説明

熱処理装置およびこれを用いた液化ガス供給装置

【課題】 単一の動力源によって複数の冷熱や温熱を作製し、エネルギー効率が高く、コンパクトかつ機能的に優れた熱処理装置およびこれを用いた液化ガス供給装置を提供すること。
【解決手段】 1系統の冷凍機71を用いて複数の異なる温度の冷媒を発生させ、該冷媒を用いて液化手段3a,貯蔵手段3b,気化手段3cなどの複数の熱処理部の冷却処理あるいは加温処理を行うとともに、前記冷媒の少なくとも1つを温度制御し、前記液化手段3a,貯蔵手段3b,気化手段3cなどの熱処理の基準冷熱として用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置およびこれを用いた液化ガス供給装置に関するもので、特に、HF、CLF、BCL、SiHCL、WF等に代表される低蒸気圧の半導体用特殊材料ガスや各種プロセスガスなど液化ガスについて、その液化処理や気化処理などに用いる熱処理装置およびこれを用いて処理された液化ガスを供給する液化ガス供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスや各種プロセスで使用される特殊材料ガスや各種のプロセスガスには、HF、CLF、BCL、SiHCL、WF等に代表される蒸気圧の低い液化ガスがよく用いられている。このような低蒸気圧液化ガスは、通常高圧ガス容器(以下、「容器」という)に液体状態で充填され、当該液化ガスを消費する半導体製造工場や各種のプロセスに納入される。このとき、液化ガスの消費設備である半導体製造プロセス装置や各種のプロセス装置(以下「プロセス装置」という)では、これらの液化ガスを液体状態ではなく気体状態で受け入れ、気体状態で使用される。このとき、液化ガスを充填した容器は、シリンダーキャビネットと呼ばれるガス供給設備に収納され、その容器内で気化させて気体状態にしてプロセス装置に繋がれた配管に送り出すようになっている。
【0003】
こうした製造プロセスにおいては、ガス供給設備から供給流路を介してプロセス装置まで液化ガスを供給する場合、その中間において、操作性や安全性などの観点から冷却処理あるいはこれと加熱処理との組合せなどの熱処理を行うことが必要とされることがある。また、従来、こうした熱処理装置は、冷却処理用手段と加熱処理手段を別々に用い各々冷熱と温熱を準備することが一般的であった。
【0004】
具体的には、加熱処理手段として、例えば図12のような液化ガス供給装置に用いられた加熱装置を挙げることができる。つまり、液化材料ガスの供給配管系における材料ガスの再液化を防止するために加熱処理手段を用いたもので、液化材料ガス供給配管205内に供給された液化材料ガスは、管路を自らの気化点以上に加熱されているため、再液化が防止される。ここで、201はマスフローコントローラである。202は温度センサで、液化材料ガスの温度を検知する。203は温度制御回路で、204は材料ガス供給系配管を加熱するヒータで、205は液化材料ガス供給配管である。206はプロセスチャンバ、207は液化材料ガス貯蔵シリンダである。(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、冷却処理用手段として、例えば図13に示すような冷凍機を用い冷熱を作製する熱処理装置(低温液化ガス冷却装置)を挙げることができる。つまり、低温液化ガスを貯留する貯留容器102と、貯留容器102の上方に配置された凝縮槽104と、凝縮槽104と貯留容器102とを連通する移送管122,124と、凝縮槽104内のガスを凝縮するための冷凍機106とを備えた冷却装置。冷凍機106の再凝縮器138が凝縮槽104に配設され、貯留容器102内の蒸発ガスは移送管122を通して凝縮槽104に流入し、凝縮槽104にて凝縮された液化ガスがオーバフローして移送管124を通して貯留容器102内に流下する。(例えば特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−12556号公報
【特許文献2】特開平11−193979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような熱処理装置あるいはこれを用いた液化ガス供給装置では、以下の課題が生じることがあった。
(1)低蒸気圧の液化ガスを使用する半導体工場やプロセス装置が設置される製造プロセス設備においては、複数の冷却処理用手段や加熱処理手段を用いる場合が多く、複数の熱処理装置の設置場所を確保するための設備占有面積が大きくなる。これは、クリーンルームなどの特別な設備を要する上記工場等においては、他の設備の設置や納入に対して非常に大きな障害となる。また、コスト面での負荷も大きくなる。
(2)複数の冷却処理用手段を用いた場合、複数の冷媒タンクがそれぞれ別々に必要であり、冷媒タンクからの冷熱漏洩によるエネルギーロスも大きい。
(3)部品点数も多く、従って信頼性にも劣ることがあるとともに、メンテナンス個所も多くなり、管理項目や保守工数の増大を招くこととなる。
【0008】
本発明の目的は、単一の動力源によって複数の冷熱や温熱を作製し、エネルギー効率が高く、コンパクトかつ機能的に優れた熱処理装置およびこれを用いた液化ガス供給装置を提供することにある。特に、低蒸気圧の半導体用特殊材料ガスや各種プロセスガスなど液化ガスの熱処理に用い、1つの装置で複数の液化処理や気化処理などを行うことができる熱処理装置およびこれを用いて処理された液化ガスを供給する液化ガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す熱処理装置およびこれを用いた液化ガス供給装置によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
本発明は、熱処置装置であって、1系統の冷凍機を用いて複数の異なる温度の冷媒を発生させ、該冷媒を用いて複数の熱処理部の冷却処理あるいは加温処理を行うとともに、前記冷媒の少なくとも1つを温度制御し、前記熱処理部の熱処理の基準冷熱として用いることを特徴とする。
【0011】
上記のように、液化ガス供給装置あるいは液化ガス消費設備などを有する製造プロセスにおいては、熱処理装置は重要な役割を果たすことから、エネルギー効率が高く複数の安定した冷熱供給が要求されるとともに、コンパクトかつ機能的に優れた熱処理装置が求められる。本発明は、こうした要請に対して、1系統の冷凍機を用いて複数の異なる温度の冷媒を発生させ、該冷媒を用いて複数の熱処理部の冷却処理あるいは加温処理を行うことによって、冷媒の作製から最終の熱処理までを系統的に制御管理することが可能となり、エネルギー効率が高く精度の高い温度制御が可能な、コンパクトかつ機能的に優れた熱処理装置を提供することが可能となる。特に、少なくとも1つの冷媒に対して精度の高い温度制御を行い基準冷熱とすることによって、各熱処理部に対して同精度に制御された冷媒が供給されるとともに、所望の温度の冷媒が供給される複数の熱処理部を相互に関連付けた温度制御が可能となり、試料条件や環境条件などに連動した制御も可能となる。また、循環使用される各冷媒に応じたエネルギーの回収も可能となる。なお、ここでいう「冷媒」とは、冷熱源だけではなく温熱源としても使用できる熱媒体をいい、詳細は後述する。
【0012】
本発明は、上記熱処理装置であって、前記冷媒を発生させて貯蔵する冷媒タンクが、多重構造の複数の冷媒槽からなり、最も内側の第1冷媒槽に最低温の第1冷媒を貯蔵し、その周囲に順次温度の低い順に第2冷媒槽に第2冷媒、第3冷媒槽に第3冷媒・・第n冷媒槽に第n冷媒を貯蔵するとともに、前記熱処理部へ前記冷媒槽から冷媒が供給されることを特徴とする。
【0013】
液化ガス供給装置や液化ガス消費設備などに用いられる熱処理装置では、上記のように複数の異なる温度の冷媒を供給することが好適であるとともに、こうした装置自体の設置場所の制限から、コンパクトな構成が求められる。本発明は、こうした要請に応じるとともに、コンパクト化によって得られるエネルギー効率の改善を図るべく、多重構造の複数の冷媒槽を有する冷媒タンクを構成し、供給する複数の冷媒を、その内部から低温順に貯蔵可能とした。これによって、各槽ごとに周囲に断熱層を設け個々に温度制御を必要とした従前の方法と異なり、各槽間の断熱も簡易的に行うことができ、エネルギーロスが少なく、かつ、少なくとも1つの冷媒槽を温度制御すればこれに隣接する冷媒槽を所定の精度範囲内で温度制御することができるために、熱処理装置をさらにコンパクトにすることが可能となる。なお、ここでいう「多重構造」とは、複数の冷媒槽が、同心円上に配置した場合だけに限定する趣旨ではなく、冷媒槽のいずれか2つが、その一部を平面的あるいは立体的に隣接する重複的な配置になっていることをいう。
【0014】
本発明は、上記熱処理装置であって、液化手段、貯留手段および気化手段として機能する熱処理部を少なくとも2つ有し、これらを独立的でかつ交互に切換えることができる機能を有するとともに、前記第1冷媒を液化手段用熱処理部の冷熱として使用し、前記第2冷媒を貯蔵手段用熱処理部の冷熱として使用するとともに、前記第3冷媒を気化手段用熱処理部の温熱として使用することを特徴とする。
【0015】
半導体製造プロセスや各種プロセスにおいては、液化ガスが多く用いられ、液相や気相での冷却処理や加熱処理、あるいは液体から気体への移相処理や気体から液体への移相処理、さらには、貯蔵された液相や気相の温度維持処理が行われ、複数の異なる温度の冷媒が要求される。本発明は、上記のように複数の温度の異なる冷媒を、その処理条件に応じて、順に液化手段用熱処理部の冷熱、貯蔵手段用熱処理部の冷熱および気化手段用熱処理部の温熱として使用することによって、1つの装置で複数の液化処理や気化処理などを行うことができる熱処理装置を提供することが可能となった。
【0016】
本発明は、上記熱処理装置であって、前記液化手段および貯留手段としての機能から気化手段としての機能への切換えあるいはその逆の切換えにおいて、切換え後にそのいずれかの機能が確保可能な状態になった時点で、予め前記第1〜第3冷媒の供給経路の切換えあるいはそれぞれの機能の制御温度への切換えを行うことを特徴とする。
【0017】
上記のように、熱処理装置において、液化手段および貯留手段としての機能と2次気化手段としての機能は、それぞれ独立的に液化ガスの処理を行う機能であるとともに、上記のようにその制御温度が重要な役割を果たしている。しかしながら、こうした機能を交互に切換えた場合において、液化ガスの処理機能の迅速な切換えは比較的容易である一方、気相および液相が共存する各手段においてはその温度の切換えの迅速性を確保することが難しい。本発明は、こうした機能の切換えに際し、熱処理部を構成する各手段のいずれか機能が確保可能な状態になった時点で、予め各手段の実動温度をそれぞれの機能の制御温度に切換えることによって、迅速に各機能を確保するもので、安定的に液化ガスを供給することが可能となる。
【0018】
本発明は、上記熱処理装置であって、前記冷凍機の放熱部における温熱を、温度制御される前記冷媒の温度調節用の温熱として使用することを特徴とする。
【0019】
冷媒の作製に用いられる冷凍機には、冷凍機用熱媒体の圧縮・膨張の繰り返しを担う圧縮部および放熱部が設けられている。一方、複数の冷媒の作製においては、冷媒の温度調節用の温熱が必要とされる。本発明は、該放熱部からの温熱を自然放熱させる従前の思想ではなく、温度制御される冷媒の温熱として使用することを図るもので、冷凍機を含む熱処理装置全体のエネルギーの有効利用によって、特別な機能の追加を必要とせずに、エネルギー効率が高く精度の高い温度制御が可能な、コンパクトかつ機能的に優れた熱処理装置を提供することが可能となる。
【0020】
本発明は、上記熱処理装置であって、前記気化手段が、被気化対象物を収納する容器の外周および底部と接触するように前記第3冷媒が流通可能な空間を有するとともに、該容器の底面に直角に前記第3冷媒を噴射させるノズルを前記空間の底部側に有することを特徴とする。
【0021】
気化手段によって液化ガスなどを安定的に供給するためには、供給開始時の温度条件とともに、供給開始後の気化熱による液相の温度維持が重要となる。このとき、特に圧力容器やこれに相当する容器に充填された液相の液化ガスにおいては、従前のジャケット式による加温方法では、容器中央部での液相表面からの蒸散に伴う温度の低下を補充することが難しく、安定的な液化ガスの供給は困難であった。本発明は、容器の外周および底部と接触するように上記第3冷媒が流通可能な空間を有することによって、容器周辺からの温熱の供給を確保するとともに、容器の底面に対して直角方向の噴射口を有するノズルから第3冷媒を噴射させることによって、液相の中央部に上昇流を発生させて液相内に対流を形成して、液相温度の均一性を確保することを特徴とする。これによって、容器内部の液相から均一に液化ガスを気化させることができ、安定的な液化ガスの供給を可能とした。
【0022】
本発明は、液化ガスが充填された容器から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する液化ガス供給装置であって、前記配管送気された気体状態の液化ガスを、上記いずれかに記載の熱処理装置において、液化処理と気化処理、あるいは液化処理と貯蔵処理と気化処理を行うことを特徴とする。
【0023】
液化ガス供給装置は、例えば半導体製造プロセスなどにおいて重要な役割を果たすとともに、液化ガスが充填された容器(以下「充填容器」という)から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する場合においても、液化ガスの安定した供給が要求される。特に、低蒸気圧の液化ガスの場合、その送気流路における再液化や圧力損失による供給量の低下などの課題は、従前の液化ガス供給装置では十分に対応することができなかった。本発明は、こうした課題に対して、上記熱処理装置を用い、液化処理と気化処理、あるいは液化処理と貯蔵処理と気化処理を行うことを特徴とするもので、これによって、低蒸気圧の液化ガスの場合であっても、送気配管(1次配管および2次配管)での液化を防止するとともに充填容器からプロセス装置までの送気圧力を確保し、所望の流量を安定的に供給することが可能な液化ガス供給装置を提供することが可能となった。つまり、充填容器において気化させて送気された液化ガスを、ガス消費設備であるプロセス装置にそのまま送気するのではなく、プロセス装置の直近あるいはプロセス装置内で強制的に液化させた後、再度気化させてプロセス装置に送気することによって、送気配管における再液化の防止を図るとともに、送気圧力の確保を図ることが可能となった。
【0024】
本発明は、上記液化ガス供給装置であって、少なくとも2つの前記熱処理装置を有し、該熱処理装置において作製した複数の異なる温度の冷媒を用い、
1の熱処理装置において、前記気体状態の液化ガスを最も低温の冷媒によって液化処理、あるいはさらにその後に液体状態の液化ガスを2番目に低温の冷媒によって貯蔵処理し、
他の熱処理装置において、前記貯蔵処理された液化ガスをこれらの冷媒よりも高温の冷媒によって気化処理するとともに、
前記液化・貯蔵処理と気化処理の切換えが可能で、該切換えと同時に、前記1の熱処理装置に供給された冷媒と前記他の熱処理装置に供給された冷媒の切換えを自動的に行う冷媒流路切換システムを有することを特徴とする。
【0025】
上記のように、各種製造プロセスに用いる液化ガス供給装置においては、複数の温度条件での熱処理が必要となり、エネルギー効率が高く複数の安定した冷熱供給が要求されるとともに、コンパクトかつ機能的に優れた熱処理装置が求められる。また、液相や気相での冷却処理モードや加熱処理モード、あるいは液体から気体への移相処理や気体から液体への移相処理、さらには、貯蔵された液相や気相の温度維持処理が行われるとともに、こうした熱処理モードの切換えや冷却処理温度や加温処理温度の切換えが必要とされる場合がある。本発明は、複数の温度の異なる冷媒を作製し、その処理条件に応じて、複数の熱処理部への冷媒の供給流路の切換えを任意に行うことによって、1つの装置で熱処理モードの切換えや冷却処理温度や加温処理温度の切換えを行い、液化ガスの安定した供給を行うことができる液化ガス供給装置を提供することが可能となった。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明に係る熱処理装置あるいはこれを用いた液化ガス供給装置によれば、低蒸気圧の半導体用特殊材料ガスや各種プロセスガスなど液化ガスの熱処理に用い、1つの装置で複数の液化処理や気化処理などを行い、液化ガスの安定した供給を行うことが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ここでは、1系統の冷凍機を用いて複数の異なる温度の冷媒を発生させ、該冷媒を用いて複数の熱処理部の冷却処理あるいは加温処理を行うとともに、前記冷媒の少なくとも1つを温度制御し、前記熱処理部の熱処理の基準冷熱として用いる熱処置装置が基本となる。
【0028】
<本発明に係る熱処理装置の基本構成例>
図1は、本発明に係る熱処置装置(以下「本装置」という)の基本構成例を示す概略図である。ここでは、表1に例示するような、3つの異なる温度の冷媒を用いて、液化、貯留および気化という3つの熱処理を行う場合について説明する。
【表1】

【0029】
本装置3は、冷熱源となる冷熱を作製する1つの冷凍機71、冷凍機用熱媒体を移送する流路72、3つの冷媒槽(第1冷媒槽7a,第2冷媒槽7b,第3冷媒槽7c)を有する冷媒タンク73からなる「冷媒発生ユニット7」と、被熱処理物(液化ガス等)の一部を液化処理する液化手段3a、これを貯蔵処理する貯蔵手段3bおよび気化処理する気化手段3cからなる「熱処理ユニット(液化ガス供給設備)3u」から構成される。
【0030】
冷媒発生ユニット7においては、冷凍機71によって作られた冷熱(冷凍機用熱媒体)は、流路72を介して冷媒タンク73の第1冷媒槽7aに供給される。第1冷媒槽7aの冷媒が冷却され、その冷却に伴い隔壁Waを介して第2冷媒槽7bの冷媒が冷却され、さらに隔壁Wbを介して第2冷媒槽7cの冷媒が冷却され、所定時間後に、各冷媒槽に所定の温度の冷媒が貯留される。貯留された各冷媒槽の冷媒は、第1,第2,第3循環ポンプPa,Pb,Pcによって、熱処理ユニット3uに供給され、各々液化手段用熱処理部3a、貯蔵手段用熱処理部3bおよび気化手段用熱処理部3cから再び各冷媒槽に戻る循環系を形成し、各熱処理部の冷却処理および加熱処理を担う。以下、冷媒発生ユニット7と熱処理ユニット3uに分けて詳述する。
【0031】
〔冷媒発生ユニット7について〕
本装置に用いる冷媒発生ユニット7は、図2に例示するように、冷凍機71を1系統とし、冷媒を作製する3つの冷媒槽が3重構造をした一体型ユニットを構成することが好ましい。また、冷媒槽の少なくとも1つを温度制御し、本装置の熱処理の基準冷熱として用いることが好ましい。1系統の冷熱を用いた本装置全体の熱処理の制御基準を明確にするとともに、各熱処理部については、各冷媒槽の構造や冷媒供給量を調整することによって、要求される冷媒の供給を任意に制御することが可能となる。このとき、第2冷媒槽7b内の第2冷媒と第3冷媒槽7c内の第3冷媒の温度差が大きい場合には、図2のように第2冷媒槽7bと第3冷媒槽7cの隔壁Wbは2重構造とし、内部には空気層を設けることが好ましい。これにより冷熱のロスを抑え、温度制御のための負担の軽減を図ることができる。こうした冷媒発生ユニット7は、以下の特徴がある。
【0032】
(i)冷凍機71を1系統とし、複数の冷媒を作製することを特徴とする。つまり、従前のように、3つの冷媒を作製するのに3系統は必要とせず、冷凍機71によって作られた冷熱(冷凍機用熱媒体)は、流路72を介して専ら第1冷媒槽7a内の第1冷媒を冷却するために、第1冷媒中に浸漬するように配置され、第2冷媒槽7bおよび第3冷媒槽7cは、冷媒タンク1から隔壁Wa,Wbから伝達される冷熱を利用することを特徴とする。ここで、冷凍機71は、特に限定されるものではなく、図2に例示するような蒸気圧縮式冷凍機を使用することが可能である。圧縮器71a、凝縮器71b、受液器71c、膨張弁71dおよび蒸発器71eから構成され、熱媒体としてアンモニア、炭化水素、二酸化炭素などが用いられる汎用性の高い冷凍機である。これ以外にも熱媒体として水やアンモニアなどを用いた吸収式冷凍機あるいはゼオライトやシリカゲルを吸着媒体とする吸着式冷凍機などを使用することができる。
【0033】
(ii)冷媒を発生させて貯蔵する冷媒タンク73が、多重構造の複数の冷媒槽7a,7b,7c・・からなり、最も内側の第1冷媒槽7aに最低温の第1冷媒を貯蔵し、その周囲に順次温度の低い順に第2冷媒槽7bに第2冷媒、第3冷媒槽7cに第3冷媒・・第n冷媒槽7nに第n冷媒を貯蔵するとともに、熱処理ユニット3uへ各冷媒槽から冷媒が供給されることを特徴とする(図2では、nが3の場合を例示し、以下同様とする)。各冷媒槽ごとに周囲に断熱層を設けて個々に温度制御を必要とした従前の方法と異なり、各冷媒槽間の断熱も簡易的に行うことができ、冷媒タンク73全体からのエネルギーロスが少なく、かつ、少なくとも1つの冷媒槽を温度制御すればこれに隣接する冷媒槽を所定の精度範囲内で温度制御することができる。
【0034】
(iii)第1冷媒槽7aと第2冷媒槽7bの隔壁Waは、金属製(例えばアルミニウムとかステンレス鋼)とし第1冷媒槽7aから第2冷媒槽7bに冷熱が伝わり易い構造とし、第2冷媒槽と第3冷媒槽の隔壁Wbは冷熱の伝わるのを抑制するために、中間に空気層をもつ2重の金属製壁面とすることを特徴とする。また、第3冷媒槽7cの周囲は、断熱材で覆うかもしくは2重壁構造で内部が空気層ないし真空にする等によって外気からの熱伝達を抑制するとともに、外気の湿気による結露を防止する構造とすることが好ましい。
【0035】
(iv)また、図2では、冷媒発生ユニット7において、第1冷媒槽7aに冷凍機71からの冷熱の流路72が投入されて槽内の冷媒を所定温度以下に冷却するとともに、第2冷媒槽7bと第3冷媒槽7cに設けられたヒータHbとHcおよび冷媒温度制御部74b,74cによって、各槽に貯留された冷媒がそれぞれ所定の温度に制御される場合を示している。このとき、各冷媒中には、冷媒の熱拡散が増すように攪拌器Ma,Mb,Mcを設けることが好ましい。ただし、所定の温度に制御される冷媒槽は、必ずしも2つ必要とされず、冷媒タンク73の構造や冷媒の使用条件などが設定されれば、各冷媒槽における熱収支が確定することとなり、いずれかの冷媒槽の冷媒を基準として(基準冷媒)温度制御することによって、各冷媒槽の冷媒を温度制御することが可能である。つまり、第2冷媒槽7bの第2冷媒と第3冷媒槽7cの第3冷媒には、それぞれヒータHcとHcおよび冷媒の温度を測るための温度センサSbとScが浸漬され、第2冷媒槽7bの場合であれば第1冷媒槽7aから隔壁Waを、第3冷媒槽7cであれば第2冷媒槽7bから隔壁Wbを伝わって来る冷熱で過冷却になっている状態から、ヒータHcとHcにて熱を適切に供給することによりそれぞれが所定の温度になるようフィードバック制御することを特徴とする。なお、冷媒温度の精度をそれほど必要としない第1冷媒槽7aについては、ヒータは組み込まず、冷凍機71からの第1冷熱の流路72のみが組み込まれ、温度センサは無くても機能上は特に問題ない。
【0036】
(iv)このような構造によって得られる冷媒発生ユニット7において、各冷媒槽の温度分布は、図3に示すようになる。
【0037】
最も内部の第1冷媒槽7a内の第1冷媒は、既述のように冷凍機71からの冷熱の流路72によって冷却されるため、3つの冷媒の中では温度が最も低く、例えば−10〜−5℃程度になるように冷凍機71が作動する。このとき、第1冷媒の温度は、第2冷媒や第3冷媒と異なり温度制御は施されていないので、冷凍機71の運転条件(冷凍機周辺環境温度等)のゆらぎの影響等によりある程度の幅で変動する。
【0038】
第2冷媒槽7bは、第1冷媒槽7aのように冷凍機71による冷却は施されずに、第2冷媒内で接する第1冷媒槽7aの隔壁Waから伝わってくる冷熱によって冷却される。このとき、そのままでは第1冷媒の温度のゆらぎの影響をそのまま受けることになるが、第2冷媒槽7bにヒータHbが内蔵され、このヒータHbによる加熱操作によって第2冷媒の温度が、常に例えば0℃付近になるように制御され、第1冷媒槽7aとは異なり恒温化される。ここで、ヒータHbによる加熱操作に代え、冷凍機71の放熱部(具体的には凝縮器71bが相当する)における温熱を、温度制御される第3冷媒の温度調節用の温熱として使用することが可能である。本装置は、冷凍機71と一体化された熱処理装置を構成することから、冷凍機71を含む熱処理装置全体のエネルギーの有効利用によって、ヒータHb機能の追加を必要とせずに、エネルギー効率が高く精度の高い温度制御が可能となる。また、後述するヒータHcによる加熱操作と併せて代えることによって、一層のエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0039】
第3冷媒槽7cも、第2冷媒槽7bと同様に冷凍機71による冷却は施されずに、第3冷媒内で接する第2冷媒槽7bの隔壁Wbから伝わってくる冷熱によって冷却される。このとき、伝わる冷熱だけでは、第3冷媒槽7cが外気からの熱的外乱その他の要因によって変動することになるが、この第3冷媒槽7cにも第2冷媒槽7bと同様ヒータHcが組み込まれ、このヒータHcによる加熱操作によって第3冷媒の温度が、常に例えば15℃±1℃程度になるように制御される。このとき、上記同様ヒータHcによる加熱操作に代え、冷凍機71の放熱部(具体的には凝縮器71bが相当する)における温熱を、使用することが可能である。
【0040】
(v)なお、図2においては、3つの冷媒槽が同心円上に配置された3重構造をした一体型として形成される場合を例示しているが、本装置においては、こうした構造だけではなく、冷媒槽のいずれか2つが、その一部を平面的あるいは立体的に接触する重複的な配置になっていれば足りる。具体的には、図4(A)〜(D)に例示するように、平面状において第1冷媒槽7a、第2冷媒槽7bおよび第3冷媒槽7cが順に隣接する構造や1つの冷媒槽が2つの冷媒槽に隣接する構造、あるいは図4(E)〜(H)に例示するように、立体状において第1冷媒槽7a、第2冷媒槽7bおよび第3冷媒槽7cが順に隣接する構造や1つの冷媒槽が2つの冷媒槽に隣接する構造、あるいはこれらの組合せなどを適用することが可能である。
【0041】
〔熱処理ユニット3uについて〕
本装置に用いる熱処理ユニット3uは、送気された気体状態の液化ガスを液化して一旦液体状態の液化ガスとして貯蔵する機能(以下「液化貯蔵モード」ということがある)と、一旦貯蔵した液化ガスを再度気化させ気体状態で送気する機能(以下「再気化モード」ということがある)を有する。このとき、図1に例示するような構成においては、液化手段3a、貯蔵手段3bおよび気化手段3cが連通部3dを介して接続され、連通部3dに組み込まれた送液ポンプ等の作用で液化ガス等の被処理物が順次連続的に処理することが可能である。
【0042】
ここでは、液化手段3aは、図5に例示するように、液化ガスを液化するための予冷器として、貯蔵手段3bの上部に配設され、熱処理ユニット3uへの液化ガス導入管3eに組み込まれている。上記第1冷媒槽7aから第1冷媒循環ポンプPaによって供給され、液化手段3aの下部の冷媒導入部3aaより導入された第1冷媒が、液化手段3a内の液化ガス導入管3eを冷却し、その上部の冷媒導出部3abより排出されて第1冷媒槽7aに戻され、常に新しい第1冷媒が循環するようになっている。液化ガス導入管3eに導入された気体状態の液化ガスは、この液化手段3aによって急速に冷却されることにより凝縮しながら液化ガス導入管3eを伝い、液化手段3aの下方に設置された貯蔵手段3bに液体として貯蔵されるように作用する。また、貯蔵手段3bの外表面、冷媒導入管3aaおよび冷媒導出管3abには、断熱カバー3beおよび3aeが施され冷熱のロス低減と、結露防止を図っている。
【0043】
また、貯蔵手段3bは、図5に示すように、液化ガス導入管3eから導入された液化ガスを貯蔵する容器3baを囲むように冷却ジャケット3bbが組みつけられ、冷却ジャケット3bbの下部には冷媒導入口3bc、上部には冷媒導出口3bdが設けられ、冷媒が冷却ジャケット3bb内の空間部3beを流れるとともに、第2冷媒循環ポンプPbによって第2冷媒槽7bとの間において第2冷媒を循環できる構造となっている。冷却ジャケット3bbの外表面、冷媒導入管3bc、冷媒導出管3bdは、断熱被被覆付き配管を使用し、冷熱のロスを防止するとともに、冷却ジャケット3bb外表面および冷媒循環配管表面での結露を防止するようになっている。
【0044】
気化手段3cは、基本的には、図5に示す貯蔵手段3bと同様、液化ガスを貯蔵する容器3ca(図示せず)と、その周囲に第3冷媒槽7c(図示せず)との間で第3冷媒循環ポンプPc(図示せず)によって第3冷媒の循環供給が可能な冷却ジャケット3cb(図示せず)からなる構造であり、さらに気化した液化ガスを供出するための液化ガス導出管3fを有している。
【0045】
こうした構造以外に、種々の構造を適用することができる。例えば、図6(A)のように、容器3caに充填された液体状態の液化ガスを、液相内キャリアガスを導入しバブリングして気化する方法があり、キャリアガス導入部3ccが設けられ、液相の液化ガスの最下層近くまでキャリアガス導入管3cdが挿入されている。蒸気圧が低いために十分な供給量を確保することが困難な場合でも、供給能力のあるキャリアガスに同伴させることで送気能力の向上を図ることができる。また、低濃度の液化ガスの供給が要求される場合あるいは複数のガスを混合して使用する場合には、不活性ガスその他のガスをキャリアとして液化ガスを同伴させて供給することによって、使用条件に対応した液化ガスを供給することができる。
【0046】
このとき、キャリアガスに同伴する液化ガスの量(これを通常「ピックアップ・レート」という)を制御するには、キャリアガスの流量制御で行うことができる。すなわち、液相温度を略一定となるように制御している場合には、キャリアガス流路にマスフローコントローラ3mfを設け、これを制御してキャリアガスの流量を増やすことによって、ピックアップ・レートを増やすことができる。また、液化ガスをキャリアガスに同伴させれば十分な場合には、バブリングさせずに、液相の表層にキャリアガスを通過させる方法あるいは1次気化手段1bからのキャリアガスにさらにキャリアガスを添加して希釈する方法などを用いることも可能である。キャリアガスとしては、ガス消費プロセスにとって阻害要因とならないガスを用いることが求められる。通常、He、Ar、Nといった不活性ガスを用いることが多いが、エピタキシャルウエーハ処理プロセスのように、液化ガスとしてSiHClを用いた場合には、Hを用いることが好ましい。
【0047】
また、図6(B)のように、第3冷媒を容器3caの底面に直角に噴射させるノズル3cfを、冷却ジャケット3cb内の空間部3ceの底部側に配設した構造とすることができる。冷却ジャケット3cbの外周および底部と接触するように第3冷媒が流通可能な空間部3ceを有することによって、容器3ca周辺から温熱を供給するとともに、容器3caの底面に対して直角方向に第3冷媒を噴射させることによって、第3冷媒から容器3caあるいはその内部に貯蔵されている液化ガスへの熱伝導を促進させ、液化ガスの温度変化要因に対して速やかな熱的補償ができ安定的な液化ガスの供給ができる。また、図6(B)のように、冷媒導入系に浸漬ヒータHnを組み込み、供給される第3冷媒を加熱することによって、液化ガスの供給量すなわち気化量に応じて液相の液化ガスから奪われる気化熱を、速やかに補填できるので、さらに安定した圧力で液化ガスを供給できる。
【0048】
<本発明に係る熱処理装置の他の構成例>
次に、本発明に係る熱処理装置の他の構成例について、図7を基に説明する。基本的な構成要素は、上記図1に例示した構成と同様であるが、図5に例示した液化手段3a、貯留手段3bおよび気化手段3cとして機能する熱処理ユニット3uを少なくとも2つ有するとともに、これらを独立的でかつ交互に切換えることができる機能を有するように、冷媒発生ユニット7とおよび3つの循環ポンプPa,Pb,Pcと4つの流路切換弁V1〜V4によって構成される冷媒循環切換システムが構成される。図7においては、図の左に示す熱処理ユニット3uAが「液化貯蔵モード」にあり、図の右に示す熱処理ユニット3uBが「再気化モード」にある場合(STEP1)を示しており、所定時間後に各モードの切換えが行われ(STEP2)、周期的にこれを繰り返すことによって(STEP3、・・)、送気された液化ガスを再気化して連続的に供給することができる。
【0049】
〔冷媒循環切換システムについて〕
具体的に、各STEPにおいて、使用する冷媒が流路切換弁V1〜V4によって切換えられ、熱処理ユニット3uA,3uBの運転モード、熱処理の対象および使用する冷媒は、表2に示す通りである。
【表2】

【0050】
流路切換弁V1は、第2冷媒循環ポンプPbによって圧送されてくる第2冷媒を2つの冷却対象である熱処理ユニット3uAないしは熱処理ユニット3uBのいずれかに送り出す(図7は、熱処理ユニット3uA側に送り出していることを示している)と同時に、冷媒循環ポンプPcによって圧送されてくる第3冷媒を、これとは反対の熱処理ユニット3uBに送り出す機能を持っている。流路切換弁V2は、熱処理ユニット3uAと熱処理ユニット3uBから戻ってくる第2,第3冷媒を、各々第2冷媒槽7b,第3冷媒槽7cに戻すように流路を切換える機能を有する。流路切換弁V3と流路切換弁V4は、第1冷媒を2つある液化手段3aA,3aBのどちらに流すかを制御するもので、図7では、熱処理ユニット3uAを構成する液化手段3aAに第1冷媒が循環供給され、熱処理ユニット3uBを構成する液化手段3aBには供給されていないことを示している。
【0051】
これら4つの流路切換弁V1〜V4は、2つの熱処理ユニット3uA,3uBの運転モードが、「液化貯蔵モード」から「再気化モード」に切換わる時点で、一斉に流路を切換えるように動作する。なお、図7では、流路切換弁V1〜V4として2−ポジションの4方切換弁で構成する例を示しているが、同じ機能を3方の流路切換弁の組み合わせで実現しても良いし、開閉機能の切換弁の組み合わせで実現しても良いことはいうまでもない。
【0052】
〔熱処理ユニット3uAおよび3uBについて〕
本装置においては、図7において、熱処理ユニット3uAおよび3uBが各々「液化貯蔵モード」「再気化モード」に相当する機能を有している。表2に示すSTEP1においては、気体状態の液化ガスが、開状態の切換弁33aおよび液化ガス導入管3eAを介して熱処理ユニット3uAに導入され、液化手段3aAによって液化されて貯蔵手段3bAによって貯蔵されるとともに、再気化された液化ガスが、液化ガス導出管3fBおよび開状態の切換弁33dを介して供出される。また、STEP2において、開状態の切換弁33bおよび液化ガス導入管3eBを介して熱処理ユニット3uBに導入されるとともに、再気化された液化ガスが、液化ガス導出管3fAおよび開状態の切換弁33cを介して供出される。
【0053】
つまり、熱処理ユニット3uAが「液化貯蔵モード」にある場合には、切換弁33aが開状態、切換弁33cが閉状態にあり、「再気化モード」にある熱処理ユニット3uBは、切換弁33bが閉状態、切換弁33dが開状態にある。逆に、熱処理ユニット3uBが「液化貯蔵モード」となる場合には、切換弁33bが開状態、切換弁33dが閉状態となり、「再気化モード」となる熱処理ユニット3uAは、切換弁33aが閉状態、切換弁33cが開状態となる。なお、図7において、切換弁33a〜33dの「開状態」は弁部白、「閉状態」は弁部黒で表示する。
【0054】
2つの熱処理ユニット3uAおよび3uBは、この「液化貯蔵モード」と「再気化モード」という2つの作用を交互に担うように切換え制御することにより、連続的に液化ガスを供給できるようになっている。切換えは「再気化モード」にある熱処理ユニット3uBの液残量が予め設定したレベル以下になった時点で行われる。残量検知のためには通常重量測定によって行なうが、そのために2つのタンクはロードセル32の上に載せられた形で設置されている。
【0055】
「液化貯蔵モード」にある熱処理ユニット3uAの動作をもう少し詳説する。液化手段3aAには第1冷媒(例えば−10〜−5℃)が循環供給され、開状態の切換弁33aを介して送気されてきた気体状態の液化ガスは、この液化手段3aで冷却されて液化し、この貯蔵手段3bA内に液相の液化ガスが徐々に貯蔵されることになる。また、貯蔵手段3bAは周囲を循環する第2冷媒(例えば0℃)に冷却されているので、内部圧力を十分低く抑えることができるので連続的に液化をさせることができ、液化ガスを貯蔵することができる。この間切換弁33cは閉止されているので熱処理ユニット3uAから液化ガスが供給されることはなく、専ら送気されてくる液化ガスを液化し貯蔵するのみである。このようにして貯蔵された量が予め設定された規定量に達した時点で熱処理ユニット3uAの切換弁33aは自動的に閉止し、それと同時に、温度制御の設定温度がそれまでの液化用設定値から再気化モードの設定に自動的に切換わるようになっている。それと同時に、それぞれ第2冷媒を熱処理ユニット3uAに送っていたポンプPb、および第1冷媒を液化手段3aAに送っていたポンプPaは停止する。ポンプPbは、熱処理ユニット3uAに貯蔵された液化ガスの温度が新たに設定された温度以上になると再起動し、待機中の液温が「再気化モード」の温度を維持するようにON/OFF動作する。これは「液化貯蔵モード」から「再気化モード」に切換わる前に、待機している「液化貯蔵モード」側の液温を予め「再気化モード」の温度設定に移行させることによって、モード切換え時の圧力不足状態を回避することができる。
【0056】
一方、「再気化モード」にある熱処理ユニット3uBにおいては、切換弁33bが閉止しているので、液化ガスの送気はない状態になっている。さらに液化手段3aBには、流路切換弁V3,V4によって第1冷媒は流れてこないようになっているので凝縮機能も停止している。また、切換弁33dは開になっているので、気化手段3cB内に貯蔵された液相の液化ガスの上部に存在する気相部が流出可能な状態になっている。液化ガス導出管3fBに接続された設備等において液化ガスの消費があった場合、液化ガス導出管3fBを介して該気相部の圧力が低下する方向に動くが、それに伴って気化手段3cB内の液相の液化ガスが、圧力低下を補償するように速やかに気化する。気化手段3cBには第3冷媒(例えば15℃)が供給されているので、気化手段3cB内の液化ガスは15℃に保たれるため、15℃における飽和蒸気圧に相当する圧力に安定化された気体状態の液化ガスが供給される。気化手段3cB内のガス量が所定の量以下になれば、それまで液化貯蔵モードで液化ガスを貯蔵していた熱処理ユニット3uAからの供給に切換える。そのとき、流路切換弁V1〜V4および切換弁33a,33bを一斉に切換えるとともに、ポンプPa,PbをON、切換弁33cを開状態、切換弁33dを開状態とする。
【0057】
また、2つの熱処理ユニット3uAおよび3uBは、それぞれ低温化され一定の温度に保持するように上記冷媒循環切換システムを用いた温度制御機能を持っている。つまり、液化手段3aにおける液化温度を測定する手段、貯留手段3bにおける貯蔵温度を測定する手段、気化手段3c内の液相の液化ガス温度を測定する手段、および液化温度、貯蔵温度、液相の液化ガス温度を制御する手段を有し(図示せず)、送気されてきた液化ガスを液化するのに十分な温度まで低温化されるとともに、再度気化して送気するように温度制御される。すなわち「液化貯蔵モード」にある熱処理ユニット3uAの温度制御は、容器3baの底面の壁面温度が予め設定された温度になるようフィードバック制御され、一方「再気化モード」にある熱処理ユニット3uBの温度制御は、気化手段3cの液化ガス導出管3fBに組み込まれた圧力センサ34Bで常時モニタし、その圧力値から液化ガス固有の「飽和蒸気圧vs温度」特性曲線より演算して求められた液体温度が予め設定された温度になるようフィードバック制御する方式を採用することが好ましい。
【0058】
なお、上記においては、図7に示すような2つの熱処理ユニット3uAおよび3uBによる「液化貯蔵モード」と「再気化モード」の切換え機能を有する場合について説明したが、本装置は、これに限定されるものではなく、1つの貯槽タンク31をバッチ的に「再液化貯蔵モード」と「再気化モード」の切換える場合なども可能である。
【0059】
<本発明に係る液化ガス供給装置の構成例>
図8は、上記熱処理装置を用いた本発明に係る液化ガス供給装置(以下「本供給装置」という)の基本構成例を示す概略図である。液化ガスの消費設備であるプロセス装置5の置かれた部屋(以下「クリーンルーム30」という)とは離れた液化ガス専用の部屋(以下「液化ガス供給室10」という)に設置される1次液化ガス供給設備1と、プロセス装置の直近に設置される2次液化ガス供給設備3(熱処理装置3に相当)、両者を接続する1次配管設備2、および2次液化ガス供給設備3とプロセス装置5を接続する2次配管設備4から構成される。図8では、プロセス装置5がクリーンルーム30のクリーンルームフロア30aに置かれ、2次液化ガス供給設備3がプレナムフロア30bに置かれている。1次液化ガス供給設備1において、充填容器1aに充填された液化ガスは、1次気化手段1bによって気化される。気体状態となった液化ガスは、1次配管2aを有する1次配管設備2によって、2次液化ガス供給設備3に送気される。送気された液化ガスは、2次液化ガス供給設備3において、再液化手段3aによって再度液化させ、貯蔵手段3bによって液体状態で貯蔵される。貯蔵された液化ガスは、2次気化手段3cによって気化される。気体状態となった液化ガスは、2次配管4aを有する2次配管設備4によって、プロセス装置5に送気される。なお、導入された液化ガスを含むプロセス装置5からの排ガスは、排ガス処理装置6を介して排出される。
【0060】
液化ガスメーカから納入される充填容器1aの取付け、取外し作業は、もっぱら液化ガス供給室10でしか行なわないので、一般作業員の働いているプロセス装置5の置かれたクリーンルーム30内では、配管の大気開放という危険な作業は行わなくて済む。そのため、従来は不可能であった低蒸気圧液化ガスも含めた全ての液化ガスのクリーンルーム30からの完全分離、集中供給が可能となり、安全性の飛躍的増大と作業の効率化を図ることができる。以下、それぞれの構成要素について説明する。
【0061】
〔1次液化ガス供給設備1〕
1次液化ガス供給設備1は、詳細には、図9に例示するように、液体状態の液化ガスを充填した充填容器1aをその筐体1z内に収納するものであって、この筐体1zには、気化手段1bとして、充填容器1a内の液化ガスの温度を予め設定された温度まで低温化する冷却部1cとともに、液化ガスを気化し供給した際に奪われる気化熱を必要時点で補給する加熱部1dを配設することによって、液化ガスの温度が設定された温度よりも下がり過ぎないよう作用する温度制御システム(図示せず)が組み込まれている。冷却部1cとしては、充填容器1aの下部または側面を環境温度(通常10〜30℃)から10℃程度冷却可能であれば十分で、例えば、図9のように冷媒ユニット1eからの冷媒を冷熱源として用いる方法を適用することができる。加熱部1dとしては、充填容器1aの下部または側面を、例えば加熱空気やランプなどを熱源として用いる方法を適用することができる。
【0062】
ここで、充填容器1a内の液相の液化ガス温度Toを測定する手段(図示せず)および充填容器1a内の液相の液化ガス温度Toを制御する手段(図示せず)が必要とされる。しかしながら、充填容器1aであって搬送用の圧力容器は、液化ガスメーカと液化ガス供給装置の間を通う圧力容器そのものであるため、液化ガスの温度を測るために容器内に直接温度センサを組み込むことが難しい。このとき、充填容器1a内部の液化ガスの液相温度は、気化した液化ガスの圧力を出口配管上に設けられた圧力センサ(図示せず)で常時モニタし、その圧力値から液化ガス固有の「飽和蒸気圧vs温度」特性曲線より演算して求めることが可能であり、測定の迅速性や精度面からこの方法を適用することが好ましい。本供給装置では、こうして得られた液相温度が、予め設定された温度になるよう一定温度にフィードバック制御する方式を採用することが好ましい。
【0063】
なお、充填容器1a内部の液化ガスの残量検知は、通常、重量測定によって行なわれるが、そのために、充填容器1aはロードセル1fの上に載せられた形で設置され、残量が少なくなった時点で、充填容器1aが交換される。
【0064】
〔1次送気配管系2〕
1次液化ガス供給設備1と2次液化ガス供給設備3の間の1次配管系2である1次配管2aは、液化ガスの供給量に見合った配管径を有すること以外には、特別な仕様のものではなく、通常一般の半導体液化ガス供給配管などで用いられている配管で良く、また従来技術のような1次配管2a内再液化を防止する目的で必要となる保温とか加温装置等は一切不要である。ただし、上記のように、低蒸気圧の液化ガスには、腐食性で毒性を有するガスが多く、通常内面加工あるいは内面処理されたステンレス鋼管(SUS)などが用いられる。1次送気配管系2においては、その系の環境温度Taの分布を測定し、そのデータより1次送気配管系2の環境温度Taの変動幅の下限値を予測して、1次液化ガス供給設備1の液相の液化ガス温度Toの制御温度を、その下限値よりも低い値に設定することが望ましい。
【0065】
〔2次液化ガス供給設備3〕
2次液化ガス供給設備3は、2次液化ガス供給設備3および1次配管設備2から送気された気体状態の液化ガスを再度液化して一旦液体状態の液化ガスとして貯蔵する機能と、一旦貯蔵した液化ガスを再度気化させ気体状態でプロセス装置に送気する機能が求められる。本供給装置においては、上述の熱処理装置3を用いることによって、こうした機能を確保することができる。
【0066】
このとき、充填容器1aから送気される液化ガスは、1次配管2a中で再液化しないように、配管周囲環境温度Taよりも低い温度である、例えば10℃で常に気化するようコントロールされたものが送気されるので、液化手段3aにおいて例えば−5℃以下に冷却することによって液化手段3a内で連続的に液化する。
【0067】
一方、「再気化モード」にある気化手段3cにおいては、プロセス装置5に繋がれた2次配管4aと気化手段3c内に貯蔵された液相の液化ガス上部に存在する気相部が開放状態で接続され、液化ガスが流出可能な状態になっている。プロセス装置5で当該液化ガスが消費されると気化手段3cの気相部の圧力が低下する方向に動くが、それに伴って気化手段3c内の液相の液化ガスが、圧力低下を補償するように速やかに気化する。気化手段3cの周りには第3冷媒(例えば15℃)が供給されているので気化手段3c内の液化ガスは15℃に保たれ、その結果プロセス装置5には例えば15℃における飽和蒸気圧に相当する圧力に安定化された気相液化ガスが供給されることになる。このとき、2次液化ガス供給設備3とプロセス装置5を結ぶ2次配管4aは、通常、クリーンルーム内に敷設されているので配管周囲環境温度Tbは20〜23℃であり、2次配管4aを流れる15℃飽和の液化ガスは、専ら配管周囲から熱を奪う方向となり、2次配管4a内での再液化することはない。
【0068】
〔2次送気配管系4〕
これは2次液化ガス供給設備3とガス消費設備であるプロセス装置5の間の2次配管系4である2次配管4aである。1次配管2a同様、供給量に見合った配管径を有すること以外には、特別な仕様のものではなく、通常一般の半導体液化ガス供給配管で用いられている配管で良く、また従来技術のような配管内再液化を防止する目的で必要となる保温とか加温装置等は一切不要である。2次配管4aは、1次送気配管系2同様、SUS材質などが用い、2次送気配管系4の環境温度Tbを測定し、温度管理を行うことが好ましい。
【0069】
〔本装置における操作方法〕
本装置においては、上記の機能を活かし、以下のプロセスに沿って操作することが好ましい。
(1)充填容器1aに充填された液化ガスを、1次気化させる工程
(2)気化された液化ガスを、1次配管2aを介して1次送気する工程
(3)送気された液化ガスを、再度液化させる工程
(4)液化した液化ガスを、液相で貯蔵する工程
(5)液体状態の液化ガスを、2次気化させる工程
(6)気化された液化ガスを、2次配管4aを介してプロセス装置5に2次送気する工程
(7)工程(5)において使用する液体状態の液化ガスを、工程(4)によって貯蔵した液化ガスを用いて補給する工程
【0070】
つまり、気化させて送気された液化ガスを、一旦プロセス装置5の近くで強制的に液化させた後、再度気化させてプロセス装置5に送気することによって、低蒸気圧の液化ガスの場合であっても、送気配管(1次配管2aおよび2次配管4a)での液化を防止するとともに充填容器1aからプロセス装置5までの送気圧力を確保し、所望の流量を安定的に供給することができる。
【0071】
<本供給装置における温度制御>
本供給装置においては、図10に示すように、1次液化ガス供給設備1において、充填容器1a内の液相の液化ガス温度(1次液相温度)Toを1次配管設備2の環境温度Taの最低温度以下とし、2次液化ガス供給設備3において、液化温度Tcあるいはこれと貯蔵温度Tsを液相の液化ガス温度To以下、および前記液相の液化ガス温度(2次液相温度)Tgを環境温度Tbの最低温度以下に制御することを特徴とする。以下、予め設定された、1次液相温度を「Tset1」、液化温度(「再液化貯蔵モード」にある貯槽タンク31aの底面の壁面温度)を「Tset2」、2次気化温度(「再気化モード」にある貯槽タンク31b内液相温度)を「Tset3」とする。
【0072】
従来の供給方法では、液化ガスの送気配管内での再液化問題とともに、低蒸気圧の液化ガスの場合には、送気圧力、つまり1次液化ガス供給設備1からプロセス装置5までの差圧ΔPが十分確保できず、そのため十分な流量も確保できないという問題があり、低蒸気圧液化ガスの遠隔配管供給は困難であった。それに対して、本供給装置は、送気配管途中に2次液化ガス供給設備3という一種の液化ガスの中継部を設けることにより、1次液化ガス供給設備1と2次液化ガス供給設備3の間の1次配管2aを流れる液化ガスの圧力をプロセス装置5の要求する圧力とは切り離して設定できる仕組みを可能とした。これにより、1次配管2aを流れる液化ガスの飽和蒸気の温度を配管内再液化が起こらないところまで低温化することよって長距離配管における配管液化の問題を解消するとともに、同じく長距離配管による圧力不足問題という二つの問題を同時に解消するものである。
【0073】
具体的には、1次液化ガス供給設備1の液相温度の設定(Tset1)を、1次液化ガス供給設備1から2次液化ガス供給設備3までの1次配管2aの環境温度Taのどの部分の温度(例えば15〜30℃)よりも常に低い温度になるように、例えば10℃とした場合には、1次配管2aでの再液化を防止することができる。また、この条件で、2次液化ガス供給設備3における再液化させる貯槽タンク31aの設定温度(Tset2)を例えば0℃とし、±2℃程度に制御すれば、20〜30kPa程度の送気圧力を得ることができ、本供給装置の優れた機能を活かすことができる。一方、再気化させる貯槽タンク31bの液相温度の設定(Tset3)は、再液化時に設定した温度Tset2よりも高い温度で、かつこの2次液化ガス供給設備3からプロセス装置5までの2次配管およびプロセス装置5内の送気配管2aの環境温度Tbのどの部分の温度(例えば20〜25℃)よりも常に低い温度になるように、例えば15℃とし、±2℃程度で制御することによって、プロセス装置5で必要とする例えば30〜100kPa程度の供給圧力を確保できることができる。
【0074】
つまり、図10に示すように、この温度制御システムにおいて、1次液相温度Toを、周囲温度(1次配管設備2の環境温度Ta)よりも少なくとも3℃、制御マージンを考慮しても5℃ほど低い温度に保ちながら気化させる。このことにより1次配管1aにおける配管壁面での熱の流れは配管外部の周囲環境から配管内部の気化した液化ガスに取り込まれる方向に保たれることとなる。すなわち、気化した時点では、気化温度における飽和蒸気であった液化ガスは配管を流れる過程で常に配管外部から熱をもらうことになり、確実に飽和蒸気から配管内での再液化を起しにくい過熱蒸気領域の移行することになるので、従来のような中継配管内で液化ガスが再液化することはない。
【0075】
また、1次液化ガス供給設備1をプロセス装置5の置かれたクリーンルーム30とは別の部屋10に置いた場合、1次配管1aは製造プロセスの建屋内を通過するだけであるため、1次配管1aの周囲温度の最も低い温度として、例えば15℃を想定しておけば十分である。その場合には、1次液化ガス供給設備1の充填容器1a内の液相温度を15℃よりも十分低い10℃±2℃程度の温度設定および制御精度で温度制御すれば、上記の目的は達成できる。
【0076】
また、本供給装置において、液化ガスの供給開始に当り、以下の(1−1)〜(1−3)の操作を行うことが好ましい。
(1−1)液化ガスの送気前に前記充填容器を冷熱によって冷却し、液相の液化ガス温度を、通常の制御温度よりも低温であって1次配管系の最低温度以下でかつ環境温度以下にする
(1−2)前記充填容器からの液化ガスの送気を開始する
(1−3)送気に伴いさらに低温化した液相の液化ガスを温熱によって加温し、通常の制御温度に制御する
つまり、まず、液化ガスの送気前に前記充填容器を冷熱によって冷却し、液相の液化ガス温度を、通常の制御温度よりも低温であって1次配管系の最低温度以下でかつ環境温度以下にすることによって、1次配管系の最低温度が環境温度以下の場合であっても確実に送気配管における再液化の防止を図り、その後の昇温および適温制御によって、送気圧力の確保を図るが可能となる。
【0077】
<本発明に係る液化ガス供給装置の他の構成例>
上記においては、1次液化ガス供給設備の1つに対して1つの2次液化ガス供給設備を接続した場合について説明したが、本発明は、1次液化ガス供給設備の1つに対して複数の2次液化ガス供給設備の接続が可能なように、1次配管設備を分岐配管で構成し、1次液化ガス供給設備からの液化ガスを、2次液化ガス供給設備のいくつかに同時に供給する液化ガス供給装置(以下「本供給装置2」という)を構成することが可能である。
【0078】
本供給装置2は、図11に例示するように、1台の1次液化ガス供給設備1に対して、3台の2次液化ガス供給設備3x,3y、3zが接続された場合の実施例である。このとき、2次液化ガス供給設備3x,3y、3zは、空調温度を同一とする同一のクリーンルームのゾーンにあっても良いし、空調が別の複数のクリーンルーム30x,30y、30zのゾーンに分散されて設置されていても良い。
【0079】
上述のように、本供給装置2においても、2次液化ガス供給設備3x,3y、3zにおける送気圧力の設定は、1次液化ガス供給設備1からの送気圧力と無関係に設定することができる。つまり、本供給装置2は、1次液化ガス供給設備1、1次配管2a、2次液化ガス供給設備3x,3y、3zおよび2次配管設備4x,4y、4zがそれぞれ高い独立性を有することから、1次配管設備2を分岐配管で構成し、1つの1次液化ガス供給設備1に対して複数の2次液化ガス供給設備3x,3y、3zの接続を行うことによって、1次液化ガス供給設備1からの液化ガスを、異なる条件で、2次液化ガス供給設備3x,3y、3zを稼動させることができる。つまり、例えば、複数のプロセス装置5x,5y,5zに対して異なる2次送気圧力に制御された液化ガスを供給することができる。また、2次の送気流量を、それぞれプロセス装置5x,5y,5zに対して異なる条件とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
上記においては、主として半導体あるいはFPD製造プロセスに用いる半導体用特殊液化ガスなどの熱処理装置およびこれを用いた液化ガス供給装置について述べたが、本発明は、こうしたエレクトロニクス用液化ガスに限られず、各種プロセス用の液化ガスあるいは各種液体の熱処理プロセスなどに適用することができる。また、複数の温度条件を必要とする場合に、対応する温度の冷媒のみを供給する装置としても有用であり、特に複数の温度条件において熱処理を必要とする製造プロセスに対しては有用である。例えば、ガスの吸着処理や精製処理などのプロセスにおける冷却・加熱の切換えに用いられる処理手段などが該当する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る熱処置装置(本装置)の基本構成例を示す概略図
【図2】本装置における冷媒発生ユニットを例示する説明図
【図3】本装置における冷媒発生ユニットを構成する各冷媒槽の温度分布を例示する説明図
【図4】本装置における冷媒発生ユニットを構成する冷媒槽の構造を例示する説明図
【図5】本装置における熱処理ユニットを構成する液化手段の構造を示す説明図
【図6】本装置における熱処理ユニットを構成する液化手段の他の構造を示す説明図
【図7】本装置の他の構成例を示す説明図
【図8】本発明に係る液化ガス供給装置(本供給装置)の基本構成例を示す説明図
【図9】本供給装置を構成する1次液化ガス供給設備を示す説明図
【図10】本供給装置における温度制御を示す説明図
【図11】本供給装置の他の構成例を示す説明図
【図12】従来技術に係るガス供給装置を例示する概略図
【図13】従来技術に係る冷却処理用手段を例示する概略図
【符号の説明】
【0082】
1 1次液化ガス供給設備
1a 充填容器
1b 1次気化手段
2 1次配管設備
2a 1次配管
3 熱処置装置(2次液化ガス供給設備)
3a 液化手段
3b 貯蔵手段
3c 2次気化手段
3d 連通部
3u 熱処理ユニット(液化ガス供給設備)
4 2次配管設備
4a 2次配管
5 プロセス装置
6 排ガス処理装置
7 冷媒発生ユニット
7a 第1冷媒槽
7b 第2冷媒槽
7c 第3冷媒槽
10 液化ガス供給室
30 クリーンルーム
30a クリーンルームフロア
30b プレナムフロア
71 冷凍機
72 流路
73 冷媒タンク
Wa,Wb 隔壁
Pa 第1循環ポンプ
Pb 第2循環ポンプ
Pc 第3循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1系統の冷凍機を用いて複数の異なる温度の冷媒を発生させ、該冷媒を用いて複数の熱処理部の冷却処理あるいは加温処理を行うとともに、前記冷媒の少なくとも1つを温度制御し、前記熱処理部の熱処理の基準冷熱として用いることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記冷媒を発生させて貯蔵する冷媒タンクが、多重構造の複数の冷媒槽からなり、最も内側の第1冷媒槽に最低温の第1冷媒を貯蔵し、その周囲に順次温度の低い順に第2冷媒槽に第2冷媒、第3冷媒槽に第3冷媒・・第n冷媒槽に第n冷媒を貯蔵するとともに、前記熱処理部へ前記冷媒槽から冷媒が供給されることを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
液化手段、貯留手段および気化手段として機能する熱処理部を少なくとも2つ有し、これらを独立的でかつ交互に切換えることができる機能を有するとともに、前記第1冷媒を液化手段用熱処理部の冷熱として使用し、前記第2冷媒を貯蔵手段用熱処理部の冷熱として使用するとともに、前記第3冷媒を気化手段用熱処理部の温熱として使用することを特徴とする請求項1または2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記液化手段および貯留手段としての機能から気化手段としての機能への切換えあるいはその逆の切換えにおいて、切換え後にそのいずれかの機能が確保可能な状態になった時点で、予め前記第1〜第3冷媒の供給経路の切換えあるいはそれぞれの機能の制御温度への切換えを行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記冷凍機の放熱部における温熱を、温度制御される前記冷媒の温度調節用の温熱として使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記気化手段が、被気化対象物を収納する容器の外周および底部と接触するように前記第3冷媒が流通可能な空間を有するとともに、該空間の底部側に容器の底面に直角に前記第3冷媒を噴射させるノズルを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項7】
液化ガスが充填された容器から配管送気されて、これと離隔されたガス消費設備に液化ガスを供給する液化ガス供給装置であって、
前記配管送気された気体状態の液化ガスを、請求項1〜6のいずれかに記載の熱処理装置を用いて、液化処理と気化処理、あるいは液化処理と貯蔵処理と気化処理を行うことを特徴とする液化ガス供給装置。
【請求項8】
少なくとも2つの前記熱処理装置を有し、該熱処理装置において作製した複数の異なる温度の冷媒を用い、
1の熱処理装置において、前記気体状態の液化ガスを最も低温の冷媒によって液化処理、あるいはさらにその後に液体状態の液化ガスを2番目に低温の冷媒によって貯蔵処理し、
他の熱処理装置において、前記貯蔵処理された液化ガスをこれらの冷媒よりも高温の冷媒によって気化処理するとともに、
前記液化・貯蔵処理と気化処理の切換えが可能で、該切換えと同時に、前記1の熱処理装置に供給された冷媒と前記他の熱処理装置に供給された冷媒の切換えを自動的に行う冷媒流路切換システムを有することを特徴とする請求項7記載の液化ガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−54653(P2009−54653A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217550(P2007−217550)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)