる。この高温の冷却水は、一次系配管33を通って蒸気発生器32のシェル側に供給される。給水配管11で蒸気発生器32の各伝熱管内に供給された給水は、シェル側を流れる高温の冷却水によって加熱され蒸気になる。発生した蒸気は、主蒸気配管4を通って高圧タービン5及び低圧タービン6に供給され、これらのタービンを回転させる。伝熱管内の給水を加熱して温度が低下したシェル側の冷却水は、一次冷却系配管33の戻り管部を通って原子炉3Aに戻される。
【0059】
本実施例においても、実施例1と同様に、冷却水排出管10内の冷却水の一部が、温水供給管18に導かれ、温水生成装置17の加熱器21A,21Bで加熱蒸気供給管22A,22Bにより導かれる抽気蒸気により加熱される。各流量制御弁19,23A,23Bのそれぞれの開度は、実施例1と同様に、制御装置24によって制御される。
【0060】
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【実施例4】
【0061】
本発明の好適な一実施例である実施例4の熱併給原子力発電システムを、図8を用いて説明する。本実施例の熱併給原子力発電システム1Cは、実施例1と同様に、沸騰水型原子力発電プラント2及び温水生成装置17を備えている。本実施例の熱併給原子力発電システム1Cは、本実施例の熱併給原子力発電システム1において原子炉熱出力モニタ25を発電量要求信号出力装置34に替え、制御装置24を制御装置24Aに替えた構成を有する。熱併給原子力発電システム1Cの他の構成は熱併給原子力発電システム1と同じである。沸騰水型原子力発電プラント2による発電及び温水生成装置17による温水の生成は、実施例1と同様に行われる。
【0062】
発電量要求信号出力装置34は、電力系統の負荷変動を考慮して運転員が設定する発電量の設定値を示す発電量要求信号を記憶する。制御装置24Aは、発電量要求信号出力装置34に設定された発電量要求信号を入力し、発電量要求信号に基づいて熱利用水流量制御弁19の開度及び加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を制御する。本実施例では、熱利用水流量制御弁19の開度及び加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度が、電力系統の負荷変動に対応して制御される。
【0063】
図9は、本実施例を用いた場合における負荷変動に対応した原子炉熱出力及び発電機出力の変化の一例を示している。発電機出力は発電量要求信号と基本的に一致している。従来の沸騰水型原子力発電プラントでは、図4に示したように発電機出力の変化に応じて原子炉熱出力を変化させている。しかしながら、本実施例では、沸騰水型原子力発電プラント2において、原子炉熱出力を制御せず、発電機出力のみを変更する。なお、原子炉熱出力は、図4では時間と共に変化しているが、図9ではほぼ一定である。これは、負荷変動は1日単位の短い周期の変動であるため、図9で示した短い期間では原子炉熱出力はほぼ一定値と見なせるためである。
【0064】
さらに、制御装置24Aの記憶装置には、図10に示す4つの特性に関する情報が記憶されている。第5特性は、発電量要求と熱利用水の流量との関係を示す特性である。第6特性は熱利用水流量と弁開度の関係を示す特性であり、第7特性は発電量要求と加熱用蒸気流量との関係を示す特性、及び第8特性は加熱用蒸気流量と弁開度の関係を示す特性である。発電量要求が増加すると、熱利用水及び加熱用蒸気の各流量がそれぞれ減少する。熱利用水の流量が増加すると、熱利用水流量制御弁19の開度が増大し、加熱用蒸気の流量がそれぞれ増加すると、加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度が増大する。
【0065】
制御装置24Aによる熱利用水流量制御弁19の開度及び加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度の制御を、図10を用いて説明する。
【0066】
ステップS1Aでは、基準発電量要求から、発電量要求信号出力装置34から入力された発電量要求(発電量要求信号)を差し引いて基準発電量要求からの発電量要求の差分を求める。第5特性を用いて、発電量要求の差分(第5特性の横軸の発電量要求)に対する熱利用水の流量を求める。ステップS2Aでは、第6特性を用いて、ステップS1Aで求めた熱利用水の流量に対する熱利用水流量制御弁19の開度を求める。制御装置24Aは、ステップS2Aで求めた開度に基づいて熱利用水流量制御弁19の開度を制御する。
【0067】
ステップS3Aでは、基準発電量要求から、発電量要求信号出力装置34から入力された発電量要求(発電量要求信号)を差し引いて基準発電量要求からの発電量要求の差分を求める。第7特性を用いて、発電量要求の差分(第3特性の横軸の発電量要求)に対する加熱用蒸気流量を求める。ステップS4Aでは、第8特性を用いて、ステップS3Aで求めた加熱用蒸気流量に対する加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を求める。制御装置24Aは、ステップS4Aで求めたそれぞれの開度に基づいて加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を制御する。
【0068】
発電量要求が増加すると、高圧タービン4及び低圧タービン5内を流れる蒸気流量を増加させる必要がある。このため、本実施例では、発電量要求が増加したとき、制御装置24Aは、ステップS3Aにおいて第7特性を用いて求められる加熱用蒸気流量が少量になり、ステップS4Aにおいて第8特性を用いて求められた、少量の加熱用蒸気流量に対する加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度が小さくなる。この結果、加熱蒸気供給管22A,22Bにより加熱器21A,21Bにそれぞれ供給される抽気蒸気量が減少し、高圧タービン4及び低圧タービン5内を流れる蒸気流量が増加する。原子炉熱出力が一定であっても、高圧タービン4及び低圧タービン5を流れる蒸気流量が増加することによって、増加する発電量要求に応じて発電機出力を増加させることができる。
【0069】
また、発電要求が減少する場合には、制御装置24Aが、加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を大きくなるように制御し、加熱器21A,21Bにそれぞれ供給される抽気蒸気量を増加させる。これにより、原子炉熱出力が一定であっても、高圧タービン4及び低圧タービン5内を流れる蒸気流量が減少し、減少する発電量要求に応じて発電機出力を減少させることができる。
【0070】
本実施例は、電力系統の負荷変動を考慮した発電要求が変動する場合でも、温水生成装置17での熱利用により吸収することができ、発電量要求に応じて発電機出力を容易に調節することができる。
【0071】
本実施例は、熱利用水流量制御弁19及び加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を制御することにより、沸騰水型原子力発電プラント2の原子炉熱出力を利用した、温水生成装置17での熱利用量と沸騰水型原子力発電プラント2での発電量の割合を調節することができる。この結果、電力系統の負荷変動を温水生成装置17での熱利用により吸収することができ、沸騰水型原子力発電プラント2における発電機出力を、前述したように、発電量要求に応じて調節することができる。
【0072】
制御装置24Aにより加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を減少させた場合には、加熱器21A,21Bに供給される抽気蒸気の流量が減少し、温水生成装置17から温水供給管18を通して温水利用設備に供給される温水の温度が低下する。この温水の温度低下を抑制するために、制御装置24Aは、熱利用水流量制御弁19の開度を減少させて冷却水排出管10から温水供給管18に流入する冷却水の流量を減少させ、温水供給管18を通して温水利用設備に供給される温水の温度低下を抑制する。結果的に、温水温度は所定温度に保持される。
【0073】
本実施例でも、復水器7内の伝熱管8から冷却水排出管10を通して海(または川)に放出される、暖められた冷却水の一部を、温水供給管18により温水生成装置17に供給し、この冷却水から温水を生成しているので、実施例1と同様に、熱併給原子力発電システム1Cにおけるシステム全体の熱効率が向上する。また、実施例1と同様に、原子炉出力の制御が簡素化され、沸騰水型原子力プラントの運転性が向上する。
【0074】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0075】
本実施例においても、実施例1と同様に、加熱用蒸気流量制御弁23A,23Bのそれぞれの開度を制御する替りに、ポンプ20の回転数を制御しても良い。
【実施例5】
【0076】
本発明の他の実施例である実施例5の熱併給原子力発電システムを、図11を用いて説明する。本実施例の熱併給原子力発電システム1Dは、実施例4の熱併給原子力発電システム1Cにおいて沸騰水型原子力発電プラント2を加圧水型原子力発電プラント31に替えた構成を有する。熱併給原子力発電システム1Dの他の構成は熱併給原子力発電システム1Cと同じである。
【0077】
本実施例は、実施例4で生じる各効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0078】
1,1A,1B,1C,1D…熱併給原子力発電システム、2…沸騰水型原子力発電プラント、3,3A…原子炉、4…主蒸気配管、5…高圧タービン、6…低圧タービン、7…復水器、8…伝熱管、10…冷却水排出管、11…給水配管、17…温水生成装置、18…温水供給管、19…熱利用水流量制御弁、20…ポンプ、21A,21B…加熱器、22A,22B…加熱蒸気供給管、23A,23B…加熱用蒸気流量制御弁、24,24A…制御装置24,25A…原子炉熱出力モニタ、26…炉心、32…蒸気発生器、34…発電量要求信号出力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置で発生する蒸気が供給され、発電機を回転させるタービンと、前記タービンから排気される蒸気を凝縮する復水器と、前記復水器と前記蒸気発生装置を接続する給水配管と、温水生成装置と、制御装置とを備え、
温水生成装置が、水を導く第1配管と、前記タービンから抽気される前記蒸気を導く複数の第2配管と、前記第2配管ごとに接続されて前記第1配管に設けられ、前記第1配管で導かれる前記水を前記第2配管で供給される前記蒸気で加熱する複数の加熱装置と、前記第2配管に設けられた第1流量制御弁と、前記複数の第2配管ごとに設けられた複数の第2流量制御弁とを有し、
原子炉熱出力に基づいて、前記第1流量制御弁及び前記複数の第2流量制御弁のそれぞれの開度を制御する前記制御装置を有することを特徴とする熱併給原子力発電システム。
【請求項2】
蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置で発生する蒸気が供給され、発電機を回転させるタービンと、前記タービンから排気される蒸気を凝縮する復水器と、温水生成装置と、制御装置とを備え、
温水生成装置が、水を導く第1配管と、前記タービンから抽気される前記蒸気を導く複数の第2配管と、前記第2配管ごとに接続されて前記第1配管に設けられ、前記第1配管で導かれる前記水を前記第2配管で供給される前記蒸気で加熱する複数の加熱装置と、前記第2配管に設けられた第1流量制御弁と、前記複数の第2配管ごとに設けられた複数の第2流量制御弁とを有し、
発電量要求信号に基づいて、前記第1流量制御弁及び前記複数の第2流量制御弁のそれぞれの開度を制御する前記制御装置を有することを特徴とする熱併給原子力発電システム。
【請求項3】
前記タービンが高圧タービン及び低圧タービンを含んでおり、前記複数の第2配管が前記低圧タービンに接続されている請求項1または2に記載の熱併給原子力発電システム。
【請求項4】
前記第1流量制御弁の開度を制御する第1開度制御信号を、前記原子炉熱出力に基づいて前記第1配管内を流れる前記水の流量を求めて、この水の流量に基づいて前記第1流量制御弁の開度を求めることによって生成し、前記第2流量制御弁の開度を制御する第2開度制御信号を、前記原子炉熱出力に基づいて前記第2配管内を流れる前記蒸気の流量を求めて、この蒸気の流量に基づいて前記第2流量制御弁の開度を求めることによって生成する前記制御装置を有する請求項1に記載の熱併給原子力発電システム。
【請求項5】
前記第1流量制御弁の開度を制御する第1開度制御信号を、前記発電量要求信号に基づいて前記第1配管内を流れる前記水の流量を求めて、この水の流量に基づいて前記第1流量制御弁の開度を求めることによって生成し、前記第2流量制御弁の開度を制御する第2開度制御信号を、前記発電量要求信号に基づいて前記第2配管内を流れる前記蒸気の流量を求めて、この蒸気の流量に基づいて前記第2流量制御弁の開度を求めることによって生成する前記制御装置を有する請求項1に記載の熱併給原子力発電システム。
【請求項6】
前記タービンが高圧タービン及び低圧タービンを含んでおり、前記複数の加熱装置が第1加熱装置及び第2加熱装置を含んでおり、前記第1加熱装置が前記第1配管において前記第2加熱装置よりも上流に配置され、前記複数の第2配管が前記低圧タービンに接続されて前記第1加熱装置に接続される第3配管、及び前記高圧タービンに接続されて前記第2加熱装置に接続される第4配管を含んでいる請求項4または5に記載の熱併給原子力発電システム。
【請求項7】
前記蒸気発生装置が原子炉であり、前記原子炉、前記タービン、前記復水器及び給水配管を含む沸騰水型原子力プラントを有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱併給原子力発電システム。
【請求項8】
前記蒸気発生装置が蒸気発生器であり、前記蒸気発生器、前記蒸気発生器に加熱された冷却材を供給する原子炉、前記タービン、前記復水器及び給水配管を含む加圧水型原子力プラントを有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱併給原子力発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−137450(P2012−137450A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291475(P2010−291475)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)