説明

熱処理可能な高強度アルミニウム合金

超厚ゲージの展伸材に適した高強度アルミニウム合金。合金は、6〜8重量%の亜鉛、1〜2重量%のマグネシウムおよび、Zr、Mn、Cr、Tiおよび/またはScといったような分散質形成元素を有することができ、アルミニウムおよび偶発的元素および/または不純物からなる残部を有する。この合金は、射出成形プラスチック用の金型を含めた数多くの用途に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対するクロスリファレンス)
本出願は、本明細書に参照により援用され、その一部を成す2006年6月30日出願の、米国仮特許出願第60/817,403号明細書に対する優先権ならびにその利益を請求するものである。
【0002】
本発明は、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム合金およびこの合金から作られた製品に関するものである。高強度合金は、熱処理を施すことが可能であり、低い焼き入れ感応性を有する。これらの製品は、射出成形プラスチックの金型の製造に適している。
【背景技術】
【0003】
高強度用途向けの最新のアルミニウム合金は、溶体化熱処理および急速冷却とそれに続く時効硬化プロセスにより強化される。迅速な冷却は、一般には冷水焼き入れによって達成される。溶体化熱処理の直後にこのような急速焼き入れプロセスを行なわなければ、時効硬化プロセスは非常に効果の低いものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
急速冷却プロセスは通常、高熱容量を有する冷水への迅速な熱伝達によって実施される。しかしながら厚いゲージの展伸材の内部容積は、この製品の厚みを通した緩慢な熱伝達のせいで充分に焼き入れされ得ない。したがって、非常に厚いゲージを有する製品に適したアルミニウム合金が必要とされる。このような合金は、比較的緩慢な焼き入れプロセスの後でさえ、優れた時効硬化能力を維持できるはずである。
【0005】
しかしながら、冷水焼き入れによる急速冷却には、機械加工性に有害な内部残留応力が発生するという重大な欠点がある。このような残留応力を削減するための最も一般的な方法は、一般的に延伸機を用いることによって少量の焼き入れ製品を冷延伸することである。展伸材の厚みと幅が増大するにつれ、このような製品を延伸するのに必要な力も増大する。その結果、製品の寸法が増大するにつれ強力な延伸機が必要となり、そのため展伸材の最大の厚みと幅を決定する際に延伸機が制限要因となる。
【0006】
溶体化処理の後に冷水焼き入れを施すことなく展伸材を徐冷することができる場合には、制限要因としての延伸機を取り除くことができる。かくして、残留応力は最小限となり、冷延伸が必要でなくなる。
【0007】
したがって、超厚ゲージの展伸材に最も適した望ましい高強度アルミニウム合金は、比較的緩慢な焼き入れが次に続く溶体化熱処理の後、時効強化焼戻しで、所望の高い強度を得られるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の様相は、合金化元素としてZnおよびMgを有するAl−Zn−Mgをベースとするアルミニウム合金に関するものである。本発明の合金は、MgZn沈殿物の強化効果を最大限にすることを目的として設計されている。一つの様相において、本発明の合金は、MgZn沈殿物粒子の形成を最大にするためにおよそ5:1の重量比でZnとMgを含んでいる。他様相では、本発明は、重量で6%〜8%のZnおよび1%〜2%のMgを有することができる。さらにもう一つの様相では、合金はさらに、粒状構造の制御のためZr、Mn、Cr、Tiおよび/またはScといったような一つまたは複数の金属間分散質形成元素を含むことができる。本発明の一つの特定の組成は、約6.1〜6.5%のZn、約1.1〜1.5%のMg、約0.1%のZrおよび約0.02%のTiであり、残りは、アルミニウムおよび正常なおよび/または避けることのできない不純物およびFeおよびSiといったような元素である。重量は、前記合金の総重量に基づく重量%として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明を理解するために、例証としてここで添付図面を参照しながらこの発明について記述する:
【図1】三つの異なるプロセスによって調製された、九種の合金の引張降伏応力を示すグラフである。
【図2】焼き入れ感応性が、冷水焼き入れと比較された静止空気焼き入れに起因する引張降伏応力損失によって測定される、七種の合金の焼き入れ感応性を示すグラフである。
【図3】三つの焼き入れプロセスによって調製される、九種の合金の引張破断強度を示すグラフである。
【図4】焼き入れ感応性が、冷水焼き入れと比較された静止空気焼き入れに起因する引張破断強度の損失によって測定される、七種の合金の焼き入れ感応性を示すグラフである。
【図5】T6タイプの焼き戻しのための静止空気による緩慢な焼き入れの後の引張降伏応力に対するZn対Mg比の効果を示すグラフである。
【図6】パイロットプラントでの試験のZnおよびMg組成を示すグラフである。
【図7】本発明の合金と比較用の合金についてのプレートゲージに伴う引張破断強度の推移を示すグラフである。
【図8】本発明の合金と比較用の合金についてのプレートゲージに伴う引張降伏応力の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本開示は、亜鉛、マグネシウムおよび少量の少なくとも一つの分散質形成元素をアルミニウムに添加することによって、予想外にもより優れた合金が結果として得られることを規定している。開示されている合金は、溶体化熱処理に適している。さらに、この合金は、急速焼き入れ冷却段階が無くても高強度を保持し、このことは、厚いゲージを有する製品にとって特に有利である。
【0011】
他に特に規定がないかぎり、本書で使用される組成についての全ての値は、合金の重量に基づく重量パーセント(wt%)単位である。
【0012】
焼き戻しの定義は、ASTM E716、E1251に従って参照される。T6と呼ばれるアルミニウム焼き戻しは、合金が溶体化熱処理され、そしてその後、人工時効されることを表わす。T6焼き戻しは、溶体化熱処理の後に冷間加工されていない合金に適用される。T6はまた、冷間加工が機械的特性に対して有意な効果をほとんどもたない合金にも適用することが可能である。
【0013】
他に特に規定がないかぎり、静力学的特性、言い換えれば引張破断強度UTS、引張降伏応力TYSおよび破砕時の伸びEは、ASTM規格B557に従った引張試験によって決定され、試験片が採取される位置およびそれらの方向は、AMS規格2355で定義づけられる。
【0014】
開示されているアルミニウム合金は、6〜8重量%の亜鉛を含有し得る。その他の典型的な実施態様においては、亜鉛の含有量は6.1〜7.6重量%、および6.2〜6.7重量%である。さらなる実施態様においては、亜鉛の含有量は、約6.1〜約6.5重量%である。開示されたアルミニウム合金は、1〜2重量%のマグネシウムも含有することができる。その他の典型的な実施態様において、マグネシウム含有量は1.1〜1.6重量%および1.2〜1.5重量%である。さらなる実施態様においては、マグネシウム含有量は、約1.1〜約1.5重量%である。
【0015】
一つの実施態様において、合金は、基本的に銅および/またはマンガンを全く有していない。基本的に銅を全く含まないということは、一つの実施態様では銅の含有量が0.5重量%未満であり、そして他の実施態様では0.3重量%未満であることを意味している。基本的にマンガンを全く含まないということは、一つの実施態様ではマンガンの含有量が0.2重量%未満であり、そして他の実施態様では0.1重量%未満であることを意味している。一部の実施態様において、合金は、総含有量が約0.06重量%から最大約0.3重量%の一つまたは複数の分散質形成元素を有する。一つの典型的な実施態様において、合金は、0.06〜0.18重量%のジルコニウムを有し、そして基本的にマンガンを全く有していない。しかしながらその他の実施態様において、合金は、0.06〜0.18重量%のジルコニウムと共に、または、場合によっては基本的にジルコニウムを全く伴わずに、最大0.8重量%のマンガン、そして最大0.5重量%のマンガンを含有する。基本的にジルコニウムを全く含まないということは、ジルコニウム含有量が一つの実施態様では0.05重量%未満であり、そして他の実施態様では0.03重量%未満であることを意味している。
【0016】
合金でのマグネシウムおよび亜鉛の相対的割合は、該合金のその物性に影響を及ぼし得る。一つの典型的な実施態様における合金の亜鉛対マグネシウム比は、重量に基づいて約5:1である。一つの実施態様において、Mg含有量は(0.2×Zn−0.3)重量%〜(0.2×Zn+0.3)重量%の間であり、そして他の実施態様において、Mg含有量は(0.2×Zn−0.2)重量%〜(0.2×Zn+0.2)重量%の間にある。さらに他の実施態様では、Mg含有量は(0.2×Zn−0.1)重量%〜(0.2×Zn+0.1)重量%の間である。この等式において、「Zn」は、重量%で表されたZn含有量を意味する。
【0017】
本発明は、圧延、鍛造または押出し加工法またはこれらの組合せによって製造される、鋳放し製品あるいは展伸材のような超厚ゲージの製品に特に適している。超厚ゲージとは、ゲージが少なくとも4インチであり、そして一部の実施態様では、少なくとも6インチであることを意味する。
【0018】
超厚ゲージの圧延品を製造する方法の一つの典型的な実施態様は、以下の段階により特徴づけられるものである:
‐少なくとも12インチの厚みを有する本発明の合金のインゴットを鋳造する段階;
‐一つの実施態様では820°F〜980°Fの温度領域で、そして他の実施態様では850°F〜950°Fの温度領域でインゴットを均質化する段階;
‐任意には、600°F〜900°Fの温度領域で好ましくは最終的に4〜22インチの厚みまで製品を熱間圧延する段階;
‐任意には、一つの実施態様では820°F〜980°Fの温度領域で、そして他の実施態様では850°F〜950°Fの温度領域で、結果として得られた製品を溶体化熱処理する段階;
‐厳しい焼き入れを回避し、高い内部残留応力が発生するのを回避するために、強制空気または水ミストで、または非常に低体積の水噴霧によって、製品を焼き入れまたは冷却する段階;
‐好ましくは240°F〜320°Fの温度領域で製品を人工的に時効硬化する段階。
【0019】
実験は、開示されている合金(実施例1:合金#6および実施例2:試料10および11)を従来のアルミニウム合金と比較するために実施した。以下で記述するこれらの実験では、従来の合金7108(実施例1:合金#1)、八種の変形合金(実施例1:合金#2〜#5および#7〜#9)、合金AA6061(実施例2:試料12〜14)および合金AA7075(実施例2:試料15および16)を、開示されている合金と比較した。
【実施例1】
【0020】
表1に記載される化学組成を有する九種のアルミニウム合金を、直径7’’の球体ビレットとして鋳造した。
【0021】
ビレットを、850°F〜890°Fの温度領域で24時間均質化した。その後600°F〜850°Fの温度領域でビレットを熱間圧延して1’’の厚板を形成した。超厚ゲージの展伸材の焼き入れプロセスのシミュレートを目的として、さまざまな徐冷方法を利用することによって合金の焼き入れ感応性を評価するのに、1’’の最終的な厚みを使用した。溶体化熱処理の後に、異なる焼き入れ速度の比較のために、プレートを二つまたは三つの試験片(試験片A、試験片Bおよび試験片C)に分割した。試験片Aを、1.5時間885°Fで溶体化熱処理し、0.28〜0.30°F/秒の緩慢な焼き入れ速度で空冷(静止空気)した。試験片Bを、1.5時間885°Fで溶体化熱処理し、0.70〜0.75°F/秒の焼き入れ速度で、送風機で動かした空気によって焼き入れした。試験片Cを、2時間885°Fで溶体化熱処理ならびに冷水焼き入れをし、その後に2%の冷間延伸加工をした。冷水焼き入れの間の冷却速度は速すぎて、その時点では測定することはできなかった。全ての試験片を、280°Fで16時間の人工時効によって強化した。引張試験の結果は表2に記載されている。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】
図1〜5および表2〜4で示されているように、開示された合金の典型的な実施態様である合金#6の引張破断強度(UTS)および引張降伏応力(TYS)は、この研究において評価された最も緩慢な冷却である静止空気焼き入れを材料に施した場合、合金#1〜5および7〜9のUTSおよびTYSよりも高い。さらに、合金#6は、検討された四つの高強度合金の中で最も望ましい高い強度と低い焼き入れ感応性の組合せを示している。
【0027】
超厚ゲージの展伸材のための典型的な合金#6の望ましい特徴の正当性を立証するために、6インチおよび12インチのゲージのプレートの特性を評価するべく、二つの工業規模の実物大のインゴットを鋳造した。
【実施例2】
【0028】
上述で定義した合金#6の標的となる化学的性質をもつ商業用の実物大のインゴットを、プラント規模の生産試験のために鋳造した。実際の化学組成は、表5(試料10)に記載されている。厚み18インチ、幅60インチ、長さ165インチのインゴットを24時間、900°F〜940°Fの温度領域で均質化した。インゴットを900°F〜920°Fまで予熱し、740°F〜840°Fの温度領域で6インチのゲージのプレートになるまで熱間圧延した。
【0029】
厚みが6インチのプレートを20時間940°Fで溶体化熱処理し、冷水焼き入れした。プレートを2%の名目量で冷間延伸することにより、応力を除去した。プレートを280°Fで16時間の人工時効により時効硬化させた。最終的な機械的特性は表6に示されている。腐食性は満足のいくものであった。
【0030】
上述の合金#6の標的となる化学的性質をもつ他の商業用の実物大のインゴットを、プラント規模の生産試験のために鋳造した。実際の化学組成は、表5(試料11)に記載されている。厚み18インチ×幅60インチの横断面寸法を有するプラント用の実物大のインゴットを24時間、900°F〜940°Fの温度領域で均質化した。インゴットを900°F〜920°Fまで予熱し、740°F〜840°Fの温度領域で12インチのゲージのプレートになるまで熱間圧延した。
【0031】
厚みが12インチのプレートを20時間940°Fで溶体化熱処理し、冷水焼き入れした。プレートを280°Fで28時間の人工時効により時効硬化させた。最終的な機械的特性は表6に示されている。腐食性は満足のいくものであった。
【0032】
超厚ゲージの展伸材のための本発明による合金の、より優れた材料の性能を評価するために、付加的なプラント規模の試験を、市販の超厚ゲージ製品、すなわち合金6061および7075を用いて実施した。
【0033】
厚み25インチ×幅80インチの横断面を有するプラント用の実物大の6061合金インゴットを、プラント規模の生産試験のために鋳造した。インゴットの実際の化学組成は表5(試料12)に記載されている。インゴットを900°F〜940°Fの温度領域まで予熱し、6インチのゲージのプレートになるまで熱間圧延した。
【0034】
厚みが6インチのプレートを8時間1000°Fで溶体化熱処理し、冷水焼き入れした。プレートを2%の名目量で冷間延伸することにより、応力を除去した。プレートを350°Fで8時間の人工時効により時効硬化させた。最終的な機械的特性は表6に示されている。
【0035】
厚み25インチ×幅80インチの横断面を有する商業用の実物大の6061合金インゴットを、プラント規模の生産試験のために鋳造した。インゴットの実際の化学組成は表5(試料13)に記載されている。インゴットを900°F〜940°Fの温度領域まで予熱し、12インチのゲージのプレートになるまで熱間圧延した。
【0036】
厚みが12インチのプレートを8時間1000°Fで溶体化熱処理し、冷水焼き入れした。350°Fで8時間の人工時効によりプレートを時効硬化させた。最終的な機械的特性は表6に示されている。
【0037】
厚み25インチ×幅80インチの横断面を有する商業用の実物大の6061合金インゴットを、プラント規模の生産試験のために鋳造した。インゴットの実際の化学組成は表5(試料14)に記載されている。インゴットを900°F〜940°Fの温度領域まで予熱し、16インチのゲージのプレートになるまで熱間圧延した。
【0038】
厚みが16インチのプレートを8時間1000°Fで溶体化熱処理し、冷水焼き入れした。350°Fで8時間の人工時効によりプレートを時効硬化させた。最終的な機械的特性は表6に示されている。
【0039】
厚み20インチ×幅65インチの横断面を有する商業用の実物大の7075合金インゴットを、プラント規模の生産試験のために鋳造した。インゴットの実際の化学組成は表5(試料15)に記載されている。インゴットを920°Fまで予熱し、740°F〜820°Fの温度領域で6インチのゲージのプレートになるまで熱間圧延した。
【0040】
厚みが6インチのプレートを6時間900°Fで溶体化熱処理し、続いて冷水焼き入れした。プレートを2%の名目量で冷間延伸することにより、応力を除去した。プレートを250°Fで24時間の人工時効により時効硬化させた。最終的な機械的特性は表6に示されている。
【0041】
厚み20インチ×幅65インチの横断面を有する商業用の実物大の7075合金インゴットを、プラント規模の生産試験のために鋳造した。インゴットの実際の化学組成は表5(試料16)に記載されている。インゴットを920°Fまで予熱し、740°F〜820°Fの温度領域で10インチのゲージのプレートになるまで熱間圧延した。
【0042】
厚みが10インチのプレートを6時間900°Fで溶体化熱処理し、続いて冷水焼き入れした。250°Fで24時間の人工時効によりプレートを時効硬化させた。最終的な機械的特性は表6に示されている。
【0043】
プラント規模の生産実施例の引張試験の結果は表6に記載され、図7および8にそれぞれ引張破断強度および引張降伏応力について示されている。本発明による合金についてはゲージの増加に従った機械的強度のいかなる損失も観察されないが、6061および7075合金といったような従来の合金についてはこのような損失が観察されている。
【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
図7および8は、本発明の合金については、ゲージの増加に従った機械的強度のいかなる降下も観察されないが、6061および7075の合金についてはかかる降下が共通の特長であることを示している。
【0047】
本発明の特定の実施態様および応用が開示されたが、本発明は、本研究において記述される精確な組成およびプロセスに制限されるものではない。本発明の内容および範囲に基づいて、本発明の驚くべきかつ予想外の利益を達成するべくさまざまな修正および変更を行なうことが可能である。当業者であれば、個々の実施態様の特長および構成要素の考えられる組合せおよび変形形態を、正しく認識するものと考えられる。当業者であれば、さらに、実施態様のいずれかを、本書において開示されるその他の実施態様と任意に組合せて提供することができることを正しく認識するものと考えられる。本発明はその精神または中心的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することが可能であるということが理解される。したがって、特定の実施態様について例示し記述してきたが、本発明の精神から著しく逸脱することなく数多くの修正が認められるものであり、保護の範囲は添付の請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6重量%〜約8重量%のZn;
Mgが(0.2×Zn−0.3)重量%〜(0.2×Zn+0.3)重量%の量で存在する、1重量%〜約2重量%のMg;
少なくとも一つの金属間分散質形成元素;および
残部のアルミニウムならびに避けることのできない不純物
から本質的に成る、展伸材として使用するのに適したアルミニウム合金。
【請求項2】
6.1重量%〜7.6重量%の量でZnが存在する、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
1.1重量%〜1.6重量%の量でMgが存在する、請求項1または2に記載の合金。
【請求項4】
1.2重量%〜1.5重量%の量でMgが存在する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の合金。
【請求項5】
Mgが(0.2×Zn−0.2)重量%〜(0.2×Zn+0.2)重量%の量で存在する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の合金。
【請求項6】
前記少なくとも一つの金属間分散質形成元素がZr、Mn、Cr、TiおよびScから成る群から選択される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の合金。
【請求項7】
さらに、本質的に約0.02重量%のTiから成る、請求項6に記載の合金。
【請求項8】
さらに、本質的に約0.06重量%〜約0.18重量%のZrから成る、請求項7に記載の合金。
【請求項9】
本質的にマンガンを全く含まない、請求項8に記載の合金。
【請求項10】
Znが約6.1重量%〜約6.5重量%の量で存在する、請求項9に記載の合金。
【請求項11】
Mgが約1.2重量%〜約1.5重量%の量で存在する、請求項10に記載の合金。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一つに記載の合金を含む、超厚ゲージの圧延品。
【請求項13】
約5:1の亜鉛対マグネシウム重量比で、少なくとも約6.5重量%の亜鉛およびマグネシウムを含む合金を含み、
厚みの4分の1のところで少なくとも約61ksiの引張破断強度と約54.5ksiの引張降伏応力を有する、超厚圧延品。
【請求項14】
前記合金が少なくとも約0.06重量%という少なくとも一つの金属間分散質形成元素の総含有量を含み、前記元素はZr、Mn、Cr、TiおよびScから成る群から選択される、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
合金が(a)約0.1重量%のZrおよび(b)約0.02重量%のTiのうちの少なくとも一つを含む、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
‐少なくとも12インチの厚みを有する合金のインゴットの鋳造であり、合金が、
6重量%〜約8重量%のZn、
Mgが0.2×Zn−0.3〜0.2×Zn+0.3の量で存在する、1重量%〜約2重量%のMg、
少なくとも一つの金属間分散質形成元素、および
残部のアルミニウムならびに避けることのできない不純物
を含み;
‐約820°Fから980°Fの温度領域でインゴットを均質化し;
‐厳しい焼き入れを回避し、高い内部残留応力が発生するのを回避するような形でインゴットを冷却し;そして
‐240°F〜320°Fの温度領域でインゴットを人工的に時効硬化させること、
を含む、超厚圧延品の獲得方法。
【請求項17】
インゴットが850°F〜950°Fの温度領域で均質化される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
600F°〜900°Fの温度領域で最終的に4〜22インチの厚みまでインゴットを熱間圧延することをさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
820°F〜980°Fの温度領域でインゴットを溶体化熱処理することをさらに含む、請求項16〜18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
インゴットが850°F〜950°Fの温度領域で溶体化熱処理される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
製品が、強制空気、水ミストおよび非常に低体積の水噴霧から成る群から選択される技法によって冷却される、請求項16〜20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
6重量%〜約8重量%のZn;
Mgが(0.2×Zn−0.3)重量%〜(0.2×Zn+0.3)重量%の量で存在する、1重量%〜約2重量%のMg;
少なくとも約0.06重量%の総含有量を有するZr、Mn、Cr、TiおよびScから成る群から選択される、少なくとも一つの金属間分散質形成元素;および
残部のアルミニウムならびに避けることのできない不純物
を含む合金から形成された圧延品。
【請求項23】
合金中、Mgが(0.2×Zn−0.2)重量%〜(0.2×Zn+0.2)重量%の量で存在する、請求項22に記載の圧延品。
【請求項24】
少なくとも一つの金属間分散質形成元素が、約0.02重量%のTiと約0.06重量%〜約0.18重量%のZrを含有する、請求項22または23に記載の圧延品。
【請求項25】
超厚圧延品であり、かつ厚みの4分の1のところで少なくとも約61ksiの引張破断強度と少なくとも約54.5ksiの引張降伏応力を有する、請求項22〜24のいずれか一つに記載の圧延品。
【請求項26】
冷水焼き入れを用いて冷却された場合の製品の引張降伏応力が、静止空気を用いて冷却された場合の製品の引張降伏応力よりもわずか5.9ksiしか高くない、請求項22〜25のいずれか一つに記載の圧延品。
【請求項27】
冷水焼き入れを用いて冷却された場合の製品の引張破断強度が、静止空気を用いて冷却された場合の製品の引張破断強度よりもわずか約3.4ksiしか高くない、請求項22〜26のいずれか一つに記載の圧延品。
【請求項28】
‐6重量%〜約8重量%のZn、
Mgが0.2×Zn−0.3〜0.2×Zn+0.3の量で存在する、1重量%〜約2重量%のMg、
少なくとも約0.06重量%の総含有量を有する、Zr、Mn、Cr、TiおよびScから成る群から選択される少なくとも一つの金属間分散質形成元素、および
残部のアルミニウムおよび避けることのできない不純物、
を含むアルミニウム合金を提供し、
‐合金から製品を形成し;
‐約820°F〜80°Fの温度領域で、製品を均質化し;
‐厳しい焼き入れを回避し、高い内部残留応力が発生するのを回避するような形で製品を冷却し;そして
‐240°F〜320°Fの温度領域で製品を人工的に時効硬化させることを含む、アルミニウム製品の獲得方法。
【請求項29】
製品が超厚圧延品であり、600F°〜900°Fの温度領域で最終的に4〜22インチの厚みまで製品を熱間圧延することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
820°F〜980°Fの温度領域で製品を溶体化熱処理することをさらに含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
製品が、強制空気、水ミストおよび非常に低体積の水噴霧から成る群から選択された技法によって冷却される、請求項28〜30のいずれか一つに記載の方法。
【請求項32】
製品が強制空気によって冷却され、かつ厚みの4分の1のところで少なくとも約61ksiの引張破断強度と少なくとも約54.5ksiの引張降伏応力を有する、請求項28〜31のいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−542912(P2009−542912A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518579(P2009−518579)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/072513
【国際公開番号】WO2008/005852
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(504274240)アルカン ロールド プロダクツ−レイヴンズウッド,エルエルシー (4)